説明

電線仕分け装置

【課題】電線処理機により処理された電線を仕分ける電線仕分け装置において、電線の組立状況等に応じた柔軟な仕分けを可能とする。
【解決手段】電線仕分け装置20は、それぞれ1本の電線を着脱自在に保持する複数のホルダ21と、電線処理機1によって処理された各電線を各ホルダ21に装着させる電線装着機構22と、ホルダ21を搬送するホルダ搬送機構23と、ホルダ21を収容する複数の収容レール24と、ホルダ21をホルダ搬送機構23から収容レール24に移動させるホルダ移動機構25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線処理機によって処理された電線を仕分ける電線仕分け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の配線等に用いられるワイヤハーネスは、複数の電線を組み立てることにより製造される。通常、電線処理機が被覆電線の切断、被覆の剥ぎ取り、または端子の圧着等を行い、それらの処理が施された電線は所定の組立場所に運ばれた後、人手により組み立てられる。1つのワイヤハーネスは、長さや圧着端子の有無等が異なる複数の電線によって構成される。
【0003】
従来から、電線処理機によって同種の電線を多数作製し、それら電線を束にすることで他の種類の電線と仕分ける方法が採られている(特許文献1参照)。各電線の束は組立場所に運搬される。組立人は組立場所において、必要となる電線を複数の束から適宜取り出し、それら電線を組み立てる。このように、電線をロット別に作製した後、それらを束にして組立場所に運搬し、組立場所において、各ロットの束の中から電線を1本ずつ取り出し、組み立てることとしている。
【0004】
しかし、複数の電線を束ねた状態では電線が相互に絡みやすいため、束の中から電線を1本ずつ取り出す作業が面倒であった。また、束の中から電線を取り出す際に、端子や電線の破損を生じることがあった。そこで、複数の電線保持部を有する電線保持バーを用い、処理後の各電線を各電線保持部に保持させることにより、複数本の電線をひとまとめにして仕分ける技術が提案されている(特許文献2および3参照)。特許文献2および3には、電線保持バーが同一種類の複数の電線を一括して保持することと、複数種類の電線を組立の作業順に応じた順に並べて保持することが記載されている。また、特許文献3には、複数の電線保持バーを所定の位置に順次移動させる機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−96630号公報
【特許文献2】特開2009−152104号公報
【特許文献3】特開2009−152105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ワイヤハーネスの多品種少量生産が求められると共に、従来以上に生産性を高めることが望まれている。1台の電線処理機から複数の組立場所に必要な電線を適宜搬送し、無駄の少ない組立作業を実現することが切望されている。上記従来技術によれば、電線保持バーを用いて電線を仕分けることにより、複数の同種電線または組立に必要な一組の異種電線を電線保持バーと共に一括して所定場所に運搬することができる。しかし、電線保持バーに保持される電線の種類は予め画一的に定まっており、例えば組立場所における組立状況等に応じて、各組立場所に運搬する電線の種類を臨機応変に変更すること等はできない。したがって、上記従来技術では、更なる生産性の向上を図ることは難しい。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、組立状況等に応じた柔軟な仕分けが可能な電線仕分け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電線仕分け装置は、被覆電線の切断、被覆の剥ぎ取り、および端子の圧着の少なくとも一つの処理を行う電線処理機により処理された電線を仕分ける電線仕分け装置である。前記電線仕分け装置は、それぞれ1本の電線を着脱自在に保持する複数のホルダと、前記電線処理機によって処理された各電線を前記各ホルダに装着させる電線装着機構と、前記ホルダを搬送するホルダ搬送機構と、前記ホルダを収容する複数の収容体と、前記ホルダを前記ホルダ搬送機構から前記収容体に移動させるホルダ移動機構と、を備える。
【0009】
上記電線仕分け装置によれば、処理後の電線は1本ずつホルダに装着され、各ホルダはホルダ搬送機構によって搬送された後、ホルダ移動機構によって収容体に適宜移される。このように、処理後の電線は、ホルダを介して収容体に個別に配送される。そのため、一つの収容体に同種の電線を複数収容させたり、ワイヤハーネスの組立に必要な一組の電線を組立順に収容させたりすることができる。さらに、収容体に収容させる電線の種類を臨機応変に変更することが可能となり、組立状況等に応じた柔軟な仕分けが可能となる。
【0010】
前記ホルダは、電線の一部を着脱自在に保持する第1および第2の保持部を有していてもよい。
【0011】
電線は細長い部材であるため、絡まりやすい。電線が絡まると、ホルダを介しての電線の搬送が良好に行われなくなるおそれがある。しかし、上記ホルダによれば、例えば、第1保持部または第2保持部によって電線の一端側を保持し、他端側をぶら下がった状態に保つことができる。また、上記ホルダによれば、第1保持部および第2保持部によって電線の両端側を保持し、電線の中央側を垂れ下がった状態に保つことも可能である。したがって、搬送時に電線が絡まることを抑制することができる。
【0012】
前記収容体は、前記ホルダをスライド自在に支持する収容レールからなっていてもよい。前記ホルダ移動機構は、前記ホルダ搬送機構により搬送されたホルダを前記収容レールの一端側から導入し、前記収容レールに支持されている他のホルダを前記ホルダによって他端側に押し込むように構成されていてもよい。
【0013】
このことにより、ホルダを介して電線を収容レールに良好に収容することができる。
【0014】
前記収容体は、処理後の電線が組み立てられる組立場所の近傍にそれぞれ配置されていてもよい。
【0015】
このことにより、電線を仕分けて、各組立場所に対して直接配送することができる。
【0016】
