説明

電磁継電器

【課題】 高容量の負荷により発生するアーク放電による接点障害の抑制を低コストで実現可能な電磁継電器を提供すること。
【解決手段】 固定接点10を有する固定接点端子11が設けられた絶縁体基台14とこの絶縁基台14上に搭載されたコイル16を有するコイル組立体18と、コイル組立体18に搭載されコイル16への電流の通流制御によってシーソー動作することにより固定接点10に対し接触・開離される1対の可動接点1を有した可動接点ばね3を備える接極子組立体17とを備えた電磁継電器において、固定接点10および可動接点対1のそれぞれに隣接して、固定接点10と同形状の固定接点20および可動接点対1と同形状の可動接点対21が設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に通信用および制御用の機器に使用される電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁継電器は、通信機器、自動車の電装部品や家庭電気製品などの分野で広く利用されており、一般的にその接触信頼性を確保するため、接点部分は後に述べるような金型で製造されたチップ状の接点が用いられている。
【0003】
従来の電磁継電器の構造は、特許文献1に示されており、その構造の一例を図4に示す。図4(a)は、電磁継電器全体の分解斜視図であり、図4(b)は、可動接点及び固定接点部分の拡大斜視図である。
【0004】
図4(a)において、電磁継電器は絶縁体基台14にコイル組立体18と接極子組立体17とを搭載し、その全体にカバー15を被せて構成されている。コイル組立体18は、コイル16を巻回したコ字形鉄心6と、このコ字形鉄心6の中央部に一方の磁極が接触するように配置された永久磁石9と、この永久磁石9およびコ字形鉄心6を一体的に固着するコイルスプール8とを備えている。また、接極子組立体17は、両端部がコ字形鉄心6の両端部に対向するように配置され、その中心部が永久磁石9の他方の磁極上に配置されて支点となり、両端部がコ字形鉄心6の両端部に接触・開離するシーソー動作を行うことを可能とした接極子4と、接極子4のシーソー運動を支持するヒンジばね2と、接極子4のシーソー動作に連動する可動接点ばね3とを備え、それらが絶縁固定体5で一体固定されている。可動接点ばね3は先端の手前で2つに分離されその先端には可動接点対1を備えている。
【0005】
絶縁体基台14は、上部が開口した箱型形状を有すると共に、開口部にコイル組立体18を配置し、且つその上に上述のように永久磁石9上が接極子4のシーソー動作の支点になるように接極子組立体17を配置したときに、可動接点ばね3の可動接点対1に対向する位置に円柱を縦に切断して得られる形状に類似した固定接点10を保持した固定接点端子11を植設し、さらにヒンジばね2の一端に接続される中立端子12及びコイル導出端子13を植設している。コイル組立体18及び接極子組立体17を絶縁体基台14上に設置し組立てた後、カバー15が絶縁体基台14上に被せられ、カバー15と絶縁体基台14の隙間が封止剤により封止・固着される。
【0006】
なお、この電磁継電器は、固定接点10a、10b、可動接点1a、1bからなる接点系統と固定接点10c、10d、可動接点1c、1dからなる接点系統の2系統の接点を備えている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−314882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この従来の電磁継電器では、図4(b)に示すような互いに対向する可動接点対1と固定接点10において、高容量の負荷を開閉する際に、可動接点対1と固定接点10の間にアーク放電を生ずる場合があり、このアーク放電による発熱のため接点が高温となってその熱のために可動接点対1と固定接点10の一部が溶融し、接点開閉不能となる障害が発生する場合がある。
【0009】
このようなアーク放電による接点の溶融を抑制するには、可動接点対1および固定接点10の体積を増加させ、接点の熱容量を増加させてアーク放電時の温度上昇を低減することが考えられる。しかし、このような接点のチップ形状を変更するためには新規の接点製造金型を準備する必要があり、コストアップとなる。
【0010】
