説明

電装品の配置構造

【課題】スロットルボディ等のメンテナンス性を確保しながらも、ECUを含む電装品を所望の場所に取り付けることを可能とする電装品の配置構造を提供する。
【解決手段】電装品の配置構造10は、車体前方側から後方側へと延びる左右一対のメインフレーム32を有する車体フレーム14と、車体フレーム14に支持されるエンジン24と、エンジン24の近傍に設けられ、所定の整備が必要とされるスロットルボディ42と、スロットルボディ42の後方に配置されるエアクリーナ44と、エンジン24を制御するECU26とを備える鞍乗り型車両であるATV車両12の電装品の配置構造であって、少なくともECU26を含む電装品を支持すると共に、車体に対して着脱可能に取り付けられ、且つ、スロットルボディ42及びエアクリーナ44と別体に設けられる支持部材28を備え、前記支持部材28がスロットルボディ42の上方且つ近接した位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御等を行うECUを含む電装品の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装路等を走行する通常の自動二輪車や、悪路等を走行するATV(All Terrain Vehicle)車両である四輪バギー車等、いわゆる鞍乗り型車両には、制御ユニットであるECU(Engine Control Unit、又は、Electronic Control Unit、ともいう)を含む電装品が搭載されている。ECUは比較的大型の電装品であり、相応の設置スペースを要するため、車体の空スペースに配置することが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のATV車両では、ECUをテールライト近傍に設けられた収納ボックスの上面に固定している。これにより、ECUの設置スペースを確保すると共に、車輪が跳ね上げる土砂や石等からECUを保護することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3897969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、ECUのような大型の電装品は、上記従来技術のように設置スペースを比較的確保し易い車両前方や後方等に配置される。
【0006】
ところが、ECUに接続されるハーネスの先にあるセンサ等の機器は、エンジン近傍に配置されるスロットルボディの近傍に集中する傾向にある。従って、ECUと各機器との間のハーネス長さを考慮すると、ECUはスロットルボディの近傍に配置されることが望ましい。
【0007】
一方、エンジン近傍には、前記スロットルボディやエアクリーナ等の吸気系部品や補機類等が集中して配置されているため、ECUの設置スペースを確保することは容易ではない。また、上記のATV車両等では車体側方にメインフレームや排気管、車体カバーも存在するため、例えば、スロットルボディを整備する際、該スロットルボディにアクセスするための経路が相当に限定される。従って、ECUをスロットルボディ近傍に配置する場合には、当該スロットルボディへのアクセス経路も考慮しておくことが望まれる。
【0008】
本発明はこのような従来技術に関連してなされたものであり、スロットルボディのメンテナンス性を確保しながらも、ECUを含む電装品を所望の場所に取り付けることを可能とする電装品の配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明に係る電装品の配置構造は、車体前方側から後方側へと延びる左右一対のメインフレームを有する車体フレームと、前記車体フレームに支持されるエンジンと、前記エンジンの近傍に設けられ、所定の整備が必要とされるスロットルボディと、前記スロットルボディの後方に配置されるエアクリーナと、前記エンジンを制御するECUとを備える鞍乗り型車両の電装品の配置構造であって、少なくとも前記ECUを含む電装品を支持すると共に、車体に対して着脱可能に取り付けられ、且つ、前記スロットルボディ及び前記エアクリーナと別体に設けられる支持部材を備え、前記支持部材は、前記スロットルボディの上方且つ近接した位置に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の電装品の配置構造において、前記支持部材は、車体側に形成された嵌合部に対して嵌め合いされることにより、車体に対して着脱されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の電装品の配置構造において、前記左右一対のメインフレームの間に燃料タンクが支