前記各ホルダには、情報の読み書きが可能な識別手段が設けられていてもよい。前記電線仕分け装置は、前記各ホルダが保持する電線の種類を特定する情報を前記各識別手段に書き込む書き込み手段と、前記各識別手段の情報を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段が読み取った情報に基づいて、前記ホルダ移動機構を制御する制御手段と、を備えていてもよい。
【0017】
このことにより、ホルダの識別手段に基づいて、ホルダが保持している電線の種類が特定される。ホルダの識別手段から情報を読み取る作業は、任意のタイミングで行うことができる。そのため、処理後の電線の移動先を必ずしもホルダに装着する際に決めておく必要はなく、電線がホルダに装着された後、組立場所の組立状況等に応じて、各ホルダ(言い換えると、各電線)を臨機応変に仕分けることが可能となる。
【0018】
前記識別手段はICタグからなり、前記書き込み手段、前記読み取り手段は、それぞれ前記ICタグと無線通信を行うICタグライタ、ICタグリーダからなっていてもよい。
【0019】
このことにより、ホルダに保持された電線の種類を良好に特定することができる。また、ICタグとICタグライタとの間、およびICタグとICタグリーダとの間の無線通信は高速で行われるので、数多くのホルダおよび電線を迅速に識別することができる。それにより、電線を迅速に仕分けることができる。
【0020】
前記電線仕分け装置は、各組立場所で使用された電線を特定する使用電線特定手段と、各組立場所で使用された電線に応じて前記ホルダ移動機構を制御する制御手段と、を備えていてもよい。
【0021】
このことにより、例えば、各組立場所に対し、組立に使用された電線と同種の電線を補充するように電線を仕分けることができる。また、例えば、使用された電線の本数の多い組立場所、言い換えると、組立作業が迅速に行われている組立場所に対し、他の組立場所よりも優先的に電線を配送すること等が可能となる。したがって、各組立場所の組立状況に応じた柔軟な仕分けが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、組立状況等に応じた柔軟な仕分けが可能な電線仕分け装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電線処理機の構成を模式的に示す平面図である。
【図2】実施形態1に係る電線仕分け装置の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)および(b)はホルダの正面図である。
【図4】ホルダおよび電線の斜視図である。
【図5】ホルダの搬送状態を示す斜視図である。
【図6】電線装着機構の一例を示す正面図である。
【図7】ホルダ移動機構の一例を示す斜視図である。
【図8】(a)は変形例に係るホルダの平面図、(b)は電線を保持していないときの正面図、(c)は電線を保持しているときの正面図である。
【図9】(a)は変形例に係るホルダの平面図、(b)は同正面図である。
【図10】変形例に係るホルダの使用方法を説明する図であり、(a)はホルダが電線を保持している状態、(b)はホルダに電線を装着させたときの状態を示す。
【図11】変形例に係るホルダ移動機能の斜視図である。
【図12】変形例に係るホルダ搬送機構および収容レールの斜視図である。
【図13】実施形態2に係る電線仕分け装置の構成を示す平面図である。
【図14】実施形態2の変形例に係る電線仕分け装置の構成を示す平面図である。
【図15】実施形態2の変形例に係る電線仕分け装置の構成を示す平面図である。
【図16】実施形態2の変形例に係る電線仕分け装置の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態1>
本実施形態に係る電線仕分け装置は、ワイヤハーネスの製造に利用される装置であり、ワイヤハーネスの構成部品としての複数の電線を互いに組み立てられる前に仕分けるための装置である。具体的には、本実施形態に係る電線仕分け装置は、電線処理機で処理された電線を、組立場所で組み立てられる前に仕分けるための装置である。図1は、本実施形態に係る電線処理機1の全体構成を模式的に示す平面図である。本実施形態に係る電線処理機1は、被覆電線10の切断および被覆の剥ぎ取りを行い、また、必要に応じて端子15の圧着を行う。まず、電線処理機1の構成について説明し、その後、電線仕分け装置の構成を説明する。
【0025】
図1に示すように、電線処理機1は、フロント側およびリア側のクランプ11,12と、フロント側およびリア側の搬送ユニット13,14と、フロント側およびリア側の端子圧着ユニット17,18と、カッターユニット9と、電線処理機1の各種動作を制御する制御装置2とを備えている。
【0026】
クランプ11,12は、被覆電線(以下、単に電線という)10を保持するものである。クランプ11,12の構成は何ら限定されず、従来から公知の各種クランプを用いることができる。
【0027】
搬送ユニット13,14は、クランプ11,12を適宜移動させるものであり、クランプ11,12に保持された電線10を少なくともカッターユニット9の手前の位置、端子圧着ユニット17,18の手前の位置に移動可能に構成されている。本実施形態では、搬送ユニット13,14は、クランプ11,12を左右方向に移動させることにより、電線10を左右方向に搬送するものである。言い換えると、搬送ユニット13,14は、電線10を電線10の長手方向と直交する方向に移動させる。搬送ユニット13,14には、従来から公知の各種搬送ユニットを用いることができる。なお、本実施形態では搬送ユニット13,14は、電線10を左右方向にスライド移動させるものであるが、搬送ユニット13,14は電線10を旋回移動させるものであってもよい。
【0028】
カッターユニット9は、電線10の切断と、被覆の剥ぎ取りとを行うものである。カッターユニット9には、従来から公知の各種カッターユニットを用いることができる。例えば、カッターユニット9は、上下一対のカッター刃と、それらカッター刃を上下に移動させるモータとを有していてもよい。
【0029】
端子圧着ユニット17,18は、被覆が剥ぎ取られて芯線が露出した電線10の先端部に、端子15を圧着するものである。端子圧着ユニット17,18には、従来から公知の各種の端子圧着ユニットを用いることができる。例えば、端子圧着ユニット17,18は、電線10の芯線および被覆の一部を端子15に重ね合わせた状態で、それらを上方からプレスすることによって端子15を圧着するものであってもよい。
