電磁変換素子の位置決め方法
【課題】一層の位置決め精度の向上に寄与することができる電磁変換素子の位置決め方法を提供する。
【解決手段】サーボセクターごとに、記録媒体の回転角変化に同期して変化するサーボクロックを計数する。スパイラルサーボパターンから電磁変換素子で磁気情報を読み取る。読み取った磁気情報に基づき、当該円周線上でスパイラルサーボパターンの位置を特定する。特定した位置にサーボクロックの計数値を関連づける。関連づけた計数値、および、サーボクロックの計数に基づき半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。こうした位置に基づき電磁変換素子は位置決めされる。この位置決め方法では位置決めにあたってスパイラルサーボパターンにトラック幅に相当する間隔で形成される同期マークは利用されない。再生信号の乱れすなわちノイズは抑制される。電磁変換素子の位置決め精度は高められる。
【解決手段】サーボセクターごとに、記録媒体の回転角変化に同期して変化するサーボクロックを計数する。スパイラルサーボパターンから電磁変換素子で磁気情報を読み取る。読み取った磁気情報に基づき、当該円周線上でスパイラルサーボパターンの位置を特定する。特定した位置にサーボクロックの計数値を関連づける。関連づけた計数値、および、サーボクロックの計数に基づき半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。こうした位置に基づき電磁変換素子は位置決めされる。この位置決め方法では位置決めにあたってスパイラルサーボパターンにトラック幅に相当する間隔で形成される同期マークは利用されない。再生信号の乱れすなわちノイズは抑制される。電磁変換素子の位置決め精度は高められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハードディスク駆動装置(HDD)といった記録媒体駆動装置に関し、特に、そういった記録媒体駆動装置で電磁変換素子の位置決めに利用される位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク駆動装置の分野でいわゆるスパイラルサーボは広く知られる。このスパイラルサーボでは磁気ディスクの表面にスパイラルサーボパターンが確立される。スパイラルサーボパターンは記録域の最内周から最外周までスパイラル線に沿って延びる。スパイラル線は記録域の全域で円周線に対し規定の傾斜角を維持する。ハードディスク駆動装置では磁気ディスクの回転に応じて電磁変換素子がスパイラルサーボパターンから磁気情報を読み取る。読み取った磁気情報に基づき電磁変換素子は磁気ディスクの半径方向に位置決めされる。こうして位置決めされた電磁変換素子は磁気ディスク上のサーボセクターにサーボパターンを書き込む。
【0003】
スパイラルサーボパターンは高周波域を備える。高周波域では円周方向に交互に磁極が配列される。電磁変換素子が高周波域を横切ると、高周波の再生信号が出力される。同時に、スパイラルサーボパターンには円周方向に規定の間隔で同期マークが形成される。同期マークは高周波の再生信号同士の間にギャップを形成する。ギャップ同士の間隔はトラック幅に相当する。同期マークの働きで1記録トラックごとに電磁変換素子は位置決めされることができる。
【特許文献1】米国特許第6965489号明細書
【特許文献2】米国特許第6943978号明細書
【特許文献3】米国特許第6507450号明細書
【特許文献4】米国特許第7113362号明細書
【特許文献5】米国特許第7002761号明細書
【特許文献6】米国特許第7307806号明細書
【特許文献7】米国特許第7307807号明細書
【特許文献8】米国特許第7139144号明細書
【特許文献9】米国特許第7088533号明細書
【特許文献10】米国特許第7167333号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のスパイラルサーボでは、電磁変換素子がスパイラルサーボパターンを横切る際に復調される電磁変換素子の微小変位のみに基づき電磁変換素子は位置決めされる。したがって、サーボセクター内でサーボパターンの書き込みが開始される際に、磁気ディスク上には限定された領域でサーボセクター内にサーボパターン(スパイラルサーボパターンとは異なる通常のサーボパターンすなわち補助サーボパターン)が確立されなければならない。まず、補助サーボパターンに基づき書き込みの開始位置に電磁変換素子は位置決めされる。その後、サーボ情報の検出元は補助サーボパターンからスパイラルサーボパターンに切り替えられる。こうして電磁変換素子はスパイラルサーボパターンに基づきオントラックされる。
【0005】
この場合、サーボトラックライター(STW)の操作にあたって補助サーボパターンの書き込みといった余分な工程が要求される。しかも、実際には補助サーボパターンとスパイラルサーボパターンとの間で十分に偏心が除去されることはできないことから、補助サーボパターンからスパイラルサーボパターンへの切り替えそのものに困難が生じてしまう。
【0006】
スパイラルサーボではスパイラルサーボパターンの同期マークの間隔が復調信号から読み取られる電磁変換素子の位置精度に影響を与える。前述のように同期マークの間隔がトラック幅に限定されると、信号の復調の観点から同期マークの間隔が最適化されることはできない。復調ノイズは増加する。復調信号に基づく電磁変換素子の位置精度が劣化してしまう。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、一層の位置決め精度の向上に寄与することができる電磁変換素子の位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、一形態に係る電磁変換素子の位置決め方法は、記録媒体上で半径方向に延びるサーボセクターごとに、記録媒体の回転角変化に同期して変化するサーボクロックを計数する工程と、記録媒体上で円周方向に等間隔で配置され、半径方向の所定の領域にわたって円周線に対し規定の傾斜角を維持するスパイラル線に沿って磁性体を配列するスパイラルサーボパターンから電磁変換素子で磁気情報を読み取る工程と、読み取った磁気情報に基づき、当該円周線上でスパイラルサーボパターンの位置を特定する工程と、特定した位置にサーボクロックの計数値を関連づける工程と、関連づけた計数値に基づき半径方向に電磁変換素子の位置を特定する工程とを備える。
【0009】
こういった位置決め方法では、サーボクロックの計数に基づき電磁変化素子の移動経路上でスパイラルサーボパターンの位置は特定されることができる。この位置決め方法では位置決めにあたってスパイラルサーボパターンにトラック幅に相当する間隔で形成される同期マークは利用されない。したがって、再生信号の乱れすなわちノイズは抑制されることができる。電磁変換素子の位置決め精度は高められることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、一層の位置決め精度の向上に寄与することができる電磁変換素子の位置決め方法は提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1は磁気記憶媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)を有する。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばアルミニウムといった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0013】
収容空間には磁気記憶媒体の一具体例すなわち1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモーター15のスピンドル軸に装着される。スピンドルモーター15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。後述されるように、個々の磁気ディスク14はいわゆる垂直磁気記憶媒体に構成される。
【0014】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、ベース13の底板から垂直方向に立ち上がる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には、支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば押し出し成型に基づきアルミニウムから成型されればよい。
【0015】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャ上には浮上ヘッドスライダー22が支持される。フレキシャに基づき浮上ヘッドスライダー22はヘッドサスペンション21に対してその姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダー22にはヘッド素子すなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。
【0016】
電磁変換素子は書き込みヘッド素子と読み出しヘッド素子とを備える。書き込みヘッド素子にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで磁界を生成する。磁界は、主磁極の働きで、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向から磁気ディスク14に作用する。この磁界の働きで磁気ディスク14に情報は書き込まれる。その一方で、読み出しヘッド素子には巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子が用いられる。GMR素子やTMR素子では、磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてスピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から情報は読み出される。
【0017】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダー22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力と負圧およびヘッドサスペンション21の押し付け力とは釣り合う。こうした釣り合いに基づき磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダー22は浮上し続けることができる。
【0018】
キャリッジブロック17にはボイスコイルモーター(VCM)23が連結される。ボイスコイルモーター23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダー22の浮上中に支軸18回りでキャリッジアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダー22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間で同心円状の記録トラックを横切ることができる。こうした浮上ヘッドスライダー22の移動に基づき電磁変換素子は目標記録トラックに対して位置決めされる。
【0019】
ヘッドサスペンション21の先端には、ヘッドサスペンション21の先端から前方に延びるロードタブ24が区画される。ロードタブ24はキャリッジアーム19の揺動に基づき磁気ディスク14の半径方向に移動することができる。ロードタブ24の移動経路上には磁気ディスク14の外側でランプ部材25が配置される。ランプ部材25はベース13に固定される。ロードタブ24はランプ部材25に受け止められる。ランプ部材25は例えば硬質プラスチック材料から成型されればよい。
【0020】
ランプ部材25にはロードタブ24の移動経路に沿って延びるランプ25aが形成される。このランプ25aは磁気ディスク14の回転軸から遠ざかるにつれて磁気ディスク14の表面を含む仮想平面から遠ざかる。したがって、キャリッジアーム19が支軸18回りで磁気ディスク14の回転軸から遠ざかると、ロードタブ24はランプ25aを上っていく。こうして浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の表面から引き剥がされる。浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14から外側に待避する。反対に、キャリッジアーム19が支軸18回りに磁気ディスク14の回転軸に向かって揺動すると、ロードタブ24はランプ25aを下っていく。回転中の磁気ディスク14から浮上ヘッドスライダー22には浮力が作用する。ランプ部材25およびロードタブ24は協働でいわゆるロードアンロード機構を構成する。
【0021】
図2に示されるように、磁気ディスク14の表裏面には、磁気ディスク14の半径方向に沿って湾曲しつつ延びる複数筋(例えば200本)のサーボセクター領域28が規定される。サーボセクター領域28は円周方向に等間隔で配置される。サーボセクター領域28にはサーボパターンが確立される。サーボパターンに書き込まれる磁気情報は浮上ヘッドスライダー22上の電磁変換素子で読み取られる。サーボパターンから読み出される情報に基づき浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の半径方向に位置決めされる。位置決めに応じて1本の円形の記録トラックが確立される。浮上ヘッドスライダー22の半径方向変位に基づき同心円状に記録トラックは確立される。サーボセクター領域28の湾曲は電磁変換素子の移動経路に基づき設定される。
