説明

電磁継電器

【課題】薄型であっても、簡単かつ安価な構成により所望の動作特性を得る。
【解決手段】電磁石の励磁又は消磁により可動鉄片20を回動させ、カード21を介して可動接触片43を弾性変形させ、可動接点46を固定接触片の固定接点に開閉させる。可動鉄片20は、カード21を押圧可能なカード押圧部36を備える。カード21は、支点を中心として回動することにより、可動接触片43を押圧可能な接触片押圧部37を備える。可動鉄片20又はカード21のうち、少なくともいずれか一方は、可動鉄片20を回動させる際、可動鉄片20からカード21への力の伝達を、支点に対して可動鉄片20のカード押圧部36による押圧位置よりも離れた位置で行った後、カード押圧部36で行わせる押圧位置変更部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器、特に、薄型であっても所望の動作特性を得ることのできる電磁継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁継電器として、例えば、電磁石の励磁・消磁により可動鉄片を回動させ、カードを介して可動接触片を弾性変形させ、可動接点を、対向して配置した固定接触片の固定接点に開閉させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−327236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記タイプの電磁継電器には薄型化が要求されており、電磁石も薄く形成する必要が生じた。
【0005】
しかしながら、電磁石を薄く形成すると、それだけコイルの巻数が制限され、同様な電圧値で電圧を印加していたのでは吸引力が低下し、所望の動作特性を得られないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、薄型であっても、簡単かつ安価な構成により所望の動作特性を得ることのできる電磁継電器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、電磁石の励磁又は消磁により可動鉄片を回動させ、前記可動鉄片によりカードを介して可動接触片を弾性変形させ、前記可動接触片に設けた可動接点を、前記可動接触片に対向して配置した固定接触片の固定接点に開閉させるようにした電磁継電器において、前記可動鉄片は、カードを押圧可能なカード押圧部を備え、前記カードは、支点を中心として回動することにより、前記可動接触片を押圧可能な接触片押圧部を備え、前記可動鉄片又は前記カードのうち、少なくともいずれか一方は、前記可動鉄片を回動させる際、可動鉄片からカードへの力の伝達を、前記支点に対して可動鉄片のカード押圧部による押圧位置よりも離れた位置で行った後、カード押圧部で行わせる押圧位置変更部を備えたものである。
【0008】
この構成により、電磁石を励磁又は消磁して可動鉄片を回動させれば、可動鉄片はまず押圧位置変更部により、支点に対して可動鉄片のカード押圧部よりも離れた位置でカードを押圧する。これにより、電磁石により可動鉄片を吸引する力は、カード押圧部で押圧する場合に比べて小さくて済む。そして、電磁石の吸引面に可動鉄片が近付いて吸引力が増大すれば、カード押圧部によりカードを押圧させることができる。このように、電磁石による可動鉄片の駆動初期に、カードを介して可動接触片を弾性変形させるのに要する力を抑制することができる。つまり、電磁石の吸引面と可動鉄片の被吸引部との間の距離(ストローク)と、電磁石の吸引力との関係を示す吸引力曲線に対し、可動接触片を弾性変形させるのに要する力を十分に抑えることができる。したがって、電磁石を薄型とすることによりコイルの巻数が少なくなって吸引力が低下したとしても、適切に可動鉄片を回動させてカードを介して可動接触片を弾性変形させることが可能となる。
【0009】
前記押圧位置変更部は、前記可動鉄片又は前記カードのうち、少なくともいずれか一方に形成した突出部で構成すればよい。特に、突出部を樹脂製のカードに形成すれば、カードを成形加工する際に同時に得ることができ、簡単かつ安価に対応することが可能となる点で好ましい。
【0010】
前記押圧位置変更部は、前記可動鉄片の一部と前記カードの一部が面接触する面接触部を備えた構成としてもよい。そして、前記面接触部による面接触は、電磁石の励磁に伴う可動鉄片の回動途中に得られるようにするのが好ましい。これによれば、可動鉄片の回動途中で接点が切り替わる際、面接触部での面接触状態を得ることができる。したがって、接点が離間してもカード及び可動接触片の変位を安定した状態で行わせることが可能となる。