持されると共に、該燃料タンクの後方に乗員のシートが設けられ、前記支持部材は、前記燃料タンクの後方であって前記シートの下方に配置されると共に、該燃料タンク及び前記シートによって囲まれることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の電装品の配置構造において、車体の左右にそれぞれ設けられ、前記燃料タンクの側部から前記シートの前部下方を覆うサイドカバーを備え、前記支持部材は、前記サイドカバー及び前記シートを取り外した状態で、前記車体に対して着脱可能に取り付けられることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4記載の電装品の配置構造において、車体の左右にそれぞれ設けられ、前記シートの下方から車体後方側を覆うリヤフェンダを備え、前記支持部材は、左右の前記リヤフェンダに渡って取り付けられることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電装品の配置構造において、前記支持部材は、左右の前記メインフレームに渡って設けられることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電装品の配置構造において、前記支持部材に支持される前記電装品から延びた第1ハーネスは、前記支持部材に設けられた係止手段で係止された状態で、前記メインフレームに固定された第2ハーネスへと接続されており、前記支持部材は、前記第1ハーネスと前記第2ハーネスとの接続部を支点として移動可能であることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の電装品の配置構造において、前記第1ハーネスは、車体の一側方に向けて配策されて前記第2ハーネスに接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、鞍乗り型車両において、少なくとも前記ECUを含む電装品をスロットルボディ及びエアクリーナと別体に設けられる支持部材に支持させ、該支持部材を車体に対して着脱可能とすると共に、所定の整備が必要なスロットルボディの上方に配置する。これにより、通常、スロットルボディのメンテナンス空間を確保するために、その上方に部品を配置することができなかった当該スロットルボディの上方にECUを配置してスペースの有効利用を図ることができる。また、ECUをスロットルボディの上方に近接して配置することができるため、当該ECUと各センサとを接続するハーネスの長さを必要最小限に設定することができる。しかも、スロットルボディのメンテナンス時にはECUを支持部材と共に簡単に車体から取り外すことができるため、そのメンテナンス性を十分に確保することができると共に、メンテナンス前後でのECUへのハーネスの結線作業等が不要となり、ハーネスを元の位置に戻す作業も容易に行うことができる。すなわち、前記支持部材を用いることにより、ECUに接続されるセンサ等が多く接続されると共にスロットルワイヤの交換等のメンテナンスも必要となるスロットルボディの上方且つ近接した位置に、ECUを含む電装品を容易に配置することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、前記支持部材をボルト等の締結部材を用いることなく車体側へと取り付けることが可能となり、その着脱作業を一層容易に行うことができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、燃料タンクの後方とシートとの間にできるスロットルボディのメンテナンス空間に支持部材を介してECUを配置できるため、スペースを有効に且つ効率的に利用することができる。しかも、燃料タンクやシートに囲まれた位置にECUを配置することで、当該ECUに泥水等の外的影響が及ぶことを有効に低減することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、前記支持部材は、前記サイドカバー及び前記シートを取り外した状態で、前記車体に対して着脱可能に取り付けられることにより、ECUの着脱を容易に行うことができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、前記支持部材が左右の前記リヤフェンダに渡って取り付けられることにより、当該支持部材を両リヤフェンダを繋ぐ補強部材としても機能させることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、前記支持部材が左右の前記メインフレームに渡って設けられると、車幅の中央付近に電装品を配置することができ、車両左右の重量バランスを良好にすることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、前記電装品から延びた第1ハーネスが支持部材に設けられた係止手段で係止された状態で、メインフレームに固定された第2ハーネスへと接続されると共に、前記支持部材は第1ハーネスと第2ハーネスとの接続部を支点として移動可能とされる。