【0022】
隣接するサーボセクター領域28の間にはデータ領域29が確保される。サーボパターンに基づく位置決めに応じてデータ領域29内で電磁変換素子は記録トラックを辿る。電磁変換素子の書き込みヘッド素子は記録トラックに沿って磁気情報を書き込む。電磁変換素子の読み出しヘッド素子は記録トラックに沿って磁気情報を読み出す。
【0023】
図3は一具体例に係るサーボセクター領域28を示す。各サーボセクター領域28では、上流から順番にプリアンブル域31、サーボマークアドレス域32および位相バースト域33が区画される。プリアンブル域31では、例えば、磁気ディスク14の半径線上で延びる複数筋の磁化パターン34が確立される。磁化パターン34は磁気ディスク14の周方向に等間隔で配置される。こういったプリアンブル域31の働きで読み出し素子35から読み出される信号の同期が確保される。同時に、読み出し素子35から読み出される信号に基づきゲインが調整される。ここで、「上流」や「下流」は、磁気ディスク14の回転中に規定される浮上ヘッドスライダー22の走行方向に基づき定義される。
【0024】
サーボマークアドレス域32には特定のパターンで磁極すなわちN極およびS極が配置される。磁極の配置はセクター番号やトラック番号を反映する。同時に、サーボマークアドレス域32には磁気ディスク14の半径線上で延びる複数筋の磁化パターンが確立される。この磁化パターンはサーボクロック信号を特定する。このサーボクロック信号に基づき後述の位相は特定される。サーボマークアドレス域32の働きでセクター番号やトラック番号は特定される。同時に、プリアンブル域31およびサーボマークアドレス域32の働きで位相の基準タイミングは特定される。
【0025】
位相バースト域33には、磁気ディスク14の半径線に対して所定の傾斜角で延びる複数本の磁化パターンすなわち位相バーストライン36が確立される。位相バーストライン36の確立にあたって位相バースト域38には偶数(even)域33aと奇数(odd)域33bとが交互に配置される。偶数域33aおよび奇数域33bは対で利用される。偶数域33aでは、位相バーストライン36を通過する読み出し素子35が磁気ディスク14の内周側にずれればずれるほど、位相は遅れる。反対に、奇数域33bでは、位相バーストライン36を通過する読み出し素子35が磁気ディスク14の外周側にずれればずれるほど、位相は早まる。
【0026】
図4に示されるように、ボイスコイルモーター23にはモータードライバー回路41が接続される。モータードライバー回路41はボイスコイルモーター23に駆動電流を供給する。ボイスコイルモーター23は、供給される駆動電流に基づき指定の変位量で変位することができる。こうした変位量はキャリッジブロック17の回転量(回転角)に従って設定される。
【0027】
ヘッドIC42にはリードライトチャネル回路43が接続される。リードライトチャネル回路43は決められた変復調方式に従って信号の変調や復調を実施する。変調後の信号すなわち書き込み信号はヘッドIC42に供給される。ヘッドIC42は書き込み信号を増幅する。増幅後の書き込み信号は書き込み素子44に供給される。読み出し素子35から出力される読み出し信号はヘッドIC42で増幅された後にリードライトチャネル回路43に供給される。リードライトチャネル回路43は読み出し信号を復調する。
【0028】
モータードライバー回路41およびリードライトチャネル回路43にはハードディスクコントローラー(HDC)45が接続される。HDC45はモータードライバー回路41に制御信号を供給する。この制御信号に基づきモータードライバー回路41の出力すなわち駆動電流は制御される。HDC45は同様にリードライトチャネル回路43に変調前の書き込み信号を送り込むとともにリードライトチャネル回路43から復調後の読み出し信号を受け取る。変調前の書き込み信号は例えばホストコンピューターから送り込まれるデータに基づきHDC45で生成されればよい。そういったデータはコネクター46からHDC45に受け渡されればよい。コネクター46には、例えばホストコンピューターのメインボードから延びる制御信号用ケーブルや電源用ケーブル(ともに図示されず)が接続されればよい。同様に、HDC45は復調後の読み出し信号に基づきデータを再現する。再現されたデータはホストコンピューターに向けてコネクター46から出力されればよい。こうしたデータの送受信にあたってHDC45は例えばバッファメモリー47を利用することができる。バッファメモリー47は一時的にデータを保存する。バッファメモリー47には例えばSDRAM(シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリー)が用いられればよい。
【0029】
HDC45にはマイクロプロセッサーユニット(MPU)48が接続される。MPU48は、例えばROM(リードオンリーメモリー)51に記憶されるプログラムに基づき動作するCPU(中央演算処理装置)52を備える。プログラムには一実施形態に係る電磁変換素子の位置決めプログラムが含まれる。電磁変換素子の位置決めプログラムはいわゆるファームウェアとして提供されればよい。CPU52はその動作の実現にあたって例えばフラッシュROM53からデータを取得することができる。そういったプログラムやデータは一時的にRAM(ランダムアクセスメモリー)54に格納されることができる。ROM51やフラッシュROM53、RAM54はCPU52に直接に接続されればよい。
【0030】
トラッキングサーボ制御にあたって読み出し素子35が順番にプリアンブル域31、サーボマークアドレス域32および位相バースト域33を通過すると、読み出し素子35から信号が出力される。サーボマークアドレス域32の通過に基づきHDC45はサーボクロック信号を生成する。続いて位相バースト域33の通過に基づきHDC45は偶数域および奇数域ごとに信号波形を取り込む。HDC45は高速フーリエ変換に基づき信号波形の平均化を実施する。HDC45は偶数域および奇数域ごとにサーボクロック信号および信号波形に基づき位相差を演算する。こうして演算された位相差に基づきHDC45は位置誤差信号を出力する。位置誤差信号は制御信号としてボイスコイルモーター23に供給される。その結果、電磁変換素子は確実に目標の記録トラックを追従することができる。
【0031】
いま、磁気ディスク14にサーボセクター領域28が構築される場面を想定する。まず、真っ新な磁気ディスク14にスパイラルサーボパターンが書き込まれる。スパイラルサーボパターンの書き込みにあたってサーボトラックライター(STW)が用いられる。磁気ディスク14はSTWに装着される。STWは一定の回転速度で磁気ディスク14を回転させる。同時に、STWは一定の移動速度で半径方向に書き込み素子を移動させる。書き込み素子は例えば所定の浮上ヘッドスライダーに搭載されればよい。浮上ヘッドスライダーは例えば磁気ディスク14の半径線上で移動すればよい。書き込み素子から磁気ディスク14に磁界は作用する。
【0032】
図5に示されるように、スパイラルサーボパターン55は円周方向に等間隔で配置される。スパイラルサーボパターン55の本数はサーボセクター領域28の本数の倍に設定される。すなわち、1本のサーボセクター領域28に対して2本のスパイラルサーボパターン55が割り当てられる。ただし、1本のサーボセクター領域28に対して3本以上のスパイラルサーボパターンが割り当てられてもよい。そういった場合でも、スパイラルサーボパターンは円周方向に等間隔に配置されればよい。図中、便宜上、サーボセクター領域28およびスパイラルサーボパターン55は間引いて表示される。
【0033】
個々のスパイラルサーボパターン55は記録域の最外周56aから最内周56bまでスパイラル線に沿って延びる。記録域は、書き込み素子44で磁気情報を書き込むことができる最大範囲に相当する。スパイラル線は、図6に示されるように、記録域の全域にわたって円周線に対し規定の傾斜角φを維持する。
【0034】
個々のスパイラルサーボパターン55はスパイラル線に沿って磁化領域を配列する。円周方向にN極およびS極は交互に配置される。こういった配置に基づき高周波域57が確立される。磁化領域の半径方向長さは記録トラックの幅TWに設定される。半径方向長さは磁気ディスク14の半径線上で測定される。こういった高周波域57の確立にあたって書き込み素子44には所定の書き込みクロックに従って高周波の書き込み信号が供給される。
【0035】
スパイラルサーボパターン55には円周方向に規定の間隔で同期マーク58が形成される。同期マーク58は例えば単一の磁極で構成される。こういった同期マーク58の確立にあたって書き込み素子44には一定値の書き込み信号が供給される。一定値の書き込み信号は書き込みクロックの規定数のクロックパルスにわたって維持される。こうして高周波は途切れる。
【0036】
読み出し素子35が高周波域57を横切ると、高周波の再生信号61が読み出し素子35から出力される。再生信号61の振幅は徐々に増大する。読み出し素子35がトラックの幅TWでスパイラルサーボパターン55上に横たわると、再生信号61は最大振幅を示す。その後、再生信号61の振幅は徐々に縮小する。同期マーク58は高周波の再生信号61同士の間にギャップ62を形成する。ギャップ62で高周波の再生信号61同士は隔てられる。同期マーク58同士の間隔は任意に設定される。ただし、読み出し素子35の再生信号上でギャップ62の位置が最適化されれば、再生信号すなわち高周波の再生信号61で乱れすなわちノイズは最大限に抑制されることができる。同期マーク58同士の間隔は必ずしもトラックピッチを特定する必要はない。同期マーク58は円周方向に等間隔で配置される。読み出し素子35が1本のスパイラルサーボパターン55を横切る際に読み出し素子35は少なくとも2本の同期マーク58を通過する。
【0037】
スパイラルサーボパターン55の書き込みが完了すると、磁気ディスク14はSTWから下ろされる。書き込み後の磁気ディスク14はハードディスク駆動装置11に組み込まれる。続いて、個々のハードディスク駆動装置11ごとに、書き込まれたスパイラルサーボパターン55に基づきサーボセクター領域28の磁化が書き込まれる。この書き込みにあたってCPU52は一実施形態に係る電磁変換素子の位置決めプログラムを実行する。このとき、CPU52は当該位置決めプログラムの実行に基づき電磁変換素子の位置決め装置として機能する。
【0038】
図7はCPU52内に構築される位置決め装置64の機能ブロックを概略的に示す。位置決め装置64はサーボクロック生成部65を備える。サーボクロック生成部65はサーボクロックを生成する。サーボクロックは磁気ディスク14の回転すなわち回転角変化に同期してパルスを刻む。こういったパルスの生成にあたってサーボクロック生成部65には例えばPLL(フェイズロックループ)回路66が接続されればよい。PLL回路66にはリードライトチャンネル回路43が接続される。リードライトチャンネル回路43は、スパイラルサーボパターン55の復調信号に基づきPLL回路66に位相情報を供給する。
【0039】
サーボクロック計数部68はサーボクロックを計数する。サーボクロック計数部68はサーボクロックの計数値すなわちカウント値を特定する。図8に示されるように、計数値が所定値CWに達すると、計数はリセットされる。リセット後、サーボクロック計数部68は再び計数を開始する。所定値CWは、隣接するサーボセクター領域28の間隔を特定する。すなわち、1つのリセットすなわち計数の折り返しに対して1つのサーボセクター領域28が割り当てられる。
【0040】
書き込みウインドウ設定部71は例えばサーボクロックの計数値に基づき書き込みウインドウ72を設定する。図8に示されるように、書き込みウインドウ72は所定の時間長さの時間枠を特定する。この時間枠内で書き込み素子44は書き込み動作を実施することができる。書き込みウインドウ72の枠外では書き込み素子44の書き込み動作は禁止される。書き込みウインドウ72は所定の周期で現れる。周期の設定にあたって所定値CW以下の計数値が用いられる。
【0041】
書き込みトラック特定部73はサーボクロックの計数値に基づき1本の記録トラックを特定する。指定された計数値に基づきサーボセクター領域28でプリアンブル域31の磁化、サーボマークアドレス域32の磁化および位相バースト域33の磁化が書き込まれると、物理トラックは確立される。例えば磁気ディスク14の半径方向外側に向かって順番に記録トラックが確立される場合には、書き込みトラック特定部73は、現在の計数値に、1トラックピッチに相当するクロック数Tp(以下「トラックピッチ相当クロック数」という)を足し合わせ新たに記録トラックを特定する。反対に、磁気ディスク14の半径方向内側に向かって順番に記録トラックが確立される場合には、書き込みトラック特定部73は、現在の計数値からトラックピッチ相当クロック数Tpを差し引き新たに記録トラックを特定する。いずれの場合でも、最内周(または最外周)の記録トラックには任意の計数値すなわち初期値Csが割り当てられればよい。この初期値Csに、記録トラックの本数から「1」を差し引いた数値とトラックピッチ相当クロック数Tpとの積が加算されると、計数値の最大値は導き出される。書き込みトラック特定部73は、後述のように、目標トラック設定部としても機能する。
