電線、電線の加工方法及び電線の加工装置
【課題】簡単に被覆部上での着色材の広がりや広がり方のばらつきを抑え、着色意匠の視認性や意匠性を向上させることができる電線、電線の加工方法及び電線の加工装置を提供する。
【解決手段】電線1は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ芯線を被覆した絶縁性の被覆部とを備えている。被覆部の外表面即ち電線1の外表面を拭き取ること、または電線1を加熱することによって、電線1の外表面の表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下とする。
【解決手段】電線1は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ芯線を被覆した絶縁性の被覆部とを備えている。被覆部の外表面即ち電線1の外表面を拭き取ること、または電線1を加熱することによって、電線1の外表面の表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ芯線を被覆する絶縁性の被覆部とを備えた電線、電線の加工方法及び電線の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車等には、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車等は、前記電子機器にバッテリ等の電源からの電力やコンピュータ等からの制御信号等を伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、これら電線の端部等に取り付けられたコネクタとを備えている。
【0003】
電線は、所謂被覆電線であり、導電性の芯線と、芯線を被覆する絶縁性の被覆部とを備えている。被覆部は、電線の後述する使用目的等によって様々な種類の樹脂組成物で構成されている。前記樹脂組成物は、ベース樹脂と、ベース樹脂に添加される添加剤とを含有している。ベース樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂やポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤や銅害防止剤等が挙げられる。
【0004】
前述した酸化防止剤は、電線が押出成形によって製造された直後から、被覆部の外表面、即ち電線の外表面にごく薄い(目視不可能な程度の)膜状に析出し、被覆部の酸化による劣化を防止している。また、銅害防止剤は、電線の芯線の影響による被覆部の劣化を防止しているが、電線が押出成形によって製造された後に経時的に徐々に電線の外表面に析出する。その他の添加剤についても、経時的に徐々に電線の外表面に析出してくる。
【0005】
ところで、前述したワイヤハーネスの電線は、芯線の太さ、被覆部の材質(耐熱性の有無等)や使用目的等を識別する必要がある。使用目的とは、例えば、エアバック、ABS(Antilock Brake System)や車速情報等の制御信号や動力伝達系統等の、電線が用いられる自動車の系統(システム)である。
【0006】
そこで、電線の外表面には、前述した使用目的等を識別するために、印(着色意匠)が形成されている。印は、製造後の電線の外表面を着色することで形成される。このような電線の着色は、例えば、電線の着色装置(例えば、特許文献1参照)を用いて、着色材を電線の外表面に向かって滴射(滴下)して行われる。着色材とは、溶媒中に、染料が溶解または分散しているものや、顔料が分散しているものである。
【0007】
ところが、前述のように、電線の外表面には酸化防止剤や銅害防止剤等の添加剤が析出する。このため、着色材の溶媒に対する相溶性の高い添加剤が析出していると、被覆部上に滴射(滴下)された着色材が滲んで印が広がってしまい、印の視認性や意匠性が低下するといった問題があった。さらに、電線の種類によって添加剤の種類や含有量が異なったり、また同種の電線であっても製造ロットや保管状態が異なったりすると、添加剤の析出量等が異なってしまい、着色材の広がり方にばらつきがあるといった問題があった。また、逆に、着色材の溶媒に対する相溶性の低い添加剤が析出していると、被覆部上の着色材が弾かれてしまい着色しづらくなるといった問題があった。
【0008】
また、例えば樹脂組成物のベース樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂の場合、着色材が浸透しやすいので問題はない。しかし、近年、環境問題に配慮して、ベース樹脂をポリオレフィン系樹脂としたハロゲンフリー樹脂組成物が多用されている。そして、ベース樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合、着色材が浸透しにくく、着色材の広がり方のばらつき度合いが大きくなり、印の視認性や意匠性が低下するといった問題があった。
【0009】
そこで、特許文献2及び3に記載された方法を適用することが考えられる。特許文献2及び3には、撥水性及び撥油性が高いフッ素系樹脂において、着色塗料(着色材)や機能性塗料等の塗料を被覆部上に確実に保持するために、フッ素系樹脂と塗料の双方に互いに反応する官能基を導入し、加熱することでこれら官能基の反応を進行させて、フッ素系樹脂に塗料を確実に付着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−346939号公報
【特許文献2】特開2006−328344号公報
【特許文献3】特開2007−84780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2及び3に記載された方法を適用するには、ポリオレフィン系樹脂と着色材の双方に互いに反応する官能基を導入しなければならず、大変な手間がかかるといった問題があった。
【0012】
本発明は、このような問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、簡単に被覆部上での着色材の広がりや広がり方のばらつきを抑え、着色意匠の視認性や意匠性を向上させることができる電線、電線の加工方法及び電線の加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線において、前記被覆部の外表面の表面張力が、20mN/m以上でかつ35mN/m以下とされたことを特徴とした電線である。
【0014】
請求項2に記載された発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工方法において、前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記被覆部の前記外表面を拭き取ることを特徴とした電線の加工方法である。
【0015】
請求項3に記載された発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工装置において、前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記被覆部の前記外表面を拭き取る拭き取り手段を備えたことを特徴とした電線の加工装置である。
【0016】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された電線の加工装置において、前記拭き取り手段が、互いに接離自在に設けられ、互いの間に前記電線を挟む一対の挟持部材と、前記一対の挟持部材のうち少なくとも一方の挟持部材を移動させて、前記一対の挟持部材を互いに接離させる第1移動手段と、前記一対の挟持部材を前記電線の長手方向に沿って移動させる第2移動手段と、互いの間に前記電線を挟んだ前記一対の挟持部材を前記電線の長手方向に沿って移動させるように前記第1移動手段及び前記第2移動手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とした電線の加工装置である。
【0017】
請求項5に記載された発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工方法において、前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記電線を加熱することを特徴とした電線の加工方法である。
【0018】
請求項6に記載された発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工装置において、前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記電線を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とした電線の加工装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下とされているので、被覆部の外表面に着色材を滴射すると、着色材は滲むことなくかつ弾かれることなく被覆部の外表面に付着する。このため、被覆部上での着色材の広がり方が安定する。したがって、着色意匠の視認性や意匠性を向上させることができる。
【0020】
請求項2及び3に記載された発明によれば、被覆部の外表面を拭き取ることで、簡単に被覆部の外表面の表面張力を20mN/m以上でかつ35mN/m以下にすることができる。そして、被覆部の外表面の表面張力を20mN/m以上でかつ35mN/m以下とすることで、被覆部の外表面に着色材を滴射すると、着色材は滲むことなくかつ弾かれることなく被覆部の外表面に付着する。このため、被覆部上での着色材の広がり方が安定する。したがって、着色意匠の視認性や意匠性を向上させることができる。
【0021】
請求項4に記載された発明によれば、互いの間に電線を挟んだ一対の挟持部材が電線の長手方向に沿って移動することで、被覆部の外表面を確実に拭き取ることができる。
【0022】
請求項5及び6に記載された発明によれば、電線を加熱することで、簡単に被覆部の外表面の表面張力を20mN/m以上でかつ35mN/m以下にすることができる。そして、被覆部の外表面の表面張力を20mN/m以上でかつ35mN/m以下とすることで、被覆部の外表面に着色材を滴射すると、着色材は滲むことなくかつ弾かれることなく被覆部の外表面に付着する。このため、被覆部上での着色材の広がり方が安定する。したがって、着色意匠の視認性や意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)本発明の第1及び第2の実施形態にかかる電線の着色された状態を示す斜視図である。(b)(a)に示された電線の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる拭き取り装置を用いるワイヤハーネス製造システムの工程を説明する説明図である。
【図3】図2に示されたワイヤハーネス製造システムの各工程で用いられる装置を説明する説明図である。
【図4】図3に示された拭き取り装置の構成を説明する説明図である。
【図5】図4に示された一対のローラが電線を挟んだ状態を示す説明図である。
【図6】図5に示された一対のローラが電線の長手方向に沿って移動した状態を示す説明図である。
【図7】図5に示された拭き取り装置の要部を拡大して示す説明図である。
【図8】図4に示された拭き取り装置を用いて表面張力を変化させた電線を着色した際の印の幅の変化を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる加熱装置を用いるワイヤハーネス製造システムの工程を説明する説明図である。
【図10】図9に示されたワイヤハーネス製造システムの各工程で用いられる装置を説明する説明図である。
【図11】図10に示された加熱装置の加熱部を示す斜視図である。
【図12】図11に示された加熱部による電線の加熱時間を変化させた際の電線の表面張力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1の実施形態にかかる電線1、及び電線の加工装置としての拭き取り装置2を図1ないし図8を参照して説明する。図1に示す本発明の第1の実施形態にかかる電線1は、当該電線1の外表面1aに着色材を付着させて外表面1aを着色するための(即ち着色用の)ものである。
【0025】
電線1は、所謂被覆電線であり、押出成形によって製造される。電線1は、図1(a)に示すように、導電性の芯線11と、芯線11を被覆する絶縁性の被覆部12とを備えている。芯線11は、複数の素線11aが撚られて形成されている。素線11aは、例えば、銅等の導電性の金属材料で構成されている。なお、芯線11は、一本の素線11aから構成されていてもよい。