【0011】
前記押圧位置変更部は、前記可動鉄片又は前記カードのうち、少なくともいずれか一方に形成され、前記可動鉄片の回動に伴い当接位置を徐々に支点側へと変位させる湾曲面で構成してもよい。
【0012】
これによれば、可動鉄片が回動するに従って押圧位置が徐々に変位するので、カードを介して可動鉄片に作用する可動接触片の弾性力が急激に変化することを防止でき、可動鉄片をスムーズに回動させることが可能となる。
【0013】
前記カードの支点には、同一軸心上に配置される一対の軸部が設けられ、前記各軸部は、二股に分かれた弾性変形部にそれぞれ設けられ、弾性変形部の弾性変形により、前記電磁石が載置されるベースに設けた軸受部に係合して回転自在に支持されるようにしてもよい。
【0014】
この構成により、カードを簡単にベースに取り付けることができる上、カードの回動を安定させることが可能となる。したがって、可動鉄片の回動に伴う押圧位置変更部による押圧位置の変化をスムーズにかつ確実に行わせることが可能となる。このため、設計通りの動作特性を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、押圧位置変更部により、可動鉄片からカードへの力の伝達を、支点に対して可動鉄片のカード押圧部による押圧位置よりも離れた位置で行った後、カード押圧部で行わせるようにしている。このため、電磁石の初期駆動時にそれほど大きな吸引力を必要とされることがなく、電磁石が薄型で従来に比べて吸引力が小さい場合であっても、スムーズに可動鉄片を回動させ、カードを介して可動接触片を弾性変形させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0017】
<構成> 図1は、本実施形態に係る電磁継電器1を示す。この電磁継電器1は、大略、ベース2、電磁石ブロック3、接点開閉部材4、及び、ケース5で構成されている。
【0018】
ベース2は、図8に示すように、電磁石ブロック3が配設される電磁石ブロック取付部6と、接点開閉部材4が配設される接点開閉部材取付部7とを備える。電磁石ブロック取付部6と接点開閉部材取付部7との間は仕切壁8によって仕切られている。また、ベース2の底面には、図15及び図16に示すように、嵌合用凹部9が複数箇所(ここでは3箇所)に形成されている。嵌合用凹部9には、後述するように、電磁継電器1を接続するソケット側に設けた突出部60が係脱される。
【0019】
電磁石ブロック取付部6には、後述する鉄心22の下端部が位置する逃がし凹部10が形成されている(図2参照)。また、逃がし凹部10の側方(長手方向)には端子孔11が2箇所に形成されている。電磁石ブロック取付部6の短手方向の片側には接点開閉部材取付部7の側面に連続するガイド壁12が形成され、残る片側にはガイド片13が形成されている。ガイド壁12には開口部12aが形成されている。ガイド壁12により、後述する電磁石ブロック3の片側の広い部分がガイドされ、ガイド片13によりヨーク18の一部がガイドされる。つまり、電磁石ロック3が側方(短手方向)にガイドされる。
【0020】
接点開閉部材取付部7には、後述する各接触片を圧入するための接触片圧入部14が3箇所に形成されている。また、接点開閉部材取付部7には、前記仕切壁8から延設される両側壁に軸受孔15がそれぞれ形成されている。また、両側壁の外面には、軸受孔15の下方側にケース5を装着するための係止爪16がそれぞれ突設されている。
【0021】
電磁石ブロック3は、図2に示すように、電磁石17、ヨーク18、ヒンジバネ19、可動鉄片20、及び、カード21で構成されている。
【0022】
電磁石17は、図7に示すように、鉄心22を装着したスプール23の胴部31にコイル24を巻回したもので、スプール23の鍔部32にはコイル24の両端部をそれぞれ巻き付けるためのコイル端子25が取り付けられている。
【0023】
鉄心22は、図7に示すように、薄い磁性板材(ここでは、縦×横×厚み=22×4×1mm)からなる板状部26で構成されている。板状部26の一端側には磁極部27、他端側には圧入部28が形成されている。板状部26の両面両縁部(横断面矩形の各角部)には段状となるように切除されたガイド溝29が形成されている。また、板状部26の両側部中央には位置決め凹部30が形成されている。磁極部27は、磁性板材の一端部を側方に屈曲することにより得られる。屈曲部分の円弧面がほぼ無くなるように、上面を切削等により切除して磁極面27aが得られる。また、圧入部28は、磁性板材の他端部を幅狭に形成したもので、ヨーク18に形成した圧入孔18aに圧入される。