これにより、スロットルボディのメンテナンス時に支持部材を取り外す際、前記接続部を支点に第1ハーネスをヒンジ代わりとして支持部材を移動させることができ、支持部材及びECUをメンテナンス作業の邪魔にならない位置に容易に移動させることができる。また、支持部材の車体からの取り外し時に、第1ハーネスをECUから取り外す必要がないため、メンテナンス前後のハーネスの取り廻しが容易であり、その結線作業も不要となる。さらに、第1ハーネスが前記係止手段で支持部材側に係止されることにより、支持部材を移動させた際に、ECUや他の電装品への接続端子等に直接負荷がかかることを有効に回避することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、前記第1ハーネスが車体の一側方に向けて配策されて前記第2ハーネスに接続されることにより、支持部材を車両の一側方に向けて移動させることができ、スロットルボディの上方に広い作業スペースを確保することができる。また、ハーネスが一側方に集中されることで、ハーネス自体の取り廻しも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る電装品の配置構造が組み込まれた鞍乗り型車両であるATV車両の側面図である。
【図2】図1に示すATV車両の車体カバー等を取り外した状態での一部省略側面図である。
【図3】ECUを支持する支持部材の斜視図である。
【図4】シートを取り外した状態でのECU及び支持部材の周辺部を示す一部省略平面図である。
【図5】シート及びサイドカバーを取り外した状態でのECU及び支持部材の周辺部を示す一部省略斜視図である。
【図6】シート、サイドカバー、支持部材及び燃料タンクを取り外した状態でのスロットルボディ及びその周辺部を示す一部省略平面図である。
【図7】シート及びサイドカバーを取り外した状態でのECU及び支持部材の周辺部の側面図である。
【図8】支持部材を車体から取り外すことによりECUを車体から取り外した状態での一部省略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る電装品の配置構造について、この構造を適用した鞍乗り型車両であるATV車両車との関係で実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る電装品の配置構造10(以下、「配置構造10」ともいう)が組み込まれた鞍乗り型車両であるATV車両12の側面図であり、図2は、図1に示すATV車両12の車体カバー等を取り外した状態での一部省略側面図である。本実施形態では、ATV車両12でのECUの配置構造によって本発明の適用例を説明するが、本発明はこれに限られるものではなく、各種の鞍乗り型車両(オンロード型、オフロード型やスクータ型等も含む)に対して、少なくともECUを含む電装品を配置する構造に適用することができる。なお、理解を容易にするため、各図面において、着座した運転者から見た方向に従って、車体の左を示す矢印に「L」、車体の右を示す矢印に「R」を付すと共に、車体の前方を示す矢印に「Fr」、車体の後方を示す矢印に「Rr」を付して説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、ATV車両12は、いわゆる四輪バギー車であって、車体フレーム14と、操舵輪である左右一対の前輪16と、駆動輪である左右一対の後輪18と、前輪16を操舵するハンドル20と、乗員が着座するシート22と、エンジン24とを備え、エンジン24等を駆動制御するECU26がトレー状の支持部材28を介して車体側に取り付けられる。
【0029】
車体フレーム14は、例えば、複数種の鋼材を溶接等により一体に接合して構成されている。車体フレーム14は、前端部に固定されたヘッドパイプ30と、ヘッドパイプ30から車体後方に向かって斜め下方へと延びた左右一対のメインフレーム32と、メインフレーム32の後部から下方に延びた左右一対のピボットフレーム33と、ピボットフレーム33の下部から前輪16側へと水平方向に延びて、メインフレーム32等と共にクレードル型フレームを構成する左右一対のアンダーフレーム34と、メインフレーム32及びピボットフレーム33の後部から車体後方上方へと延びた左右一対のリヤフレーム36とを有する。
