説明

電磁接触器

【課題】可動鉄心から可動接点支え部材への振動伝達を抑制して、各部材の破損防止及び接点消耗の低減を図り長寿命化した電磁接触器を提供する。
【解決手段】略E字型の固定鉄心30及び可動鉄心40と、可動鉄心を駆動する電磁コイル50と、各部材を収容するフレーム10,20と、フレームに固定された固定接点70と、固定接点に当接又は離間する可動接点80と、可動鉄心及び前記可動接点が装着されるとともに可動鉄心の動きを可動接点に伝達する可動接点支え部材81と、可動鉄心を可動接点支え部材に弾性体を介して支持する弾性支持機構100とを備える電磁接触器を、弾性支持機構は、可動鉄心に形成された貫通孔44に挿入され両端部が貫通孔から突き出した支持部材101と、支持部材の両端に装着され可動接点支え部材に設けられた弾性体保持部104に保持される弾性体102とを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームに固定された固定鉄心、及び、電磁コイルで駆動され固定鉄心との接触、離間を切換えられる可動鉄心を有する電磁接触器に関する。特に、固定鉄心と可動鉄心との接触時等に生ずる衝撃を緩和して耐久性の向上を図った電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁接触器は、電磁コイルの吸引力を利用して固定鉄心と可動鉄心との接触、離間を切り換えて、電気回路の開閉を制御するものである。
このような電磁接触器は、一般に各鉄心を3本の突出部(脚部)を有するE字型に形成して各脚部の端面(接点面)を対向させて配置している。そして、各鉄心が金属バネ等の付勢部材により離間された状態と、中央脚の周りを周回する巻線を有する電磁コイルの吸着力で当接した状態とを切り換えることによって、可動接点と固定接点との導通(接触)、遮断(離間)を制御する。
【0003】
このような電磁接触器において、可動鉄心は可動接点を支持する可動接点支え部材に取り付けられる。可動接点支え部材は、フレームに対して移動可能に設けられるとともに、可動鉄心の動きを可動接点に伝達する部材である。
従来、可動鉄心とクロスバー(可動接点支え部材)との位置決めを正確に行うため、相互に係合する凹凸部を設けるとともに、バネ体によって両者を加圧接触させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭59−79949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来技術の電磁接触器では、可動鉄心と可動接点支え部材とが剛体どうしで直に接していることから、固定鉄心と可動鉄心とが衝突し、又は、可動鉄心が固定鉄心から釈放されて生じる衝撃が可動鉄心から可動接点支え部材に伝達しやすく、可動接点支え部材の耐久性を確保することが難しかった。また、可動接点支えに衝撃が伝達されやすいことから、固定接点と加圧接触している可動接点にも衝撃が伝達されやすく、接点の消耗が促進されるため、接点のボリュームを大きくする必要があった。
これに対し、例えば可動鉄心と可動接点支えとの間に、ゴム等の弾性体シートを挟持することも考えられるが、シート状の弾性体を緩衝材とする場合には、電磁接触器の動作方向における寸法に制約があることから、十分な緩衝効果を得にくかった。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みなされたものであって、可動鉄心から可動接点支え部材への振動伝達を抑制して、各部材の破損防止及び接点消耗の低減を図り長寿命化した電磁接触器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の電磁接触器は、中央脚及びこの中央脚を挟んで配置された外側脚を有する略E字型の固定鉄心と、前記固定鉄心に当接及び離間するように配置され、該固定鉄心の前記中央脚及び前記外側脚とそれぞれ対向配置された中央脚及び外側脚を有する略E字型の可動鉄心と、前記固定鉄心の中央脚及び前記可動鉄心の中央脚の周囲を周回する巻線を有し、前記可動鉄心を駆動する電磁コイルと、前記各部材を収容するフレームと、前記フレームに固定された固定接点と、前記固