【0030】
図2に示すように、電線仕分け装置20は、それぞれ1本の電線10を保持するように構成された複数のホルダ21と、電線処理機1で処理された電線10をホルダ21に装着させる電線装着機構22と、ホルダ21を搬送するホルダ搬送機構23と、それぞれ複数のホルダ21を収容する複数の収容レール24と、ホルダ搬送機構23から収容レール24にホルダ21を移動させるホルダ移動機構25とを備えている。符号26はホルダ21の待機場所を示している。
【0031】
ホルダ21は、電線10の着脱が可能であり、その具体的構成は特に限定されない。本実施形態では図3に示すように、ホルダ21は、略山形のホルダ本体30と、ホルダ本体30に設けられた第1クリップ31Aおよび第2クリップ31Bとを備えている。クリップ31A,31Bは電線10を着脱自在に保持する保持部の一例であり、可動クリップ部31aと固定クリップ部31bとからなっている。可動クリップ部31aは、軸32を介してホルダ本体30に回転可能に支持されている。固定クリップ部31bはホルダ本体30に固定されている。可動クリップ部31aおよび固定クリップ部31bは、先端側に行くほど互いに離れるように末広がり状に形成されている。可動クリップ部31aは、図示しない弾性体(例えば、ばね等)によって、固定クリップ部31bに接近する方向に付勢されている。
【0032】
電線10が可動クリップ部31aと固定クリップ部31bとの間に押し込まれると、上記弾性体の付勢力に抗して可動クリップ部31aが軸32を中心として回転し、電線10は可動クリップ部31aと固定クリップ部31bとの間に挟み込まれる。これにより、電線10はホルダ21に装着される。この電線10は、上記弾性体の付勢力によって、可動クリップ部31aと固定クリップ部31bとの間に挟持される。これにより、電線10はホルダ21に保持される。
【0033】
ホルダ21は更に、プッシュ軸33と、プッシュ軸33を軸方向に移動可能に支持する筒体34とを備えている。筒体34はホルダ本体30に固定されている。図3(b)に示すように、プッシュ軸33を下方に向かって押すと、プッシュ軸33は可動クリップ部31aの下部と接触し、可動クリップ部31aを固定クリップ部31bから離れる方向に回転させる。これにより、電線10の保持状態は解除され、電線10をホルダ21から取り外すことが可能となる。
【0034】
電線10の長さが比較的短い場合には、第1クリップ31Aおよび第2クリップ31Bのいずれか一方で電線10の一端側を狭持することにより、他端側がぶら下がった状態に電線10を保持することができる(図4参照)。一方、電線10の長さが比較的長い場合には、電線10の一端側を第1クリップ31Aで挟持し、電線10の他端側を第2クリップ31Bに挟持することができる。この場合、図5に示すように、電線10はホルダ21により、その両端側が挟持され、中央側が垂れ下がった状態に保持される。なお、図5ではホルダ21のクリップ31A,31Bの図示は省略している。電線10は長尺物であり、絡まりやすいという性質を有しているが、ホルダ21は電線10を絡み難いように保持することができる。
【0035】
電線装着機構22は、処理後の電線10を電線処理機1からホルダ21に受け渡すことができる限り、その構成は何ら限定されない。電線装着機構22として、例えば図6に示すように、電線10を保持するクランプ機構37を有するロボットハンド38等を用いることができる。電線装着機構22は1本のロボットハンド38により構成されていてもよいが、電線10の一端側および他端側を同時に保持できるように2本のロボットハンド38を備えていてもよい。ロボットハンド38等のような電線10を掴む機構の代わりに、電線10を吸引することによって保持する機構、電線10を一時的に接着させることによって保持する機構等を用いることも可能である。
【0036】
図2に示すように、ホルダ搬送機構23は、駆動プーリ41と、従動プーリ42と、両プーリ41,42に巻き掛けられたコンベアベルト43とを備えている。駆動プーリ41には、図示しないモータが連結されている。図5に示すように、コンベアベルト43には、ホルダ21を収容する複数のケース44が固定されている。ケース44は一列に並べられている。駆動プーリ41が回転するとコンベアベルト43が走行し、ケース44はコンベアベルト43の長手方向に移動する。それに伴い、各ケース44に収容されたホルダ21も、コンベアベルト43の長手方向に移動する。
【0037】
ケース44は、ホルダ21をコンベアベルト43上に保持すると共に、ホルダ21の位置決めを行う部材である。ただし、そのような部材はケース44に限らず、他の部材であってもよい。例えば、コンベアベルト43に固定され、ホルダ21を両側から挟み込むことによってホルダ21を保持する部材であってもよい。また、コンベアベルト43に一定の間隔で配置され、ホルダ21が差し込まれることによってホルダ21を保持する位置決めピン等であってもよい。
【0038】
なお、ホルダ搬送機構23はホルダ21を搬送できる限り、その構成は何ら限定されない。ホルダ搬送機構23は、プーリおよびベルトを備えた機構に限らず、例えば、スプロケットおよびチェーンを備えた機構、ラックおよびピニオンを備えた機構、ボールねじと当該ボールねじと螺合するスライダとを備えた機構、ホルダ21を保持したまま所定方向に移動するロボットハンドを備えた機構等であってもよい。
【0039】
図2に示すように、各収容レール24は、コンベアベルト43の長手方向と直交する方向に延びている。それら収容レール24は、コンベアベルト43の長手方向と平行な方向に並べられている。以下、コンベアベルト43の長手方向を左右方向、コンベアベルト43の長手方向と直交する方向を前後方向と称することとする。収容レール24は左右方向に並べられ、それぞれ前後方向に延びている。なお、収容レール24の長手方向、配列方向は、必ずしもそれぞれ前後方向、左右方向である必要はない。収容レール24の長手方向、配列方向は、それぞれ前後方向から傾いた方向、左右方向から傾いた方向であってもよい。
【0040】
収容レール24の本数は特に限定されないが、組立場所ごとに少なくとも1本の収容レール24が用意されていると便利であるので、収容レール24の本数は組立場所の数以上が好ましい。
【0041】
