説明

電線端末処理装置における電線セット装置

【課題】電線を適正に位置決めした状態でクランプできるようにすること。
【解決手段】電線挿入溝1aを有した電線セット台1と、電線挿入溝に電線Sが適正に挿入セットされたことを電線挿入溝を横断する光線12の受光信号に基づいて検知する第1の光学式電線検知装置10と、電線の先端Saを突き当てることで電線を長さ方向に位置決めする位置決め部材3と、位置決め部材の電線突当面3a上の適正ポイントCxに電線の先端が突き当てられたことを、電線と交差する方向に照射されて適正ポイントを通過する光線22の受光信号に基づいて検知する第2の光学式電線検知装置20と、電線セット台と位置決め部材との間に配置された電線クランプ30と、第1の光学式電線検知装置と第2の光学式電線検知装置の両方が共に検知信号を出力したとき電線クランプにクランプ動作を行なわせる制御装置100と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線端末処理装置において、端末処理するのに適正な位置に電線をセットしてクランプすることのできる電線セット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、芯線(中心導体)の外側を内皮(内部被覆)で覆い、その外側を編組(シールド)で覆い、その外側を外皮(外部被覆)で覆ったシールド電線の端末処理を行なう場合、まず、電線端末の外皮を所定長さ剥いで編組を露出させ、次に、その編組を外皮上にまくり上げ、その後、露出した内皮を剥いで芯線を露出させる、という工程を順番に実施する。このような工程を自動化する場合、最初にまず、電線の端末を処理位置に正確にセットする必要がある。
【0003】
電線の端末を処理位置にセットする装置の第1の従来例として、電線の先端を突き当て部材に突き当て、その状態で電線を適正に位置決めしたことを目視確認したら、手動スイッチ(フットスイッチ)を操作して電線クランプを動作させ、電線をその位置に保持するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、電線の端末を処理位置にセットする装置の第2の従来例として、電線のセット位置の延長方向に近接スイッチを配置し、その近接スイッチに電線の先端を突き当てることにより、シールド電線の位置決めを行なうと共に、同時に発生する近接スイッチの信号により電線クランプを動作させて、電線を位置決め状態で保持するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−102133号公報(図5)
【特許文献2】特開2001−357960号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記第1の従来例では、電線の先端を突き当て部材に突き当てた状態で、目視確認するだけで位置決め完了を判断するので、電線の先端が突き当て部材に斜めに当たっている等の不適正な突き当てが行なわれているのを見抜けない場合があり、そうした場合、適正なクランプができないことで、加工不良につながるおそれがあった。
【0007】
また、前記第2の従来例では、電線のセット位置の延長方向に近接スイッチを配置しているので、電線のセット位置の延長方向にスペース的な余裕がない場合は、適用が難しい。また、近接スイッチはONするのに押圧力が必要であるため、太い電線の場合は問題ないが、細い電線の場合は、途中で曲がってしまう可能性がある。従って、もし、電線が途中で曲がってしまった場合には、不安定なクランプが行なわれることで、加工不良につながるおそれがある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線を適正に位置決めした状態でクランプすることができて、加工不良につながるおそれを解消できる電線端末処理装置における電線セット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明に係る電線端末処理装置における電線セット装置は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 端末処理すべき電線の先端を先方に向けて該電線の長さ方向の中間部を挿入セットする電線挿入溝を有した電線セット台と、
前記電線挿入溝に前記電線が適正に挿入セットされたことを、前記電線挿入溝を横断する光線の受光信号に基づいて検知する第1の光学式電線検知装置と、
