説明

電線保護管の端末固定具

【課題】電線保護管の端部の外周面に鍔部が有っても無くても関係なく使用できる電線保護管の端末固定具を提供する。
【解決手段】長手方向の両端面が開放すると共に下端縁が長手方向に沿って分割され、その分割部14を挟んだ両側から一対の突出片11a,11bが下方へ延設され、分割部1aから電線Dを挿通して該電線Dに被着するようにした電線保護管Bを移動不能に固定する電線保護管の端末固定具Aであって、電線保護管Bの端面からその管内に挿入される支持杆2と、重なった両突出片11a,11bをその外側から挟着する一対の挟持片3,3と、電線Dに着脱不能に固定するためのインシュロック機構5,と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱と電柱の間や電柱と建物との間といった空間に架設される電線に被着して該電線を保護する電線保護管の端末固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱と電柱との間の空間に架設される電線が樹木に掛かる場合、風が吹いて該樹木の枝が電線に頻繁に接触し、該電線の被複層の表面を擦って剥がし、最終的には芯線が露出して電線がショートする恐れがある。そこで、このような危険性のある箇所には、所定長さの電線保護管を適宜継ぎ足すなどして電線に被着するようにしている。該電線保護管は電線に沿ってズレては困るので、一般にその管端を電線に固定している。その手段として、例えば本出願人が出願した特許文献1に示される端末固定具がある。
【0003】
前記端末固定具は、鉛直な主幹の上下両端に水平腕部をそれぞれ突設させて側面コ形状の本体部材を形成し、下の水平腕部に上下動自在なねじ棒を螺合し、上の水平腕部に電線保護管の外表面に掛止させる掛止腕片を突設して構成される。そして、該端末固定具を電線保護管の端に配置し、掛止腕片を電線保護管の端部の外周面に周設された鍔部に掛け止し、この状態でねじ棒を締め付けてその上端と上の水平腕部との間で電線を挟むようにして電線保護管を電線にズレないように固定している。鍔部は同じ電線保護管を連結するためのものである。
【0004】
【特許文献1】特開平5−252627号公報(第2−3頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に示した端末固定具は、端部の外周面に鍔部を周設した電線保護管でなければ固定することができず、低圧用の電線保護管のような鍔部のない電線保護管については使用できないという課題が有った。
【0006】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされてもので、端部の外周面に連結用の鍔部が有っても無くても関係なく使用できる電線保護管の端末固定具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本発明に係る電線保護管の端末固定具は、長手方向の両端面が開放すると共に下端縁が長手方向に沿って分割され、その分割部を挟んだ両側から一対の突出片が下方へ延設され、前記分割部から電線を挿通して該電線に被着するようにした電線保護管を移動不能に固定する電線保護管の端末固定具であって、前記電線保護管の端面からその管内に挿入される支持杆と、前記重なった両突出片をその外側から挟着する一対の挟持片と、前記電線に着脱不能に固定するためのインシュロック機構と、を備えてなることを特徴とする。
【0008】
前記支持杆は1本でも良いが、2本又は3本といった複数本であっても良い。また、電線保護管の両突出片を挟む一対の挟持片にあっては、その互いに対向する面に滑り止め手段を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電線保護管の端末固定具は、長手方向の両端面が開放すると共に下端縁が長手方向に沿って分割され、その分割部を挟んだ両側から一対の突出片が下方へ延設され、分割部から電線を挿通して該電線に被着するようにした電線保護管を移動不能に固定してなり、電線保護管の端面からその管内に挿入される支持杆と、重なった両突出片をその外側から挟着する一対の挟持片と、電線に着脱不能に固定するためのインシュロック機構と、を備えてなる。よって、電線保護管の端面から管内に支持片を挿入すると共に一対の挟持片により両突出片を挟着した状態で、端末固定具を電線に固定するようになり、従来のように端部に鍔部がない電線保護管についても使用できる。しかも、電線保護管がズレることなくしかもしっかりと固定されるという効果がある。
