説明

電磁式水道メーター

【課題】既存の羽根車式水道メーターからの交換を容易に行うことが可能な電磁式水道メーターの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の電磁式水道メーター10では、筒形ケース11に外付けケース12を組み付けてなり、筒形ケース11は、1対の筒形ケース構成体30,30を結合してなる。そして、筒形ケース構成体30に、先端部を外側に拡げて先端鍔部31が形成されると共に、先端鍔部31にて抜け止めされるように筒形螺子50が両筒形ケース構成体30に嵌合されている。これにより、筒形螺子50を、羽根車式水道メーターにおける鋳物ケースの裾螺子の代わりにして、容易に水道管90に接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管に接続されるケースに部品を収容してなる電磁式水道メーターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な、水道メーターは、鋳物ケースの内部に羽根車やその羽根車を支持するインナーハウジング等を収容して備えた構造になっている。また、鋳物ケースの両端部外周面には「裾螺子」と呼ばれる螺子が切られていて、水道管の端部に備えた袋ナットを裾螺子に螺合することで、鋳物ケースが水道管に接続されていた。そして、定期的に水道メーターが別の水道メーターに交換されていた(特許文献1参照)。また、近年、上記した羽根車式水道メーターの代わりに電磁流量計が電磁式水道メーターとして利用されるようになってきている。その電磁式水道メーターの一例として、筒形ケースの内部に計測流路を有したインナースリーブを収容して備えたものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−292096号公報(段落[0057]、図1)
【特許文献2】特開2009−281843号公報(段落[0025]、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電磁式水道メーターの筒形ケースは、水道管への取り付け部分の形状が羽根車式水道メーターの鋳物ケースとは全く異なっていたので、既存の羽根車式水道メーターを電磁式水道メーターに交換するには手間がかかった。これらに対し、従来の鋳物ケースを電磁式水道メーターのケースに流用することが考えられるが、羽根車式水道メーターと電磁式水道メーターとは内部構造が大きく異なるので、鋳物ケースの流用は困難であった。また、既存の鋳物ケース及び水道管の袋ナットには、螺子の規格(螺子のリード)が異なる複数種類のものが存在し、羽根車式水道メーターの交換時に螺子の規格合わせ作業に手間がかかっていた。このため、単に電磁式水道メーターの筒形ケースに鋳物ケースと同様の裾螺子を設けた構造ではなく、上記した螺子の規格合わせ作業も軽減可能な電磁式水道メーターの開発が求められていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、既存の羽根車式水道メーターからの交換を容易に行うことが可能な電磁式水道メーターの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る電磁式水道メーターは、内側に計測流路を有しかつ外側面に電磁コイルが宛がわれさらに側方から内外に1対の検知電極が貫通したインナースリーブを筒形ケース内に収容して備え、電磁コイルを励磁した状態で1対の検知電極間に生じる電位差に基づいて計測流路を通過する水道水の流量を計測可能な電磁式水道メーターにおいて、板金又はパイプからのプレス成形品でありかつ、インナースリーブの外側に一端側と他端側とからそれぞれ嵌合して互いに合体し、筒形ケースを構成する1対の筒形ケース構成体と、1対の筒形ケース構成体同士を合体状態に保持するケース結合手段と、各筒形ケース構成体のうち軸方向の中間部分を縮径してなり、各筒形ケース構成体内のインナースリーブの移動を規制するストッパ部と、インナースリーブの両端部の外周面と1対の筒形ケース構成体の内周面との間をシールする1対のインナーシール手段と、各筒形ケース構成体のうち他方の筒形ケース構成体から離れた側の先端部を外側に拡げてなる先端鍔部と、各筒形ケース構成体のうち先端鍔部寄り位置に嵌合されて先端鍔部にて抜け止めされると共に外周面に雄螺子部を有した筒形螺子とを設け、筒形螺子は、1対の筒形螺子半割体に縦割り分割可能に形成されたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電磁式水道メーターにおいて、螺子のリードが異なる複数種類の筒形螺子を備え、それらのうちの何れかを選択して筒形ケース構成体に嵌合可能としたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の電磁式水道メーターにおいて、1対の筒形螺子半割体の分割面に、互いに凹凸係合する凹凸係合部を設けたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の電磁式水道メーターにおいて、筒形螺子のうち先端鍔部と反対側の端部に1対の平行な平坦面を有した工具係合部を設けたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の電磁式水道メーターにおいて、各筒形ケース構成体のうち他方の筒形ケース構成体側の基端部を外側に拡げてなる基端鍔部を形成すると共に基端鍔部に複数のボルト貫通孔を形成し、基端鍔部同士を重ね合わせてボルト貫通孔を貫通した複数のボルトと、それらボルトに螺合する雌螺子を有した螺合相手部材とをケース結合手段として備え、ボルト貫通孔群より内側に、基端鍔部同士の間をシールする筒形ケースシール手段を設けたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の電磁式水道メーターにおいて、筒形ケース構成体のうち基端鍔部とインナーシール手段との中間部分に貫通成形されたケーブル挿通孔と、筒形ケースの外側面に固定されると共に、ケーブル挿通孔内に挿入される接続筒と、ケーブル挿通孔の開口縁に対向配置されるシール部材加圧面とを有した外付けケースと、シール部材加圧面とケーブル挿通孔の開口縁との間に挟まれたシール部材とを備え、外付けケース内には、電磁コイルを励磁する励磁回路と、1対の検知電極間の電位差に基づいて計測流路を流れる流体の流量を演算する信号処理回路と、励磁回路及び信号処理回路の駆動源としての電池とが収容され、電磁コイルと励磁回路との間、及び、1対の検知電極と信号処理回路との間を接続するケーブルをケーブル挿通孔に挿通したところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1の電磁式水道メーターの筒形ケースは、1対の筒形ケース構成体からなり、それら1対の筒形ケース構成体はインナースリーブの外側に一端側と他端側とからそれぞれ嵌合して互いに合体される。すると、両筒形ケース構成体を縮径してなる1対のストッパ部の間にインナースリーブが挟まれて移動が規制されると共に、インナースリーブの両端部の外周面と両筒形ケース構成体の内周面とに1対のインナーシール手段が密着し、両筒形ケース構成体の先端側からインナースリーブの外面側に水道水が浸水することが防がれる。
そして、これら筒形ケース構成体には、先端部を外側に拡げて先端鍔部が形成されると共に、先端鍔部にて抜け止めされるように筒形螺子が両筒形ケース構成体に嵌合されているので、それら筒形螺子を鋳物ケースの両端部の裾螺子の代わりにして、本発明の電磁式水道メーターを既存の羽根車式水道メーターと交換して容易に水道管に接続することができる。
また、筒形螺子は、1対の筒形螺子半割体に縦割り分割可能であるので、筒形ケース構成体と筒形螺子との組み付けを容易に行うことができる。
【0013】
[請求項2の発明]
請求項2の電磁式水道メーターでは、既存の鋳物ケース及び水道管の袋ナットに、螺子のリードが異なる複数種類のものが存在していても、袋ナットの螺子のリードに合った筒形螺子を選択して筒形ケース構成体に組み付けることができる。即ち、従来、手間がかかっていた螺子の規格合わせ作業を軽減させることができる。
【0014】
[請求項3の発明]
請求項3の電磁式水道メーターでは、1対の筒形螺子半割体の分割面に、互いに凹凸係合する凹凸係合部を設けたので、筒形螺子半割体を接合したときに、その接合部分で雄螺子部の山同士、谷同士を容易に合わせた状態に保持することができる。
【0015】
[請求項4の発明]
請求項4の電磁式水道メーターによれば、筒形螺子のうち先端鍔部と反対側の端部に1対の平行な平坦面を有した工具係合部を設けたので、それら1対の平坦面を工具で挟んで筒形螺子を容易に回したり、或いは、回り止めしたりすることができる。
【0016】
[請求項5の発明]
請求項5の電磁式水道メーターによれば、ボルトを外して1対の筒形ケース構成体を分離し、筒形ケース内の部品を取り出してメンテナンスを行うことができる。また、1対の筒形ケース構成体の間は筒形ケースシール手段によってシールされているので、筒形ケースが水没した場合に筒形ケース内に浸水することが防がれる。
なお、「ケース結合手段」としての溶接により、1対の筒形ケース構成体同士を合体した状態に保持し、1対の筒形ケース構成体同士を分離不能としてもよい。