【0026】
被覆部12は、絶縁性の合成樹脂で構成され、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されている。被覆部12は、芯線11を被覆している。このため、被覆部12の外表面は電線1の外表面1aをなしており、被覆部12の外表面は電線1の外表面1aに相当する。電線1の端部では、被覆部12が皮剥きされて除去され、芯線11が露出する。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂組成物は、ベース樹脂としてのポリオレフィン系樹脂と、添加剤としての酸化防止剤と、添加剤としての銅害防止剤とを含有している。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。なお、ベース樹脂は、これらのみに限定されるものではなく、これら以外のポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0028】
酸化防止剤としては、商品名 Irganox1010(チバ・ジャパン社製)、商品名 アデカスタブAOシリーズ(ADEKA社製)等が挙げられる。銅害防止剤としては、商品名 IrganoxMD1024(チバ・ジャパン社製)、商品名 アデカスタブCDAシリーズ(ADEKA社製)等が挙げられる。なお、酸化防止剤及び銅害防止剤は、各々、一種類を使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。また、添加剤は、これらのみに限定されるものではなく、これら以外の添加剤であってもよい。
【0029】
先に例示した酸化防止剤の融点は、電線1を製造する際の押出成形時の温度(約200℃)よりも低くなっている。そして、前記酸化防止剤は、電線1が製造された直後から、電線1の外表面1a全体に極僅かに(目視不可能な程度に)析出する。また、先に例示した銅害防止剤の融点は、前記酸化防止剤の融点よりも高くなっている。そして、前記銅害防止剤は、電線1が製造された後に経時的に徐々に電線1の外表面1aに析出する。
【0030】
さらに、前記酸化防止剤の後述する着色材の溶媒(本実施形態においてはアセトン)に対する相溶性は、前記銅害防止剤の前記相溶性よりも高くなっている。また、前記酸化防止剤の前記相溶性は、電線1の外表面1aに付着した着色材を滲ませる程度に高くなっている。また、前記銅害防止剤の前記相溶性は、電線1の外表面1aに滴射(滴下)された着色材を弾く程度に低くなっている。
【0031】
このため、電線1の外表面1aに析出した前記酸化防止剤によって、製造直後の電線1の外表面1aの表面張力γは、付着した着色材を滲ませる程度に大きくなっている。したがって、製造直後の電線1を着色すると、酸化防止剤によって着色材が滲んで、所望の形状よりも広がってしまうことになる。
【0032】
そこで、本実施形態においては、電線1の外表面1aを拭き取り装置2を用いて拭き取ることで析出した前記酸化防止剤を除去し、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下としている。表面張力γが35mN/mより大きい(酸化防止剤の除去が十分でない)と、着色材が滲んでしまう虞がある。また、表面張力γが20mN/mより小さい(酸化防止剤を除去しすぎる)と、被覆部12を構成するポリオレフィン系樹脂組成物の極性が低いので、着色材が弾かれてしまう虞がある。電線1の外表面1aの表面張力γは、例えば市販のぬれ張力(表面張力)試験用混合液を用いて、JIS K6768に準拠した測定方法によって測定される値である。
【0033】
なお、使用する酸化防止剤、銅害防止剤や着色材の溶媒の種類によっては、酸化防止剤が着色材を弾き、銅害防止剤が着色材を滲ませることも考えられる。また、例えば酸化防止剤を2種類使用し、一方の酸化防止剤が着色材を弾き、他方の酸化防止剤が着色材を滲ませることも考えられる。さらには、酸化防止剤や銅害防止剤以外の添加剤と着色材の溶媒の相溶性によって、着色材が滲んだり弾かれたりすることも考えられる。これらの場合であっても、本実施形態においては、着色前の電線1の外表面1aを拭き取って当該電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下とするので、析出した添加剤の種類によらず、確実に着色材が滲んだり弾かれたりすることを防止できる。
【0034】
また、被覆部12は、単色Nとされている。被覆部12は、ポリオレフィン系樹脂組成物に添加剤として所望の着色剤を含有させて単色Nとしてもよいし、着色剤を含有させることなくポリオレフィン系樹脂組成物自体の色を単色Nとしてもよい。そして、この電線1の外表面1aを着色して、電線1の外表面1aに、例えば図1に示すような着色意匠としての印13を形成する。
【0035】
印13は、電線1の外表面1aの全周に亘ったリング状(あるいは図1中で下方部分が途切れたC字状)に形成され、互いに間隔をあけて複数(図示例では2つ)設けられている。複数の印13は、単色Nと異なる色A(図1中、平行斜線で示す)で形成されている。また、印13は、図1中で上方に配される後述する着色ノズル51(図1中には図示しない)から着色材が滴射され、当該着色材が外表面1aを伝って図1中で下方に垂れて形成される。このため、印13は、図1中で上方側が幅広に形成され、図1中で下方側が幅狭に形成される。
【0036】
そして、前述のように着色材が滲むと、隣り合う印13の幅広部分の間隔Tが狭くなってしまい、印13の視認性や意匠性が低下する虞がある。なお、本実施形態においては、着色材の滲みが全くない場合、前記幅広部分の間隔Tは1.0mmとされ、前記幅広部分の幅(意匠幅)Wは2.6mmとされている。
【0037】
前述した印13の色や個数等を種々に変更することにより、電線1同士を識別可能としている。印13の色や個数等は、ワイヤハーネスの電線1の線種、使用される系統(システム)の識別等を行う際の目印となる。このように、電線1の印13は、ワイヤハーネスの各電線1の使用用途を識別するために用いられる。
【0038】
前述した電線1は、リール10に巻き付けられた長尺なものが所定の長さで切断され、切断された端部近傍の外表面1aが拭き取られた後に着色され、前記端部が皮剥きされて端子金具が圧着される。その後、前記端子金具がコネクタハウジング内に挿入されて、電線1の端部にコネクタが取り付けられる。そして、電線1が複数束ねられて、ワイヤハーネスが製造される。こうして製造されたワイヤハーネスは、コネクタが自動車等の各種の電子機器のコネクタと結合して、各電子機器に各種の信号や電力を伝える。
【0039】
前述したワイヤハーネスを製造するワイヤハーネス製造システムは、図2に示すように、電線切断工程P1と、拭き取り工程P2と、着色工程P3と、端子圧着工程P4等を備えている。電線切断工程P1と拭き取り工程P2と着色工程P3と端子圧着工程P4は、この順で順次行われる。
【0040】
電線切断工程P1では、電線選択、測長、切断等を行う。電線切断工程P1は、図3に示す電線作成装置41を備えている。電線作成装置41は、リール10に巻き付けられた長尺でかつ着色されていない(印13が形成されていない)電線1を所定の長さに切断して定尺の電線1を作成し、当該電線1を前述した各工程に供される電線竿6にU字状にして電線1の各端部を係止する。
【0041】
電線竿6は、長尺な竿本体61と、竿本体61に設けられた複数の電線クリップ62とを備えている。複数の電線クリップ62は、互いに間隔をあけて一方向に沿って並設されている。電線クリップ62は、互いの間に電線1を挟み込む一対の挟持子を備えている。
【0042】
前述した電線作成装置41は、Uターン旋回ヘッドを用いて電線1の先端部をU字状に折り曲げた状態で、電線1の両端部寄りの部分を一対の挟持子即ち電線クリップ62に挟持させる。電線竿6は、複数の工程に亘って設けられた後述する搬送装置42によって、拭き取り工程P2に搬送される。本実施形態における電線竿6は、電線1の端部から30mmの部分を電線クリップ62で保持している。また、電線クリップ62は、20mm間隔で設けられ、隣り合う電線1間の間隔は20mmとされている。
【0043】
搬送装置42は、前述した複数の工程に亘って循環するベルトや鎖等の搬送帯と、当該搬送帯を駆動する駆動モータと、当該駆動モータの駆動を制御する制御部とを備えている。電線竿6は、制御部の制御による駆動モータの駆動に応じて、各工程に搬送される。また、本実施形態における制御部は、後述する端子圧着機43の圧着する周期に応じて間欠的に駆動モータを駆動させることで、複数の電線1を間欠的に搬送させている。
【0044】
拭き取り工程P2では、電線切断工程P1から搬送される電線竿6に保持された電線1の両端部の外表面1aを拭き取って、電線1の外表面1aから当該外表面1aに析出した酸化防止剤を除去し、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下とする。拭き取り工程P2は、後述する本発明の拭き取り装置2を備えている。
【0045】
着色工程P3では、拭き取り工程P2から搬送される電線竿6に保持された電線1の拭き取られた外表面1aに着色材を付着させ、電線1の外表面1aに前述した印13を形成する。着色工程P3は、図3に示す着色装置5を備えている。
【0046】
着色装置5は、複数の着色ノズル51と、複数の弁52と、着色材供給源53と、加圧気体供給源54と、制御部55等を備えている。着色ノズル51は、それぞれ筒状に形成され、電線1の長手方向L(図3等で矢印Lで示す)に沿って並んでいる。なお、電線1の長手方向Lは、搬送装置42が電線竿6を搬送する方向M(図3等で矢印Mで示す)と直交する方向である。各着色ノズル51は、先端が電線1の外表面1aと相対している。弁52は、各着色ノズル51に設けられ、着色ノズル51と連結されている。弁52は、制御部55と接続されている。
【0047】
着色材供給源53は、各弁52と連結されている。着色材供給源53は、内部に着色材を収容し、着色ノズル51に着色材を供給する。加圧気体供給源54は、着色材供給源53に連結し、着色材供給源53に加圧気体を供給する。なお、図3においては、複数の着色ノズル51が各々弁52を介して1つの着色材供給源53に連結されているが、それぞれ異なる(色の着色材を収容した)着色材供給源53に連結されていても勿論よい。
【0048】
前述した着色装置5は、制御部55からの信号によって弁52を予め定められた時間開き、加圧気体供給源54から供給される加圧気体によって着色材供給源53から着色ノズル51内に着色材を供給し、この着色材を電線1の外表面1aに向かって滴射する。また、着色装置5は、制御部55からの信号によって弁52を閉じて、着色材の滴射を止める。こうして、着色装置5は、電線1の外表面1aに着色材を付着させて印13を形成し、電線1の外表面1aを着色する。
【0049】
前述した着色材とは、色材(工業用有機物質)が溶媒に溶解、分散した液状物質である。色材としては、染料、顔料(大部分は有機物であり、合成品)があり、時には染料が顔料として、顔料が染料として用いられることがある。より具体的な例として、着色材とは、着色液または塗料である。
【0050】
着色液とは、溶媒中に染料が溶解しているものまたは分散しているものを示しており、塗料とは、分散液中に顔料が分散しているものを示している。このため、着色液が電線1の外表面1aに付着すると染料が被覆部12内に染み込み、塗料が電線1の外表面1aに付着すると顔料が被覆部12内に染み込むことなく外表面1aに接着する。即ち、着色装置5は、電線1の外表面1aの一部を染料で染める、または、電線1の外表面1aに顔料を塗る。このため、電線1の外表面1aを着色するとは、電線1の外表面1aの一部を染料で染める(染色する)ことと、電線1の外表面1aの一部に顔料を塗ることを示している。
【0051】
また、前述した溶媒と分散液は、被覆部12を構成する樹脂組成物と親和性のあるものが望ましい。この場合、染料が被覆部12内に確実に染み込み、顔料が電線1の外表面1aに確実に接着する。本実施形態においては、着色材として前述した着色液を用い、溶媒としてアセトンを用いている。
【0052】
端子圧着工程P4では、皮剥き・仕分け・アプリケータ段取り・圧着・検査・マジック付け(マーキング等)を行う。即ち、まず電線1の端部の皮剥きを行った後、端子金具の種類毎に電線1を仕分けする。アプリケータ段取りは、後述する端子圧着機43のアプリケータを端子金具の種類に応じて載せ換えたり、圧着高さを調整したりすることである。アプリケータは、圧着具としての昇降式の上型(クリンパ)と固定式の下型(アンビル)とを備えている。電線1の端部に端子金具を圧着した後、圧着状態を目視やテレビカメラ等で検査し、端子金具をコネクタハウジングに挿入する際の識別のためにマジックインクで端子金具に識別印をつける。端子圧着工程P4は、図3に示す端子圧着機43を備えている。