【0042】
トラック番号設定部74はトラック番号を設定する。トラック番号の設定にあたってトラック番号設定部74には書き込みトラック特定部73から計数値Rが供給される。計数値Rから初期値Csが差し引かれた後に、その減算の結果がトラックピッチ相当クロック数Tpで除算されると、トラック番号Ptは特定される。
【0043】
【数1】
復調ウインドウ設定部75は例えばスパイラルサーボパターン55の復調信号に基づき復調ウインドウを設定する。図8に示されるように、復調ウインドウ76は例えばスパイラルサーボパターン55の復調信号に相当する時間枠を特定する。例えば、復調ウインドウ76の時間長さは復調信号の時間長さに等しく設定される。復調ウインドウ76はスパイラルサーボパターン55の復調信号に固定される。したがって、スパイラルサーボパターン55の復調信号が検知されるたびに復調ウインドウ76は現れる。復調ウインドウ76に基づき復調信号は取り出される。復調信号は前述のリードライトチャネル回路43から供給される。リードライトチャネル回路43には読み出し素子44から読み出し信号が供給される。
【0044】
復調ウインドウ設定部75にはセクター番号設定部77が接続される。セクター番号設定部77はスパイラルサーボパターン55の通過回数に基づきセクター番号を特定する。通過回数は復調ウインドウ76の出現回数に基づき認識される。出現回数が計数される。セクター番号の初期値は「0(ゼロ)」に設定されればよい。セクター番号の初期値は磁気ディスク14の1回転中で任意の1復調ウインドウ76に割り当てられる。セクター番号の最大値はサーボセクター領域28の本数に基づき設定される。初期値に「0」が設定される場合には、セクター番号の最大値は、サーボセクター領域28の本数から「1」を差し引いた数値に設定される。セクター番号設定部77は、後述のように、スパイラル通過計数部としても機能する。ただし、後述されるとおり、スパイラルサーボパターン55の切り替え時にはセクター番号は補正される。
【0045】
トラック番号設定部74およびセクター番号設定部77にはサーボ情報作成部78が接続される。サーボ情報作成部78にはトラック番号設定部74からトラック番号が通知される。同様に、サーボ情報作成部78にはセクター番号設定部77からセクター番号が通知される。サーボ情報作成部78はトラック番号およびセクター番号に基づきサーボ情報を作成する。
【0046】
サーボ情報作成部78にはサーボセクター書き込み部79が接続される。サーボ情報作成部78はサーボセクター書き込み部79にサーボ情報を通知する。サーボセクター書き込み部79はサーボ情報に基づきプリアンブル域31、サーボマークアドレス域32および位相バースト域33の磁化を設定する。サーボセクター書き込み部79には同時に書き込みウインドウ設定部71およびサーボクロック計数部68が接続される。設定された磁化は所定のタイミングでリードライトチャネル回路43に供給される。タイミングの設定にあたってサーボセクター書き込み部79には書き込みウインドウ設定部71から書き込みウインドウ72の計数値が通知される。書き込みウインドウ72の計数値はサーボクロックの計数に関連づけられる。こうしてリードライトチャネル回路43から書き込み信号が出力される。書き込み信号に基づき書き込み素子44の書き込み電流は生成される。書き込み素子44はサーボセクター領域28を構築する。
【0047】
復調ウインドウ設定部75には局所域位置情報取得部81が接続される。局所域位置情報取得部81には同時にサーボクロック計数部68が接続される。局所域位置情報取得部81は、サーボクロックの計数値C1に基づき磁気ディスク14上で半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。計数値C1は特定の局所域内で半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。こういった位置の特定にあたって磁気ディスク14上で円周方向にスパイラルサーボパターン55の位置は特定される。円周方向位置の特定にあたって局所域位置情報取得部81にはサーボクロック計数部68からサーボクロックの計数値が供給される。局所域位置情報取得部81はスパイラルサーボパターン55の復調信号に基づきサーボクロックの計数値C1を特定する。
【0048】
図8に示されるように、読み出し素子35がスパイラルサーボパターン55を横切ると、再生信号RSの振幅は時間軸に沿って「菱形」を形作る。この菱形では時間軸に直交する1対角線が最大振幅に相当する。この対角線は、スパイラルサーボパターン55上に形成される読み出し素子35の移動経路MPの中間位置に対応する。振幅の時間変化は当該対角線に基づき対称形を形成する。したがって、時間軸の前半域で1対のギャップ62の間に特定される再生信号RSの面積A1と、時間軸の後半域で1対のギャップ62の間に特定される再生信号RSの面積A2とが比較されると、ギャップ62に対して対角線の相対位置Cfは特定されることができる。再生信号RSの面積A1、A2は例えば積分器で算出されればよい。その他、再生信号RSの「菱形」の全面積A0と時間軸の中間域の面積A3とに基づき相対位置Cfは特定されることができる。中間域は、1対のギャップ62に挟まれつつ対角線を含む領域、すなわち、面積A1および面積A2に挟まれる領域に相当する。その一方で、ギャップ62の位置はサーボクロックの計数に関連づけられる。すなわち、ギャップ62の位置はサーボクロックの計数値C0で特定されることができる。
【0049】
【数2】
こうして計数の折り返しごとにサーボクロックの計数値C1に基づき再生信号RSの最大振幅の位置は特定されることができる。読み出し素子35の移動経路上でスパイラルサーボパターン55の位置は特定される。
【0050】
図7に示されるように、復調ウインドウ設定部75にはスパイラル切り替え設定部82が接続される。同時に、スパイラル切り替え設定部82には書き込みウインドウ設定部71が接続される。スパイラル切り替え設定部82は復調ウインドウ76と書き込みウインドウ72とを比較する。例えば、復調ウインドウ76と書き込みウインドウ72との間隔が所定のクロック数を下回ると、後述されるように、スパイラル切り替え設定部82はスパイラルサーボパターン55の切り替えを決定する。スパイラル切り替え設定部82は復調ウインドウ設定部75にスパイラルサーボパターン55の切り替えを指示する。図9に示されるように、復調ウインドウ設定部75は円周方向に沿って現在の復調対象のスパイラルサーボパターン55からその前後のスパイラルサーボパターン55に復調ウインドウ76を移動させる。スパイラルサーボパターン55の切り替えに応じてスパイラル切り替え設定部82は計数の補正値C2を生成する。こういった補正値C2は、1本のサーボセクター領域28に割り当てられるスパイラルサーボパターン55の本数と所定値CWとに基づき決定される。例えば図9に示されるように、磁気ディスク14の回転方向に切り替え後のスパイラルサーボパターン55が設定される場合には、補正値C2は次式に基づき設定される。
【0051】
【数3】
反対に、磁気ディスク14の回転方向と反対向きに切り替え後のスパイラルサーボパターン55が設定される場合には、補正値C2は次式に基づき設定される。
【0052】
【数4】
補正値C2の初期値には「0(ゼロ)」が設定される。
【0053】
図7に示されるように、復調ウインドウ設定部75には広域位置情報取得部83が接続される。広域位置情報取得部83には同時にサーボクロック計数部68が接続される。広域位置情報取得部83は、サーボクロックの計数値C3に基づき磁気ディスク14上で半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。計数値C3は、記録域の最外周56aおよび最内周56bの間で磁気ディスク14の半径方向に前述の局所域の位置を特定する。こういった位置の特定にあたってサーボクロックの計数の折り返し回数Nsが計数される。例えば電磁変換素子の移動時にサーボクロックの計数値に規定値以上の減少が検出されると、次式に従って折り返し回数Nsが特定される。
【0054】
【数5】
反対に、電磁変換素子の移動時にサーボクロックの計数値に規定値以上の増加が検出されると、次式に従って折り返し回数Nsは特定される。
【0055】
【数6】
折り返し回数Nsとサーボクロックの所定値CWすなわち計数の最大値とに基づき次式に従って計数値C3は算出される。
【0056】
【数7】
折り返し回数Nsの初期値には「0(ゼロ)」が設定される。
【0057】
局所域位置情報取得部81、スパイラル切り替え設定部82および広域位置情報取得部83には全域位置情報算出部84が接続される。全域位置情報算出部84は、計数値C1、補正値C2および計数値C3に基づき磁気ディスク14上で半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。計数値C1、補正値C2および計数値C3の総クロック数Ctが算出される。
【0058】
【数8】
算出にあたって計数値C1、補正値C2および計数値C3は単純に足し合わせられる。総クロック数Ctは記録域の最外周56aおよび最内周56bの間で磁気ディスク14の半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。
【0059】
全域位置情報算出部84には位置誤差信号生成部85が接続される。位置誤差信号生成部85には同時に書き込みトラック特定部73が接続される。位置誤差信号生成部85は、書き込みトラック特定部73で指定される計数値Rに全域位置情報算出部84の総クロック数Ctを照らし合わせる。計数値と総クロック数Ctとの間で差分が算出される。この差分は位置誤差信号PESに相当する。位置誤差信号PESはボイスコイルモーター23に供給される。位置誤差信号PESの大きさに応じてボイスコイルモーター23の駆動電流は設定される。その結果、電磁変換素子はスパイラルサーボパターン55に基づき任意の記録トラック上に位置決めされることができる。
【0060】
次に、位置決めプログラムの実行に基づきCPU52で実現されるスパイラルサーボ制御の処理動作を説明する。図10に示されるように、ステップS1で初期化が実施される。磁気ディスク14の回転は開始する。一定の回転速度が維持される。サーボクロックは計数される。サーボクロックは磁気ディスク14の回転角変化に同期して変化する。クロックパルスが刻まれる。サーボクロックは計数される。計数にあたって前述のサーボクロック計数部68の機能が実現される。同時に所定の変数は初期化される。
【0061】
続くステップS2で書き込みウインドウ72が設定される。書き込みウインドウ72の設定にあたって前述の書き込みウインドウ設定部71の機能が実現される。ステップS3で書き込みトラックが特定される。最初の書き込みトラックの特定方法は後述される。例えば最内周の記録トラックには計数値の初期値「Cs」が設定される。ステップS4でトラック番号Ptが特定される。トラック番号Ptの設定にあたって前述のトラック番号設定部74の機能が実現される。ここでは、計数値Rに初期値「Cs」が設定される。その後、ステップS5でCPU52はスパイラルサーボパターン55の復調信号の有無を確認する。
【0062】
ステップS5で復調が確認されると、ステップS6で復調ウインドウ76が設定される。こうした復調ウインドウ76の設定にあたって前述の復調ウインドウ設定部75の機能が実現される。CPU52にはスパイラルサーボパターン55の復調信号が取り込まれる。ステップS7でCPU52は復調信号に基づき局所域位置情報を取得する。取得にあたって前述の局所域位置情報取得部81の機能が実現される。その結果、例えば図8に示されるように、計数値C1が特定される。1円周線上でスパイラルサーボパターン55の位置は特定される。
【0063】
ステップS8でスパイラルサーボパターン55の切り替えの必要性が判断される。判断にあたって前述のスパイラル切り替え設定部82の機能が実現される。復調ウインドウ76と書き込みウインドウ72との間隔Tcが所定のクロック数以上に確保されると、補正値C2には前回値が維持される。CPU52の処理動作はステップS9に進む。ステップS9で復調信号に基づき広域位置情報が取得される。取得にあたって前述の広域位置情報取得部83の機能が実現される。
【0064】
続くステップS10でCPU52は全域位置情報を算出する。算出にあたって前述の全域位置情報算出部84の機能が実現される。総クロック数Ctが算出される。こうしてスパイラルサーボパターン55の復調信号にはサーボクロックの計数値が関連づけられる。総クロック数Ctは磁気ディスク14上で半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。
【0065】