そこで、本発明の課題は、高容量の負荷により発生するアーク放電による接点障害の抑制を低コストで実現可能な電磁継電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明による電磁継電器は、固定接点を有する固定接点端子が設けられた絶縁体基台とこの絶縁基台上に搭載されたコイルを有するコイル組立体と、該コイル組立体に搭載され前記コイルへの電流の通流制御によってシーソー動作することにより前記固定接点に対し接触・開離される1対の可動接点を有した可動接点ばねを含む接極子組立体とを備えた電磁継電器において、前記固定接点または前記可動接点対の少なくとも一方に隣接して前記固定接点と同形状の固定接点または前記可動接点対と同形状の可動接点対が設置されている。
【0012】
また、前記固定接点に隣接して前記固定接点と同形状の固定接点が1個または複数個設置されていてもよい。
【0013】
また、前記可動接点対に隣接して前記可動接点対と同形状の可動接点対が1個または複数個設置されていてもよい。
【0014】
また、前記固定接点および前記可動接点対のそれぞれに隣接して前記固定接点と同形状の固定接点および前記可動接点対と同形状の可動接点対がそれぞれ1個または複数個設置されていてもよい。
【0015】
また、前記コイル組立体はコイルを巻回したコ字形鉄心と該コ字形鉄心の中央部に一方の磁極が接触するように配置された永久磁石と前記永久磁石および前記コ字形鉄心を一体的に固着するコイルスプールとを備え、前記接極子組立体は、その中心部が前記永久磁石の他方の磁極上に配置されて支点となり両端部が前記コ字形鉄心の両端部に接触・開離するシーソー動作を行うことを可能とした接極子と、該接極子のシーソー動作を支持するヒンジばね部と、前記接極子のシーソー動作に連動する可動接点ばねとを備え、それらが絶縁固定体で一体固定されて形成され、前記絶縁体基台は上部が開口した箱型形状を有すると共に前記固定接点端子と前記ヒンジばね部の一端に接続される中立端子とを植設して構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、上記のように固定接点または可動接点対に隣接して固定接点と同形状の固定接点または可動接点対と同形状の可動接点対を設置することにより、従来接点の複数倍の接点体積を得ることが出来、接点の熱容量を増加させ、高容量負荷時のアーク放電による温度上昇を抑制し、接点開閉障害を回避できる。
【0017】
また、同一形状の接点を用いることにより、新規の接点製造金型が必要無く、低コストで高容量負荷時のアーク放電による接点障害の抑制を実現可能な電磁継電器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明による電磁継電器の第1の実施例を示す図であり、図1(a)は電磁継電器全体の分解斜視図であり、図1(b)は電磁継電器の可動接点及び固定接点部分の拡大斜視図である。
【0020】
図1(a)に示されるように、本実施例の電磁継電器は、固定接点10を有する固定接点端子11が設けられた絶縁体基台14と、この絶縁基台14上に搭載されたコイル16を有するコイル組立体18と、コイル組立体18に搭載されコイル16への電流の通流制御によってシーソー動作することにより固定接点10に対し接触・開離される可動接点対1を有した可動接点ばね3を含んでなる接極子組立体17とを備えた電磁継電器において、固定接点10および可動接点対1のそれぞれに隣接して固定接点10と同形状の固定接点20および可動接点対1と同形状の可動接点対21が、それぞれ設置されている。
【0021】
また、コイル組立体18は、コイル16を巻回したコ字形鉄心6とコ字形鉄心6の中央部に一方の磁極が接触するように配置された永久磁石9と永久磁石9およびコ字形鉄心6を一体的に固着するコイルスプール8とを備え、接極子組立体17はその中心部が永久磁石9の他方の磁極上に配置されて支点となり、両端部がコ字形鉄心6の両端部に接触・開離するシーソー動作を行うことを可能とした接極子4と、接極子4のシーソー動作を支持するヒンジばね2と、接極子4のシーソー動作に連動する可動接点ばね3とを備え、それらが絶縁固定体5で一体固定されて形成され、絶縁体基台14は上部が開口した箱型形状を有すると共に固定接点端子11とヒンジばね2の一端に接続される中立端子12及びコイル導出端子13を植設している。コイル組立体18及び接極子組立体17を絶縁体基台14上に設置し組立てた後、カバー15が絶縁体基台14上に被せられ、カバー15と絶縁体基台14の隙間が封止剤により封止・固着される。
