説明

電線ユニット及び電線ユニットの製造方法

【課題】丸型電線同士を分離しても凹凸がなく、しかも、丸型電線同士を強固に連結することができる電線ユニット及び当該電線ユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】ケーブルユニット1は、導体2aを絶縁性の外部絶縁体2dで覆った丸型ケーブル2が複数並列に配置されている。この丸型ケーブル2と丸型ケーブル2との間には、連結部材3が挟まれている。連結部材3には、当該連結部材3を挟む丸型ケーブル2がそれぞれ嵌め込まれる円弧状の溝部3aが形成され、連結部材3と丸型ケーブル2とが接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線ユニット及び電線ユニットの製造方法に係り、特に、導体を絶縁性の外皮で覆った丸型電線が複数並列に配置された電線ユニット及び当該電線ユニットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両内の情報通信ネットワークや太陽光発電システムにおいては、機器間を複数本のケーブル(=電線)で接続することが多い。このように、複数本のケーブルを同じ径路に配線する場合に、配線作業の簡易化等を目的としてこれら複数本のケーブルを図6に示すように互いに連結させる並列型マルチユニットケーブル(=電線ユニット)が考えられている(特許文献1)。
【0003】
同図に示すように、並列型マルチユニットケーブル100は、互いに並列に配置された複数のケーブル101から構成されている。これらケーブル101は各々、例えば四対のツイストペア101aと、これら四対のツイストペア101aをまとめて被覆するシース101b(=外皮)と、を備えている。そして、これらシース101bとシース101bとの間はブリッジ101cにより互いに連結されている。
【0004】
しかしながら、上述した並列型マルチユニットケーブル100は、下記に示すような問題点があった。即ち、これらケーブル101の端末に各々コネクタを取り付ける場合、図7(A)に示すように、人力でブリッジ101cを切断してケーブル101とケーブル101とを分離するが、ブリッジ101cを切断するとケーブル101に凸部101dができてしまう。
【0005】
このように凸部101dができてしまうと、例えば、ケーブル101に防水コネクタを取り付ける場合、防水コネクタの多くは、図7(B)に示すように、水浸入防止用にケーブル101をその外径より小さいサイズのゴム製樹脂で成形された防水カバー102で覆う構造となる。この場合、ケーブル101に凸部101dがあると、凸部101dと防水カバー102との間に隙間ができ、十分な防水性が得られない、という問題が生じてしまう。
【0006】
また、図8に示すように、複数本のケーブル101を互いに連結させた並列型マルチユニットケーブル100も考えられている(特許文献1、2)。同図に示すように、この並列型マルチユニット100には、ケーブル101のシース101b同士を熱接着した熱接着部103が設けられている。このようにすれば、シース101b同士の熱接着部103を綺麗に剥がせば、凹凸なくケーブル101同士を分離することができる。しかしながら、ケーブル101が丸型の場合、接着面積が小さいため、十分な接着強度が得られない、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−181848号公報
【特許文献2】特開2009−48934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、丸型電線同士を分離しても凹凸がなく、しかも、丸型電線同士を強固に連結することができる電線ユニット及び当該電線ユニットの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、導体を絶縁性の外皮で覆った丸型電線が複数並列に配置された電線ユニットにおいて、前記丸型電線と前記丸型電線との間に挟まれた連結部材を備え、前記連結部材には、当該連結部材を挟む前記丸型電線がそれぞれ嵌め込まれる円弧状の溝部が形成され、前記連結部材と前記丸型電線とは接着されていることを特徴とする電線ユニットに存する。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記連結部材において前記複数の丸型電線の並び方向及び前記丸型電線の長手方向の双方向に直交する方向の高さが、前記丸型電線の直径以下に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電線ユニットに存する。