【0024】
スプール23は、図7に示すように、合成樹脂材料を成形加工したもので、胴部31と、胴部31の両端部に形成される鍔部32とからなる。胴部31は、前記鉄心22が配置されるように所定間隔で並設した連結部33で構成されている。連結部33の対向面両縁部には突条34が形成されている。突条34は、中央部を除く片側の縁部と、残る片側の中央部とにそれぞれ配置されている。各突条34は、前記鉄心22のガイド溝29に位置して鉄心22をガイドする。これにより、胴部31を一対の連結部33で構成するだけであっても適切に鉄心22をガイドすることができる。また、連結部33の対向面中央部には位置決め突部33aが形成され、前記鉄心22の位置決め凹部30に係合することにより、スプール23に対して鉄心22をその軸方向に位置決めする。上端鍔部32の上面中央部には前記連結部33の間の空間に連通する矩形状の連通孔32aが形成されている。上端鍔部32の上面には、前記連通孔32aに連続する溝部32bが形成され、前記鉄心22の磁極部27が配設される。上端鍔部32の端面中心部には幅方向に略V字状の溝が形成されている。この溝は、自動機のために設けられている。また、下端鍔部32にも同様な連通孔及び溝部(図示せず)が形成されている。但し、溝部にはヨーク18の一端部が配設される。下端鍔部32は側方に延設され、そこには2箇所に端子孔32dが形成されている。
【0025】
コイル24は、自動機により前記鉄心22を装着したスプール23の胴部31にコイル線を巻回することにより形成される。
【0026】
コイル端子25は、図7に示すように、端子部25aとコイル巻回部25bとを備える。端子部25aは、前記スプール23の下端鍔部に形成した端子孔11に圧入される。コイル線巻回部25bには、前記スプール23の胴部31に巻回したコイル線がそれぞれ巻回された後、曲げ起こされる。
【0027】
ヨーク18は、図10に示すように、磁性材料を略L字形に屈曲したものである。ヨーク18の一端部(上端部)にはヒンジバネ19が加締固定される。ヨーク18の他端部(下端水平部)には圧入孔18aが形成され、そこには前記鉄心22の圧入部28が圧入される。
【0028】
ヒンジバネ19は、ヨーク18の一端部に加締固定される取付部19aと、そこから屈曲して延びる弾性支持部19bとで構成されている。取付部19aには加締用の取付孔が2箇所に形成されている。弾性支持部19bは、中央部に矩形孔19cを形成され、先端に支持片19dが延設されている。
【0029】
可動鉄片20は、図11に示すように、磁性板材を中央部で屈曲させたもので、屈曲部を前記ヨーク18の一端部(上端の支点)によって回動可能に支持される。可動鉄片20の一端部は吸引部35で、前記鉄心22の磁極面27aに吸引される。可動鉄片20の他端部は、前記吸引部35よりも幅狭で、ヨーク18に回動可能に支持された状態で、矩形孔19cを挿通して延びるカード押圧部36を構成している。
【0030】
カード21は合成樹脂材料を成形加工することにより得られ、図9に示すように、板材の片面(前面)中央部に接触片押圧部37が形成され、残る片面(背面)中央部にガイド受部38が形成されている。接触片押圧部37は、略三角形状で、上下の各傾斜面の中心には溝が形成され、先端は湾曲した当接面となっている。ガイド受部38は、略U字形で、可動鉄片20のカード押圧部36が位置してガイドされる。ガイド受部38の上方近傍には突出部39が形成されている。突出部39は、カード21を可動鉄片20の当接面によって押圧する前に、可動鉄片20のカード押圧部36が当接するような高さに形成されている。すなわち、可動鉄片20が回動すると、まず突出部39が可動鉄片20に当接してカード21が押されるように構成されている。板材の下端部は二股に分かれた弾性変形部40となっている。各弾性変形部40の端部(下端部)には側方に軸部41が突設されている。弾性変形部40を近接方向に弾性変形させながら、軸部41を前記ベース2の軸受孔15に係合すると、カード21はベース2に軸部41を中心として回転自在に支持される。また、板材の上端部には直角に折れ曲がったインジケータ部42が形成されている。インジケータ部42は、カード21の回動角度が小さくても回動中心から離れた位置に形成されることにより移動距離を大きくして駆動状態を知らせる、いわゆるインジケータとしての役割を果たす。
【0031】