定接点に当接又は離間するように配置された可動接点と、前記フレームに対して相対移動可能に設けられ前記可動鉄心及び前記可動接点が装着されるとともに該可動鉄心の動きを前記可動接点に伝達する可動接点支え部材とを備え、前記可動鉄心と前記可動接点支え部材が連結部材により一体に連結されている電磁接触器であって、前記可動鉄心を前記可動接点支え部材に弾性体を介して支持する弾性支持機構を備えるとともに、前記弾性支持機構は、前記可動鉄心の中央脚に厚さ方向に形成された貫通孔に挿入されその両端部が該貫通孔から突き出した状態で配置される支持部材と、前記支持部材の両端に装着されるとともに前記可動接点支え部材に設けられた弾性体保持部に保持される弾性体とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、可動鉄心は支持部材の両端部に設けられた弾性体を介して可動接点支え部材に支持されることから、可動鉄心に生じた衝撃は弾性体の緩衝効果によって緩和され、可動接点支え部材側への伝達は抑制される。これによって、可動接点支え部材の衝撃による破損を防止することができる。また、可動接点への衝撃の伝達も低減されることから、可動接点と固定接点との摺動による消耗を抑制することができ、電磁接触器を長寿命化することができる。
また、可動鉄心からフレーム側への衝撃の伝搬を低減して、電磁接触器の作動時における騒音や振動を低減できる。
【0008】
本発明の電磁接触器は、前記弾性体は、前記可動鉄心に対して間隔を隔てて対向して配置される構成とすることができる。
これによれば、可動鉄心から弾性体への衝撃の伝達を低減でき、上述した緩衝効果を向上することができる。また、弾性体に可動鉄心の熱が伝達しにくくなることから、弾性体の熱劣化を防止できる。
【0009】
本発明の電磁接触器は、前記可動鉄心と前記弾性体との間にわたして設けられた脱落防止部材と、前記可動接点支え部材に設けられ、該可動接点支え部材への前記可動鉄心の装着時に前記弾性体をたわませることによって前記脱落防止部材を退避させる斜面部、及び、前記可動鉄心の装着後に前記脱落防止部材と係合し該可動鉄心の脱落を防止する係合面部を有する突起部と、を含む脱落防止機構を有する構成とすることができる。
これによれば、簡単な構成によって可動鉄心の可動接点支え部材からの脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、可動鉄心の貫通孔に挿入された支持部材の両端に装着された弾性体を介して可動鉄心を可動接点支え部材に装着することによって、可動鉄心から可動接点支え部材への衝撃の伝搬を抑制し、各部材の破損防止及び接点消耗の低減を図り長寿命化した電磁接触器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を適用した電磁接触器の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。
先ず、実施形態に先立ち、本発明の参考例について説明する。この参考例は、本発明が適用される前提となる従来技術の電磁接触器である。
図1は、参考例の電磁接触器の外観斜視図である。
図2は、参考例の電磁接触器の断面図であって、図1のII−II部矢視断面を示す。
図3は、参考例の電磁接触器の断面図であって、図1及び図2のIII−III部矢視断面を示す。
図4は、参考例の電磁接触器の分解斜視図である。
なお、各図面において、電磁接触器の動作方向(可動鉄心のストローク方向。奥行き方向とも称する。)を上下方向として図示し、以下の説明において上下方向とは図中における上下方向を示すものとする。
【0012】
電磁接触器1は、下部フレーム10、上部フレーム20、固定鉄心30、可動鉄心40、電磁コイル50、復帰バネ60、固定接触子70、可動接触子80、固定鉄心弾性支持機構90等を備えている。
下部フレーム10及び上部フレーム20は、電磁接触器1の各部材が装着され支持される基部である。下部フレーム10及び上部フレーム20は、固定鉄心30や可動鉄心40等を収容する上下2つ割りのケースとして形成されている。
また、上部フレーム20の上面部には、着脱式の接点カバー21が設けられている。