前記電線セット台の先方に配置され、前記電線の先端を突き当てることで、該電線を長さ方向に位置決めする位置決め部材と、
該位置決め部材の電線突当面上の適正ポイントに前記電線の先端が突き当てられたことを、前記電線と交差する方向に照射されて前記適正ポイントを通過する光線の受光信号に基づいて検知する第2の光学式電線検知装置と、
前記電線セット台と前記位置決め部材との間に配置された電線クランプと、
前記第1の光学式電線検知装置と前記第2の光学式電線検知装置の両方が共に検知信号を出力したとき、前記電線が適正に位置決めされたと判断して、前記電線クランプにクランプ動作を行なわせる制御装置と、
を有すること。
(2) 上記(1)の電線端末加工装置における電線セット装置であって、
前記第2の光学式電線検知装置で使用する前記光線を絞るスリットが、当該光線の光路上において前記適正ポイントに対して光線進行方向手前に配置されていること。
(3) 上記(1)または(2)の電線端末加工装置における電線セット装置であって、
前記第2の光学式電線検知装置で使用する前記光線がレーザ光線であること。
【0010】
上記(1)の構成の電線セット装置によれば、第1の光学式電線検知装置と第2の光学式電線検知装置が、電線の中間部と先端突き当て部の2つの位置で同時に電線のセット状態を監視するので、位置決め部材に斜めに突き当たっている場合や曲がりながら突き当たっている場合等の不良なセット状態を事前にチェックでき、適正位置に安定した状態で電線をクランプすることができる。特に、上記(1)の構成の電線セット装置では、位置決め部材の突当面上の適正ポイントに電線の先端を突き当てたときに初めて電線のクランプが行なわれるので、先端の位置を正確に出すことができる。従って、上記(1)の構成の電線セット装置によれば、不良な端末加工を未然に防ぐことができて、歩留まりの向上が図れ、省資源化に寄与することができる。また、上記(1)の構成の電線セット装置では、電線と交差する方向に照射した光線によって電線の先端の位置をチェックするので、電線と交差する方向に発光部と受光部を配置すればよく、位置決め板を配置できるスペースを確保できさえすれば、電線の延長方向にほとんど余分な占有スペースを必要としない。従って、上記(1)の構成の電線セット装置によれば、電線の延長方向にスペースがとれないレイアウトを実現する場合に有利である。
上記(2)の構成の電線セット装置によれば、スリットで絞った光線を適正ポイント上に通過させるので、検知精度を上げることができる。
上記(3)の構成の電線セット装置によれば、直進性の高いレーザ光線を用いるので、より検知精度を上げることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電線を適正に位置決めした状態でクランプすることができ、加工不良につながるおそれも解消できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は電線端末処理装置における電線セット装置の概略構成を示す平面図、図2は図1のII−II矢視図、そして図3は図2のIII−III矢視図である。
【0015】
この電線セット装置は、端末処理すべき電線S(ここでは、シールド電線を想定している。)の先端Saを先方に向けて電線Sの長さ方向の中間部を挿入セットする電線挿入溝1aを有した電線セット台1と、電線挿入溝1aに電線Sが適正に挿入セットされたことを、電線挿入溝1aを横断する光線12の受光信号に基づいて検知する第1の光学式電線検知装置10と、電線セット台1の先方に配置され、電線の先端Saを突き当てることで、電線Sを長さ方向に位置決めする位置決め部材3と、位置決め部材3の電線突当面3a上の適正ポイントCxに電線の先端Saが突き当てられたことを、電線Sと交差する方向に照射されて前記適正ポイントCxを通過する光線22の受光信号に基づいて検知する第2の光学式電線検知装置20と、電線セット台1と位置決め部材3との間に配置された電線クランプ30と、第1の光学式電線検知装置10と第2の光学式電線検知装置20の両方が共に検知信号を出力したとき、電線Sが適正に位置決めされたと判断して、電線クランプ30にクランプ動作を行なわせる制御装置100と、を有している。
【0016】