図5に示すように、収容レール24は複数のホルダ21を収容可能な長さに形成されている。収容レール24が収容可能なホルダ21の個数は何ら限定されないが、収容レール24は、ワイヤハーネスを構成する一組の電線10を収容できることが好ましい。例えば、1つのワイヤハーネスが30本の電線10によって構成される場合、収容レール24は少なくとも30個のホルダ21を収容できることが好ましい。収容レール24上において、それらホルダ21は一列に配列される。
【0042】
図2に示すように、収容レール24は台45に載置されている。本実施形態では、ホルダ21を収容レール24に載せたまま組立場所に運ぶことができるように、収容レール24は台45に着脱自在に支持されている。例えば、収容レール24は、単に台45の上に載置されている。ただし、収容レール24は台45に移動不能に固定されていてもよい。
【0043】
ホルダ移動機構25は、ホルダ搬送機構23から収容レール24にホルダ21を移動させるものである。ホルダ移動機構25は、ケース44内のホルダ21を収容レール24に移動させる機構を備えている。ホルダ移動機構25の具体的構成は何ら限定されないが、例えば、図7に示すような構成であってもよい。
【0044】
図7に示すホルダ移動機構25は、コンベアベルト43の長手方向と平行な方向(すなわち左右方向。以下、X方向ともいう)に延びるX軸テーブル51と、X方向にスライド自在なようにX軸テーブル51に支持されたスライドベース52と、スライドベース52に固定されたシリンダ53とを備えている。スライドベース52をスライドさせる機構は何ら限定されず、例えば、スライドベース52に固定されたベルトと、そのベルトに巻き掛けられたプーリと、プーリを回転させるモータとを有する機構を好適に用いることができる。また、スライドベース52に固定されたチェーンと、そのチェーンに巻き掛けられたスプロケットと、スプロケットを回転させるモータとを有する機構であってもよい。また、スライドベース52に螺合するボールねじと、そのボールねじを回転させるモータとを有する機構等であってもよい。
【0045】
シリンダ53は、スライドベース52に固定されたシリンダ本体53aと、シリンダ本体53aから伸縮自在に延びるシリンダ軸53bとを有している。シリンダ軸53bは、X方向と直交する方向(すなわち前後方向。以下、Y方向ともいう)に延びている。シリンダ53の種類は特に限定されず、電動シリンダであってもよく、エアシリンダ等の流体圧シリンダ等であってもよい。
【0046】
シリンダ軸53bの先端には、他のシリンダ54が取り付けられている。シリンダ54は、シリンダ軸53bに固定されたシリンダ本体54aと、シリンダ本体54aから伸縮自在に延びるシリンダ軸54bとを有している。シリンダ軸54bは、X方向およびY方向と直交する方向(すなわち上下方向。以下、Z方向ともいう)に延びている。シリンダ54の種類は特に限定されず、電動シリンダであってもよく、エアシリンダ等の流体圧シリンダ等であってもよい。
【0047】
シリンダ軸54bの先端には、ベースプレート55が固定されている。ベースプレート55には、ロータリアクチュエータ56が取り付けられている。ロータリアクチュエータ56の種類は特に限定されず、例えば、電動または流体圧(例えば空気圧)を利用するロータリアクチュエータ等を用いることができる。ロータリアクチュエータ56には、ロボットハンド57が取り付けられている。ロボットハンド57は、ロータリアクチュエータ56の駆動力を受け、鉛直軸周りに回転可能となっている。なお、ロータリアクチュエータ56の代わりに、ロボットハンド57を回転させる他のアクチュエータを用いることも可能である。
【0048】
ロボットハンド57は、ホルダ21を挟持するハンド部57bと、ハンド部57bを開閉させるアクチュエータ57aとを有している。アクチュエータ57aの種類は何ら限定されず、例えば、電動または流体圧(例えば空気圧)を利用したアクチュエータを用いることができる。
【0049】
以上の構成により、ロボットハンド57は、X方向、Y方向、およびZ方向のいずれにも移動することができると共に、鉛直軸周りに回転可能である。ホルダ移動機構25は、ロボットハンド57でホルダ21を把持することによって、ホルダ21を任意の方向に移動させることができると共に、ホルダ21の向きを鉛直軸周りに任意に変更することができる。なお、ロボットハンド57を水平軸周りに回転可能に構成し、ホルダ21の向きを水平軸周りに変更可能としてもよいことは勿論である。
【0050】
ホルダ移動機構25は、左向きに搬送されてきたホルダ21をロボットハンド57で把持し、ホルダ21の向きを左向きから前向きに変えると共に、ホルダ21を所定の収容レール24上に載置する(図5参照)。これにより、ホルダ21はケース43から収容レール24に移される。ホルダ移動機構25は、任意のホルダ21を任意の収容レール24に移動させることができる。収容レール24は、ホルダ21を前後方向にスライド自在に支持する。ホルダ移動機構25は、ホルダ21を収容レール24の手前側から導入する。この際、ホルダ移動機構25は、新たに導入するホルダ21により、既に収容レール24に支持されている他のホルダ21を奥側に押し込むように移動させる。これにより、収容レール24において、複数のホルダ21を良好に整列させることができる。
【0051】
ところで、電線処理機1の制御装置2等は処理された電線10の種類を把握しているので、制御装置2等から信号を受けることにより、電線仕分け装置20において、処理された電線10の種類を特定することができる。ホルダ21には、処理された順に電線10が装着される。そのため、処理された電線10の種類が特定されると、ホルダ21に装着された電線10の種類を特定することができる。ホルダ移動機構25は、電線処理機1の制御装置2等から信号を受け、収容レール24に所定の種類の電線10が所定の規則で収容されるように、搬送されてきたホルダ21を収容レール24に適宜移動させることができる。例えば、ホルダ移動機構25は、1本の収容レール24に同種類の複数の電線10を収容させることができる。また、ホルダ移動機構25は、ワイヤハーネスを構成するために必要な一組の異種の電線10を1本の収容レール24に収容させることができる。また、それら一組の電線10を組立順に収容させることも可能である。その他、ホルダ移動機構25は、各組立場所の個別の事情に応じて、各収容レール24に複数の電線10を任意の組み合わせ方で収容させることができる。