【0017】
[請求項6の発明]
請求項6の電磁式水道メーターでは、筒形ケースと外付けケースとを分離して、何れか一方を交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電磁式水道メーターの側面図
【図2】電磁式水道メーターの側断面図
【図3】筒形ケース及びインナースリーブの側断面図
【図4】筒形ケース構成体の側断面図
【図5】基端鍔部周辺の側断面図
【図6】ケーブル挿通孔周辺の側断面図
【図7】筒形ケース構成体に組み付ける前の1対の筒形螺子半割体の(A)側断面図、(B)先端側から見た図
【図8】インナースリーブ及び筒形ケースの拡大側断面図
【図9】水道管から羽根車式水道メーターを外した状態の側面図
【図10】変形例に係る電磁式水道メーターの側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の電磁式水道メーター10は、筒形ケース11と外付けケース12とを備えてなる。外付けケース12は、容器部17と蓋部18とで構成されている。容器部17は、上端で開口し、底部に基端鍔部受容凹部17Cを備えている。そして、容器部17内の下端部のうち基端鍔部受容凹部17Cより一端側が電池収容部17A、他端側がケーブル収容部17Bになっている(図2参照)。
【0020】
図2に示すように、容器部17には、回路基板13、表示器14、電池15が収容されている。電池15は、上述した電池収容部17Aに収容され、回路基板13は、容器部17の上端寄り位置に水平に配置され、その回路基板13の上面に表示器14が取り付けられている。容器部17の上方には、容器部17の上端開口を閉塞する透光部材16が備えられ、その透光部材16と表示器14とが上下方向で重ねられている。
【0021】
容器部17のケーブル収容部17Bには、接続筒19が備えられると共に、その接続筒19の外側に環状溝20が形成されている。そして、接続筒19の内側に、後述する電磁コイル21のリード線21A及び検知電極22,22のリード線22D,22Dが挿通されて回路基板13に接続されている。なお、回路基板13には、電磁コイル21を励磁するための励磁回路や、検知電極22,22の間に発生する電位差に基づいて筒形ケース11内を流れる水道水の流量を演算する信号処理回路が備えられている。
【0022】
蓋部18は天井壁18Aから周囲壁18Bが垂下した形状になっていて、その周囲壁18Bが、容器部17の上端部と嵌合している。詳細には、容器部17の上端部には、側方に環状に張り出した取付片17Tが形成され、取付片17Tと周囲壁18Bとの間が、図示しないOリングによってシールされている。
【0023】
図3に示すように、筒形ケース11は、1対の筒形ケース構成体30,30を結合することで構成されている。筒形ケース構成体30は、軸方向に2つの段差部32A、32Bを有し、段差部32Aより基端側が大径部30A、段差部32Aと段差部32Bとに挟まれた部分が中径部30B、段差部32Bより先端側が小径部30Cになっている。
【0024】
1対の筒形ケース構成体30,30のうち一方の筒形ケース構成体30には、大径部30Aにケーブル挿通孔33が形成され、容器部17の接続筒19と嵌合している(図2参照)。また、接続筒19の外側の環状溝20は、ケーブル挿通孔33の開口縁に対向配置され、環状溝20の奥面20M(本発明の「シール部材加圧面」に相当する)とケーブル挿通孔33の開口縁との間に、Oリング23(本発明の「シール部材」に相当する)が挟まれている(図6参照)。
【0025】
また、大径部30Aの基端部には、鍔状の基端鍔部34が備えられている。そして、1対の筒形ケース構成体30,30の基端鍔部34,34は、外側から1対の環状プレート36,36に挟まれ、これら1対の環状プレート36,36を複数のボルト35で挟みつけることで結合されている。詳細には、各ボルト35は、一方(図5の左側)の環状プレート36の外側から、基端鍔部34に貫通形成されたボルト貫通孔34A(図5参照)を貫通し、他方(図5の右側)の環状プレート36に形成された図示しない雌螺子部と螺合している。なお、本実施形態では、他方の環状プレート36が本発明の「螺合相手部材」に相当する。
【0026】
なお、図4に示すように、筒形ケース構成体30の基端鍔部34の接合面34Mには、係合突部34Bが設けられている。そして、係合突部34Bが、他方の筒形ケース構成体30の接合面34Mに設けられた図示しない係合凹部と係合して、基端鍔部34,34のボルト貫通孔34A,34Aが重ねて配置されるようになっている。
【0027】
