電磁界シミュレータおよび電磁界シミュレートプログラム
【課題】基板に光が入射して反射する一般的な解析モデルについて、強度一様な入射光を設定する事が可能な電磁界シミュレータおよび電磁界シミュレートプログラムを提供すること。
【解決手段】ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界シミュレータであって、前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出部と、前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出部と、前記2次元電磁界算出部の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定部と、前記波源設定部に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成部とを備える。
【解決手段】ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界シミュレータであって、前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出部と、前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出部と、前記2次元電磁界算出部の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定部と、前記波源設定部に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁界をシミュレートする電磁界シミュレータ、電磁界を解析する電磁界解析装置、コンピュータに電磁界をシミュレートさせる電磁界シミュレートプログラム、およびコンピュータに電磁界を解析させる電磁界解析プログラムに関連し、特に解析領域に入射する電磁波を正確にモデル化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信アンテナの性能などを解析するために、通信電波などを対象とした電磁界を計算する電磁界シミュレータや電磁界シミュレートプログラムが知られている。このような電磁界シミュレータや電磁界シミュレートプログラムで電磁界を解析する代表的な手法として、有限差分時間領域法(FDTD法:Finite Difference Time Domain法)が知られている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照。)。
【0003】
この手法は、電磁界の時間変化を記述する基本方程式であるマクスウェルの方程式を、空間的・時間的に差分化し、電磁界の時間変化を追跡するものである。この手法によれば、空間及び時間の離散化に用いるグリッドの間隔(ステップ)が十分に小さく設定されることにより、電磁界の時間変化が詳細にシミュレートされる。FDTD法の利点としては、計算原理が単純で演算の高速化が容易である点や、原理的に時間波形が計算されるため過渡的な電磁波特性が評価できる点や、3次元計算が容易である点などがあげられる。
【0004】
マクスウェル方程式は、以下の式1および式2で構成される。
【0005】
【数1】
【0006】
【数2】
【0007】
ここで、
E:電界ベクトル
H:磁界ベクトル
ε:誘電率
σ:導電率
μ:透磁率
式1と式2から得られる電磁界成分の時間変化をFDTD法で算出する式3および式4を以下に示す。(Allen Taflove, Susan C. Hagness : “Computational Electrodynamics”(ARTECH HOUCE, INC.)より)
【0008】
【数3】
【0009】
【数4】
【0010】
ここで、
Ex,Ey,Ez:電界各成分
Hx,Hy,Hz:磁界各成分
ε:誘電率
σ:導電率
Δx,Δy,Δz:空間グリッド幅
Δt:時間分割幅
なお、電磁界成分の右下に付された添字i,j,kは空間グリッドの番号であって、シミュレート空間の座標を表している。
【0011】
図1は、FDTD法における電界および磁界の各成分の配置を示す図である。
図1においては、FDTD法を適用する解析モデルを分割した1セルを示しており、1セルにおける各電界、磁界の成分の空間配置を示している。また、電磁界成分に付された添字n,n+1は時間ステップを示す番号で、時間ステップが1進むと時間がΔtだけ進む。式3および式4を順番に繰り返し計算することにより、3次元空間における電磁界の時間変化を計算することができる。
【0012】
FDTD法は差分式で計算するため、空間グリッドの間隔は電磁波の波長に対して1/10〜1/20程度になるよう小さく設定する必要がある。実際の計算では、解析するモデルの全ての電界と磁界の瞬間値を、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置に保存する。計算機の記憶容量には制限があるため、一般にモデルの大きさは波長の数倍に制限される。光は波長が1マイクロメートル以下の電磁波であるため、FDTD法で計算できる領域は数マイクロメートルに限られ、これまでは光のシミュレーションに用いる事例は少なかった。
【0013】
近年、光の波長より小さい構造を持つ光学素子を用いる、近接場光学が注目されている。近接場光学では回折の効果が大きくなり、光を光線として扱うことができなくなる。この場合、光を電磁波として扱い電波の解析と同じ手法を用いて光の伝搬計算を行う。この解析は本質的に3次元計算であり、かつ波長の数倍程度の領域を計算するためFDTD法が有効である。FDTD法を光学モデルに適用した近接場光学の研究、光学素子の開発設計が盛んに行われている。
【0014】
FDTD法による光学解析を行う場合、解析領域の外側から光が入射するとして解析を行うことが多い。前述の理由によりFDTD法で解析できる領域は数マイクロメートルに制限され、レーザ装置等の光源まで含んだ解析を行うことができないためである。入射光を再現する場合は、解析領域の一部の電界と磁界を光の周波数で振動させる。この電界の振動を式3と式4の演算の繰り返しと並行して実行すると、周りの電磁界に振動が伝わり電磁波の伝播、すなわち光の伝播がシミュレートされる。電磁界を励振する領域は、そこから電磁波が発生しているため波源と呼ぶ。波源は計算を実行するために仮想的に設定するもので、現実の解析対象には存在しないものである。
【0015】
正確な解析を行うためには、波源により入射する光を正しくモデル化することが重要である。例えば、ナノメートルサイズの微粒子や薄膜などに対して、入射する光の波長、方向、偏光が一定の条件を満たすと、光が局在し増強されるプラズモン共鳴の現象が知られている。また、反射や屈折といった一般的な光学現象も入射光の条件に強く依存するため、正確な入射光の設定が必要となる。
【0016】
そのような入射光の設定について特に必要となるのが、強度一様な平面波を任意の角度で物体に入射させる機能である。平面波とは、電磁波の位相が進行方向に垂直な平面上にそろっている状態を意味する。
【0017】
実際の実験系では、レーザ装置から出射するビームは通常数ミリメートルの大きさがあり、このビームを単レンズで絞っても数十マイクロメートルの大きさがある。そのため、FDTD法で解析する数マイクロメートルの狭い領域では入射強度は一様にすることが現実に近い解析条件となる。また、シミュレーションにおいては計算精度の確認が必要となるが、他の計算方法と比較する場合、数式を解くことによって得られる解析的な計算は強度一様な平面波を前提としている場合がほとんどである。従ってFDTD法でも強度一様な平面波を設定し、比較のための計算を行う必要がある。
【0018】
しかし、電磁波伝搬方向に対して垂直となる平面領域の電界と磁界を単純に励振するだけでは、入射光を強度一様な平面波に設定することはできない。
図2は、波源として1つの励振面で一様な振幅、同位相で電界を励振したときに発生する電磁波の電界分布である。
【0019】
電界のみを励振すると波源の両面から電磁波が発生するため、図2で示した計算では電界と同時に磁界も励振して一方向にのみ電磁波が伝搬するようにしている。励振条件は平面波をモデル化しているのに対して、伝搬する電磁波は強度が不均一になり、また±X方向に広がって平面波になっていない。これは電磁波の回折現象がおきるためである。
【0020】
FDTD法では解析空間全体でマクスウェル方程式を直接計算するため、自然現象と同様に、電磁波が伝搬すると干渉や回折が再現される。図2では励振面上で電界振幅を一定にしているため、励振面の端で電磁波が遮られたことと同様になり強い回折が起きている。FDTD法で強度一様な平面波を実現するためには、回折が起きないような対策が必要となる。
【0021】
回折を回避する最も簡単な方法は、強度分布をガウス分布に設定して励振面境界の電界強度を0にすればよい。分布幅を十分大きく取れば近似的に強度一様と見なすことができる。この手法は励振面の構成はそのままで、強度だけを変えることで実現できるので実現が容易である。しかし、この手法にはあくまで近似的にしか強度一様を実現できないという点と、大きな計算領域が必要となる問題点がある。
【0022】
ガウス分布で、励振領域の端で回折が起きないようにしても、分布幅が波長と同程度のサイズで小さい場合は回折の影響が大きくなり、電磁波は発散波に変化する。分布幅が大きければ回折は小さくできるが、対象とする物体が入射光の波長より小さくナノメートルサイズの場合であっても、波長より大きな励振面を設定する事になり、計算時間や使用メモリ量が大幅に増大する。効率よく解析を実行するためには、励振領域が小さくても回折が起きない波源が必要とされる。
【0023】
回折現象を回避して強度一様な入射光を実現するために、非特許文献3に示される手法が知られている。
図3は、6つの励振面で構成した波源から伝播する電磁波の電界強度分布を示す図である。
【0024】
図3に示すように電磁波が伝搬する領域を励振面で囲み、伝搬する電磁波に合わせて全ての励振面の電界と磁界を励振することで、回折を起こらないようにする事ができる。
回折を回避する手法を具体的に説明する。
【0025】
図4は、6つの励振面で構成した従来の波源を示す図である。
図4に示すように解析空間に対して6面の励振面で構成する波源を想定し、電磁波の進行方向に対して垂直となる励振面1からZ方向に電磁波が伝搬する場合を考える。
【0026】
電磁波の電界振動はX方向のみとする。励振面1の四辺に垂直に接する励振面2から5を配置する。X軸に垂直となる面を励振面2と3、Y軸と垂直となる面を励振面4と5とする。回折を抑えるために励振面1から6で囲まれた内側で電磁波が伝搬し、外側は電磁界が0となり、かつ内部に影響しないように、励振面2から5の電界と磁界を励振する。
【0027】
まず、X軸と垂直になる励振面2について考える。
励振面2が位置するX方向のグリッド番号をi1とし、これよりグリッド番号が大きい領域で電磁波が伝搬するとする。図1に示されるYeeセルの電界と磁界の配置から、励振面2と3に配置される成分はEy,Ez,Hxである。FDTD法においてこの3成分を算出する式はそれぞれ下記の式5、式6および式7のように表される。
【0028】
【数5】
【0029】
【数6】
【0030】
【数7】
【0031】
ここで、表記を簡単にするために、係数をCy,Gy,Cz,Gz,Bxとまとめた。式7は式4と同じ式である。
電磁波の進行に対して、このEy,Ez,Hxを常に0にすることができれば電磁波が伝搬しない領域が常に0になり、回折は発生しない。伝搬する電磁波をZ方向のX偏光としているため、Ey,Ez,Hx,Hzは0であり、0でない値をもつのはExとHyである。
【0032】
Hyを含む式は式6である。この式にはHy(i1+1/2,j,k+1/2)とHy(i1−1/2,j,k+1/2)の2つのHyがあるが、X方向のグリッド番号i1+1/2は電磁波が伝搬する領域であるため0でない値を持ち、i1−1/2はその外側であるため0となる。従って、電磁波が進行した時のHyを計算し、Ezからこれを差し引くと0にする事ができる。すなわち、下記の式8を実行する。
