説明

電磁継電器

【課題】ソケットに端子を挿入した状態での設置状態を考慮して、接点部に結露及び氷結が発生することを抑制し、接点部の導通不具合を防止できる電磁継電器を提供する。
【解決手段】コイル21が巻回される鉄心23及び鉄心23と共に磁気回路を形成する継鉄24を備えた電磁石ブロック2と、固定接点41、46及びコイル21への通電の入り切りに応じて固定接点41、46に接離自在に構成される可動接点43を備えた接点ブロック4と、内部に電磁石ブロック2及び接点ブロック4を収納するケース1とを備え、前記ケース1の一面より、電磁石ブロック2のコイル21に接続されるコイル端子25と、接点ブロック4の固定接点41、可動接点43に各々接続される固定接点端子42、可動接点端子45とが突出し、当該一面に対向する他面には、ケース1外の空間及びケース1内の空間に露出する金属板5が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の電磁継電器として、コイルが巻回される鉄心及び鉄心と共に磁気回路を形成する継鉄を備えた電磁石ブロックと、固定接点及びコイルへの通電の入・切に応じて固定接点に接離自在に構成される可動接点を備えた接点ブロックと、電磁石ブロック及び接点ブロックを内部に収納する略矩形箱型のケースとを備え、前記ケースの底面より、電磁石ブロックのコイルに接続されるコイル端子と、接点ブロックの固定接点、可動接点に各々接続される固定接点端子、可動接点端子とが突出したものが提供されている。そして、上記電磁継電器では、コイルの発熱によって温められたコイル周辺の空気が、ケース内において他の部分よりも温度の低い可動接点と固定接点とからなる接点部に到達することで、接点部に結露が発生し、接点部の温度が更に下がった場合に結露が氷結して導通不具合が発生する虞があった。
【0003】
そこで、ケースの底面または側面に熱伝導率の高い金属板を貫接し、当該金属板のケース内面側に結露を発生させることで、ケース内の空気に含まれる水分量を減少させ、接点部の結露及び氷結を防止しようとしているものがある(例えば特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2003−031095号公報
【特許文献2】特開昭64−19904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的に電磁継電器は、制御盤等の盤内に配置されたソケットに各端子が挿入されるものであるため、ケースの底面は、ソケットと当接すると共に盤の内面に近接するので、ケースの底面付近の空気はこもり易い。そのため、ケースの底面に設けられた金属板の放熱性能は低下して金属板の温度が下がり難くなる。従って、金属板に結露が発生せず、ケース内で温度の低い接点部に結露が発生する虞がある。
【0005】
また、一般に盤内においてソケットは並設されており、当該ソケットに各端子を挿し込むことで電磁継電器は盤内に並設される。これにより、ケースの側面同士や、電磁継電器以外の盤内に配置されている他の機器とケースの側面とは近接するため、ケースの側面付近の空気はこもり易い。そのため、金属板の放熱性能は低下して金属板の温度が下がり難くなる。従って、金属板に結露が発生せず、ケース内で温度の低い接点部に結露が発生する虞がある。
【0006】
このように、ケースの底面または側面に熱伝導率の高い金属板を設けた従来の電磁継電器では、ソケットに端子を挿入した状態での設置状態が考慮されていないので、金属板の放熱性能が低下して金属板の温度が接点部の温度よりも下がらず、接点部に結露が発生し、接点部の温度が更に低下した場合には、結露が氷結することで導通不具合が発生する虞がある。
【0007】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、ソケットに端子を挿入した状態での設置状態を考慮して、接点部に結露及び氷結が発生することを抑制し、接点部の導通不具合を防止できる電磁継電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、コイルが巻回される鉄心と、鉄心と共に磁気回路を形成する継鉄とを備えた電磁石ブロックと、固定接点と、コイルへの通電の入り切りに応じて固定接点に接離自在に構成される可動接点とを備えた接点ブロックと、内部に電磁石ブロック及び接点ブロックを収納するケースとを備え、前記ケースの一面より、電磁石ブロックのコイルに接続されるコイル端子と、接点ブロックの固定接点、可動接点に各々接続される固定接点端子、可動接点端子とが突出し、当該一面に対向する他面には、ケース外の空間及びケース内の空間に露出する金属板が設けられることを特徴とする
