説明

電磁誘導部品および電源装置

【課題】寄生容量が少なくしかも小型かつ薄型に形成することができる電磁誘導部品を提供する。
【解決手段】半導体基板からなるコイル基板10の厚み方向の各一面に導電層の電路パターン12a,12bがそれぞれ形成される。各電路パターン12a,12bは、1ターンコイルの半円弧を1個の基本パターンとして複数個の基本パターンが連続する蛇行状に形成される。平面視では複数個の1ターンコイルが並んだ形になる。2層の電路パターン12a,12bはコイル基板10内を通る接続導体13により一端同士が電気的に接続され、複数個の1ターンコイルを直列接続したコイルパターン11を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型の電磁誘導部品およびその電磁誘導部品を用いた電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、平面型インダクタあるいは平面型トランスと称する薄型の電磁誘導部品が種々提案されている。また、コイル基板として半導体基板を用いることにより半導体製造プロセスを利用して小型化することも考えられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、電源の小型軽量化のために半導体基板を用いる電磁誘導部品において、磁気誘導型銅損を減少させるためにコイル導体の厚みを大きくすることが考えられており、コイル基板上にコイル導体を形成した2個の平面コイルをコイル面同士が電気的に接続されるように重ね合わせた構造を有している。また、コイル基板とコイル導体との間に磁性薄膜を配置した構成が記載されている。
【特許文献1】特開平11−176639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の電磁誘導部品をスイッチング電源に用いる場合に、電磁誘導部品が小型であるからスイッチング周波数を高周波化する必要がある。したがって、寄生容量を低減して損失を少なくすることが必要になる。一方、特許文献1に記載された電磁誘導部品では、コイル導体が一平面内でスパイラル状に形成され、またコイル導体を形成している平面に平行な磁性薄膜を有しているから、磁性薄膜とコイル導体との間に比較的大きい寄生容量が発生するという問題を有している。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、寄生容量が少なくしかも小型かつ薄型に形成することができる電磁誘導部品およびその電磁誘導部品を用いた電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、コイル基板の厚み方向に離間した複数層の導電層がコイル基板に形成され、各導電層により形成される電路パターンはコイル基板の厚み方向に離間する2層の一端同士がコイル基板内を通る接続導体により電気的に接続され、かつコイル基板の厚み方向に離間する2層の電路パターンの各一方は1ターンコイルの半周形状を1個の基本パターンとして複数個の基本パターンが連続する形状であり、両層の電路パターンにより複数個の1ターンコイルを直列接続したコイルパターンが形成されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、2層の導電層を用いて複数個の1ターンコイルを直列接続したコイルパターンを形成するので、一平面内での巻き数が多く面積当たりの導電層の密度が高い電磁誘導部品に比較すると、面積当たりの寄生容量ないし浮遊容量が小さくなり、容量成分により生じる損失の低減に寄与する。また、最小構成では2層の導電層を設ければよく、しかも導電層は薄膜で形成すれば薄型かつ微細加工による小型化が可能である。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記基本パターンは円環の半周分の形状であり、一つの導電層において隣接する2個の基本パターンは弦に対して弧が互いに逆向きに配置されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、一つの導電層における電路パターンは、一平面内で半円を交互に反転させて結合した形の波形に形成され、隣り合う各一対の1ターンコイルの間で互いに他方の1ターンコイルの磁束を利用することができるから、磁気効率が高くなる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記コイル基板が半導体基板であることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、半導体基板を用いているから他の回路部品とともに1チップに集積回路化することが可能になる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記コイル基板に3層以上の電路パターンが形成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成では、3層の電路パターンの接続の仕方によって、インダクタンスの大きいインダクタを形成したり、トランスを形成したりすることができる。電路パターンを4層以上の偶数層設ければ、絶縁型のトランスを構成することができる。
