説明

電荷サプライヤ

【課題】車両等の帯電状態を改善して、エンジンや電装機器などの各部の動作を良好に保つことができる電荷サプライヤを提供する。
【解決手段】方形のタブレット状のゲルマニウムチップ10は、銅板20上に接着剤などにより複数接合される。接着剤としては、導電性を有するものを使用する。そして、銅板20を挟むように銅テープ30を折り曲げることで、銅板20と銅テープ30の間に複数のゲルマニウムチップ10が挟まれ、電荷サプライヤ40が得られる。銅テープ30は、銅板20側に押し付けて変形させることで銅板20に固定してもよいし、導電性の接着剤を使用して固定してもよい。銅板20には、U字状に折り曲げられた銅テープ30の開口側に、取付用の端子22が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車,船舶などに好適な電荷サプライヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、電源としてバッテリを搭載しており、発電機によって充電可能となっている。図6には、基本的な接続形態が示されており、バッテリ900のプラス側はエアコン,ヘッドライト,オーディオなどの電装機器910に接続されており、バッテリ900のマイナス側はエンジン920に接続されている。そして、電装機器910のマイナス側は車体(ボディ)930に接続されており、前記エンジン920及び車体930はアースされている。バッテリ900の直流電流は、プラス側から電装機器910に供給され、車体930,エンジン920を介してバッテリ900のマイナス側に至る。
【0003】
以上のように、車両のアースについては、エンジン920もしくは車体930を介して行われているが、必ずしも良好に電気がアースされず、結果的に車両全体が帯電するようになり、オーディオ装置にノイズが入る,エンジンの点火が良好に行われないなどの不都合が生ずることがある。
【0004】
このような不都合を改善するものとして、下記特許文献1記載の「アーシングシステム並びにアーシング方法」がある。これは、バッテリのマイナス端子とエンジンの点火系とを、複数の細線で形成した複素線からなるアース線を用いて接続したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−316477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した背景技術では、バッテリとエンジンとの間の電気的な導通状態が改善(抵抗が低減)されるに過ぎず、電装品からバッテリやアースに至る導通状況に変化はなく、車両全体としてみると帯電状態が十分に改善されたとはいえない。
【0007】
例えば、エンジンでは、ピストンの往復運動による摩擦電気(静電気)によって金属がマイナスに帯電しオイル側がプラスに帯電する。このとき、金属側に帯電したマイナス電荷は、図6にあるように導線を通ってバッテリ900のプラスに移動する。エンジン920のオイルに帯電したプラス電荷は行き場が無く帯電状態を維持し、周囲のマイナス電荷を引き付けるようになり、エンジン920からバッテリ900のマイナスに至る電流の流れを阻害している。一方タイヤでは、走行による路面との摩擦によって、路面側がマイナスに帯電しタイヤ側(ホイールなど)がプラスに帯電する。ここでは、制動装置であるブレーキによる摩擦でも静電気が起きていて、帯電の要因になっている。このため、エンジンオイルと同様にマイナスの電荷を引き付けるようになり、車体からバッテリのマイナスに至る電流の流れを阻害するようになる。
【0008】
本発明は、以上の点に着目したもので、車両等の帯電状態を改善して、エンジンや電装機器などの各部の動作を良好に保つことができる電荷サプライヤを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、マイナス電荷を放出する電荷サプライヤであって、導体の間に、半導体チップを挟み込むとともに、取付用の端子を備えたことを特徴とする。他の発明は、半導体チップを取付具に設けたことを特徴とする。更に他の発明は、半導体を含む導体を取付具から延設して、帯電する液体内に半導体が浸漬するようにしたことを特徴とする。主要な形態の一つによれば、前記取付具が、ボルト,ナット,キャップを含む。他の形態によれば、前記半導体は、ゲルマニウムもしくはゲルマニウムを鉛で被覆したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゲルマニウムなどの半導体もしくは導体からマイナス電荷が放出され、これが帯電したプラス電荷を打ち消して帯電状態が改善される。このため、帯電によるエンジンや電装機器などの各部の動作の不具合が低減され、良好に本来の動作を行なうことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の電荷サプライヤを示す図である。