接点開閉部材4は、図8に示すように、可動接触片43とその両側に配置される2つの固定接触片(第1固定接触片44及び第2固定接触片45)とで構成されている。可動接触片43は、接触片部43aに別体の端子部43bを加締固定したものである。接触片部43aの上端部には貫通孔が形成され、そこには可動接点46が加締固定されている。可動接点46は、接触片部43aの両面に形成され、第1固定接触片44及び第2固定接触片45の各固定接点にそれぞれ接離する。端子部43bは階段状に屈曲され、ベース2の下面からの突出位置を調整されている。第1固定接触片44は、上方側に矩形孔44aが形成され、その上部に第1固定接点47が加締固定されている。第1固定接触片44の下端側は前記端子部と同様に階段状に屈曲されている。第2固定接触片45は短冊状で、上端部に第2固定接点48が加締固定されている。
【0032】
ケース5は、図1に示すように、透光性を有する材料を、下端面が開口する箱形状としたものである。ケース5の一方の側端面中央部には、係止爪5aが突設されている。また、ケース5の両側面には下端開口側中央部に係止孔5bがそれぞれ形成されている。各係止孔5bには、前記ベース2に形成した係止爪16が係止される。さらに、ケース5の上面には、カバー49が着脱可能となっている。カバー49は、付加的な機能追加するためのもので、必要とされる機能に応じて、インジケータ等の付属部品が設けられる。すなわち、付加的な機能が必要となれば、そのための付属部品を搭載したカバー49を装着する。但し、前記実施形態では、カバー49はダミーで、付属部品は搭載していない。なお、49aは、カード21が回動した際、インジケータ部42を視認可能とするための除き窓である。
【0033】
<組立> 次に、前記電磁継電器1の組立方法について説明する。
【0034】
まず、電磁石17と接点開閉部材4とを形成する。電磁石17は、図7に示すように、スプール23の上端又は下端鍔部32に形成した連通孔32aを介して連結部33内に鉄心22を挿入する。この場合、鉄心22は、そのガイド溝29にスプール23の連結部33に形成した突条34が位置することによりガイドされるので、スムーズに連結部33へと取り付けることができる。途中、連結部33が連結部33の位置決め突部によって離間する方向に弾性変形する。そして、鉄心22の位置決め凹部30に連結部33の位置決め突部が係合することにより、鉄心22はスプール23に対して長手方向にも位置決めされる。このとき、位置決めが完了したことが、連結部33の形状復帰動作に伴うクリック感として得られる。したがって、スプール23に対して鉄心22を位置決めできたことを確実に認識することが可能となる。また、スプール23の下端鍔部の端子孔11にコイル端子25を圧入する。圧入状態では、各コイル端子25のコイル線巻回部25bは、側方(互いに離反する方向)に延びている。続いて、スプール23の胴部31にコイル線を巻回する。コイル線は自動機にて巻回するが、コイル線巻回部は側方に延びており、自動巻回の妨げとなることはない。胴部31へのコイル線の巻回が完了すれば、コイル線の両端部をコイル線巻回部にそれぞれ巻回し、このコイル線巻回部を曲げ起こす。さらに、図10に示すように、ヒンジバネ19を加締固定したヨーク18を取り付ける。ヨーク18は、下端水平部の圧入孔18aに鉄心22の圧入部28を挿入することにより取り付ける。一方、接点開閉部材4では、リードフレームを打ち抜き、接点を加締固定して各接触片を得る。但し、可動接触片43は接触片部43aと端子部43bとを加締固定することにより完成する。
【0035】
次に、ベース2に接点開閉部材4を取り付ける。すなわち、図8に示すように、各接触片を対応する接触片圧入部14にそれぞれ圧入することにより、第1固定接触片44及び第2固定接触片45の間に可動接触片43を位置させる。この状態で、可動接触片43の可動接点46が第2固定接点48に閉成可能に対峙し、第1固定接点47に閉成する。
【0036】
続いて、図9に示すように、ベース2にカード21を取り付ける。カード21は下端側の弾性変形部40を互いに接近させるように弾性変形させながら、ベース2の側壁間に挿入する。そして、弾性変形部40を形状復帰させて軸部41を軸受孔15に係合することにより、ベース2へのカード21の取付が完了する。この状態では、カード21の突出部39が第1固定接触片44の矩形孔44aを介して可動接触片43側に突出する。
【0037】
さらに、ベース2に電磁石ブロック3を取り付ける。すなわち、コイル端子25をベース2の端子孔11に圧入しながら、電磁石17を電磁石ブロック取付部6に載置する。電磁石17は、片側をガイド壁12に、残る片側のヨーク18をガイド片13によってガイドされ、短手方向に位置規制される。また、コイル端子25が端子孔11に圧入され、ヨーク18が仕切壁8にガイドされることにより長手方向に位置規制される。
