電磁波吸収シート
【課題】ハロゲン含有量が十分に低減されており、優れた磁気特性を維持しつつ優れた耐久性と優れた難燃性とを兼ね備える電磁波吸収シートを提供すること。
【解決手段】本発明の電磁波吸収シートは、磁性粉末と樹脂組成物とを含有し、樹脂組成物は、構成元素としてリンを含む樹脂と、フェナントレン誘導体と、を含有する。
【解決手段】本発明の電磁波吸収シートは、磁性粉末と樹脂組成物とを含有し、樹脂組成物は、構成元素としてリンを含む樹脂と、フェナントレン誘導体と、を含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電磁波吸収シートに関する。
【背景技術】
【０００２】
通信機器や電子機器においては、放射電磁ノイズ等によって、機器内で共鳴やクロストークなどの電磁干渉によって、誤動作や周辺機器の動作に悪影響が生じることが問題となっている。このような電磁波障害の発生を防止するためのシールド材として、電磁波吸収シートが用いられている。この電磁波吸収シートは、軟磁性体を含有しており、この軟磁性体が自然共鳴して電磁波を熱エネルギーに変換することによって、電磁波がシートを通過したり、反射したりすることを防止することができる。
【０００３】
電磁波吸収シートとしては、電子機器の発火に伴う燃焼を防止する観点から、難燃性のものが求められている。難燃剤としては、従来からハロゲン系のものが知られているが、最近の環境規制の高まりを受けて、ハロゲンフリーの電磁波吸収シートが求められるようになりつつある。
【０００４】
ハロゲンフリーの電磁波吸収シートとしては、ポリエステル樹脂、扁平な磁性粉末及び窒素含有難燃剤を含有するものが提案されている（例えば、特許文献１）。
【特許文献１】特開２００７−２６２２３１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、上述の特許文献１のような従来の電磁波吸収シートは、耐久性が十分でなく、電子機器内部などの狭いスペースに所望の形状に折り曲げて収容すると、経時的に劣化して、破損してしまうことが懸念される。
【０００６】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ハロゲン含有量が十分に低減されており、優れた磁気特性を維持しつつ優れた耐久性と優れた難燃性とを兼ね備える電磁波吸収シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的を達成するため、本発明では、磁性粉末と樹脂組成物とを含有し、樹脂組成物は、構造元素としてリンを含む樹脂と、フェナントレン誘導体と、を含有する電磁波吸収シートを提供する。
【０００８】
このような電磁波吸収シートは、構成元素としてリンを含む樹脂とフェナントレン誘導体を有する化合物とを含有するため、優れた難燃性を有している。また、フェナントレン誘導体は、劣化防止機能をも有するため、優れた難燃性と優れた耐久性とを兼ね備えた電磁波吸収シートとすることができる。
【０００９】
本発明におけるフェナントレン誘導体は、下記一般式（Ｉ）で表される化合物であることが好ましい。
【００１０】
【化１】
［上式中、Ｒ１は、水素原子、ヒドロキシ基又は置換基を有してもよい一価の炭化水素基を示す。］
【００１１】
本発明の電磁波吸収シートが、上記一般式（Ｉ）で表されるフェナントレン誘導体を含有することによって、一層優れた難燃性と優れた耐久性とを兼ね備えた電磁波吸収シートとすることができる。
【００１２】
本発明の電磁波吸収シートにおける樹脂組成物は、上記フェナントレン誘導体とは異なる芳香族リン酸エステルを含有することが好ましい。これによって、一層優れた難燃性を有する電磁波吸収シートとすることができる。
【００１３】
本発明の電磁波吸収シートは、リン元素の含有量が樹脂組成物全体に対して４〜８質量％であることが好ましい。リン元素の含有量をこのような範囲とすることによって、優れた難燃性を維持しつつ一層優れた磁気特性を有する電磁波吸収シートとすることができる。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によれば、ハロゲン含有量が十分に低減されており、優れた磁気特性を維持しつつ優れた耐久性と優れた難燃性とを兼ね備える電磁波吸収シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
本発明の好適な一実施形態について以下に説明する。本実施形態の電磁波吸収シートは、（Ａ）磁性粉末と樹脂組成物とを含有し、樹脂組成物は、（Ｂ）構成元素としてリンを含む樹脂（以下、単に「（Ｂ）リン含有樹脂」という。）と（Ｃ）フェナントレン誘導体と（Ｄ）芳香族リン酸化合物とを含有する。
【００１６】
（Ａ）磁性粉末としては、通常の軟磁性粉末を用いることができる。例えば、センダスト（Ｆｅ−Ｓｉ−Ａｌ合金）、パーマロイ（Ｆｅ−Ｎｉ合金）、ケイ素銅（Ｆｅ−Ｃｕ−Ｓｉ合金）、Ｆｅ−Ｓｉ合金、Ｆｅ−Ｓｉ−Ｂ（−Ｃｕ−Ｎｂ）合金、Ｆｅ−Ｎｉ−Ｃｒ−Ｓｉ合金、Ｆｅ−Ｓｉ−Ｃｒ合金、Ｆｅ−Ｓｉ−Ａｌ−Ｎｉ−Ｃｒ合金等が挙げられる。これらの軟磁性粉末は、市販のものを入手してもよいし、公知の方法で合成してもよい。