【0052】
以上のように、電線仕分け装置20によれば、処理後の電線10は1本ずつホルダ21に装着され、各ホルダ21はホルダ搬送機構23によって搬送された後、ホルダ移動機構25によって収容レール24に適宜移される。処理後の電線10は、ホルダ21が介在することによって、個別に仕分けられる。そのため、1本の収容レール24に、同種の電線10を複数本収容したり、ワイヤハーネスの組立に必要な一組の電線10を収容できることは勿論、複数の電線10を任意の組み合わせ方で収容することが可能となる。本電線仕分け装置20によれば、組立状況等に応じた柔軟な仕分けが可能となる。
【0053】
電線10は細長い部材であるため、絡まりやすい。しかし、ホルダ21は、電線10の両端側を挟持し且つ中央側が垂れ下がった状態に電線10を保持するので、搬送時に電線が絡まることを避けることができる。したがって、電線10を円滑に仕分けることができる。
【0054】
前述したように、ホルダ21は電線10の着脱が可能であれば、その具体的構成は何ら限定されない。次に、ホルダ21の変形例をいくつか説明する。
【0055】
図8(a)および(b)に示すホルダ21Aは、回転式のクリップ60を備えたものである。このホルダ21Aは、略山形のホルダ本体61を備えている。ホルダ本体61は、頂部61aと、頂部61aの両側から斜め下がり状に傾斜した左右の傾斜部61bとを有している。クリップ60は、軸62を介して頂部61aの両側に取り付けられており、軸62の周りに回転可能である。傾斜部61bの下側部分には、クリップ60の先端部が係止される係止部材63が設けられている。クリップ60の先端部を係止できる限り、係止部材63の具体的構成は何ら限定されない。係止部材63は、クリップ60の先端部と嵌合する部材であってもよく、クリップ60の先端部と係合するフック状部材等であってもよい。また、クリップ60が磁性体で形成され、係止部材63が磁石(永久磁石、電磁石等)で形成されていてもよい。図8(c)に示すように、クリップ60は撓み変形可能な部材で構成されていてもよい。クリップ60は、例えば、ゴムで形成されていてもよく、金属製の薄板であってもよい。クリップ60の先端部が係止部材63に係止されると、電線10はクリップ60とホルダ本体61の傾斜部61bとの間に狭持される。
【0056】
図9(a)および(b)には、他のホルダ21Bが示されている。このホルダ21Bは、略山形のホルダ本体64を備えている。ホルダ本体64は、頂部64aと、頂部64aの両側から斜め下がり状に傾斜した左右の傾斜部64bとを有している。各傾斜部64bには、螺旋状のコイル65が取り付けられている。コイル65は、電線10を着脱自在に保持する保持部の一例である。電線10が装着される際には、図10(b)に示すように、電線10はコイル65の隙間に沿うような方向に向けられ、コイル65の隙間に挿入される。電線10がコイル65の隙間に挿入されると、次に、図10(a)に示すように、電線10の向きがホルダ本体64と直交するような向きに変更される。向きが変更されると、電線10はコイル65内で微小移動することはできるが、コイル65の外側に脱落することはない。これにより、電線10はコイル65によって、ホルダ21Bと共に搬送可能なように保持される。このように、本明細書においてホルダの「保持」には、電線10を微小移動しないように保持すること(いわゆる狭義の保持)だけでなく、電線10の微小移動を許容しつつ、ホルダと共に搬送可能な程度に保持することの両方が含まれる。なお、電線10をホルダ21Bから取り外す際には、上述の動作と逆の動作が行われる。
【0057】
前述したホルダ移動機構25は、ロボットハンド57によってホルダ21を把持しつつ移動させるものであった。しかし、ホルダ移動機構25の構成は特に限定されない。図11に、ホルダ移動機構25の他の一例を示す。このホルダ移動機構25は、ホルダ21を前方に押し出すプッシュ機構71と、ホルダ21の向きを変えるターンテーブル72とを備えている。
【0058】
ここでは、コンベアベルト43にはケース44は設けられておらず、ホルダ21はコンベアベルト43の上に直接載置されている。プッシュ機構71は、電動シリンダまたは流体圧シリンダからなっており、シリンダ本体71aと、シリンダ本体71aに対して伸縮自在なプッシュ軸71bとを備えている。ただし、プッシュ機構71の構成は何ら限定されない。また、プッシュ機構71の代わりに、ホルダ21を前方にスライドさせる他の機構を用いるようにしてもよい。
【0059】
ターンテーブル72は、プッシュ機構71と収容レール24との間に配置されている。プッシュ機構71およびターンテーブル72は左右に移動可能に構成されており、一組のプッシュ機構71およびターンテーブル72によって、ホルダ21を全収容レール24に収容させることができる。ただし、プッシュ機構71およびターンテーブル72は、収容レール24ごとに設けられていてもよい。また、プッシュ機構71は左右に移動可能に構成され、ターンテーブル72は収容レール24ごとに設けられていてもよい。ターンテーブル72は、図示しないモータ等の駆動装置により、鉛直軸周りに回転可能に構成されている。
【0060】
コンベアベルト43に載って搬送されてきたホルダ21は、プッシュ機構71によって前方に押し出され、コンベアベルト43上からターンテーブル72上に移される。ターンテーブル72が回転すると、ホルダ21の向きが変更される。その後、プッシュ機構71がホルダ21を再び前方に押し出すと、ホルダ21はターンテーブル72上から収容レール24内に移される。ホルダ21は収容レール24上をスライド自在である。収容レール24に新たなホルダ21が移されると、既に収容レール24に収容されていたホルダ21は、新たなホルダ21に押されることによって、前方に順次移動する。これにより、収容レール24に複数のホルダ21が整列した状態で収容される。
【0061】
前記実施形態は、コンベアベルト43および収容レール24において、略山形のホルダ21を縦置きの状態で使用するものであった。収容レール24は、皿状のものであった。しかし、ホルダ搬送機構23および収容レール24の構成は何ら限定されない。図12は、ホルダ搬送機構23および収容レールの他の一例を示す。
【0062】