さらに、下部フレーム10と上部フレーム20との接合部には、これらを締結する締付線バネ22が設けられている。
【0013】
固定鉄心30は、複数のプレートをリベットで固定した積層鉄心であり、下部フレーム10内に収容されている。この固定鉄心30は、弾性支持機構90を介して下部フレーム10に対してフローティング状態で装着されている。
固定鉄心30は、電磁接触器1の動作方向に沿って伸びた中央脚31と、中央脚31を挟んで配置された一対の外側脚32とを備えている。また、中央脚31と外側脚32とは、動作方向と直交した方向(図中横方向)に沿って伸びた連結部33によって連結されている。これらの中央脚31、外側脚32、連結部33は一体的に形成され、その結果固定鉄心30は略E字型に形成されている。
さらに、固定鉄心30の外側脚32の可動鉄心40側の端部には、AC電源による電磁コイルの吸引力の変動を緩和するための隈取コイル(シェーディングコイル)32aが設けられている。
【0014】
また、固定鉄心30には、後述する固定鉄心弾性支持機構90の支持板91が挿入される貫通孔34が形成されている。貫通孔34は、連結部33の幅方向(各外側脚32を結んだ方向)における中央部に設けられている。そして、貫通孔34は、中央脚31の背面部に沿って、上述した幅方向とはほぼ直交する方向に伸びている。
【0015】
可動鉄心40は、複数のプレートをリベットで固定した積層鉄心である。なお、本明細書、請求の範囲等において、可動鉄心の厚さ方向とは、このプレートが積層される方向を意味するものとする。
可動鉄心40は、上部フレーム20内に収容され、電磁接触器1の動作方向に沿って固定鉄心30に対して上下方向に移動可能に支持されている。可動鉄心40は、固定鉄心30の中央脚31及び外側脚32とそれぞれ対向して配置された中央脚41及び外側脚42を備えている。また、可動鉄心40は、中央脚41及び外側脚42を連結するとともに、これらと一体的に形成された連結部43を備え、固定鉄心30に対して対称的に配置された略E字型に形成されている。
また可動鉄心40は、中央脚41の根元に可動鉄心40の厚さ方向に沿って形成された貫通孔44に挿入される帯板状の板バネである連結板45が設けられている。貫通孔44は、長手方向が連結部43の延在方向にほぼ沿って配置された矩形の長孔である。また、連結板45も幅方向が貫通孔44の長手方向とほぼ一致するように配置される。
【0016】
電磁コイル50は、電磁力によって固定鉄心30と可動鉄心40とを吸着させる磁界を発生する。電磁コイル50は、巻線51及びボビン52を備えている。巻線51は、固定鉄心30及び可動鉄心40の中央脚31,41と外側脚32,42との間を通り中央脚31,41の周囲を周回する。ボビン52は、この巻線51が巻き付けられるものである。ボビン52は、その内径側に固定鉄心30及び可動鉄心40の中央脚31,41が挿入され、外径側に巻線51が巻きつけられる円筒部を有している。また、ボビン52には、この円筒部の両端部から外径側にフランジ状に張り出したフランジ部が設けられている。
【0017】
復帰バネ60は、可動鉄心40を固定鉄心30から離間する方向に付勢する付勢手段である。復帰バネ60は、例えば、電磁コイル50のボビン52の上面と可動鉄心40との間にわたして設けられたコイルバネである。
【0018】
固定接触子70及び可動接触子80は、相互に当接、離間することによって回路の接続、遮断を切り換える電気接点である。
固定接触子70は、接点部が上向きの状態で、上部フレーム20に固定されている。
可動接触子80は、可動鉄心40の背面部(上面部)に固定された可動接点支え81に固定されている。可動接点支え81は、その上部に可動接触子80が固定される枠状部が形成されている。この枠状部は、可動鉄心40の厚さ方向に沿って複数配列されている。また、可動接点支え81の下部には、可動鉄心40が固定される。この、可動鉄心40と可動接点支え81との固定部については、後に詳しく説明する。
可動接触子80は、接点部が下向きかつ固定接触子70の接点部と対向した状態で配置されている。また、可動接触子80の上方側には、接触バネ82が設けられている。
