説明

電線用コネクタ

【課題】 トラッキングを抑制できる電線のコネクタを提供する。
【解決手段】 互いに嵌め合わされる第1コネクタ部100と第2コネクタ部200とを有する電線用コネクタである。この第1コネクタ部は、内側から順に、内部導体111、絶縁層112、外部導体113およびシース114を有する電線の端部を段剥ぎし、内部導体、絶縁層、外部導体を順次段階的に露出した電線端末と、露出された内部導体に固定された接続端子部120と、この露出された絶縁層の外側に設けられて、露出された内部導体から外部導体までの導電経路を遮断する放電抑止部材130とを有する。そして、第2コネクタ部は、前記放電抑止部材と接合されると共に、導電経路となる絶縁層表面の周囲を覆う放電抑止層220を有し、さらに第1コネクタ部の接続端子部120と係合される抜け止め係合部240を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車用高圧ワイヤハーネスなどの接続に好適なコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車のバッテリ、コンバータ、インバータ、モータ間には高圧が印加され、パワーが供給されている。特に、コンバータからインバータ、モータの電力系では高圧が印加され、例えば市販車では500Vまでの電圧で供給されている例があり、さらにモータの高出力化に伴い高電圧化されてきている。
【0003】
このような電力系統での電力供給には、図6に記載のワイヤハーネス用電線が用いられている。これは中心側から順に内部導体111、絶縁層112、外部導体113、シース114を具えている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、このような電線の端末接続には、図6〜図8に記載のコネクタが利用されている。このコネクタは、互いに嵌め合う第1コネクタ部と第2コネクタ部とから構成される。
【0005】
第1コネクタ部の形成には、図6に示すように、まず、中心から順に内部導体111、絶縁層112、外部導体113、シース114を有する電線端末110を段剥ぎし、内部導体111、絶縁層112、外部導体113を段階的に露出した状態にしておく。一方、外部導体固定部材140と、接続端子部120とを用意する。外部導体固定部材140はリング状の部材で、露出した外部導体113の外周に嵌められ、接続端子部120は露出された内部導体111に固定される。この接続端子部120は、一端が内部導体に圧着される圧着部121を、他端が後述する第2コネクタ部にはめ込まれる接触部122を有する。そして、その接触部122には、その底面に嵌合孔122aが形成され、その嵌合孔122aに次述する第2コネクタ部のロック爪が嵌め合わされて抜け止めとして機能される。
【0006】
一方、第2コネクタ部200は、第1コネクタ部に嵌合されて、コネクタの先端側を構成する部材で、図7に示すように、ほぼブロック状のコネクタハウジング210を有し、このハウジング210の一端面に第1コネクタ部の挿入孔211が形成されている。挿入孔内には、第1コネクタ部の外部導体固定部材140に接触する板状の外部導体接続層230と、第1コネクタ部の接触部122と係合する抜け止め係合部240が設けられている。そして、抜け止め係合部240には前記第1コネクタ部の嵌合孔に嵌め込まれるロック爪240bが形成されている。
【0007】
上記の第1コネクタ部と第2コネクタ部は、図8に示すように組み合わされる。つまり、第2コネクタ部の挿入孔に第1コネクタ部を差し込み、外部導体固定部材140の外周に外部導体接続層230を接触させると共に、ロック爪240bを第1コネクタ部の嵌合孔122aに嵌め込んで、両コネクタ部を互いに抜けないように接続する。
【0008】
【特許文献1】特開平6-124608号公報(図17)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記のコネクタでは、いわゆるトラッキング現象を生じて、電力の供給が正常に行えない場合が生じるという問題があった。
【0010】
