説明

電磁軸攪拌装置

固体および/または液体および/またはガス状物質を一緒にまたは個別に軸攪拌する装置は、リニアモータまたはリニアサーボモータの使用を特徴とし、動作の振幅、振動数、加速度、印加時間の選択と、攪拌および静止サイクルの選択とを可能にする。この装置により発生される攪拌は、物質の混合および/または均質化、および/または攪拌された物質の成分要素の抽出に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体および/または液体および/またはガス状物質を一緒にまたは個別に軸攪拌する装置に関する。
【0002】
本発明は特に、物質を混合または均質化するため、および/または抽出プロセスを実行するため、この種の軸攪拌を必要とする実験室での使用や、工業および/または家庭での用途のために設計されている。
【0003】
本発明は、攪拌および/または混合および/または均質化および/または物質抽出の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
今日、大部分の化学分析方法では、試料中のすべての物質の適切な均質化、流動化、混合を行うため、または試料の成分の一部について抽出プロセスを実行するために試料の攪拌を必要とする。現在使用されている攪拌装置は、軌道攪拌、回転攪拌、振動攪拌、揺動攪拌、磁気攪拌、プロペラ攪拌、振子攪拌を実施する。
【0005】
軌道攪拌(特許文献1、特許文献2)は、試料に円形または長円形の軌道を辿らせることと、振動数、すなわち毎秒あたりの全軌道回数を選択することを含む。
【0006】
回転攪拌(特許文献3)は、含む仮想回転軸上で試料を回転させることを含む。
【0007】
振動攪拌または渦流攪拌(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)は、高振動数の軌道攪拌のような動作によって発生され、攪拌装置の軌道半径を非常に短く(通常は1センチメートル未満)することで、試料を収容する容器基部との直接接触により伝達される振動を発生させる。
【0008】
揺動攪拌または揺れ動作(特許文献8)は、プラットフォームを含む軸を中心としてプラットフォームを往復させることを含む。この揺れ動作を実施するように、試料の入った容器がこのプラットフォームに載置される。
【0009】
プロペラ攪拌(特許文献9、特許文献10)は、一方の端部にプロペラが設けられたロッドを、試料を収容する容器に入れることを含む。ロッドの他の端部は、回転させることにより試料を攪拌する回転モータに接続されている。
【0010】
磁気攪拌(特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15)は、(試料と接触した時に化学反応を起こさないように)カプセルに入った円筒形の小型磁石を、試料を収容する容器に入れることを含む。容器の下に回転磁界が発生し、容器内の磁石を回転磁界と同じ振動数でスピンさせる。
【0011】
振子攪拌(特許文献16)は、反対側の端部が往復するように振子の動作を模倣して動くロッドに試料を装着することを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第86/00995号パンフレット
【特許文献2】米国特許第005558437A号明細書
【特許文献3】スペイン特許第188622号明細書
【特許文献4】スペイン特許第2160401T3号明細書
【特許文献5】米国特許第4883644号明細書
【特許文献6】米国特許第4305668号明細書
【特許文献7】米国特許出願第2005/0180258号明細書
【特許文献8】スペイン特許第219812Y号明細書
【特許文献9】スペイン特許第2039656号明細書
【特許文献10】米国特許第005141327A号明細書
【特許文献11】スペイン特許第2064649号明細書
【特許文献12】独国特許出願第202004013715U1号明細書
【特許文献13】英国特許第1180278号明細書
【特許文献14】米国特許出願第2005088912号明細書
【特許文献15】欧州特許第1188474号
【特許文献16】スペイン特許第251833Y号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述した装置を使用しても攪拌された物質の適切な均質化および/または抽出が行われないプロセス(化学分析、混合物の生成、抽出プロセスなど)がいくらか存在する。このような場合には、垂直方向、水平方向、または両方の選択肢の間の他の傾斜であれ、軸方向発振動作(axially oscillating movement)の印加が必要となる。発振し得る無数の軸方向配向のうち、我々は垂直動作を例として選択したが、本発明は請求項のみにより規定されるものであり、その範囲を制限するわけではない。すなわち、発振垂直攪拌に言及する場合には、試料は一定の振動数および振幅をもってバランス位置で上下しなければならない。
【0014】
今日、この垂直攪拌動作は手作業で実施されており、再現性および反復性の問題が生じている。多数の試料が同時に攪拌されなければならない場合、この問題はさらに顕著である。
【0015】
この発振垂直攪拌の実施を自動化された方法で促進するシステム、装置、器具、方法は、市場にも、調査した引用文献にも見られない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ここに説明される発明は、いくつかの試料を一緒にまたは個別に攪拌できるとともに、発振振幅、発振振動数、加速度、減速度、攪拌作用の印加時間である垂直攪拌の基本的パラメータを、攪拌および静止のサイクルの選択とともに選択することが可能であるので、上述した問題を解決する。
【0017】
本発明は、固体および/または液体および/またはガス状物質を、個別に、または一緒に軸攪拌する装置に関する。
【0018】
本発明の対象となる装置は、リニアモータにより動作が実行されるので攪拌における新たなコンセプトを提示する。これにより、試料の発振軸動作の特徴を成すパラメータの幅広い選択が容易となる。モータ(今後は、「モータ」の語が使用されるたびに、リニアモータまたはリニアサーボモータを指していると理解されたい)の一部である磁気バーへ支持体を装着することにより、発振動作が試料へ伝達される。
【0019】
モータは、金属構造、または適切な剛性および耐性でモータを固着できる他の材料で作られた構造により装着され、その設計は、請求項のみによって画定される本発明の範囲を限定するものではない。
【0020】