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の電線ユニットを製造する製造方法において、前記丸型電線の外皮及び前記連結部材を押出成形する工程と、前記押出成形された前記丸型電線の外皮及び前記連結部材が固まらないうちに前記連結部材の溝部に前記丸型電線を嵌め込んで熱溶着する工程と、を順次行うことを特徴とする電線ユニットの製造方法に存する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、連結部材には、当該連結部材を挟む丸型電線がそれぞれ嵌め込まれる円弧状の溝部が形成され、この溝部が形成された連結部材と丸型電線とは接着されているので、丸型電線と連結部材との接着を剥がして丸型電線同士を分離しても丸型電線の外面に凹凸が形成されることがない。しかも、連結部材に円弧状の溝部を設けることにより、連結部材と丸型電線との接着面積を大きくすることができ、丸型電線同士を強固に連結することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、連結部材の高さが丸型電線の直径と同じであれば、電線ユニットを配索面上に置いたとき連結部材と丸型電線との両者が配索面に接して電線ユニットを支持するため、配索時に連結部材と丸型電線との間に接着を剥がす力がほとんど生じず、連結部材と丸型電線との接着が剥がれ落ちることがない。また、連結部材の高さが丸型電線の直径より低くても、電線ユニットを配索面上に置いたとき連結部材が配索面を接せずに浮いてしまうが、連結部材よりも重い丸型電線が配索面に接して電線ユニットを支持するため、配索時に連結部材と丸型電線との間に生じる接着を剥がす力を抑制して、連結部材と丸型電線との接着が剥がれ落ちることがない。しかも、連結部材と丸型電線との接着を剥がす時に、浮いている連結部材を引っ張れば余計な力がかからず簡単に剥がすことができる。また、薄型化も図ることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、丸型電線の外皮及び連結部材を押出成形し、押出成形された丸型電線の外皮及び連結部材が固まらないうちに連結部材の溝部に丸型電線を嵌め込んで熱接着するので、押出成形時に同時に連結部材と丸型電線とを接着することができ、簡単に丸型電線と連結部材とを接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電線ユニットとしてのケーブルユニットの斜視図である。
【図2】図1に示す連結部材の斜視図である。
【図3】図1のI−I線断面図である。
【図4】図1に示す丸型ケーブルと連結部材とを分離したときの斜視図である。
【図5】他の実施形態におけるケーブルユニットの断面図である。
【図6】従来の電線ユニットとしての並列型マルチユニットケーブルの一例を示す断面図である。
【図7】図6に示す並列型マルチユニットケーブルの問題点を説明するための説明図である。
【図8】従来の電線ユニットとしての並列型マルチユニットケーブルの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の電線ユニットについて図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の電線ユニットとしてのケーブルユニットの斜視図である。図2は、図1に示す連結部材の斜視図である。図3は、図1のI−I線断面図である。図4は、図1に示す丸型ケーブルと連結部材とを分離したときの斜視図である。
【0017】
同図に示すように、ケーブルユニット1(=電線ユニット)は、互いに並列に配置された複数(本実施形態では2本)の丸型ケーブル2(=丸型電線)と、これら丸型ケーブル2を連結する連結部材3と、から構成されている。上記複数の丸型ケーブル2は、互いに平行に配置されている。また、複数の丸型ケーブル2は各々、その断面が丸型に形成されている。図1〜図4に示す実施形態では、丸型ケーブル2の断面は、真円に形成されているが、真円に限らず楕円であっても良いし、多少歪んでいてもよい。
【0018】
上記丸型ケーブル2は、銅やアルミなどから構成された導体2aと、この導体2aを被覆するポリエチレン(PE)などから構成された内部絶縁体2bと、内部絶縁層2bの外側に編まれた銅やアルミなどから構成された編組導体2cと、この編組導体2cを被覆するPEやポリ塩化ビニル(PVC)などから構成された外部絶縁体2d(=外皮)と、を備えている。