続くステップS11でCPU52は位置誤差信号PESを生成する。生成にあたって前述の位置誤差信号生成部85の機能が実現される。位置誤差信号PESはボイスコイルモーター23に供給される。位置誤差信号PESに基づき電磁変換素子は所定の円形記録トラック上に位置決めされる。こうして電磁変換素子が位置決めされると、ステップS12で磁気ディスク14にサーボ情報は書き込まれる。書き込みにあたって前述のサーボセクター書き込み部79の機能は実現される。サーボセクター領域28は構築される。サーボ情報の作成にあたって前述のサーボ情報作成部78の機能が実現される。サーボ情報ではトラック番号およびセクター番号が特定される。トラック番号の特定にあたって前述のトラック番号設定部74の機能が実現される([数1])。セクター番号の特定にあたって前述のセクター番号設定部77の機能が実現される。ここで、セクター番号はスパイラルサーボパターン55の通過回数Hに基づき決定される。ただし、スパイラルサーボパターンの切り替え時に磁気ディスク14の回転方向と反対向きに切り替え後のスパイラルサーボパターン55が設定される場合にはセクター番号は補正される。すなわち、磁気ディスク14の回転方向と反対向きに切り替え後のスパイラルサーボパターン55が設定された直後に電磁変換素子がスパイラルサーボパターン55を通過すると、セクター番号は次式で決定される。
【0066】
【数9】
それ以外の状況で電磁変換素子がスパイラルサーボパターン55を通過すると、セクター番号は次式で決定される。
【0067】
【数10】
ただし、ステップS3で最初の書き込みトラックが特定されるまで、セクター番号は次式で決定される。
【0068】
【数11】
こうして1サーボセクター領域28でサーボパターンが書き込まれると、続くステップS13でセクター番号は更新される。
【0069】
ステップS14でセクター番号と閾値とが比較される。閾値は磁気ディスク14の1回転を特定する。セクター番号が閾値を下回ると、CPU52の処理動作はステップS5に戻る。ステップS5で復調が確認されると、再びステップS6〜S13の処理が実行される。磁気ディスク14の回転に応じて全てのサーボセクター領域28でサーボパターンの書き込みが完了すると、磁気ディスク14上で1本の円形記録トラックが確立される。CPU52の処理動作はステップS15に移行する。ステップS15では、確立された円形記録トラックが最終トラックか否かが判定される。その円形記録トラックが最終トラックでなければ、CPU52の処理動作はステップS3に戻る。ステップS3で計数値の初期値「Cs」にトラックピッチ相当クロック数Tpが加算される。こうしてトラックピッチ相当クロック数Tpが加算されるたびに、最初の円形記録トラックから1本ずつ外側に円形記録トラックは特定されていく。ステップS4でトラック番号Ptは更新される。その後、前述と同様に、ステップS11で位置誤差信号PESは生成される。電磁変換素子は、指定された円形記録トラック上に位置決めされる。前述と同様にステップS5〜S14の処理が繰り返される結果、磁気ディスク14上で再び1本の円形記録トラックが確立される。
【0070】
図9に示されるように、復調ウインドウ76と書き込みウインドウ72との間隔Tcが所定のクロック数を下回ると、ステップS16でCPU52は復調ウインドウ76を設定し直す。復調ウインドウ76のタイミングは早められる。現在の復調対象のスパイラルサーボパターン55から前方(電磁変換素子の移動方向に上流側)に復調ウインドウ76は移動する。こうしてスパイラルサーボパターン55の切り替えは実施される。こうしたスパイラルサーボパターン55の切り替えに応じて例えば前述の[数3]に従って補正値C2が算出される。スパイラルサーボパターン55の切り替えのたびに補正値C2は更新される。
【0071】
ステップS9では、サーボクロックの計数値に規定値以上の減少が検出されるたびに折り返し回数Nsは更新される。更新された折り返し回数Nsにサーボクロックの所定値CWが乗算される。こうして計数値C3は算出される。こうした計数値C3によれば、サーボクロックの計数は所定値CWで折り返されるにも拘わらず、電磁変換素子の位置は磁気ディスク14の半径方向に全域にわたってサーボクロックの計数値で表現されることができる。
【0072】
ステップS15で確立された円形記録トラックが最終トラックに認定されると、CPU52の処理動作は終了する。こうして磁気ディスク14の全域にわたって円形記録トラックのサーボパターンは書き込まれる。以上のような位置決めの処理動作によれば、個々の円形記録トラックはサーボクロックの総クロック数Ctで正確に特定されることができる。磁気ディスク14にサーボ情報は正確に書き込まれることができる。
【0073】
次に、スパイラルサーボ制御の初期動作を説明する。この初期動作に基づき前述のステップS3で最初の書き込みトラックは特定される。図11に示されるように、ステップT1で電磁変換素子は記録域の最内周56bに位置決めされる。このとき、例えばキャリッジアーム19は最大限にスピンドルモーター15のスピンドル軸に向かって駆動される。ボイスコイルモーター23に駆動電流が供給される。支軸18回りでキャリッジ16は回転する。キャリッジ16はストッパ−(図示されず)に突き当てられる。
【0074】
ステップT2で目標の計数値Rに暫定値が設定される。暫定値には任意の数値が設定されればよい。その他、計数値Rは最初のスパイラルサーボパターン55の復調後に設定されてもよい。同時に、折り返し回数Nsおよび補正値C2に初期値としてゼロが設定される。その後、ステップT3でCPU52はスパイラルサーボパターン55の復調信号の有無を確認する。
【0075】
ステップT3で復調が確認されると、ステップT4で復調ウインドウ76が設定される。設定にあたって、前述のステップS6と同様に、復調ウインドウ設定部75の機能が実現される。CPU52にはスパイラルサーボパターン55の復調信号が取り込まれる。ステップT5でCPU52は復調信号に基づき局所域位置情報を取得する。取得にあたって、前述のステップS7と同様に、局所域位置情報取得部81の機能が実現される。その結果、例えば図12に示されるように、計数値Cbが特定される。この計数値Cbは前述の計数値Rに当てられる。続くステップT6で広域位置情報が取得される。取得にあたって、前述のステップS9と同様に、広域位置情報取得部83の機能が実現される。計数値C3が算出される。続くステップT7で全域位置情報が算出される。算出にあたって、前述のステップS10と同様に、全域位置情報算出部84の機能が実現される。続くステップT8で位置誤差信号PESが生成される。生成にあたって、前述のステップS11と同様に、位置誤差信号生成部85の機能が実現される。続くステップT9で位置誤差信号PESは記録される。ここでは、ステップT3〜T9の処理動作の実現にあたって前述のステップS5〜S11の処理動作はそのまま流用されることができる。
【0076】
ステップT10でスパイラルサーボパターンの通過回数Hが計数される。通過回数Hの初期値には予め「0(ゼロ)」が設定される。ステップT11で通過回数Hと閾値とが比較される。閾値には任意の数値(自然数)が設定されればよい。例えば閾値には磁気ディスク14の複数回転分の通過回数が設定されればよい。通過回数Hが閾値に達していなければ、CPU52の処理動作はステップT3に戻る。その後、ステップT3〜T9の処理動作が実施される。ステップT11で通過回数Hが閾値に達すると、CPU52の処理動作はステップT12に進む。ステップT12で最内周トラックが特定される。最内周トラックの特定にあたって、ステップT9で記録された数周分の位置誤差信号が参照される。図12に示されるように、電磁変換素子がスパイラルサーボパターン55を通過するたびに、目標の計数値R(=Cb)と総クロック数Ctとの間に誤差Cd1、Cd2、…が特定される。こういった誤差Cd1、Cd2、…に基づき電磁変換素子の半径方向の移動範囲で電磁変換素子の位置は正確にサーボクロックの計数値に関連づけられることができる。その結果、図12に示されるように、最内周の円形記録トラックTRの計数値Ciは次式で特定されることができる。
【0077】
【数12】
すなわち、この初期動作では、スパイラルサーボパターン55の偏心に伴う電磁変換素子の周期的な変位にも拘わらず、電磁変換素子の位置は半径方向に正確に特定されることができる。こうして最内周の円形記録トラックが特定されると、ステップT13で、書き込み開始トラックは特定される。書き込み開始トラックには最内周の円形記録トラックが当てはめられればよい。すなわち、書き込み開始トラックの計数値にはCiが当てられる。
【0078】
以上のようなスパイラルサーボ制御では、「菱形」の再生信号RSに基づき電磁変換素子の微小変位が高い精度で特定されることができるだけでなく、キャリッジアーム19の可動範囲全域にわたって電磁変換素子の位置が高い精度で特定されることができる。したがって、前述の初期動作のように、キャリッジ16がストッパーに突き当てられた状態から直接にスパイラルサーボパターン55に電磁変換素子は位置決めされることができる。その結果、いわゆる補助サーボパターンの書き込みは省略されることができる。サーボセクター領域28の構築にあたってSTWの処理動作は簡素化されることができる。こういった簡素化は作業時間の短縮化および製造コストの低減に寄与する。
【0079】
なお、前述の位置決めプログラムで実現される処理動作の全体もしくは一部は専用のハードウェアに基づき実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】磁気記憶媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】磁気ディスクの表面の構造を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図3】一具体例に係るサーボセクター領域の構造を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図4】トラッキングサーボの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図5】スパイラルサーボパターンの概念を示す磁気ディスクの平面図である。
【図6】スパイラルサーボパターンの詳細およびスパイラルサーボパターンに基づく再生信号の概念を概略的に示すスパイラルサーボパターンの拡大部分平面図である。
【図7】CPU内に構築される位置決め装置の機能ブロックを概略的に示すブロック図である。
【図8】スパイラルサーボパターンとサーボクロックの計数との関係を概略的に示すスパイラルサーボパターンの拡大部分平面図である。
【図9】スパイラルサーボパターンの切り替えを概念的に示すスパイラルサーボパターンの拡大部分平面図である。
【図10】スパイラルサーボ制御の処理動作を概略的に示すフローチャートである。
【図11】スパイラルサーボ制御の初期動作を概略的に示すフローチャートである。
【図12】スパイラルサーボ制御の初期動作中に電磁変換素子の移動経路を概略的に示す磁気ディスクの表面の拡大部分平面図である。
【符号の説明】
【0081】
14 記録媒体(磁気ディスク)、28 サーボセクター、35 電磁変換素子(読み出し素子)、44 電磁変換素子(書き込み素子)、55 スパイラルサーボパターン、φ 傾斜角。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハードディスク駆動装置(HDD)といった記録媒体駆動装置に関し、特に、そういった記録媒体駆動装置で電磁変換素子の位置決めに利用される位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク駆動装置の分野でいわゆるスパイラルサーボは広く知られる。このスパイラルサーボでは磁気ディスクの表面にスパイラルサーボパターンが確立される。スパイラルサーボパターンは記録域の最内周から最外周までスパイラル線に沿って延びる。スパイラル線は記録域の全域で円周線に対し規定の傾斜角を維持する。ハードディスク駆動装置では磁気ディスクの回転に応じて電磁変換素子がスパイラルサーボパターンから磁気情報を読み取る。読み取った磁気情報に基づき電磁変換素子は磁気ディスクの半径方向に位置決めされる。こうして位置決めされた電磁変換素子は磁気ディスク上のサーボセクターにサーボパターンを書き込む。
【0003】
スパイラルサーボパターンは高周波域を備える。高周波域では円周方向に交互に磁極が配列される。電磁変換素子が高周波域を横切ると、高周波の再生信号が出力される。同時に、スパイラルサーボパターンには円周方向に規定の間隔で同期マークが形成される。同期マークは高周波の再生信号同士の間にギャップを形成する。ギャップ同士の間隔はトラック幅に相当する。同期マークの働きで1記録トラックごとに電磁変換素子は位置決めされることができる。
【特許文献1】米国特許第6965489号明細書
【特許文献2】米国特許第6943978号明細書
【特許文献3】米国特許第6507450号明細書
【特許文献4】米国特許第7113362号明細書
【特許文献5】米国特許第7002761号明細書
【特許文献6】米国特許第7307806号明細書
【特許文献7】米国特許第7307807号明細書
【特許文献8】米国特許第7139144号明細書
【特許文献9】米国特許第7088533号明細書
【特許文献10】米国特許第7167333号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のスパイラルサーボでは、電磁変換素子がスパイラルサーボパターンを横切る際に復調される電磁変換素子の微小変位のみに基づき電磁変換素子は位置決めされる。したがって、サーボセクター内でサーボパターンの書き込みが開始される際に、磁気ディスク上には限定された領域でサーボセクター内にサーボパターン(スパイラルサーボパターンとは異なる通常のサーボパターンすなわち補助サーボパターン)が確立されなければならない。まず、補助サーボパターンに基づき書き込みの開始位置に電磁変換素子は位置決めされる。その後、サーボ情報の検出元は補助サーボパターンからスパイラルサーボパターンに切り替えられる。こうして電磁変換素子はスパイラルサーボパターンに基づきオントラックされる。
