説明

電線管

【課題】間接活線工事において容易に電線に装着可能なジャバラポリ管等の電線管(例えば、電線防護管)を提供する。
【解決手段】電線防護管21は、間接活線工事の際、電線に装着され、絶縁弾性材料で成形された本体管部22と、本体管部22の長手方向に沿って本体管部22に形成された切り込み部25と、本体管部22の表面に形成され電線を挿入する際に用いられる電線防護管挿入用工具によって把持される把持体(係止片)26とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線工事において、架空配電線等の電線の存在を喚起するため電線に取り付けられ電線管に関し、特に電線を防護するための電線防護管(例えば、ジャバラポリ管)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、直接活線工事において、架空配電線(以下単に電線と呼ぶ)にジャバラポリ管等の電線防護管を取り付ける場合、図8〜図10に示す工法が用いられる。ジャバラポリ管に電線を挿入する際には、後述する挿入管及びガイドクリップが用いられ、まず、図8に示すように、ジャバラポリ管11の開口端に挿入管12が挿入される。
【0003】
ジャバラポリ管11はその周面が蛇腹形状となっており、長手方向に沿って切り込み部11aが形成され、この切り込み部11aから電線(図8には示さず)がジャバラポリ管11に挿入される。上述の切り込み部11aは、ジャバラポリ管11が電線から脱落するのを防止するため通常は閉じた状態にあり、ジャバラポリ管11に電線を挿入するに当たって、ジャバラポリ管11の内径よりもその外形が大きい挿入管12をジャバラポリ管11の開口端に挿入して、前述の切り込み部11aを開く必要がある。
【0004】
続いて、電線(例えば、縁線)13にガイドクリップ14を取り付けた後(図9参照)、図10に示すように、ガイドクリップ14で電線13を案内しつつ、図中右側から切り込み部11aを介して電線13をジャバラポリ管11に挿入して、電線13にジャバラポリ管11を取り付ける。
【0005】
一方、間接活線工事において、電線にジャバラポリ管を取り付ける際には、例えば、ヤットコ等所要の間接活線把持工具によってジャバラポリ管の切り込み部を開いて電線にジャバラポリ管を取り付けるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−320961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、間接活線工事において、電線にジャバラポリ管を取り付ける際には、ヤットコ等の工具を用いてジャバラポリ管の切り込み部を開いて、この切り込み部から電線をジャバラポリ管に挿入しているものの、一般にヤットコはその把持部(レバー)を握ると先端側(作用部側)が閉じる構成であるため、ヤットコの先端部をジャバラポリ管の開口端から挿入してジャバラポリ管の切り込み部を開くことは、極めて困難である。
【0007】
つまり、ヤットコの先端部をジャバラポリ管の開口端に挿入してヤットコの把持部を開く方向に力を加えて、ヤットコの作用部側を開いて、これによってジャバラポリ管の切り込み部を開くことは極めて難しく、間接活線工事において、電線にジャバラポリ管を取り付ける際の手間が掛かってしまうという課題がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、間接活線工事において容易に電線に装着可能なジャバラポリ管等の電線管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による電線防護管は、間接活線工事の際、電線の存在を喚起するため前記電線に装着され、絶縁弾性材料で成形された本体管部と、該本体管部の長手方向に沿って前記本体管部に形成された切り込み部と、前記本体管部の表面に形成され前記電線を挿入する際に用いられる電線管挿入用工具によって把持される把持体とを有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の電線管では、前記把持体は前記長手方向に沿って所定の間隔をおいて複数形成されている。
【0011】
本発明の電線管においては、前記電線管挿入用工具は一対の先端を有するヤットコであり、前記把持体は前記ヤットコの先端をそれぞれ係止する一対の係止片を有し、前記係止片は前記切り込み部に対して対称に前記本体管部の表面に形成されている。
【0012】
本発明の電線管では、前記係止片は半リング形状であり、その開口端が前記本体管部の表面に一体的に取り付けられている。
【0013】
