説明

電磁継電器

【課題】 電磁継電器駆動時のコイルの消費電力を低減することにより、発熱を抑制することが可能な電磁継電器を提供すること。
【解決手段】 コイルの両端に接続された2つのコイル端子14a、14bを含みコモン端子13、メーク端子15、ブレーク端子16を有する外部接続端子群とカバー11がベース12に固定された電磁継電器において、外部接続端子群にはコイル端子14bとの間に抵抗19とコンデンサ20が並列接続されたコイル駆動端子17が含まれる。また、コイル駆動端子17の一部に設けられた素子設置部31と、コイル端子14aに接続されベース12に固定された接続用部材18とを有し、抵抗19およびコンデンサ20は素子設置部31およ接続用部材18上に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関し、特に車載用電装品として有効な、基板実装型の電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁継電器は、通信機器、自動車の電装部品や家庭電気製品などの分野で広く利用されている。その構成は、一般的に特許文献1などに示されるように、コイル、コア、ヨークで構成された電磁石とこの電磁石で吸引されるアマチュア、このアマチュアに復元力を作用させるヒンジばね、その先端部に連結された可動接点、可動接点に対向する位置に配置された固定接点、上記コイルや上記可動接点および固定接点にそれぞれ導通した外部接続端子群からなり、電磁石や固定接点、外部接続端子群はベースに固定され、このベースにカバーが封止剤で固定されている。
【0003】
図5は従来の電磁継電器の一例を示す外部接続端子側から見た外観斜視図であり、図5(a)は封止剤注入前、図5(b)は封止剤注入後を示す。図5において、外部接続端子群は、電磁石のコイルの両端に接続された2つのコイル端子14a、14bと、可動接点に接続されたコモン端子13、2つの固定接点にそれぞれ接続されたメーク端子15およびブレーク端子16を有する。
【0004】
図6は、従来の電磁継電器の駆動方法を示す回路構成図であり、従来の電磁継電器の駆動は、図6に示すような回路構成で行われる。即ち、直流電源1と電磁継電器32の間に接続されたスイッチ3の閉成に伴い、直流電源1から電磁継電器32のコイル2aに電圧が印加されることによりアマチュアが電磁石で吸引され、そこに取り付けられた可動接点が移動して固定接点に接触することにより電磁継電器32の接点部2bが閉成する。
【0005】
【特許文献1】特開2000−182500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、車載用にはノーマリーオフ型の電磁継電器が用いられる。この型の電磁継電器は、図6に示すようにコイル2aに電圧を印加していない状態では、コモン端子13とメーク端子15間に接続される負荷回路側が開成状態であり、負荷回路側を閉成状態にするためにはコイル2aに電圧を印加し通電状態とする。
【0007】
車載用負荷には、ランプやヒーター等の連続使用を前提とした負荷が存在する。従って、該負荷の制御に用いられる電磁継電器は、閉成となるコイル通電状態が継続する。このような連続駆動の条件下では、コイル2aで生ずるジュール熱により電磁継電器の温度が上昇する。車載用の電磁継電器は高温下で駆動される機会が多いため、電磁継電器本体の温度上昇に伴い、コイルの断線やショート等の問題を生ずる。また、電磁継電器などの部品は狭空間内に密集して実装されることから、周囲の他の部品や基板へ熱的な影響を及ぼし、場合によっては回路などの不具合が発生する原因となる。
【0008】
従って、本発明の課題は、電磁継電器駆動時のコイルの消費電力を低減することにより、発熱を抑制することが可能な電磁継電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の電磁継電器は、コイルの両端に接続された2つのコイル端子を含む外部接続端子群とカバーがベースに固定された電磁継電器において、前記外部接続端子群には前記2つのコイル端子の一方との間に抵抗とコンデンサが並列接続されたコイル駆動端子が含まれることを特徴とする。
【0010】
また、前記コイル駆動端子の一部に設けられた素子設置部と、前記コイル端子の一方に接続され前記ベースに固定された接続用部材とを有し、前記抵抗および前記コンデンサは前記素子設置部および前記接続用部材上に配置されていてもよい。
【0011】
また、前記コイル駆動端子と前記接続用部材とが連結部により一体に形成され、該一体形成されたコイル駆動端子と接続用部材を前記ベースに設置した後、前記連結部が切断されて形成されてもよい。
【0012】