上記のコネクタでは、段階的に露出された内部導体と外部導体との間における絶縁層表面で放電を生じる可能性がある。この間はポリエチレンなどからなる絶縁層により絶縁が確保されているが、絶縁層表面は空気に接している。初期状態では絶縁層表面に異物が付着していないので絶縁が確保されている。例えば、異物による汚損のない清浄な絶縁層表面では1cm当たり10kVを超える絶縁耐力を持つ。しかし、この部分は空気に接しており結露等で水分が付着して、空中の粉塵が付着する可能性がある。粉塵には例えば塩分等の成分もあり、このようなイオン性の物質が付着した場合には、導電経路が形成される。その結果、絶縁層表面で温度上昇が発生し、最終的に放電に至るトラッキング現象を生じることがある。例えば、イオン性の物質で絶縁層表面が汚損された場合には、数100V程度でフラッシオーバーを起こすことがある。このような放電現象が生じた場合には、ショートした状態が発生し、電線による電力の供給ができない状態となる。
【0011】
従って、本発明の主目的は、トラッキングを抑制できる電線のコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、絶縁層表面の導電経路を遮断すること、特に、導電経路周辺を封止することで上記の目的を達成する。
【0013】
本発明電線用コネクタは、内部導体、絶縁層、外部導体を順次段階的に露出した電線端末と、露出された内部導体に固定された接続端子部と、この露出された絶縁層の外側に設けられて、露出された内部導体から外部導体までの導電経路を遮断する放電抑止部材とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明コネクタでは、段剥ぎにより露出された内部導体から外部導体の間に位置する絶縁層に放電抑止部材を設けることで、導電経路を遮断する。これにより、トラッキングの発生を抑制することができる。
【0015】
ここで、さらに、前記放電抑止部材と接合されると共に、導電経路となる絶縁層表面の周囲を覆う放電抑止層を有することが好ましい。この構成により、導電経路となる絶縁層表面を封止する。それにより、絶縁層表面を封止空間内に収納して、異物の絶縁層表面への付着を回避し、導電経路の形成を抑制することができる。
【0016】
放電抑止部材の外径は、先端側ほど小さく、後端側ほど大きいテーパー状に形成されていることが好ましい。放電抑止部材の外径をテーパー状に形成することで、放電抑止部材の放電抑止層への挿入を容易にすることができる。
【0017】
さらに、本発明電線用コネクタにおいて、前記放電抑止層と一体に構成されると共に、接続端子部と係合する抜け止め係合部を有することが望ましい。抜け止め係合部を設けることで、放電抑止部材と放電抑止層とを接触箇所が外れないようにすることができる。
【0018】
以下、本発明の構成をより詳しく説明する。
【0019】
本発明コネクタは、第1コネクタ部と第2コネクタ部とから構成し、両コネクタ部を互いに嵌合することで、単一のコネクタを形成することが好ましい。両コネクタ部の嵌合により単一のコネクタを形成することで、内部導体と外部導体との間における絶縁層表面の導電経路を効果的に遮断する構造を容易に構築することができる。特に、第1コネクタ部に放電抑止部材を、第2コネクタ部に放電抑止層を設けることで、導電経路を覆う構成を容易に形成できる。各コネクタ部を個別に説明する。
【0020】
〔第1コネクタ部〕
第1コネクタ部は、代表的には、電線端末、接続端子部、放電抑止部材を有する。その他、通常は外部導体固定部材も有する。
【0021】
(電線端末)
本発明コネクタが形成される電線は、例えば内部導体、絶縁層、外部導体、シースを有する。必要に応じて、内部半導電層および外部半導電層を設けてもよい。コネクタ形成時、電線端部の被覆層を段剥ぎして、内部導体、絶縁層、外部導体を順次段階的に露出させる。
【0022】
<内部導体>
内部導体は、必要な送電容量が確保できるものであればよく、特に材質・構成が限定されるわけではない。材質としては、銅線、錫めっき銅線、アルミ線、アルミ合金線、鋼心アルミ線、カッパーフライ線、ニッケルめっき銅線、銀めっき銅線、銅覆アルミ線などが挙げられる。内部導体の構成としては、単線とより線が考えられるが、一般に複数の素線をより合わせたより線構造が好適である。
【0023】
<絶縁層>
絶縁層は電線の電圧に応じた耐電圧性を具える構成とする。絶縁層の材質としては、エチレンプロピレンゴム、ビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリスチレンなど)、ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、珪素ゴム、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。特に、架橋ポリオレフィン、中でも架橋ポリエチレンが好適である。