本発明の電線管では、前記係止片は前記長手方向に交差する方向に前記係止片と前記本体管部とによって規定される空間が開口している。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、本体管部の表面に把持体を形成したので、電線管挿入用工具でこの把持体を把持すれば、電線管の切り込み部を容易に開くことができ、その結果、間接活線工事において容易に電線に電線防護管を装着できるという効果がある。
【0015】
本発明によれば、把持体を長手方向に沿って所定の間隔をおいて複数形成するようにしたので、いずれの位置においても切り込み部を開くことができるという効果がある。
【0016】
本発明によれば、把持体がヤットコの先端をそれぞれ係止する一対の係止片を有し、係止片を切り込み部に対して対称に本体管部の表面に形成するようにしたので、ヤットコの先端を係止片に係止した際、切り込み部に対して開く方向への力を作用させやすく、容易に電線管を開くことができるという効果がある。
【0017】
本発明によれば、半リング状の係止片を、長手方向に交差する方向に係止片と本体管部とによって規定される空間が開口するように、本体管部の表面に形成しているので、ヤットコの先端を上記の空間に挿入しやすく、容易に電線管を開くことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態による電線管の一例について図面を参照して説明する。なお、間接活線工事においては、電線の存在を喚起する電線管が電線に装着されるが、ここでは、一例として電線の存在を喚起するとともに、電線を防護する電線防護管について説明する。まず、図1を参照して、間接活線工事が行われる箇所について説明する。図1(a)は電柱を側方から見た図、図1(b)は電柱を正面から見た図である。電柱31はその高さが、例えば、約12メートルであり、その頂部付近には高圧引下線引留金物32が取り付けられており、その下側には電線支持具(4線用)33が取り付けられている。
【0019】
さらに、電柱31には、低圧引上線34及び高圧引下線35が配設され、高圧カットアウト支持アーム36には変圧器37が配置されて、この変圧器27は変圧器取付バンド37aによって電柱31に固定されている。そして、高圧引下線35は高圧カットアウト38を介して変圧器37に引き込まれ、変圧器37から低圧引上線34が引き上げられて、引込み線39に連結される。なお、変圧器37の下側には、引込専用腕金40が配設され、電柱31には、高圧カットアウト操作用足場40aが設けられている。
【0020】
ところで、間接活線工事において、電線、例えば、高圧引下線35及び引込み線39にジャバラポリ管を取り付ける際には、図8〜図10を用いて説明した直接活線工法で用いられた挿入管及びガイドクリップを使用することはできない。このため、ここでは、次に説明するジャバラポリ管を用いて、ヤットコで容易にジャバラポリ管の切り込み部を開くことができるようにした。なお、以下の説明では、本発明の実施の形態によるジャバラポリ管を符号21で示すことにする。また、ジャバラポリ管21に限らず、長手方向に切り込み部が形成された絶縁弾性体の電線管であれば同様にして本発明を適用できる。
【0021】
図2は本発明の実施の形態によるジャバラポリ管21の一例を示す斜視図であり、図3は図2に示すジャバラポリ管21を上方から見た平面図である。図2及び図3を参照すると、ジャバラポリ管21は、本体管部22と本体管部22と一体的に成形された一対の鍔部23及び24とを有している。一対の鍔部23及び24は本体管部22の長手方向に沿って形成され、鍔部23及び24は通常互いに当接している(これら鍔部23及び24によって切り込み部25が構成される)。
【0022】
つまり、図2に示すように、本体管部22は、蛇腹面22aを有する部材を管状としたものであり、本体管部22の長手方向一端に沿って鍔部23が形成され、長手方向他端近傍の本体管部22の表面に長手方向に沿って鍔部24が形成されている。そして、本体管部22の長手方向他端は、長手方向一端とオーバラップしており(以下オーバラッブ部分と呼ぶ)、ジャバラポリ管21は鍔部23及び24が密接する方向に弾性力が作用している。
【0023】
この結果、電線をジャバラポリ管21に挿入した後においては、鍔部23及び24同士が密接し、上記のオーバラップ部分の存在によってジャバラポリ管21が電線から脱落することはない。
【0024】
一方、間接活線工事において、ジャバラポリ管21に電線を挿入する際には、ジャバラポリ管21の弾性力に抗して鍔部23及び24を離間させて、前述のオーバラップ部分を解消し(開き)、さらに、少なくとも電線の径よりも僅かに大きく切り込み部25を開く必要がある。ところが、間接活線工事において、ヤットコの先端部をジャバラポリ管21の開口端部に挿入して、ヤットコによって切り込み部25を電線が挿入できるまで開くことは極めて困難である。
【0025】