【0010】
また、特に、電線保護管を固定する場合、一対の挟持片により電線保護管の重なる両突出片を外側から挟むようにしているので、両突出片が離れその間が必要もなく開いてしまうことも防止されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る電線保護管の端末固定具(以下、単に「端末固定具」という。)の実施の形態を図面と共に説明する。図1は本発明に係る端末固定具の斜視図、図2は同拡大正面図、図3は同一部断面にして示す拡大平面図、図4は同拡大左側面図である。この端末固定具Aは、合成樹脂製であって、灰色やその他の色が使用されるが、耐候性を考慮すると、これに優れるようにカーボンを含浸させて黒色に成形することが好ましい。
【0012】
そして、端末固定具Aは、本体部1の一側から外方へ所定の長さ(例えば30mm)真直ぐに延設される支持杆2を有する。該支持杆2は、後記する電線保護管Bの管内に挿入されるもので、先端が半球状に丸くなっている。また、本体部1の前記支持杆2が延設された側と同じ側に、該支持杆2とほぼ平行をなしかつほぼ同じ長さを有する一対の挟持片3,3を有する。この挟持片3,3は、後記する電線保護管Bの両突出片11a,11bを挟着するためのものであって、前記支持杆2よりも下方へ少し間隔を離し、かつ、支持杆2を挟んでその両側に同じ間隔離して平行に配置される。
【0013】
支持杆2と2本の挟持片3,3を含む面との間隔L1は電線保護管Bの肉厚相当分の寸法に設定され、両挟持片3,3間の間隔L2は両突出片11a,11bを重ねたほぼ肉厚相当分の寸法に設定される。一対の挟持片3,3は、両突出片11a,11bを挟着して締め付ける関係上、多少弾力性が持たせてある。また、両挟持片3,3の互いに対向する内面3a,3aに、滑り止め効果を発揮させる滑り止め手段が設けられる。本実施の形態にあっては、互いに両内面3a,3aから挟持片3,3の基端側へ傾斜する複数の爪片4が突設されている。これら各爪片4の先端部は、先鋭に形成されている。更に、両挟持片3,3における先端部の内側面3b,3bは、窄まるように互いに傾斜させている。
【0014】
本体部1には電線Dに端末固定具Aを固定するためのインシュロック機構が設けられる。すなわち、本体部1の上部に上方へ伸びる屈曲可能なバンド5が一体に設けられる。このバンド5は支持杆2や挟持片3,3と直交する面内で自在に屈曲するようになっている。そして、その一側面に先端部を除いて長手方向と直交し、かつ、断面が鋸歯状をなす多数の噛合部を列設した噛合部列6が形成されている。また、バンド5の他側面には、その先端側に手の引っ掛かりを良くする複数の突条7がバンド5の幅方向に平行に突設される。
【0015】
一方、本体部1に、バンド5に対応位置させて該バンド5を挿通させる挿通孔8が貫設される。そして、その挿通孔8の一端が差し込み口8aとなり、また、挿通孔8の他端が引き出し口8bとなる。前記バンド5の基端は、挿通孔8に近接させてその上部に設けられる。そして、挿通孔8の内側面であってバンド5の基端が取り付けられる部位と対向する面に、引き出し口8b側へ傾きバンド5の噛合部列6と係合しバンド5の逆抜けを阻止する弾性噛合部9が突設される。
【0016】
本発明に係る端末固定具Aは上記構成からなり、次に、該端末固定具Aを使って電線に被着した電線保護管を固定する手順を説明する。図5において、Bは電線Dに被着する電線保護管であり、合成樹脂材からなる。該電線保護管Bは、所定の長さを有し、長手方向の両端面10が開放されると共に、下端縁が長手方向に沿って分割されている。そして、その分割部14の両側から下方へかつ長手方向に沿って突出片11a,11bが設けられている。一方の突出片11aの内側面にその長手方向に沿って係合凸条12が設けられ、他方の突出片11bの内側面にはその長手方向に沿って該係合凸条12が係合する係合凹条13が設けられている。
【0017】