【0053】
端子圧着機43は、それぞれ異なる端子金具を圧着するもので、装置自体の構成は既知である。端子圧着機43は、着色工程P3から搬送される電線竿6に保持された電線1に、前述した圧着具を用いて端子金具を圧着する。
【0054】
以下、拭き取り装置2について説明する。拭き取り装置2は、図4等に示すように、台部21と、可動部22と、台部21に取り付けられた一対の第1エアシリンダ(第1移動手段に相当する)23A、23Bと、可動部22と第1エアシリンダ23Bに各々取り付けられた一対の第2エアシリンダ(第2移動手段に相当する)24A、24Bと、各第2エアシリンダ24A、24Bに取り付けられたローラ(挟持部材に相当する)25A、25Bと、制御部(制御手段に相当する)26とを備えている。第1エアシリンダ23A、23Bと第2エアシリンダ24A、24Bとローラ25A、25Bと制御部26とは、拭き取り部(拭き取り手段に相当する)20を構成する。
【0055】
台部21は、箱状に形成され、工場等のフロアに設置される。台部21の上面は、水平方向に平坦に形成されている。可動部22は、肉厚板状に形成され、水平方向に沿って配されている。可動部22は、台部21の上方に配され、第1エアシリンダ23Aを介して台部21に取り付けられている。
【0056】
第1エアシリンダ23A、23Bは、各々、シリンダ本体23cと、シリンダ本体23cから伸縮自在なロッド23dとを備えている。各シリンダ本体23cは、鉛直方向に沿って配されて、台部21から立設している。各ロッド23dは、シリンダ本体23cの上端から上方に伸長しかつ下方に縮む。
【0057】
一方の第1エアシリンダ23Aのロッド23dの先端には、可動部22が取り付けられている。一方の第1エアシリンダ23Aは、ロッド23dを伸縮させることで可動部22を鉛直方向に沿って移動させ、可動部22を台部21に対して接離(近づいたり離れたりすること)自在にする。
【0058】
また、他方の第1エアシリンダ23Bのロッド23dの先端には、第2エアシリンダ24Bの後述するシリンダ本体24cが取り付けられている。他方の第1エアシリンダ23Bは、ロッド23dを伸縮させることで第2エアシリンダ24Bを鉛直方向に沿って移動させ、第2エアシリンダ24Bを台部21に対して接離自在にする。
【0059】
第2エアシリンダ24A、24Bは、各々、シリンダ本体24cと、シリンダ本体24cから伸縮自在なロッド24dとを備えている。一方の第2エアシリンダ24Aのシリンダ本体24cは可動部22に取り付けられ、他方の第2エアシリンダ24Bのシリンダ本体24cは第1エアシリンダ23Bのロッド23dに取り付けられている。各シリンダ本体24cは、水平方向に沿ってかつ互いに平行に配されているとともに、電線竿6に保持された電線1の長手方向Lと平行に配されている。
【0060】
ロッド24dは、シリンダ本体24cから電線竿6に向かって伸長しかつ電線竿6から離れる方向に縮む。第2エアシリンダ24A、24Bのロッド24dの先端には、各々、ローラ25A、25Bが取り付けられている。第2エアシリンダ24A、24Bは、ロッド24dを伸縮させることでローラ25A、25Bを電線1の長手方向Lに沿って移動させる。
【0061】
ローラ25A、25Bは、ゴムやエラストマー等の弾性材料で構成され、円盤状に形成されている。ローラ25A、25Bは、それぞれ、中心軸がロッド24dの中心軸と一致するようにロッド24dの先端に取り付けられている。ローラ25A、25Bは、各第2エアシリンダ24A、24Bのロッド24dに取り付けられて、一対設けられている。一方のローラ25Aは、第2エアシリンダ24Aを介して可動部22に取り付けられている。他方のローラ25Bは、第2エアシリンダ24B及び第1エアシリンダ23Bを介して台部21に取り付けられている。
【0062】
前述した一対のローラ25A、25Bは、図4及び図5に示すように、第1エアシリンダ23Aがロッド23dを伸縮させて可動部22を移動させて当該可動部22に第2エアシリンダ24Aを介して取り付けられた一方のローラ25Aを移動させ、かつ、第1エアシリンダ23Bがロッド23dを伸縮させて第2エアシリンダ24Bを移動させて当該第2エアシリンダ24Bに取り付けられた他方のローラ25Bを移動させることで、互いに接離する。このように、一対のローラ25A、25Bは互いに接離自在に設けられ、第1エアシリンダ23A、23Bは一対のローラ25A、25Bを互いに接離させる。そして、一対のローラ25A、25Bは、互いに近づいて互いの間に電線1を挟む。
【0063】
また、一対のローラ25A、25Bは、図5及び図6に示すように、前述のように電線1を挟んだ状態で第2エアシリンダ24A、24Bがロッド24dを縮めることで電線1の長手方向Lに沿って移動し、電線1の外表面1aを拭き取る。即ち、第2エアシリンダ24A、24Bは、一対のローラ25A、25Bを電線1の長手方向Lに沿って移動させる。なお、このとき、電線1は、電線竿6の電線クリップ62に挟まれて保持されているので、当該電線1の長手方向Lに移動することはない。
【0064】
また、ローラ25A、25Bの電線1を挟む外周面には、図7に示すように、全周に亘って、布製や紙製のウェス27が取り外し自在に取り付けられている。ウェス27は、一対のローラ25A、25Bが互いの間に電線1を挟むと電線1の外表面1aに密着し、一対のローラ25A、25Bが電線1の長手方向Lに移動すると電線1の外表面1aを拭き取って、電線1の外表面1aに析出した酸化防止剤を除去する。
【0065】
なお、ウェス27の電線1への密着度合いは、第1エアシリンダ23A、23Bに供給する加圧気体の圧力を調節することによって適宜変更が可能である。本実施形態において前記密着度合いは、ローラ25A、25Bが弾性変形してウェス27が電線1の外表面1a全周に亘って密着し、電線1の外表面1aを全周に亘って拭き取ることができるように設定されている。また、前記密着度合いは、拭き取った後の電線1の外表面1aの表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように設定されている。
【0066】
制御部26は、周知のRAM、ROM、CPU等を備えたコンピュータである。制御部26は、第1エアシリンダ23A、23B及び一対の第2エアシリンダ24A、24Bと接続している。制御部26は、搬送装置42に搬送された電線1が一対のローラ25A、25B間に位置付けられると、第1エアシリンダ23Aにロッド23dを縮める信号を出力し、かつ第1エアシリンダ23Bにロッド23dを伸長させる信号を出力して、一対のローラ25A、25B間に電線1を挟む。次いで、制御部26は、第2エアシリンダ24A、24Bにロッド24dを縮める信号を出力し、互いの間に電線1を挟んだ一対のローラ25A、25Bを移動させて電線1の外表面1aを拭き取る。このように、制御部26は、互いの間に電線1を挟んだ一対のローラ25A、25Bを電線1の長手方向Lに沿って移動させるように、第1エアシリンダ23A、23B及び第2エアシリンダ24A、24Bを制御する。
【0067】
その後、制御部26は、電線1の外表面1aを拭き取った後に、第1エアシリンダ23Aにロッド23dを伸長させる信号を出力し、かつ第1エアシリンダ23Bにロッド23dを縮める信号を出力して、一対のローラ25A、25Bを互いに遠ざける。次いで、制御部26は、第2エアシリンダ24A、24Bにロッド24dを伸長させる信号を出力し、一対のローラ25A、25Bを電線竿6側に突出させる。
【0068】
なお、拭き取り装置2が所定時間稼働した後に、ローラ25A、25Bをその中心軸周りに所定角度回転させた後に再び固定することで、ウェス27の電線1と密着する面を変更でき、ウェス27の酸化防止剤の付着していない部分で電線1を拭き取ることができる。また、ウェス27は取り外し自在にローラ25A、25Bに取り付けられているので、ウェス27の全面に酸化防止剤が付着した後には、ウェス27を未使用のウェス27と取り替えることができる。
【0069】
前述した拭き取り装置2を用いて電線1の外表面1aを拭き取る際には、まず、制御部26が第1エアシリンダ23A、23B及び第2エアシリンダ24A、24Bに信号を出力して、第1エアシリンダ23Aのロッド23dを伸長させかつ第1エアシリンダ23Bのロッド23dを縮めて一対のローラ25A、25Bを互いに遠ざけておき、第2エアシリンダ24A、24Bのロッド24dを伸長させてローラ25A、25Bを電線竿6側に突出させておく。
【0070】
そして、電線切断工程P1を経て電線作成装置41から電線竿6が搬送され、一対のローラ25A、25B間に電線竿6に保持された電線1が位置付けられて搬送装置42が停止すると、制御部26が第1エアシリンダ23A、23Bに信号を出力して第1エアシリンダ23Aのロッド23dを縮めかつ第1エアシリンダ23Bのロッド23dを伸長させて一対のローラ25A、25B間に電線1を挟む。次いで、制御部26が第2エアシリンダ24A、24Bに信号を出力してローラ25A、25B間に電線1を挟んだ状態で第2エアシリンダ24A、24Bのロッド24dを縮めてローラ25A、25Bを電線1の長手方向Lに沿って移動させ、ウェス27を電線1の外表面1a上を摺動させて電線1の外表面1aを拭き取る。
【0071】
その後、制御部26は再び第1エアシリンダ23Aのロッド23dを伸長させかつ第1エアシリンダ23Bのロッド23dを縮めて一対のローラ25A、25Bを互いに遠ざけ、搬送装置42が電線竿6に保持された電線1を着色装置5に搬送する。また、制御部26は、第2エアシリンダ24A、24Bのロッド24dを伸長させてローラ25A、25Bを電線竿6側に突出させる。以上を繰り返して、電線1の外表面1aを拭き取っていく。こうして拭き取り工程P2を行った後に、着色工程P3、端子圧着工程P4を順次行っていく。
【0072】
本実施形態によれば、電線1の外表面1aの表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下とされているので、電線1の外表面1aに着色材を滴射すると、着色材は滲むことなくかつ弾かれることなく電線1の外表面1aに付着する。このため、被覆部12上での着色材の広がり方が安定する。したがって、印13の視認性や意匠性を向上させることができる。
【0073】
また、拭き取り装置2によって電線1の外表面1aを拭き取ることで、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下にしている。このため、例えば従来例の被覆部12及び着色材に官能基を導入する方法と比較して、様々な種類の電線1に簡単に適用可能である。
【0074】
また、互いの間に電線1を挟んだ一対の挟持部材が電線1の長手方向Lに沿って移動することで、電線1の外表面1aを全周に亘って確実に拭き取ることができる。
【0075】
(実施例1)
次に、本発明の発明者らは、前述した拭き取り装置2の第1エアシリンダ23A、23Bに供給する加圧気体の圧力を適宜変更して、様々な表面張力γの電線1を作成した。そして、これら電線1を前述した着色装置5を用いて着色した際の印13の幅W(着色材の滲み度合い)を測定した。測定結果を図8に示す。
【0076】
なお、電線1の表面張力γの測定は、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を用いて、JIS K6768に準拠して行った。また、被覆部12を構成するポリオレフィン系樹脂組成物は、ベース部材をポリプロピレン系樹脂(住友ノーブレンU501E1(プロピレン単独重合体)、住友化学工業社製)、酸化防止剤をイルガノックス1010(チバ・ジャパン社製)、銅害防止剤をIrganoxMD1024(チバ・ジャパン社製)とした。また、着色材は、染料を溶媒としてのアセトンに溶解させたものとした。
【0077】
前述のように、着色材の滲みが全くない場合、前記幅広部分の間隔Tは1.0mmとされ、前記幅広部分の幅Wは2.6mmとされている。このため、着色材の滲みによって幅Wが3.5mmを超えると間隔Tが0.1mm(1.0mm−(3.5mm−2.6mm)/2×2)よりも小さくなり、2つの印13が近づきすぎてこれら印13の視認性が低下する。そこで、幅Wが2.6mm以上でかつ3.5mm以下の場合を着色材の滲みがないものと見なす。
【0078】
