説明

電磁波吸収フィルム

【課題】電磁波ノイズの吸収能に優れた安価な電磁波吸収フィルムを提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム10aと、その少なくとも一面に設けた磁性金属薄膜11aとを有する磁性複合フィルム1a、及びプラスチックフィルム10bと、その少なくとも一面に設けた非磁性金属薄膜11bとを有する非磁性複合フィルム1bを積層してなり、磁性金属薄膜11a及び非磁性金属薄膜11bの少なくとも一方に、多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されている電磁波吸収フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波ノイズの吸収能に優れた安価な電磁波吸収フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピュータ等の電子機器や通信機器には電磁波ノイズの漏洩及び進入を防止するシールド材が使用されているが、それらの高周波化及び小型化により一層高いシールド性を有するシールド材が求められている。
【0003】
このようなシールド材として、特開平11-40980号(特許文献1)は、高分子フィルムの一面に順に形成した厚さ0.2〜2μmの銅蒸着層、及び厚さ0.05〜0.2μmのニッケル蒸着層を有する電磁波シ−ルド材を提案している。特開2006-279912号(特許文献2)は、ナノグラニュラー構造を有するCo-Al-O磁性蒸着膜からなり、10〜1,000 Ω/□の表面抵抗を有する電磁波ノイズ抑制薄膜材料を提案している。しかしこれらの蒸着膜材料は、いずれも線状の隙間が設けられていないので、電磁波ノイズの吸収能が低い。
【0004】
そこで、特開平9-148782号(特許文献3)は、プラスチックフィルムの両面にアルミニウム蒸着膜を形成し、一方のアルミニウム蒸着膜をエッチングして多数の幅100μm以下の線状パターンを非導通状態で形成するとともに、他方のアルミニウム蒸着膜をエッチングして各目の径が500μm以下の網目状パターンを形成してなる電磁波吸収シ−ルド材を提案している。線状パターンは複数の異なる方向に配列されている。これは、電磁波吸収能の異方性を低減するためであると考えられる。しかし具体的に例示されている線パターン及び網目パターンは規則的であり、規則的なパターンでは種々の周波数を有する電磁波ノイズを十分に吸収することができない。その上、このような微細なパターンをエッチングで形成するのは高コストであり、実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-40980号公報
【特許文献2】特開2006-279912号公報
【特許文献3】特開平9-148782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、電磁波ノイズの吸収能に優れた安価な電磁波吸収フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、プラスチックフィルムに形成した磁性金属薄膜及び非磁性金属薄膜の少なくとも一方に、多数の平行で断続的な線状痕を不規則に形成すると、種々の周波数を有する電磁波ノイズを十分に吸収することができることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の第一の電磁波吸収フィルムは、プラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた磁性金属薄膜とを有する磁性複合フィルム、及びプラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた非磁性金属薄膜とを有する非磁性複合フィルムを積層してなり、前記磁性金属薄膜及び前記非磁性金属薄膜の少なくとも一方に、多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第二の電磁波吸収フィルムは、プラスチックフィルムと、その一面に設けた磁性金属薄膜と、他面に設けた非磁性金属薄膜とを有し、前記磁性金属薄膜及び前記非磁性金属薄膜の少なくとも一方に、多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されていることを特徴とする。
【0010】
前記磁性金属はニッケルが好ましく、前記非磁性金属はアルミニウムが好ましい。少なくとも前記非磁性金属薄膜に前記線状痕が形成されているのが好ましい。線状痕は1〜100μmの平均幅及び1〜100μmの平均間隔を有し、かつ線状痕の90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内の幅を有するのが好ましい。近傍界[放射源の近傍で、一般的に式:d0≦λ0/(2π)(d0は放射源から電磁波吸収フィルムまでの距離であり、λ0は電磁波ノイズの波長である)で表される領域]において特に優れた電磁波ノイズの吸収性を得るために、前記磁性金属薄膜の表面抵抗を1〜377Ω/□とし、かつ前記非磁性金属薄膜の表面抵抗を377〜10,000Ω/□とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電磁波吸収フィルムは、磁性金属薄膜及び非磁性金属薄膜を有し、これらの少なくとも一方に多数の実質的に平行で断続的な線状痕が不規則に形成されているので、種々の周波数を有する電磁波ノイズを十分に吸収することができる。さらに本発明の電磁波吸収フィルムは、表面に硬質微粒子を有するロールを用いて安価に製造できる。特に磁性金属薄膜の表面抵抗を1〜377Ω/□とし、非磁性金属薄膜の表面抵抗を377〜10,000Ω/□とした電磁波吸収フィルムは、近傍界における電磁波ノイズの吸収性に優れており、高周波数で作動する小型の電子機器や通信機器用のシールド材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1(a)】本発明の一実施例による電磁波吸収フィルムを示す断面図である。