【0014】
請求項5の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記コイル基板において前記1ターンコイルの内側に対応する部位に穴部が形成され、当該穴部内に磁性体材料からなるコアが配置されることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、各1ターンコイルの内側にコアが配置されることにより、コアを設けない場合よりもインダクタンスを高めることができる。また、トランスを構成する場合には1次側と2次側との結合度が高くなる。
【0016】
請求項6の発明は、電源装置であって、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電磁誘導部品とスイッチング素子とスイッチング素子のオンオフを制御する制御回路とを備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、小型かつ薄型に形成された電磁誘導部品を用いるから電源装置の小型化かつ薄型化が可能になる。
【0018】
請求項7の発明では、請求項5の発明において、前記電磁誘導部品を除く回路部品を実装する実装基板に前記コイル基板が積層され、前記コイル基板の表裏に貫通する貫通導体からなる接続部により前記コイル基板と実装基板とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、電源装置を構成する際に電磁誘導部品を除く回路部品を実装する実装基板を電磁誘導部品を形成するコイル基板とは別に設けているから、電磁誘導部品と他の回路部品とを異なる工程で製造することができ、電磁誘導部品の検査を別途に行うことができる。また、電磁誘導部品と他の回路部品とが熱的に分離され熱設計が容易になる。しかも、他の回路部品を実装した実装基板に電磁誘導部品を形成するコイル基板を積層するから、電磁誘導部品を他の回路部品とともに実装基板に実装することが可能になる。さらに、コイル基板と実装基板とを貫通導体からなる接続部により接続しているから、コイル基板と実装基板とを一方の投影面内に配置したことになり、電源装置の占有面積を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構成によれば、2層の導電層を用いて複数個の1ターンコイルを直列接続したコイルパターンを形成するので、一平面内での巻き数が多く面積当たりの導電層の密度が高い電磁誘導部品に比較すると、面積当たりの寄生容量ないし浮遊容量が小さくなって、容量成分により生じる損失の低減に寄与するという利点がある。また、最小構成では2層の導電層を設ければよく、また導電層を薄膜で形成すれば薄型かつ微細加工による小型化が可能であるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本実施形態では、電磁誘導部品として、図1、図2に示すように、コイル基板10の厚み方向の各一面に薄膜の導電層からなる電路パターン12a,12bを形成したインダクタを例示する。導電層の材料としては電気伝導度の良好な銅が望ましいがアルミニウムを用いてもよい。
【0022】
コイル基板10にはガラス基板やフェライトのような磁性体基板を用いることが可能であるが、本実施形態では半導体基板であるシリコン基板を用いている。シリコン基板を用いる場合には、電路パターン12a,12bとコイル基板10との間を酸化膜または窒化膜により絶縁する。コイル基板10の厚み方向の一面に形成される電路パターン12aは、円環の半周分の形状(つまり、半円周)を基本パターンとし、複数個の基本パターンの弦を一直線上に配列するとともに、隣接する2個の基本パターンについては弦に対して弧が互いに逆向きになるように配列し、かつ隣接する基本パターン同士を連続させて1本の電路になるように形成してある。言い換えると、電路パターン12aは半円弧をつなぎ合わせた蛇行状になる。
【0023】