【0005】
この場合、サーボトラックライター(STW)の操作にあたって補助サーボパターンの書き込みといった余分な工程が要求される。しかも、実際には補助サーボパターンとスパイラルサーボパターンとの間で十分に偏心が除去されることはできないことから、補助サーボパターンからスパイラルサーボパターンへの切り替えそのものに困難が生じてしまう。
【0006】
スパイラルサーボではスパイラルサーボパターンの同期マークの間隔が復調信号から読み取られる電磁変換素子の位置精度に影響を与える。前述のように同期マークの間隔がトラック幅に限定されると、信号の復調の観点から同期マークの間隔が最適化されることはできない。復調ノイズは増加する。復調信号に基づく電磁変換素子の位置精度が劣化してしまう。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、一層の位置決め精度の向上に寄与することができる電磁変換素子の位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、一形態に係る電磁変換素子の位置決め方法は、記録媒体上で半径方向に延びるサーボセクターごとに、記録媒体の回転角変化に同期して変化するサーボクロックを計数する工程と、記録媒体上で円周方向に等間隔で配置され、半径方向の所定の領域にわたって円周線に対し規定の傾斜角を維持するスパイラル線に沿って磁性体を配列するスパイラルサーボパターンから電磁変換素子で磁気情報を読み取る工程と、読み取った磁気情報に基づき、当該円周線上でスパイラルサーボパターンの位置を特定する工程と、特定した位置にサーボクロックの計数値を関連づける工程と、関連づけた計数値に基づき半径方向に電磁変換素子の位置を特定する工程とを備える。
【0009】
こういった位置決め方法では、サーボクロックの計数に基づき電磁変化素子の移動経路上でスパイラルサーボパターンの位置は特定されることができる。この位置決め方法では位置決めにあたってスパイラルサーボパターンにトラック幅に相当する間隔で形成される同期マークは利用されない。したがって、再生信号の乱れすなわちノイズは抑制されることができる。電磁変換素子の位置決め精度は高められることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、一層の位置決め精度の向上に寄与することができる電磁変換素子の位置決め方法は提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1は磁気記憶媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)を有する。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばアルミニウムといった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0013】
収容空間には磁気記憶媒体の一具体例すなわち1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモーター15のスピンドル軸に装着される。スピンドルモーター15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。後述されるように、個々の磁気ディスク14はいわゆる垂直磁気記憶媒体に構成される。
【0014】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、ベース13の底板から垂直方向に立ち上がる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には、支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば押し出し成型に基づきアルミニウムから成型されればよい。
【0015】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャ上には浮上ヘッドスライダー22が支持される。フレキシャに基づき浮上ヘッドスライダー22はヘッドサスペンション21に対してその姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダー22にはヘッド素子すなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。
【0016】
電磁変換素子は書き込みヘッド素子と読み出しヘッド素子とを備える。書き込みヘッド素子にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで磁界を生成する。磁界は、主磁極の働きで、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向から磁気ディスク14に作用する。この磁界の働きで磁気ディスク14に情報は書き込まれる。その一方で、読み出しヘッド素子には巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子が用いられる。GMR素子やTMR素子では、磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてスピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から情報は読み出される。
【0017】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダー22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力と負圧およびヘッドサスペンション21の押し付け力とは釣り合う。こうした釣り合いに基づき磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダー22は浮上し続けることができる。
【0018】
キャリッジブロック17にはボイスコイルモーター(VCM)23が連結される。ボイスコイルモーター23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダー22の浮上中に支軸18回りでキャリッジアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダー22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間で同心円状の記録トラックを横切ることができる。こうした浮上ヘッドスライダー22の移動に基づき電磁変換素子は目標記録トラックに対して位置決めされる。
【0019】
ヘッドサスペンション21の先端には、ヘッドサスペンション21の先端から前方に延びるロードタブ24が区画される。ロードタブ24はキャリッジアーム19の揺動に基づき磁気ディスク14の半径方向に移動することができる。ロードタブ24の移動経路上には磁気ディスク14の外側でランプ部材25が配置される。ランプ部材25はベース13に固定される。ロードタブ24はランプ部材25に受け止められる。ランプ部材25は例えば硬質プラスチック材料から成型されればよい。
【0020】
ランプ部材25にはロードタブ24の移動経路に沿って延びるランプ25aが形成される。このランプ25aは磁気ディスク14の回転軸から遠ざかるにつれて磁気ディスク14の表面を含む仮想平面から遠ざかる。したがって、キャリッジアーム19が支軸18回りで磁気ディスク14の回転軸から遠ざかると、ロードタブ24はランプ25aを上っていく。こうして浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の表面から引き剥がされる。浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14から外側に待避する。反対に、キャリッジアーム19が支軸18回りに磁気ディスク14の回転軸に向かって揺動すると、ロードタブ24はランプ25aを下っていく。回転中の磁気ディスク14から浮上ヘッドスライダー22には浮力が作用する。ランプ部材25およびロードタブ24は協働でいわゆるロードアンロード機構を構成する。
【0021】
図2に示されるように、磁気ディスク14の表裏面には、磁気ディスク14の半径方向に沿って湾曲しつつ延びる複数筋(例えば200本)のサーボセクター領域28が規定される。サーボセクター領域28は円周方向に等間隔で配置される。サーボセクター領域28にはサーボパターンが確立される。サーボパターンに書き込まれる磁気情報は浮上ヘッドスライダー22上の電磁変換素子で読み取られる。サーボパターンから読み出される情報に基づき浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の半径方向に位置決めされる。位置決めに応じて1本の円形の記録トラックが確立される。浮上ヘッドスライダー22の半径方向変位に基づき同心円状に記録トラックは確立される。サーボセクター領域28の湾曲は電磁変換素子の移動経路に基づき設定される。
【0022】
隣接するサーボセクター領域28の間にはデータ領域29が確保される。サーボパターンに基づく位置決めに応じてデータ領域29内で電磁変換素子は記録トラックを辿る。電磁変換素子の書き込みヘッド素子は記録トラックに沿って磁気情報を書き込む。電磁変換素子の読み出しヘッド素子は記録トラックに沿って磁気情報を読み出す。
【0023】
図3は一具体例に係るサーボセクター領域28を示す。各サーボセクター領域28では、上流から順番にプリアンブル域31、サーボマークアドレス域32および位相バースト域33が区画される。プリアンブル域31では、例えば、磁気ディスク14の半径線上で延びる複数筋の磁化パターン34が確立される。磁化パターン34は磁気ディスク14の周方向に等間隔で配置される。こういったプリアンブル域31の働きで読み出し素子35から読み出される信号の同期が確保される。同時に、読み出し素子35から読み出される信号に基づきゲインが調整される。ここで、「上流」や「下流」は、磁気ディスク14の回転中に規定される浮上ヘッドスライダー22の走行方向に基づき定義される。
【0024】
サーボマークアドレス域32には特定のパターンで磁極すなわちN極およびS極が配置される。磁極の配置はセクター番号やトラック番号を反映する。同時に、サーボマークアドレス域32には磁気ディスク14の半径線上で延びる複数筋の磁化パターンが確立される。この磁化パターンはサーボクロック信号を特定する。このサーボクロック信号に基づき後述の位相は特定される。サーボマークアドレス域32の働きでセクター番号やトラック番号は特定される。同時に、プリアンブル域31およびサーボマークアドレス域32の働きで位相の基準タイミングは特定される。
【0025】
位相バースト域33には、磁気ディスク14の半径線に対して所定の傾斜角で延びる複数本の磁化パターンすなわち位相バーストライン36が確立される。位相バーストライン36の確立にあたって位相バースト域38には偶数(even)域33aと奇数(odd)域33bとが交互に配置される。偶数域33aおよび奇数域33bは対で利用される。偶数域33aでは、位相バーストライン36を通過する読み出し素子35が磁気ディスク14の内周側にずれればずれるほど、位相は遅れる。反対に、奇数域33bでは、位相バーストライン36を通過する読み出し素子35が磁気ディスク14の外周側にずれればずれるほど、位相は早まる。
【0026】
図4に示されるように、ボイスコイルモーター23にはモータードライバー回路41が接続される。モータードライバー回路41はボイスコイルモーター23に駆動電流を供給する。ボイスコイルモーター23は、供給される駆動電流に基づき指定の変位量で変位することができる。こうした変位量はキャリッジブロック17の回転量(回転角)に従って設定される。
【0027】
ヘッドIC42にはリードライトチャネル回路43が接続される。リードライトチャネル回路43は決められた変復調方式に従って信号の変調や復調を実施する。変調後の信号すなわち書き込み信号はヘッドIC42に供給される。ヘッドIC42は書き込み信号を増幅する。増幅後の書き込み信号は書き込み素子44に供給される。読み出し素子35から出力される読み出し信号はヘッドIC42で増幅された後にリードライトチャネル回路43に供給される。リードライトチャネル回路43は読み出し信号を復調する。
【0028】
モータードライバー回路41およびリードライトチャネル回路43にはハードディスクコントローラー(HDC)45が接続される。HDC45はモータードライバー回路41に制御信号を供給する。この制御信号に基づきモータードライバー回路41の出力すなわち駆動電流は制御される。HDC45は同様にリードライトチャネル回路43に変調前の書き込み信号を送り込むとともにリードライトチャネル回路43から復調後の読み出し信号を受け取る。変調前の書き込み信号は例えばホストコンピューターから送り込まれるデータに基づきHDC45で生成されればよい。そういったデータはコネクター46からHDC45に受け渡されればよい。コネクター46には、例えばホストコンピューターのメインボードから延びる制御信号用ケーブルや電源用ケーブル(ともに図示されず)が接続されればよい。同様に、HDC45は復調後の読み出し信号に基づきデータを再現する。再現されたデータはホストコンピューターに向けてコネクター46から出力されればよい。こうしたデータの送受信にあたってHDC45は例えばバッファメモリー47を利用することができる。バッファメモリー47は一時的にデータを保存する。バッファメモリー47には例えばSDRAM(シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリー)が用いられればよい。