【0033】
【数8】
【0034】
Hywaveは電磁波の磁界成分で下記の式9で算出する。
【0035】
【数9】
【0036】
ここで、E0は電磁波の電界の振幅、Zは空間のインピーダンス、
【0037】
【数10】
【0038】
はグリッド座標
【0039】
【数11】
【0040】
における磁界の位相、ωは電磁波の角周波数である。
なお、上記の様な手順を辿らずにEzを強制的に0にすると、その面で電磁界計算が行われないことになるため、電磁波の反射がおきる。これを避けるために、まず式6を適用した後に磁界Hyを消去する式8を実行しなければならない。励振面3対しても同様の考え方が適用でき、今度は内側と外側が逆になるため、電磁波の伝搬から計算されるHywaveを加える演算を行う。
【0041】
次に、Y軸と垂直になる励振面4について考える。
電磁波の励振電界であるExがY方向のグリッド番号j1に位置するため、0に設定する座標はそこから半セル分外側のj1−1/2に配置する。j1−1/2面の成分は、Ey,Hx,Hzであり、それぞれの式は下記の式10、式11および式12の通りである。
【0042】
【数12】
【0043】
【数13】
【0044】
【数14】
【0045】
これらの式の中で0以外の値をもつのはEx成分だけであり、関係するのは式12である。従って、電磁波の伝搬からExを算出し、式12から関係する項を消去すれば、Hzを0にする事ができる。
【0046】
【数15】
【0047】
【数16】
【0048】
ここで、
【0049】
【数17】
【0050】
はグリッド座標(i+1/2,j1−1,k)における電界の位相である。
以上は、座標軸と平行に進む電磁波の場合を説明したが、斜めに進む場合も同様な考え方で回折を回避し、強度一様な平面波を発生することができる。
【0051】
上述したように、電磁波が伝搬する領域を励振面で囲む手法により、図5に示す微小散乱体に平面波が入射した場合の計算が可能となる。
図5は、従来の波源を用いた微小球体による電磁波の散乱計算を説明するための図である。
【0052】
図5においては、上記で説明した従来の波源を用いて直径200ナノメートルの金の微小球に、波長400ナノメートルの光が入射した場合の電界強度分布の計算値である。入射波は正確に強度一様な平面波となっている。また解析領域は微小散乱体を囲む励振面より一回り大きいだけでよく、小さな空間で計算可能である。この図5の計算例は大気中の水蒸気や微粒子の散乱について、従来の波源が有効に適用できることを示している。
【非特許文献1】Yee, K.S., “Numerical solution of initial boundary value problems involving Maxwell's equations in isotropic media”, IEEE Trans. Antennas Propagat., Vol.Ap-14, p.302-307, 1966.
【非特許文献2】宇野亨,「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」,1998,コロナ社
【非特許文献3】Allen Taflove, Susan C. Hagness : “Computational Electrodynamics” (ARTECH HOUSE, INC.)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0053】
しかしながら、近接場光学においては散乱体をガラスやシリコン等の基板上に配置し、そこに光を入射する場合が多い。そのような解析モデルについて、上記で説明した波源を用いてFDTD法で計算した結果を図6に示す。
【0054】
図6は、従来の波源を用いて計算した、反射面に入射角45度で電磁波が入射した電界強度分布を示す図である。
図6に示すように、シリコン基板の法線がZ軸と同じになるよう配置し、YZ面を入射面として入射角45度で波長400ナノメートルの電磁波が入射している。基板に接する面は励振せず反射面を囲む5つの面を励振している。図6では電界強度分布を三面図(図6(a)がYZ面、(b)がZX面、(c)がXY面)で示している。強度分布は不均一となっており、複数の励振面で波源を構成する目的である、強度一様性が実現できていないという問題点があった。
【0055】
本発明は、上述のような実状に鑑みたものであり、基板に光が入射して反射する一般的な解析モデルについて、強度一様な入射光を設定する事が可能な電磁界シミュレータおよび電磁界シミュレートプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0056】
本発明は、上記課題を解決するため、下記のような構成を採用した。
すなわち、本発明の一態様によれば、本発明の電磁界シミュレータは、ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界シミュレータであって、前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出部と、前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出部と、前記2次元電磁界算出部の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定部と、前記波源設定部に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成部とを備えることを特徴とする。
【0057】
また、本発明の電磁界シミュレータは、前記3次元空間における前記波源生成部がS1であり、前記3次元空間を平面で切断した前記切断面に存在する、前記波源生成部S1の一部がS2であり、前記波源生成部S2が、前記切断面において電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させ、前記2次元電磁界算出部が、前記切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、前記波源設定部が、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定することが望ましい。
【0058】
また、本発明の電磁界シミュレータは、前記波源生成部S1が、直方体を形成する6つの面上の電界と磁界を振動させる励振面で構成され、前記2次元電磁界算出部が、前記6つの前記励振面のいずれかの面と平行となる面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、前記波源設定部が、前記2次元電磁界算出部の結果を参照して、前記断面と平行となる2つの励振面の励振条件を設定することが望ましい。
【0059】
また、本発明の電磁界シミュレータは、前記3次元空間に反射面と、前記反射面に入射する電磁波が配置され、前記2次元電磁界算出部が、前記反射面の法線と前記電磁波の波数ベクトルで定義される入射面に対して、前記入射面と平行な面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元電磁界の分布を算出し、前記波源設定部が、前記入射面と平行となる励振面に対して、前記2次元電磁界算出部の計算結果を励振条件として設定することが望ましい。
【0060】
また、本発明の電磁界シミュレータは、前記2次元電磁界算出部が、前記切断面について複数の異なるモードの電磁界の分布を算出し、前記波源設定部が、前記2次元電磁界算出部によって算出された各モードの計算結果を前記波源算出部の励振条件として設定することが望ましい。
【0061】
また、本発明の電磁界シミュレータは、前記波源生成部S1と前記波源生成部S2の励振条件が同一であり、前記3次元電磁界算出部と前記2次元電磁界算出部が、それぞれ同じ時刻における3次元空間の電磁界分布と、2次元空間の電磁界分布を算出し、前記波源設定部が、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定することが望ましい。
【0062】
また、本発明の一態様によれば、本発明の電磁界プログラムは、ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界プログラムであって、前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出機能と、前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出機能と、前記2次元電磁界算出機能の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定機能と、前記波源設定機能に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成機能とをコンピュータに実現させるための電磁界シミュレートプログラムである。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、基板に光が入射して反射する一般的な解析モデルについて、強度一様な入射光を設定する事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
解析対象に電磁波を反射する基板が存在する場合に入射強度が不均一になるのは、入射波と反射波が干渉するためである。この現象は計算においてだけでなく現実に光が反射面に入射した場合も起きるため、基板に垂直な方向の強度分布については実際の現象を再現しており、間違った結果ではない。しかし、基板に平行な方向についてはビーム径が十分に大きければ一様になっていなければならず、解析と実際の現象とに乖離がある。これは波源の励振条件に原因がある。
【0065】
基板と平行な方向に均一に設定できない原因は、励振面の電界と磁界の励振条件が、基板からの反射を考慮していないためである。例えば、図6(a)のYZ面に示される基板上の電界分布は入射する電磁波と基板で反射した電磁波との干渉により、基板と平行な強度分布が形成される。これは、図3に示される自由空間の電磁波の伝搬と明らかに異なっているが、実際に起きる現象を再現している。
【0066】
これに対して励振面の励振条件は、上述の式9と式14に示す自由空間を伝搬する電磁波を想定している。この、内部の電磁波と励振面との相違により回折を消去できずに強度が不均一となっている。強度を一様にするためには、励振条件を基板の反射によって生じる強度分布を反映した条件にする必要がある。
【0067】
本発明では、基板の反射を含んだ励振条件を求めるために3次元の解析モデルの計算と同時に、解析モデルの断面を2次元モデル化し、2次元FDTD法計算を実行する。2次元モデルには反射面も含んでおり、計算結果は3次元モデルの電磁波分布の断面と同じになる。このデータを励振条件に反映させることで基板の反射成分を含んだ励振条件を設定する事が可能となる。
【0068】
図7は、3次元解析モデルと2次元解析モデルの関係を示す図である。
本発明の手法を、図7を用いて説明する。
反射面はZ軸に垂直で、電磁波はX軸に垂直な面を入射面として入射角45度で反射面に入射する。3次元解析モデルを入射面と平行な面で切断した切断面を2次元解析モデルとして2次元FDTD法で計算する。X軸上のどの座標で切断するかについては任意性があるが、中心付近には散乱体を配置する事が多いため、励振面付近の切断面を使用するのが望ましい。切断面のグリッド座標をiSとする。
【0069】
図8は、2次元解析モデルの構成を示す図である。
はじめに電界振動がX方向のみのS偏光の場合を考える。2次元FDTD法はTMモードとなり全電磁界成分のうちEx,Hy,Hzのみを計算する。計算式は下記の式15、式16および式17のようになる。
【0070】
【数18】
【0071】
【数19】
【0072】
【数20】
【0073】