【図1(b)】図1(a)の分解断面図である。
【図1(c)】図1(a)のフィルムを構成する複合フィルムを部分的に示す平面図である。
【図1(d)】図1(c)のA-A端面図である。
【図1(e)】図1(d)のA部分を示す拡大端面図である。
【図2(a)】本発明の別の実施例による電磁波吸収フィルムを部分的に示す平面図である。
【図2(b)】本発明のさらに別の実施例による電磁波吸収フィルムを部分的に示す平面図である。
【図2(c)】本発明のさらに別の実施例による電磁波吸収フィルムを部分的に示す平面図である。
【図2(d)】本発明のさらに別の実施例による電磁波吸収フィルムを部分的に示す平面図である。
【図3(a)】本発明のさらに別の実施例による電磁波吸収フィルムを部分的に示す平面図である。
【図3(b)】図3(a)のB-B端面図である。
【図4】本発明のさらに別の実施例による電磁波吸収フィルムを示す断面図である。
【図5(a)】複合フィルムに線状痕を形成する装置の一例を示す斜視図である。
【図5(b)】図5(a)の線状痕形成装置を示す平面図である。
【図5(c)】図5(b)のC-C断面図である。
【図5(d)】プラスチックフィルムの進行方向に対して傾斜した線状痕が形成される原理を説明するための部分拡大平面図である。
【図5(e)】図5(a)の線状痕形成装置において、プラスチックフィルムに対するパターンロール及び押えロールの傾斜角度を示す部分平面図である。
【図6】複合フィルムに線状痕を形成する装置の別の例を概略的に示す部分断面図である。
【図7】複合フィルムに線状痕を形成する装置のさらに別の例を示す斜視図である。
【図8】複合フィルムに線状痕を形成する装置のさらに別の例を示す斜視図である。
【図9】複合フィルムに線状痕を形成する装置のさらに別の例を示す斜視図である。
【図10】複合フィルムに線状痕を形成する装置のさらに別の例を示す斜視図である。
【図11】表面抵抗を測定するために、電磁波吸収フィルムの試験片上に電極を配置した状態を示す平面図である。
【図12】伝送減衰率の測定に使用した装置の構成を示す概略図である。
【図13】実施例1及び2の電磁波吸収フィルムにおける周波数と伝送減衰率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1] 電磁波吸収フィルム
(1) 第一の電磁波吸収フィルム
図1(a)〜図1(e)は、第一の電磁波吸収フィルムの一例を示す。この電磁波吸収フィルムでは、プラスチックフィルム10aの一面に磁性金属薄膜11aが形成された磁性複合フィルム1aと、プラスチックフィルム10bの一面に非磁性金属薄膜11bが形成された非磁性複合フィルム1bとを、接着層14を介して積層してなり、磁性金属薄膜11a及び非磁性金属薄膜11bの全面に多数の実質的に平行で断続的な線状痕12が不規則に形成されている。
【0014】
(a) プラスチックフィルム
プラスチックフィルム10a,10bを形成する樹脂は、絶縁性とともに十分な強度、可撓性及び加工性を有する限り特に制限されず、例えばポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアリーレンサルファイド(ポリフェニレンサルファイド等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等が挙げられる。プラスチックフィルム10a,10bの厚さは10〜100μm程度で良い。
【0015】
(b) 磁性金属薄膜
磁性金属薄膜11aを形成する磁性金属は特に限定されないが、耐食性及びコストの観点からニッケル、コバルト又はこれらの合金が好ましく、ニッケルがより好ましい。磁性金属薄膜11aの厚さは0.01μm以上が好ましい。厚さの上限は特に限定的でないが、実用的には10μm程度で十分である。勿論、10μm超の磁性金属薄膜11aを用いても良いが、高周波数の電磁波ノイズの吸収能はほとんど変わらない。安価に製造するためには、磁性金属薄膜11aの厚さは0.01〜5μmが好ましい。
【0016】
(c) 非磁性金属薄膜
非磁性金属薄膜11bを形成する非磁性金属は特に限定されないが、耐食性及びコストの観点から銅、銀、アルミニウム又はこれらの合金が好ましく、アルミニウムがより好ましい。非磁性金属薄膜11bの厚さは上記と同じでよい。
【0017】
(d) 線状痕