また、基端鍔部34の接合面34Mのうちボルト貫通孔34A群より内側には、環状溝34K,34Kが形成され、これら環状溝34K,34Kによって形成される環状の密閉空間に、本発明の「筒形ケースシール手段」に相当するOリング37(図5参照)が収容されている。
【0028】
筒形ケース構成体30の小径部30Cの先端部には、先端鍔部31が設けられている。また、小径部30Cのうち先端鍔部31より基端側の部分には、筒形ケース構成体30に対して回転自在な筒形螺子50が嵌合している(図1、図3参照)。筒形螺子50は、六角ボルトの軸心に貫通孔を形成した構造になっていて、先端鍔部31側に雄螺子部51が配置されている。なお、筒形螺子50のヘッド部50Hが、本発明の「工具係合部」に相当する。
【0029】
図7(A)に示すように、筒形螺子50は、周方向で1対の筒形螺子半割体52,52に半割可能になっている。それら1対の筒形螺子半割体52,52のうち一方の筒形螺子半割体52の接合面52Mには、位置決め突部53が設けられ、他方の筒形螺子半割体52の接合面52Mには、位置決め突部53と係合する位置決め凹部54が設けられている(図7(B)参照)。これにより、1対の筒形螺子半割体52,52を接合したときに、その接合部分で雄螺子部51の山同士、谷同士を確実に合わせることができる。なお、位置決め突部53と位置決め凹部54とが、本発明の「凹凸係合部」に相当する
【0030】
ここで、筒形螺子半割体52は、合成樹脂製のものであってもよいし、金属製のものであってもよい。筒形螺子半割体52を合成樹脂製とすれば、金属製としたときに比べて安価に製造することができる。なお、合成樹脂は、強度の高いPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)であることが好ましい。
【0031】
図2に示すように、筒形ケース11には、インナースリーブ40と1対の電磁コイル21,21が収容されている。インナースリーブ40は、合成樹脂の射出成形品であって、図8に拡大して示すように、中間筒部41の両端に張り出し筒部42,42を備えている。そして、それら張り出し筒部42,42が1対の筒形ケース構成体30,30の中間部の中径部30B,30Bと嵌合している。また、張り出し部42の外周面に形成された環状溝42Kには、Oリング44(本発明の「インナーシール手段」に相当する)が収容され、張り出し部42と中径部30Bとの間がシールされている。これにより、筒形ケース構成体30の小径部30C側からインナースリーブ40の外面側に水道水が浸水することが防がれる。
【0032】
また、インナースリーブ40の両端面40M,40Mは、筒形ケース構成体30の段差部32B,32Bに突き当てられ、筒形ケース11内におけるインナースリーブ40の軸方向の移動が規制されている。なお、筒形ケース構成体30の段差部32Bが、本発明の「ストッパ部」に相当する。
【0033】
なお、張り出し部42の外周面には、中間筒部41寄り位置に段差面42Dが形成され、中間筒部41側の部分が拡径されている。この段差面42Dは、中径部30Bと大径部30Aとの境界に位置する角部30Kと当接している。
【0034】
インナースリーブ40の内側は、計測流路43になっている。この計測流路43は、軸方向の両端から中間部へ向けて流路径が徐々に小さくなり、中間部で流路径が一定になっている。具体的には、計測流路43のうち張り出し筒部42に形成された部分で流路径が小さくなり、中間筒部41に形成された部分で流路径が一定になっている。
【0035】
図2に示すように、電磁コイル21,21は、インナースリーブ40の中間筒部41を径方向で挟んで対向配置されている。また、各電磁コイル21のリード線21Aの端末部が、上述した筒形ケース構成体30の大径部30Aのケーブル挿通孔33を通して外付けケース12の容器部17内に引き込まれている。
【0036】
中間筒部41のうち各電磁コイル21,21から90度間隔を空けた位置には、1対の検知電極22,22が中間筒部41を内外に貫通している。具体的には、中間筒部41における2つの位置に貫通孔22A,22A(図2には、一方のみが示されている)が形成されており、そこにピン状の検知電極22,22が嵌合固定されると共に、防水処理が施されている。そして、検知電極22の一端が計測流路43内の流体に接触すると共に、検知電極22の他端に接続されたリード線22Dが、筒形ケース構成体30の大径部30Aのケーブル挿通孔33を通して外付けケース12の容器部17内に引き込まれている。
【0037】