【００１７】
本明細書における樹脂組成物は、電磁波吸収シートにおける（Ａ）磁性粉末以外の成分の全てを含むものであり、本実施形態における樹脂組成物は、（Ｂ）リン含有樹脂と（Ｃ）フェナントレン誘導体と（Ｄ）芳香族リン酸化合物とを含有する。
【００１８】
（Ｂ）リン含有樹脂としては、分子中にリン酸残基を有するものが挙げられる。具体的には、リン元素を含むポリエステル樹脂、リン元素を含むエポキシ樹脂、リン元素を含むポリウレタン樹脂、リン元素を含むアクリロニトリル・ブタジエンゴム（ＮＢＲ）等が挙げられる。このような樹脂は市販のものを入手してもよいし、公知の方法で合成してもよい。
【００１９】
リン元素を含むポリエステル樹脂は、例えば、エチレングリコールとテレフタル酸とを反応させて得られるポリエステル成分と、ホスフォネート型ポリオール、ホスフェート型ポリオール又はビニルホスフォネートなどのリン成分とを共重合させることによって得ることができる。なお、（Ｂ）リン含有樹脂は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物及び無水マレイン酸誘導体などの架橋剤に由来する構造を有していてもよい。
【００２０】
（Ｃ）フェナントレン誘導体としては、上記一般式（Ｉ）で表される化合物が挙げられる。上記一般式（Ｉ）におけるＲ１は、一層優れた耐久性を得る観点から、水素原子、又は炭素数６〜１０の置換基を有する炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。置換基は、水酸基又はカルボキシル基であることが好ましい。
【００２１】
好ましい（Ｃ）フェナントレン誘導体としては、下記式（ＩＩ）〜（ＶＩＩ）の化合物が挙げられる。
【００２２】
【化２】
【００２３】
【化３】
【００２４】
【化４】
【００２５】
【化５】
【００２６】
【化６】
【００２７】
【化７】
【００２８】
（Ｄ）芳香族リン酸化合物は、リン酸基と芳香族基とを有する化合物であり、例えば下記式（ＶＩＩＩ）で表される化合物が挙げられる。なお、この芳香族リン酸化合物は、フェナントレン構造を有しておらず、上述のフェナントレン誘導体とは異なる化合物である。
【００２９】
【化８】
【００３０】
このような芳香族リン酸化合物を含有させることによって、可塑性にも優れる電磁波吸収シートとすることができる。
【００３１】
電磁波吸収シートにおける（Ａ）磁性粉末の含有量は、電磁波吸収シート全体を基準として、好ましくは６０〜９０質量％であり、より好ましくは７０〜８５質量％である。（Ａ）磁性粉末の含有量が６０質量％未満であると、十分に優れた電磁波吸収特性が得られ難くなる傾向があり、９０質量％以上であると、樹脂組成物の比率が低くなって、可塑性が損なわれる傾向がある。
【００３２】
（Ｂ）リン含有樹脂の含有量は、樹脂組成物全体を基準として、好ましくは７０〜９５質量％であり、より好ましくは８０〜９０質量％である。当該含有量が７０質量％未満であると、優れた柔軟性が得られ難くなる傾向があり、９５質量％を超えると、十分に優れた難燃性が得られ難くなる傾向がある。
【００３３】
（Ｃ）フェナントレン誘導体の含有量は、樹脂組成物全体を基準として、好ましくは２〜２０質量％であり、より好ましくは３〜１５質量％である。当該含有量が２質量％未満であると、十分に優れた難燃性が損なわれる傾向があり、２０質量％を超えると、優れた可塑性が得られ難くなる傾向がある。
【００３４】
フェナントレン誘導体とは異なる（Ｄ）芳香族リン酸化合物の含有量は、樹脂組成物全体を基準として、好ましくは０．１〜１０質量％であり、より好ましくは３〜１０質量％である。当該含有量が０．１質量％未満であると、芳香族リン酸化合物を含有することによって得られる可塑性の向上効果が得られ難くなる傾向があり、１０質量％を超えると、十分な強度が損なわれる傾向がある。
【００３５】
電磁波吸収シートにおけるリン元素の含有量は、合計で、好ましくは４〜８質量％であり、より好ましくは４〜６質量％である。当該含有量は、（Ｂ）リン含有樹脂、（Ｃ）フェナントレン誘導体及び（Ｄ）芳香族リン酸化合物等に含まれるリン元素の合計含有量をいう。このリン元素の含有量が４質量％未満であると、十分に優れた難燃性が損なわれる傾向があり、８質量％を超えると、可塑性が損なわれる傾向がある。
【００３６】
本実施形態の電磁波吸収シートは、必要に応じてフェナントレン誘導体とは異なる他の難燃剤を併用してもよい。他の難燃剤としては、金属水酸化物や水和金属化合物等の無機系難燃剤、並びに窒素化合物、シリコーン化合物、及び有機金属化合物等が挙げられる。
【００３７】
次に、上記実施形態に係る電磁波吸収シートの製造方法について以下に説明する。本実施形態の製造方法は、（ａ）磁性粉末、（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂成分、及び（ｃ）フェナントレン誘導体を含有する磁性塗料を調製する塗料調製工程と、この磁性塗料を基材フィルム上に塗布する塗布工程と、基材フィルムに塗布した磁性塗料を加熱して電磁波吸収シートを形成するシート形成工程とを有する。以下、各工程の詳細について説明する。