図8に示すように、表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下のときは幅Wが3.5mm以下となり、拭き取り装置2によって着色材の滲みを防止することができた。また、表面張力γが35mN/mより大きいと滲みが大きく幅Wが3.5mmを超えて印13の視認性が低下し、表面張力γが20mN/mより小さいと着色材が十分に被覆部12に付着しなかった(目視によって確認。図8中では幅Wを0と表記している)。
【0079】
次に、本発明の第2の実施形態にかかる電線の加工装置としての加熱装置3を図9ないし図12を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0080】
本発明の発明者らは、製造後の電線1を長期間(半年〜1年程度)放置すると、前述した酸化防止剤と銅害防止剤の双方が程よく析出し、電線1の外表面1aが着色材を滲ませることなくかつ弾かない良好な状態となることを確認した。この良好な状態とは、電線1の外表面1aの表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下になっている状態である。そこで、本実施形態においては、電線1を長期間放置するかわりに加熱装置3で加熱することで、時間経過(エイジング)を早めて酸化防止剤と銅害防止剤の双方を析出させ、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下としている。
【0081】
本実施形態のワイヤハーネス製造システムは、図9に示すように、加熱工程P0と、電線切断工程P1と、着色工程P3と、端子圧着工程P4等を備えている。加熱工程P0と電線切断工程P1と着色工程P3と端子圧着工程P4は、この順で順次行われる。
【0082】
加熱工程P0では、リール10に巻き付けられた長尺でかつ着色されていない(印13が形成されていない)電線1を加熱し、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下にする。加熱工程P0は、図10に示す加熱装置3を備えている。
【0083】
加熱装置3は、図10に示すように、電線作成装置41の近傍に設けられている。加熱装置3は、図11に示すように、加熱部(加熱手段に相当する)31を備えている。加熱部31は、棚部32と、ヒータ33とを備えている。棚部32は、互いに等しい長方形板状に形成された底板32a、二枚の中板32b及び上板32cと、これら底板32a、中板32b及び上板32cを支持する支柱32dとを備え、3段の棚状に形成されている。
【0084】
底板32aは、工場等のフロアに重ねられる。中板32bは、底板32aの上方に配され、水平方向に沿って配されている。二枚の中板32bは、互いに間隔をあけて配され、一方の中板32bは、他方の中板32bの上方に配されている。上板32cは、一方の中板32bの上方に配され、水平方向に沿って配されている。これら底板32a、二枚の中板32b及び上板32cは、互いに等間隔をあけて配されている。支柱32dは、底板32aの各角部分からそれぞれ鉛直方向に沿って延設され、二枚の中板32b及び上板32cの対応する角部分に連なっている。
【0085】
本実施形態においては、底板32a、中板32b及び上板32cの長手方向の長さは180cmとされ、短手方向の長さは71cmとされ、底板32a、中板32b及び上板32cの各間隔は60cmとされている。このような寸法の棚部32は、底板32a及び二枚の中板32b上に各々60束のリール10を収容可能であり、全体で180束のリール10を収容可能である。
【0086】
ヒータ33は、中板32b及び上板32cの下面に取り付けられている。ヒータ33は、光加熱式のハロゲンヒータ33とされている。なお、ヒータ33は、遠赤外線、近赤外線や電熱線式の温風ヒータ33、セラミックヒータ33等の周知のヒータ33を用いてもよい。
【0087】
前述した加熱部31は、電線作成装置41に切断される前のリール10に巻き付けられた電線1を棚部32内に収容し、ヒータ33で棚部32内即ち当該棚部32内に収容された電線1を加熱する。電線1を加熱する温度(加熱された電線1の温度)は、被覆部12を構成するポリオレフィン系樹脂組成物の耐熱温度以下で、かつ銅害防止剤が電線1の外表面1aに析出しやすい温度とされている。
【0088】
電線1を加熱する温度としては、好ましくは60℃以上でかつ80℃以下であり、さらに好ましくは60℃以上でかつ70℃以下である。前記温度が70℃を超えると、電線1を熱劣化させる虞がある。また、前記温度が60℃未満であると、銅害防止剤が析出するのに時間がかかるので加熱時間を長くしなければならない。本実施形態においては、電線1を加熱する温度は60℃とされている。
【0089】
また、電線1を加熱する時間は、銅害防止剤が電線1の外表面1aに「適量」析出する時間とされている。この「適量」とは、電線1の外表面1aの表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下となる量を示している。電線1を加熱する時間としては、電線1を加熱する温度が60℃の場合、3時間以上でかつ50時間以下が好ましい。前記時間が50時間を超えると、電線1を熱劣化させる虞があるとともに、銅害防止剤が前記適量よりも多く析出して着色材を弾く虞がある。また、前記時間が3時間未満であると、銅害防止剤が前記適量よりも少なく析出して着色材が滲む虞がある。
【0090】
以上のように、一例として、電線1を加熱する温度を60℃とし、かつ電線1を加熱する時間を3時間以上でかつ50時間以下とすることで、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下とすることができる。
【0091】
このような電線1の加熱は、被覆部12がポリオレフィン系樹脂組成物で構成された電線1において特に有効である。被覆部12がポリ塩化ビニル系樹脂組成物で構成された電線(以下、PVC電線という)は、着色材が被覆部12に浸透しやすく、ポリオレフィン系樹脂組成物のように加熱しなくてもよい。このため、棚部32内には、基本的に電線1とPVC電線が混在することはない(別の棚部に収容したり、棚部32の別の段に収容する)。しかし、例えば同じ棚部32の一つの段に電線1とPVC電線を混在させて収容しても勿論よく、電線1とPVC電線とが混在した場合であっても、通常各リール10には電線1の品種、サイズや製造年月日等を示す認識札が取り付けられているのでリール10毎に容易に区別ができる。
【0092】
前述した加熱装置3を用いて電線1を加熱する際には、まず、作業者が電線作成装置41に切断される前のリール10に巻き付けられた電線1を棚部32内に収容する。そして、前述のように所定温度でかつ所定時間加熱した後に、作業者がリール10を棚部32内から取り出して電線作成装置41にセットする。このように、加熱工程P0を行った後に、前述のように電線切断工程P1、着色工程P3、端子圧着工程P4を順次行っていく。
【0093】
本実施形態によれば、加熱装置3によって電線1を加熱することで電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下にすることができるので、電線1の外表面1aに着色材を滴射すると、着色材は滲むことなくかつ弾かれることなく電線1の外表面1aに付着する。このため、被覆部12上での着色材の広がり方が安定する。したがって、印13の視認性や意匠性を向上させることができる。
【0094】
さらに、拭き取り装置2で電線1の外表面1aを拭き取る場合と比較すると、以下のような利点がる。まず、加熱装置3という拭き取り装置2よりも簡単な構造の装置を設けるだけでよいので、設備費を低減できる。また、ウェス27の交換が不要になるのでメンテナンスが容易になり、ウェス27の交換作業のために製造ラインを停止させる必要がなくなって製造効率を改善できる。また、拭き取り装置2で拭き取る際に想定される拭きムラが生じないので、電線1の外表面1aの表面張力γをより均一に20mN/m以上でかつ35mN/m以下にすることができる。
【0095】
(実施例2)
次に、本発明者らは、前述した加熱装置3の電線1を加熱する温度を60℃とし、電線1を加熱する時間を適宜変更して、様々な表面張力γの電線1を作成した。そして、これら電線1を前述した着色装置5を用いて着色した際の着色の滲み度合い(印13の大きさ)を測定した。測定結果を図12に示す。なお、電線1の表面張力γの測定、被覆部12を構成するポリオレフィン系樹脂組成物、着色材は、実施例1と同様とした。
【0096】
図12に示すように、加熱する時間を3時間以上でかつ50時間以下とすると電線1の表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下となった。また、加熱する時間が50時間を超えると表面張力γが20mN/mよりも小さくなり、加熱する時間が3時間未満であると表面張力γが35mN/mよりも大きくなった。
【0097】
また、図示しないが、表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下のときは印13の幅広部分の幅Wが3.5mm以下となり、加熱装置3によって着色材の滲みを防止することができた。また、表面張力γが35mN/mより大きいと滲みが大きく幅Wが3.5mmを超えて印13の視認性が低下し、表面張力γが20mN/mより小さいと着色材が十分に被覆部12に付着しなかった(目視によって確認)。
【0098】
前述した実施形態においては、加熱部31のヒータ33が棚部32の中板32b及び上板32cの下面に取り付けられていた。しかしながら本発明では、棚部32の開放された側面や背面を塞ぐ側板や背板を設け、これら側板や背板にヒータ33を取り付けてもよい。また、棚部32の側面や背面を前記側板や背板またはビニールシート等で覆い、かつ棚部32の前面をビニールシート等で覆って棚部32内を略密閉された空間としてもよい。また、特にこの場合、ヒータ33のかわりに、密閉された棚部32内に加熱された気体を供給する(温風を吹き込む)温風吹き込み部を設けて、棚部32内即ち電線1を加熱してもよい。
【0099】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 電線
1a 外表面
2 拭き取り装置(電線の加工装置)
3 加熱装置(電線の加工装置)
11 芯線
12 被覆部
20 拭き取り部(拭き取り手段)
23A、23B 第1エアシリンダ(第1移動手段)
24A、24B 第2エアシリンダ(第2移動手段)
25A、25B ローラ(挟持部材)
26 制御部(制御手段)
31 加熱部(加熱手段)
L 電線の長手方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ芯線を被覆する絶縁性の被覆部とを備えた電線、電線の加工方法及び電線の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車等には、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車等は、前記電子機器にバッテリ等の電源からの電力やコンピュータ等からの制御信号等を伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、これら電線の端部等に取り付けられたコネクタとを備えている。
【0003】
電線は、所謂被覆電線であり、導電性の芯線と、芯線を被覆する絶縁性の被覆部とを備えている。被覆部は、電線の後述する使用目的等によって様々な種類の樹脂組成物で構成されている。前記樹脂組成物は、ベース樹脂と、ベース樹脂に添加される添加剤とを含有している。ベース樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂やポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤や銅害防止剤等が挙げられる。
【0004】
前述した酸化防止剤は、電線が押出成形によって製造された直後から、被覆部の外表面、即ち電線の外表面にごく薄い(目視不可能な程度の)膜状に析出し、被覆部の酸化による劣化を防止している。また、銅害防止剤は、電線の芯線の影響による被覆部の劣化を防止しているが、電線が押出成形によって製造された後に経時的に徐々に電線の外表面に析出する。その他の添加剤についても、経時的に徐々に電線の外表面に析出してくる。
【0005】
ところで、前述したワイヤハーネスの電線は、芯線の太さ、被覆部の材質(耐熱性の有無等)や使用目的等を識別する必要がある。使用目的とは、例えば、エアバック、ABS(Antilock Brake System)や車速情報等の制御信号や動力伝達系統等の、電線が用いられる自動車の系統(システム)である。