図示の例では、ジャバラポリ管21の切り込み部25が容易に開けるように、本体管部22の表面に長手方向に所定の間隔で係止片26を形成した。この係止片26は本体管部22と一体的に形成されており、半リング形状をし、その両端部が本体管部22の表面に連結された状態となっている。そして、図3に示すように、係止片26は180度の角度間隔をおいて形成されて互いに対向している。つまり、互いに対向する係止片26によって、把持体が規定されることになる。
【0026】
図4を参照して、図4(a)はヤットコ41の先端部を僅かに開いた状態で側方から示す図、図4(b)はヤットコ41の先端部を閉じた状態で側方から示す図である。ヤットコ41は一対の作用部42及び43を備えており、これら作用部42及び43はその後端側で図中紙面の表側から裏側に延びるピン軸部材44によって互いに連結され、これによって、後述するように、作用部43はピン軸部材44の回動に伴って回動する。
【0027】
さらに、作用部42の後端には操作レバー部45が連結され、操作レバー部45から延びる腕部45aがピン軸部材44に連結されている。また、ピン軸部材44にはリンク部材46の一端が接続され、リンク部材46の他端はピン軸部材47によって操作レバー部48に連結されている。
【0028】
図示はしないが、操作レバー部45及び48の後端側にはそれぞれ把持レバーが連結されており、例えば、図4(a)に示す状態において、把持レバーを握ると、図4(b)に実線矢印で示す方向に、操作レバー部48に力が作用する。この結果、リンク部材46が実線矢印で示す方向に引かれて、作用部43がピン軸部材44回りに回動し、作用部42及び43が閉じて、図4(b)に示す状態となる(つまり、ヤットコ41の先端部が閉じる)。
【0029】
一方、把持レバーを開く方向に動作させると、図4(b)に実線矢印で示す方向と反対方向に、操作レバー部48に力が作用する。この結果、リンク部材46が実線矢印で示す方向と反対方向に引かれて、作用部43がピン軸部材44回りに回動し、作用部42及び43が開かれて、図4(a)に示す状態となる。
【0030】
図2及び図3で説明したジャバラポリ管21の切り込み部25を開く際には、ヤットコ41を多少開いた状態で、互いに対向する係止片26、つまり、把持体の空洞部分にそれぞれヤットコ41の先端部、つまり、作用部42及び43の先端を、図3において紙面の裏側から挿入する。そして、把持レバーをさらに開く方向に動かして、作用部42及び43をさらに開く方向に動作させる。
【0031】
これによって、作用部42及び43がそれぞれ係止片26に引っかかり、ジャバラポリ管21、つまり、本体管部22に対して開く方向に力が作用する。そして、作用部42及び43がさらに開かれると、前述のオーバラップ部分が解消されて(開いて)、切り込み部25が大きく開くことになる。そして、この切り込み部25から電線が挿入される(つまり、電線にジャバラポリ管21が装着される)。
【0032】
上述の説明から明らかなように、上述のジャバラポリ管21を用いれば、通常のヤットコ41を用いて容易にジャバラポリ管21を開くことができ、間接活線工事において容易に電線にジャバラポリ管21を装着することができる。
【0033】
ところで、間接活線工事で用いられるヤットコ41は長尺であり、その先端部の幅・厚さも大きく、例えば、小さい部材を把持する際には不向きである。また、前述の係止片26の空洞部分が小さければ、ヤットコ41の先端部を挿入することができない場合もある。
【0034】
そこで、このような場合には、次の取付アダプターが用いられる。図5を参照すると、図5は取付アダプターを示す斜視図であり、取付アダプター50は筐体部51を有しており、この筐体部51の底外面にはラジオペンチを構成するラジオペンチ部52が固定されている。
【0035】
筐体部51の一面(側面)は開放されて、挿入空間53が規定されている。また、筐体部51の上面には図中上方に延びるシリンダー部54が形成され、このシリンダー部54の内周面にはネジが切られている。そして、このシリンダー部54にはボルト体55が螺合され、ボルト体55を回転すると、ボルト体55はシリンダー部54に沿って上下方向に移動する。
【0036】
続いて、図6を参照すると、図6(a)及び(b)は取付アダプター50を開口端側から見た図であり、図6(a)に示す状態においては、ボルト体55は上方に移動されており、一方、図6(b)に示す状態では、ボルト体55は下方に移動されてその先端部55aが挿入空間53に突出している。
【0037】
取付アダプター50にヤットコ41の先端部(作用部42及び43の先端)を取り付ける際には、図6(a)に示す状態において、取付アダプター50の開口端から挿入空間53にヤットコ41の作用部42の先端を挿入する。そして、作用部42の先端を挿入空間53に挿入した後、例えば、手動でボルト体55を回転させて、図6(b)に示す状態とする。つまり、ボルト体55の先端部55aが挿入空間53に突出した状態とする。