次に、電磁式水道メーター10の製造方法について説明する。電磁式水道メーター10を製造するには、まず、筒形ケース11を製造する。そのためには、筒形ケース構成体30を製造しておく。筒形ケース構成体30は、例えば、ステンレス製の板金を絞り加工することで得られる。具体的には、板金を、段階的に絞って、順次、大径部30A、中径部30B、小径部30Cを成形する(図4参照)。次いで、板金から、筒形ケース構成体30に基端鍔部34が形成されるように筒形ケース構成体30を切り取る。そして、基端鍔部34に、環状溝34K、ボルト貫通孔34A、係合突部34B及び係合突部34Bと係合する係合凹部(図示せず)を成形する。次いで、小径部30Cの先端部を、例えば、フレア加工によって、外側へ折り曲げることにより先端鍔部31を成形する。また、1対の筒形ケース構成体30,30のうち一方の筒形ケース構成体30には、大径部30Aにケーブル挿通孔33(図3参照)を穿孔する。
【0038】
次に、樹脂の射出成形によって製造しておいたインナースリーブ40を1対の筒形ケース構成体30,30に組み付ける。そのためには、まず、検知電極22,22を、インナースリーブ40の貫通孔22A,22A(図2参照)に嵌合装着する。このとき、検知電極22と貫通孔22Aとの間は、例えば、Oリングでシールすることにより防水処理をしておく。次いで、インナースリーブ40の中間筒部42の外側に電磁コイル21,21を取り付ける。
【0039】
次いで、インナースリーブ40における張り出し部42の環状溝42KにOリング44を装着し、張り出し部42を、一方の筒形ケース構成体30の中径部30Bに嵌合させる。このとき、電磁コイル21のリード線21Aと検知電極22のリード線22Dとを筒形ケース構成体30のケーブル挿通孔33に挿通させておく。
【0040】
次いで、一方の筒形ケース構成体30における基端鍔部34の環状溝34K(図5参照)にOリング37を収容し、他方の筒形ケース構成体30を、一方の筒形ケース構成体30に組み付けたインナースリーブ40と嵌合するように組み付ける。そして、基端鍔部34,34の係合突部34Bと図示しない係合凹部とを係合させて、ボルト貫通孔34A,34A同士を重ねる。このとき、インナースリーブの両端面40M,40Mが筒形ケース構成体30,30の段差部32B,32Bに突き当てられる(図3参照)。また、Oリング37は、基端鍔部34,34の環状溝34K,34Kの間に形成された密閉空間に収容される。そして、基端鍔部34,34を外側から環状プレート36,36にて挟み、ボルト35で基端鍔部34,34を挟み付けることで1対の筒形ケース構成体30,30を結合する。これにより、筒形ケース11が得られる。
【0041】
次いで、外付けケース12を筒形ケース11に取り付ける。そのためには、まず、ケーブル挿通孔33から引き出された電磁コイル21のリード線21Aと検知電極22のリード線22Dとを、外付けケース12の接続筒19(図6参照)に挿通させ、回路基板13に接続する。そして、環状溝20にOリング23を装着し、外付けケース12の基端鍔部受容凹部17Cに筒形ケース11の基端鍔部34,34を受容させると共に、接続筒19をケーブル挿通孔33に挿通させる。そして、この状態で、筒形ケース11と外付けケース12とを、例えば、螺子止めすることにより電磁式水道メーター10が得られる。
【0042】
次に、電磁式水道メーター10を、図9に示した羽根車式水道メーター100と交換する手順について説明する。羽根車式水道メーター100は、例えば屋外の地面に設けた凹所(図示せず)内に配置され、地中に埋設された水道管90の途中に取り付けられている。また、池や河川等の水中に設置された水道管90の途中に取り付けられていれる場合もある。
【0043】
羽根車式水道メーター100を電磁式水道メーター10に交換するには、まず、水道管90の袋ナット90Nを回して、羽根車式水道メーター100を水道管90から取り外す。なお、羽根車式水道メーター100の鋳物ケース101は、水道管90の軸方向の両端部が中間部よりも細くなった構造になっていて、その両端部に袋ナット90Nと螺合可能な裾螺子102が形成されている。
【0044】
次に、電磁式水道メーター10を羽根車式水道メーター100が設置されていたスペースに設置する。このとき、電磁式水道メーター10は、羽根車式水道メーター100と全体の形状及び大きさが似ているので、羽根車式水道メーター100が設置されていたスペースをそのまま利用することができる。しかも、筒形ケース11の長さを、鋳物ケース101の水道管90の軸方向の長さと同じにしておけば、中継用の配管も必要がなくなる。
【0045】