顕微鏡写真を図式化した図1(c)及び図1(d)から明らかなように、金属薄膜11a,11bに多数の実質的に平行で断続的な線状痕12が直交するように形成されている。なお説明のために、図1(d)では、一方向の線状痕12について、その配向方向に対して直角に切った切り口のみを示し、線状痕12の深さを実際より誇張している。線状痕12の長さ、幅及び間隔は不規則であり、非常に細い線状痕から非常に太い線状痕まで、種々の間隔で不規則に配列している。図1(d)及び図1(e)に示すように、線状痕12には、金属薄膜11a,11bを貫通して非導通部121を形成しているものと、貫通していないが比較的深く設けられて高抵抗部122を形成しているものとがある。図1(e)に示すように、線状高抵抗部122の底部は、金属薄膜11a(11b)の厚さT1の少なくとも約50%に相当する深さT2に達しているのが好ましく、約70%に相当する深さT3に達しているのがより好ましい。この例では線状非導通部121及び線状高抵抗部122の両方が形成されているが、これらのうちの一方のみが形成されていてもよい。すなわち、線状非導通部121及び/又は線状高抵抗部122により隔てられた不定形導体が不規則に接続していると見ることができる。図1(c)は不定形導体の接続部の一例(G)を示す。このような不定形導体の不規則な接続により、種々の周波数の電磁波ノイズを効率良く吸収することができる。
【0018】
後述するように線状痕12は、プラスチックフィルム10a,10b上の金属薄膜11a,11bを、高硬度微粒子をランダムに有するパターンロールで摺接することにより形成される。従って、図1(c)〜図1(e)に示すように線状痕12は不規則に分布しているだけでなく、線状痕12の形成の際に金属薄膜11a,11bは一部塑性変形し、線状痕12はテーパ状の断面を有するだけでなく、その両側が盛り上がっているので、線状痕12の幅及び間隔は厚さ方向の位置により異なる。客観的な比較を可能にするために、線状痕12の幅Wは元の表面Sと交差する位置で求め、隣接する線状痕12の間隔Iは元の表面Sと交差する位置で求める。
【0019】
図1(e)に示すように、比較的浅い線状痕12’もあるが、その幅W’は幅Wより著しく小さい。また稀に並外れて幅広い線状痕が形成されることがある。金属薄膜11a,11bの断面観察の結果、このように著しく狭い線状痕12’や並外れて幅広い線状痕は線状痕の全数の10%未満であることが分った。従って、線状痕の90%以上について幅Wの範囲を求めれば良い。その結果、線状痕12の90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内の幅Wを有するのが好ましいことが分った。0.1μm未満又は1,000μm超の幅の線状痕12は、電磁波ノイズの吸収にほとんど寄与しない。線状痕12の90%以上の幅Wは0.1〜100μmの範囲内にあるのがより好ましく、0.1〜20μmの範囲内にあるのが最も好ましい。また線状痕12の90%以上の間隔Iも0.1〜1,000μmの範囲内にあるのが好ましく、0.1〜100μmの範囲内にあるのがより好ましく、0.1〜20μmの範囲内にあるのが最も好ましい。
【0020】
線状痕12の平均幅Wav及び平均間隔Iavは、それぞれ0.1〜1,000μmの上記範囲内の幅及び間隔を平均した値である。線状痕12の平均幅Wavは1〜100μmが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmが最も好ましい。また平均幅Wav/金属薄膜11a(11b)の厚さの比は2〜100が好ましい。線状痕12の平均間隔Iavは1〜100μmが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmが最も好ましい。平均幅Wav及び平均間隔Iavがそれぞれ1μm未満又は10μm超であると、十分な電磁波ノイズの吸収能が得られない。
【0021】
線状痕12の長さLは、摺接条件(主としてパターンロール及びフィルムの相対的な周速、及びフィルムのパターンロールへの巻回角度)により決まるので、摺接条件を変えない限り大部分がほぼ同じである(ほぼ平均長さに等しい)。線状痕12の平均長さLavは特に限定的でなく、実用的には1〜100 mm程度で良い。
【0022】
図2(a)〜図2(d)は線状痕12のパターンの別の例をそれぞれ示す。線状痕12の形成は、通常長尺の複合フィルム(少なくとも一面に金属薄膜11a(11b)を形成したプラスチックフィルム10a(10b))に対して行うが、パターンロールの数や軸線方向を適宜設定することにより、図2(a)〜図2(d)に示すように、配向の方向及び数が異なる種々のパターンの線状痕12が得られる。特に図1(c)及び図2(a)〜図2(c)に示すように、複数方向に線状痕12を形成すると、電磁波吸収能に異方性が実質的にない電磁波吸収フィルム1が得られる。
【0023】
(e) 微細穴
図3(a)及び図3(b)は第一の電磁波吸収フィルムのさらに別の例を示す。この例では、金属薄膜11aに線状痕12の他に、多数の微細穴13がランダムに設けられている。図示の例では微細穴13は金属薄膜11aを貫通しているが、微細穴13は必ずしも金属薄膜11aを貫通していなくてもよい。微細穴13は、線状痕12の場合と同様に表面に高硬度微粒子を有するパターンロールを金属薄膜11aに押圧することにより形成される。貫通穴を形成するためには、高硬度微粒子の平均直径は金属薄膜11aの厚さの約2倍以上ある必要があり、実用的には高硬度微粒子の平均直径は金属薄膜11aの厚さより十分に大きい。微細穴13は、金属薄膜11a,11bの一方にあってもよいし、これらの両方にあってもよい。