【0029】
HDC45にはマイクロプロセッサーユニット(MPU)48が接続される。MPU48は、例えばROM(リードオンリーメモリー)51に記憶されるプログラムに基づき動作するCPU(中央演算処理装置)52を備える。プログラムには一実施形態に係る電磁変換素子の位置決めプログラムが含まれる。電磁変換素子の位置決めプログラムはいわゆるファームウェアとして提供されればよい。CPU52はその動作の実現にあたって例えばフラッシュROM53からデータを取得することができる。そういったプログラムやデータは一時的にRAM(ランダムアクセスメモリー)54に格納されることができる。ROM51やフラッシュROM53、RAM54はCPU52に直接に接続されればよい。
【0030】
トラッキングサーボ制御にあたって読み出し素子35が順番にプリアンブル域31、サーボマークアドレス域32および位相バースト域33を通過すると、読み出し素子35から信号が出力される。サーボマークアドレス域32の通過に基づきHDC45はサーボクロック信号を生成する。続いて位相バースト域33の通過に基づきHDC45は偶数域および奇数域ごとに信号波形を取り込む。HDC45は高速フーリエ変換に基づき信号波形の平均化を実施する。HDC45は偶数域および奇数域ごとにサーボクロック信号および信号波形に基づき位相差を演算する。こうして演算された位相差に基づきHDC45は位置誤差信号を出力する。位置誤差信号は制御信号としてボイスコイルモーター23に供給される。その結果、電磁変換素子は確実に目標の記録トラックを追従することができる。
【0031】
いま、磁気ディスク14にサーボセクター領域28が構築される場面を想定する。まず、真っ新な磁気ディスク14にスパイラルサーボパターンが書き込まれる。スパイラルサーボパターンの書き込みにあたってサーボトラックライター(STW)が用いられる。磁気ディスク14はSTWに装着される。STWは一定の回転速度で磁気ディスク14を回転させる。同時に、STWは一定の移動速度で半径方向に書き込み素子を移動させる。書き込み素子は例えば所定の浮上ヘッドスライダーに搭載されればよい。浮上ヘッドスライダーは例えば磁気ディスク14の半径線上で移動すればよい。書き込み素子から磁気ディスク14に磁界は作用する。
【0032】
図5に示されるように、スパイラルサーボパターン55は円周方向に等間隔で配置される。スパイラルサーボパターン55の本数はサーボセクター領域28の本数の倍に設定される。すなわち、1本のサーボセクター領域28に対して2本のスパイラルサーボパターン55が割り当てられる。ただし、1本のサーボセクター領域28に対して3本以上のスパイラルサーボパターンが割り当てられてもよい。そういった場合でも、スパイラルサーボパターンは円周方向に等間隔に配置されればよい。図中、便宜上、サーボセクター領域28およびスパイラルサーボパターン55は間引いて表示される。
【0033】
個々のスパイラルサーボパターン55は記録域の最外周56aから最内周56bまでスパイラル線に沿って延びる。記録域は、書き込み素子44で磁気情報を書き込むことができる最大範囲に相当する。スパイラル線は、図6に示されるように、記録域の全域にわたって円周線に対し規定の傾斜角φを維持する。
【0034】
個々のスパイラルサーボパターン55はスパイラル線に沿って磁化領域を配列する。円周方向にN極およびS極は交互に配置される。こういった配置に基づき高周波域57が確立される。磁化領域の半径方向長さは記録トラックの幅TWに設定される。半径方向長さは磁気ディスク14の半径線上で測定される。こういった高周波域57の確立にあたって書き込み素子44には所定の書き込みクロックに従って高周波の書き込み信号が供給される。
【0035】
スパイラルサーボパターン55には円周方向に規定の間隔で同期マーク58が形成される。同期マーク58は例えば単一の磁極で構成される。こういった同期マーク58の確立にあたって書き込み素子44には一定値の書き込み信号が供給される。一定値の書き込み信号は書き込みクロックの規定数のクロックパルスにわたって維持される。こうして高周波は途切れる。
【0036】
読み出し素子35が高周波域57を横切ると、高周波の再生信号61が読み出し素子35から出力される。再生信号61の振幅は徐々に増大する。読み出し素子35がトラックの幅TWでスパイラルサーボパターン55上に横たわると、再生信号61は最大振幅を示す。その後、再生信号61の振幅は徐々に縮小する。同期マーク58は高周波の再生信号61同士の間にギャップ62を形成する。ギャップ62で高周波の再生信号61同士は隔てられる。同期マーク58同士の間隔は任意に設定される。ただし、読み出し素子35の再生信号上でギャップ62の位置が最適化されれば、再生信号すなわち高周波の再生信号61で乱れすなわちノイズは最大限に抑制されることができる。同期マーク58同士の間隔は必ずしもトラックピッチを特定する必要はない。同期マーク58は円周方向に等間隔で配置される。読み出し素子35が1本のスパイラルサーボパターン55を横切る際に読み出し素子35は少なくとも2本の同期マーク58を通過する。
【0037】
スパイラルサーボパターン55の書き込みが完了すると、磁気ディスク14はSTWから下ろされる。書き込み後の磁気ディスク14はハードディスク駆動装置11に組み込まれる。続いて、個々のハードディスク駆動装置11ごとに、書き込まれたスパイラルサーボパターン55に基づきサーボセクター領域28の磁化が書き込まれる。この書き込みにあたってCPU52は一実施形態に係る電磁変換素子の位置決めプログラムを実行する。このとき、CPU52は当該位置決めプログラムの実行に基づき電磁変換素子の位置決め装置として機能する。
【0038】
図7はCPU52内に構築される位置決め装置64の機能ブロックを概略的に示す。位置決め装置64はサーボクロック生成部65を備える。サーボクロック生成部65はサーボクロックを生成する。サーボクロックは磁気ディスク14の回転すなわち回転角変化に同期してパルスを刻む。こういったパルスの生成にあたってサーボクロック生成部65には例えばPLL(フェイズロックループ)回路66が接続されればよい。PLL回路66にはリードライトチャンネル回路43が接続される。リードライトチャンネル回路43は、スパイラルサーボパターン55の復調信号に基づきPLL回路66に位相情報を供給する。
【0039】
サーボクロック計数部68はサーボクロックを計数する。サーボクロック計数部68はサーボクロックの計数値すなわちカウント値を特定する。図8に示されるように、計数値が所定値CWに達すると、計数はリセットされる。リセット後、サーボクロック計数部68は再び計数を開始する。所定値CWは、隣接するサーボセクター領域28の間隔を特定する。すなわち、1つのリセットすなわち計数の折り返しに対して1つのサーボセクター領域28が割り当てられる。
【0040】
書き込みウインドウ設定部71は例えばサーボクロックの計数値に基づき書き込みウインドウ72を設定する。図8に示されるように、書き込みウインドウ72は所定の時間長さの時間枠を特定する。この時間枠内で書き込み素子44は書き込み動作を実施することができる。書き込みウインドウ72の枠外では書き込み素子44の書き込み動作は禁止される。書き込みウインドウ72は所定の周期で現れる。周期の設定にあたって所定値CW以下の計数値が用いられる。
【0041】
書き込みトラック特定部73はサーボクロックの計数値に基づき1本の記録トラックを特定する。指定された計数値に基づきサーボセクター領域28でプリアンブル域31の磁化、サーボマークアドレス域32の磁化および位相バースト域33の磁化が書き込まれると、物理トラックは確立される。例えば磁気ディスク14の半径方向外側に向かって順番に記録トラックが確立される場合には、書き込みトラック特定部73は、現在の計数値に、1トラックピッチに相当するクロック数Tp(以下「トラックピッチ相当クロック数」という)を足し合わせ新たに記録トラックを特定する。反対に、磁気ディスク14の半径方向内側に向かって順番に記録トラックが確立される場合には、書き込みトラック特定部73は、現在の計数値からトラックピッチ相当クロック数Tpを差し引き新たに記録トラックを特定する。いずれの場合でも、最内周(または最外周)の記録トラックには任意の計数値すなわち初期値Csが割り当てられればよい。この初期値Csに、記録トラックの本数から「1」を差し引いた数値とトラックピッチ相当クロック数Tpとの積が加算されると、計数値の最大値は導き出される。書き込みトラック特定部73は、後述のように、目標トラック設定部としても機能する。
【0042】
トラック番号設定部74はトラック番号を設定する。トラック番号の設定にあたってトラック番号設定部74には書き込みトラック特定部73から計数値Rが供給される。計数値Rから初期値Csが差し引かれた後に、その減算の結果がトラックピッチ相当クロック数Tpで除算されると、トラック番号Ptは特定される。
【0043】
【数1】
復調ウインドウ設定部75は例えばスパイラルサーボパターン55の復調信号に基づき復調ウインドウを設定する。図8に示されるように、復調ウインドウ76は例えばスパイラルサーボパターン55の復調信号に相当する時間枠を特定する。例えば、復調ウインドウ76の時間長さは復調信号の時間長さに等しく設定される。復調ウインドウ76はスパイラルサーボパターン55の復調信号に固定される。したがって、スパイラルサーボパターン55の復調信号が検知されるたびに復調ウインドウ76は現れる。復調ウインドウ76に基づき復調信号は取り出される。復調信号は前述のリードライトチャネル回路43から供給される。リードライトチャネル回路43には読み出し素子44から読み出し信号が供給される。
【0044】
復調ウインドウ設定部75にはセクター番号設定部77が接続される。セクター番号設定部77はスパイラルサーボパターン55の通過回数に基づきセクター番号を特定する。通過回数は復調ウインドウ76の出現回数に基づき認識される。出現回数が計数される。セクター番号の初期値は「0(ゼロ)」に設定されればよい。セクター番号の初期値は磁気ディスク14の1回転中で任意の1復調ウインドウ76に割り当てられる。セクター番号の最大値はサーボセクター領域28の本数に基づき設定される。初期値に「0」が設定される場合には、セクター番号の最大値は、サーボセクター領域28の本数から「1」を差し引いた数値に設定される。セクター番号設定部77は、後述のように、スパイラル通過計数部としても機能する。ただし、後述されるとおり、スパイラルサーボパターン55の切り替え時にはセクター番号は補正される。
【0045】
トラック番号設定部74およびセクター番号設定部77にはサーボ情報作成部78が接続される。サーボ情報作成部78にはトラック番号設定部74からトラック番号が通知される。同様に、サーボ情報作成部78にはセクター番号設定部77からセクター番号が通知される。サーボ情報作成部78はトラック番号およびセクター番号に基づきサーボ情報を作成する。
【0046】
サーボ情報作成部78にはサーボセクター書き込み部79が接続される。サーボ情報作成部78はサーボセクター書き込み部79にサーボ情報を通知する。サーボセクター書き込み部79はサーボ情報に基づきプリアンブル域31、サーボマークアドレス域32および位相バースト域33の磁化を設定する。サーボセクター書き込み部79には同時に書き込みウインドウ設定部71およびサーボクロック計数部68が接続される。設定された磁化は所定のタイミングでリードライトチャネル回路43に供給される。タイミングの設定にあたってサーボセクター書き込み部79には書き込みウインドウ設定部71から書き込みウインドウ72の計数値が通知される。書き込みウインドウ72の計数値はサーボクロックの計数に関連づけられる。こうしてリードライトチャネル回路43から書き込み信号が出力される。書き込み信号に基づき書き込み素子44の書き込み電流は生成される。書き込み素子44はサーボセクター領域28を構築する。
【0047】
復調ウインドウ設定部75には局所域位置情報取得部81が接続される。局所域位置情報取得部81には同時にサーボクロック計数部68が接続される。局所域位置情報取得部81は、サーボクロックの計数値C1に基づき磁気ディスク14上で半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。計数値C1は特定の局所域内で半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。こういった位置の特定にあたって磁気ディスク14上で円周方向にスパイラルサーボパターン55の位置は特定される。円周方向位置の特定にあたって局所域位置情報取得部81にはサーボクロック計数部68からサーボクロックの計数値が供給される。局所域位置情報取得部81はスパイラルサーボパターン55の復調信号に基づきサーボクロックの計数値C1を特定する。
【0048】