電線クランプ30は、エアシリンダ等のクランプ駆動機構32で開閉させられる例えば2つの把持部材により構成されており、閉じることで電線Sをクランプし、開くことでクランプを解除する。また、位置決め部材3の電線突当面3a上の適正ポイントCxは、電線セット台1上に規定された電線セット中心線Lが、位置決め部材3の電線突当面3aと交わった点として定義されている。この位置決め部材3は、電線クランプ30によって電線Sがクランプされたら、適当な場所へ退避するようになっている。また、端末処理を行なう各種の加工ユニット類(図示略)が、クランプした電線の周囲やクランプした電線の延長上等に配備されている。
【0017】
また、第1の光学式電線検知装置10は、例えば、光電センサよりなり、電線挿入溝1aの一方側に発光部10Aを配置し、他方側に発光部10Aより照射された光線12を受ける受光部10Bを配置した構成をなしている。
【0018】
また、第2の光学式電線検知装置20は、検査用の光線22としてレーザ光線を使用したものであり、電線セット中心線Lと交差する左右方向の一方側に発光部20Aを配置し、他方側に発光部20Aより照射された光線22を受ける受光部20Bを配置した構成をなしている。この場合、適正ポイントCxを通過する光線22を絞るためのスリット5が、適正ポイントCxの手前に位置するように位置決め部材3上に設けられている(即ち、スリット5は、光線22の光路上において適正ポイントCxに対して光線進行方向手前に配置されている)。
【0019】
第1の光学式電線検知装置10と第2の光学式電線検知装置20の発光部10A、20Aと受光部10B、20Bは制御装置100に接続され、クランプ駆動機構32は制御装置100からの駆動制御信号で動作する。制御装置100は、発光部10A、20Aに発光用の駆動信号を出力する機能と、受光部10Bからの受光信号を受けて電線Sが電線挿入溝1aに適正にセットされたことを判定する第1の判定機能と、受光部20Bからの受光信号を受けて電線の先端Saが位置決め部材3上の適正ポイントCxに適正に位置決めされたことを判定する第2の判定機能と、第1、第2の判定機能が共に判定信号を出力したとき電線Sのセット状態が適正であると判断する第3の判定機能と、その第3の判定機能の判定結果に応じてクランプ駆動機構32に駆動制御信号を出力する機能と、を有している。
【0020】
次に作用を説明する。
【0021】
この電線セット装置にて電線Sを適正にセットする場合は、電線セット台1の電線挿入溝1aに電線Sを挿入して、電線の先端Saを位置決め部材3の電線突当面3aに突き当てる。電線Sが電線挿入溝1a内の適正位置にセットされると、第1の光学式電線検知装置10の発光部10Aから照射された光線12が電線Sによって遮られて受光部10Bで受ける光量が変化することにより、制御装置100内の第1の判定機能が判定信号を発生する。また、電線の先端Saが位置決め部材3の電線突当面3a上の適正ポイントCxに突き当てられると、第2の光学式電線検知装置20の発光部20Aから照射されスリット5で絞られた光線22が電線の先端Saによって遮られて受光部20Bで受ける光量が変化することにより、制御装置100内の第2の判定機能が判定信号を発生する。そして、両方の判定が同時に行なわれたとき、第3の判定機能が電線Sのセット状態が適正であると判断することで、クランプ駆動機構32に駆動制御信号が送られて、電動クランプ30が閉方向に動作して電線Sを保持する。
【0022】
このように、第1の光学式電線検知装置10と第2の光学式電線検知装置20が、電線Sの中間部と先端Saの突き当て部の2つの位置で同時に電線Sのセット状態を監視するので、位置決め部材3に斜めに突き当たっている場合や曲がりながら突き当たっている場合等の不良なセット状態を事前にチェックすることができ、適正位置に安定した状態で電線Sをクランプすることができる。
【0023】
特に、位置決め部材3の電線突当面3a上の適正ポイントCxに電線の先端Saを突き当てたときに初めて電線Sのクランプが行なわれるので、先端Saの位置を正確に出すことができる。従って、不良な端末加工を未然に防ぐことができて、歩留まりの向上が図れ、省資源化に寄与することができる。
【0024】
また、電線Sと交差する方向に照射した光線22によって電線の先端Saの位置をチェックするので、電線Sと交差する方向に発光部20Aと受光部20Bを配置すればよく、位置決め板3を配置できるスペースを確保できさえすれば、電線Sの延長方向にほとんど余分な占有スペースを必要としない。つまり、位置決め板3のスペースだけ確保すればよい。従って、電線Sの延長方向にスペースがとれないレイアウトを実現する場合にも有利である。
【0025】