【００３８】
塗料調製工程では、電磁波吸収シート形成用の原料である磁性塗料を調製する。磁性塗料は、有機溶媒に、（ａ）磁性粉末、（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂成分、及び（ｃ）フェナントレン誘導体を配合して調製することができる。さらに必要に応じて、（ｄ）芳香族リン酸化合物、（ｅ）架橋剤、及び（ｆ）硬化促進剤を配合してもよい。
【００３９】
ここで用いる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等、一般的なものを用いることができる。
【００４０】
原材料である（ａ）〜（ｆ）成分は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成してもよい。（ａ）〜（ｆ）成分の配合比率は、最終的に得られる電磁波吸収シートが所望の特性を有するように、適宜調製することができる。
【００４１】
（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂成分としては、構成元素としてリンを含有するポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンゴム（ＮＢＲ）等を用いることができる。（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂としては、例えば、東洋紡績株式会社製のバイロン６３７（商品名）や、東都化成株式会社製のＥＲＦ−００１、ＦＸ−３０５（以上、商品名）などを用いることができる。
【００４２】
（ｃ）フェナントレン誘導体及び（ｄ）芳香族リン酸化合物としては、上述の（Ｃ）フェナントレン誘導体及び（Ｄ）芳香族リン酸化合物において例示したものを用いることができる。これらの（Ｃ）フェナントレン誘導体及び（Ｄ）芳香族リン酸化合物は、市販品として入手可能である。
【００４３】
（ｅ）架橋剤としては、通常のイソシアネート化合物、エポキシ化合物及び無水マレイン酸誘導体等を用いることができる。これらの架橋剤は、例えば、日本ポリウレタン工業株式会社製のコロネートＴ−１００、ミリオネートＭＴ（以上、商品名）、ジャパンエポキシレジン株式会社製のＪＥＲ８２８、１５４（以上、商品名）、大日本インキ化学株式会社製のエピクロンＢ−６５０（以上、商品名）などの市販品を用いることができる。このような架橋剤は、（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂成分の反応基（例えばヒドロキシ基）と反応し、電磁波吸収シートに含まれる（Ｂ）リン含有樹脂を形成することができる。
【００４４】
（ｆ）硬化促進剤としては、イミダゾールやＤＢＵ（ジアザビシクロウンデセン）などの三級アミン化合物等、一般的なものを用いることができる。これらの硬化促進剤は市販品として入手可能である。
【００４５】
塗布工程では、調製した磁性塗料を、基材フィルムの一面上に塗布する。磁性塗料の塗布方法としては、例えばコーター、ドクターブレード法等を用いることができる。このとき、磁性塗料の塗布厚みは、所望の厚さに調節することが好ましい。
【００４６】
基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム等を用いることができる。基材フィルムの厚みは、例えば１〜１０００μｍとすることができる。
【００４７】
磁性塗料を基材フィルムに塗布する際に、磁場を印加することによって、磁性塗料に含まれる磁性粉末を所定方向に配向させることが好ましい。これによって、電磁波吸収特性に一層優れる電磁波吸収シートを得ることができる。
【００４８】
シート形成工程では、基材フィルム上に塗布した磁性塗料を、用いた有機溶媒の沸点付近（例えば８０〜１５０℃）にまで加熱して有機溶媒を蒸発除去し、基材フィルム上に電磁波吸収シートを形成する。なお、加熱前後に電磁波吸収シートの厚み方向にプレスして電磁波吸収シートを形成することが好ましい。これによって、磁性粉末や樹脂組成物が一層密に充填されることとなり、電磁波吸収特性に一層優れる電磁波吸収シートを得ることができる。
【００４９】
シート形成工程では、（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂成分と、（ｅ）架橋剤及び／又は（ｆ）硬化促進剤との反応によって、架橋して、電磁波吸収シートにおける（Ｂ）リン含有樹脂を形成する。
【００５０】
基材フィルム上に電磁波吸収シートが形成された後、該基材フィルムから電磁波吸収シートを取り外し、必要に応じて、同様の方法によって形成された電磁波吸収シートを積層する積層工程を行ってもよい。これによって、所望の厚みを有する電磁波吸収シートを得ることができる。
【００５１】
上述の方法によって製造された電磁波吸収シートは、（Ａ）磁性粉末と、（Ｂ）リン含有樹脂、（Ｃ）フェナントレン誘導体、及び（Ｄ）芳香族リン酸化合物を含む樹脂組成物とを含有する。このような電磁波吸収シートは、優れた電磁波吸収特性と耐久性と優れた難燃性とを全て有するものである。