【0022】
本実施例の電磁継電器の接極子4のシーソー動作の動作原理を図5を用いて説明する。図5は、コ字形鉄心6、コイル16、永久磁石9および接極子4の構成を模式的に示すものである。図5(a)の初期状態では、接極子4の中央部4aは、永久磁石9のN磁極上にシーソー動作の支点となるように配置されており、この接極子4の一端がコ字形鉄心6の一端に磁着されている。このとき永久磁石より出る磁束Φ1は、永久磁石9−接極子4−コ字形鉄心6の閉磁路を通っている。今、図5(b)のように、この磁束Φ1を打ち消す方向にコイル16を励磁したときに、接極子4の開放端側にも、コイル16からの磁束Φ0が流れ始めるため、接極子4はシーソー動作を開始する。このとき、接極子4の開放端側にはコイル16からの磁束Φ0と永久磁石9からの磁束Φ1'が同一方向に加算されるため、図5(c)のように開放していた端部は閉成され、一方向のシーソー動作が完了する。さらにコイル16に逆方向の電流を流すと図5(a)の初期状態に復帰する。
【0023】
従来の継電器の動作においては、図4(b)に示すように、互いに対向する可動接点対1と固定接点10において高容量の負荷を開閉した際、アーク放電が発生し、可動接点対1と固定接点10の温度が上昇する。この熱により可動接点対1と固定接点10とが溶着し、接点開閉不能となるなどの問題が起こる。
【0024】
しかし、本実施例では、図1(b)に示すように、従来と同形状の可動接点、及び固定接点を2列配置することで、接点体積を、可動側・固定側ともに二倍にすることができる。このため、接点の温度上昇が抑制され、接点の溶融を回避し、接点障害を抑制することができる。これにより、従来よりも高容量の負荷を開閉することができることになる。
【0025】
また、本発明の実施例の可動接点対1と固定接点10の個々の形状は、従来と同形状であるため、新規の接点製造金型を作製する必要がないのでコスト増加は少ない。なお、本実施例において付加した固定接点20、可動接点対21は、接点としの通電機能を持たせることもできるが、それは必須ではなく、本発明の目的に合った放熱機能のみを持たせるように配置することができる。
【実施例2】
【0026】
図2は、本発明による電磁継電器の第2の実施例を示す図であり、図2(a)は、本実施例の電磁継電器全体の分解斜視図であり、図2(b)は、電磁継電器の可動接点及び固定接点部分の拡大斜視図である。
【0027】
本実施例の電磁継電器の接点部分以外の構造は、図4に示した従来の電磁継電器と同じである。但し、本実施例においては、図2(b)に示すように、固定接点10は従来の構成と同様であるが、可動接点対1に隣接して可動接点対1と同形状の可動接点対21が設置されている。この場合も、可動接点の体積を従来の二倍にすることにより接点の温度上昇が抑制され、接点の溶融を回避することができる。なお、付加した可動接点対21は、通電には寄与せず、放熱機能のみを有するものである。
【実施例3】
【0028】
図3は、本発明による電磁継電器の第3の実施例を示す図であり、図3(a)は本実施例の電磁継電器全体の分解斜視図であり、図3(b)は電磁継電器の可動接点及び固定接点部分の拡大斜視図である
【0029】
本実施例の電磁継電器の接点部分以外の構造は、図4に示した従来の電磁継電器と同じである。但し、本実施例においては、図3(b)に示すように、可動接点対1は従来の構成と同様であるが、固定接点10に隣接して固定接点10と同形状の固定接点20が設置されている。この場合も、固定接点の体積を従来の二倍にすることにより接点の温度上昇が抑制され、接点の溶融を回避することができる。本実施例の固定接点20も放熱機能のみを有するものである。
【0030】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではないのはいうまでもなく、固定接点および可動接点対に隣接して設置される同形状の可動接点対及び固定接点の数は2つ以上であってもよい。また、その追加して設置される接点の設置位置もアーク放電による発熱が熱伝導される位置であればよく、従来の接点に接して配置してもよい。また、可動接点であれば可動接点ばね3を挟んでその上部に設置してもよい。また、コイル組立体、接極子組立体も上記実施例に限定されるものではなく、接極子のシーソー動作可能な電磁駆動の構造体であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による電磁継電器の第1の実施例を示す図、図1(a)は電磁継電器全体の分解斜視図、図1(b)は電磁継電器の可動接点及び固定接点部分の拡大斜視図。