固定接触子70及び可動接触子80は、固定鉄心30及び可動鉄心40が相互に離間した状態では離間し、固定鉄心30及び可動鉄心40が接触した状態では接触する。
また、上述した固定接触子70及び可動接触子80にそれぞれ隣接して、補助固定接触子75及び補助可動接触子85がそれぞれ設けられている。
【0019】
弾性支持機構90は、支持板91、支持板保持弾性体92、弾性体シート93等を備えている。
支持板91は、固定鉄心30の貫通孔34に挿入されるとともに、その両端部を支持板保持弾性体92によって下部フレーム10に固定される。支持板91は、幅方向がほぼ水平方向(動作方向と直交する方向)に沿わせて配置された帯状の平板として形成されている。支持板91は、その長手方向における両端部が固定鉄心30の貫通孔34からそれぞれ突き出した状態で使用される。
【0020】
支持板保持弾性体92は、例えばゴム系等の弾性を有する材料によってブロック状に形成されている。この支持板保持弾性体92には、支持板91の端部が挿入され固定される切込部が形成されている。支持板保持弾性体92は、支持板91の端部が挿入された状態で、下部フレーム10とボビン52の下面から突き出して形成された凸部52aとの間に挟持される。
【0021】
弾性体シート93は、例えばゴム系等の弾性を有する材料によってシート状に形成され、固定鉄心30の背面部と、この背面部と対向する下部フレーム10の内面部に形成された凹部11との間に配置されている。弾性体シート93は、下部フレーム10側に貼付され、通常時には固定鉄心30の背面部と微小な空隙を隔てて配置されている。固定鉄心30に可動鉄心40が衝突し、固定鉄心30が変位した場合には、弾性体シート93は、固定鉄心30の背面部のほぼ全面と当接するようになっている。
弾性体シート93の厚さは、電磁接触器1のサイズにもよるが、例えば、0.5〜1mm程度に設定されている。
【0022】
次に、上述した参考例の電磁接触器における可動鉄心40と可動接点支え81との固定箇所について詳細に説明する。
図5は、参考例の可動鉄心を可動接点支えから取り外した状態を示す分解斜視図である。
図6は、参考例の可動鉄心と可動接点支えとを接続した状態を示す外観斜視図である。
図7は、参考例の可動鉄心と可動接点支えとを接続した状態を示す正面図(電磁接触器の動作方向及び可動鉄心の厚さ方向と直交する方向から見た図)である。
【0023】
図5に示すように、可動接点支え81には、可動鉄心40から突出した連結板45の両端部を保持する保持部81aが設けられている。
保持部81aは、可動接点支え81の可動鉄心40側の面部から突出した一対の突起であって、可動鉄心40をその厚さ方向に挟んで対向するように配置されている。保持部81aには、他の保持部81aと対向する面部に、電磁接触器1の動作方向と直交する方向に伸びた溝部が形成されている。この溝部は一方の端部が閉塞されるとともに他方の端部が開放されている。連結板45の端部は、この溝部の開放側の端部から挿入される。
また、連結板45は、可動鉄心40を可動接点支え81に装着した状態では、可動鉄心40を可動接点支え81側に加圧接触させる板バネとして機能する。
【0024】
次に、本発明を適用した電磁接触器の実施形態について説明する。以下、上述した参考例と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
本実施形態の電磁接触器は、参考例の電磁接触器における可動鉄心40の連結板45及び可動接点支え81の保持部81aに代えて、以下説明する可動鉄心弾性支持機構100を備えている。この可動鉄心弾性支持機構100は、可動鉄心40を可動接点支え81に弾性体を介して装着するものである。
可動鉄心弾性支持機構100は、可動鉄心40に設けられる連結板101、弾性リング102、ピン103を有し、さらに可動接点支え81に設けられる弾性リング保持部104、抜け止め用突起105等を備えている。
【0025】
図8は、本実施形態の電磁接触器の断面図であって、参考例における図2に相当する断面を示している。
図9は、本実施形態の可動鉄心から連結板、弾性リング、ピンを取り外した状態を示す分解斜視図である。
図10は、本実施形態の弾性リングの外観斜視図である。