【0038】
電磁石ブロック3の取付が完了すれば、図11に示すように、可動鉄片20を取り付ける。可動鉄片20は、ヨーク18の上端部に屈曲部の内面側を支持され、ヒンジバネ19によって屈曲部の外面側をガイドされる。また、可動鉄片20のカード押圧部36は、ヒンジバネ19の矩形孔19cを介してカード21に当接する。この取付状態では、可動鉄片20は、可動接触片43のバネ力により押圧されたカード21の突出部39によって押圧され、吸引部35が鉄心22の磁極面27aから離間するように位置決めされる。
【0039】
その後、図1に示すように、ベース2にカバー49を備えたケース5を装着して組立作業を完了する。ケース5はベース2の外側面に嵌合し、両側面に形成した係止爪16が係止孔に係止されることにより抜止される。カバー49は必要に応じて付属部品を備えたものを使用すればよい。
【0040】
<動作> 続いて、前記電磁継電器1の動作について説明する。
【0041】
電磁石17に電圧を印加していない消磁状態では、図3に示すように、可動接触片43はそれ自身のバネ力により起立した状態を維持し、可動接点46は第1固定接点47に閉成する。また、カード21は、可動接触片43によって接触片押圧部37を押し戻され、軸部41を中心として反時計回り方向に回動した状態を維持する。そして、この状態では、カード21の突出部39が可動鉄片20に当接し、可動鉄片20は支点(ヨーク18の上端部)を中心として時計回り方向に回動し、吸引部35を鉄心22の磁極面27aから離間させる。
【0042】
電磁石17に電圧を印加して励磁すると、図4に示すように、可動鉄片20の吸引部35が鉄心22の磁極面27aに吸引され、支点を中心として時計回り方向に回動する。可動鉄片20が所定角度回動するまでの間は、可動鉄片20のカード押圧部36、詳しくは先端ではなく、先端から離れた前面がカード21の突出部39を押圧する。これにより、カード21が軸部41を中心として回動し、その接触片押圧部37が、可動接触片43を、そのバネ力に抗して押圧する。
【0043】
可動鉄片20がある程度回動すれば、図5に示すように、可動接点46は第1固定接点47から離間した後、カード押圧部36はその先端部でカード21(突出部39ではなくガイド受部38の内面)を押圧する。これにより、可動接触片43がさらに弾性変形し、可動接点46は第2固定接点48に閉成する。そして、可動鉄片20の吸引部35が鉄心22の磁極面27aに吸着された状態では、図6に示すように、可動接点46が第2固定接点48を押し込み、所望の接点接触圧が得られる。
【0044】
このように、カード21に突出部39を形成したものでは、作用点が、可動鉄片20の回動初期では、カード21の回動中心である軸部41から離れた突出部39となり、小さな力でカード21を回動させることができる。したがって、電磁石17の駆動初期で十分な吸引力が得られない状態であっても、確実にカード21を回動させることが可能となる(図13のグラフ中、本案件でのバネ負荷の変化Aで示す。従来構造のバネ特性を示す変位Bに比べて下方側で推移している。このため、電磁石の吸引力に多少のバラツキがあったとしても可動接触片を弾性変形させることが可能である。)。このため、前述のような薄型の電磁石17であって、十分な吸引力が期待できない場合であっても、所望の初期動作を得ることが可能となる。そして、可動鉄片20がある程度回動すれば、作用点が突出部39から軸部41に近いガイド受部38内へと移動する。この場合、可動鉄片20の吸引部35が電磁石17の磁極面27aに接近するので、十分な吸引力が得られ、可動鉄片20及びカード21の回動動作に支障を来すことがない。
【0045】
<他の実施形態> 前記実施形態では、カード21に突出部39を形成するようにしたが、可動鉄片20に形成することも可能である。可動鉄片20への突出部39の形成は、プレス加工等を使用したり、別途、樹脂材料、金属材料等を接着、圧着等により取り付けたりして行えばよい。突出部39は、カード21及び可動鉄片20の両方に形成し、突出部同士を当接させるように構成することも可能である。
【0046】
また、前記突出部39に代えて図13や図14に示すような面接触部50を形成するようにしてもよい。
【0047】
図13では、面接触部50はカード21の背面に形成される傾斜面を備えた構成となっている。この構成によれば、電磁石17の励磁に伴う可動鉄片20の回動途中、詳しくは接点が切り替わる際に、カード押圧部36の前面が前記面接触部50の傾斜面に面接触する。したがって、接点切替時のカード21の動作状態を安定させることができる。