【0024】
微細穴13の開口径Dは元の表面Sと交差する位置で求める。金属薄膜11aの厚さによるが、一般に微細穴13の開口径Dは90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内にあるのが好ましく、0.1〜500μmの範囲内にあるのがより好ましい。また微細穴13の平均開口径Davは0.5〜100μmの範囲内にあるのが好ましく、1〜50μmの範囲内にあるのがより好ましい。平均開口径Davの上限は20μmがさらに好ましく、10μmが最も好ましい。また平均開口径Dav/金属薄膜11の厚さの比は2〜100が好ましい。微細穴13の平均密度は500個/cm2以上であるのが好ましく、1×104〜3×105個/cm2であるのがより好ましく、1×104〜2×105個/cm2であるのが最も好ましい。
【0025】
(f) 接着層
接着層14としては、シーラントフィルム(ポリエチレンフィルム等)、合成樹脂コンパウンド、ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0026】
(g) エンボス
電磁波ノイズの吸収能をさらに向上するために、電磁波吸収フィルム1に円錐状、球面状等の多数のエンボスを施しても良い。エンボスの直径及び深さはそれぞれ100μm以上が好ましく、150〜250μmがより好ましい。エンボスの面積率は20〜60%が好ましい。
【0027】
(2) 第二の電磁波吸収フィルム
図4は、本発明の第二の電磁波吸収フィルムの一例を示す。この電磁波吸収フィルムでは、プラスチックフィルム10の一面に磁性金属薄膜11aが形成されているとともに、他面に非磁性金属薄膜11bが形成されており、磁性金属薄膜11a及び非磁性金属薄膜11bの少なくとも一方の全面に多数の実質的に平行で断続的な線状痕12が不規則に形成されている以外、図1(a)〜図1(f)に示す電磁波吸収フィルム1と同じである。第二の電磁波吸収フィルムも、微細穴13及びエンボスを有してもよい。これらは第一の電磁波吸収フィルムについて説明したものと同じで良い。
【0028】
第二の電磁波吸収フィルムでは、金属薄膜11a,11bの上に、線状痕12(及び微細穴13)を覆うようにプラスチック保護層を形成しても良い。プラスチック保護層は、上記樹脂からなるプラスチックフィルムを熱ラミネート法等で金属薄膜11a,11bに接着することにより形成できる。プラスチック保護層の厚さは10〜100μmが好ましい。
【0029】
[2] 電磁波吸収フィルムの製造方法
(1) 第一の電磁波吸収フィルムの製造方法
第一の電磁波吸収フィルム1は、プラスチックフィルム10a,10bの一面に蒸着法、めっき法又は箔接合法により磁性金属薄膜11a,非磁性金属薄膜11bをそれぞれ形成し、得られた磁性複合フィルム1a及び非磁性複合フィルム1bの少なくとも一方について、金属薄膜の側を多数の高硬度の微粒子を表面に有するパターンロールに摺接させることにより、多数の実質的に平行な線状痕12を形成した後、複合フィルム1a,1bを、接着層14を介して積層することにより製造する。
【0030】
(a) 金属薄膜の形成
磁性金属及び非磁性金属の蒸着は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、プラズマCVD法、熱CVD法、光CVD法等の化学気相蒸着法等により行うことができる。
【0031】
(b) 線状痕の形成
(i) 線状痕形成装置
図1(c)及び図2(a)〜図2(c)に示すような複数方向に配向する線状痕12は、プラスチックフィルム10a,10bに形成した金属薄膜11a,11bに、多数の高硬度の微粒子を表面に有し、軸線方向が異なる複数のパターンロールを摺接させる装置を用いて形成することができる。
【0032】
図5(a)〜図5(e)は、図1(c)及び図2(c)に示すような直交する線状痕を形成する装置の例を示す。この線状痕形成装置は上流側から順に、(1) プラスチックフィルム10a(10b)の一面に金属薄膜11a(11b)が形成された複合フィルム1a(1b)を巻き出すリール21と、(2) 複数のガイドロール22と、(3) 多数の高硬度の微粒子を表面に有し、複合フィルム1a(1b)の幅方向と異なる方向で金属薄膜11a(11b)の側に配置された第一のパターンロール2aと、(4) 第一のパターンロール2aの上流側で、金属薄膜11a(11b)の反対側に配置された第一の押えロール3aと、(5) 多数の高硬度の微粒子を表面に有し、複合フィルム1a(1b)の幅方向に関して第一のパターンロール2aと逆方向に、かつ金属薄膜11a(11b)の側に配置された第二のパターンロール2bと、(6) 第二のパターンロール2bの下流側で、金属薄膜11a(11b)の反対側に配置された第二の押えロール3bと、(7) 第一及び第二のパターンロール2a,2bの間で、金属薄膜11a(11b)の側に配置された電気抵抗測定手段4aと、(8) 第二のパターンロール2bの下流側で、金属薄膜11a(11b)の側に配置された電気抵抗測定手段4bと、(9) 複数のガイドロール23と、(10) 線状痕を形成した複合フィルム1a'(1b')を巻き取るリール24とを有する。各パターンロール2a,2bは、微小な撓みを防止するためにバックアップロール5a,5bで支持されている。バックアップロール5a,5bは、パターンロール2a,2bに悪影響を与えないようにゴムロールが好ましい。