【００５２】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【００５３】
実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【００５４】
（実施例１〜６）
［評価用シートの作製］
【００５５】
電磁波吸収シートを作製するため、以下の原材料を準備した。なお、軟磁性粉末としては、市販のＦｅＳｉＡｌ粉末を用いた。
・構成元素としてリンを含む樹脂（リン含有ポリエステル樹脂）：東洋紡績株式会社製、バイロン６３７（商品名）。
・架橋剤１（イソシアネート化合物）：日本ポリウレタン株式会社製、コロネートＴ−１００（商品名）。
・架橋剤２（エポキシ化合物）：ジャパンエポキシレジン株式会社製、ＪＥＲ８２８（商品名）。
・フェナントレン誘導体１：三光株式会社製、ＨＣＡ（商品名）、上記式（ＩＩ）の化合物。
・フェナントレン誘導体２：三光株式会社製、ＨＣＡ−ＨＱ（商品名）、上記式（ＩＩＩ）の化合物。
・難燃剤（芳香族リン酸エステル）：大八化学工業株式会社製、ＰＸ−２００（商品名）、上記式（ＶＩＩＩ）の化合物。
・硬化促進剤（２−エチル−４−メチルイミダゾール）：四国化成工業株式会社製、キュアゾール２Ｅ４ＭＺ（商品名）。
【００５６】
上述の原材料のうち、磁性粉末以外の原材料を、表１に示す配合比率（質量基準）で、溶媒（メチルエチルケトン）に混合して樹脂組成物の分散液を調製した。原材料の配合比率に基づいて、作製する評価用シートに含まれる樹脂組成物全体に対するリン元素の含有量を計算したところ、表１に示す通りであった。
【００５７】
調製した分散液に、表１に示す比率で磁性粉末を配合して混合し、磁性塗料（スラリー）を得た。このスラリーをコーターによって塗布し、１２０℃で０．５時間加熱して乾燥させ、シートを作製した。このようにして作製したシートを、複数積層してプレスを行い、実施例１〜６の評価用シート（厚み：０．５ｍｍ）を作製した。
【００５８】
【表１】
【００５９】
［電磁波吸収特性の評価］
作製した各実施例の評価用シートの電磁波吸収特性（透磁率：μ’及びμ”）を、アジレントテクノロジー社製のインピーダンス／マテリアル アナライザー（商品名：Ｆ４９９１Ａ）を用いて評価した。結果は、表３に示す通りであった。
【００６０】
［耐久性の評価］
作製した各実施例の評価用シートを１２５℃の恒温槽中に５００時間保管した後、折り曲げて耐久性を評価した。具体的にはφ２ｍｍの丸棒に、恒温槽に保管した後の評価用シートを巻きつけて評価用シートの表面を目視にて観察し、クラックが発生していないものを「Ａ」、クラックが発生したものを「Ｂ」と評価した。結果は、表３に示す通りであった。
【００６１】
［難燃性の評価］
作製した各実施例の評価用シートを用いて難燃性の評価を行った。難燃性評価の試験方法は、ＵＬ９４に規定する垂直試験法（ＵＬ９４ Ｖ法）によって行った。そして、ＵＬ９４に規定する評価基準（Ｖ−０，Ｖ−１，Ｖ−２）に基づいて評価を行った。ＵＬ−９４ Ｖ法の評価基準のＶ−０、Ｖ−１、Ｖ−２基準を満たすものを、それぞれ「Ｖ−０」、「Ｖ−１」、「Ｖ−２」と評価した。また、いずれの基準も満たさないものを「燃焼」とした。結果は、表３に示す通りであった。
【００６２】
（比較例１〜６）
［評価用シートの作製］
電磁波吸収シートを作製するため、実施例１で用いた原材料の他に、以下の原材料を準備した。
・難燃剤（メラミンシアヌレート）：日産化学工業社製、ＭＣ６１０（商品名）。
【００６３】
上述の原材料を用いて、表２に示す配合比率（質量基準）で、溶媒（メチルエチルケトン）に混合して樹脂組成物の分散液を調製した。原材料の配合比率に基づいて、作製する評価用シートに含まれる樹脂組成物全体に対するリン元素の含有量を計算したところ、リン元素の含有量は表２に示す通りであった。そして、実施例１と同様にして評価用シートを作製し、評価を行った。結果は、表３に示す通りであった。
【００６４】
【表２】
【００６５】
【表３】
【００６６】
表３に示す結果から、実施例１〜６の評価用シート、すなわち電磁波吸収シートは、良好な電磁波吸収特性を示すとともに、優れた耐久性及び優れた難燃性を有することが確認された。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電磁波吸収シートに関する。
【背景技術】
【０００２】
通信機器や電子機器においては、放射電磁ノイズ等によって、機器内で共鳴やクロストークなどの電磁干渉によって、誤動作や周辺機器の動作に悪影響が生じることが問題となっている。このような電磁波障害の発生を防止するためのシールド材として、電磁波吸収シートが用いられている。この電磁波吸収シートは、軟磁性体を含有しており、この軟磁性体が自然共鳴して電磁波を熱エネルギーに変換することによって、電磁波がシートを通過したり、反射したりすることを防止することができる。
【０００３】
電磁波吸収シートとしては、電子機器の発火に伴う燃焼を防止する観点から、難燃性のものが求められている。難燃剤としては、従来からハロゲン系のものが知られているが、最近の環境規制の高まりを受けて、ハロゲンフリーの電磁波吸収シートが求められるようになりつつある。