この発明によれば、ソケットに端子を挿入した状態での設置状態が考慮され、複数並設された場合であっても金属板を設けたケースの他面(天面)の周囲には空気の流れを妨げる遮蔽物がないので金属板の放熱性能を維持することができ、金属板の温度が接点部の温度よりも低くなりコイルによって温められたケース内の空気に含まれる水分が金属板のケース内面側に結露することで、ケース内の空気に含まれる水分量が減少し接点部に結露及び氷結が発生することが抑制され、接点部の導通不具合を防止することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記金属板は、ケースの他面において、可動接点と固定接点とからなる接点部に対向する位置に設けられることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ケースの天面において、接点部から最短距離となる位置に金属板が設けられることで、接点部周辺の空気に含まれる水分がより多く金属板に結露し、接点部に結露及び氷結が発生することが更に抑制され、接点部の導通不具合の防止効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明では、ソケットに端子を挿入した状態での設置状態を考慮して、接点部に結露及び氷結が発生することを抑制し、接点部の導通不具合を防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(実施形態)
本実施形態における電磁継電器は、図1〜3に示すように、樹脂等の絶縁性材料から箱型に形成されたケース1内部に電磁石ブロック2と、接極子3と、接点ブロック4とを収納している。以下、図1における上下左右を基準とし、上下左右方向と直交する方向を前後方向とする。
【0014】
電磁石ブロック2は、コイル21が巻回される中空円筒状のコイルボビン22と、コイルボビン22の内径部22aを挿通する鉄心23と、鉄心23と共に磁気回路を形成する継鉄24とを備える。
【0015】
コイルボビン22は、樹脂等の絶縁材料から形成され、軸方向の上下両端に鍔部22b、22cが形成され、鍔部22bと鍔部22cとの間にコイル21が巻回される。
【0016】
鉄心23は、長尺円柱状に形成されて下端に鍔部23aが形成され、コイルボビン22の鍔部22cの略中央に形成される円形の凹部22dに、鍔部23aが嵌め込まれる。
【0017】
継鉄24は、磁性材料により、一方片24aと、一方片24aの右端より下方へ延設された他方片24bとから略L字状に形成されている。そして、一方片24aは、コイルボビン22の鍔部22bに形成される凹部22eに嵌合されると共に挿通孔24cが形成され、当該挿通孔24cに鉄心23の上端部が挿通する。また、他方片24bは、コイルボビン22の右端に沿って形成されている。
【0018】
接極子3は、磁性材料から長尺平板状に形成され、鉄心23の鍔部23aに対向して配設される。
【0019】
接点ブロック4は、固定接点41、46と、コイル21への通電の入り切りに応じて固定接点41、46に接離自在に構成される可動接点43と、当該可動接点43が設けられる可動接点板44とを備え、固定接点41、46は固定接点端子42、47に各々接続され、可動接点43は可動接点板44を介して可動接点端子45に接続される。
【0020】
固定接点端子42は、上下方向に長い長尺平板状の端子部42aと、端子部42aの上端から左方向へ延設された延設部42bとで、銅等の導電性材料により略L字状に形成されており、延設部42bの先端近傍には固定接点41が設けられている。
【0021】
固定接点端子47は、左右方向に長い長尺平板状の端子部で、銅等の導電性材料により形成されており、前記固定接点41と上下方向に対向する位置に固定接点46が設けられている。
【0022】
可動接点板44は、左右方向に長い板ばね状の作動片44aと、作動片44aの右端から上方へ延設された固定片44bとで、銅等の導電性材料により略L字状に形成されている。そして、作動片44aの右側上面に前記接極子3が固定され、先端近傍には前記固定接点41、46と対向する位置に可動接点43が設けられる。なお、本実施形態の電磁継電器では、コイル21に電流が流れていない場合には可動接点43は固定接点46と当接し、コイル21に電流が流れている場合には可動接点43は固定接点41と当接する、所謂c接点の接点構造を有している。また、固定片44bは、継鉄24の他方片24bと可動接点端子45との間に設けられ、可動接点端子45の上端側に、かしめ等によって固定される。
【0023】
可動接点端子45は、銅等の導電性材料により上下方向に長い長尺板状に形成される。
【0024】
ケース1は、略矩形平板状のベース11と、下面が開口してベース11に覆設する略矩形箱型のカバー12とから構成され、ベース11には、固定接点端子42の端子部42aと、可動接点端子45と、コイル21の先端がそれぞれ接続される一対のコイル端子25とがそれぞれ挿通する図示しない挿通孔が穿設されている。コイル端子25は、銅等の導電性材料により上下方向に長い長尺板状に形成され、その上端にコイル21の先端が巻回されて半田等によって接続されている。
【0025】