本例では、ホルダ21はコンベアベルト43の上に直接載置されている。ただし、コンベアベルト43に複数のケースが固定され、それらケース内にホルダ21が収容されるようになっていてもよい。ホルダ21は、電線10が装着されるときには縦向きの状態に保たれるが、搬送時にはコンベアベルト43上において横向きに載置される。電線10は、一端側および他端側がホルダ21のクリップ31A,31Bに狭持され、ホルダ21から真っ直ぐにぶら下がった状態で搬送される。なお、電線10の長さが短い場合には、クリップ31Aまたはクリップ31Bで電線10の一端側のみを挟持し、他端側を真っ直ぐにぶら下がった状態に保つようにしてもよい。
【0063】
各収容レール24は、一対の支持板76A,76Bを備えている。両支持板76A,76Bは、コンベアベルト43の長手方向と直交する方向に延びている。ただし、収容レール24をコンベアベルト43の長手方向から傾いた方向に配置することも可能である。両支持板76A,76Bは、ホルダ21の横幅よりも短い隙間を介して、互いに対向している。ホルダ21は、電線10が両支持板76,76Bの間に位置するように、両支持板76A,76Bにスライド可能に支持される。
【0064】
図12に示す実施形態によれば、搬送時における電線10の絡みつきを更に抑制することができる。
【0065】
前記実施形態では、収容レール24に新たなホルダ21が移されると、既に収容レール24に収容されていたホルダ21は他のホルダ21によって前方に押し出され、収容レール24上を移動するようになっていた。収容レール24自体には、ホルダ21を移動させる機構は設けられていなかった。しかし、収容レール24にホルダ21を移動させる機構を設けるようにしてもよい。例えば、収容レール24の長手方向に沿ってホルダ21を移動させるコンベアベルト、搬送ローラ等を収容レール24に設けるようにしてもよい。また、シリンダと、そのシリンダの駆動力を各ホルダ21に伝達するリンク機構とを設けるようにしてもよい。
【0066】
<実施形態2>
電線処理機1で処理された電線10は、組立場所において組み立てられる。実施形態2に係る電線仕分け装置20Bは、仕分けた電線10を各組立場所に対して直接配送するようにしたものである。
【0067】
図13は、電線仕分け装置20Bおよび組立場所90を模式的に示す平面図である。組立場所90は複数設けられており、各組立場所90には組立板91が配置されている。組立板91の前方には、収容レール24が配置されている。組立人95は、電線仕分け装置20Bによって仕分けられた電線10を収容レール24から取り出し、組立板91の上でそれらの電線10を組み立てることによって、ワイヤハーネス16を作製する。
【0068】
本実施形態に係る電線仕分け装置20Bは、それぞれ1本の電線10を保持するように構成された複数のホルダ21と、電線処理機1で処理された電線10をホルダ21に装着させる電線装着機構22と、ホルダ21を収容レール24の近傍に搬送するホルダ搬送機構23と、ホルダ21をホルダ搬送機構23から収容レール24に移動させるホルダ移動機構25Bとを備えている。
【0069】
ホルダ21および電線装着機構22の具体的構成は何ら限定されず、例えば、実施形態1のホルダ21(図3参照)および電線装着機構22(図6参照)を好適に用いることができる。
【0070】
ホルダ搬送機構23は、供給路81、ホルダ移送機構82、分岐供給路83、分岐回収路84、および回収路85を備えている。供給路81は、電線10が装着されたホルダ21を電線装着機構22の近傍からホルダ移送機構82の近傍に搬送する搬送路である。分岐供給路83は、電線10が装着されたホルダ21をホルダ移送機構82の近傍からホルダ移動機構25Bの近傍に搬送する搬送路である。分岐回収路84は、電線10が装着されていないホルダ(以下、空のホルダという)21をホルダ移動機構25Bの近傍からホルダ移送機構82の近傍に搬送する搬送路である。回収路85は、空のホルダ21をホルダ移送機構82の近傍から電線装着機構22の近傍に搬送する搬送路である。供給路81、分岐供給路83、分岐回収路84、および回収路85の構成は何ら限定されず、例えば、実施形態1のホルダ搬送機構23(図2参照)と同様の構成を各々用いることができる。ホルダ移送機構82は、電線10が装着されたホルダ21を供給路81から分岐供給路83に移動させ、また、空のホルダ21を分岐回収路84から回収路85に移動させるものである。ホルダ移送機構82の構成は何ら限定されず、例えば、実施形態1のホルダ移動機構25と同様の構成を用いることができる。
【0071】
本実施形態では、収容レール24は組立場所90ごとに設けられている。電線仕分け装置20には、組立場所90の数と同数の組の収容レール24が配置されている。各組立場所90の各収容レール24にホルダ21を移動できるように、ホルダ移動機構25Bは複数設けられている。ここでは、各ホルダ移動機構25Bは、2箇所の組立場所90の収容レール24にホルダ21を移動可能に構成されている。ただし、組立場所90ごとに1台のホルダ移動機構25Bを設けてもよく、1台のホルダ移動機構25Bによって、3箇所以上の組立場所90の収容レール24にホルダ21を移動するようにしてもよい。ホルダ移動機構25Bの構成は何ら限定されず、例えば、実施形態1のホルダ移動機構25と同様の構成であってもよい。
【0072】
電線処理機1により処理された電線10は、電線装着機構22によってホルダ21に装着される。電線10を保持したホルダ21は、供給路81によってホルダ移送機構82の近傍に搬送された後、ホルダ移送機構82によって分岐供給路83に移される。このホルダ21は、分岐供給路83により移動先の収容レール24の近傍に搬送され、ホルダ移動機構25Bによって当該収容レール24に移される。このようにして、ワイヤハーネス16の作製に必要な電線10が、ホルダ21と共に収容レール24に収容される。組立人95は、収容レール24に収容されたホルダ21から電線10を取り外し、それら電線10を組み立てることによってワイヤハーネス16を作製する。電線10が取り外されて空になったホルダ21は、ホルダ移動機構25Bによって収容レール24から分岐回収路84に移される。このホルダ21は、分岐回収路84によってホルダ移送機構82の近傍に搬送され、ホルダ移送機構82によって回収路85に移される。そして、このホルダ21は、回収路85によって電線処理機1の近傍の待機場所86に搬送される。このようにして回収されたホルダ21には、電線装着機構22によって、処理後の電線10が再び装着される。そして、電線10が装着されたホルダ21は、組立場所90に向かって再び供給され、以下同様の動作が繰り返される。