【0019】
上記連結部材3は、丸型ケーブル2と丸型ケーブル2との間に挟まれ、これら丸型ケーブル2を互いに連結する。この連結部材3は、丸型ケーブル2の長手方向Y1に沿って長尺な略直方体状に形成されていて、外部絶縁体2dと同じ材料で構成されている。即ち、外部絶縁体2dがPEから構成されていれば、連結部材3もPEから構成され、外部絶縁体2dがPVCから構成されていれば、連結部材3もPVCから構成される。
【0020】
上記連結部材3には、丸型ケーブル2の並び方向Y2に対向する一対の外面に各々溝部3aが形成されている。この溝部3aは、丸型ケーブル2の長手方向Y1に沿って設けられている。そして、この溝部3a内に連結部材3を挟む丸型ケーブル2が嵌め込まれている。この溝部3aは、断面円弧状に設けられていて、その半径R1(図2参照)は丸型ケーブル2の半径R2(図3参照)とほぼ等しい。これにより、溝部3aに丸型ケーブル2を嵌め込むと、溝部3aを形成する面と丸型ケーブル2とが接触する。そして、この互いに接触している溝部3aを形成する面と丸型ケーブル2とが熱溶着により接着されている。
【0021】
また、図3に示すように、上記連結部材3において、丸型ケーブル2の並び方向Y2及び丸型ケーブル2の長手方向Y1の双方向に直交する方向Y3の高さHは、丸型ケーブル2の直径(2×R2)より低く設けられている。
【0022】
上述したケーブルユニット1によれば、連結部材3には、当該連結部材3を挟む丸型ケーブル2がそれぞれ嵌め込まれる円弧状の溝部3aが形成され、この溝部3aが形成された連結部材3と丸型ケーブル2とは接着されているので、図4に示すように、丸型ケーブル2と連結部材3との接着を剥がして丸型ケーブル2同士を分離しても丸型ケーブル2の外面に凹凸が形成されることがない。そのため、端末に防水コネクタを取り付ける場合であっても防水コネクタの防水カバーと丸型ケーブル2との間に隙間が生じることがないので、問題なく取り付けることができる。しかも、連結部材3に円弧状の溝部3aを設けることにより、連結部材3と丸型ケーブル2との接着面積を大きくすることができ、丸型ケーブル2同士を強固に連結することができる。
【0023】
また、従来では、複数本のケーブルを配線する箇所には、主に平型や丸型の多心ケーブルが使用されるケースがあり、それぞれ単心ケーブルとは別の平型や丸型の多心用コネクタが必要となっていたが、本実施形態のように単心の丸型ケーブル2を複数連結したケーブルユニット1を使用すれば、単心用コネクタが使用可能なため、使用するコネクタを統一でき、材料の統一、削減が可能となる。
【0024】
また、上述したケーブルユニット1によれば、連結部材3の高さHを丸型ケーブル2の直径(2×R2)より低くしているので、図3に示すように、ケーブルユニット1を配索面上に置いたとき連結部材3が配索面を接せずに浮いてしまうが、連結部材3よりも重い丸型ケーブル2が配索面に接してケーブルユニット1を支持する。このため、重い丸型ケーブル2が浮いた場合に比べて配索時に連結部材3と丸型ケーブル2との間に生じる接着を剥がす力を抑制して、連結部材3と丸型ケーブル2との接着が剥がれ落ちることがない。しかも、連結部材3と丸型ケーブル2との接着を剥がす時、浮いている連結部材3を引っ張れば余計な力がかからず簡単に剥がすことができる。また、薄型化も図ることができる。
【0025】
次に、上述したケーブルユニット1の製造方法について説明する。まず、押出成形機により導体2aの回りに溶融した内部絶縁体2bの材料を被せて内部絶縁体2bを押出成形する。その後、編組機により内部絶縁体2bの回りに編組導体2cを編み上げる。この状態(即ち、外部絶縁体2dがない状態)の丸型ケーブル2をケーブルユニット1を構成する丸型ケーブル2の数だけ、予め用意しておく。本実施形態では、ケーブルユニット1を構成する丸型ケーブル2は2本なので、外部絶縁体2dがない丸型ケーブル2を2本形成しておく。
【0026】
次に、ケーブルユニット1を構成する丸型ケーブル2の数と同じ台数の押出成形機を用いて、複数の丸型ケーブル2の外部絶縁体2dを同時に押出成形する。本実施形態では、ケーブルユニット1を構成する丸型ケーブル2は2本なので、2台の押出成形機を用いて2本の丸型ケーブル2の外部絶縁体2dを同時に押出成形する。
【0027】
また、この2本の丸型ケーブル2の外部絶縁体2dの押出成形と同時に押出成形機を用いて連結部材3を押出成形する。その後、押出成形された丸型ケーブル2の外部絶縁体2d及び連結部材3が固まらずに粘着性があるうちに連結部材3の溝部3a内に丸型ケーブル2を嵌め込んで熱溶着して、完成する。