【0006】
そこで、電線の外表面には、前述した使用目的等を識別するために、印(着色意匠)が形成されている。印は、製造後の電線の外表面を着色することで形成される。このような電線の着色は、例えば、電線の着色装置(例えば、特許文献1参照)を用いて、着色材を電線の外表面に向かって滴射(滴下)して行われる。着色材とは、溶媒中に、染料が溶解または分散しているものや、顔料が分散しているものである。
【0007】
ところが、前述のように、電線の外表面には酸化防止剤や銅害防止剤等の添加剤が析出する。このため、着色材の溶媒に対する相溶性の高い添加剤が析出していると、被覆部上に滴射(滴下)された着色材が滲んで印が広がってしまい、印の視認性や意匠性が低下するといった問題があった。さらに、電線の種類によって添加剤の種類や含有量が異なったり、また同種の電線であっても製造ロットや保管状態が異なったりすると、添加剤の析出量等が異なってしまい、着色材の広がり方にばらつきがあるといった問題があった。また、逆に、着色材の溶媒に対する相溶性の低い添加剤が析出していると、被覆部上の着色材が弾かれてしまい着色しづらくなるといった問題があった。
【0008】
また、例えば樹脂組成物のベース樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂の場合、着色材が浸透しやすいので問題はない。しかし、近年、環境問題に配慮して、ベース樹脂をポリオレフィン系樹脂としたハロゲンフリー樹脂組成物が多用されている。そして、ベース樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合、着色材が浸透しにくく、着色材の広がり方のばらつき度合いが大きくなり、印の視認性や意匠性が低下するといった問題があった。
【0009】
そこで、特許文献2及び3に記載された方法を適用することが考えられる。特許文献2及び3には、撥水性及び撥油性が高いフッ素系樹脂において、着色塗料(着色材)や機能性塗料等の塗料を被覆部上に確実に保持するために、フッ素系樹脂と塗料の双方に互いに反応する官能基を導入し、加熱することでこれら官能基の反応を進行させて、フッ素系樹脂に塗料を確実に付着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−346939号公報
【特許文献2】特開2006−328344号公報
【特許文献3】特開2007−84780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2及び3に記載された方法を適用するには、ポリオレフィン系樹脂と着色材の双方に互いに反応する官能基を導入しなければならず、大変な手間がかかるといった問題があった。
【0012】
本発明は、このような問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、簡単に被覆部上での着色材の広がりや広がり方のばらつきを抑え、着色意匠の視認性や意匠性を向上させることができる電線、電線の加工方法及び電線の加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線において、前記被覆部の外表面の表面張力が、20mN/m以上でかつ35mN/m以下とされたことを特徴とした電線である。
【0014】
請求項2に記載された発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工方法において、前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記被覆部の前記外表面を拭き取ることを特徴とした電線の加工方法である。
【0015】
請求項3に記載された発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工装置において、前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記被覆部の前記外表面を拭き取る拭き取り手段を備えたことを特徴とした電線の加工装置である。
【0016】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された電線の加工装置において、前記拭き取り手段が、互いに接離自在に設けられ、互いの間に前記電線を挟む一対の挟持部材と、前記一対の挟持部材のうち少なくとも一方の挟持部材を移動させて、前記一対の挟持部材を互いに接離させる第1移動手段と、前記一対の挟持部材を前記電線の長手方向に沿って移動させる第2移動手段と、互いの間に前記電線を挟んだ前記一対の挟持部材を前記電線の長手方向に沿って移動させるように前記第1移動手段及び前記第2移動手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とした電線の加工装置である。
【0017】
請求項5に記載された発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工方法において、前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記電線を加熱することを特徴とした電線の加工方法である。
【0018】
請求項6に記載された発明は、導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工装置において、前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記電線を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とした電線の加工装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下とされているので、被覆部の外表面に着色材を滴射すると、着色材は滲むことなくかつ弾かれることなく被覆部の外表面に付着する。このため、被覆部上での着色材の広がり方が安定する。したがって、着色意匠の視認性や意匠性を向上させることができる。
【0020】
請求項2及び3に記載された発明によれば、被覆部の外表面を拭き取ることで、簡単に被覆部の外表面の表面張力を20mN/m以上でかつ35mN/m以下にすることができる。そして、被覆部の外表面の表面張力を20mN/m以上でかつ35mN/m以下とすることで、被覆部の外表面に着色材を滴射すると、着色材は滲むことなくかつ弾かれることなく被覆部の外表面に付着する。このため、被覆部上での着色材の広がり方が安定する。したがって、着色意匠の視認性や意匠性を向上させることができる。
【0021】
請求項4に記載された発明によれば、互いの間に電線を挟んだ一対の挟持部材が電線の長手方向に沿って移動することで、被覆部の外表面を確実に拭き取ることができる。
【0022】
請求項5及び6に記載された発明によれば、電線を加熱することで、簡単に被覆部の外表面の表面張力を20mN/m以上でかつ35mN/m以下にすることができる。そして、被覆部の外表面の表面張力を20mN/m以上でかつ35mN/m以下とすることで、被覆部の外表面に着色材を滴射すると、着色材は滲むことなくかつ弾かれることなく被覆部の外表面に付着する。このため、被覆部上での着色材の広がり方が安定する。したがって、着色意匠の視認性や意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)本発明の第1及び第2の実施形態にかかる電線の着色された状態を示す斜視図である。(b)(a)に示された電線の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる拭き取り装置を用いるワイヤハーネス製造システムの工程を説明する説明図である。
【図3】図2に示されたワイヤハーネス製造システムの各工程で用いられる装置を説明する説明図である。
【図4】図3に示された拭き取り装置の構成を説明する説明図である。
【図5】図4に示された一対のローラが電線を挟んだ状態を示す説明図である。
【図6】図5に示された一対のローラが電線の長手方向に沿って移動した状態を示す説明図である。
【図7】図5に示された拭き取り装置の要部を拡大して示す説明図である。
【図8】図4に示された拭き取り装置を用いて表面張力を変化させた電線を着色した際の印の幅の変化を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる加熱装置を用いるワイヤハーネス製造システムの工程を説明する説明図である。
【図10】図9に示されたワイヤハーネス製造システムの各工程で用いられる装置を説明する説明図である。
【図11】図10に示された加熱装置の加熱部を示す斜視図である。
【図12】図11に示された加熱部による電線の加熱時間を変化させた際の電線の表面張力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1の実施形態にかかる電線1、及び電線の加工装置としての拭き取り装置2を図1ないし図8を参照して説明する。図1に示す本発明の第1の実施形態にかかる電線1は、当該電線1の外表面1aに着色材を付着させて外表面1aを着色するための(即ち着色用の)ものである。
【0025】
電線1は、所謂被覆電線であり、押出成形によって製造される。電線1は、図1(a)に示すように、導電性の芯線11と、芯線11を被覆する絶縁性の被覆部12とを備えている。芯線11は、複数の素線11aが撚られて形成されている。素線11aは、例えば、銅等の導電性の金属材料で構成されている。なお、芯線11は、一本の素線11aから構成されていてもよい。
【0026】
被覆部12は、絶縁性の合成樹脂で構成され、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されている。被覆部12は、芯線11を被覆している。このため、被覆部12の外表面は電線1の外表面1aをなしており、被覆部12の外表面は電線1の外表面1aに相当する。電線1の端部では、被覆部12が皮剥きされて除去され、芯線11が露出する。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂組成物は、ベース樹脂としてのポリオレフィン系樹脂と、添加剤としての酸化防止剤と、添加剤としての銅害防止剤とを含有している。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。なお、ベース樹脂は、これらのみに限定されるものではなく、これら以外のポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0028】
酸化防止剤としては、商品名 Irganox1010(チバ・ジャパン社製)、商品名 アデカスタブAOシリーズ(ADEKA社製)等が挙げられる。銅害防止剤としては、商品名 IrganoxMD1024(チバ・ジャパン社製)、商品名 アデカスタブCDAシリーズ(ADEKA社製)等が挙げられる。なお、酸化防止剤及び銅害防止剤は、各々、一種類を使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。また、添加剤は、これらのみに限定されるものではなく、これら以外の添加剤であってもよい。
【0029】
先に例示した酸化防止剤の融点は、電線1を製造する際の押出成形時の温度(約200℃)よりも低くなっている。そして、前記酸化防止剤は、電線1が製造された直後から、電線1の外表面1a全体に極僅かに(目視不可能な程度に)析出する。また、先に例示した銅害防止剤の融点は、前記酸化防止剤の融点よりも高くなっている。そして、前記銅害防止剤は、電線1が製造された後に経時的に徐々に電線1の外表面1aに析出する。
【0030】
さらに、前記酸化防止剤の後述する着色材の溶媒(本実施形態においてはアセトン)に対する相溶性は、前記銅害防止剤の前記相溶性よりも高くなっている。また、前記酸化防止剤の前記相溶性は、電線1の外表面1aに付着した着色材を滲ませる程度に高くなっている。また、前記銅害防止剤の前記相溶性は、電線1の外表面1aに滴射(滴下)された着色材を弾く程度に低くなっている。
【0031】
このため、電線1の外表面1aに析出した前記酸化防止剤によって、製造直後の電線1の外表面1aの表面張力γは、付着した着色材を滲ませる程度に大きくなっている。したがって、製造直後の電線1を着色すると、酸化防止剤によって着色材が滲んで、所望の形状よりも広がってしまうことになる。
【0032】