【0073】
電線仕分け装置20Bは、組立場所90の状況に応じて電線10を仕分けることができる。例えば、組立作業が中断している組立場所90にはホルダ21を供給せず、その他の組立場所90にホルダ21を選択的に供給することができる。また、他の組立場所90よりも迅速に組立が行われている組立場所90、あるいは他の組立場所90よりも電線10のストックが少なくなっている組立場所90に対して、ホルダ21を優先的に供給することができる。さらに、組立場所90によってワイヤハーネス16の種類が異なっている場合、個々の組立場所90で必要とされる種類の電線10を各組立場所90に適宜供給することができる。各組立場所90に対して、使用された電線10と同種の電線10を適宜補充することができる。
【0074】
ホルダ21が保持している電線10の種類は、電線処理機1で処理される電線10の順序と、ホルダ21の搬送順序とに基づいて特定することが可能である。しかし、ホルダ21に読み書き可能な識別手段を設けておき、ホルダ21に電線10を装着させる時またはその前後に、ホルダ21が保持する電線10の種類を識別手段に書き込み、その識別手段に書き込まれている電線10の種類に基づいて、ホルダ21を仕分けるようにしてもよい。これにより、ホルダ21が保持している電線10の種類をより正確に特定することができる。
【0075】
識別手段の種類は何ら限定されない。識別手段として視覚的情報に基づくもの、例えば、文字、色、模様、一次元または二次元のバーコード等が付されたシール等を用いてもよい。また、識別手段は、ホルダ21の表面に印刷されたバーコード等自体であってもよい。識別手段は、無線通信によって情報の読み書きがされるものであってもよい。従来から識別手段として用いられている任意のものを利用することができる。以下では、識別手段として、RFID(Radio frequency identification)の一例であるICタグを利用した実施形態を説明する。
【0076】
図3に示すように、本実施形態では、ホルダ21にICタグ88が設けられている。図示は省略するが、ICタグ88は、アンテナと、情報の読み書きが可能なICチップとを有している。ICタグ88はホルダ21の任意の箇所に設けることができる。
【0077】
図14に示すように、本実施形態に係る電線仕分け装置20Bは、ICタグ88に情報を書き込む書き込み装置(いわゆるICタグライタ)Wと、ICタグ88から情報を読み取る読み取り装置(いわゆるICタグリーダ)Rと、ICタグ88に書き込まれている情報を消去する消去装置Eとを備えている。また、電線仕分け装置20は、各種制御を行うコンピュータ89を備えている。
【0078】
書き込み装置Wは、電線処理機1による電線10の処理が終了した後(例えば、端子が圧着される電線10については端子圧着後)に、当該電線10を保持することになるホルダ21のICタグ88に、当該電線10の種類に関する情報を書き込む。書き込み装置Wの位置は特に限定されないが、例えば、書き込み装置Wは電線装着機構22の側方に配置されていてもよい。
【0079】
読み取り装置Rは、ホルダ21がホルダ移送機構82によって分岐供給路83に移送される前に、ICタグ88の情報を読み取るようになっている。例えば、読み取り装置Rは、書き込み装置Wとホルダ移送機構82との間に配置されていてもよい。読み取り装置Rがホルダ21のICタグ88の情報を読み取り、その情報に基づいて、電線仕分け装置20Bのコンピュータ89は当該ホルダ21の供給先を決定する。すなわち、コンピュータ89は、当該ホルダ21をどの組立場所90に供給するかを決定する。ホルダ21の供給先が決定されると、コンピュータ89は、各ホルダ21が各供給先に供給されるよう、供給路81、ホルダ移送機構82、分岐供給路83、およびホルダ移動機構25Bを制御する。これにより、各組立場所90の収容レール24に、電線10が適宜仕分けられる。
【0080】
消去装置Eは、空になったホルダ21のICタグ88の情報を消去する。消去装置Eの設置位置は特に限定されないが、本実施形態では、消去装置Eは分岐回収路84の終端の位置に配置されている。消去装置Eは、空になったホルダ21が分岐回収路84から回収路85に移される前に、当該ホルダ21のICタグ88の情報を消去する。
【0081】
このように、各ホルダ21が保持している電線10の種類に関する情報をICタグ88に書き込み、ホルダ21の搬送中にICタグ88から情報を読み込むことにより、ホルダ21が保持している電線10の種類を任意のタイミングで特定することができる。そのため、処理後の電線10の移動先を必ずしもホルダ21に装着する際に決めておく必要はなく、電線10がホルダ21に装着された後、組立場所90の組立状況等に応じて、各ホルダ21(言い換えると、各電線10)を臨機応変に仕分けることが可能となる。
【0082】
なお、書き込み装置W、読み取り装置R、および消去装置Eの配置は、上記実施形態の配置に限定されない。例えば、消去装置Eを回収路85の終端の位置に設けてもよい(図14の仮想線参照)。消去装置をホルダ21の待機場所86に設けてもよい。
【0083】
また、書き込み装置W、読み取り装置R、および消去装置Eの配置は、例えば図15に示すような配置であってもよい。ここでは、書き込み装置Wは、ホルダ21の待機場所86の近傍に配置されており、ホルダ21に電線10が装着される前に、当該ホルダ21のICタグ88に情報を書き込む。具体的には、書き込み装置Wは、電線処理機1による電線10の処理中に(例えば、端子が圧着される前の工程にて)、ホルダ21が保持することになる予定の電線10の種類に応じて、当該ホルダ21のICタグ88に情報を書き込む。
【0084】
読み取り装置Rは、前記実施形態と同様、書き込み装置Wとホルダ移送機構82との間に配置されている。読み取り装置Rは、ホルダ21がホルダ移送機構82によって分岐回収路83に移される前に、ICタグ88の情報を読み取る。
【0085】
消去装置Eは、空になったホルダ21を収容レール24から分岐回収路84に移す際に、ホルダ21のICタグ88の情報を消去する。消去装置Eは、収容レール24および分岐回収路84の近傍に設置されている。消去装置Eは、組立場所90ごとに設けられていてもよく、2箇所以上の組立場所90において、1つの消去装置Eを兼用するようにしてもよい。消去装置Eは、ホルダ21が収容レール24内にあるときにICタグ88の情報を消去してもよく、ホルダ21が分岐回収路84上に移動した後にICタグ88の情報を消去してもよい。