コイル基板10の厚み方向の他面に形成される電路パターン12bも同様の形状であるが、電路パターン12aを形成する基本パターンと組み合わせることによって1個の円環を形成するように配置される。つまり、図3に示すように、平面視において、電路パターン12aにおける基本パターンの弦を配列した直線上に電路パターン12bにおける基本パターンの弦を配列し、かつ電路パターン12aにおける基本パターンの弧と電路パターン12bにおける基本パターンの弧とが互いに逆向きになるように配置している。
【0024】
コイル基板10の厚み方向の各一面において電路パターン12a,12bを上述のように配置することによって、平面視では両電路パターン12a,12bにより1ターンコイルを直列接続した形のコイルパターン11が形成されることになる。両電路パターン12a,12bは1つの電路を形成するように、一端部においてコイル基板10内を通る接続導体13により電気的に接続される。また、図1に示す例では2層の電路パターン12a,12bによりコイルパターン11を形成しているから、各電路パターン12a,12bの他端部には他部品と接続するための引出パターン11aが形成される。
【0025】
ところで、上述の構成では複数個の空芯の1ターンコイルを直列に接続した構成であるから、インダクタンスは比較的小さい。そこで、図4に示すように、コイル基板10において各1ターンコイルの内側に対応する部位に穴部10aを形成し、この穴部10aにフェライトなどの磁性体材料からなるコア14を充填してある。コア14を形成する磁性体材料は穴部10aに充填する際には流動性を有し、その後に硬化するものを用いる。この種の磁性体材料としては合成樹脂材料にフェライトの粉体を分散させたコンパウンド状の材料がある(いわゆる流動性フェライト粉)。
【0026】
また、図5に示すように、コイル基板10に積層される背板部14aの一面に複数本の脚部14bが突設された形状のコア14を2枚設け、一方のコア14を背板部14aがコイル基板10の一面に重なるようにして脚部14bを穴部10aに挿入し、他方のコア14を背板部14aがコイル基板10の他面に重なるようにして脚部14bを穴部10aに挿入してもよい。1個のコア14における隣接する脚部14bのピッチを、穴部10aのピッチの2倍に設定しておき、2枚のコア14をコイル基板10に装着した状態で一方のコア14の脚部14bの先端が他方のコア14の背板部14aに当接するようにしておけば、両コア14を磁気結合させることができ、磁束漏れを少なくすることで磁気効率が高くなる。また、脚部14bのピッチを穴部10aのピッチに一致させ、脚部14bの先端面同士が穴部10aの内部において対向するようにしてもよい。なお、両コア14の間にギャップを形成するように脚部14bの寸法を設定すれば、リーケージギャップとして機能させることも可能である。
【0027】
上述した例では、2層の電路パターン12a,12bを用いることにより1回路のコイルパターン11を形成しているが、3層以上の電路パターン12a,12bを形成すれば、ターン数が増加するからインダクタンスを増加させることができる。3層以上の電路パターン12a,12bを形成する場合には、コイル基板10を貫通しない接続導体13を用いて電路パターン12a,12bの間を電気的に接続する。たとえば、コイル基板10を半導体基板ではなく多層配線板で形成する場合には、ビアホールメッキを接続導体13に用いることができる。
【0028】
また、図6に示すように、1枚のコイル基板10に2回路以上のコイルパターン11を形成し、各回路のコイルパターン11を電磁結合する程度に近接させて配置すれば、トランスとして用いることができる。トランスとして用いる場合にはコア14によってコイルパターン11の間の結合度を高めれば磁気効率が高くなる。なお、上述した各例では電路パターン12a,12bをコイル基板10の表面に形成した例を示したが、図6のように電路パターン12a,12bをコイル基板10に埋め込む形で形成してもよい。
【0029】
トランスとして機能させる場合には、図7に示すように、1次巻線となる電路パターン12aと2次巻線となる電路パターン12bとをコイル基板10の厚み方向において交互に配列すれば、1次巻線と2次巻線との結合度を高めることができる。
【0030】
なお、上述した構成例では基本パターンを半円弧としているが、多角形(四角形、六角形、八角形など)を半分にした形状を基本パターンとして採用することも可能である。また、コア14の断面形状も上述の例では円形を想定しているが、多角形(四角形、六角形、八角形など)としてもよい。
【0031】