【０００４】
ハロゲンフリーの電磁波吸収シートとしては、ポリエステル樹脂、扁平な磁性粉末及び窒素含有難燃剤を含有するものが提案されている（例えば、特許文献１）。
【特許文献１】特開２００７−２６２２３１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、上述の特許文献１のような従来の電磁波吸収シートは、耐久性が十分でなく、電子機器内部などの狭いスペースに所望の形状に折り曲げて収容すると、経時的に劣化して、破損してしまうことが懸念される。
【０００６】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ハロゲン含有量が十分に低減されており、優れた磁気特性を維持しつつ優れた耐久性と優れた難燃性とを兼ね備える電磁波吸収シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的を達成するため、本発明では、磁性粉末と樹脂組成物とを含有し、樹脂組成物は、構造元素としてリンを含む樹脂と、フェナントレン誘導体と、を含有する電磁波吸収シートを提供する。
【０００８】
このような電磁波吸収シートは、構成元素としてリンを含む樹脂とフェナントレン誘導体を有する化合物とを含有するため、優れた難燃性を有している。また、フェナントレン誘導体は、劣化防止機能をも有するため、優れた難燃性と優れた耐久性とを兼ね備えた電磁波吸収シートとすることができる。
【０００９】
本発明におけるフェナントレン誘導体は、下記一般式（Ｉ）で表される化合物であることが好ましい。
【００１０】
【化１】
［上式中、Ｒ１は、水素原子、ヒドロキシ基又は置換基を有してもよい一価の炭化水素基を示す。］
【００１１】
本発明の電磁波吸収シートが、上記一般式（Ｉ）で表されるフェナントレン誘導体を含有することによって、一層優れた難燃性と優れた耐久性とを兼ね備えた電磁波吸収シートとすることができる。
【００１２】
本発明の電磁波吸収シートにおける樹脂組成物は、上記フェナントレン誘導体とは異なる芳香族リン酸エステルを含有することが好ましい。これによって、一層優れた難燃性を有する電磁波吸収シートとすることができる。
【００１３】
本発明の電磁波吸収シートは、リン元素の含有量が樹脂組成物全体に対して４〜８質量％であることが好ましい。リン元素の含有量をこのような範囲とすることによって、優れた難燃性を維持しつつ一層優れた磁気特性を有する電磁波吸収シートとすることができる。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によれば、ハロゲン含有量が十分に低減されており、優れた磁気特性を維持しつつ優れた耐久性と優れた難燃性とを兼ね備える電磁波吸収シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
本発明の好適な一実施形態について以下に説明する。本実施形態の電磁波吸収シートは、（Ａ）磁性粉末と樹脂組成物とを含有し、樹脂組成物は、（Ｂ）構成元素としてリンを含む樹脂（以下、単に「（Ｂ）リン含有樹脂」という。）と（Ｃ）フェナントレン誘導体と（Ｄ）芳香族リン酸化合物とを含有する。
【００１６】
（Ａ）磁性粉末としては、通常の軟磁性粉末を用いることができる。例えば、センダスト（Ｆｅ−Ｓｉ−Ａｌ合金）、パーマロイ（Ｆｅ−Ｎｉ合金）、ケイ素銅（Ｆｅ−Ｃｕ−Ｓｉ合金）、Ｆｅ−Ｓｉ合金、Ｆｅ−Ｓｉ−Ｂ（−Ｃｕ−Ｎｂ）合金、Ｆｅ−Ｎｉ−Ｃｒ−Ｓｉ合金、Ｆｅ−Ｓｉ−Ｃｒ合金、Ｆｅ−Ｓｉ−Ａｌ−Ｎｉ−Ｃｒ合金等が挙げられる。これらの軟磁性粉末は、市販のものを入手してもよいし、公知の方法で合成してもよい。
【００１７】
本明細書における樹脂組成物は、電磁波吸収シートにおける（Ａ）磁性粉末以外の成分の全てを含むものであり、本実施形態における樹脂組成物は、（Ｂ）リン含有樹脂と（Ｃ）フェナントレン誘導体と（Ｄ）芳香族リン酸化合物とを含有する。
【００１８】
（Ｂ）リン含有樹脂としては、分子中にリン酸残基を有するものが挙げられる。具体的には、リン元素を含むポリエステル樹脂、リン元素を含むエポキシ樹脂、リン元素を含むポリウレタン樹脂、リン元素を含むアクリロニトリル・ブタジエンゴム（ＮＢＲ）等が挙げられる。このような樹脂は市販のものを入手してもよいし、公知の方法で合成してもよい。
【００１９】
リン元素を含むポリエステル樹脂は、例えば、エチレングリコールとテレフタル酸とを反応させて得られるポリエステル成分と、ホスフォネート型ポリオール、ホスフェート型ポリオール又はビニルホスフォネートなどのリン成分とを共重合させることによって得ることができる。なお、（Ｂ）リン含有樹脂は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物及び無水マレイン酸誘導体などの架橋剤に由来する構造を有していてもよい。
【００２０】
（Ｃ）フェナントレン誘導体としては、上記一般式（Ｉ）で表される化合物が挙げられる。上記一般式（Ｉ）におけるＲ１は、一層優れた耐久性を得る観点から、水素原子、又は炭素数６〜１０の置換基を有する炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。置換基は、水酸基又はカルボキシル基であることが好ましい。