モータを支持する構造は二つの穴を有する。この穴を磁気バーが貫通し、モータの円筒形内部に磁気バーが配置される。モータは、バーの磁石とモータコイルの周囲を動く可変電流により発生される磁界との間の電磁引力および斥力により駆動され、必要な発振動作を伝達する。
【0021】
実際的な理由から、下方プラットフォームは装置の基部として機能し、発振動作により発生される可能性のある振動からの絶縁と良好な固定のためにゴム支持体または静音ブロックを有する。これらはすべて非常に小型で安定したブロックを形成する。システムはまた、磁気バーに装着された釣合いおもりや、または他の種類の機械的システム、例えば、モータ歪みを軽減し、性能を向上させ、寿命を延長するためのばねをも有する。
【0022】
また、本発明では必要なメンテナンスが最小限である。本発明の他の長所は、使用の容易さ、および速度、発振振幅、振動数、加速度、攪拌時間、2回の連続使用すなわち機能モードの間の一時停止などのパラメータ再現性である。本装置は、異なる動作条件が必要な多くのプロセスに装置を適応させるプリセット動作プログラムを使用するためのソフトウェアを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】発振軸攪拌システムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、発振軸攪拌システムの概略図を示す。部品(1)はリニアモータを表す。モータの矩形部分は、可変強度の電流を周囲に循環させて磁界を発生させるコイルを内部に保持する。モータ全体を貫通する円筒形の穴が設けられており、この穴に、軸または磁気バー(部品2)が位置する。この部品(2)の中央上部は、要素を固定できるねじを有する。
【0025】
部品(3)は、両端部にねじを備える金属バーを表す。これらの金属バーは、下方プラットフォーム(部品4)と中間プラットフォーム(部品5)と上方プラットフォーム(部品6)とにモータを固定して、モータ(1)を固定状態に維持するとともにアセンブリ全体に安定性を付与する。
【0026】
部品(7)は、試料の容器(部品9)の支持体の下部を構成する。この部品(7)は、両要素が固定されるように中央下部で磁気バー(2)に結合される。部品(8)はトレイの上部であり、試料が固定された状態に容器(9)を保持して中央部で部分(7)に結合される。
【0027】
下方プラットフォーム(部品4)の下には、全重量を支承して振動の大部分を吸収するゴム支持体または静音ブロック(10)が4つ設けられている。部品(11)は、電気接続ボードおよびモータ(1)制御接続を保護する。
【0028】
ばねに囲繞されたシリンダにより部品(12)が形成される。ばねの上方ストップは、ばねにより印加される力に反して部品(12)の上を摺動できる小型プラットフォーム(13)である。部品(13)の中央エリアは、部品(2)との急激な接触を緩和するための何らかの材料を収容する円筒溝を有する。
【0029】
本発明の範囲を限定しない以下の例により本発明を例示する。本発明の範囲は請求項のみにより定められる。
【0030】
試験管内の牛内臓と溶液との混合物の攪拌
牛製品が人の食用に適しているかどうかを判断するには、無認可または不適当な物質、例えば抗生物質、ホルモン、β刺激薬などによる処理を動物が受けたかどうかを調べる必要がある。
【0031】
このためにはかなりの内臓試料が必要である。この試料は、破砕された後、調べる可能性のある物質と相互作用する抽出液とともに、数本の試験管に入れられる。
【0032】
後の分析のため、これらの試料は充分に流動化、混合、均質化されなければならない。この目的を達成するため、発振振幅17.5cm、毎秒1.5サイクルの振動数での1分間の強力攪拌が必要である。この後、1分間の攪拌につき15秒の一時停止を含む、振幅10cm、加速度70m/sの12分間の攪拌の実施が必要である。
【0033】
この処置の後、攪拌から得られた試料は、5分間で5,000RPMとなるまで5分間遠心分離機にかけられる。その後、色と密度が明白に区別された三種類の液体が得られる。クロマトグラフィー試験または他の化学分析技術によって、これらの液体の各々から動物が吸収した物質についての情報を得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
3 両端部にねじを備える金属バー
4,5,6 金属プラットフォームまたは高耐性構造の他の材料で製作されたプラットフォーム
7 基部
8 試料が保持される容器支持体の蓋
9 試料の容器
10 ゴム支持体または類似の特徴を持つ他の材料で製作された支持体
11 電気接続ボードのプロテクタ
12 ばねに囲繞されたシリンダ
13 部品12の上で摺動するばねストップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌動作の振幅と加速度と攪拌動作の印加時間とを選択できるリニアモータまたはリニアサーボモータを使用することを特徴とする、固体および/または液体および/またはガス状物質を一緒にまたは個別に軸攪拌する装置。
【請求項2】
発振振動数を選択可能な垂直発振動作を実行することを特徴とする、請求項1に記載の固体および/または液体および/またはガス状物質を軸攪拌する装置。
【請求項3】
攪拌された前記物質を混合するのに使用されることを特徴とする、請求項1および2に記載の物質を軸攪拌する装置。
【請求項4】
攪拌された前記物質に含有される成分要素の1つまたはいくつかを抽出するのに使用されることを特徴とする、請求項1,2,3に記載の物質を軸攪拌する装置。
【請求項5】
垂直位置に対する任意の角度でシステムを回転させて、垂直以外の方向の攪拌動作を実行することを特徴とする、請求項1,2,3,4に記載の固体および/または液体および/またはガス状物質を一緒にまたは個別に軸攪拌する装置。
【請求項6】
1つまたはいくつかの物質の攪拌が必要であるプロセスの標準化に使用されることを特徴とする、請求項1,2,3,4,5に記載の固体および/または液体および/またはガス状物質を一緒にまたは個別に軸攪拌する装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−517756(P2010−517756A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548706(P2009−548706)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【国際出願番号】PCT/ES2007/000061
【国際公開番号】WO2008/096018
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509223597)
【Fターム(参考)】