図11は、本実施形態の可動鉄心を可動接点支えから取り外した状態を示す分解斜視図である。
図12は、本実施形態の可動鉄心と可動接点支えとを接続した状態を示す外観斜視図である。
図13は、本実施形態の可動鉄心と可動接点支えとを接続した状態を示す正面図である。
【0026】
連結板101は、可動鉄心40の貫通孔44に挿入される矩形平板又は帯板状の部材である。連結板101は、その長手方向における両端部が貫通孔44からそれぞれ突出した状態で用いられる。連結板101は、その幅方向が貫通孔44の長手方向(連結部43の延在方向)にほぼ沿って配置される。
弾性リング102は、連結板101の両端部にそれぞれ装着される弾性部材であって、連結板101及び可動鉄心40を可動接点支え81に対して弾性的に支持するものである。弾性リング102は、例えばゴム系等の弾性を有する材料によって形成されている。図10に示すように、弾性リング102は、その外形がほぼ矩形のブロック状に形成され、その中央部に、連結板101が挿入される開口102aが形成されている。開口102aは、連結板101の横断面形状に適合した矩形の長孔として形成されている。また、開口102aの上部には、ピン103が挿入される開口102bが形成されている。開口102bは、ピン103の外径と実質的に同じ内径を有する丸孔として形成されている。
【0027】
ピン103は、直線状に伸びた円柱状の部材であって、可動鉄心40の背面部に形成された凹部40a内に嵌め込まれるものである。このピン103は、抜け止め用突起105と協働して可動鉄心40の可動接点支え81からの脱落を防止する脱落防止機構として機能する脱落防止部材である。凹部40aは、可動鉄心40の背面部(中央脚41の裏側の面部)を凹ませて形成されたV字状の溝であって、可動鉄心40の厚さ方向に沿って形成されている。ピン103は、その両端部が可動鉄心40から突出した状態でこの凹部40a内に嵌め込まれる。ピン103の両端部は、弾性リング102の開口102bに挿入される。
【0028】
弾性リング保持部104は、可動接点支え81の可動鉄心40側の面部から突出した一対の突起であって、可動鉄心40をその厚さ方向に挟んで対向するように配置されている。弾性リング保持部104には、他の弾性リング保持部104と対向する面部に、電磁接触器の動作方向と直交する方向に伸び、弾性リング102が挿入される溝部が形成されている。この溝部は、一方の端部が閉塞されるとともに、他方の端部が開放されている。弾性リング102は、この溝部の開放側の端部から挿入される。
また、図13に示すように、弾性リング保持部104は、弾性リング102を、可動鉄心40に対して間隔を隔てた状態で保持する。
【0029】
抜け止め用突起105は、可動接点支え81の可動鉄心40側の面部から突出したタブ状の部分であり、電磁接触器の使用時において弾性リング保持部104と可動鉄心40との間に挟まれるように、弾性リング保持部104と隣接して配置されている。
抜け止め用突起105は、図11に示すように、弾性リング保持部104の溝部と平行する方向に伸びて形成され、溝部の開口端付近では、この開口端から閉塞端側への距離に応じて突出高さが連続的に増加する斜面部105aが形成されている。この斜面部105aは、弾性リング保持部104の溝部の中央部付近において終了する。一方、抜け止め用突起105の溝部閉塞端側の端部は、電磁接触器の動作方向にほぼ沿って伸びるとともに、ピン103と係合してその脱落を防止する係合面部105bが形成されている。
また、図13に示すように、抜け止め用突起105は、電磁接触器の使用時において、可動鉄心40と弾性リング102とが接触しないように仕切る仕切り板としても機能する。
【0030】
次に、本実施形態の電磁接触器において、可動接点支え81に固定鉄心40を装着する際の動作について説明する。
先ず、固定鉄心40の貫通孔44に連結板101を挿入するとともに、背面部の凹部40aにピン103を嵌め込む。次に、連結板101及びピン103の両端部に弾性リング102を装着する。このとき、連結板101の突端部を開口102aに挿入し、ピン103の突端部を開口102bに挿入する。
【0031】