【0033】
図5(c)に示すように、複合フィルム1a(1b)の金属薄膜11a(11b)が押圧された状態で各パターンロール2a,2bと摺接するように、各押えロール3a,3bの縦方向位置は複合フィルム1a(1b)と各パターンロール2a,2bとの摺接位置より低い。この条件を満たしたまま各押えロール3a,3bの縦方向位置を調整することにより、金属薄膜11a(11b)の各パターンロール2a,2bへの押圧力を調整するとともに、中心角θ1により表される摺接距離を調整することができる。
【0034】
図5(d)は線状痕12aが複合フィルム1a(1b)の進行方向に対して斜めに形成される原理を示す。複合フィルム1a(1b)の進行方向に対してパターンロール2aは傾斜しているので、パターンロール2a上の硬質微粒子の移動方向(回転方向)aと複合フィルム1a(1b)の進行方向bとは異なる。そこで三角形Xで示すように、任意の時点においてパターンロール2a上の点Aにおける硬質微粒子が複合フィルム1a(1b)の金属薄膜と接触して痕Bが形成されたとすると、所定の時間後に硬質微粒子は点A’まで移動し、痕Bは点B’まで移動する。点Aから点A’まで硬質微粒子が移動する間、痕は連続的に形成されるので、点B’から点A’まで延在する線状痕12aが形成されたことになる。
【0035】
第一及び第二のパターンロール2a,2bで形成される第一及び第二の線状痕群12A,12Bの方向及びそれらの交差角は、各パターンロール2a,2bの複合フィルム1a(1b)に対する角度、及び/又は複合フィルム1a(1b)の走行速度に対する各パターンロール2a,2bの周速度を調整することにより調整することができる。例えば、複合フィルム1a(1b)の走行速度bに対するパターンロール2aの周速度aを増大させると、図5(d)の三角形Yで示すように線状痕12aを線分C’D’のように複合フィルム1a(1b)の進行方向に対して45°にすることができる。同様に、複合フィルム1a(1b)の幅方向に対するパターンロール2aの傾斜角θ2を変えると、パターンロール2aの周速度aを変えることができる。これはパターンロール2bについても同様である。従って、両パターンロール2a,2bの調整により、線状痕12a,12bの方向を図1(c)及び図2(c)に例示するように変更することができる。
【0036】
各パターンロール2a,2bは複合フィルム1a(1b)に対して傾斜しているので、各パターンロール2a,2bとの摺接により複合フィルム1a(1b)は幅方向の力を受け、蛇行するおそれがある。複合フィルム1a(1b)の蛇行を防止するために、各パターンロール2a,2bに対する各押えロール3a,3bの縦方向位置及び/又は角度を調整するのが好ましい。例えば、パターンロール2aの軸線と押えロール3aの軸線との交差角θ3を適宜調節すると、幅方向の力をキャンセルするように押圧力の幅方向分布が得られ、もって蛇行を防止することができる。またパターンロール2aと押えロール3aとの間隔の調整も蛇行の防止に寄与する。
【0037】
複合フィルム1a(1b)の蛇行及び破断を防止するために、第一及び第二のパターンロール2a,2bの回転方向は複合フィルム1a(1b)の進行方向と同じであるのが好ましい。
【0038】
図5(b)に示すように、各電気抵抗測定手段(ロール)4a,4bは絶縁部40を介して両端部に一対の電極41,41を有し、電極41,41間において線状痕12a,12bを有する金属薄膜11a(11b)の電気抵抗を測定する。電気抵抗測定ロール4a,4bで測定した電気抵抗値を目標の電気抵抗値と比較し、それらの差に応じて運転条件を調整する。調整される運転条件は、複合フィルム1a(1b)の走行速度、パターンロール2a,2bの回転速度及び傾斜角θ2、押えロール3a,3bの縦方向位置、パターンロール2a,2bからの距離、及びパターンロール2a,2bからの傾斜角θ3等である。
【0039】
図6に示すようにパターンロール2a,2bの間に第三の押えロール3cを設けると、複合フィルム1a(1b)の金属薄膜11a(11b)がパターンロール2a,2bに押圧される力が増大するだけでなく、中心角θ1により表される金属薄膜11a(11b)の摺接距離が増大し、線状痕12a,12bの深さ及び幅が大きくなる。その上、複合フィルム1a(1b)の蛇行の防止にも寄与する。
【0040】
図7は、図2(a)に示すような三方向に配向する線状痕を形成する装置の例を示す。この装置は、第二のパターンロール2bの下流側に複合フィルム1a(1b)の幅方向に配置された第三のパターンロール2cを設けた以外、図5(a)〜図5(e)に示す装置と同じである。第三のパターンロール2cの回転方向は複合フィルム1a(1b)の進行方向と同じでも逆でも良い。幅方向に配置された第三のパターンロール2cは複合フィルム1a(1b)の進行方向に延在する線状痕12cを形成する。第三の押えロール30bは第三のパターンロール2cの上流側でも下流側でも良い。勿論、第三のパターンロール2cの下流側に電気抵抗測定ロール4cを設けても良い。
【0041】
図8は、図2(b)に示すような四方向に配向する線状痕を形成する装置の例を示す。この装置は、第二のパターンロール2bと第三のパターンロール2cとの間に第四のパターンロール2dを設け、第四のパターンロール2dの上流側に第四の押えロール3dを設けた以外、図7に示す装置と同じである。第四のパターンロール2dの回転速度を遅くすることにより、図5(d)における三角形Zで示すように、線状痕12a'の方向(線分E’F’)を複合フィルム1a(1b)の幅方向にすることができる。