図8に示されるように、読み出し素子35がスパイラルサーボパターン55を横切ると、再生信号RSの振幅は時間軸に沿って「菱形」を形作る。この菱形では時間軸に直交する1対角線が最大振幅に相当する。この対角線は、スパイラルサーボパターン55上に形成される読み出し素子35の移動経路MPの中間位置に対応する。振幅の時間変化は当該対角線に基づき対称形を形成する。したがって、時間軸の前半域で1対のギャップ62の間に特定される再生信号RSの面積A1と、時間軸の後半域で1対のギャップ62の間に特定される再生信号RSの面積A2とが比較されると、ギャップ62に対して対角線の相対位置Cfは特定されることができる。再生信号RSの面積A1、A2は例えば積分器で算出されればよい。その他、再生信号RSの「菱形」の全面積A0と時間軸の中間域の面積A3とに基づき相対位置Cfは特定されることができる。中間域は、1対のギャップ62に挟まれつつ対角線を含む領域、すなわち、面積A1および面積A2に挟まれる領域に相当する。その一方で、ギャップ62の位置はサーボクロックの計数に関連づけられる。すなわち、ギャップ62の位置はサーボクロックの計数値C0で特定されることができる。
【0049】
【数2】
こうして計数の折り返しごとにサーボクロックの計数値C1に基づき再生信号RSの最大振幅の位置は特定されることができる。読み出し素子35の移動経路上でスパイラルサーボパターン55の位置は特定される。
【0050】
図7に示されるように、復調ウインドウ設定部75にはスパイラル切り替え設定部82が接続される。同時に、スパイラル切り替え設定部82には書き込みウインドウ設定部71が接続される。スパイラル切り替え設定部82は復調ウインドウ76と書き込みウインドウ72とを比較する。例えば、復調ウインドウ76と書き込みウインドウ72との間隔が所定のクロック数を下回ると、後述されるように、スパイラル切り替え設定部82はスパイラルサーボパターン55の切り替えを決定する。スパイラル切り替え設定部82は復調ウインドウ設定部75にスパイラルサーボパターン55の切り替えを指示する。図9に示されるように、復調ウインドウ設定部75は円周方向に沿って現在の復調対象のスパイラルサーボパターン55からその前後のスパイラルサーボパターン55に復調ウインドウ76を移動させる。スパイラルサーボパターン55の切り替えに応じてスパイラル切り替え設定部82は計数の補正値C2を生成する。こういった補正値C2は、1本のサーボセクター領域28に割り当てられるスパイラルサーボパターン55の本数と所定値CWとに基づき決定される。例えば図9に示されるように、磁気ディスク14の回転方向に切り替え後のスパイラルサーボパターン55が設定される場合には、補正値C2は次式に基づき設定される。
【0051】
【数3】
反対に、磁気ディスク14の回転方向と反対向きに切り替え後のスパイラルサーボパターン55が設定される場合には、補正値C2は次式に基づき設定される。
【0052】
【数4】
補正値C2の初期値には「0(ゼロ)」が設定される。
【0053】
図7に示されるように、復調ウインドウ設定部75には広域位置情報取得部83が接続される。広域位置情報取得部83には同時にサーボクロック計数部68が接続される。広域位置情報取得部83は、サーボクロックの計数値C3に基づき磁気ディスク14上で半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。計数値C3は、記録域の最外周56aおよび最内周56bの間で磁気ディスク14の半径方向に前述の局所域の位置を特定する。こういった位置の特定にあたってサーボクロックの計数の折り返し回数Nsが計数される。例えば電磁変換素子の移動時にサーボクロックの計数値に規定値以上の減少が検出されると、次式に従って折り返し回数Nsが特定される。
【0054】
【数5】
反対に、電磁変換素子の移動時にサーボクロックの計数値に規定値以上の増加が検出されると、次式に従って折り返し回数Nsは特定される。
【0055】
【数6】
折り返し回数Nsとサーボクロックの所定値CWすなわち計数の最大値とに基づき次式に従って計数値C3は算出される。
【0056】
【数7】
折り返し回数Nsの初期値には「0(ゼロ)」が設定される。
【0057】
局所域位置情報取得部81、スパイラル切り替え設定部82および広域位置情報取得部83には全域位置情報算出部84が接続される。全域位置情報算出部84は、計数値C1、補正値C2および計数値C3に基づき磁気ディスク14上で半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。計数値C1、補正値C2および計数値C3の総クロック数Ctが算出される。
【0058】
【数8】
算出にあたって計数値C1、補正値C2および計数値C3は単純に足し合わせられる。総クロック数Ctは記録域の最外周56aおよび最内周56bの間で磁気ディスク14の半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。
【0059】
全域位置情報算出部84には位置誤差信号生成部85が接続される。位置誤差信号生成部85には同時に書き込みトラック特定部73が接続される。位置誤差信号生成部85は、書き込みトラック特定部73で指定される計数値Rに全域位置情報算出部84の総クロック数Ctを照らし合わせる。計数値と総クロック数Ctとの間で差分が算出される。この差分は位置誤差信号PESに相当する。位置誤差信号PESはボイスコイルモーター23に供給される。位置誤差信号PESの大きさに応じてボイスコイルモーター23の駆動電流は設定される。その結果、電磁変換素子はスパイラルサーボパターン55に基づき任意の記録トラック上に位置決めされることができる。
【0060】
次に、位置決めプログラムの実行に基づきCPU52で実現されるスパイラルサーボ制御の処理動作を説明する。図10に示されるように、ステップS1で初期化が実施される。磁気ディスク14の回転は開始する。一定の回転速度が維持される。サーボクロックは計数される。サーボクロックは磁気ディスク14の回転角変化に同期して変化する。クロックパルスが刻まれる。サーボクロックは計数される。計数にあたって前述のサーボクロック計数部68の機能が実現される。同時に所定の変数は初期化される。
【0061】
続くステップS2で書き込みウインドウ72が設定される。書き込みウインドウ72の設定にあたって前述の書き込みウインドウ設定部71の機能が実現される。ステップS3で書き込みトラックが特定される。最初の書き込みトラックの特定方法は後述される。例えば最内周の記録トラックには計数値の初期値「Cs」が設定される。ステップS4でトラック番号Ptが特定される。トラック番号Ptの設定にあたって前述のトラック番号設定部74の機能が実現される。ここでは、計数値Rに初期値「Cs」が設定される。その後、ステップS5でCPU52はスパイラルサーボパターン55の復調信号の有無を確認する。
【0062】
ステップS5で復調が確認されると、ステップS6で復調ウインドウ76が設定される。こうした復調ウインドウ76の設定にあたって前述の復調ウインドウ設定部75の機能が実現される。CPU52にはスパイラルサーボパターン55の復調信号が取り込まれる。ステップS7でCPU52は復調信号に基づき局所域位置情報を取得する。取得にあたって前述の局所域位置情報取得部81の機能が実現される。その結果、例えば図8に示されるように、計数値C1が特定される。1円周線上でスパイラルサーボパターン55の位置は特定される。
【0063】
ステップS8でスパイラルサーボパターン55の切り替えの必要性が判断される。判断にあたって前述のスパイラル切り替え設定部82の機能が実現される。復調ウインドウ76と書き込みウインドウ72との間隔Tcが所定のクロック数以上に確保されると、補正値C2には前回値が維持される。CPU52の処理動作はステップS9に進む。ステップS9で復調信号に基づき広域位置情報が取得される。取得にあたって前述の広域位置情報取得部83の機能が実現される。
【0064】
続くステップS10でCPU52は全域位置情報を算出する。算出にあたって前述の全域位置情報算出部84の機能が実現される。総クロック数Ctが算出される。こうしてスパイラルサーボパターン55の復調信号にはサーボクロックの計数値が関連づけられる。総クロック数Ctは磁気ディスク14上で半径方向に電磁変換素子の位置を特定する。
【0065】
続くステップS11でCPU52は位置誤差信号PESを生成する。生成にあたって前述の位置誤差信号生成部85の機能が実現される。位置誤差信号PESはボイスコイルモーター23に供給される。位置誤差信号PESに基づき電磁変換素子は所定の円形記録トラック上に位置決めされる。こうして電磁変換素子が位置決めされると、ステップS12で磁気ディスク14にサーボ情報は書き込まれる。書き込みにあたって前述のサーボセクター書き込み部79の機能は実現される。サーボセクター領域28は構築される。サーボ情報の作成にあたって前述のサーボ情報作成部78の機能が実現される。サーボ情報ではトラック番号およびセクター番号が特定される。トラック番号の特定にあたって前述のトラック番号設定部74の機能が実現される([数1])。セクター番号の特定にあたって前述のセクター番号設定部77の機能が実現される。ここで、セクター番号はスパイラルサーボパターン55の通過回数Hに基づき決定される。ただし、スパイラルサーボパターンの切り替え時に磁気ディスク14の回転方向と反対向きに切り替え後のスパイラルサーボパターン55が設定される場合にはセクター番号は補正される。すなわち、磁気ディスク14の回転方向と反対向きに切り替え後のスパイラルサーボパターン55が設定された直後に電磁変換素子がスパイラルサーボパターン55を通過すると、セクター番号は次式で決定される。
【0066】
【数9】
それ以外の状況で電磁変換素子がスパイラルサーボパターン55を通過すると、セクター番号は次式で決定される。
【0067】
【数10】
ただし、ステップS3で最初の書き込みトラックが特定されるまで、セクター番号は次式で決定される。
【0068】
【数11】
こうして1サーボセクター領域28でサーボパターンが書き込まれると、続くステップS13でセクター番号は更新される。
【0069】
ステップS14でセクター番号と閾値とが比較される。閾値は磁気ディスク14の1回転を特定する。セクター番号が閾値を下回ると、CPU52の処理動作はステップS5に戻る。ステップS5で復調が確認されると、再びステップS6〜S13の処理が実行される。磁気ディスク14の回転に応じて全てのサーボセクター領域28でサーボパターンの書き込みが完了すると、磁気ディスク14上で1本の円形記録トラックが確立される。CPU52の処理動作はステップS15に移行する。ステップS15では、確立された円形記録トラックが最終トラックか否かが判定される。その円形記録トラックが最終トラックでなければ、CPU52の処理動作はステップS3に戻る。ステップS3で計数値の初期値「Cs」にトラックピッチ相当クロック数Tpが加算される。こうしてトラックピッチ相当クロック数Tpが加算されるたびに、最初の円形記録トラックから1本ずつ外側に円形記録トラックは特定されていく。ステップS4でトラック番号Ptは更新される。その後、前述と同様に、ステップS11で位置誤差信号PESは生成される。電磁変換素子は、指定された円形記録トラック上に位置決めされる。前述と同様にステップS5〜S14の処理が繰り返される結果、磁気ディスク14上で再び1本の円形記録トラックが確立される。
【0070】
図9に示されるように、復調ウインドウ76と書き込みウインドウ72との間隔Tcが所定のクロック数を下回ると、ステップS16でCPU52は復調ウインドウ76を設定し直す。復調ウインドウ76のタイミングは早められる。現在の復調対象のスパイラルサーボパターン55から前方(電磁変換素子の移動方向に上流側)に復調ウインドウ76は移動する。こうしてスパイラルサーボパターン55の切り替えは実施される。こうしたスパイラルサーボパターン55の切り替えに応じて例えば前述の[数3]に従って補正値C2が算出される。スパイラルサーボパターン55の切り替えのたびに補正値C2は更新される。
【0071】
ステップS9では、サーボクロックの計数値に規定値以上の減少が検出されるたびに折り返し回数Nsは更新される。更新された折り返し回数Nsにサーボクロックの所定値CWが乗算される。こうして計数値C3は算出される。こうした計数値C3によれば、サーボクロックの計数は所定値CWで折り返されるにも拘わらず、電磁変換素子の位置は磁気ディスク14の半径方向に全域にわたってサーボクロックの計数値で表現されることができる。
【0072】
ステップS15で確立された円形記録トラックが最終トラックに認定されると、CPU52の処理動作は終了する。こうして磁気ディスク14の全域にわたって円形記録トラックのサーボパターンは書き込まれる。以上のような位置決めの処理動作によれば、個々の円形記録トラックはサーボクロックの総クロック数Ctで正確に特定されることができる。磁気ディスク14にサーボ情報は正確に書き込まれることができる。
【0073】
次に、スパイラルサーボ制御の初期動作を説明する。この初期動作に基づき前述のステップS3で最初の書き込みトラックは特定される。図11に示されるように、ステップT1で電磁変換素子は記録域の最内周56bに位置決めされる。このとき、例えばキャリッジアーム19は最大限にスピンドルモーター15のスピンドル軸に向かって駆動される。ボイスコイルモーター23に駆動電流が供給される。支軸18回りでキャリッジ16は回転する。キャリッジ16はストッパ−(図示されず)に突き当てられる。