【0086】
組立場所90の組立状況を検出する装置を設け、組立場所90の組立状況に応じてホルダ21を適宜仕分けるようにしてもよい。例えば、図16に示すように、各収容レール24の近傍にICタグリーダからなる読み取り装置R2を設け、この読み取り装置R2により、各組立場所90において空になったホルダ21のICタグ88の情報を読み取るようにしてもよい。これにより、各組立場所90で使用された電線10の種類を特定することができる。したがって、各組立場所90の組立状況を把握することができる。
【0087】
コンピュータ89は、各組立場所90の組立状況に応じて、電線10が装着されたホルダ21を組立場所に適宜供給する。具体的には、コンピュータ89は、各組立場所90で使用された電線10に応じて、ホルダ搬送機構23およびホルダ移動機構24を制御する。例えば、コンピュータ89は、各組立場所90で使用された電線10を補充するように、当該電線10と同種類の電線を当該各組立場所90に供給するようにしてもよい。また、コンピュータ89は、電線10の使用量の多い(言い換えると、組立作業が速い)組立場所90に対し、他の組立場所90に優先してホルダ21を供給するようにしてもよい。
【0088】
各収容レール24の近傍に配置された読み取り装置R2は、各組立場所90で使用された電線10を特定する使用電線特定手段の一例である。ただし、使用電線特定手段は読み取り装置R2に限定されず、他の手段であってもよい。例えば、使用電線特定手段は、使用された電線10の種類の情報が組立人95によって入力される入力装置等であってもよい。
【0089】
<他の実施形態>
実施形態2に係る電線仕分け装置20Bは、電線装着機構22により電線10をホルダ21に装着した後、そのホルダ21をそのまま組立場所90の収容レール24に供給するものであった。しかし、電線装着機構22と収容レール24との間に、電線10を保持したホルダ21を一時的に溜めておく保管場所を設けておいてもよい。ホルダ搬送機構23は、その中途に保管場所を備えていてもよい。保管場所の構成は何ら限定されないが、例えば、実施形態1にて説明した収容レール24を用いることができる。例えば、実施形態1の収容レール24の奥側(図2において、ホルダ移動機構25と反対側)に、実施形態2のホルダ移送機構82、分岐供給路83、ホルダ移動機構25B等を設けるようにしてもよい。
【0090】
ホルダ21に保持されている電線10の種類は、ICタグ88から情報を読み取ることによって特定することができる。したがって、保管場所に多数のホルダ21を保管しておいたとしても、各ホルダ21のICタグ88の情報を読み取ることによって、各ホルダ21が保持している電線10の種類を迅速且つ正確に特定することができる。そのため、必要な電線10を組立場所90に正確に供給することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 電線処理機
10 電線
20 電線仕分け装置
21 ホルダ
22 電線装着機構
23 ホルダ搬送機構
24 収容レール(収容体)
25 ホルダ移動機構
31A 第1クリップ(第1保持部)
31B 第2クリップ(第2保持部)
88 ICタグ(識別手段)
89 コンピュータ(制御手段)
90 組立場所
W ICタグライタ(書き込み手段)
R ICタグリーダ(読み取り手段)
R2 ICタグリーダ(使用電線特定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線の切断、被覆の剥ぎ取り、および端子の圧着の少なくとも一つの処理を行う電線処理機により処理された電線を仕分ける電線仕分け装置であって、
それぞれ1本の電線を着脱自在に保持する複数のホルダと、
前記電線処理機によって処理された各電線を前記各ホルダに装着させる電線装着機構と、
前記ホルダを搬送するホルダ搬送機構と、
前記ホルダを収容する複数の収容体と、
前記ホルダを前記ホルダ搬送機構から前記収容体に移動させるホルダ移動機構と、
を備えた電線仕分け装置。
【請求項2】
前記ホルダは、電線の一部を着脱自在に保持する第1および第2の保持部を有している、請求項1に記載の電線仕分け装置。
【請求項3】
前記収容体は、前記ホルダをスライド自在に支持する収容レールからなり、
前記ホルダ移動機構は、前記ホルダ搬送機構により搬送されたホルダを前記収容レールの一端側から導入し、前記収容レールに支持されている他のホルダを前記ホルダによって他端側に押し込むように構成されている、請求項1または2に記載の電線仕分け装置。
【請求項4】
前記収容体は、処理後の電線が組み立てられる組立場所の近傍にそれぞれ配置されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の電線仕分け装置。
【請求項5】
前記各ホルダには、情報の読み書きが可能な識別手段が設けられ、
前記各ホルダが保持する電線の種類を特定する情報を前記各識別手段に書き込む書き込み手段と、
前記各識別手段の情報を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段が読み取った情報に基づいて、前記ホルダ移動機構を制御する制御手段と、
を備えている請求項1〜4のいずれか一つに記載の電線仕分け装置。
【請求項6】
前記識別手段はICタグからなり、
前記書き込み手段、前記読み取り手段は、それぞれ前記ICタグと無線通信を行うICタグライタ、ICタグリーダからなっている、請求項5に記載の電線仕分け装置。
【請求項7】
各組立場所で使用された電線を特定する使用電線特定手段と、
各組立場所で使用された電線に応じて前記ホルダ移動機構を制御する制御手段と、
を備えている請求項1〜6のいずれか一つに記載の電線仕分け装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−104425(P2012−104425A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253370(P2010−253370)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】