【図2】本発明の実施例1の電荷サプライヤの他の構造を示す図である。
【図3】本発明の実施例2の電荷サプライヤを示す図である。
【図4】本発明の実施例3の電荷サプライヤを示す図である。
【図5】本発明の実施例4の電荷サプライヤを示す図である。
【図6】自動車における一般的な配線の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
最初に、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施例1について説明する。本実施例では、図1(A)に示すような方形のタブレット状のゲルマニウムチップ10を利用する。ゲルマニウムチップ10は、衝撃などによって欠けたり、割れたりするので、それを防ぐため、同図(B)に示すように、例えば鉛12で包むようにしてもよい。ゲルマニウムチップ10は、同図(C)に示すように、銅板20上(図示の例では表裏)に接着剤などにより複数接合される。接着剤としては、導電性を有するものを使用する。そして、同図(D)に示すように、銅板20を挟むように銅テープ30を折り曲げることで、銅板20と銅テープ30の間に複数のゲルマニウムチップ10が挟まれ、電荷サプライヤ40が得られる。銅テープ30は、銅板20側に押し付けて変形させることで銅板20に固定してもよいし、導電性の接着剤を使用して固定してもよい。銅板20には、U字状に折り曲げられた銅テープ30の開口側に、取付用の端子22が設けられている。
【0014】
図2には、他の構造の例が示されており、銅基台50の主面に、円形のゲルマニウムチップ14を挿入するための凹部52が複数形成されており、この凹部52にゲルマニウムチップ14を挿入するとともに、カバー54で覆うことで、電荷サプライヤ60が得られる。銅基台50,ゲルマニウムチップ14,カバー54の固定は、ボルト・ナット手段や導電性の接着剤など、適宜の手段を用いてよい。銅基台50には、取付用の端子56が両端に設けられている。
【0015】
図2(B)には、上述した電荷サプライヤ60をバッテリ70に取り付けた例である。バッテリ70には、プラス端子72とマイナス端子74があり、電荷サプライヤ60は、いずれの端子に取り付けてもよいが、優先的にはマイナス端子74に取り付ける。すなわち、取付金具(ターミナル)75に、前記電荷サプライヤ60の端子56の一方を挟み込むとともに、ボルト・ナット手段76によってマイナス端子74に固定する。一方、エンジンや車体に接続するためのケーブル80の端子82は、電荷サプライヤ60の他方の端子56にボルト・ナット手段84によって固定する。なお、図1に示した例の場合は、電荷サプライヤ40の端子22と、ケーブル80の端子82の両方を、ボルト・ナット手段76によって取付金具75に固定すればよい。
【0016】
図2(C)に示す電荷サプライヤ90は、上述したバッテリ70のマイナス端子74内にゲルマニウムチップ14を埋め込んだ例である。
【0017】
次に、本実施例の作用を説明すると、上述したように、エンジン・タイヤなどの摩擦によってエンジンオイルやタイヤのホイールなどがプラスに帯電する。しかし、本実施例ではバッテリ70の"マイナス端子74に接続されている電荷サプライヤ40,60,90からマイナス電荷が放出される。すると、エンジンオイルやタイヤのホイールなどのプラス電荷が、電荷サプライヤ40,60,90から放出されたマイナス電荷によって中和されるようになり、帯電状態が改善されるようになる。
【0018】
これにより、例えば、エンジンでは、オイルの帯電が除去されるようになる。そして、負荷が軽減されてピストン運動が円滑に行われるようになり、更には、エンジンの出力が増大するようになる。エンジンオイルのみならず、ミッションオイルやディファレンシャルオイルなどに適用すれば、同様に帯電状態が改善されるようになり、動作が円滑に行われるようになる。
【0019】
更に、本実施例によれば、バッテリ70の延命作用も期待できる。鉛バッテリの場合、充放電の繰り返しによってサルフェーション(硫酸鉛,PbSO)が生じ、機能が低下することが知られている。本実施例によれば、上述したように、バッテリ70のプラスからマイナスへの電流の流れが円滑に行われるようになる。このため、析出したサルフェーションが良好に電解液に溶け込むようになり、その析出・硬化が低減されて延命が可能となる。
【0020】
表1には、図2の電荷サプライヤを実際に自動車に装着して走行実験を行った結果が示されている。この例は、ホンダ・1989年製の「レジェンド」のバッテリに、上述した図2の電荷サプライヤ60を装着して走行し、燃費を計測したものである。同表に示すように、一般道路を走行した場合は、電荷サプライヤ60の装着前はガソリン1リッター当たりの走行距離が5.5[km]であるのに対し、装着後は6.8[km]に改善されており、24%のアップ率(上昇率)となった。高速道路を走行した場合は、電荷サプライヤ60の装着前はガソリン1リッター当たりの走行距離が10.0[km]であるのに対し、装着後は12.0[km]に改善されており、20%のアップ率となった。