【0024】
<内部・外部半導電層>
絶縁層の内側に内部半導電層を設けることで内部導体と絶縁層の界面における微小なギャップを埋め、絶縁層の外側に外部半導電層を設けることで、絶縁層と外部導体との界面における微小なギャップを埋め、部分放電の発生を抑制することができる。また、これら微小なギャップをなくすることで、水トリーの発生の起点をなくすこともでき、水トリーの発生に起因する絶縁劣化を抑制することができる。
【0025】
内部・外部半導電層は、樹脂と導電性フィラーとの混合物で構成することが好ましい。導電性フィラーの混合により、所定の導電率を半導電層に付与することができる。樹脂はポリエチレン、ポリ塩化ビニルおよびポリ酢酸ビニルよりなる群から選択される少なくとも一種が望ましい。フィラーはカーボンブラックが好適に利用できる。
【0026】
<外部導体>
外部導体は銅線などの金属線の編組材を用いることができる。外部導体を設けることで、誘導防止用の遮蔽と危険防止用の遮蔽を行なうことができる。
【0027】
<シース>
その他、外部導体の上にシースを設けてもよい。シースを設けることで、シールド層の機械的保護を図ることができる。シースは、一般にクロロプレンゴム、ビニル樹脂、ポリエチレンなどで構成される。
【0028】
<接続端子部>
露出された内部導体には、接続端子部が固定される。この接続端子部は、本発明コネクタが嵌合される機器側コネクタの端子部に接続される。接続端子部の構成例としては、一端が内部導体に圧着される圧着部を、他端が第2コネクタ部にはめ込まれる接触部を有するものが挙げられる。そして、その接触部には、第2コネクタ部との抜け止めを設けることが望ましい。例えば、接触部の底面に嵌合孔を形成し、その嵌合孔に第2コネクタ部のロック爪が嵌め合わされる様に構成すればよい。
【0029】
<放電抑止部材>
第1コネクタ部の露出した絶縁層の外周には放電抑止部材を設ける。放電抑止部材は、絶縁材料で形成され、露出した絶縁層に発生しようとする導電経路を遮断する。この放電抑止部材の材料は、トラッキングの発生を抑制できる程度の絶縁性を有するものであればよい。代表的には、ポリエチレンやゴムなどが挙げられる。また、放電抑止部材の形状は環状が好適である。環状とすることで、絶縁層の外側につば状に放電抑止部材を設置することが容易にできる。環状とした放電抑止部材の外径は、後述する外部導体固定部材の外径よりも若干小さい程度が好ましい。このような外径とすることで、放電抑止部材と放電抑止層との接合を行うと共に、外部導体固定部材と外部導体接続層との接続を確実に行うことができる。
【0030】
<外部導体固定部材>
外部導体固定部材は、例えばリング状の部材で、露出した外部導体の外周に嵌められ、第2コネクタ部の外部導体接続層と接続される。この固定部材の材料には、導電性材料を用いる。例えば銅、銅合金、錫メッキ銅、導電性樹脂などが好適に利用できる。
【0031】
〔第2コネクタ部〕
第2コネクタ部は、代表的には、第1コネクタ部が挿入される挿入孔を持ったハウジングと、ハウジング内に設けられた放電抑止層と、第1コネクタ部の接続端子部が嵌合される抜け止め係合部を有する。
【0032】
<ハウジング>
ハウジングは、第2コネクタ部の外形を形成すると共に絶縁を確保するケースとしての機能を有する。例えば、第2コネクタ部は第1コネクタ部の先端側にはめ込まれ、ハウジングは第1コネクタ部の差し込み口を形成する。代表的には、ほぼブロック状の形状であり、材質は電気絶縁材料として利用される種々の樹脂が用いられる。より具体的には、ポリブチレンテレフタレートなどが好適に利用できる。
【0033】
ハウジングには第1コネクタ部の挿入孔が設けられる。1本の電線を接続する場合は一つの挿入孔があいたハウジングでよいが、複数の挿入孔を有する端末部材とすれば、各挿入孔に電線を差し込むことで、複数の電線を一括して接続することができる。例えば、3相の電線を接続する第2コネクタ部のハウジングでは、ハウジング自体を扁平なブロック状とし、その一端面に3つの挿入孔を並列すればよい。複数の挿入孔を有する場合、もちろん挿入孔ごとに後述する放電抑止層や係合端子部が形成される。