ここで、3次元FDTD法の電磁界成分と区別するために電界と磁界には添字2Dを付けた。計算式の係数Cx,Gx,By,Bzは3次元モデルの係数をそのまま適用する事ができる。2次元FDTD法においても図8に示すように波源が必要であり、Y軸とZ軸に平行な線状の励振領域がある。これも3次元モデルの励振条件をそのまま適用する。計算では3次元FDTD法の式と平行して、上式の2次元FDTD法の計算を実行する。この2次元FDTD法の計算により反射面を含むTMモードの電磁界が計算される。
【0074】
求められたEx2D,Hy2D,Hz2Dより、入射面に平行でグリッド座標i1にある励振面の励振条件には以下の式18および式19が適用される。
【0075】
【数21】
【0076】
【0077】
・・・ (式18)
【0078】
【数22】
【0079】
上述の式9において、自由空間に伝搬する電磁波として磁界の振幅と位相を算出したが、本発明では2次元FDTD法で得られた値が適用される。これによって反射波を含む成分の励振条件が設定される。
【0080】
次に、電界振動が入射面に平行となるP偏光の場合について考える。
この時電界振動はY成分とZ成分をもつ。切断した2次元領域内で伝搬する電磁波はTEモードになり、計算する電磁界成分はEy,Ez,Hxとなる。2次元FDTD法の計算式は以下の式20、式21および式22のようになる。
【0081】
【数23】
【0082】
【数24】
【0083】
【数25】
【0084】
係数Cy,Gy,Cz,Gz,BxはTMモードと同様に3次元モデルの係数をそのまま適用する。波源も同様である。これより入射面に平行な励振面の励振条件は下記の式23および式24を適用する。
【0085】
【数26】
【0086】
【数27】
【0087】
図9は、本発明を適用した第1の実施の形態における電磁界シミュレータのブロック図である。
図9において、電磁界シミュレータ1300は、物体入力部1301、計算条件入力部1302、入射光入力部1303、3D−FDTD法計算係数算出部1304、入射面設定部1305、2D−FDTD法計算領域設定部1306、3D−FDTD法電磁界計算部1307、2D−FDTD電磁界計算部1308、波源励振条件計算部1309、計算結果解析部1310および解析結果出力部1311を備える。
【0088】
物体入力部1301は、解析モデルの物体の形状と配置を入力する。具体的には、物体の電磁気的性質である誘電率、導電率、透磁率の空間分布を入力する。計算条件入力部1302は、FDTD法計算を行うための空間と時間のグリッド間隔、計算ステップ数を入力する。入射光入力部1303は、物体に入射する光の波長、偏光、入射方向等を設定する。
【0089】
3D−FDTD法計算係数算出部1304は、物体入力部1301、計算条件入力部1302および入射光入力部1303で入力されたデータから、3次元FDTD法計算に適用する電磁界の計算式の係数を計算する。入射面設定部1305は、物体入力部1301および入射光入力部1303の入力データから入射面を定義する。2D−FDTD法計算領域設定部1306は、入射面と平行な面で3次元解析モデルを切断し、本発明で必要となる2次元FDTD法計算を実行する領域を設定する。
【0090】
3D−FDTD法電磁界計算部1307は、3次元FDTD法により解析領域全体の電磁界計算を行う。この際には波源励振条件計算部1309で算出される波源の励振条件を参照する。2D−FDTD電磁界計算部1308は、2D−FDTD法計算領域設定部1306で設定された2次元領域について、3D−FDTD法計算係数算出部1304で算出された係数を適用した2次元FDTD法により電磁界計算を行う。波源励振条件計算部1309は、2D−FDTD電磁界計算部1308で計算された2次元の電磁界計算結果から、3次元FDTD法の波源の励振条件を求める。
【0091】
これら3D−FDTD法電磁界計算部1307、2D−FDTD電磁界計算部1308および波源励振条件計算部1309は、計算条件入力部1302で設定した計算ステップ数に達するまで、時間ステップ毎に繰り返し計算を行う。
【0092】
計算結果解析部1310は、解析終了後、電磁界の時系列データから、光強度など物理量を算出する。解析結果出力部1311は、算出した物理量を表示装置に表示したり、磁気ディスクに保存したりするなどの出力処理を行う。
【0093】
図10は、本発明を適用した第1の実施の形態における電磁界シミュレートプログラムの流れを示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、図9で示した電磁界シミュレータをコンピュータで実行する。FDTD法では電界の計算と磁界の計算が1/2時間グリッドずれるため、図10に示したフローチャートは最初に電界を計算し、次に磁界を計算する順番を取っている。本発明では解析領域を計算する3次元の計算と、波源の励振条件を計算する2次元の計算の2つを行うが、電界と磁界をずらす必要があり、また3次元の計算では2次元の計算結果を参照するため、次の様な順番で処理を行う。つまり、最初に2次元の電界を計算し、次に3次元の電界の計算、そして2次元の磁界の計算を行ない、最後に3次元の磁界を計算して計算の1ステップが終了する。
【0094】
具体的には、まず、ステップS1401において、解析モデルを設定するための誘電率、導電率、透磁率などの材料定数の空間配置を入力する。ステップS1402において、入射波を設定する。そして、ステップS1403において、FDTD法を用いて計算するために空間と時間のグリッド間隔などの解析条件を設定する。
【0095】
そして、ステップS1404において、上述のステップS1401、S1042、S1403で入力されたデータから、3次元FDTD法で計算する式3および式4の係数を設定する。ステップS1405において、ステップS1401およびステップS1402のデータから入射面を定義して、これと平行な面で3次元モデルを切断した切断面を2次元FDTD法を実行する領域として設定する。
【0096】
次のステップS1406からステップS1415は、FDTD法による電磁界計算の処理ステップである。ステップS1407からステップS1410は、電界の計算であり、ステップS1411からステップS1414は、磁界の計算である。
【0097】
まず、ステップS1406において、解析時間を1ステップ進める。
次に、ステップS1407において、波源の励振条件を求めるための2次元FDTD法計算の電界計算を行う。ステップS1408において、2次元FDTD法計算の波源について電界の励振処理を実行する。ステップS1409において、解析空間で3次元FDTD法計算の電界計算を行う。そして、ステップS1410において、3次元FDTD法計算の波源について、ステップS1407およびステップS1408の2次元FDTD法計算の結果を参照して、電界励振の処理を行う。
【0098】
次に、ステップS1411において、2次元FDTD法計算の磁界計算を行う。ステップS1412において、2次元計算の波源の磁界励振を行う。ステップS1413において、解析空間について3次元FDTD法計算の磁界計算を行う。ステップS1414において、3次元計算の波源について2次元FDTD法計算の結果を参照して、磁界励振を処理する。ステップS1415において、解析時間が設定した解析終了時間tstopに達しているかどうか判断する。終了時間に達していないと判断した場合(ステップS1415:NO)は、ステップS1406に戻る。他方、終了時間に達したと判断した場合(ステップS1415:YES)は、ステップS1416に移行する。そして、ステップS1416において、FDTD法計算で得られた電磁界データから必要とする物理量を計算する。
【0099】
最後に、ステップS1417において、ステップS1416で求められた物理量の表示装置に表示や、磁気ディスクに保存するなど出力処理を行う。
次に、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。
【0100】
図11は、本発明を適用した第2の実施の形態における電磁界シミュレータのブロック図である。
図11において、電磁界シミュレータ1500は、本発明の波源において任意の偏光をもつ入射波に対応するためのものである。
【0101】
上述の第1の実施の形態のような1回の2次元FDTD法では、3次元空間の全ての電磁界成分を計算できない。そのため、2D−FDTD電磁界計算部(TMモード)1501によるTMモードと、2D−FDTD電磁界計算部(TEモード)1502によるTEモードの2種類の2次元FDTD法計算を実行する。そして、波源励振条件計算部1503は、2D−FDTD電磁界計算部(TMモード)1501によるTMモードと、2D−FDTD電磁界計算部(TEモード)1502によるTEモードの2種類の2次元FDTD法計算の結果から波源の励振条件を計算する。これら2つの2次元FDTD法計算の電界強度の比や、相対的な位相差を設定することで、任意の直線偏光、楕円偏光の入射光に対応できる。
【0102】
図12は、2次元FDTD法計算による磁界強度分布を示す図である。
上述したように、図6に示す3次元のモデルに対して、入射面と平行となる平面でモデルを切断し、切断面に2次元FDTD法計算を適用する。すると、2次元FDTD法の計算で得られる磁界成分の分布が図12のようになる。図12(a)が磁界Y成分、(b)が磁界Z成分である。
【0103】
比較として、従来の波源の励振面上の電界分布を図13に示す。
従来の手法では自由空間を伝搬するとして電界振幅を計算しているため、シリコン基板の影響が全く反映されないが、本発明では切断面に対して2次元FDTD法計算を実行することで入射波と反射波が干渉した分布が得られている。
【0104】
図14は、本発明の波源を用いて計算した、反射面に入射角45度で電磁波が入射した電界強度分布を示す図である。
図14には、切断面に対して2次元FDTD法計算を実行することで得られた入射波と反射波が干渉した磁界分布を、上述の式18および式19により励振条件に適用した場合の計算結果が示されている。入射面と平行となる励振面の励振条件が正しく設定されたことにより、X軸方向の強度分布が一様になっている。
【0105】
なお、本発明では励振条件を計算するために、実際に解析する3次元FDTD法計算と平行して2次元FDTD法計算を実行するが、使用メモリ量や計算時間など計算コストの増大は小さく抑えられる。3次元の解析モデルの各座標方向のグリッド数を(Nx,Ny,Nz)とする。ここで入射面がX軸に垂直である場合に本発明を適用した場合、2次元FDTD法のグリッド数は(Ny,Nz)となる。2次元FDTD法の計算そのものは3次元より簡素化されるが、大まかに全計算量を見積もれば3次元のグリッド数が(Nx+1,Ny,Nz)となった場合と同じと考えて良い。
【0106】
前述したように任意の偏光に対応するためにTMモードとTEモードの2つの2次元FDTD法計算を行う場合は、3次元のグリッド数が(Nx+2,Ny,Nz)になったことと同じである。つまりX方向のグリッドが1乃至2増えた事と同じであり、これは、3次元FDTD法全体の計算量と比べれば十分小さいと見なすことができる。
【0107】
FDTD法の計算は、上述の式3および式4に示すように加減乗除のみで計算でき、通常の波源で使用する式9や式14のような計算コストの高い三角関数を励振面全体で使用する必要もない。従って本発明は小さな計算コストで適用することが可能である。
【0108】
図15は、回折格子構造をもつ反射面について本発明を適用した計算結果を示す図である。
本発明は計算条件の算出にFDTD法を用いるため、FDTD法のもつ解析形状に対する汎用性が有効に働く。例えば、図15に示すように基板に溝形状がある場合についても2次元計算により溝形状による回折を含む強度分布が忠実に再現できるため、強度一様な入射光の分布が設定可能である。
【0109】
図15に示したのは本発明を適用した計算例であるが、図14に示す平坦な反射面と同様に、X方向の強度分布を一様に設定できていることが確認できる。