また、本実施形態の電線セット装置では、スリット5で絞った光線22を適正ポイントCx上に通過させるようにしているので、検知精度を上げることができる。しかも、その光線として直線性の高いレーザ光線を用いているので、一層検知精度を上げることができる。
【0026】
尚、図示例における発光部10A、20Aと受光部10B、20Bの位置を逆にしてもよい。但し、スリット5の位置は、発光部20Aと適正ポイントCxとの間に設定する必要がある。
【0027】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0028】
例えば、本実施形態の電線セット装置ではレーザ光線を採用しているが、レーザ光線の代わりに、光電センサの光源(レーザ光線を発するものでもよい。)に光ファイバを連結した光ファイバセンサを採用してもよい。この光ファイバセンサは、特に、その光ファイバがフレキシブルであるため、機械の隙間や小さなスペースにも容易に取り付けることができる長所を有する。また、光ファイバセンサの光ファイバのセンサヘッド先端が非常に小型化されているため、微小物体でも容易に検出できる。尚、ここで述べた光ファイバとしては、2本のプラスチックファイバを用いた一般的な平行型、中央部(投光部)と外周部(受光部)に分割され、どの方向から検出体が通過しても動作位置が変らない高精度な同軸型、そして数10μm径のガラスファイバが数多く入っており、投光部と受光部に分割されている分割型、等が例として挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の電線セット装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図2のIII−III矢視図である。
【符号の説明】
【0030】
S:電線
Sa:先端
Cx:適正ポイント
1:電線セット台
1a:電線挿入溝
3:位置決め部材
3a:電線突当面
5:スリット
10:第1の光学式電線検知装置
10A:発光部
10B:受光部
12:光線
20:第2の光学式電線検知装置
20A:発光部
20B:受光部
22:光線
30:電線クランプ
100:制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末処理すべき電線の先端を先方に向けて該電線の長さ方向の中間部を挿入セットする電線挿入溝を有した電線セット台と、
前記電線挿入溝に前記電線が適正に挿入セットされたことを、前記電線挿入溝を横断する光線の受光信号に基づいて検知する第1の光学式電線検知装置と、
前記電線セット台の先方に配置され、前記電線の先端を突き当てることで、該電線を長さ方向に位置決めする位置決め部材と、
該位置決め部材の電線突当面上の適正ポイントに前記電線の先端が突き当てられたことを、前記電線と交差する方向に照射されて前記適正ポイントを通過する光線の受光信号に基づいて検知する第2の光学式電線検知装置と、
前記電線セット台と前記位置決め部材との間に配置された電線クランプと、
前記第1の光学式電線検知装置と前記第2の光学式電線検知装置の両方が共に検知信号を出力したとき、前記電線が適正に位置決めされたと判断して、前記電線クランプにクランプ動作を行なわせる制御装置と、
を有することを特徴とする電線端末処理装置における電線セット装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電線端末加工装置における電線セット装置であって、
前記第2の光学式電線検知装置で使用する前記光線を絞るスリットが、当該光線の光路上において前記適正ポイントに対して光線進行方向手前に配置されていることを特徴とする電線端末処理装置における電線セット装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電線端末加工装置における電線セット装置であって、
前記第2の光学式電線検知装置で使用する前記光線がレーザ光線であることを特徴とする電線端末処理装置における電線セット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−202272(P2007−202272A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16649(P2006−16649)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】