そこで、電線Dに被着された電線保護管Bを該電線Dに固定するには、図5乃至図6に示すように該電線保護管Bの一端に本発明の端末固定具Aを配置し、その管内に支持杆2を挿入すると共に両挟持片3,3間に電線保護管Bの突出片11a,11bを入れる。この際、両係合凸条12と係合凹条13とは共に係合させてあり、両突出片11a,11bは分割部14が閉じるように重なっている。また、端末固定具Aは、電線Dの下側に接触するように位置する。
【0018】
次に、前記状態で端末固定具Aを更に電線保護管B内に押し込む。しっかり押し込んだ状態で、バンド5を屈曲させ電線Dを巻き込むようにしてその先端を挿通孔8にその差し込み口8aから挿入し、引き出し口8bから引き出して締め止めする。この状態では、バンド5の一側面の噛合部が挿通孔8内の弾性噛合部9に係合して逆抜けが阻止される。
【0019】
これにより、図7に示すように電線保護管Bの管内に支持杆2が挿通され、しかも、一対の挟持片3,3が両突出片11a,11bをその両側から挟着するので、丁度三角地点で電線保護管Bを固定することとなり、その取付状態がぐらつくことなく安定する。更に、両挟持片3,3の対向する内面に設けられた複数の爪片4の先端が突出片11a,11bの外面に食い込み、端末固定具Aの必要のない管内からの引き抜き動作が防止される。この場合、一対の挟持片3,3は両突出片11a,11bを挟着しているので、該各挟持片3,3の必要のない開き動作を防止している。
【0020】
また、バンド5は電線Dと端末固定具Aを一体に締め付け緩むことが無いので、電線保護管Bの電線Dに沿って必要もなくズレることが防止される。この場合、電線保護管Bの長手方向の一端のみに端末固定具Aを固定したが、電線保護管Bの長手方向の両端に端末固定具Aを固定するようにしても良い。
【0021】
このように、本発明は電線保護管Bの端面から管内に支持杆2を挿入すると共に一対の挟持片3,3で電線保護管Bの両突出片11a,11bを挟着した状態で、端末固定具Aを電線Dに固定するようになるので、従来のように端部に鍔部がない電線保護管についても使用できる。
【0022】
なお、本発明にあっては、支持杆2を1本のみ設けたが、これに限られるものではなく左右均等位置に2本、3本または4本というように複数本設けても良い。これは、例えば電線保護管Bの内径が大きい場合に有効的である。また、両挟持片3,3の対向する内面に設けた滑り止め手段としては、爪片4に限られるものではなく、同等の滑り止め効果が得られるものであれば、他の手段であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る端末固定具の斜視図。
【図2】同拡大正面図。
【図3】同一部断面にして示す拡大平面図。
【図4】同拡大右側面図。
【図5】同取付手順を示す斜視図。
【図6】図5のX−X線矢視図。
【図7】端末固定具が取り付いた状態の斜視図。
【符号の説明】
【0024】
2 支持杆
3 挟持片
5 バンド
6 噛合部列
8 挿通孔
9 弾性噛合部
11a 突出片
11b 突出片
A 端末固定具
B 電線保護管
D 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の両端面が開放すると共に下端縁が長手方向に沿って分割され、その分割部を挟んだ両側から一対の突出片が下方へ延設され、前記分割部から電線を挿通して該電線に被着するようにした電線保護管を移動不能に固定する電線保護管の端末固定具であって、
前記電線保護管の端面からその管内に挿入される支持杆と、前記重なった両突出片をその外側から挟着する一対の挟持片と、前記電線に着脱不能に固定するためのインシュロック機構と、を備えてなることを特徴とする電線保護管の端末固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−57334(P2010−57334A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222350(P2008−222350)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000243939)名伸電機株式会社 (38)
【Fターム(参考)】