ところで、上述した実施形態ではコイル基板10が半導体基板であるから、コイル基板10に他の素子を形成することが可能であり、電磁誘導部品を備える回路を集積回路化することが可能である。もっとも、電磁誘導部品をスイッチング電源のような電源装置の部品として用いる場合には、巻線に大きな電流が流れるから、電磁誘導部品が発熱部品になり、またスイッチング素子も発熱部品になる。放熱効率を高めるには、電磁誘導部品と他の発熱部品とは分離することが望ましい。
【0032】
そこで、電源装置のような何らかの回路を構成する部品のうち、図8に示すように、電磁誘導部品を除く部品を実装する実装基板15を設け、実装基板15とコイル基板10とを積層してもよい。実装基板15として半導体基板を用いる場合には、スイッチング素子のような部品を実装基板15に形成すればよく、この場合にはコイル基板10と実装基板15とを陽極接合などの技術を用いて接合することが可能である。また、実装基板15としてプリント基板を用いることもできる。プリント基板を用いる場合は面実装部品を用いるのが望ましい。
【0033】
この場合、実装基板15において部品が実装ないし形成されていない面にコイル基板10を貼り合わせる。コイル基板10と実装基板15との間の電気的接続には、コイル基板10と実装基板15とを貫通する貫通導体である接続部16a,16bを用いる。ここに、コイル基板10と実装基板15とにそれぞれ接続部16a,16bを形成しておき、接続部16a,16b同士を接合することによって、コイル基板10と実装基板15との電気的接続と同時に機械的結合を行うようにしてもよい。また、図示例ではコイル基板10において実装基板15との対向面に設けた電路パターン12bをコイル基板10に埋め込んであり、コイル基板10において実装基板15とは反対側の面に設けた電路パターン12aはコイル基板10の表面に形成してある。
【0034】
ところで、上述した電磁誘導部品を用いて構成される電源装置としては、降圧型、昇圧型、極性反転型などのチョッパ回路と、フライバック型、フォワード型などのDC−DCコンバータとが広く知られている。チョッパ回路ではインダクタに蓄積した電磁エネルギを利用するからインダクタを用い、DC−DCコンバータではトランスを用いる。
【0035】
図9に一例として降圧型のチョッパ回路の基本的な構成を示す。この構成では、商用電源をダイオードブリッジで整流することなどにより得られる直流電源(図示せず)の両端間にスイッチング素子(MOSFETなど)Q1とインダクタLと平滑コンデンサC1との直列回路が接続され、インダクタLと平滑コンデンサC1との直列回路に環流用のダイオードD1が並列接続された構成を有している。また、スイッチング素子Q1のオンオフは制御回路CN1により制御される。
【0036】
この種のチョッパ回路は周知のものであるが、簡単に動作を説明すると、スイッチング素子Q1のオン期間において直流電源からインダクタLを通して平滑コンデンサC1が充電され、この間にインダクタLに電磁エネルギが蓄積される。また、インダクタLに蓄積された電磁エネルギは、スイッチング素子Q1のオフ期間において平滑コンデンサC1とダイオードD1とを通るループ回路を通して流れ、平滑コンデンサC1に充電電流を流す。この電源装置の出力は平滑コンデンサC1の両端から取り出される。
【0037】
上述した電源装置を構成する際に、インダクタLとして上述したインダクタを採用すれば、小型かつ薄型の電源装置を構成することができる。ここに、インダクタはごく小型であるから、蓄積できる電磁エネルギは比較的小さいものである。したがって、スイッチング素子Q1のオンオフの周波数(つまり、スイッチング周波数)は100kHz〜数MHz程度の高周波とするのが望ましい。
【0038】
このような電源装置を構成する場合に、半導体基板であるコイル基板10に、スイッチング素子Q1とダイオードD1と制御回路CN1とを形成して集積回路化しておけば、平滑コンデンサC1を外付するだけで電源装置を構成することが可能になる。実装基板15が半導体基板であるときには、実装基板15にこれらの素子を形成すればよい。また、上述したインダクタLを電源装置に用いることにより、電源装置の構成部品のうちの大型部品であったインダクタLを小型化することができる。しかも、スイッチング素子Q1とともにインダクタLを集積回路化することによりスイッチング素子Q1の近傍にインダクタLを設けることができ、結果的に、スイッチング素子Q1のオンオフを高周波で行う場合に問題となる寄生容量の影響を軽減することができる。
【0039】
DC−DCコンバータを構成する場合も同様であって、代表的な構成のDC−DCコンバータでは、トランスの1次巻線にスイッチング素子を直列接続し、トランスの2次巻線に整流用のダイオードと平滑コンデンサとの直列回路を接続し、スイッチング素子のオンオフを制御回路により制御する。半導体基板であるコイル基板に、スイッチング素子、ダード、制御回路などを集積回路化することができる。トランスを構成する場合も半導体基板からなる実装基板を用いる場合には、これらの素子を実装基板に形成すればよい。