【表1】

【実施例2】
【0021】
次に、図3を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。本実施例の電荷サプライヤ100は、同図(A)に示すように、エンジンオイルを貯めるオイルパンからオイルを抜き取るためのドレンプラグ(ドレンボルト)110に対して、ゲルマニウムバー120を設けた構成となっている。図示のゲルマニウムバー120は多少屈曲した形状となっているが、曲がっていなくてもよい。ゲルマニウムバー120は、同図(A)の矢印#3−#3線に沿って矢印方向に見た断面(長手方向に対して垂直の方向の断面)を同図(B)に示すように、中心の導体122の表面にゲルマニウム皮膜124をメッキなどの方法でコーティングした構造となっている。なお、断面形状は、各種の形状としてよく、例えば同図(C)に示すように方形状であってもよい。また、ゲルマニウムバー120の中心側をゲルマニウムとし外側を導体としてもよいし、導体内にゲルマニウムを埋め込むようにしてもよい。
【0022】
ドレンプラグ110に対するゲルマニウムバー120の取り付けは、溶接や導電性接着剤による接合手法でもよいが、ドレンプラグ110とゲルマニウムバー120を一体の構造として形成するようにしてもよい。
【0023】
以上のような構成の電荷サプライヤ100は、図3(D)に示すように、オイルパン130のドレンプラグ110として取り付けられる。すると、オイル132内に、ゲルマニウムバー120が浸漬するようになる。このため、オイルパン130やオイル132がプラスに帯電しようとしても、ゲルマニウムバー120からマイナス電荷が供給されるようになり、帯電状態が軽減され、場合によっては中和されることとなる。
【0024】
なお、図3(A)に示すように、ドレンプラグ110の頂部にネジ140を設け、図3(D)に示すように、バッテリ70のマイナスに至るケーブル142を接続してもよい。このようにすることで、オイルパン130及びオイル132のプラス帯電が更に効果的に低減されるようになる。
【実施例3】
【0025】
次に、図4を参照しながら、本発明の実施例3について説明する。本実施例の電荷サプライヤ200は、ラジエータキャップ210の先端にゲルマニウムバー220を設けた例である。ゲルマニウムバー220の構造は、前記図3の実施例と同様である。ラジエータ212にラジエータキャップ210を取り付けると、ラジエータ212内の冷却水にゲルマニウムバー220が浸漬するようになり、前記実施例と同様の効果を得ることができる。なお、本実施例においても、ラジエータキャップ210の頂部にネジ214を設け、バッテリ70のマイナスに至るケーブル216を接続するようにしてよい。
【0026】
図4(B)は、前記ケーブル216を、オルタネータ(発電機)230,エンジン920を介してアース側,すなわちバッテリ70のマイナス側に接続した例である。オルタネータ230の筐体はマイナスとなっており、これがエンジン920に接続されているので、その筐体のネジ部に前記ケーブル216を接続することで、前記ラジエータキャップ210をバッテリ70のマイナスに接続することができる。
【実施例4】
【0027】
次に、図5を参照しながら、本発明の実施例4について説明する。まず、同図(A)の電荷サプライヤ300は、ボルト302の軸側の内部にゲルマニウムチップ10又は14を埋め込んだ例である。同図(B)の電荷サプライヤ310は、ボルト312の頭側にゲルマニウムチップ10又は14を取り付けたものである。なお、図示の例は、ゲルマニウムチップ10又は14が露出しているが、もちろん露出しないように内蔵してよい。
【0028】
これらのタイプの電荷サプライヤ300,310は、既存のボルトの代わりに簡単に取り付けることができる。例えば、図2(B)に示したボルト・ナット手段76又は84のボルトとして前記電荷サプライヤ300,310を使用し、電荷サプライヤ60を省略するという具合である。もちろん、電荷サプライヤ60を省略せず、電荷サプライヤ300,310と併用してもよい。ボルトの他に、ナット,キャップなど、適宜の部品にゲルマニウムチップを取り付ける(もしくは内蔵する)ようにしてよい。
【0029】
図5(C)の電荷サプライヤ320は、導体322の表面にゲルマニウム皮膜324をコーティングもしくはメッキによって形成したものである。単線の場合には、その外側に保護用の樹脂皮膜326を形成する。また、ゲルマニウム皮膜324を形成した導体322を、多数撚って撚り線としてもよい。このような電荷サプライヤ320は、既存のケーブルの代わりに簡単に取り付けることができる。なお、図示の例は、導体322の長手方向に垂直の断面が円形であるが、断面が方形の板状の導体322にゲルマニウム皮膜324を形成してもよい。