【0038】
図6(b)に示す状態にすると、作用部42の先端はボルト体55の先端部55aと筐体部51の内底面との間で挟持されることになって、挿入空間53から作用部42の先端が抜けることがなくなる。同様にして、別に取付アダプターを準備して、作用部43の先端に別の取付アダプター50を装着する。
【0039】
このようにして、作用部42及び43の先端にそれぞれ取付アダプター50を装着して、図7に示す状態とする。つまり、図7に示すように、一対の取付アダプター50をそれぞれヤットコ41の先端部に取り付けて、例えば、ラジオペンチを構成するようにすればよい。
【0040】
なお、一対の取付アダプター50にはそれぞれラジオペンチ部52a及び52bが取り付けられており、これらラジオペンチ部52a及び52bによってラジオペンチが構成される。そして、ヤットコ41を開けばラジオペンチも開き、ヤットコ41を閉じればラジオペンチも閉じる。
【0041】
このようにして、ヤットコ41の先端に取付アダプター50によってラジオペンチを取り付けるようにすれば、ラジオペンチによって小さい部材を把持できるばかりでなく、係止片26の空洞部分が小さくても、ラジオペンチを挿入可能であるから、ジャバラポリ管21を開くことができないという事態にはならない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】電柱の一例を示す図であり、(a)は側方から見た図、(b)は正面から見た図である。
【図2】本発明の実施の形態による電線防護管であるジャバラポリ管の一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示すジャバラポリ管を切り込み部側から見た図である。
【図4】図2に示すジャバラポリ管を開くために用いられるヤットコの一例を示す図であり、(a)はヤットコを僅かに開いた状態を示す図、(b)はヤットコを閉じた状態を示す図である。
【図5】図4に示すヤットコで用いられる取付アダプターを示す斜視図である。
【図6】図5に示す取付アダプターのボルト体の動作を示す図であり、(a)はボルト体を上げた状態で開口端側から見た図、(b)はボルト体を下げた状態で開口端側から見た図である。
【図7】一対の装着アダプターにそれぞれヤットコの先端部を挿入した状態を側方から示す図である。
【図8】直接活線工法においてジャバラポリ管の開口端に挿入管を挿入した状態を示す図である。
【図9】電線にガイドクリップを取り付けた状態を示す図である。
【図10】ガイドクリップで電線を案内して電線にジャバラポリ管を挿入する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
21 ジャバラポリ管(電線防護管)
22 本体管部
22a 蛇腹面
23,24 鍔部
25 切り込み部
26 係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間接活線工事の際、電線の存在を喚起するため前記電線に装着される電線管であって、
絶縁弾性材料で成形された本体管部と、
該本体管部の長手方向に沿って前記本体管部に形成された切り込み部と、
前記本体管部の表面に形成され前記電線を挿入する際に用いられる電線管挿入用工具によって把持される把持体とを有することを特徴とする電線管。
【請求項2】
前記把持体は前記長手方向に沿って所定の間隔をおいて複数形成されていることを特徴とする請求項1記載の電線管。
【請求項3】
前記電線管挿入用工具は一対の先端を有するヤットコであり、
前記把持体は前記ヤットコの先端をそれぞれ係止する一対の係止片を有し、
前記係止片は前記切り込み部に対して対称に前記本体管部の表面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電線管。
【請求項4】
前記係止片は半リング形状であり、その開口端が前記本体管部の表面に一体的に取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の電線管。
【請求項5】
前記係止片は前記長手方向に交差する方向に前記係止片と前記本体管部とによって規定される空間が開口していることを特徴とする請求項4記載の電線管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−79405(P2008−79405A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254609(P2006−254609)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】