電磁継電器は、オフの状態では、内部の可動鉄片からなるアマチュアが開成状態にある。電磁継電器の駆動時には、この開成状態にあるアマチュアをコイルで発生する磁気力で吸引し、磁気回路を閉成する必要がある。従って、電磁継電器の駆動時には、比較的大きなエネルギーを要する。それに対し、一旦、磁気回路が閉成した後には、初期駆動時に比べ少ないエネルギーで、その状態を維持することが可能である。
【0013】
従来の駆動方法では、図6に示すように、コイルへの給電電圧は初期駆動時と状態維持時において同一である。しかし、上述のように、一旦、磁気回路が閉成した後の状態維持における給電電圧は初期駆動時の給電電圧より低く設定することが可能である。コイルでの発熱量は、コイルへの給電電圧の2乗に比例することから、状態維持時における給電電圧を抑えることで、コイルの発熱を大きく低減させることが可能である。本発明においては、抵抗とコンデンサの並列回路を介してコイル駆動することによりこれを実現するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の電磁継電器は、電磁継電器のコイル端子の一方との間に抵抗とコンデンサが並列接続されたコイル駆動端子を有することにより、初期駆動時にはコイルに所定の給電電圧を行い、状態維持においてはコイルの発熱低減のため給電電圧を抑えることができ、電磁継電器駆動時のコイルの消費電力を低減することにより、発熱を抑制することが可能な電磁継電器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態である電磁継電器の外部接続端子側から見た外観の分解斜視図である。図2は、その電磁継電器の組立状態を示す図であり、図1と同様な外部接続端子側から見た外観斜視図であり、図2(a)は封止剤注入前、図2(b)は封止剤注入後を示す。図3は、本実施の形態に用いるコイル駆動端子および接続用部材と抵抗、コンデンサの接合を示す図であり、図3(a)は上方から見た斜視図、図3(b)は側面から見た斜視図である。
【0017】
本実施の形態の電磁継電器2は、図1に示すように、コイルの両端に接続された2つのコイル端子14a、14bを含みコモン端子13、メーク端子15、ブレーク端子16を有する外部接続端子群とカバー11がベース12に固定された電磁継電器において、外部接続端子群にはコイル端子14bとの間に抵抗19とコンデンサ20が並列接続されたコイル駆動端子17が含まれる。
【0018】
また、コイル駆動端子17の一部に設けられた素子設置部31と、コイル端子14bに接続されベース12に固定された接続用部材18とを有し、抵抗19およびコンデンサ20は素子設置部31および接続用部材18上に配置されている。ベース12にはコイル駆動端子17および接続用部材18を固定するために、それらの嵌合用穴部21a、21b、21c、22a、22bが設けられている。
【0019】
また、本実施の形態の電磁継電器の組み立てにおいては、図3(a)に示すように、初期段階においてはコイル駆動端子17と接続用部材18は連結部24により同一部材により一体に形成され、ターミナル部材25として扱われる。このターミナル部材25上に、図3(a)に示すように抵抗19およびコンデンサ20が配置され、それらの両端の電極がコイル駆動端子17と接続用部材18に接続される。図3(b)に示すようにターミナル部材25は嵌合用突出部26a、26b、26c、27a、27bを有し、これらの各嵌合用突出部の側面には係止爪28が設けられており、この係止爪28がベース12の嵌合用穴部21a、21b、21c、22a、22bの内面に食い込むことにより、ターミナル部材25とベース12の係止が行われる。ターミナル部材25の設置固定後、接続用部材18とコイル端子14bを溶接、半田などにより電気的に接続する。その後、ターミナル部材25の連結部24を切断し、コイル駆動端子17と接続用部材18に分離する。この後、図2(b)に示すようにベース12の外部接続端子群が突出する裏面に封止剤29が注入され硬化される。
【0020】
次に、本実施の形態の電磁継電器の作用を説明する。
【0021】
図4は、本実施の形態の電磁継電器の駆動回路構成を示す。本実施の形態の電磁継電器2に内包される抵抗4は、駆動状態維持時におけるコイル2aへの印加電圧を低減する作用を持つ。即ち、直流電源1の電圧をV、コイル2aの内部抵抗をr、抵抗4の抵抗値をRとするならば、定常状態でのコイル2aへの印加電圧はV・r/(r+R)となる。従って、抵抗4は目標とするコイル駆動維持のために必要とされるコイル印加電圧が得られるように設定される。
【0022】