【0030】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した構造は一例であり、必要に応じて適宜形状を変形してよい。また、ゲルマニウムチップの取り付け個数も適宜増減してよいし、取り付け部分の端子形状も、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記実施例では、マイナス電荷を供給する材料としてゲルマニウムを用いたが、シリコンなど他の半導体を用いてもよい。また、マイナス電荷を供給するという点から、n型の半導体が好適である。前記実施例に示した他の部材の材料についても同様であり、公知の各種の材料を適用してよい。
(3)前記実施例では、バッテリ,オイルパン,ラジエータなどに電荷サプライヤを取り付けたが、取り付け箇所もそれらに限定されるものではなく、所望の箇所に取り付けるようにしてよい。例えば、オイルフィルタ,ホイールナット,ブレーキパッド,オルタネータ,点火プラグ,プラグキャップなどに取り付けてもよいし、ミッションオイルやディファレンシャルオイル内に設けるようにしてもよい。帯電する液体であれば、オイル以外の液体であってもよい。
(4)前記実施例は、いずれも自動車に対して本発明を適用したものであるが、乗用車のみならず、バス,トラック,クレーン・トラクタなどの作業車,バイク,自転車などにも適用可能である。また、鉄道,船舶,航空機などにも適用してよい。特にバッテリを搭載する機器に好適である。
(5)更に、前記自動車は一例に過ぎず、直流電源又は交流電源,電力線又はデジタル・アナログの信号線(データ線)など、電気を使用するものすべてに有効である。例えば、電気機器の回路基板などにも適用可能である。すなわち、電流が流れる箇所であれば、いずれであっても電荷サプライヤは接続可能で、不足するマイナス電荷を補うことができ、結果としてさまざまな課題を改善することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、帯電状態を改善して、エンジンや電装機器などの各部の動作を良好に保つことができ、車両,船舶などに適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
10:ゲルマニウムチップ
12:鉛
14:ゲルマニウムチップ
20:銅板
22:端子
30:銅テープ
40,60,90:電荷サプライヤ
50:銅基台
52:凹部
54:カバー
56:端子
60:電荷サプライヤ
70:バッテリ
72:プラス端子
74:マイナス端子
75:取付金具
76:ボルト・ナット手段
80:ケーブル
82:端子
84:ボルト・ナット手段
90:電荷サプライヤ
100:電荷サプライヤ
110:ドレンプラグ
120:ゲルマニウムバー
122:中心導体
124:ゲルマニウム皮膜
130:オイルパン
132:オイル
140:ネジ
142:ケーブル
200:電荷サプライヤ
210:ラジエータキャップ
212:ラジエータ
214:ネジ
216:ケーブル
220:ゲルマニウムバー
230:オルタネータ
300,310:電荷サプライヤ
302:ボルト
310:電荷サプライヤ
312:ボルト
320:電荷サプライヤ
322:導体
324:ゲルマニウム皮膜
326:樹脂皮膜
900:バッテリ
910:電装機器
920:エンジン
930:車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイナス電荷を放出する電荷サプライヤであって、
導体の間に、半導体チップを挟み込むとともに、取付用の端子を備えたことを特徴とする電荷サプライヤ。
【請求項2】
マイナス電荷を放出する電荷サプライヤであって、
半導体チップを取付具に設けたことを特徴とする電荷サプライヤ。
【請求項3】
マイナス電荷を放出する電荷サプライヤであって、
半導体を含む導体を取付具から延設して、帯電する液体内に半導体が浸漬するようにしたことを特徴とする電荷サプライヤ。
【請求項4】
前記取付具が、ボルト,ナット,キャップを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の電荷サプライヤ。
【請求項5】
前記半導体がゲルマニウムもしくはゲルマニウムを鉛で被覆したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電荷サプライヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−192177(P2010−192177A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33426(P2009−33426)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(509046860)
【Fターム(参考)】