【0042】
図9は、図2(c)に示すような直交する線状痕を形成する装置の別の例を示す。この線状痕形成装置は、基本的に第二のパターンロール32bが複合フィルム1a(1b)の幅方向に配置されている点で図5(a)〜図5(e)に示す装置と異なる。従って、図5(a)〜図5(e)に示す装置と異なる部分のみ以下説明する。第二のパターンロール32bの回転方向は複合フィルム1a(1b)の進行方向と同じでも逆でも良い。また第二の押えロール33bは第二のパターンロール32cの上流側でも下流側でも良い。この装置は、図5(d)における三角形Zで示すように、線状痕12a'の方向(線分E’F’)を複合フィルム1a(1b)の幅方向にし、図2(c)に示す線状痕を形成するのに適している。
【0043】
図10は、図2(d)に示すような一方向に配向する線状痕を形成する装置の例を示す。この線状痕形成装置は、複合フィルム1a(1b)の幅方向に配置されたパターンロール42のみを有する以外、図9に示す装置と同じである。パターンロール42は複合フィルム1a(1b)の進行方向に延在する線状痕12b'を形成する。押えロール43はパターンロール42の上流側でも下流側でも良い。パターンロール42の上流側及び下流側に電気抵抗測定ロール44a及び44bを設けても良い。
【0044】
(ii) 運転条件
線状痕の傾斜角及び交差角だけでなく、それらの深さ、幅、長さ及び間隔を決める運転条件としては、複合フィルムの走行速度、パターンロールの回転速度及び傾斜角θ2、複合フィルムの張力(押えロールの縦方向位置、パターンロールからの距離、及びパターンロールからの傾斜角θ3等により決まる。)等である。複合フィルムの走行速度は5〜200 m/分が好ましく、パターンロールの回転速度(周速)は10〜2,000 m/分が好ましい。傾斜角θ2は20°〜60°が好ましく、特に約45°が好ましい。複合フィルムの張力は0.05〜5kgf/cm幅が好ましい。
【0045】
(iii) パターンロール
線状痕形成装置に使用するパターンロールは、特開2002-59487号に記載されているダイヤモンドロールが好ましい。線状痕の幅は微粒子の粒径により決まるので、ダイヤモンド微粒子の90%以上は1〜1,000μmの範囲内の粒径を有するのが好ましく、10〜200μmの範囲内の粒径がより好ましい。ダイヤモンド微粒子はロール面に50%以上の面積率で付着しているのが好ましい。
【0046】
(c) 微細穴の形成
特許第2063411号等に記載の方法により金属薄膜11a(11b)に多数の微細穴13を形成することができる。例えば、鋭い角部を有するモース硬度5以上の多数の微粒子が表面に付着した第一ロール(上記線状痕形成用ロールと同じで良い)と、第一ロールに押圧された平滑な第二ロールとの間隙に、金属薄膜11a(11b)を第一ロールの側にして、複合フィルム1a(1b)を通過させる。微細穴13の平均開口径、平均面積率及び深さは、第一ロールの微粒子の粒径及び面積率並びに押圧力等により調整できる。
【0047】
(d) 積層
少なくとも一方が線状痕12を有し、必要に応じて微細穴13を形成した磁性複合フィルム1a及び非磁性複合フィルム1bを、接着層14を介して積層する。
【0048】
(e) エンボス加工
上記積層工程(d)の後、円錐状、球面状等の多数の突起を有するロール等を用いてエンボス加工する。
【0049】
(2) 第二の電磁波吸収フィルムの製造方法
第二の電磁波吸収フィルム1用の複合フィルムは、プラスチックフィルム10の一面に蒸着法、めっき法又は箔接合法により磁性金属薄膜11aを形成し、他面に蒸着法、めっき法又は箔接合法により非磁性金属薄膜11bを形成することにより得られる。線状痕12及び微細穴13の形成方法自体は第一の電磁波吸収フィルムの場合と同じである。必要に応じて、プラスチックフィルムを熱ラミネート法等で金属薄膜11a,11bに接着することにより、プラスチック保護層を形成することができる。
【0050】
[3] 電磁波吸収フィルムの特性
電磁波吸収フィルム表面での電磁波ノイズの反射係数Sは、式:S=(R−Z)/(R+Z)[ただしZは入射する電磁波ノイズの特性インピーダンス(Ω)であり、Rは電磁波吸収フィルムの表面抵抗(Ω/□)である]により表されるので、RをZに等しくすると、反射係数Sが0となり、理論上反射波が生じない。ただし近傍界[放射源の近傍で、一般的に式:d0≦λ0/(2π)(d0は放射源から電磁波吸収フィルムまでの距離であり、λ0は電磁波ノイズの波長である)で表される領域]ではZがd0に応じて大きく変化し、遠方界[放射源から十分に遠く、一般的に式:d0>λ0/(2π)(d0及びλ0は各々上記と同じである)で表される領域]では、Zが自由空間の特性インピーダンスとほぼ同じである。そのため電磁波吸収フィルムを近傍界に配置する場合、RがZに近くなるように、Zに応じてRを調整すればよく、遠方界に配置する場合、Rを自由空間の特性インピーダンス(377Ω)に近いレベルにすればよい。具体的には、電磁波吸収フィルムを近傍界に配置する場合、磁性金属薄膜の表面抵抗(シート抵抗)を1〜377Ω/□とし、非磁性金属薄膜の表面抵抗を377〜10,000Ω/□とするのが好ましく、これにより電界及び磁界の両方を効率的に吸収することができる。磁性金属薄膜の表面抵抗は5〜377Ω/□がより好ましく、非磁性金属薄膜の表面抵抗は377〜7,000Ω/□がより好ましい。表面抵抗は直流二端子法で測定する。表面抵抗は、金属薄膜11a,11bの材料、厚さ、線状痕12の幅、間隔及び長さを選択することにより調整することができる。