【0034】
<放電抑止層>
放電抑止層は、ハウジング内に配され、第2コネクタ部に挿入された第1コネクタ部の導電経路発生箇所周辺を覆って、この発生箇所に異物が付着することを回避し、導電経路の形成を抑制する機能を有する。第2コネクタ部に設ける放電抑止層も放電抑止部材と同様の材質で構成することが好ましい。また、この抑止層の形態は円筒状が望ましい。円筒状の抑止層とすることで、第1コネクタ部が第2コネクタ部に差し込まれた際、導電経路となる絶縁層表面を放電抑止部材と放電抑止層で囲まれる空間内に封止することが容易にできる。
【0035】
<抜け止め係合部>
抜け止め係合部は、ハウジングの挿入孔内に設けられて、第1コネクタ部の接続端子部と係合されることで第1・第2コネクタ部の抜けを防止する。抜け止め係合部は、接続端子部と嵌め合いできる構成であれば良く、絶縁材料で構成しても導電材料で構成してもいずれでも良い。例えば、抜け止め係合部には、第1コネクタ部の嵌合孔に嵌め込まれるロック爪を形成することが挙げられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明コネクタによれば、次の効果を奏することができる。
【0037】
(1)電線端部で段剥ぎにより露出された絶縁層表面の導電経路を放電抑止部材で遮断することで、安全に電力を給電することができる。
【0038】
(2)放電抑止層により導電経路の生じる箇所周辺を覆うことで、導電経路発生箇所に異物が付着することを抑制し、効果的に導電経路の発生を抑制することができる。
【0039】
(3)簡易な構成により、高電圧を安定して供給できる電線用コネクタとすることができる。
【0040】
(4)放電抑止部材の外径をテーパー状に形成することで、放電抑止層への挿入を容易にすることができる。それに伴って、放電抑止部材と放電抑止層の接合箇所の品質を安定させることができる。
【0041】
(5)抜け止め係合部を形成することで、接合された放電抑止部材と放電抑止層とが不用意に外れることを防止できる。また、この抜け止め係合部は、放電抑止部材と放電抑止層とを接合する際の位置決め機能も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0043】
図1〜図3に基づいて本発明コネクタを説明する。本発明コネクタは、電気自動車におけるワイヤハーネス用電線の端部に形成された第1コネクタ部100と、第1コネクタ部の先端に嵌め込まれる第2コネクタ部200とから構成される。両コネクタ100,200は、互いに接合されることで、電線端部における単一の電線側コネクタを構成する。
【0044】
〔第1コネクタ部〕
第1コネクタ部100は、図1、図2(A)に示すように、電線端末110、接続端子部120、放電抑止部材130および外部導体固定部材140を有する。
【0045】
本発明コネクタが形成される電線は、内部導体111、内部半導電層、絶縁層112、外部半導電層、外部導体113、シース114を有する。コネクタ形成時、電線端部の被覆層を段剥ぎして、内部導体111、絶縁層112、外部導体113を順次段階的に露出させる。
【0046】
各構成部材の具体的構造・材質は次の通りである。
内部導体:銅より線
内部・外部半導電層:ポリエチレンとカーボンブラックの混合物
絶縁層:ポリエチレン
外部導体:軟銅線からなる編組材
シース:ポリ塩化ビニル
【0047】
上記の電線における露出された内部導体111には、第2コネクタ部側と接続するための接続端子部120が固定される。この接続端子部120は、一端に内部導体111と圧着される圧着部121を、他端に第2コネクタ部200にはめ込まれる接触部122を有する。圧着部121は、一部に切欠が形成された円筒状の金属片で、内部導体111の外周にはめ込まれて、圧着機で圧縮することにより内部導体111に固定される。接触部122は断面がほぼ矩形の角柱状金属片で、上面側に切欠が形成され、下面側に第2コネクタ部200との係合を図るための嵌合孔122aが形成されている。そして、圧着部121と接触部122は平板状の連結片123で一体化されている。
【0048】
また、第1コネクタ部の露出した絶縁層112の外周には放電抑止部材130を設ける。放電抑止部材130は、ポリエチレンで形成された薄い環状部材で、露出された絶縁層112の外径よりも極わずかに小さな内径と、後述する外部導体固定部材の外径よりも若干小さく、かつ第2コネクタ部の放電抑止層の内径よりも極わずかに大きい外径を有する。この抑止部材130は第2コネクタ部の放電抑止層の内周にはめ込まれる。