【0048】
電磁石17を励磁すれば、可動鉄片20がその吸引部35を鉄心22の磁極面に吸引されて回動し、カード押圧部36でカード21を押圧する。電磁石17の初期駆動時には可動鉄片20は面接触部50の上端部を介してカード21を押圧する。そして、カード21が軸部41を中心として回動するに従って可動接点46が第1固定接点47から離間し、可動接触片43はカード21を介して可動鉄片20のみによって支持された状態となる。このとき、可動鉄片20によるカード21の押圧位置が、面接触部36の上端部から変化し、可動鉄片20の前面と面接触部36との面接触状態となる。したがって、カード21及び可動接触片43は安定した状態で変位する。その後、可動鉄片20によるカード21の押圧位置が、カード押圧部36の前面から先端部へと移動し、可動接点46が第2固定接点48に閉成する。このように、作用点が面接触部36の上端部から、カード21の回転中心である軸部側へと近付く先端部に移動する。したがって、電磁石17の初期駆動力が小さくても、十分にカード21を回動させて可動接触片43を弾性変形させることが可能である。
【0049】
また、図14では、可動鉄片20のカード押圧部36を途中で屈曲(あるいは切削、研磨等)することにより、第1押圧面51と第2押圧面52とを備えた構成で、両押圧面51,52により面接触部50を構成している。この構成によっても、前記図13に示すものと同様な効果が得られる。すなわち、電磁石17の励磁による駆動初期では、カード21は可動鉄片20の第2押圧面52の上方境界部52aによって押圧される。そして、第2押圧面52によって押圧された後、第1押圧面51によって押圧される。これによれば、可動鉄片20によるカード21の押圧位置が変化する過程で、必ず面接触による安定状態を得ることができるので、カード21や可動接触片43の動作状態を安定させることが可能となる。なお、図14では、駆動初期に上方境界部52aで可動鉄片20をカード21に線接触させるようにしたが、この位置でも面接触させるように構成することも可能である。
【0050】
また、前記面接触部50に代えて湾曲部(図示せず)を形成するようにしてもよい。すなわち、前記図13に示す面接触部50の傾斜面に代えて断面円弧状に突出する湾曲面で構成する。そして、可動鉄片20の回動に伴って徐々にカード21の湾曲面に対するカード押圧部36の当接位置を変化させる。詳しくは、当接位置をカード21の回動中心(軸部41)から離れた位置から徐々に近付くように変化させる。これにより、カード21を回動させるのに必要な力を、小さい値から徐々に大きくなるように変化させることができる。このため、可動鉄片20、カード21、可動接触片43の一連の動作をスムーズに行わせることが可能となる。
【0051】
前記電磁継電器1は、例えば、図16に示すように、ソケット53に装着して使用する。ソケット53は、電磁継電器1とほぼ同等な厚みで、電磁継電器1の下半部を装着可能な凹部54が形成されている。凹部54内には、電磁継電器1のベース2から突出する各端子を挿入可能な端子孔54aが形成され、端子を挿入すると、内部端子59の挟持部59aに挟持されるようになっている。また、凹部54を構成する壁面には、支軸55aを中心として回動する略L字形のアーム部材55が設けられている。アーム部材55は、一端部がソケット53の前端面から突出する操作部56となっている。操作部56の一部は、凹部54に装着した電磁継電器1の係止爪5aに係止される係止部57を構成している。また、操作部以外はソケット53内に位置し、操作部56を側方(矢印方向)に操作すると、支軸を中心として回動し、他端部(押出部58)が凹部54内に突出するようになっている。これにより、操作部56を操作するだけで、係止爪5aから係止部57を離脱させると共に、押出部58で凹部54に装着した電磁継電器1を押し出すことができ、電磁継電器1を凹部54からスムーズに取り外すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係る電磁継電器のベースからケースを取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図2】本実施形態に係る電磁継電器の正面断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図3から電磁石を励磁してカードが若干回動した状態を示す図である。
【図5】図4からさらにカードが回動し、可動接点が第2固定接点に当接した状態を示す図である。
【図6】図5からさらにカードが回動し、可動接点が第2可動接点を押し込んだ状態を示す図である。