【0051】
このように電磁波吸収フィルムは、近傍界及び遠方界のいずれにおいても電磁波の反射を抑制することができる。その上、多数の不規則な線状痕により、種々の周波数を有する電磁波ノイズが吸収される。その結果、本発明の電磁波吸収フィルムは優れた電磁波ノイズの吸収能を有する。特に配向が異なるように(好ましくは直交するように)線状痕12が形成された電磁波吸収フィルムは、電磁波ノイズの吸収能に異方性が少なく、優れた電磁波ノイズの吸収能を有する。
【0052】
[4] 用途
このような特徴を有する本発明の電磁波吸収フィルムは、携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビ等の電子機器や通信機器;ICタグ、非接触ICカード等を用いるRFID(Radio Frequency Identification)システム;無線LANシステム等における電磁波ノイズの漏洩及び進入の防止や、情報の漏洩防止等に適しており、電子・通信機器の筺体、建築物の壁等に配置することができる。
【0053】
電子機器筺体の内壁に電磁波吸収フィルムを設ける場合、例えば金属部品等とともに電磁波吸収フィルムを予め金型内に設置し、そこに樹脂を充填するインサート成形法を用いることができる。
【0054】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1
(1) 複合フィルムの作製
二軸延伸PETフィルム[厚さ:16μm、誘電率:3.2(1 MHz)、誘電正接:1.0%(1 MHz)、融点:265℃、ガラス転移温度:75℃]の一面に、真空蒸着法により厚さ30 nmのニッケル層を形成し、磁性複合フィルムを作製した。厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムの一面に、真空蒸着法により厚さ50 nmのアルミニウム層を形成し、非磁性複合フィルムを作製した。
【0056】
(2) 線状痕の形成
図10に示す装置を用い、粒径の分布が50〜80μmのダイヤモンド微粒子を電着したパターンロール42に、ニッケル層をパターンロール42の側にして磁性複合フィルム1aを摺接させ、図2(d)に示す一方向に配向する線状痕を形成した。複合フィルム1aの周速を10 m/分とし、パターンロール2の周速を200 m/分とし、複合フィルム1aに掛ける張力を0.1 kgf/cm幅とし、フィルムの巻回角度θ1を30°とした。得られたフィルムの線状痕の幅は0.5〜5μmの範囲であり、線状痕の平均幅は2μmであり、線状痕の間隔は2〜10μmの範囲であり、線状痕の平均間隔は5μmであり、線状痕の平均長さは5mmであった。
【0057】
図8に示す装置を用い、粒径の分布が100〜150μmのダイヤモンド微粒子を電着したパターンロール2a〜2dに、アルミニウム層をパターンロール2a〜2dの側にして非磁性複合フィルム1bを摺接させ、運転条件(複合フィルムの走行速度、パターンロール2a〜2dの回転速度及び傾斜角θ2、フィルムの巻回角度θ1及び複合フィルムの張力)を適宜設定することにより、図2(b)に示す四方向に配向する線状痕を形成した。得られたフィルムの線状痕の幅は2〜10μmの範囲であり、線状痕の平均幅は5μmであり、線状痕の間隔は0.5〜5μmの範囲であり、線状痕の平均間隔は2μmであり、線状痕の平均長さは5mmであった。
【0058】
(3) 表面抵抗の測定
表面抵抗を直流二端子法で測定した。図11に示すように、線状痕を形成した磁性複合フィルム1aを15 cm×15 cmにカットした試験片の線状痕と直交する方向の両端部に、4個ずつ銅電極(長さ3cm×幅1cm)6を配置し、対向する四対の電極6,6間の抵抗値を測定し、平均することにより、線状痕と直交する方向の表面抵抗を求めた結果、30Ω/□であった。これと同様にして、線状痕を形成した非磁性複合フィルム1bの表面抵抗を求めた結果、6,000Ω/□であった。
【0059】
(4) 電磁波吸収フィルムの作製
線状痕を形成した磁性複合フィルム及び非磁性複合フィルムを、ニッケル層及びアルミニウム層が対向するように接合し、図1(a)に示す電磁波吸収フィルムを作製した。
【0060】
(5) 電磁波ノイズの吸収能の評価
電磁波吸収フィルムの電磁波ノイズの吸収能を以下の方法により評価した。図12に示すように、裏面を接地した誘電基板71上に形成したマイクロストリップライン(80×50 mm)7と、その両端を同軸ケーブル81,81で接続したネットワークアナライザ8とを有する装置を用い、マイクロストリップライン7上に電磁波吸収フィルム(80×50 mm)1を配置し、ネットワークアナライザ8から0.3〜12 GHzの周波数の信号をマイクロストリップライン7に入射し、反射量[S11(dB)]及び透過量[S21(dB)]を測定し、式:RTP=-10 log{10S21/10/(1-10S11/10)}に従い、伝送減衰率RTP(dB)を求めた。結果を図13に示す。