そこで、本実施形態においては、電線1の外表面1aを拭き取り装置2を用いて拭き取ることで析出した前記酸化防止剤を除去し、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下としている。表面張力γが35mN/mより大きい(酸化防止剤の除去が十分でない)と、着色材が滲んでしまう虞がある。また、表面張力γが20mN/mより小さい(酸化防止剤を除去しすぎる)と、被覆部12を構成するポリオレフィン系樹脂組成物の極性が低いので、着色材が弾かれてしまう虞がある。電線1の外表面1aの表面張力γは、例えば市販のぬれ張力(表面張力)試験用混合液を用いて、JIS K6768に準拠した測定方法によって測定される値である。
【0033】
なお、使用する酸化防止剤、銅害防止剤や着色材の溶媒の種類によっては、酸化防止剤が着色材を弾き、銅害防止剤が着色材を滲ませることも考えられる。また、例えば酸化防止剤を2種類使用し、一方の酸化防止剤が着色材を弾き、他方の酸化防止剤が着色材を滲ませることも考えられる。さらには、酸化防止剤や銅害防止剤以外の添加剤と着色材の溶媒の相溶性によって、着色材が滲んだり弾かれたりすることも考えられる。これらの場合であっても、本実施形態においては、着色前の電線1の外表面1aを拭き取って当該電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下とするので、析出した添加剤の種類によらず、確実に着色材が滲んだり弾かれたりすることを防止できる。
【0034】
また、被覆部12は、単色Nとされている。被覆部12は、ポリオレフィン系樹脂組成物に添加剤として所望の着色剤を含有させて単色Nとしてもよいし、着色剤を含有させることなくポリオレフィン系樹脂組成物自体の色を単色Nとしてもよい。そして、この電線1の外表面1aを着色して、電線1の外表面1aに、例えば図1に示すような着色意匠としての印13を形成する。
【0035】
印13は、電線1の外表面1aの全周に亘ったリング状(あるいは図1中で下方部分が途切れたC字状)に形成され、互いに間隔をあけて複数(図示例では2つ)設けられている。複数の印13は、単色Nと異なる色A(図1中、平行斜線で示す)で形成されている。また、印13は、図1中で上方に配される後述する着色ノズル51(図1中には図示しない)から着色材が滴射され、当該着色材が外表面1aを伝って図1中で下方に垂れて形成される。このため、印13は、図1中で上方側が幅広に形成され、図1中で下方側が幅狭に形成される。
【0036】
そして、前述のように着色材が滲むと、隣り合う印13の幅広部分の間隔Tが狭くなってしまい、印13の視認性や意匠性が低下する虞がある。なお、本実施形態においては、着色材の滲みが全くない場合、前記幅広部分の間隔Tは1.0mmとされ、前記幅広部分の幅(意匠幅)Wは2.6mmとされている。
【0037】
前述した印13の色や個数等を種々に変更することにより、電線1同士を識別可能としている。印13の色や個数等は、ワイヤハーネスの電線1の線種、使用される系統(システム)の識別等を行う際の目印となる。このように、電線1の印13は、ワイヤハーネスの各電線1の使用用途を識別するために用いられる。
【0038】
前述した電線1は、リール10に巻き付けられた長尺なものが所定の長さで切断され、切断された端部近傍の外表面1aが拭き取られた後に着色され、前記端部が皮剥きされて端子金具が圧着される。その後、前記端子金具がコネクタハウジング内に挿入されて、電線1の端部にコネクタが取り付けられる。そして、電線1が複数束ねられて、ワイヤハーネスが製造される。こうして製造されたワイヤハーネスは、コネクタが自動車等の各種の電子機器のコネクタと結合して、各電子機器に各種の信号や電力を伝える。
【0039】
前述したワイヤハーネスを製造するワイヤハーネス製造システムは、図2に示すように、電線切断工程P1と、拭き取り工程P2と、着色工程P3と、端子圧着工程P4等を備えている。電線切断工程P1と拭き取り工程P2と着色工程P3と端子圧着工程P4は、この順で順次行われる。
【0040】
電線切断工程P1では、電線選択、測長、切断等を行う。電線切断工程P1は、図3に示す電線作成装置41を備えている。電線作成装置41は、リール10に巻き付けられた長尺でかつ着色されていない(印13が形成されていない)電線1を所定の長さに切断して定尺の電線1を作成し、当該電線1を前述した各工程に供される電線竿6にU字状にして電線1の各端部を係止する。
【0041】
電線竿6は、長尺な竿本体61と、竿本体61に設けられた複数の電線クリップ62とを備えている。複数の電線クリップ62は、互いに間隔をあけて一方向に沿って並設されている。電線クリップ62は、互いの間に電線1を挟み込む一対の挟持子を備えている。
【0042】
前述した電線作成装置41は、Uターン旋回ヘッドを用いて電線1の先端部をU字状に折り曲げた状態で、電線1の両端部寄りの部分を一対の挟持子即ち電線クリップ62に挟持させる。電線竿6は、複数の工程に亘って設けられた後述する搬送装置42によって、拭き取り工程P2に搬送される。本実施形態における電線竿6は、電線1の端部から30mmの部分を電線クリップ62で保持している。また、電線クリップ62は、20mm間隔で設けられ、隣り合う電線1間の間隔は20mmとされている。
【0043】
搬送装置42は、前述した複数の工程に亘って循環するベルトや鎖等の搬送帯と、当該搬送帯を駆動する駆動モータと、当該駆動モータの駆動を制御する制御部とを備えている。電線竿6は、制御部の制御による駆動モータの駆動に応じて、各工程に搬送される。また、本実施形態における制御部は、後述する端子圧着機43の圧着する周期に応じて間欠的に駆動モータを駆動させることで、複数の電線1を間欠的に搬送させている。
【0044】
拭き取り工程P2では、電線切断工程P1から搬送される電線竿6に保持された電線1の両端部の外表面1aを拭き取って、電線1の外表面1aから当該外表面1aに析出した酸化防止剤を除去し、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下とする。拭き取り工程P2は、後述する本発明の拭き取り装置2を備えている。
【0045】
着色工程P3では、拭き取り工程P2から搬送される電線竿6に保持された電線1の拭き取られた外表面1aに着色材を付着させ、電線1の外表面1aに前述した印13を形成する。着色工程P3は、図3に示す着色装置5を備えている。
【0046】
着色装置5は、複数の着色ノズル51と、複数の弁52と、着色材供給源53と、加圧気体供給源54と、制御部55等を備えている。着色ノズル51は、それぞれ筒状に形成され、電線1の長手方向L(図3等で矢印Lで示す)に沿って並んでいる。なお、電線1の長手方向Lは、搬送装置42が電線竿6を搬送する方向M(図3等で矢印Mで示す)と直交する方向である。各着色ノズル51は、先端が電線1の外表面1aと相対している。弁52は、各着色ノズル51に設けられ、着色ノズル51と連結されている。弁52は、制御部55と接続されている。
【0047】
着色材供給源53は、各弁52と連結されている。着色材供給源53は、内部に着色材を収容し、着色ノズル51に着色材を供給する。加圧気体供給源54は、着色材供給源53に連結し、着色材供給源53に加圧気体を供給する。なお、図3においては、複数の着色ノズル51が各々弁52を介して1つの着色材供給源53に連結されているが、それぞれ異なる(色の着色材を収容した)着色材供給源53に連結されていても勿論よい。
【0048】
前述した着色装置5は、制御部55からの信号によって弁52を予め定められた時間開き、加圧気体供給源54から供給される加圧気体によって着色材供給源53から着色ノズル51内に着色材を供給し、この着色材を電線1の外表面1aに向かって滴射する。また、着色装置5は、制御部55からの信号によって弁52を閉じて、着色材の滴射を止める。こうして、着色装置5は、電線1の外表面1aに着色材を付着させて印13を形成し、電線1の外表面1aを着色する。
【0049】
前述した着色材とは、色材(工業用有機物質)が溶媒に溶解、分散した液状物質である。色材としては、染料、顔料(大部分は有機物であり、合成品)があり、時には染料が顔料として、顔料が染料として用いられることがある。より具体的な例として、着色材とは、着色液または塗料である。
【0050】
着色液とは、溶媒中に染料が溶解しているものまたは分散しているものを示しており、塗料とは、分散液中に顔料が分散しているものを示している。このため、着色液が電線1の外表面1aに付着すると染料が被覆部12内に染み込み、塗料が電線1の外表面1aに付着すると顔料が被覆部12内に染み込むことなく外表面1aに接着する。即ち、着色装置5は、電線1の外表面1aの一部を染料で染める、または、電線1の外表面1aに顔料を塗る。このため、電線1の外表面1aを着色するとは、電線1の外表面1aの一部を染料で染める(染色する)ことと、電線1の外表面1aの一部に顔料を塗ることを示している。
【0051】
また、前述した溶媒と分散液は、被覆部12を構成する樹脂組成物と親和性のあるものが望ましい。この場合、染料が被覆部12内に確実に染み込み、顔料が電線1の外表面1aに確実に接着する。本実施形態においては、着色材として前述した着色液を用い、溶媒としてアセトンを用いている。
【0052】
端子圧着工程P4では、皮剥き・仕分け・アプリケータ段取り・圧着・検査・マジック付け(マーキング等)を行う。即ち、まず電線1の端部の皮剥きを行った後、端子金具の種類毎に電線1を仕分けする。アプリケータ段取りは、後述する端子圧着機43のアプリケータを端子金具の種類に応じて載せ換えたり、圧着高さを調整したりすることである。アプリケータは、圧着具としての昇降式の上型(クリンパ)と固定式の下型(アンビル)とを備えている。電線1の端部に端子金具を圧着した後、圧着状態を目視やテレビカメラ等で検査し、端子金具をコネクタハウジングに挿入する際の識別のためにマジックインクで端子金具に識別印をつける。端子圧着工程P4は、図3に示す端子圧着機43を備えている。
【0053】
端子圧着機43は、それぞれ異なる端子金具を圧着するもので、装置自体の構成は既知である。端子圧着機43は、着色工程P3から搬送される電線竿6に保持された電線1に、前述した圧着具を用いて端子金具を圧着する。
【0054】
以下、拭き取り装置2について説明する。拭き取り装置2は、図4等に示すように、台部21と、可動部22と、台部21に取り付けられた一対の第1エアシリンダ(第1移動手段に相当する)23A、23Bと、可動部22と第1エアシリンダ23Bに各々取り付けられた一対の第2エアシリンダ(第2移動手段に相当する)24A、24Bと、各第2エアシリンダ24A、24Bに取り付けられたローラ(挟持部材に相当する)25A、25Bと、制御部(制御手段に相当する)26とを備えている。第1エアシリンダ23A、23Bと第2エアシリンダ24A、24Bとローラ25A、25Bと制御部26とは、拭き取り部(拭き取り手段に相当する)20を構成する。
【0055】
台部21は、箱状に形成され、工場等のフロアに設置される。台部21の上面は、水平方向に平坦に形成されている。可動部22は、肉厚板状に形成され、水平方向に沿って配されている。可動部22は、台部21の上方に配され、第1エアシリンダ23Aを介して台部21に取り付けられている。
【0056】
第1エアシリンダ23A、23Bは、各々、シリンダ本体23cと、シリンダ本体23cから伸縮自在なロッド23dとを備えている。各シリンダ本体23cは、鉛直方向に沿って配されて、台部21から立設している。各ロッド23dは、シリンダ本体23cの上端から上方に伸長しかつ下方に縮む。
【0057】
一方の第1エアシリンダ23Aのロッド23dの先端には、可動部22が取り付けられている。一方の第1エアシリンダ23Aは、ロッド23dを伸縮させることで可動部22を鉛直方向に沿って移動させ、可動部22を台部21に対して接離(近づいたり離れたりすること)自在にする。
【0058】
また、他方の第1エアシリンダ23Bのロッド23dの先端には、第2エアシリンダ24Bの後述するシリンダ本体24cが取り付けられている。他方の第1エアシリンダ23Bは、ロッド23dを伸縮させることで第2エアシリンダ24Bを鉛直方向に沿って移動させ、第2エアシリンダ24Bを台部21に対して接離自在にする。
【0059】
第2エアシリンダ24A、24Bは、各々、シリンダ本体24cと、シリンダ本体24cから伸縮自在なロッド24dとを備えている。一方の第2エアシリンダ24Aのシリンダ本体24cは可動部22に取り付けられ、他方の第2エアシリンダ24Bのシリンダ本体24cは第1エアシリンダ23Bのロッド23dに取り付けられている。各シリンダ本体24cは、水平方向に沿ってかつ互いに平行に配されているとともに、電線竿6に保持された電線1の長手方向Lと平行に配されている。
【0060】