【００２１】
好ましい（Ｃ）フェナントレン誘導体としては、下記式（ＩＩ）〜（ＶＩＩ）の化合物が挙げられる。
【００２２】
【化２】
【００２３】
【化３】
【００２４】
【化４】
【００２５】
【化５】
【００２６】
【化６】
【００２７】
【化７】
【００２８】
（Ｄ）芳香族リン酸化合物は、リン酸基と芳香族基とを有する化合物であり、例えば下記式（ＶＩＩＩ）で表される化合物が挙げられる。なお、この芳香族リン酸化合物は、フェナントレン構造を有しておらず、上述のフェナントレン誘導体とは異なる化合物である。
【００２９】
【化８】
【００３０】
このような芳香族リン酸化合物を含有させることによって、可塑性にも優れる電磁波吸収シートとすることができる。
【００３１】
電磁波吸収シートにおける（Ａ）磁性粉末の含有量は、電磁波吸収シート全体を基準として、好ましくは６０〜９０質量％であり、より好ましくは７０〜８５質量％である。（Ａ）磁性粉末の含有量が６０質量％未満であると、十分に優れた電磁波吸収特性が得られ難くなる傾向があり、９０質量％以上であると、樹脂組成物の比率が低くなって、可塑性が損なわれる傾向がある。
【００３２】
（Ｂ）リン含有樹脂の含有量は、樹脂組成物全体を基準として、好ましくは７０〜９５質量％であり、より好ましくは８０〜９０質量％である。当該含有量が７０質量％未満であると、優れた柔軟性が得られ難くなる傾向があり、９５質量％を超えると、十分に優れた難燃性が得られ難くなる傾向がある。
【００３３】
（Ｃ）フェナントレン誘導体の含有量は、樹脂組成物全体を基準として、好ましくは２〜２０質量％であり、より好ましくは３〜１５質量％である。当該含有量が２質量％未満であると、十分に優れた難燃性が損なわれる傾向があり、２０質量％を超えると、優れた可塑性が得られ難くなる傾向がある。
【００３４】
フェナントレン誘導体とは異なる（Ｄ）芳香族リン酸化合物の含有量は、樹脂組成物全体を基準として、好ましくは０．１〜１０質量％であり、より好ましくは３〜１０質量％である。当該含有量が０．１質量％未満であると、芳香族リン酸化合物を含有することによって得られる可塑性の向上効果が得られ難くなる傾向があり、１０質量％を超えると、十分な強度が損なわれる傾向がある。
【００３５】
電磁波吸収シートにおけるリン元素の含有量は、合計で、好ましくは４〜８質量％であり、より好ましくは４〜６質量％である。当該含有量は、（Ｂ）リン含有樹脂、（Ｃ）フェナントレン誘導体及び（Ｄ）芳香族リン酸化合物等に含まれるリン元素の合計含有量をいう。このリン元素の含有量が４質量％未満であると、十分に優れた難燃性が損なわれる傾向があり、８質量％を超えると、可塑性が損なわれる傾向がある。
【００３６】
本実施形態の電磁波吸収シートは、必要に応じてフェナントレン誘導体とは異なる他の難燃剤を併用してもよい。他の難燃剤としては、金属水酸化物や水和金属化合物等の無機系難燃剤、並びに窒素化合物、シリコーン化合物、及び有機金属化合物等が挙げられる。
【００３７】
次に、上記実施形態に係る電磁波吸収シートの製造方法について以下に説明する。本実施形態の製造方法は、（ａ）磁性粉末、（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂成分、及び（ｃ）フェナントレン誘導体を含有する磁性塗料を調製する塗料調製工程と、この磁性塗料を基材フィルム上に塗布する塗布工程と、基材フィルムに塗布した磁性塗料を加熱して電磁波吸収シートを形成するシート形成工程とを有する。以下、各工程の詳細について説明する。
【００３８】
塗料調製工程では、電磁波吸収シート形成用の原料である磁性塗料を調製する。磁性塗料は、有機溶媒に、（ａ）磁性粉末、（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂成分、及び（ｃ）フェナントレン誘導体を配合して調製することができる。さらに必要に応じて、（ｄ）芳香族リン酸化合物、（ｅ）架橋剤、及び（ｆ）硬化促進剤を配合してもよい。
【００３９】
ここで用いる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等、一般的なものを用いることができる。
【００４０】
原材料である（ａ）〜（ｆ）成分は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成してもよい。（ａ）〜（ｆ）成分の配合比率は、最終的に得られる電磁波吸収シートが所望の特性を有するように、適宜調製することができる。
【００４１】
（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂成分としては、構成元素としてリンを含有するポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンゴム（ＮＢＲ）等を用いることができる。（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂としては、例えば、東洋紡績株式会社製のバイロン６３７（商品名）や、東都化成株式会社製のＥＲＦ−００１、ＦＸ−３０５（以上、商品名）などを用いることができる。