本発明によりX方向の強度分布を一様に設定すると、入射波の性質は波源のX方向の大きさに依存しないため、X方向の波源および解析領域は散乱体である球を囲む最小限の範囲をとればよい。解析領域を小さくする事が可能であると言うことは、使用メモリ量と計算時間の両方の削減に寄与するため、計算コストの削減に大きく寄与する。
【0110】
本発明は任意の偏光を持つ入射波にも対応可能である。上述の式15乃至式17はTMモード、式20乃至式22はTEモードの2次元FDTD法計算であり、3次元解析モデルに対してはそれぞれS偏光とP偏光の場合に対応する。この2つの2次元FDTD法計算を同時に実行し、相対的に位相をずらして3次元モデルの波源に適用することで、直線偏光だけでなく、円偏光や楕円偏光など任意の偏光状態の波源を設定することが可能である。
【0111】
以上、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明してきたが、本発明が適用される電磁界シミュレータは、その機能が実行されるのであれば、上述の実施の形態に限定されることなく、単体の装置であっても、複数の装置からなるシステムあるいは統合装置であっても、LAN、WAN等のネットワークを介して処理が行なわれるシステムであってもよいことは言うまでもない。
【0112】
また、図16に示しように、バス98に接続されたCPU91、ROMやRAMのメモリ92、入力装置93、出力装置94、外部記憶装置95、媒体駆動装置9、可搬記録媒体99、ネットワーク接続装置97で構成されるシステムでも実現できる。すなわち、前述してきた実施の形態のシステムを実現するソフトェアのプログラムコードを記録したROMやRAMのメモリ92、外部記憶装置95、可搬記録媒体99を、電磁界シミュレータに供給し、その電磁界シミュレータのコンピュータがプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0113】
この場合、可搬記録媒体99等から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した可搬記録媒体99等は本発明を構成することになる。
【0114】
プログラムコードを供給するための可搬記録媒体99としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−RAM、磁気テープ、不揮発性のメモリーカード、ROMカード、電子メールやパソコン通信等のネットワーク接続装置97(言い換えれば、通信回線)を介して記録した種々の記録媒体などを用いることができる。
【0115】
また、図17に示すように、コンピュータ8000がメモリ92上に読み出したプログラムコードを実行することによって、前述した実施の形態の機能が実現される他、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ8000上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現される。
【0116】
さらに、可搬型記録媒体99から読み出されたプログラムコードやプログラム(データ)提供者から提供されたプログラム(データ)が、コンピュータ8000に挿入された機能拡張ボードやコンピュータ8000に接続された機能拡張ユニットに備わるメモリ92に書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現され得る。
【0117】
すなわち、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または形状を取ることができる。
ここで、上述した実施の形態の特徴を列挙すると、以下の通りである。
【0118】
(付記1)
ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界シミュレータにおいて、
前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出部と、
前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出部と、
前記2次元電磁界算出部の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定部と、
前記波源設定部に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成部と、
を備えることを特徴とする電磁界シミュレータ。
(付記2)
前記3次元空間における前記波源生成部がS1であり、
前記3次元空間を平面で切断した前記切断面に存在する、前記波源生成部S1の一部がS2であり、
前記波源生成部S2は、前記切断面において電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させ、
前記2次元電磁界算出部は、前記切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定する、
ことを特徴とする付記1に記載の電磁界シミュレータ。
(付記3)
前記波源生成部S1は、直方体を形成する6つの面上の電界と磁界を振動させる励振面で構成され、
前記2次元電磁界算出部は、前記6つの前記励振面のいずれかの面と平行となる面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の結果を参照して、前記断面と平行となる2つの励振面の励振条件を設定する、
ことを特徴とする付記1または2に記載の電磁界シミュレータ。
(付記4)
前記3次元空間に反射面と、前記反射面に入射する電磁波が配置され、
前記2次元電磁界算出部は、前記反射面の法線と前記電磁波の波数ベクトルで定義される入射面に対して、前記入射面と平行な面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記入射面と平行となる励振面に対して、前記2次元電磁界算出部の計算結果を励振条件として設定する、
ことを特徴とする付記1乃至3の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
(付記5)
前記2次元電磁界算出部は、前記切断面について複数の異なるモードの電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部によって算出された各モードの計算結果を前記波源算出部の励振条件として設定する、
ことを特徴とする付記1乃至4の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
(付記6)
前記波源生成部S1と前記波源生成部S2の励振条件が同一であり、
前記3次元電磁界算出部と前記2次元電磁界算出部は、それぞれ同じ時刻における3次元空間の電磁界分布と、2次元空間の電磁界分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定する、
ことを特徴とする付記1乃至5の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
(付記7)
ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界プログラムであって、
前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出機能と、
前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出機能と、
前記2次元電磁界算出機能の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定機能と、
前記波源設定機能に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成機能と、
をコンピュータに実現させるための電磁界シミュレートプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】FDTD法における電界および磁界の各成分の配置を示す図である。
【図2】波源として1つの励振面で一様な振幅、同位相で電界を励振したときに発生する電磁波の電界分布である。
【図3】6つの励振面で構成した波源から伝播する電磁波の電界強度分布を示す図である。
【図4】6つの励振面で構成した従来の波源を示す図である。
【図5】従来の波源を用いた微小球体による電磁波の散乱計算を説明するための図である。
【図6】従来の波源を用いて計算した、反射面に入射角45度で電磁波が入射した電界強度分布を示す図である。
【図7】3次元解析モデルと2次元解析モデルの関係を示す図である。
【図8】2次元解析モデルの構成を示す図である。
【図9】本発明を適用した第1の実施の形態における電磁界シミュレータのブロック図である。
【図10】本発明を適用した第1の実施の形態における電磁界シミュレートプログラムの流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明を適用した第2の実施の形態における電磁界シミュレータのブロック図である。
【図12】2次元FDTD法計算による磁界強度分布を示す図である。
【図13】従来の波源の励振面上の磁界強度分布を示す図である。
【図14】本発明の波源を用いて計算した、反射面に入射角45度で電磁波が入射した電界強度分布を示す図である。
【図15】回折格子構造をもつ反射面について本発明を適用した計算結果を示す図である。
【図16】本発明における電磁界シミュレータのハードウェア構成図である。
【図17】本発明における電磁界シミュレートプログラムのコンピュータへのローディングを説明するための図である。
【符号の説明】
【0120】
91 CPU
92 メモリ
93 入力装置
94 出力装置
95 外部記録装置
96 媒体駆動装置
97 ネットワーク接続装置
99 バス
99 可搬記録媒体
1300 電磁界シミュレータ
1301 物体入力部
1302 計算条件入力部
1303 入射光入力部
1304 3D−FDTD法計算係数算出部
1305 入射面設定部
1306 2D−FDTD法計算領域設定部
1307 3D−FDTD法電磁界計算部
1308 2D−FDTD電磁界計算部
1309 波源励振条件計算部
1310 計算結果解析部
1311 解析結果出力部
1500 電磁界シミュレータ
1501 2D−FDTD電磁界計算部(TMモード)
1502 2D−FDTD電磁界計算部(TEモード)
1503 波源励振条件計算部
8000 コンピュータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁界をシミュレートする電磁界シミュレータ、電磁界を解析する電磁界解析装置、コンピュータに電磁界をシミュレートさせる電磁界シミュレートプログラム、およびコンピュータに電磁界を解析させる電磁界解析プログラムに関連し、特に解析領域に入射する電磁波を正確にモデル化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信アンテナの性能などを解析するために、通信電波などを対象とした電磁界を計算する電磁界シミュレータや電磁界シミュレートプログラムが知られている。このような電磁界シミュレータや電磁界シミュレートプログラムで電磁界を解析する代表的な手法として、有限差分時間領域法(FDTD法:Finite Difference Time Domain法)が知られている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照。)。
【0003】
この手法は、電磁界の時間変化を記述する基本方程式であるマクスウェルの方程式を、空間的・時間的に差分化し、電磁界の時間変化を追跡するものである。この手法によれば、空間及び時間の離散化に用いるグリッドの間隔(ステップ)が十分に小さく設定されることにより、電磁界の時間変化が詳細にシミュレートされる。FDTD法の利点としては、計算原理が単純で演算の高速化が容易である点や、原理的に時間波形が計算されるため過渡的な電磁波特性が評価できる点や、3次元計算が容易である点などがあげられる。