ロッド24dは、シリンダ本体24cから電線竿6に向かって伸長しかつ電線竿6から離れる方向に縮む。第2エアシリンダ24A、24Bのロッド24dの先端には、各々、ローラ25A、25Bが取り付けられている。第2エアシリンダ24A、24Bは、ロッド24dを伸縮させることでローラ25A、25Bを電線1の長手方向Lに沿って移動させる。
【0061】
ローラ25A、25Bは、ゴムやエラストマー等の弾性材料で構成され、円盤状に形成されている。ローラ25A、25Bは、それぞれ、中心軸がロッド24dの中心軸と一致するようにロッド24dの先端に取り付けられている。ローラ25A、25Bは、各第2エアシリンダ24A、24Bのロッド24dに取り付けられて、一対設けられている。一方のローラ25Aは、第2エアシリンダ24Aを介して可動部22に取り付けられている。他方のローラ25Bは、第2エアシリンダ24B及び第1エアシリンダ23Bを介して台部21に取り付けられている。
【0062】
前述した一対のローラ25A、25Bは、図4及び図5に示すように、第1エアシリンダ23Aがロッド23dを伸縮させて可動部22を移動させて当該可動部22に第2エアシリンダ24Aを介して取り付けられた一方のローラ25Aを移動させ、かつ、第1エアシリンダ23Bがロッド23dを伸縮させて第2エアシリンダ24Bを移動させて当該第2エアシリンダ24Bに取り付けられた他方のローラ25Bを移動させることで、互いに接離する。このように、一対のローラ25A、25Bは互いに接離自在に設けられ、第1エアシリンダ23A、23Bは一対のローラ25A、25Bを互いに接離させる。そして、一対のローラ25A、25Bは、互いに近づいて互いの間に電線1を挟む。
【0063】
また、一対のローラ25A、25Bは、図5及び図6に示すように、前述のように電線1を挟んだ状態で第2エアシリンダ24A、24Bがロッド24dを縮めることで電線1の長手方向Lに沿って移動し、電線1の外表面1aを拭き取る。即ち、第2エアシリンダ24A、24Bは、一対のローラ25A、25Bを電線1の長手方向Lに沿って移動させる。なお、このとき、電線1は、電線竿6の電線クリップ62に挟まれて保持されているので、当該電線1の長手方向Lに移動することはない。
【0064】
また、ローラ25A、25Bの電線1を挟む外周面には、図7に示すように、全周に亘って、布製や紙製のウェス27が取り外し自在に取り付けられている。ウェス27は、一対のローラ25A、25Bが互いの間に電線1を挟むと電線1の外表面1aに密着し、一対のローラ25A、25Bが電線1の長手方向Lに移動すると電線1の外表面1aを拭き取って、電線1の外表面1aに析出した酸化防止剤を除去する。
【0065】
なお、ウェス27の電線1への密着度合いは、第1エアシリンダ23A、23Bに供給する加圧気体の圧力を調節することによって適宜変更が可能である。本実施形態において前記密着度合いは、ローラ25A、25Bが弾性変形してウェス27が電線1の外表面1a全周に亘って密着し、電線1の外表面1aを全周に亘って拭き取ることができるように設定されている。また、前記密着度合いは、拭き取った後の電線1の外表面1aの表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように設定されている。
【0066】
制御部26は、周知のRAM、ROM、CPU等を備えたコンピュータである。制御部26は、第1エアシリンダ23A、23B及び一対の第2エアシリンダ24A、24Bと接続している。制御部26は、搬送装置42に搬送された電線1が一対のローラ25A、25B間に位置付けられると、第1エアシリンダ23Aにロッド23dを縮める信号を出力し、かつ第1エアシリンダ23Bにロッド23dを伸長させる信号を出力して、一対のローラ25A、25B間に電線1を挟む。次いで、制御部26は、第2エアシリンダ24A、24Bにロッド24dを縮める信号を出力し、互いの間に電線1を挟んだ一対のローラ25A、25Bを移動させて電線1の外表面1aを拭き取る。このように、制御部26は、互いの間に電線1を挟んだ一対のローラ25A、25Bを電線1の長手方向Lに沿って移動させるように、第1エアシリンダ23A、23B及び第2エアシリンダ24A、24Bを制御する。
【0067】
その後、制御部26は、電線1の外表面1aを拭き取った後に、第1エアシリンダ23Aにロッド23dを伸長させる信号を出力し、かつ第1エアシリンダ23Bにロッド23dを縮める信号を出力して、一対のローラ25A、25Bを互いに遠ざける。次いで、制御部26は、第2エアシリンダ24A、24Bにロッド24dを伸長させる信号を出力し、一対のローラ25A、25Bを電線竿6側に突出させる。
【0068】
なお、拭き取り装置2が所定時間稼働した後に、ローラ25A、25Bをその中心軸周りに所定角度回転させた後に再び固定することで、ウェス27の電線1と密着する面を変更でき、ウェス27の酸化防止剤の付着していない部分で電線1を拭き取ることができる。また、ウェス27は取り外し自在にローラ25A、25Bに取り付けられているので、ウェス27の全面に酸化防止剤が付着した後には、ウェス27を未使用のウェス27と取り替えることができる。
【0069】
前述した拭き取り装置2を用いて電線1の外表面1aを拭き取る際には、まず、制御部26が第1エアシリンダ23A、23B及び第2エアシリンダ24A、24Bに信号を出力して、第1エアシリンダ23Aのロッド23dを伸長させかつ第1エアシリンダ23Bのロッド23dを縮めて一対のローラ25A、25Bを互いに遠ざけておき、第2エアシリンダ24A、24Bのロッド24dを伸長させてローラ25A、25Bを電線竿6側に突出させておく。
【0070】
そして、電線切断工程P1を経て電線作成装置41から電線竿6が搬送され、一対のローラ25A、25B間に電線竿6に保持された電線1が位置付けられて搬送装置42が停止すると、制御部26が第1エアシリンダ23A、23Bに信号を出力して第1エアシリンダ23Aのロッド23dを縮めかつ第1エアシリンダ23Bのロッド23dを伸長させて一対のローラ25A、25B間に電線1を挟む。次いで、制御部26が第2エアシリンダ24A、24Bに信号を出力してローラ25A、25B間に電線1を挟んだ状態で第2エアシリンダ24A、24Bのロッド24dを縮めてローラ25A、25Bを電線1の長手方向Lに沿って移動させ、ウェス27を電線1の外表面1a上を摺動させて電線1の外表面1aを拭き取る。
【0071】
その後、制御部26は再び第1エアシリンダ23Aのロッド23dを伸長させかつ第1エアシリンダ23Bのロッド23dを縮めて一対のローラ25A、25Bを互いに遠ざけ、搬送装置42が電線竿6に保持された電線1を着色装置5に搬送する。また、制御部26は、第2エアシリンダ24A、24Bのロッド24dを伸長させてローラ25A、25Bを電線竿6側に突出させる。以上を繰り返して、電線1の外表面1aを拭き取っていく。こうして拭き取り工程P2を行った後に、着色工程P3、端子圧着工程P4を順次行っていく。
【0072】
本実施形態によれば、電線1の外表面1aの表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下とされているので、電線1の外表面1aに着色材を滴射すると、着色材は滲むことなくかつ弾かれることなく電線1の外表面1aに付着する。このため、被覆部12上での着色材の広がり方が安定する。したがって、印13の視認性や意匠性を向上させることができる。
【0073】
また、拭き取り装置2によって電線1の外表面1aを拭き取ることで、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下にしている。このため、例えば従来例の被覆部12及び着色材に官能基を導入する方法と比較して、様々な種類の電線1に簡単に適用可能である。
【0074】
また、互いの間に電線1を挟んだ一対の挟持部材が電線1の長手方向Lに沿って移動することで、電線1の外表面1aを全周に亘って確実に拭き取ることができる。
【0075】
(実施例1)
次に、本発明の発明者らは、前述した拭き取り装置2の第1エアシリンダ23A、23Bに供給する加圧気体の圧力を適宜変更して、様々な表面張力γの電線1を作成した。そして、これら電線1を前述した着色装置5を用いて着色した際の印13の幅W(着色材の滲み度合い)を測定した。測定結果を図8に示す。
【0076】
なお、電線1の表面張力γの測定は、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を用いて、JIS K6768に準拠して行った。また、被覆部12を構成するポリオレフィン系樹脂組成物は、ベース部材をポリプロピレン系樹脂(住友ノーブレンU501E1(プロピレン単独重合体)、住友化学工業社製)、酸化防止剤をイルガノックス1010(チバ・ジャパン社製)、銅害防止剤をIrganoxMD1024(チバ・ジャパン社製)とした。また、着色材は、染料を溶媒としてのアセトンに溶解させたものとした。
【0077】
前述のように、着色材の滲みが全くない場合、前記幅広部分の間隔Tは1.0mmとされ、前記幅広部分の幅Wは2.6mmとされている。このため、着色材の滲みによって幅Wが3.5mmを超えると間隔Tが0.1mm(1.0mm−(3.5mm−2.6mm)/2×2)よりも小さくなり、2つの印13が近づきすぎてこれら印13の視認性が低下する。そこで、幅Wが2.6mm以上でかつ3.5mm以下の場合を着色材の滲みがないものと見なす。
【0078】
図8に示すように、表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下のときは幅Wが3.5mm以下となり、拭き取り装置2によって着色材の滲みを防止することができた。また、表面張力γが35mN/mより大きいと滲みが大きく幅Wが3.5mmを超えて印13の視認性が低下し、表面張力γが20mN/mより小さいと着色材が十分に被覆部12に付着しなかった(目視によって確認。図8中では幅Wを0と表記している)。
【0079】
次に、本発明の第2の実施形態にかかる電線の加工装置としての加熱装置3を図9ないし図12を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0080】
本発明の発明者らは、製造後の電線1を長期間(半年〜1年程度)放置すると、前述した酸化防止剤と銅害防止剤の双方が程よく析出し、電線1の外表面1aが着色材を滲ませることなくかつ弾かない良好な状態となることを確認した。この良好な状態とは、電線1の外表面1aの表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下になっている状態である。そこで、本実施形態においては、電線1を長期間放置するかわりに加熱装置3で加熱することで、時間経過(エイジング)を早めて酸化防止剤と銅害防止剤の双方を析出させ、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下としている。
【0081】
本実施形態のワイヤハーネス製造システムは、図9に示すように、加熱工程P0と、電線切断工程P1と、着色工程P3と、端子圧着工程P4等を備えている。加熱工程P0と電線切断工程P1と着色工程P3と端子圧着工程P4は、この順で順次行われる。
【0082】
加熱工程P0では、リール10に巻き付けられた長尺でかつ着色されていない(印13が形成されていない)電線1を加熱し、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下にする。加熱工程P0は、図10に示す加熱装置3を備えている。
【0083】
加熱装置3は、図10に示すように、電線作成装置41の近傍に設けられている。加熱装置3は、図11に示すように、加熱部(加熱手段に相当する)31を備えている。加熱部31は、棚部32と、ヒータ33とを備えている。棚部32は、互いに等しい長方形板状に形成された底板32a、二枚の中板32b及び上板32cと、これら底板32a、中板32b及び上板32cを支持する支柱32dとを備え、3段の棚状に形成されている。
【0084】
底板32aは、工場等のフロアに重ねられる。中板32bは、底板32aの上方に配され、水平方向に沿って配されている。二枚の中板32bは、互いに間隔をあけて配され、一方の中板32bは、他方の中板32bの上方に配されている。上板32cは、一方の中板32bの上方に配され、水平方向に沿って配されている。これら底板32a、二枚の中板32b及び上板32cは、互いに等間隔をあけて配されている。支柱32dは、底板32aの各角部分からそれぞれ鉛直方向に沿って延設され、二枚の中板32b及び上板32cの対応する角部分に連なっている。