【００４２】
（ｃ）フェナントレン誘導体及び（ｄ）芳香族リン酸化合物としては、上述の（Ｃ）フェナントレン誘導体及び（Ｄ）芳香族リン酸化合物において例示したものを用いることができる。これらの（Ｃ）フェナントレン誘導体及び（Ｄ）芳香族リン酸化合物は、市販品として入手可能である。
【００４３】
（ｅ）架橋剤としては、通常のイソシアネート化合物、エポキシ化合物及び無水マレイン酸誘導体等を用いることができる。これらの架橋剤は、例えば、日本ポリウレタン工業株式会社製のコロネートＴ−１００、ミリオネートＭＴ（以上、商品名）、ジャパンエポキシレジン株式会社製のＪＥＲ８２８、１５４（以上、商品名）、大日本インキ化学株式会社製のエピクロンＢ−６５０（以上、商品名）などの市販品を用いることができる。このような架橋剤は、（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂成分の反応基（例えばヒドロキシ基）と反応し、電磁波吸収シートに含まれる（Ｂ）リン含有樹脂を形成することができる。
【００４４】
（ｆ）硬化促進剤としては、イミダゾールやＤＢＵ（ジアザビシクロウンデセン）などの三級アミン化合物等、一般的なものを用いることができる。これらの硬化促進剤は市販品として入手可能である。
【００４５】
塗布工程では、調製した磁性塗料を、基材フィルムの一面上に塗布する。磁性塗料の塗布方法としては、例えばコーター、ドクターブレード法等を用いることができる。このとき、磁性塗料の塗布厚みは、所望の厚さに調節することが好ましい。
【００４６】
基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム等を用いることができる。基材フィルムの厚みは、例えば１〜１０００μｍとすることができる。
【００４７】
磁性塗料を基材フィルムに塗布する際に、磁場を印加することによって、磁性塗料に含まれる磁性粉末を所定方向に配向させることが好ましい。これによって、電磁波吸収特性に一層優れる電磁波吸収シートを得ることができる。
【００４８】
シート形成工程では、基材フィルム上に塗布した磁性塗料を、用いた有機溶媒の沸点付近（例えば８０〜１５０℃）にまで加熱して有機溶媒を蒸発除去し、基材フィルム上に電磁波吸収シートを形成する。なお、加熱前後に電磁波吸収シートの厚み方向にプレスして電磁波吸収シートを形成することが好ましい。これによって、磁性粉末や樹脂組成物が一層密に充填されることとなり、電磁波吸収特性に一層優れる電磁波吸収シートを得ることができる。
【００４９】
シート形成工程では、（ｂ）構成元素としてリンを含有する樹脂成分と、（ｅ）架橋剤及び／又は（ｆ）硬化促進剤との反応によって、架橋して、電磁波吸収シートにおける（Ｂ）リン含有樹脂を形成する。
【００５０】
基材フィルム上に電磁波吸収シートが形成された後、該基材フィルムから電磁波吸収シートを取り外し、必要に応じて、同様の方法によって形成された電磁波吸収シートを積層する積層工程を行ってもよい。これによって、所望の厚みを有する電磁波吸収シートを得ることができる。
【００５１】
上述の方法によって製造された電磁波吸収シートは、（Ａ）磁性粉末と、（Ｂ）リン含有樹脂、（Ｃ）フェナントレン誘導体、及び（Ｄ）芳香族リン酸化合物を含む樹脂組成物とを含有する。このような電磁波吸収シートは、優れた電磁波吸収特性と耐久性と優れた難燃性とを全て有するものである。
【００５２】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【００５３】
実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【００５４】
（実施例１〜６）
［評価用シートの作製］
【００５５】
電磁波吸収シートを作製するため、以下の原材料を準備した。なお、軟磁性粉末としては、市販のＦｅＳｉＡｌ粉末を用いた。
・構成元素としてリンを含む樹脂（リン含有ポリエステル樹脂）：東洋紡績株式会社製、バイロン６３７（商品名）。
・架橋剤１（イソシアネート化合物）：日本ポリウレタン株式会社製、コロネートＴ−１００（商品名）。
・架橋剤２（エポキシ化合物）：ジャパンエポキシレジン株式会社製、ＪＥＲ８２８（商品名）。
・フェナントレン誘導体１：三光株式会社製、ＨＣＡ（商品名）、上記式（ＩＩ）の化合物。
・フェナントレン誘導体２：三光株式会社製、ＨＣＡ−ＨＱ（商品名）、上記式（ＩＩＩ）の化合物。
・難燃剤（芳香族リン酸エステル）：大八化学工業株式会社製、ＰＸ−２００（商品名）、上記式（ＶＩＩＩ）の化合物。
・硬化促進剤（２−エチル−４−メチルイミダゾール）：四国化成工業株式会社製、キュアゾール２Ｅ４ＭＺ（商品名）。
【００５６】
上述の原材料のうち、磁性粉末以外の原材料を、表１に示す配合比率（質量基準）で、溶媒（メチルエチルケトン）に混合して樹脂組成物の分散液を調製した。原材料の配合比率に基づいて、作製する評価用シートに含まれる樹脂組成物全体に対するリン元素の含有量を計算したところ、表１に示す通りであった。