そして、弾性リング102を、可動接点支え81の弾性リング保持部104に、溝部の開口側から押し込む。このとき、ピン103は、抜け止め用突起105の斜面部105aと当接して押圧され、弾性リング102を変形させながら図11における下側(電磁接触器に組み込まれた状態における固定鉄心30側)に退避する。そして、弾性リング102を溝部に対して所定の挿入深さまで挿入すると、ピン103は抜け止め用突起105を乗り越える。このとき、弾性リング102の変形が復元することによって、ピン103は図11における上方側に変位する。そして、ピン103が抜け止め用突起105の係合面部105bと係合することによって、可動鉄心40の可動接点支え81からの脱落が防止される。
なお、図13に示すように、この可動鉄心弾性支持機構100によって、可動鉄心40は、その背面部(図13における上面部)が可動接点支え81の対向する面部との間に空隙Sを有する状態で支持されている。
【0032】
以下、本実施形態の効果を、上述した参考例と対比して説明する。
参考例の電磁接触器においては、可動鉄心40及び連結板45が可動接点支え81に対して剛体的に直接接触していることから、固定鉄心30と可動鉄心40との衝突時に生じる衝撃や、可動鉄心40の固定鉄心30からの釈放時に生じる衝撃が、可動接点支え81に伝達されやすい。このため、可動接点支え81の破損を防止するため強度を大きくする必要があり、コストや重量が増大してしまう。また、可動接点支え81に伝搬した衝撃は可動接触子80にも伝達されるため、可動接触子80と固定接触子70との接点部分の消耗が大きくなる。このため、各接触子のボリュームを大きくする必要がある。
【0033】
これに対し、本実施形態の場合には、可動鉄心40は連結板101の両端部に設けられた弾性リング102を介して可動接点支え81に支持されることから、可動鉄心40に生じた衝撃は弾性リング102の緩衝効果によって緩和され、可動接点支え81側への伝達が抑制される。これによって、可動接点支え81の衝撃による破損を防止することができる。また、可動接触子80への衝撃の伝達も低減されることから、可動接触子80と固定接触子70の接点部分の摺動による消耗を抑制することができ、電磁接触器を長寿命化することができる。
また、可動鉄心40から下部フレーム10、上部フレーム20等への衝撃の伝搬を低減して、電磁接触器の作動時における騒音や振動を低減できる。
【0034】
さらに、弾性リング102が可動鉄心40に対して間隔を隔てて対向して配置される構成としたことによって、可動鉄心40から弾性リング102への衝撃の伝達を低減でき、上述した緩衝効果を向上することができる。また、弾性リング102に可動鉄心40の熱が伝達しにくくなることから、弾性リング102の熱劣化を防止できる。
【0035】
また、可動鉄心40と弾性リング102との間にわたして設けられたピン103と、可動接点支え81に設けられ、可動鉄心40の装着時に弾性リング102をたわませることによってピン103を退避させる斜面部105a、及び、可動鉄心40の装着後にピン103と係合し可動鉄心40の脱落を防止する係合面部105bとを有する抜け止め用突起105とを設けることによって、簡単な構成によって可動鉄心40の可動接点支え81からの脱落を防止することができる。
【0036】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、電磁接触器の構造や各構成部品の形状、材質等は、上述した実施形態のものに限定されず、適宜変更することができる。
また、本発明の弾性支持機構は、単独での使用も可能であるが、他の弾性支持機構や緩衝機構と組み合わせて用いてもよい。例えば、本発明の弾性支持機構を設けるとともに、可動鉄心と可動接点支えとの間に他の緩衝材を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の参考例である電磁接触器の外観斜視図である。
【図2】図1のII−II部矢視断面図である。
【図3】図1及び図2のIII−III部矢視断面図である。
【図4】図1の電磁接触器の分解斜視図である。
【図5】参考例の可動鉄心を可動接点支えから取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図6】参考例の可動鉄心と可動接点支えとを接続した状態を示す外観斜視図である。