【0085】
本実施形態においては、底板32a、中板32b及び上板32cの長手方向の長さは180cmとされ、短手方向の長さは71cmとされ、底板32a、中板32b及び上板32cの各間隔は60cmとされている。このような寸法の棚部32は、底板32a及び二枚の中板32b上に各々60束のリール10を収容可能であり、全体で180束のリール10を収容可能である。
【0086】
ヒータ33は、中板32b及び上板32cの下面に取り付けられている。ヒータ33は、光加熱式のハロゲンヒータ33とされている。なお、ヒータ33は、遠赤外線、近赤外線や電熱線式の温風ヒータ33、セラミックヒータ33等の周知のヒータ33を用いてもよい。
【0087】
前述した加熱部31は、電線作成装置41に切断される前のリール10に巻き付けられた電線1を棚部32内に収容し、ヒータ33で棚部32内即ち当該棚部32内に収容された電線1を加熱する。電線1を加熱する温度(加熱された電線1の温度)は、被覆部12を構成するポリオレフィン系樹脂組成物の耐熱温度以下で、かつ銅害防止剤が電線1の外表面1aに析出しやすい温度とされている。
【0088】
電線1を加熱する温度としては、好ましくは60℃以上でかつ80℃以下であり、さらに好ましくは60℃以上でかつ70℃以下である。前記温度が70℃を超えると、電線1を熱劣化させる虞がある。また、前記温度が60℃未満であると、銅害防止剤が析出するのに時間がかかるので加熱時間を長くしなければならない。本実施形態においては、電線1を加熱する温度は60℃とされている。
【0089】
また、電線1を加熱する時間は、銅害防止剤が電線1の外表面1aに「適量」析出する時間とされている。この「適量」とは、電線1の外表面1aの表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下となる量を示している。電線1を加熱する時間としては、電線1を加熱する温度が60℃の場合、3時間以上でかつ50時間以下が好ましい。前記時間が50時間を超えると、電線1を熱劣化させる虞があるとともに、銅害防止剤が前記適量よりも多く析出して着色材を弾く虞がある。また、前記時間が3時間未満であると、銅害防止剤が前記適量よりも少なく析出して着色材が滲む虞がある。
【0090】
以上のように、一例として、電線1を加熱する温度を60℃とし、かつ電線1を加熱する時間を3時間以上でかつ50時間以下とすることで、電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下とすることができる。
【0091】
このような電線1の加熱は、被覆部12がポリオレフィン系樹脂組成物で構成された電線1において特に有効である。被覆部12がポリ塩化ビニル系樹脂組成物で構成された電線(以下、PVC電線という)は、着色材が被覆部12に浸透しやすく、ポリオレフィン系樹脂組成物のように加熱しなくてもよい。このため、棚部32内には、基本的に電線1とPVC電線が混在することはない(別の棚部に収容したり、棚部32の別の段に収容する)。しかし、例えば同じ棚部32の一つの段に電線1とPVC電線を混在させて収容しても勿論よく、電線1とPVC電線とが混在した場合であっても、通常各リール10には電線1の品種、サイズや製造年月日等を示す認識札が取り付けられているのでリール10毎に容易に区別ができる。
【0092】
前述した加熱装置3を用いて電線1を加熱する際には、まず、作業者が電線作成装置41に切断される前のリール10に巻き付けられた電線1を棚部32内に収容する。そして、前述のように所定温度でかつ所定時間加熱した後に、作業者がリール10を棚部32内から取り出して電線作成装置41にセットする。このように、加熱工程P0を行った後に、前述のように電線切断工程P1、着色工程P3、端子圧着工程P4を順次行っていく。
【0093】
本実施形態によれば、加熱装置3によって電線1を加熱することで電線1の外表面1aの表面張力γを20mN/m以上でかつ35mN/m以下にすることができるので、電線1の外表面1aに着色材を滴射すると、着色材は滲むことなくかつ弾かれることなく電線1の外表面1aに付着する。このため、被覆部12上での着色材の広がり方が安定する。したがって、印13の視認性や意匠性を向上させることができる。
【0094】
さらに、拭き取り装置2で電線1の外表面1aを拭き取る場合と比較すると、以下のような利点がる。まず、加熱装置3という拭き取り装置2よりも簡単な構造の装置を設けるだけでよいので、設備費を低減できる。また、ウェス27の交換が不要になるのでメンテナンスが容易になり、ウェス27の交換作業のために製造ラインを停止させる必要がなくなって製造効率を改善できる。また、拭き取り装置2で拭き取る際に想定される拭きムラが生じないので、電線1の外表面1aの表面張力γをより均一に20mN/m以上でかつ35mN/m以下にすることができる。
【0095】
(実施例2)
次に、本発明者らは、前述した加熱装置3の電線1を加熱する温度を60℃とし、電線1を加熱する時間を適宜変更して、様々な表面張力γの電線1を作成した。そして、これら電線1を前述した着色装置5を用いて着色した際の着色の滲み度合い(印13の大きさ)を測定した。測定結果を図12に示す。なお、電線1の表面張力γの測定、被覆部12を構成するポリオレフィン系樹脂組成物、着色材は、実施例1と同様とした。
【0096】
図12に示すように、加熱する時間を3時間以上でかつ50時間以下とすると電線1の表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下となった。また、加熱する時間が50時間を超えると表面張力γが20mN/mよりも小さくなり、加熱する時間が3時間未満であると表面張力γが35mN/mよりも大きくなった。
【0097】
また、図示しないが、表面張力γが20mN/m以上でかつ35mN/m以下のときは印13の幅広部分の幅Wが3.5mm以下となり、加熱装置3によって着色材の滲みを防止することができた。また、表面張力γが35mN/mより大きいと滲みが大きく幅Wが3.5mmを超えて印13の視認性が低下し、表面張力γが20mN/mより小さいと着色材が十分に被覆部12に付着しなかった(目視によって確認)。
【0098】
前述した実施形態においては、加熱部31のヒータ33が棚部32の中板32b及び上板32cの下面に取り付けられていた。しかしながら本発明では、棚部32の開放された側面や背面を塞ぐ側板や背板を設け、これら側板や背板にヒータ33を取り付けてもよい。また、棚部32の側面や背面を前記側板や背板またはビニールシート等で覆い、かつ棚部32の前面をビニールシート等で覆って棚部32内を略密閉された空間としてもよい。また、特にこの場合、ヒータ33のかわりに、密閉された棚部32内に加熱された気体を供給する(温風を吹き込む)温風吹き込み部を設けて、棚部32内即ち電線1を加熱してもよい。
【0099】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 電線
1a 外表面
2 拭き取り装置(電線の加工装置)
3 加熱装置(電線の加工装置)
11 芯線
12 被覆部
20 拭き取り部(拭き取り手段)
23A、23B 第1エアシリンダ(第1移動手段)
24A、24B 第2エアシリンダ(第2移動手段)
25A、25B ローラ(挟持部材)
26 制御部(制御手段)
31 加熱部(加熱手段)
L 電線の長手方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線において、
前記被覆部の外表面の表面張力が、20mN/m以上でかつ35mN/m以下とされたことを特徴とする電線。
【請求項2】
導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工方法において、
前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記被覆部の前記外表面を拭き取ることを特徴とする電線の加工方法。
【請求項3】
導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工装置において、
前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記被覆部の前記外表面を拭き取る拭き取り手段を備えたことを特徴とする電線の加工装置。
【請求項4】
前記拭き取り手段が、
互いに接離自在に設けられ、互いの間に前記電線を挟む一対の挟持部材と、
前記一対の挟持部材のうち少なくとも一方の挟持部材を移動させて、前記一対の挟持部材を互いに接離させる第1移動手段と、
前記一対の挟持部材を前記電線の長手方向に沿って移動させる第2移動手段と、
互いの間に前記電線を挟んだ前記一対の挟持部材を前記電線の長手方向に沿って移動させるように前記第1移動手段及び前記第2移動手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の電線の加工装置。
【請求項5】
導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工方法において、
前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記電線を加熱することを特徴とする電線の加工方法。
【請求項6】
導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工装置において、
前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記電線を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする電線の加工装置。
【請求項1】
導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線において、
前記被覆部の外表面の表面張力が、20mN/m以上でかつ35mN/m以下とされたことを特徴とする電線。
【請求項2】
導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工方法において、
前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記被覆部の前記外表面を拭き取ることを特徴とする電線の加工方法。
【請求項3】
導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工装置において、
前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記被覆部の前記外表面を拭き取る拭き取り手段を備えたことを特徴とする電線の加工装置。
【請求項4】
前記拭き取り手段が、
互いに接離自在に設けられ、互いの間に前記電線を挟む一対の挟持部材と、
前記一対の挟持部材のうち少なくとも一方の挟持部材を移動させて、前記一対の挟持部材を互いに接離させる第1移動手段と、
前記一対の挟持部材を前記電線の長手方向に沿って移動させる第2移動手段と、
互いの間に前記電線を挟んだ前記一対の挟持部材を前記電線の長手方向に沿って移動させるように前記第1移動手段及び前記第2移動手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の電線の加工装置。
【請求項5】
導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工方法において、
前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記電線を加熱することを特徴とする電線の加工方法。
【請求項6】
導電性の芯線と、ポリオレフィン系樹脂組成物で構成されかつ前記芯線を被覆した絶縁性の被覆部と、を備えた電線を加工する電線の加工装置において、
前記被覆部の外表面の表面張力が20mN/m以上でかつ35mN/m以下となるように、前記電線を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする電線の加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−257778(P2010−257778A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106922(P2009−106922)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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