【００５７】
調製した分散液に、表１に示す比率で磁性粉末を配合して混合し、磁性塗料（スラリー）を得た。このスラリーをコーターによって塗布し、１２０℃で０．５時間加熱して乾燥させ、シートを作製した。このようにして作製したシートを、複数積層してプレスを行い、実施例１〜６の評価用シート（厚み：０．５ｍｍ）を作製した。
【００５８】
【表１】
【００５９】
［電磁波吸収特性の評価］
作製した各実施例の評価用シートの電磁波吸収特性（透磁率：μ’及びμ”）を、アジレントテクノロジー社製のインピーダンス／マテリアル アナライザー（商品名：Ｆ４９９１Ａ）を用いて評価した。結果は、表３に示す通りであった。
【００６０】
［耐久性の評価］
作製した各実施例の評価用シートを１２５℃の恒温槽中に５００時間保管した後、折り曲げて耐久性を評価した。具体的にはφ２ｍｍの丸棒に、恒温槽に保管した後の評価用シートを巻きつけて評価用シートの表面を目視にて観察し、クラックが発生していないものを「Ａ」、クラックが発生したものを「Ｂ」と評価した。結果は、表３に示す通りであった。
【００６１】
［難燃性の評価］
作製した各実施例の評価用シートを用いて難燃性の評価を行った。難燃性評価の試験方法は、ＵＬ９４に規定する垂直試験法（ＵＬ９４ Ｖ法）によって行った。そして、ＵＬ９４に規定する評価基準（Ｖ−０，Ｖ−１，Ｖ−２）に基づいて評価を行った。ＵＬ−９４ Ｖ法の評価基準のＶ−０、Ｖ−１、Ｖ−２基準を満たすものを、それぞれ「Ｖ−０」、「Ｖ−１」、「Ｖ−２」と評価した。また、いずれの基準も満たさないものを「燃焼」とした。結果は、表３に示す通りであった。
【００６２】
（比較例１〜６）
［評価用シートの作製］
電磁波吸収シートを作製するため、実施例１で用いた原材料の他に、以下の原材料を準備した。
・難燃剤（メラミンシアヌレート）：日産化学工業社製、ＭＣ６１０（商品名）。
【００６３】
上述の原材料を用いて、表２に示す配合比率（質量基準）で、溶媒（メチルエチルケトン）に混合して樹脂組成物の分散液を調製した。原材料の配合比率に基づいて、作製する評価用シートに含まれる樹脂組成物全体に対するリン元素の含有量を計算したところ、リン元素の含有量は表２に示す通りであった。そして、実施例１と同様にして評価用シートを作製し、評価を行った。結果は、表３に示す通りであった。
【００６４】
【表２】
【００６５】
【表３】
【００６６】
表３に示す結果から、実施例１〜６の評価用シート、すなわち電磁波吸収シートは、良好な電磁波吸収特性を示すとともに、優れた耐久性及び優れた難燃性を有することが確認された。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
磁性粉末と樹脂組成物とを含有し、
前記樹脂組成物は、構成元素としてリンを含む樹脂と、フェナントレン誘導体と、を含有する電磁波吸収シート。
【請求項２】
前記フェナントレン誘導体は、下記一般式（Ｉ）で表される化合物である請求項１記載の電磁波吸収シート。
【化１】
［式（Ｉ）中、Ｒ１は、水素原子、ヒドロキシ基又は置換基を有してもよい一価の炭化水素基を示す。］
【請求項３】
前記樹脂組成物は、前記フェナントレン誘導体とは異なる芳香族リン酸エステルを含有する請求項１又は２記載の電磁波吸収シート。
【請求項４】
リン元素の含有量が、前記樹脂組成物全体に対して４〜８質量％である請求項１〜３のいずれか一項に記載の電磁波吸収シート。
【請求項１】
磁性粉末と樹脂組成物とを含有し、
前記樹脂組成物は、構成元素としてリンを含む樹脂と、フェナントレン誘導体と、を含有する電磁波吸収シート。
【請求項２】
前記フェナントレン誘導体は、下記一般式（Ｉ）で表される化合物である請求項１記載の電磁波吸収シート。
【化１】
［式（Ｉ）中、Ｒ１は、水素原子、ヒドロキシ基又は置換基を有してもよい一価の炭化水素基を示す。］
【請求項３】
前記樹脂組成物は、前記フェナントレン誘導体とは異なる芳香族リン酸エステルを含有する請求項１又は２記載の電磁波吸収シート。
【請求項４】
リン元素の含有量が、前記樹脂組成物全体に対して４〜８質量％である請求項１〜３のいずれか一項に記載の電磁波吸収シート。
【公開番号】特開２０１０−１２３６７８（Ｐ２０１０−１２３６７８Ａ）
【公開日】平成２２年６月３日（２０１０．６．３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２９４６６２（Ｐ２００８−２９４６６２）
【出願日】平成２０年１１月１８日（２００８．１１．１８）
【出願人】（０００００３０６７）ＴＤＫ株式会社 (7,238)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年６月３日（２０１０．６．３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１１月１８日（２００８．１１．１８）
【出願人】（０００００３０６７）ＴＤＫ株式会社 (7,238)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]