次いで、電磁式水道メーター10を水道管90に接続する。そのためには、まず、螺子の規格(螺子のリード)が異なった複数種類の筒形螺子50から、袋ナット90Nの螺子の規格に対応した筒形螺子50を選択し、筒形ケース構成体30の小径部30Cに取り付ける。詳細には、袋ナット90Nに対応した筒形螺子50を構成する筒形螺子半割体52,52(図7参照)を、筒形ケース構成体30の小径部30Cのうち先端鍔部31より中径部30B側の部分を挟むように取り付け、筒形螺子50が小径部30Cを嵌合した状態にする。このとき、一方の筒形螺子半割体52の位置決め突部53と、他方の筒形螺子半割体52の位置決め凹部54とを係合することで、筒形螺子半割体52,52の接合部分で雄螺子部51の山同士、谷同士を容易に合わせた状態に保持することができる。
【0046】
次に、筒形螺子50を小径部30Cの周りに回転させ、筒形螺子50を袋ナット90Nに螺合させる(図1参照)。このとき、先端鍔部31と袋ナット90Nとでシール部材(例えば、Oリングやパッキン)を挟み付けて、先端鍔部31と袋ナット90Nとの間をシールする。これにより、電磁式水道メーター10が水道管90に取り付けられる。なお、筒形螺子50は、ヘッド部50Hに、例えば、スパナを係合することで、容易に回転させることができる。
【0047】
電磁式水道メーター10を水道管90に取り付けたら、電磁式水道メーター10を起動する。すると、電磁コイル21,21(図2参照)により発生した磁束が計測流路43を貫通し、計測流路43を通過する流体の流速に応じた電位差が1対の検知電極22,22の間に発生する。そして、その電位差がリード線22D,22Dを通して外付けケース12内の回路基板13に取り込まれ、回路基板13の図示しない信号処理回路が、電位差に基づいて水道水の流量を演算し、その演算結果が表示器14に出力される。以上により、羽根車式水道メーター100から電磁式水道メータ10への交換が終了する。
【0048】
このように、本実施形態の電磁式水道メーター10では、筒形ケース構成体30,30に、先端部を外側に拡げて先端鍔部31が形成されると共に、先端鍔部31にて抜け止めされるように筒形螺子50が両筒形ケース構成体30,30に嵌合されているので、それら筒形螺子50を鋳物ケース100の両端部の裾螺子102の代わりにすることができる。これにより、電磁式水道メーター10を羽根車式水道メーター100と交換して容易に水道管90に接続することができる。
【0049】
また、本実施形態では、筒形螺子50が、1対の筒形螺子半割体52,52に縦割り分割可能であるので、筒形ケース構成体30と筒形螺子50との組み付けを容易に行うことができる。また、袋ナット90Nに、螺子のリードが異なる複数種類のものが存在していても、袋ナット90Nの螺子のリードに合った筒形螺子50を選択して筒形ケース構成体30に組み付けることができる。即ち、従来、手間がかかっていた螺子の規格合わせ作業を軽減させることができる。
【0050】
また、本実施形態の電磁式水道メーター10によれば、、筒形ケース11と外付けケース12とを分離して、何れか一方を交換することができる。さらに、ボルト35を外して1対の筒形ケース構成体30,30を分離し、筒形ケース11内の部品を取り出してメンテナンスを行うことができる。しかも、1対の筒形ケース構成体30,30の間はOリング37によってシールされているので、筒形ケース11が水没した場合に筒形ケース11内に浸水することが防がれる。
【0051】
[第2実施形態]
本実施形態に係る電磁式水道メーター10Vは、図10に示されている。電磁式水道メーター10Vは、筒形ケース11Vに外付けケース12Vが溶接され、筒形ケース11Vが1対の筒形ケース構成体30V,30Vを溶接してなる点が第1実施形態と大きく相違する。また、筒形ケース構成体30Vには、第1実施形態の筒形ケース構成体30の基端鍔部34が成形されていない。その他の構成については、第1実施形態と同じになっている。本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0052】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0053】
(1)前記実施形態では、筒形螺子50を水道管90の袋ナット90Nに螺合させていたが、水道管の内周面に形成された雌螺子部に螺合させてもよい。
【0054】
(2)前記第1実施形態では、基端鍔部34,34の間をOリング37によってシールしていたが、パッキンやガスケットによってシールしてもよい。
【0055】
(3)前記第1実施形態では、基端鍔部34,34を環状プレート36,36で挟み付けて結合する構成であったが、ボルトとナットの締め付けによって結合する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10,10V 電磁式水道メーター
11,11V 筒形ケース
12,12V 外付けケース