【図2】本発明による電磁継電器の第2の実施例を示す図、図2(a)は電磁継電器全体の分解斜視図、図2(b)は電磁継電器の可動接点及び固定接点部分の拡大斜視図。
【図3】本発明による電磁継電器の第3の実施例を示す図、図3(a)は電磁継電器全体の分解斜視図、図3(b)は電磁継電器の可動接点及び固定接点部分の拡大斜視図。
【図4】従来の電磁継電器の構造の一例を示す図、図4(a)は電磁継電器全体の分解斜視図、図4(b)は可動接点及び固定接点部分の拡大斜視図。
【図5】本発明の電磁継電器の動作の説明図、コ字形鉄心、コイル、永久磁石および接極子の構成を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0032】
1,21 可動接点対
1a,1b,1c,1d 可動接点
2 ヒンジばね
3 可動接点ばね
4 接極子
4a 中央部
5 絶縁固定体
6 コ字形鉄心
7 コイル端子
8 コイルスプール
9 永久磁石
10,10a,10b,10c,10d,20 固定接点
11 固定接点端子
12 中立端子
13 コイル導出端子
14 絶縁体基台
15 カバー
16 コイル
17 接極子組立体
18 コイル組立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する固定接点端子が設けられた絶縁体基台とこの絶縁基台上に搭載されたコイルを有するコイル組立体と、該コイル組立体に搭載され前記コイルへの電流の通流制御によってシーソー動作することにより前記固定接点に対し接触・開離される1対の可動接点を有した可動接点ばねを含んでなる接極子組立体とを備えた電磁継電器において、前記固定接点または前記可動接点対の少なくとも一方に隣接して前記固定接点と同形状の固定接点または前記可動接点対と同形状の可動接点対が設置されていることを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記固定接点に隣接して前記固定接点と同形状の固定接点が1個または複数個設置されていることを特徴とする請求項1記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記可動接点対に隣接して前記可動接点対と同形状の可動接点対が1個または複数個設置されていることを特徴とする請求項1記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記固定接点および前記可動接点対のそれぞれに隣接して前記固定接点と同形状の固定接点および前記可動接点対と同形状の可動接点対がそれぞれ1個または複数個設置されていることを特徴とする請求項1記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記コイル組立体はコイルを巻回したコ字形鉄心と該コ字形鉄心の中央部に一方の磁極が接触するように配置された永久磁石と前記永久磁石および前記コ字形鉄心を一体的に固着するコイルスプールとを備え、前記接極子組立体は、その中心部が前記永久磁石の他方の磁極上に配置されて支点となり両端部が前記コ字形鉄心の両端部に接触・開離するシーソー動作を行うことを可能とした接極子と、該接極子のシーソー動作を支持するヒンジばね部と、前記接極子のシーソー動作に連動する可動接点ばねとを備え、それらが絶縁固定体で一体固定されて形成され、前記絶縁体基台は上部が開口した箱型形状を有すると共に前記固定接点端子と前記ヒンジばね部の一端に接続される中立端子とを植設して構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−41481(P2008−41481A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215603(P2006−215603)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)