【0004】
マクスウェル方程式は、以下の式1および式2で構成される。
【0005】
【数1】
【0006】
【数2】
【0007】
ここで、
E:電界ベクトル
H:磁界ベクトル
ε:誘電率
σ:導電率
μ:透磁率
式1と式2から得られる電磁界成分の時間変化をFDTD法で算出する式3および式4を以下に示す。(Allen Taflove, Susan C. Hagness : “Computational Electrodynamics”(ARTECH HOUCE, INC.)より)
【0008】
【数3】
【0009】
【数4】
【0010】
ここで、
Ex,Ey,Ez:電界各成分
Hx,Hy,Hz:磁界各成分
ε:誘電率
σ:導電率
Δx,Δy,Δz:空間グリッド幅
Δt:時間分割幅
なお、電磁界成分の右下に付された添字i,j,kは空間グリッドの番号であって、シミュレート空間の座標を表している。
【0011】
図1は、FDTD法における電界および磁界の各成分の配置を示す図である。
図1においては、FDTD法を適用する解析モデルを分割した1セルを示しており、1セルにおける各電界、磁界の成分の空間配置を示している。また、電磁界成分に付された添字n,n+1は時間ステップを示す番号で、時間ステップが1進むと時間がΔtだけ進む。式3および式4を順番に繰り返し計算することにより、3次元空間における電磁界の時間変化を計算することができる。
【0012】
FDTD法は差分式で計算するため、空間グリッドの間隔は電磁波の波長に対して1/10〜1/20程度になるよう小さく設定する必要がある。実際の計算では、解析するモデルの全ての電界と磁界の瞬間値を、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置に保存する。計算機の記憶容量には制限があるため、一般にモデルの大きさは波長の数倍に制限される。光は波長が1マイクロメートル以下の電磁波であるため、FDTD法で計算できる領域は数マイクロメートルに限られ、これまでは光のシミュレーションに用いる事例は少なかった。
【0013】
近年、光の波長より小さい構造を持つ光学素子を用いる、近接場光学が注目されている。近接場光学では回折の効果が大きくなり、光を光線として扱うことができなくなる。この場合、光を電磁波として扱い電波の解析と同じ手法を用いて光の伝搬計算を行う。この解析は本質的に3次元計算であり、かつ波長の数倍程度の領域を計算するためFDTD法が有効である。FDTD法を光学モデルに適用した近接場光学の研究、光学素子の開発設計が盛んに行われている。
【0014】
FDTD法による光学解析を行う場合、解析領域の外側から光が入射するとして解析を行うことが多い。前述の理由によりFDTD法で解析できる領域は数マイクロメートルに制限され、レーザ装置等の光源まで含んだ解析を行うことができないためである。入射光を再現する場合は、解析領域の一部の電界と磁界を光の周波数で振動させる。この電界の振動を式3と式4の演算の繰り返しと並行して実行すると、周りの電磁界に振動が伝わり電磁波の伝播、すなわち光の伝播がシミュレートされる。電磁界を励振する領域は、そこから電磁波が発生しているため波源と呼ぶ。波源は計算を実行するために仮想的に設定するもので、現実の解析対象には存在しないものである。
【0015】
正確な解析を行うためには、波源により入射する光を正しくモデル化することが重要である。例えば、ナノメートルサイズの微粒子や薄膜などに対して、入射する光の波長、方向、偏光が一定の条件を満たすと、光が局在し増強されるプラズモン共鳴の現象が知られている。また、反射や屈折といった一般的な光学現象も入射光の条件に強く依存するため、正確な入射光の設定が必要となる。
【0016】
そのような入射光の設定について特に必要となるのが、強度一様な平面波を任意の角度で物体に入射させる機能である。平面波とは、電磁波の位相が進行方向に垂直な平面上にそろっている状態を意味する。
【0017】
実際の実験系では、レーザ装置から出射するビームは通常数ミリメートルの大きさがあり、このビームを単レンズで絞っても数十マイクロメートルの大きさがある。そのため、FDTD法で解析する数マイクロメートルの狭い領域では入射強度は一様にすることが現実に近い解析条件となる。また、シミュレーションにおいては計算精度の確認が必要となるが、他の計算方法と比較する場合、数式を解くことによって得られる解析的な計算は強度一様な平面波を前提としている場合がほとんどである。従ってFDTD法でも強度一様な平面波を設定し、比較のための計算を行う必要がある。
【0018】
しかし、電磁波伝搬方向に対して垂直となる平面領域の電界と磁界を単純に励振するだけでは、入射光を強度一様な平面波に設定することはできない。
図2は、波源として1つの励振面で一様な振幅、同位相で電界を励振したときに発生する電磁波の電界分布である。
【0019】
電界のみを励振すると波源の両面から電磁波が発生するため、図2で示した計算では電界と同時に磁界も励振して一方向にのみ電磁波が伝搬するようにしている。励振条件は平面波をモデル化しているのに対して、伝搬する電磁波は強度が不均一になり、また±X方向に広がって平面波になっていない。これは電磁波の回折現象がおきるためである。
【0020】
FDTD法では解析空間全体でマクスウェル方程式を直接計算するため、自然現象と同様に、電磁波が伝搬すると干渉や回折が再現される。図2では励振面上で電界振幅を一定にしているため、励振面の端で電磁波が遮られたことと同様になり強い回折が起きている。FDTD法で強度一様な平面波を実現するためには、回折が起きないような対策が必要となる。
【0021】
回折を回避する最も簡単な方法は、強度分布をガウス分布に設定して励振面境界の電界強度を0にすればよい。分布幅を十分大きく取れば近似的に強度一様と見なすことができる。この手法は励振面の構成はそのままで、強度だけを変えることで実現できるので実現が容易である。しかし、この手法にはあくまで近似的にしか強度一様を実現できないという点と、大きな計算領域が必要となる問題点がある。
【0022】
ガウス分布で、励振領域の端で回折が起きないようにしても、分布幅が波長と同程度のサイズで小さい場合は回折の影響が大きくなり、電磁波は発散波に変化する。分布幅が大きければ回折は小さくできるが、対象とする物体が入射光の波長より小さくナノメートルサイズの場合であっても、波長より大きな励振面を設定する事になり、計算時間や使用メモリ量が大幅に増大する。効率よく解析を実行するためには、励振領域が小さくても回折が起きない波源が必要とされる。
【0023】
回折現象を回避して強度一様な入射光を実現するために、非特許文献3に示される手法が知られている。
図3は、6つの励振面で構成した波源から伝播する電磁波の電界強度分布を示す図である。
【0024】
図3に示すように電磁波が伝搬する領域を励振面で囲み、伝搬する電磁波に合わせて全ての励振面の電界と磁界を励振することで、回折を起こらないようにする事ができる。
回折を回避する手法を具体的に説明する。
【0025】
図4は、6つの励振面で構成した従来の波源を示す図である。
図4に示すように解析空間に対して6面の励振面で構成する波源を想定し、電磁波の進行方向に対して垂直となる励振面1からZ方向に電磁波が伝搬する場合を考える。
【0026】
電磁波の電界振動はX方向のみとする。励振面1の四辺に垂直に接する励振面2から5を配置する。X軸に垂直となる面を励振面2と3、Y軸と垂直となる面を励振面4と5とする。回折を抑えるために励振面1から6で囲まれた内側で電磁波が伝搬し、外側は電磁界が0となり、かつ内部に影響しないように、励振面2から5の電界と磁界を励振する。
【0027】
まず、X軸と垂直になる励振面2について考える。
励振面2が位置するX方向のグリッド番号をi1とし、これよりグリッド番号が大きい領域で電磁波が伝搬するとする。図1に示されるYeeセルの電界と磁界の配置から、励振面2と3に配置される成分はEy,Ez,Hxである。FDTD法においてこの3成分を算出する式はそれぞれ下記の式5、式6および式7のように表される。
【0028】
【数5】
【0029】
【数6】
【0030】
【数7】
【0031】
ここで、表記を簡単にするために、係数をCy,Gy,Cz,Gz,Bxとまとめた。式7は式4と同じ式である。
電磁波の進行に対して、このEy,Ez,Hxを常に0にすることができれば電磁波が伝搬しない領域が常に0になり、回折は発生しない。伝搬する電磁波をZ方向のX偏光としているため、Ey,Ez,Hx,Hzは0であり、0でない値をもつのはExとHyである。
【0032】
Hyを含む式は式6である。この式にはHy(i1+1/2,j,k+1/2)とHy(i1−1/2,j,k+1/2)の2つのHyがあるが、X方向のグリッド番号i1+1/2は電磁波が伝搬する領域であるため0でない値を持ち、i1−1/2はその外側であるため0となる。従って、電磁波が進行した時のHyを計算し、Ezからこれを差し引くと0にする事ができる。すなわち、下記の式8を実行する。
【0033】
【数8】
【0034】
Hywaveは電磁波の磁界成分で下記の式9で算出する。
【0035】
【数9】
【0036】
ここで、E0は電磁波の電界の振幅、Zは空間のインピーダンス、
【0037】
【数10】
【0038】
はグリッド座標
【0039】
【数11】
【0040】
における磁界の位相、ωは電磁波の角周波数である。
なお、上記の様な手順を辿らずにEzを強制的に0にすると、その面で電磁界計算が行われないことになるため、電磁波の反射がおきる。これを避けるために、まず式6を適用した後に磁界Hyを消去する式8を実行しなければならない。励振面3対しても同様の考え方が適用でき、今度は内側と外側が逆になるため、電磁波の伝搬から計算されるHywaveを加える演算を行う。
【0041】
次に、Y軸と垂直になる励振面4について考える。
電磁波の励振電界であるExがY方向のグリッド番号j1に位置するため、0に設定する座標はそこから半セル分外側のj1−1/2に配置する。j1−1/2面の成分は、Ey,Hx,Hzであり、それぞれの式は下記の式10、式11および式12の通りである。
【0042】
【数12】
【0043】
【数13】
【0044】
【数14】
【0045】
これらの式の中で0以外の値をもつのはEx成分だけであり、関係するのは式12である。従って、電磁波の伝搬からExを算出し、式12から関係する項を消去すれば、Hzを0にする事ができる。
【0046】
【数15】
【0047】
【数16】
【0048】
ここで、
【0049】
【数17】
【0050】
はグリッド座標(i+1/2,j1−1,k)における電界の位相である。
以上は、座標軸と平行に進む電磁波の場合を説明したが、斜めに進む場合も同様な考え方で回折を回避し、強度一様な平面波を発生することができる。
【0051】
上述したように、電磁波が伝搬する領域を励振面で囲む手法により、図5に示す微小散乱体に平面波が入射した場合の計算が可能となる。
図5は、従来の波源を用いた微小球体による電磁波の散乱計算を説明するための図である。
【0052】
図5においては、上記で説明した従来の波源を用いて直径200ナノメートルの金の微小球に、波長400ナノメートルの光が入射した場合の電界強度分布の計算値である。入射波は正確に強度一様な平面波となっている。また解析領域は微小散乱体を囲む励振面より一回り大きいだけでよく、小さな空間で計算可能である。この図5の計算例は大気中の水蒸気や微粒子の散乱について、従来の波源が有効に適用できることを示している。
【非特許文献1】Yee, K.S., “Numerical solution of initial boundary value problems involving Maxwell's equations in isotropic media”, IEEE Trans. Antennas Propagat., Vol.Ap-14, p.302-307, 1966.