【図7】参考例の可動鉄心と可動接点支えとを接続した状態を示す正面図である。
【図8】本発明を適用した電磁接触器の実施形態における断面図である。
【図9】図8の電磁接触器の可動鉄心から連結板、弾性リング、ピンを取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図10】図8の電磁接触器の弾性リングの外観斜視図である。
【図11】図8の電磁接触器の可動鉄心を可動接点支えから取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図12】図8の電磁接触器の可動鉄心と可動接点支えとを接続した状態を示す外観斜視図である。
【図13】図8の電磁接触器の可動鉄心と可動接点支えとを接続した状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 下部フレーム
20 上部フレーム
30 固定鉄心
40 可動鉄心
41 中央脚
42 外側脚
43 連結部
44 貫通孔
45 連結板
50 電磁コイル
51 巻線
52 ボビン
60 復帰バネ
70 固定接触子
80 可動接触子
81 可動接点支え
81a 保持部
90 固定鉄心弾性保持機構
100 可動鉄心弾性保持機構
101 連結板
102 弾性リング
103 ピン
104 弾性リング保持部
105 抜け止め用突起
105a 斜面部
105b 係合面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央脚及びこの中央脚を挟んで配置された外側脚を有する略E字型の固定鉄心と、
前記固定鉄心に当接及び離間するように配置され、該固定鉄心の前記中央脚及び前記外側脚とそれぞれ対向配置された中央脚及び外側脚を有する略E字型の可動鉄心と、
前記固定鉄心の中央脚及び前記可動鉄心の中央脚の周囲を周回する巻線を有し、前記可動鉄心を駆動する電磁コイルと、
前記各部材を収容するフレームと、
前記フレームに固定された固定接点と、
前記固定接点に当接又は離間するように配置された可動接点と、
前記フレームに対して相対移動可能に設けられ前記可動鉄心及び前記可動接点が装着されるとともに該可動鉄心の動きを前記可動接点に伝達する可動接点支え部材とを備え、
前記可動鉄心と前記可動接点支え部材が連結部材により一体に連結されている電磁接触器であって、
前記可動鉄心を前記可動接点支え部材に弾性体を介して支持する弾性支持機構を備えるとともに、
前記弾性支持機構は、前記可動鉄心の中央脚に厚さ方向に形成された貫通孔に挿入されその両端部が該貫通孔から突き出した状態で配置される支持部材と、前記支持部材の両端に装着されるとともに前記可動接点支え部材に設けられた弾性体保持部に保持される弾性体とで構成されることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記弾性体は、前記可動鉄心に対して間隔を隔てて対向して配置されることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記可動鉄心と前記弾性体との間にわたして設けられた脱落防止部材と、
前記可動接点支え部材に設けられ、該可動接点支え部材への前記可動鉄心の装着時に前記弾性体をたわませることによって前記脱落防止部材を退避させる斜面部、及び、前記可動鉄心の装着後に前記脱落防止部材と係合し該可動鉄心の脱落を防止する係合面部を有する突起部と、
を含む脱落防止機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁接触器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−9813(P2009−9813A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169953(P2007−169953)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(503361927)富士電機アセッツマネジメント株式会社 (402)