【図7】図1の電磁石を示す分解斜視図である。
【図8】図1のベース及び各接触片を示す分解斜視図である。
【図9】図8からカードを組み付ける状態を示す分解斜視図である。
【図10】電磁石とヨーク及びヒンジバネを示す分解斜視図である。
【図11】可動鉄片を組み付ける状態を示す分解斜視図である。
【図12】鉄心の磁極面と可動鉄片の吸引部の間の距離と、電磁石の吸引力及び押圧位置の違いによる可動接触片から受けるバネ力との関係を示すグラフである。
【図13】(a)は他の実施形態に係るカードを示す斜視図、(b)はそのカードを組み込んだ状態を示す部分断面図である。
【図14】(a)は他の実施形態に係る可動鉄片を示す斜視図、(b)はその可動鉄片を組み込んだ状態を示す部分断面図である。
【図15】本実施形態に係るベースの底面図である。
【図16】本実施形態に係る電磁継電器をソケットに組み付けようとしている状態を示す部分破断斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1…電磁継電器
2…ベース
3…電磁石ブロック
4…接点開閉部材
5…ケース
6…電磁石ブロック取付部
7…接点開閉部材取付部
8…仕切壁
9…嵌合用凹部
10…逃がし凹部
11…端子孔
12…ガイド壁
13…ガイド片
14…接触片圧入部
15…軸受孔
16…係止爪
17…電磁石
18…ヨーク
19…ヒンジバネ
20…可動鉄片
21…カード
22…鉄心
23…スプール
24…コイル
25…コイル端子
26…板状部
27…磁極部
28…圧入部
29…ガイド溝
30…位置決め凹部
31…胴部
32…鍔部
33…連結部
34…突条
35…吸引部
36…カード押圧部
37…接触片押圧部
38…ガイド受部
39…突出部
40…弾性変形部
41…軸部
42…インジケータ部
43…可動接触片
44…第1固定接触片
45…第2固定接触片
46…可動接点
47…第1固定接点
48…第2固定接点
49…カバー
50…面接触部
51…第1押圧面
52…第2押圧面
53…ソケット
54…凹部
55…アーム部材
56…操作部
57…係止部
58…押出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石の励磁又は消磁により可動鉄片を回動させ、前記可動鉄片によりカードを介して可動接触片を弾性変形させ、前記可動接触片に設けた可動接点を、前記可動接触片に対向して配置した固定接触片の固定接点に開閉させるようにした電磁継電器において、
前記可動鉄片は、カードを押圧可能なカード押圧部を備え、
前記カードは、支点を中心として回動することにより、前記可動接触片を押圧可能な接触片押圧部を備え、
前記可動鉄片又は前記カードのうち、少なくともいずれか一方は、前記可動鉄片を回動させる際、可動鉄片からカードへの力の伝達を、前記支点に対して可動鉄片のカード押圧部による押圧位置よりも離れた位置で行った後、カード押圧部で行わせる押圧位置変更部を備えたことを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記押圧位置変更部は、前記可動鉄片又は前記カードのうち、少なくともいずれか一方に形成した突出部であることを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記押圧位置変更部は、前記可動鉄片の一部と前記カードの一部が面接触する面接触部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記押圧位置変更部は、前記可動鉄片又は前記カードのうち、少なくともいずれか一方に形成され、前記可動鉄片の回動に伴い当接位置を徐々に支点側へと変位させる湾曲面で構成したことを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記カードの支点には、同一軸心上に配置される一対の軸部が設けられ、
前記各軸部は、二股に分かれた弾性変形部にそれぞれ設けられ、弾性変形部の弾性変形により、前記電磁石が載置されるベースに設けた軸受部に係合して回転自在に支持されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−213892(P2007−213892A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30751(P2006−30751)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)