【0061】
実施例2
厚さ16μmの二軸延伸PETフィルムの一面に、真空蒸着法により厚さ50 nmのニッケル層を形成し、磁性複合フィルムを作製した。磁性複合フィルムの表面抵抗は10Ω/□であった。
【0062】
実施例1と同じ非磁性複合フィルム(厚さ50 nmのアルミニウム層と厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムとからなる)に対して、図8に示す装置を用い、粒径の分布が50〜80μmのダイヤモンド微粒子を電着したパターンロール2a〜2dを用いた以外実施例1と同様にして、四方向に配向する線状痕を形成した。得られたフィルムの線状痕の幅は0.5〜5μmの範囲であり、線状痕の平均幅は2μmであり、線状痕の間隔は2〜10μmの範囲であり、線状痕の平均間隔は5μmであり、線状痕の平均長さは5mmであった。線状痕を形成した非磁性複合フィルムの表面抵抗は500Ω/□であった。
【0063】
これらの磁性複合フィルム及び非磁性複合フィルムを用いた以外実施例1と同様にして電磁波吸収フィルムを作製し、電磁波ノイズの吸収能を評価した。結果を図13に示す。
【0064】
図13から明らかなように、実施例1及び2の電磁波吸収フィルムはいずれも1〜12 GHzの電磁波に対して5dB以上の伝送減衰率を有していた。特に実施例1の電磁波吸収フィルムは、2〜12GHzの電磁波に対して20 dB以上の伝送減衰率を有していた。
【0065】
本発明を添付図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更をしても良い。
【符号の説明】
【0066】
1a,1b・・・複合フィルム
1a',1b'・・・線状痕付きの複合フィルム
10,10a,10b・・・プラスチックフィルム
11a,11b・・・金属薄膜
12,12a,12a',12b,12b',12c,12’・・・線状痕
121・・・非導通部
122・・・高抵抗部
12A,12B・・・線状痕群
13・・・微細穴
14・・・接着層
2a,2b,2c,2d,32b,32c,33b,42・・・パターンロール
3a,3b,3c,3d,30b,43・・・押えロール
4a,4b,4c,4d,44a,44b・・・電気抵抗測定手段(ロール)
40・・・絶縁部
41・・・電極
5a,5b,35a・・・バックアップロール
21,24・・・リール
22,23・・・ガイドロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた磁性金属薄膜とを有する磁性複合フィルム、及びプラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた非磁性金属薄膜とを有する非磁性複合フィルムを積層してなり、前記磁性金属薄膜及び前記非磁性金属薄膜の少なくとも一方に、多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されていることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
【請求項2】
プラスチックフィルムと、その一面に設けた磁性金属薄膜と、他面に設けた非磁性金属薄膜とを有し、前記磁性金属薄膜及び前記非磁性金属薄膜の少なくとも一方に、多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されていることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁波吸収フィルムにおいて、前記磁性金属がニッケルであり、前記非磁性金属がアルミニウムであり、少なくとも前記非磁性金属薄膜に前記線状痕が形成されていることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波吸収フィルムにおいて、前記線状痕は1〜100μmの平均幅及び1〜100μmの平均間隔を有し、前記線状痕の90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内の幅を有することを特徴とする電磁波吸収フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電磁波吸収フィルムにおいて、前記磁性金属薄膜の表面抵抗が1〜377Ω/□であり、前記非磁性金属薄膜の表面抵抗が377〜10,000Ω/□であることを特徴とする電磁波吸収フィルム。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図1(d)】
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【図1(e)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図5(e)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−278090(P2010−278090A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127040(P2009−127040)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(391009408)
【Fターム(参考)】