21 電磁コイル
22 検知電極
23 Oリング(シール部材)
30,30V 筒形ケース構成体
31 先端鍔部
32A 段差部(ストッパ部)
34 基端鍔部
35 ボルト
36 環状プレート(螺合相手部材)
37 Oリング(筒形ケースシール手段)
40 インナースリーブ
43 計測流路
44 Oリング(インナーシール手段)
50 筒形螺子
51 雄螺子部
52 筒形螺子半割体
53 位置決め突部(凹凸係合部)
54 位置決め凹部(凹凸係合部)
90 水道管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に計測流路を有しかつ外側面に電磁コイルが宛がわれさらに側方から内外に1対の検知電極が貫通したインナースリーブを筒形ケース内に収容して備え、前記電磁コイルを励磁した状態で前記1対の検知電極間に生じる電位差に基づいて前記計測流路を通過する水道水の流量を計測可能な電磁式水道メータにおいて、
板金又はパイプからのプレス成形品でありかつ、前記インナースリーブの外側に一端側と他端側とからそれぞれ嵌合して互いに合体し、前記筒形ケースを構成する1対の筒形ケース構成体と、
前記1対の筒形ケース構成体同士を合体状態に保持するケース結合手段と、
各前記筒形ケース構成体のうち軸方向の中間部分を縮径してなり、各前記筒形ケース構成体内の前記インナースリーブの移動を規制するストッパ部と、
前記インナースリーブの両端部の外周面と前記1対の筒形ケース構成体の内周面との間をシールする1対のインナーシール手段と、
各前記筒形ケース構成体のうち他方の前記筒形ケース構成体から離れた側の先端部を外側に拡げてなる先端鍔部と、
各前記筒形ケース構成体のうち前記先端鍔部寄り位置に嵌合されて前記先端鍔部にて抜け止めされると共に外周面に雄螺子部を有した筒形螺子とを設け、
前記筒形螺子は、1対の筒形螺子半割体に縦割り分割可能に形成されたことを特徴とする電磁式水道メーター。
【請求項2】
螺子のリードが異なる複数種類の前記筒形螺子を備え、それらのうちの何れかを選択して前記筒形ケース構成体に嵌合可能としたことを特徴とする請求項1に記載の電磁式水道メーター。
【請求項3】
前記1対の筒形螺子半割体の分割面に、互いに凹凸係合する凹凸係合部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁式水道メーター。
【請求項4】
前記筒形螺子のうち前記先端鍔部と反対側の端部に1対の平行な平坦面を有した工具係合部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の電磁式水道メーター。
【請求項5】
各前記筒形ケース構成体のうち他方の前記筒形ケース構成体側の基端部を外側に拡げてなる基端鍔部を形成すると共に前記基端鍔部に複数のボルト貫通孔を形成し、前記基端鍔部同士を重ね合わせて前記ボルト貫通孔を貫通した複数のボルトと、それらボルトに螺合する雌螺子を有した螺合相手部材とを前記ケース結合手段として備え、
前記ボルト貫通孔群より内側に、前記基端鍔部同士の間をシールする筒形ケースシール手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の電磁式水道メーター。
【請求項6】
前記筒形ケース構成体のうち前記基端鍔部と前記インナーシール手段との中間部分に貫通成形されたケーブル挿通孔と、
前記筒形ケースの外側面に固定されると共に、前記ケーブル挿通孔内に挿入される接続筒と、前記ケーブル挿通孔の開口縁に対向配置されるシール部材加圧面とを有した外付けケースと、
前記シール部材加圧面と前記ケーブル挿通孔の前記開口縁との間に挟まれたシール部材とを備え、
前記外付けケース内には、前記電磁コイルを励磁する励磁回路と、前記1対の検知電極間の電位差に基づいて前記計測流路を流れる流体の流量を演算する信号処理回路と、前記励磁回路及び前記信号処理回路の駆動源としての電池とが収容され、前記電磁コイルと前記励磁回路との間、及び、前記1対の検知電極と前記信号処理回路との間を接続するケーブルを前記ケーブル挿通孔に挿通したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の電磁式水道メーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−132810(P2012−132810A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285790(P2010−285790)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】