そして、ベース11と対向する、カバー12の天面12aには、固定接点41及び可動接点43からなる接点部40と上下方向に対向する位置に、金属板5が同時成型によって設けられている。金属板5は、熱伝導率の高いアルミや銅等によって形成され、上面がケース1の外側の空間に露出し、下面がケース1の内側の空間に露出した状態で設けられる。そのため、金属板5は、上面が外気によって冷却されることで低温となり、下面がケース1内において低温部となる。また、図2に示すように、金属板5の前後方向両端付近には、樹脂材料からなるカバー12と同時成型する際に、位置決め固定のために用いられる挿通孔5aがそれぞれ穿設されている。
【0026】
また、一般に電磁継電器は、図示しない制御盤等の盤内に設けられたソケットに各端子(一対のコイル端子25及び固定接点端子42及び可動接点端子45)が挿入されるため、ケース1の底面はソケットと当接すると共に盤の内面と近接し、ケース1の底面付近の空気はこもり易い。更に、一般に盤内においてソケットは並設されているため、ソケットに端子部が挿し込まれた電磁継電器は並設され、ケース1の側面同士や、電磁継電器以外の盤内に配置されている機器とケース1の側面とは近接し、ケース1の側面付近の空気も、こもり易くなっている。
【0027】
上記構成から成る本実施形態の電磁継電器において、コイル21への通電時には、鉄心23が磁化されることによって鉄心23の鍔部23aに接極子3が吸引されて当設し、それに伴って接極子3と接続された可動接点板44の作動片44aの先端が上方へ変位し、先端に設けられた可動接点43が固定接点41に当接し、固定接点端子42と可動接点端子45との間が導通する。
【0028】
そして、コイル21の通電時には、コイル21の発熱によってコイル21近傍の空気が高温となり、当該高温となった空気が、外気に触れることでケース1内の接点部40よりも低温部となっている前記金属板5に到達することで、金属板5に結露が発生する。これにより、ケース1内の空気に含まれる水分量を減少させ、接点部40に結露が発生することを防止することができる。また、電磁継電器が、盤内のソケットに各端子が挿入されて並設された場合に、金属板5が設けられている天面12aは上方に露出し、その周囲には空気の流れを妨げる遮蔽物がないので放熱性能を維持することができ、金属板5は低温に保たれる。更に、金属板5は、カバー12の天面12aにおいて、接点部40から最短距離となる位置に設けられているため、接点部40周辺の空気に含まれる水分がより多く金属板5に結露することで、接点部40付近の空気に含まれる水分量が減少し、接点部40に結露が発生することをより抑えることができる。
【0029】
このように、本実施形態における電磁継電器では、ソケットに端子を挿入した状態での設置状態を考慮して金属板5の配設箇所を決めているので、接点部40に発生する結露及び氷結が効果的に抑制され、接点部の導通不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態における電磁継電器のA−A断面の概略図を示す。
【図2】同上における電磁継電器の上面図を示す。
【図3】(a)、(b)は、同上における電磁継電器の断面概略図を示し、(a)は、B−B断面、(b)は、C−C断面を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 ケース
2 電磁石ブロック
3 接極子
4 接点ブロック
5 金属板
21 コイル
23 鉄心
24 継鉄
25 コイル端子
41 固定接点
42 固定接点端子
43 可動接点
45 可動接点端子
46 固定接点
47 固定接点端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻回される鉄心と、鉄心と共に磁気回路を形成する継鉄とを備えた電磁石ブロックと、
固定接点と、コイルへの通電の入り切りに応じて固定接点に接離自在に構成される可動接点とを備えた接点ブロックと、
内部に電磁石ブロック及び接点ブロックを収納するケースとを備え、
前記ケースの一面より、電磁石ブロックのコイルに接続されるコイル端子と、接点ブロックの固定接点、可動接点に各々接続される固定接点端子、可動接点端子とが突出し、当該一面に対向する他面には、ケース外の空間及びケース内の空間に露出する金属板が設けられることを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記金属板は、ケースの他面において、可動接点と固定接点とからなる接点部に対向する位置に設けられることを特徴とする請求項1記載の電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−108661(P2010−108661A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277434(P2008−277434)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)