【非特許文献2】宇野亨,「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」,1998,コロナ社
【非特許文献3】Allen Taflove, Susan C. Hagness : “Computational Electrodynamics” (ARTECH HOUSE, INC.)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0053】
しかしながら、近接場光学においては散乱体をガラスやシリコン等の基板上に配置し、そこに光を入射する場合が多い。そのような解析モデルについて、上記で説明した波源を用いてFDTD法で計算した結果を図6に示す。
【0054】
図6は、従来の波源を用いて計算した、反射面に入射角45度で電磁波が入射した電界強度分布を示す図である。
図6に示すように、シリコン基板の法線がZ軸と同じになるよう配置し、YZ面を入射面として入射角45度で波長400ナノメートルの電磁波が入射している。基板に接する面は励振せず反射面を囲む5つの面を励振している。図6では電界強度分布を三面図(図6(a)がYZ面、(b)がZX面、(c)がXY面)で示している。強度分布は不均一となっており、複数の励振面で波源を構成する目的である、強度一様性が実現できていないという問題点があった。
【0055】
本発明は、上述のような実状に鑑みたものであり、基板に光が入射して反射する一般的な解析モデルについて、強度一様な入射光を設定する事が可能な電磁界シミュレータおよび電磁界シミュレートプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0056】
本発明は、上記課題を解決するため、下記のような構成を採用した。
すなわち、本発明の一態様によれば、本発明の電磁界シミュレータは、ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界シミュレータであって、前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出部と、前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出部と、前記2次元電磁界算出部の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定部と、前記波源設定部に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成部とを備えることを特徴とする。
【0057】
また、本発明の電磁界シミュレータは、前記3次元空間における前記波源生成部がS1であり、前記3次元空間を平面で切断した前記切断面に存在する、前記波源生成部S1の一部がS2であり、前記波源生成部S2が、前記切断面において電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させ、前記2次元電磁界算出部が、前記切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、前記波源設定部が、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定することが望ましい。
【0058】
また、本発明の電磁界シミュレータは、前記波源生成部S1が、直方体を形成する6つの面上の電界と磁界を振動させる励振面で構成され、前記2次元電磁界算出部が、前記6つの前記励振面のいずれかの面と平行となる面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、前記波源設定部が、前記2次元電磁界算出部の結果を参照して、前記断面と平行となる2つの励振面の励振条件を設定することが望ましい。
【0059】
また、本発明の電磁界シミュレータは、前記3次元空間に反射面と、前記反射面に入射する電磁波が配置され、前記2次元電磁界算出部が、前記反射面の法線と前記電磁波の波数ベクトルで定義される入射面に対して、前記入射面と平行な面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元電磁界の分布を算出し、前記波源設定部が、前記入射面と平行となる励振面に対して、前記2次元電磁界算出部の計算結果を励振条件として設定することが望ましい。
【0060】
また、本発明の電磁界シミュレータは、前記2次元電磁界算出部が、前記切断面について複数の異なるモードの電磁界の分布を算出し、前記波源設定部が、前記2次元電磁界算出部によって算出された各モードの計算結果を前記波源算出部の励振条件として設定することが望ましい。
【0061】
また、本発明の電磁界シミュレータは、前記波源生成部S1と前記波源生成部S2の励振条件が同一であり、前記3次元電磁界算出部と前記2次元電磁界算出部が、それぞれ同じ時刻における3次元空間の電磁界分布と、2次元空間の電磁界分布を算出し、前記波源設定部が、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定することが望ましい。
【0062】
また、本発明の一態様によれば、本発明の電磁界プログラムは、ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界プログラムであって、前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出機能と、前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出機能と、前記2次元電磁界算出機能の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定機能と、前記波源設定機能に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成機能とをコンピュータに実現させるための電磁界シミュレートプログラムである。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、基板に光が入射して反射する一般的な解析モデルについて、強度一様な入射光を設定する事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
解析対象に電磁波を反射する基板が存在する場合に入射強度が不均一になるのは、入射波と反射波が干渉するためである。この現象は計算においてだけでなく現実に光が反射面に入射した場合も起きるため、基板に垂直な方向の強度分布については実際の現象を再現しており、間違った結果ではない。しかし、基板に平行な方向についてはビーム径が十分に大きければ一様になっていなければならず、解析と実際の現象とに乖離がある。これは波源の励振条件に原因がある。
【0065】
基板と平行な方向に均一に設定できない原因は、励振面の電界と磁界の励振条件が、基板からの反射を考慮していないためである。例えば、図6(a)のYZ面に示される基板上の電界分布は入射する電磁波と基板で反射した電磁波との干渉により、基板と平行な強度分布が形成される。これは、図3に示される自由空間の電磁波の伝搬と明らかに異なっているが、実際に起きる現象を再現している。
【0066】
これに対して励振面の励振条件は、上述の式9と式14に示す自由空間を伝搬する電磁波を想定している。この、内部の電磁波と励振面との相違により回折を消去できずに強度が不均一となっている。強度を一様にするためには、励振条件を基板の反射によって生じる強度分布を反映した条件にする必要がある。
【0067】
本発明では、基板の反射を含んだ励振条件を求めるために3次元の解析モデルの計算と同時に、解析モデルの断面を2次元モデル化し、2次元FDTD法計算を実行する。2次元モデルには反射面も含んでおり、計算結果は3次元モデルの電磁波分布の断面と同じになる。このデータを励振条件に反映させることで基板の反射成分を含んだ励振条件を設定する事が可能となる。
【0068】
図7は、3次元解析モデルと2次元解析モデルの関係を示す図である。
本発明の手法を、図7を用いて説明する。
反射面はZ軸に垂直で、電磁波はX軸に垂直な面を入射面として入射角45度で反射面に入射する。3次元解析モデルを入射面と平行な面で切断した切断面を2次元解析モデルとして2次元FDTD法で計算する。X軸上のどの座標で切断するかについては任意性があるが、中心付近には散乱体を配置する事が多いため、励振面付近の切断面を使用するのが望ましい。切断面のグリッド座標をiSとする。
【0069】
図8は、2次元解析モデルの構成を示す図である。
はじめに電界振動がX方向のみのS偏光の場合を考える。2次元FDTD法はTMモードとなり全電磁界成分のうちEx,Hy,Hzのみを計算する。計算式は下記の式15、式16および式17のようになる。
【0070】
【数18】
【0071】
【数19】
【0072】
【数20】
【0073】
ここで、3次元FDTD法の電磁界成分と区別するために電界と磁界には添字2Dを付けた。計算式の係数Cx,Gx,By,Bzは3次元モデルの係数をそのまま適用する事ができる。2次元FDTD法においても図8に示すように波源が必要であり、Y軸とZ軸に平行な線状の励振領域がある。これも3次元モデルの励振条件をそのまま適用する。計算では3次元FDTD法の式と平行して、上式の2次元FDTD法の計算を実行する。この2次元FDTD法の計算により反射面を含むTMモードの電磁界が計算される。
【0074】
求められたEx2D,Hy2D,Hz2Dより、入射面に平行でグリッド座標i1にある励振面の励振条件には以下の式18および式19が適用される。
【0075】
【数21】
【0076】
【0077】
・・・ (式18)
【0078】
【数22】
【0079】
上述の式9において、自由空間に伝搬する電磁波として磁界の振幅と位相を算出したが、本発明では2次元FDTD法で得られた値が適用される。これによって反射波を含む成分の励振条件が設定される。
【0080】
次に、電界振動が入射面に平行となるP偏光の場合について考える。
この時電界振動はY成分とZ成分をもつ。切断した2次元領域内で伝搬する電磁波はTEモードになり、計算する電磁界成分はEy,Ez,Hxとなる。2次元FDTD法の計算式は以下の式20、式21および式22のようになる。
【0081】
【数23】
【0082】
【数24】
【0083】
【数25】
【0084】
係数Cy,Gy,Cz,Gz,BxはTMモードと同様に3次元モデルの係数をそのまま適用する。波源も同様である。これより入射面に平行な励振面の励振条件は下記の式23および式24を適用する。
【0085】
【数26】
【0086】
【数27】
【0087】
図9は、本発明を適用した第1の実施の形態における電磁界シミュレータのブロック図である。
図9において、電磁界シミュレータ1300は、物体入力部1301、計算条件入力部1302、入射光入力部1303、3D−FDTD法計算係数算出部1304、入射面設定部1305、2D−FDTD法計算領域設定部1306、3D−FDTD法電磁界計算部1307、2D−FDTD電磁界計算部1308、波源励振条件計算部1309、計算結果解析部1310および解析結果出力部1311を備える。
【0088】
物体入力部1301は、解析モデルの物体の形状と配置を入力する。具体的には、物体の電磁気的性質である誘電率、導電率、透磁率の空間分布を入力する。計算条件入力部1302は、FDTD法計算を行うための空間と時間のグリッド間隔、計算ステップ数を入力する。入射光入力部1303は、物体に入射する光の波長、偏光、入射方向等を設定する。
【0089】
3D−FDTD法計算係数算出部1304は、物体入力部1301、計算条件入力部1302および入射光入力部1303で入力されたデータから、3次元FDTD法計算に適用する電磁界の計算式の係数を計算する。入射面設定部1305は、物体入力部1301および入射光入力部1303の入力データから入射面を定義する。2D−FDTD法計算領域設定部1306は、入射面と平行な面で3次元解析モデルを切断し、本発明で必要となる2次元FDTD法計算を実行する領域を設定する。
【0090】
3D−FDTD法電磁界計算部1307は、3次元FDTD法により解析領域全体の電磁界計算を行う。この際には波源励振条件計算部1309で算出される波源の励振条件を参照する。2D−FDTD電磁界計算部1308は、2D−FDTD法計算領域設定部1306で設定された2次元領域について、3D−FDTD法計算係数算出部1304で算出された係数を適用した2次元FDTD法により電磁界計算を行う。波源励振条件計算部1309は、2D−FDTD電磁界計算部1308で計算された2次元の電磁界計算結果から、3次元FDTD法の波源の励振条件を求める。
【0091】
これら3D−FDTD法電磁界計算部1307、2D−FDTD電磁界計算部1308および波源励振条件計算部1309は、計算条件入力部1302で設定した計算ステップ数に達するまで、時間ステップ毎に繰り返し計算を行う。
【0092】
計算結果解析部1310は、解析終了後、電磁界の時系列データから、光強度など物理量を算出する。解析結果出力部1311は、算出した物理量を表示装置に表示したり、磁気ディスクに保存したりするなどの出力処理を行う。
【0093】