【0040】
上述した小型の電源装置を用いた配線システムの例を図10に示す。図示する配線システムでは、建物内の適所に埋込配置されたスイッチボックス3にゲート装置4と称する配線器具を収納する。ゲート装置4には壁内に先行配線された電力線Lpと情報線Liとが接続される。スイッチボックス3およびゲート装置4は1個ずつでもよいが、以下では複数個設ける場合について説明する。また、図示例では、ルータとハブとを内蔵したゲートウェイの機能を有している基本モジュール1と、メインブレーカMBおよび分岐ブレーカBBとを内蔵した配線盤5を用いている。
【0041】
基本モジュール1には、複数系統(図示例では3系統)の情報線Liが接続され、ゲートウェイとして各情報線Liを外部のインターネット網NTに接続する。基本モジュール1は、情報線Liを複数系統に分岐したり情報線Liをインターネット網NTに接続するだけでなく、情報線Liを通して後述する各機能モジュール2の動作状態を監視する機能も備えている。また、メインブレーカMBは商用電源ACに接続され、分岐ブレーカBBに電力線Lpが接続される。図示例では分岐ブレーカBBを1系統で代表して示しているが通常は複数系統の分岐ブレーカBBを設ける。
【0042】
図10に示す例では、機能モジュール2として、コンセントあるいはスイッチのように負荷制御を主な機能とするものと、スピーカあるいは表示器のように情報の授受を主な機能とするものとを示している。本実施形態の構成では、負荷制御を主な機能とする場合であっても、コンセントに接続した負荷で使用した電力量やスイッチを操作した回数などを情報として情報線Liを介して監視することが可能になる。
【0043】
各系統のゲート装置4の間は電力線Lpおよび情報線Liの送り配線によって接続される。また、各系統のゲート装置4のうちの1個は配線盤5との間で電力線Lpおよび情報線Liを介して接続される。つまり、各系統のゲート装置4は電力線Lpに並列接続され、また情報線Liに並列接続されることになる。
【0044】
ゲート装置4は、電力線Lpと情報線Liとに接続されたコネクタからなる接続口6(図11参照)を備える。したがって、後述する機能モジュール2のコネクタをゲート装置4の接続口6に接続するだけで、機能モジュール2に電力を供給する電力路と、機能モジュール2との間で通信するための情報路とを同時に確保することができる。しかも、ゲート装置4は電力線Lpと情報線Liとにそれぞれ並列接続されているだけであるから、機能モジュール2はどのゲート装置4にも接続することができる。つまり、機能モジュール2は、ゲート装置4の配置されている範囲内で自由に配置することができるから、レイアウトの自由度が高い施工性に優れた配線システムを提供することができる。
【0045】
スイッチボックス3は、たとえばJIS規格(C 8375)に規定する取付枠9(図11参照)を取り付けることができるものを用いる。図示する取付枠9は一連形と呼ばれており、JIS規格(C 8304)において大角連用形スイッチの1個モジュールとして規格化されている埋込形の配線器具を3個取り付けることができる。
【0046】
取付枠9は、図11に示すように、中央部に表裏に貫通した器具取付用の矩形状の窓孔9aを備える。取付枠9に取付対象である配線器具を取り付けるには、窓孔9aの後方から配線器具の前部を挿入し、取付枠9の左右両側の枠片9bに設けた器具係止部に配線器具の左右両側に設けた被係止部を結合させる。図示例では、配線器具に被係止部として爪を設け取付枠9の枠片9bに器具係止部として間隙を設けている。ただし、配線器具に被係止部として穴を設け取付枠9の枠片9bに器具係止部として爪を設けた構成もある。取付枠9の上下の枠片9cには挿入孔9dが貫設されている。取付枠9をスイッチボックス3に取り付けるには、取付枠9に配線器具を装着した状態で、図示しない取付ねじを挿入孔9dに前方から挿入してスイッチボックス3に設けたねじ受け(図示せず)に螺入させる。
【0047】
なお、取付枠9を壁パネルに取り付ける場合には、壁パネルに取付孔を貫設し、挿入孔9dに挿入される引締ねじを挟み金具(図示せず)と称する部材に螺合させ、壁パネルに貫設した取付孔の周部を取付枠9と挟み金具との間で挟持するように引締ねじを締め付けてもよい。あるいはまた、取付枠9を通して壁材に木ねじを螺合させることによって、取付枠9を壁に取り付けることも可能である。
【0048】