また、抵抗4に並列接続されたコンデンサ5は、その初期駆動時には直流電源1の電圧をそのままコイル2aに印加し、その後、充電過程において、コイル2aへの印加電圧を除減する作用を持つ。スイッチ3の閉成に伴いコンデンサ5が充電を開始した際、コイル2aへの印加電圧は直流電源1の入力電圧とコンデンサ5の充電電圧の差分となる。従って、コンデンサ5の充電に伴い、コイル2aへの印加電圧が減少し上述の定常状態の電圧に収斂する。前述のように、電磁継電器2の初期駆動時に、所定の時間、所定の電圧を印加することが必要であることから、コンデンサ5の容量は初期駆動に要する時間から適切な値に設定される。コンデンサ5に充電された電荷は、スイッチ3開成後には、並列接続された抵抗4により放電され、次回駆動時までに放電が完了する。
【0023】
例えば、定格電圧12V、コイル抵抗160Ωの電磁継電器において、初期駆動時間を3ms、定常時の印加電圧を7〜9Vとするならば、コンデンサの容量としては 100μF〜200μF程度、抵抗としては 50〜110Ω程度の抵抗値を選択することができる。
【0024】
以上に説明したように、本発明の電磁継電器は、電磁継電器に抵抗およびコンデンサを内包することにより、コイル通電駆動時の電磁継電器の温度上昇を低減し、電磁継電器の温度上昇に伴う不安定性の除去、周囲へ与える熱的な影響の低減などの効果を得ることができる。また、コンデンサと抵抗が組み込まれたコイル駆動端子を有することから、電磁継電器を使用する顧客において、同様な消費電力低減による発熱の抑制機能を実現するために特別な駆動回路を必要としないという利点がある。
【0025】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではないことは言うまでもなく、コイル駆動の電磁石を使用したあらゆる種類の電磁継電器に本発明を適用することができる。また、コイル駆動端子、素子設置部、接続用部材などの形状、ベースへの固定方法、固定位置、配置などは目的に応じて変更可能である。コンデンサおよび抵抗の形態、設置方法、コンデンサの容量、抵抗の抵抗値なども目的に応じた設計が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態である電磁継電器の外部接続端子側から見た外観の分解斜視図。
【図2】本実施の形態の電磁継電器の組立状態を示す外部接続端子側から見た外観斜視図、図2(a)は封止剤注入前、図2(b)は封止剤注入後を示す図。
【図3】本実施の形態に用いるコイル駆動端子および接続用部材と抵抗、コンデンサの接合を示す図であり、図3(a)は上方から見た斜視図、図3(b)は側面から見た斜視図。
【図4】本実施の形態の電磁継電器の駆動回路構成を示す図。
【図5】従来の電磁継電器の一例を示す外部接続端子側から見た外観斜視図、図5(a)は封止剤注入前、図5(b)は封止剤注入後を示す図。
【図6】従来の電磁継電器の駆動方法を示す回路構成図。
【符号の説明】
【0027】
1 直流電源
2、32 電磁継電器
2a コイル
2b 接点部
3 スイッチ
4、19 抵抗
5、20 コンデンサ
11 カバー
12 ベース
13 コモン端子
14a、14b コイル端子
15 メーク端子
16 ブレーク端子
17 コイル駆動端子
18 接続用部材
21a、21b、21c、22a、22b 嵌合用穴部
24 連結部
25 ターミナル部材
26a、26b、26c、27a、27b 嵌合用突出部
28 係止爪
29 封止剤
31 素子設置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの両端に接続された2つのコイル端子を含む外部接続端子群とカバーがベースに固定された電磁継電器において、前記外部接続端子群には前記2つのコイル端子の一方との間に抵抗とコンデンサが並列接続されたコイル駆動端子が含まれることを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記コイル駆動端子の一部に設けられた素子設置部と、前記コイル端子の一方に接続され前記ベースに固定された接続用部材とを有し、前記抵抗および前記コンデンサはいずれも前記素子設置部および前記接続用部材上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記コイル駆動端子と前記接続用部材とが連結部により一体に形成され、該一体形成されたコイル駆動端子と接続用部材を前記ベースに設置した後、前記連結部が切断されてなることを特徴とする請求項2記載の電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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