図10は、本発明を適用した第1の実施の形態における電磁界シミュレートプログラムの流れを示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、図9で示した電磁界シミュレータをコンピュータで実行する。FDTD法では電界の計算と磁界の計算が1/2時間グリッドずれるため、図10に示したフローチャートは最初に電界を計算し、次に磁界を計算する順番を取っている。本発明では解析領域を計算する3次元の計算と、波源の励振条件を計算する2次元の計算の2つを行うが、電界と磁界をずらす必要があり、また3次元の計算では2次元の計算結果を参照するため、次の様な順番で処理を行う。つまり、最初に2次元の電界を計算し、次に3次元の電界の計算、そして2次元の磁界の計算を行ない、最後に3次元の磁界を計算して計算の1ステップが終了する。
【0094】
具体的には、まず、ステップS1401において、解析モデルを設定するための誘電率、導電率、透磁率などの材料定数の空間配置を入力する。ステップS1402において、入射波を設定する。そして、ステップS1403において、FDTD法を用いて計算するために空間と時間のグリッド間隔などの解析条件を設定する。
【0095】
そして、ステップS1404において、上述のステップS1401、S1042、S1403で入力されたデータから、3次元FDTD法で計算する式3および式4の係数を設定する。ステップS1405において、ステップS1401およびステップS1402のデータから入射面を定義して、これと平行な面で3次元モデルを切断した切断面を2次元FDTD法を実行する領域として設定する。
【0096】
次のステップS1406からステップS1415は、FDTD法による電磁界計算の処理ステップである。ステップS1407からステップS1410は、電界の計算であり、ステップS1411からステップS1414は、磁界の計算である。
【0097】
まず、ステップS1406において、解析時間を1ステップ進める。
次に、ステップS1407において、波源の励振条件を求めるための2次元FDTD法計算の電界計算を行う。ステップS1408において、2次元FDTD法計算の波源について電界の励振処理を実行する。ステップS1409において、解析空間で3次元FDTD法計算の電界計算を行う。そして、ステップS1410において、3次元FDTD法計算の波源について、ステップS1407およびステップS1408の2次元FDTD法計算の結果を参照して、電界励振の処理を行う。
【0098】
次に、ステップS1411において、2次元FDTD法計算の磁界計算を行う。ステップS1412において、2次元計算の波源の磁界励振を行う。ステップS1413において、解析空間について3次元FDTD法計算の磁界計算を行う。ステップS1414において、3次元計算の波源について2次元FDTD法計算の結果を参照して、磁界励振を処理する。ステップS1415において、解析時間が設定した解析終了時間tstopに達しているかどうか判断する。終了時間に達していないと判断した場合(ステップS1415:NO)は、ステップS1406に戻る。他方、終了時間に達したと判断した場合(ステップS1415:YES)は、ステップS1416に移行する。そして、ステップS1416において、FDTD法計算で得られた電磁界データから必要とする物理量を計算する。
【0099】
最後に、ステップS1417において、ステップS1416で求められた物理量の表示装置に表示や、磁気ディスクに保存するなど出力処理を行う。
次に、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。
【0100】
図11は、本発明を適用した第2の実施の形態における電磁界シミュレータのブロック図である。
図11において、電磁界シミュレータ1500は、本発明の波源において任意の偏光をもつ入射波に対応するためのものである。
【0101】
上述の第1の実施の形態のような1回の2次元FDTD法では、3次元空間の全ての電磁界成分を計算できない。そのため、2D−FDTD電磁界計算部(TMモード)1501によるTMモードと、2D−FDTD電磁界計算部(TEモード)1502によるTEモードの2種類の2次元FDTD法計算を実行する。そして、波源励振条件計算部1503は、2D−FDTD電磁界計算部(TMモード)1501によるTMモードと、2D−FDTD電磁界計算部(TEモード)1502によるTEモードの2種類の2次元FDTD法計算の結果から波源の励振条件を計算する。これら2つの2次元FDTD法計算の電界強度の比や、相対的な位相差を設定することで、任意の直線偏光、楕円偏光の入射光に対応できる。
【0102】
図12は、2次元FDTD法計算による磁界強度分布を示す図である。
上述したように、図6に示す3次元のモデルに対して、入射面と平行となる平面でモデルを切断し、切断面に2次元FDTD法計算を適用する。すると、2次元FDTD法の計算で得られる磁界成分の分布が図12のようになる。図12(a)が磁界Y成分、(b)が磁界Z成分である。
【0103】
比較として、従来の波源の励振面上の電界分布を図13に示す。
従来の手法では自由空間を伝搬するとして電界振幅を計算しているため、シリコン基板の影響が全く反映されないが、本発明では切断面に対して2次元FDTD法計算を実行することで入射波と反射波が干渉した分布が得られている。
【0104】
図14は、本発明の波源を用いて計算した、反射面に入射角45度で電磁波が入射した電界強度分布を示す図である。
図14には、切断面に対して2次元FDTD法計算を実行することで得られた入射波と反射波が干渉した磁界分布を、上述の式18および式19により励振条件に適用した場合の計算結果が示されている。入射面と平行となる励振面の励振条件が正しく設定されたことにより、X軸方向の強度分布が一様になっている。
【0105】
なお、本発明では励振条件を計算するために、実際に解析する3次元FDTD法計算と平行して2次元FDTD法計算を実行するが、使用メモリ量や計算時間など計算コストの増大は小さく抑えられる。3次元の解析モデルの各座標方向のグリッド数を(Nx,Ny,Nz)とする。ここで入射面がX軸に垂直である場合に本発明を適用した場合、2次元FDTD法のグリッド数は(Ny,Nz)となる。2次元FDTD法の計算そのものは3次元より簡素化されるが、大まかに全計算量を見積もれば3次元のグリッド数が(Nx+1,Ny,Nz)となった場合と同じと考えて良い。
【0106】
前述したように任意の偏光に対応するためにTMモードとTEモードの2つの2次元FDTD法計算を行う場合は、3次元のグリッド数が(Nx+2,Ny,Nz)になったことと同じである。つまりX方向のグリッドが1乃至2増えた事と同じであり、これは、3次元FDTD法全体の計算量と比べれば十分小さいと見なすことができる。
【0107】
FDTD法の計算は、上述の式3および式4に示すように加減乗除のみで計算でき、通常の波源で使用する式9や式14のような計算コストの高い三角関数を励振面全体で使用する必要もない。従って本発明は小さな計算コストで適用することが可能である。
【0108】
図15は、回折格子構造をもつ反射面について本発明を適用した計算結果を示す図である。
本発明は計算条件の算出にFDTD法を用いるため、FDTD法のもつ解析形状に対する汎用性が有効に働く。例えば、図15に示すように基板に溝形状がある場合についても2次元計算により溝形状による回折を含む強度分布が忠実に再現できるため、強度一様な入射光の分布が設定可能である。
【0109】
図15に示したのは本発明を適用した計算例であるが、図14に示す平坦な反射面と同様に、X方向の強度分布を一様に設定できていることが確認できる。
本発明によりX方向の強度分布を一様に設定すると、入射波の性質は波源のX方向の大きさに依存しないため、X方向の波源および解析領域は散乱体である球を囲む最小限の範囲をとればよい。解析領域を小さくする事が可能であると言うことは、使用メモリ量と計算時間の両方の削減に寄与するため、計算コストの削減に大きく寄与する。
【0110】
本発明は任意の偏光を持つ入射波にも対応可能である。上述の式15乃至式17はTMモード、式20乃至式22はTEモードの2次元FDTD法計算であり、3次元解析モデルに対してはそれぞれS偏光とP偏光の場合に対応する。この2つの2次元FDTD法計算を同時に実行し、相対的に位相をずらして3次元モデルの波源に適用することで、直線偏光だけでなく、円偏光や楕円偏光など任意の偏光状態の波源を設定することが可能である。
【0111】
以上、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明してきたが、本発明が適用される電磁界シミュレータは、その機能が実行されるのであれば、上述の実施の形態に限定されることなく、単体の装置であっても、複数の装置からなるシステムあるいは統合装置であっても、LAN、WAN等のネットワークを介して処理が行なわれるシステムであってもよいことは言うまでもない。
【0112】
また、図16に示しように、バス98に接続されたCPU91、ROMやRAMのメモリ92、入力装置93、出力装置94、外部記憶装置95、媒体駆動装置9、可搬記録媒体99、ネットワーク接続装置97で構成されるシステムでも実現できる。すなわち、前述してきた実施の形態のシステムを実現するソフトェアのプログラムコードを記録したROMやRAMのメモリ92、外部記憶装置95、可搬記録媒体99を、電磁界シミュレータに供給し、その電磁界シミュレータのコンピュータがプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0113】
この場合、可搬記録媒体99等から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した可搬記録媒体99等は本発明を構成することになる。
【0114】
プログラムコードを供給するための可搬記録媒体99としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−RAM、磁気テープ、不揮発性のメモリーカード、ROMカード、電子メールやパソコン通信等のネットワーク接続装置97(言い換えれば、通信回線)を介して記録した種々の記録媒体などを用いることができる。
【0115】
また、図17に示すように、コンピュータ8000がメモリ92上に読み出したプログラムコードを実行することによって、前述した実施の形態の機能が実現される他、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ8000上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現される。
【0116】
さらに、可搬型記録媒体99から読み出されたプログラムコードやプログラム(データ)提供者から提供されたプログラム(データ)が、コンピュータ8000に挿入された機能拡張ボードやコンピュータ8000に接続された機能拡張ユニットに備わるメモリ92に書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現され得る。
【0117】
すなわち、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または形状を取ることができる。
ここで、上述した実施の形態の特徴を列挙すると、以下の通りである。
【0118】
(付記1)
ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界シミュレータにおいて、
前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出部と、
前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出部と、
前記2次元電磁界算出部の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定部と、
前記波源設定部に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成部と、
を備えることを特徴とする電磁界シミュレータ。
(付記2)
前記3次元空間における前記波源生成部がS1であり、
前記3次元空間を平面で切断した前記切断面に存在する、前記波源生成部S1の一部がS2であり、
前記波源生成部S2は、前記切断面において電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させ、
前記2次元電磁界算出部は、前記切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定する、
ことを特徴とする付記1に記載の電磁界シミュレータ。
(付記3)
前記波源生成部S1は、直方体を形成する6つの面上の電界と磁界を振動させる励振面で構成され、
前記2次元電磁界算出部は、前記6つの前記励振面のいずれかの面と平行となる面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の結果を参照して、前記断面と平行となる2つの励振面の励振条件を設定する、
ことを特徴とする付記1または2に記載の電磁界シミュレータ。
(付記4)
前記3次元空間に反射面と、前記反射面に入射する電磁波が配置され、
前記2次元電磁界算出部は、前記反射面の法線と前記電磁波の波数ベクトルで定義される入射面に対して、前記入射面と平行な面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記入射面と平行となる励振面に対して、前記2次元電磁界算出部の計算結果を励振条件として設定する、
ことを特徴とする付記1乃至3の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