【0028】
上述したケーブルユニット1の製造方法によれば、丸型ケーブル2の外部絶縁体2d及び連結部材3を押出成形し、押出成形された丸型ケーブル2の外部絶縁体2d及び連結部材3が固まらないうちに連結部材3の溝部3aに丸型ケーブル2を嵌め込んで熱接着するので、押出成形時に同時に連結部材3と丸型ケーブル2とを接着することができ、簡単に丸型ケーブル2と連結部材3とを接着することができる。
【0029】
なお、上述した実施形態によれば、連結部材3の高さHが、丸型ケーブル2の直径(2×R2)よりも低く設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。連結部材3の高さHと丸型ケーブル2の直径(2×R2)とが等しく設けられていたもよい。この場合、ケーブルユニット1を配索面上に置いたとき連結部材3と丸型ケーブル2との両者が配索面に接してケーブルユニット1を支持するため、配索時に連結部材3と丸型ケーブル2との間に接着を剥がす力がほとんど生じず、連結部材3と丸型ケーブル2との接着がはがれ落ちることがない。また、薄型化を図る必要もなく、連結部材3と丸型ケーブル2との接着が強固であれば、連結部材3の高さHを丸型ケーブル2の直径2×R2よりも高く設けてもよい。
【0030】
また、上述した実施形態では、連結部材3の溝部3aと丸型ケーブル2とは熱溶着により接着していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、接着剤を用いて接着させてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、ケーブルユニット1を2本の丸型ケーブル2で構成していたが、本発明はこれに限ったものではない。3本以上の丸型ケーブル2で構成してもよい。
【0032】
また、3本以上の丸型ケーブル2で構成した場合、図5(A)に示すように、同一平面上に複数の丸型ケーブル2を配置しても良いし、図5(B)に示すように、三角形状に配置して、2段以上に積層しても良い。
【0033】
また、上述した実施形態では、丸型ケーブル2(丸型電線)として編組導体2Cがある同軸ケーブルを用いてたが、本発明はこれに限ったものではない。丸型電線は、断面丸型の公知の電線であればよく、例えば、編組導体2Cがない単に導体2aと導体2aを覆う外部絶縁体2dとから構成された電線であってもよい。
【0034】
また、上述した実施形態では、丸型ケーブル2として単心ケーブルを用いていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、従来のように多心ケーブルを用いても良い。
【0035】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ケーブルユニット(電線ユニット)
2 丸型ケーブル(丸型電線)
3 連結部材
2a 導体
2d 外部絶縁体(外皮)
3a 溝部
Y1 長手方向
Y2 並び方向
Y3 直交する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を絶縁性の外皮で覆った丸型電線が複数並列に配置された電線ユニットにおいて、
前記丸型電線と前記丸型電線との間に挟まれた連結部材を備え、
前記連結部材には、当該連結部材を挟む前記丸型電線がそれぞれ嵌め込まれる円弧状の溝部が形成され、前記連結部材と前記丸型電線とは接着されている
ことを特徴とする電線ユニット。
【請求項2】
前記連結部材において前記複数の丸型電線の並び方向及び前記丸型電線の長手方向の双方向に直交する方向の高さが、前記丸型電線の直径以下に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電線ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電線ユニットを製造する製造方法において、
前記丸型電線の外皮及び前記連結部材を押出成形する工程と、
前記押出成形された前記丸型電線の外皮及び前記連結部材が固まらないうちに前記連結部材の溝部に前記丸型電線を嵌め込んで熱溶着する工程と、
を順次行うことを特徴とする電線ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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