【0049】
さらに、第1コネクタ部の露出した外部導体113の外周には外部導体固定部材140が設けられる。この固定部材140は錫メッキ銅で構成された薄い環状部材で、露出された外部導体113の外径よりも極わずかに小さな内径と、第2コネクタ部の外部導体接続層の内径よりも極わずかに大きな外径を有する。この固定部材140は第2コネクタ部の外部導体接続層の内周にはめ込まれる。
【0050】
第1コネクタ部100を形成する手順は、まず外部導体固定部材140を電線の外部導体113の外周にはめ込み、続いて放電抑止部材を絶縁層112の外周にはめ込む。その後、内部導体111に接続端子部120を取り付ける。
【0051】
〔第2コネクタ部〕
第2コネクタ部200は、図2(B)に示すように、第1コネクタ部100が挿入される挿入孔を持ったハウジング210と、ハウジング210内に設けられた放電抑止層220と、放電抑止層220の外側に形成された外部導体接続層230と、第1コネクタ部の接続端子部に嵌合される抜け止め係合部240とを有する。
【0052】
<ハウジング>
ハウジング210は、ポリブチレンテレフタレートからなる扁平なブロック状部材で、一端面に第1コネクタ部の挿入孔211が形成されている。ここでは3相の電線端末を接続するため、合計3つの挿入孔211が並列されたハウジングを用いている。
【0053】
このハウジング210の内部には、放電抑止層220が設けられている。放電抑止層220は、第2コネクタ部200に挿入された第1コネクタ部100の導電経路発生箇所周辺を覆って、この発生箇所に異物が付着することを回避し、導電経路の形成を抑制する機能を有する。ここでは、放電抑止層220も放電抑止部材130と同様のポリエチレンで構成した。
【0054】
この抑止層220は円筒状に構成されている。つまり、第1コネクタ部100が第2コネクタ部200に挿入された際、放電抑止部材130の外周に放電抑止層220がはめ込まれることで、導電経路となる絶縁層表面を放電抑止部材130と放電抑止層220で囲まれる空間内に封止する。これにより、導電経路発生箇所に異物が付着することを抑制し、効果的に導電経路の発生を抑制する。
【0055】
また、ハウジング内で放電抑止層220の外周には外部導体接続層230が同軸に形成されている。この接続層230も円筒状の部材で、外部導体113と同様に軟銅線からなる編組材で構成される。第1コネクタ部100が第2コネクタ部200に挿入された際、この接続層230の内側に外部導体固定部材140がはめ込まれることで、第1コネクタ部の外部導体113を第2コネクタ部の接続層230へと接続する。
【0056】
さらに、ハウジング内で放電抑止層220の内周には、抜け止め係合部240が設けられている。この抜け止め係合部240は、第1コネクタ部の接続端子部120と係合されることで両コネクタ部100、200の抜けを防止する。ここでは、平板状のベース240aにロック爪240bを突出させた樹脂製の抜け止め係合部240を用いた。このロック爪240bは前述した第1コネクタ部の嵌合孔122aに係合されることで、第2コネクタ部200から第1コネクタ部100が不用意に抜けることを防止する。
【0057】
以上の第1コネクタ部100と第2コネクタ部200は、前者を後者の挿入孔211に差し込むことで接続が行われる。すなわち、図3に示すように、接続端子部120の嵌合孔122aに抜け止め係合部のロック爪240bが係合される。同時に、放電抑止層の内周に放電抑止部材130がはめ込まれ、外部導体接続層230の内周に外部導体固定部材140がはめ込まれて両コネクタ100,200の接続が完了される。
【実施例2】
【0058】
次に、実施例1の変形例を説明する。本例は、第1コネクタ部における放電抑止部材の外周面をテーパー状に形成し、第2コネクタ部の放電抑止層の端部側を前記テーパーに適合する形状としたことを特徴としており、他の構成は実施例1と共通なので説明を省略する。
【0059】
図4に示すように、放電抑止部材130の外周面を先端側ほど小さな外径で、後端側ほど大きな外径となるテーパー状に形成している。一方、第2コネクタ部の放電抑止層220も開口側ほど内径を大きくして、放電抑止部材130に適合しやすい形状としている。