本実施形態では、各スイッチボックス3の上部からは、配電ボックス1または他のスイッチボックス3に接続された電力線Lpおよび情報線Liが導入され、各系統の末端に位置するスイッチボックス3を除いた各スイッチボックス3の下部からは他のスイッチボックス3への送り配線である電力線Lpおよび情報線Liが導出される。また、ゲート装置4を取り付けた取付枠9を各スイッチボックス3に取り付けることによって、上述したように、各スイッチボックス3にそれぞれゲート装置4が収納される。ここにおいて、ゲート装置4には、電力線Lpと情報線Liとが接続されるから、電力線Lpと情報線Liとの混触を防止するために、電力線Lpと情報線Liとのスイッチボックス3への導入口および導出口はそれぞれ個別に設けるのが望ましい。
【0049】
ゲート装置4は、板ばねのばね力を利用して電線を結線する、いわゆる速結端子構造の端子を器体に内蔵しており、器体の背面に開口する電線挿入口に電線を挿入することにより、電線の機械的保持と電気的接続とがなされる構成を採用している。電線挿入口は、電力線Lpと情報線Liとについて2対ずつ設けてある。各1対は送り配線を接続するために用いられる。ゲート装置4の器体の前面には、電力線Lpが接続される端子に電気的に接続されている接触部を設けた電力路接続口6aと、情報線Liが接続される端子に電気的に接続されている接触部を設けた情報路接続口6bとが配置される。
【0050】
電力路接続口6aと情報路接続口6bとは1個の接続口6としてモジュール化されている。配線システム内の各ゲート装置4において、各電力路接続口6aと各情報路接続口6bとはそれぞれ同仕様(接触部の配列や接続口のサイズなど)であり、また電力路接続口6aおよび情報路接続口6bの位置関係は統一されている。接続口6には、機能モジュール2の背面に設けた接続体7が着脱可能に結合される。すなわち、機能モジュール2の接続体7には、電力路接続口6aに着脱可能に結合される電力路接続体7aと、情報路接続口6bに着脱可能に結合される情報路接続体7bとをモジュール化した接続体7が設けられる。機能モジュール2の接続体7をゲート装置4の接続口6に接続した状態において、機能モジュール2はゲート装置4の前面を覆う。ここに、接続口6と接続体7とはコネクタを構成する。
【0051】
機能モジュール2は、図12に示すように、ゲート装置4に対して1台だけ接続することによって単独で用いることができる基本機能モジュール2aと、基本機能モジュール2aに対して壁面に沿う面内で配列され基本機能モジュール2aと組み合わせて用いることにより基本機能モジュール2aの機能を拡張する拡張機能モジュール2bとがある。拡張機能モジュール2aは、基本機能モジュール2aに対して1台接続するだけではなく、複数台を接続することも可能である。
【0052】
以下の説明においては、基本機能モジュール2aを単独で用いるか、基本機能モジュール2aに拡張機能モジュール2bを結合して用いるかにかかわらず、どちらの場合についても機能モジュール2として説明する。
【0053】
機能モジュール2は、図13、図14に示すように、合成樹脂製の扁平なハウジング8aを備える。すなわち、ゲート装置4に取り付けたときに壁面からの突出寸法が小さく、かつハウジング8aの前面側に露出する表示、報知、操作などの各種機能を持つ機能部に割り当てる面積を大きくとることができる薄型に形成されている。ハウジング8aの背面には接続体7が設けられ、接続体7をゲート装置4の接続口6に結合すれば、機能モジュール2が電力線Lpおよび情報線Liと電気的に接続される。ハウジング8aの上部および下部には取付用孔8cが開口しており、ハウジング8aをゲート装置4に結合した状態で、ハウジング8aの前面側から取付用孔8cに取付ねじ(図示せず)を挿入し、取付枠9の取付ねじ孔10eに取付ねじを螺入することにより、機能モジュール2が取付枠9に対して機械的に固定され、結果的に機能モジュール2のゲート装置4に対する結合強度を高めることができる。ハウジング8aの前面部には化粧カバー8bが着脱可能に被着され、化粧カバー8bをハウジング8aに装着した状態では、取付ねじの頭部が隠される。
【0054】
上述の構成から明らかなように、機能モジュール2には電力線Lpを通して商用電源ACから電力が供給されるから、機能モジュール2の内部回路の動作用の電源を生成するために商用電源ACから内部回路の動作用に用いる直流電圧を生成する電源装置が必要である。また、ハウジング8aは扁平で小型であるから、このようなハウジング8aに収納可能な薄型かつ小型の電源装置が必要である。したがって、実施形態1、実施形態2において説明した平面型インダクタや実施形態3において説明した平面型トランスを用いる電源装置は、この種の機能モジュール2に用いるのに適した電源装置になる。
【0055】