【0074】
ステップT2で目標の計数値Rに暫定値が設定される。暫定値には任意の数値が設定されればよい。その他、計数値Rは最初のスパイラルサーボパターン55の復調後に設定されてもよい。同時に、折り返し回数Nsおよび補正値C2に初期値としてゼロが設定される。その後、ステップT3でCPU52はスパイラルサーボパターン55の復調信号の有無を確認する。
【0075】
ステップT3で復調が確認されると、ステップT4で復調ウインドウ76が設定される。設定にあたって、前述のステップS6と同様に、復調ウインドウ設定部75の機能が実現される。CPU52にはスパイラルサーボパターン55の復調信号が取り込まれる。ステップT5でCPU52は復調信号に基づき局所域位置情報を取得する。取得にあたって、前述のステップS7と同様に、局所域位置情報取得部81の機能が実現される。その結果、例えば図12に示されるように、計数値Cbが特定される。この計数値Cbは前述の計数値Rに当てられる。続くステップT6で広域位置情報が取得される。取得にあたって、前述のステップS9と同様に、広域位置情報取得部83の機能が実現される。計数値C3が算出される。続くステップT7で全域位置情報が算出される。算出にあたって、前述のステップS10と同様に、全域位置情報算出部84の機能が実現される。続くステップT8で位置誤差信号PESが生成される。生成にあたって、前述のステップS11と同様に、位置誤差信号生成部85の機能が実現される。続くステップT9で位置誤差信号PESは記録される。ここでは、ステップT3〜T9の処理動作の実現にあたって前述のステップS5〜S11の処理動作はそのまま流用されることができる。
【0076】
ステップT10でスパイラルサーボパターンの通過回数Hが計数される。通過回数Hの初期値には予め「0(ゼロ)」が設定される。ステップT11で通過回数Hと閾値とが比較される。閾値には任意の数値(自然数)が設定されればよい。例えば閾値には磁気ディスク14の複数回転分の通過回数が設定されればよい。通過回数Hが閾値に達していなければ、CPU52の処理動作はステップT3に戻る。その後、ステップT3〜T9の処理動作が実施される。ステップT11で通過回数Hが閾値に達すると、CPU52の処理動作はステップT12に進む。ステップT12で最内周トラックが特定される。最内周トラックの特定にあたって、ステップT9で記録された数周分の位置誤差信号が参照される。図12に示されるように、電磁変換素子がスパイラルサーボパターン55を通過するたびに、目標の計数値R(=Cb)と総クロック数Ctとの間に誤差Cd1、Cd2、…が特定される。こういった誤差Cd1、Cd2、…に基づき電磁変換素子の半径方向の移動範囲で電磁変換素子の位置は正確にサーボクロックの計数値に関連づけられることができる。その結果、図12に示されるように、最内周の円形記録トラックTRの計数値Ciは次式で特定されることができる。
【0077】
【数12】
すなわち、この初期動作では、スパイラルサーボパターン55の偏心に伴う電磁変換素子の周期的な変位にも拘わらず、電磁変換素子の位置は半径方向に正確に特定されることができる。こうして最内周の円形記録トラックが特定されると、ステップT13で、書き込み開始トラックは特定される。書き込み開始トラックには最内周の円形記録トラックが当てはめられればよい。すなわち、書き込み開始トラックの計数値にはCiが当てられる。
【0078】
以上のようなスパイラルサーボ制御では、「菱形」の再生信号RSに基づき電磁変換素子の微小変位が高い精度で特定されることができるだけでなく、キャリッジアーム19の可動範囲全域にわたって電磁変換素子の位置が高い精度で特定されることができる。したがって、前述の初期動作のように、キャリッジ16がストッパーに突き当てられた状態から直接にスパイラルサーボパターン55に電磁変換素子は位置決めされることができる。その結果、いわゆる補助サーボパターンの書き込みは省略されることができる。サーボセクター領域28の構築にあたってSTWの処理動作は簡素化されることができる。こういった簡素化は作業時間の短縮化および製造コストの低減に寄与する。
【0079】
なお、前述の位置決めプログラムで実現される処理動作の全体もしくは一部は専用のハードウェアに基づき実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】磁気記憶媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】磁気ディスクの表面の構造を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図3】一具体例に係るサーボセクター領域の構造を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図4】トラッキングサーボの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図5】スパイラルサーボパターンの概念を示す磁気ディスクの平面図である。
【図6】スパイラルサーボパターンの詳細およびスパイラルサーボパターンに基づく再生信号の概念を概略的に示すスパイラルサーボパターンの拡大部分平面図である。
【図7】CPU内に構築される位置決め装置の機能ブロックを概略的に示すブロック図である。
【図8】スパイラルサーボパターンとサーボクロックの計数との関係を概略的に示すスパイラルサーボパターンの拡大部分平面図である。
【図9】スパイラルサーボパターンの切り替えを概念的に示すスパイラルサーボパターンの拡大部分平面図である。
【図10】スパイラルサーボ制御の処理動作を概略的に示すフローチャートである。
【図11】スパイラルサーボ制御の初期動作を概略的に示すフローチャートである。
【図12】スパイラルサーボ制御の初期動作中に電磁変換素子の移動経路を概略的に示す磁気ディスクの表面の拡大部分平面図である。
【符号の説明】
【0081】
14 記録媒体(磁気ディスク)、28 サーボセクター、35 電磁変換素子(読み出し素子)、44 電磁変換素子(書き込み素子)、55 スパイラルサーボパターン、φ 傾斜角。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上で半径方向に延びるサーボセクターごとに、記録媒体の回転角変化に同期して変化するサーボクロックを計数する工程と、
記録媒体上で円周方向に等間隔で配置され、半径方向の所定の領域にわたって円周線に対し規定の傾斜角を維持するスパイラル線に沿って磁性体を配列するスパイラルサーボパターンから電磁変換素子で磁気情報を読み取る工程と、
読み取った磁気情報に基づき、当該円周線上でスパイラルサーボパターンの位置を特定する工程と、
特定した位置にサーボクロックの計数値を関連づける工程と、
関連づけた計数値に基づき半径方向に電磁変換素子の位置を特定する工程と
を備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、
前記サーボクロックの計数にあたって規定値以上の減少を特定する工程と、
前記規定値以上の減少のたびに前記規定値以上の減少の回数を計数する工程と、
前記減少の回数に前記サーボクロックの計数の最大値を乗算する工程と、
乗算の結果に基づき前記半径方向に前記電磁変換素子の位置を特定する工程と
を備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、
前記サーボクロックの計数にあたって規定値以上の増加を特定する工程と、
前記規定値以上の増加のたびに前記規定値以上の増加の回数を計数する工程と、
前記増加の回数に前記サーボクロックの計数の最大値を乗算する工程と、
乗算の結果に基づき前記半径方向に前記電磁変換素子の位置を特定する工程と
を備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、前記サーボクロックの計数にあたって、1つのサーボセクターに割り当てられるスパイラルサーボパターンの本数nに応じて、隣接するスパイラルサーボパターンの切り替え時に記録媒体の回転方向に切り替え後のスパイラルサーボパターンが設定される際には前記サーボクロックの計数値に計数の最大値の−1/nに相当する計数値を補正し、前記回転方向の反対向きに切り替え後のスパイラルサーボパターンが設定される際には前記サーボクロックの計数値に計数の最大値の1/nに相当する計数値を補正することを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、前記円周線に同心の円形記録トラックの書き込みにあたって、基準の円形記録トラックを特定するサーボクロックの計数値に、1円形記録トラックごとに、1トラックピッチに相当するサーボクロックの計数値を加算する工程を備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、加算後の前記計数値、および、1トラックピッチに相当するサーボクロックの計数値に基づき前記円形記録トラックごとにトラック番号を特定する工程を備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、
前記スパイラルサーボパターンの通過回数を計数する工程と、
前記通過回数および前記スパイラルサーボパターンの切り替えの有無に基づきサーボセクターのセクター番号を特定する工程と
をさらに備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項1】
記録媒体上で半径方向に延びるサーボセクターごとに、記録媒体の回転角変化に同期して変化するサーボクロックを計数する工程と、
記録媒体上で円周方向に等間隔で配置され、半径方向の所定の領域にわたって円周線に対し規定の傾斜角を維持するスパイラル線に沿って磁性体を配列するスパイラルサーボパターンから電磁変換素子で磁気情報を読み取る工程と、
読み取った磁気情報に基づき、当該円周線上でスパイラルサーボパターンの位置を特定する工程と、
特定した位置にサーボクロックの計数値を関連づける工程と、
関連づけた計数値に基づき半径方向に電磁変換素子の位置を特定する工程と
を備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、
前記サーボクロックの計数にあたって規定値以上の減少を特定する工程と、
前記規定値以上の減少のたびに前記規定値以上の減少の回数を計数する工程と、
前記減少の回数に前記サーボクロックの計数の最大値を乗算する工程と、
乗算の結果に基づき前記半径方向に前記電磁変換素子の位置を特定する工程と
を備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、
前記サーボクロックの計数にあたって規定値以上の増加を特定する工程と、
前記規定値以上の増加のたびに前記規定値以上の増加の回数を計数する工程と、
前記増加の回数に前記サーボクロックの計数の最大値を乗算する工程と、
乗算の結果に基づき前記半径方向に前記電磁変換素子の位置を特定する工程と
を備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、前記サーボクロックの計数にあたって、1つのサーボセクターに割り当てられるスパイラルサーボパターンの本数nに応じて、隣接するスパイラルサーボパターンの切り替え時に記録媒体の回転方向に切り替え後のスパイラルサーボパターンが設定される際には前記サーボクロックの計数値に計数の最大値の−1/nに相当する計数値を補正し、前記回転方向の反対向きに切り替え後のスパイラルサーボパターンが設定される際には前記サーボクロックの計数値に計数の最大値の1/nに相当する計数値を補正することを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、前記円周線に同心の円形記録トラックの書き込みにあたって、基準の円形記録トラックを特定するサーボクロックの計数値に、1円形記録トラックごとに、1トラックピッチに相当するサーボクロックの計数値を加算する工程を備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、加算後の前記計数値、および、1トラックピッチに相当するサーボクロックの計数値に基づき前記円形記録トラックごとにトラック番号を特定する工程を備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の電磁変換素子の位置決め方法において、
前記スパイラルサーボパターンの通過回数を計数する工程と、
前記通過回数および前記スパイラルサーボパターンの切り替えの有無に基づきサーボセクターのセクター番号を特定する工程と
をさらに備えることを特徴とする電磁変換素子の位置決め方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−123151(P2010−123151A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293010(P2008−293010)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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