(付記5)
前記2次元電磁界算出部は、前記切断面について複数の異なるモードの電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部によって算出された各モードの計算結果を前記波源算出部の励振条件として設定する、
ことを特徴とする付記1乃至4の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
(付記6)
前記波源生成部S1と前記波源生成部S2の励振条件が同一であり、
前記3次元電磁界算出部と前記2次元電磁界算出部は、それぞれ同じ時刻における3次元空間の電磁界分布と、2次元空間の電磁界分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定する、
ことを特徴とする付記1乃至5の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
(付記7)
ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界プログラムであって、
前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出機能と、
前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出機能と、
前記2次元電磁界算出機能の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定機能と、
前記波源設定機能に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成機能と、
をコンピュータに実現させるための電磁界シミュレートプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】FDTD法における電界および磁界の各成分の配置を示す図である。
【図2】波源として1つの励振面で一様な振幅、同位相で電界を励振したときに発生する電磁波の電界分布である。
【図3】6つの励振面で構成した波源から伝播する電磁波の電界強度分布を示す図である。
【図4】6つの励振面で構成した従来の波源を示す図である。
【図5】従来の波源を用いた微小球体による電磁波の散乱計算を説明するための図である。
【図6】従来の波源を用いて計算した、反射面に入射角45度で電磁波が入射した電界強度分布を示す図である。
【図7】3次元解析モデルと2次元解析モデルの関係を示す図である。
【図8】2次元解析モデルの構成を示す図である。
【図9】本発明を適用した第1の実施の形態における電磁界シミュレータのブロック図である。
【図10】本発明を適用した第1の実施の形態における電磁界シミュレートプログラムの流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明を適用した第2の実施の形態における電磁界シミュレータのブロック図である。
【図12】2次元FDTD法計算による磁界強度分布を示す図である。
【図13】従来の波源の励振面上の磁界強度分布を示す図である。
【図14】本発明の波源を用いて計算した、反射面に入射角45度で電磁波が入射した電界強度分布を示す図である。
【図15】回折格子構造をもつ反射面について本発明を適用した計算結果を示す図である。
【図16】本発明における電磁界シミュレータのハードウェア構成図である。
【図17】本発明における電磁界シミュレートプログラムのコンピュータへのローディングを説明するための図である。
【符号の説明】
【0120】
91 CPU
92 メモリ
93 入力装置
94 出力装置
95 外部記録装置
96 媒体駆動装置
97 ネットワーク接続装置
99 バス
99 可搬記録媒体
1300 電磁界シミュレータ
1301 物体入力部
1302 計算条件入力部
1303 入射光入力部
1304 3D−FDTD法計算係数算出部
1305 入射面設定部
1306 2D−FDTD法計算領域設定部
1307 3D−FDTD法電磁界計算部
1308 2D−FDTD電磁界計算部
1309 波源励振条件計算部
1310 計算結果解析部
1311 解析結果出力部
1500 電磁界シミュレータ
1501 2D−FDTD電磁界計算部(TMモード)
1502 2D−FDTD電磁界計算部(TEモード)
1503 波源励振条件計算部
8000 コンピュータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界シミュレータにおいて、
前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出部と、
前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出部と、
前記2次元電磁界算出部の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定部と、
前記波源設定部に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成部と、
を備えることを特徴とする電磁界シミュレータ。
【請求項2】
前記3次元空間における前記波源生成部がS1であり、
前記3次元空間を平面で切断した前記切断面に存在する、前記波源生成部S1の一部がS2であり、
前記波源生成部S2は、前記切断面において電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させ、
前記2次元電磁界算出部は、前記切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁界シミュレータ。
【請求項3】
前記波源生成部S1は、直方体を形成する6つの面上の電界と磁界を振動させる励振面で構成され、
前記2次元電磁界算出部は、前記6つの前記励振面のいずれかの面と平行となる面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の結果を参照して、前記断面と平行となる2つの励振面の励振条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁界シミュレータ。
【請求項4】
前記3次元空間に反射面と、前記反射面に入射する電磁波が配置され、
前記2次元電磁界算出部は、前記反射面の法線と前記電磁波の波数ベクトルで定義される入射面に対して、前記入射面と平行な面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記入射面と平行となる励振面に対して、前記2次元電磁界算出部の計算結果を励振条件として設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
【請求項5】
前記2次元電磁界算出部は、前記切断面について複数の異なるモードの電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部によって算出された各モードの計算結果を前記波源算出部の励振条件として設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
【請求項6】
前記波源生成部S1と前記波源生成部S2の励振条件が同一であり、
前記3次元電磁界算出部と前記2次元電磁界算出部は、それぞれ同じ時刻における3次元空間の電磁界分布と、2次元空間の電磁界分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
【請求項7】
ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界プログラムであって、
前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出機能と、
前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出機能と、
前記2次元電磁界算出機能の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定機能と、
前記波源設定機能に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成機能と、
をコンピュータに実現させるための電磁界シミュレートプログラム。
【請求項1】
ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界シミュレータにおいて、
前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出部と、
前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出部と、
前記2次元電磁界算出部の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定部と、
前記波源設定部に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成部と、
を備えることを特徴とする電磁界シミュレータ。
【請求項2】
前記3次元空間における前記波源生成部がS1であり、
前記3次元空間を平面で切断した前記切断面に存在する、前記波源生成部S1の一部がS2であり、
前記波源生成部S2は、前記切断面において電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させ、
前記2次元電磁界算出部は、前記切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁界シミュレータ。
【請求項3】
前記波源生成部S1は、直方体を形成する6つの面上の電界と磁界を振動させる励振面で構成され、
前記2次元電磁界算出部は、前記6つの前記励振面のいずれかの面と平行となる面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元空間の電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の結果を参照して、前記断面と平行となる2つの励振面の励振条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁界シミュレータ。
【請求項4】
前記3次元空間に反射面と、前記反射面に入射する電磁波が配置され、
前記2次元電磁界算出部は、前記反射面の法線と前記電磁波の波数ベクトルで定義される入射面に対して、前記入射面と平行な面で前記3次元空間を切断し、その切断面において2次元電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記入射面と平行となる励振面に対して、前記2次元電磁界算出部の計算結果を励振条件として設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
【請求項5】
前記2次元電磁界算出部は、前記切断面について複数の異なるモードの電磁界の分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部によって算出された各モードの計算結果を前記波源算出部の励振条件として設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
【請求項6】
前記波源生成部S1と前記波源生成部S2の励振条件が同一であり、
前記3次元電磁界算出部と前記2次元電磁界算出部は、それぞれ同じ時刻における3次元空間の電磁界分布と、2次元空間の電磁界分布を算出し、
前記波源設定部は、前記2次元電磁界算出部の計算結果を前記波源生成部S1の励振条件として設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電磁界シミュレータ。
【請求項7】
ある時刻における3次元空間の電磁界の分布を用いて、次の時刻における電磁界の空間分布を算出することを繰り返す電磁界プログラムであって、
前記3次元空間全体について電界の分布および磁界の分布を算出する3次元電磁界算出機能と、
前記3次元空間を平面で切断した切断面において、2次元空間の電界の分布および磁界の分布を算出する2次元電磁界算出機能と、
前記2次元電磁界算出機能の計算結果を、電磁波を発生するための励振条件として設定する波源設定機能と、
前記波源設定機能に設定された励振条件に基づいて、前記3次元空間の一部の電界と磁界を強制振動させて電磁波を発生させる波源生成機能と、
をコンピュータに実現させるための電磁界シミュレートプログラム。
【図1】
【図4】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−82849(P2008−82849A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262447(P2006−262447)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、「大容量光ストレージ技術の開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、「大容量光ストレージ技術の開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
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