機能モジュール2が、基本機能モジュール2aだけではなく拡張機能モジュール2bも含んでいる場合には、電源装置は拡張機能モジュール2bにも電力を供給する。基本機能モジュール2aから拡張機能モジュール2bへの電力の供給は交流を用いる。また、基本機能モジュール2aと拡張機能モジュール2bとの内部においては、交流−直流変換を行って直流電力を内部回路に供給する。そのため、基本機能モジュール2aと拡張機能モジュール2bとには、それぞれ電源装置が設けられる。拡張機能モジュール2bに設けた電源装置においても実施形態1、実施形態2において説明した電磁誘導部品を用いることにより、拡張機能モジュール2bのハウジングに収納可能な薄型かつ小型の電源装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】同上の断面図である。
【図3】同上の平面図である。
【図4】同上においてコアを設けた場合の一例を示す断面図である。
【図5】同上においてコアを設けた場合の他例を示す断面図である。
【図6】同上においてトランスの構成例を示す断面図である。
【図7】同上においてトランスの他の構成例を示す断面図である。
【図8】電磁誘導部品を用いた電源装置の構成例を示す断面図である。
【図9】電磁誘導部品を用いた電源装置の構成例を示す回路図である。
【図10】電磁誘導部品を用いる配線システムの全体構成を示す構成図である。
【図11】機能モジュールを取付枠に取り付けた状態の正面図である。
【図12】機能モジュールの他の構成例を示す構成図である。
【図13】ゲート装置と機能モジュールとを示す斜視図である。
【図14】機能モジュールを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 基本モジュール
2 機能モジュール
10 コイル基板
10a 穴部
11 コイルパターン
12a,12b 電路パターン
13 接続導体
14 コア
15 実装基板
16a,16b 接続部
CN1 制御回路
L インダクタ
Li 情報線
Lp 電力線
Q1 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル基板の厚み方向に離間した複数層の導電層がコイル基板に形成され、各導電層により形成される電路パターンはコイル基板の厚み方向に離間する2層の一端同士がコイル基板内を通る接続導体により電気的に接続され、かつコイル基板の厚み方向に離間する2層の電路パターンの各一方は1ターンコイルの半周形状を1個の基本パターンとして複数個の基本パターンが連続する形状であり、両層の電路パターンにより複数個の1ターンコイルを直列接続したコイルパターンが形成されることを特徴とする電磁誘導部品。
【請求項2】
前記基本パターンは円環の半周分の形状であり、一つの導電層において隣接する2個の基本パターンは弦に対して弧が互いに逆向きに配置されていることを特徴とする請求項1記載の電磁誘導部品。
【請求項3】
前記コイル基板が半導体基板であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電磁誘導部品。
【請求項4】
前記コイル基板に3層以上の電路パターンが形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電磁誘導部品。
【請求項5】
前記コイル基板において前記1ターンコイルの内側に対応する部位に穴部が形成され、当該穴部内に磁性体材料からなるコアが配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電磁誘導部品。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電磁誘導部品とスイッチング素子とスイッチング素子のオンオフを制御する制御回路とを備えることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
前記電磁誘導部品を除く回路部品を実装する実装基板に前記コイル基板が積層され、前記コイル基板の表裏に貫通する貫通導体からなる接続部により前記コイル基板と実装基板とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項6記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−180436(P2007−180436A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379795(P2005−379795)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】