【0060】
このような構成とすることで、第1コネクタ部100を第2コネクタ部200に挿入する際、放電抑止部材130を円滑に放電抑止層220内にはめ込むことができる。
【実施例3】
【0061】
次に、実施例2の変形例を説明する。本例は、実施例2における放電抑止層と放電抑止部材との接合箇所に係合部を設けたことを特徴としており、他の構成は実施例2と共通なので説明を省略する。
【0062】
図5に示すように、放電抑止部材130の外周に凹部130aを形成し、放電抑止層220の内周に前記凹部が係合する凸部220aを形成した。これにより、第1コネクタ部100を第2コネクタ部200にはめ込む際、放電抑止部材130の凹部130aに放電抑止層の凸部220aがはめ込まれ、両者の抜けを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明コネクタは、種々の電線の接続に利用できるが、自動車用電線の接続に好適に利用できる。とりわけ、高電圧化が進む電気自動車やハイブリッド自動車のバッテリ、コンバータ、インバータ、モータ、ジェネレータ間の接続に適用することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1の本発明第1コネクタ部の分解状態を示し、(A)は電線端末の正面図、(B)は外部導体固定部材の正面図、(C)は放電抑止部材の正面図、(D)は接続端子部の三面図、(E)は外部導体固定部材の側面図、(F)は放電抑止部材の側面図。
【図2】(A)は実施例1の差込前の状態を示す第1コネクタ部の模式構成図、(B)は同第2コネクタ部の模式構成図である。
【図3】実施例1の第1コネクタ部と第2コネクタ部の差込後の状態を示す模式構成図である。
【図4】実施例2の第1コネクタ部と第2コネクタ部の差込後の状態を示す模式構成図である。
【図5】実施例3の第1コネクタ部と第2コネクタ部の差込後の状態を示す模式構成図である。
【図6】従来例の第1コネクタ部の模式構成図で、(A)は正面図、(B)は接続端子部の側面図、(C)は接続端子部の底面図である。
【図7】従来例の第2コネクタ部の模式構成図で、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図8】従来例の第1・第2コネクタ部の結合状態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0065】
100 第1コネクタ部
110 電線端末 120 接続端子部 130 放電抑止部材
140 外部導体固定部材
111 内部導体 112 絶縁層 113 外部導体 114 シース
121 圧着部 122 接触部 123 連結片 122a 嵌合孔
200 第2コネクタ部
210 ハウジング 220 放電抑止層 230 外部導体接続層
240 抜け止め係合部
211 挿入孔 240a ベース 240b ロック爪
130a 凹部 220a 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体、絶縁層、外部導体を順次段階的に露出した電線端末と、
露出された内部導体に固定された接続端子部と、
この露出された絶縁層の外側に設けられて、露出された内部導体から外部導体までの導電経路を遮断する放電抑止部材とを有することを特徴とする電線用コネクタ。
【請求項2】
さらに、前記放電抑止部材と接合されると共に、導電経路となる絶縁層表面の周囲を覆う放電抑止層を有することを特徴とする請求項1に記載の電線用コネクタ。
【請求項3】
放電抑止部材の外径は、先端側ほど小さく、後端側ほど大きいテーパー状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電線用コネクタ。
【請求項4】
さらに、前記放電抑止層と一体に構成されると共に、接続端子部と係合する抜け止め係合部を有することを特徴とする請求項2に記載の電線用コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−59655(P2006−59655A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240000(P2004−240000)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】