【0030】
ハンドレバー(ブレーキレバー)37が設けられたハンドル20を枢支するヘッドパイプ30の後方であって、左右のメインフレーム32の間には燃料タンク38が設けられ(図2及び図4参照)、燃料タンク38の後方には前記シート22が配置されている。燃料タンク38の下方には、シリンダ24a、シリンダヘッド24b及びシリンダヘッドカバー24cを有する前記エンジン24と、燃料タンク38に貯留された燃料をエンジン24へと供給する燃料ポンプ40とが配置されている。燃料タンク38の下面側にはエンジン24からの排熱を遮断するヒートガード39が敷設されている(図6参照)。燃料タンク38内の燃料は燃料ホース41によって燃料ポンプ40へと供給され、さらに、該燃料ポンプ40から燃料ホース43によってインジェクター107(図6参照)へと供給される。
【0031】
図2及び図4に示すように、エンジン24の後方側近傍には、該エンジン24の吸気側に接続される吸気系部品であるスロットルボディ42、エアクリーナ44及びエアチャンバ46が配設されている。エアクリーナ44は、シート22の後方下部で上方を指向した吸気口44aから空気を吸入し、コネクティングチューブ45を介してスロットルボディ42へと該空気を供給する。
【0032】
車体前部側において、前記ヘッドパイプ30はハンドル20を枢支しており、該ハンドル20にメーター49が取り付けられている。メインフレーム32の前端側には、ヘッドライト47が設けられる(図2参照)。ヘッドライト47の左右下方には、前輪16を支持するフロントサスペンション48が設けられており、その前方側には、フロントガイドパイプ52が設けられている。一方、メインフレーム32の前端側下部に囲まれた空間には、ラジエータ51及びラジエータファン53が車体前後方向に並設されている。
【0033】
車体後部側において、ピボットフレーム33の後端側からは後輪18を軸支するスイングアーム54が延びており、スイングアーム54の内側には、該スイングアーム54とピボットフレーム33とに固定されたリヤクッション57が設けられている。リヤフレーム36の略中間下部には、バッテリ56が搭載されており、リヤフレーム36の側部には、シリンダヘッド24bの排気側から車体右側面へと伸びた排気管55に連結されたマフラー58及びその一部を覆うマフラーガード59(図4参照)が設けられている。さらに、リヤフレーム36の後端側には、テールライト60が設けられている。
【0034】
このようなATV車両12には、車体外面を覆う各種の車体カバーが取り付けられる。図1に示すように、ATV車両12には、ヘッドライト47(図2参照)の周辺を覆うフロントカバー64と、フロントカバー64の左右側にそれぞれ設けられて前輪16を上方から覆う左右一対のフロントフェンダ66と、燃料タンク38の両側部からシート22の前部下方までを覆う左右一対のサイドカバー68と、シート22の下方から車体後方側で後輪18の上方までを覆う左右一対のリヤフェンダ(リヤカバー)70と、シート22に着座した乗員が足を置くステップ72とが取り付けられている。これらの車体カバーは、例えば合成樹脂を主として構成される。
【0035】
次に、基本的には以上のように構成されるATV車両12に組み込まれる本実施形態に係る電装品の配置構造10について説明する。本実施形態に係る配置構造10は、電装品としてECU26を所定位置に配置する構造である。
【0036】
先ず、ECU26を支持する支持部材28について説明する。
【0037】
図3に示すように、支持部材28は、例えば合成樹脂からなるトレー状の部材であり、その上面に形成された凹状の電装品配置部76で略矩形箱状のECU26を支持することができる。
【0038】
この支持部材28は、電装品配置部76内に配置されたECU26を上部から押さえて固定するゴムバンド75(図4参照)を取り付けるための固定部78と、前方側左右から上方に突出する一対の柱状のサイドカバー取付部80と、後方側の一側方(左側方)から下方に突出する先端円弧状の係止部84と、前端部中央から前方に突出する係合片86と、後方側左右角部に設けられる一対の嵌合孔88とを有する。前記固定部78は、電装品配置部76の左右両側に突出する略平板状の部材である。前記係止部84は、バッテリ56からメインフレーム32に沿って車体前方側へと延びたメインハーネス(第2ハーネス)82(図2参照)を、その上方から押さえて係止するものである(図5及び図7参照)。メインハーネス82は、結束バンド77やハーネスクランプ79等によって適宜メインフレーム32等に固定される(図7参照)。
【0039】
図4〜図7に示すように、支持部材28は、前端部の係合片86が燃料タンク38下部のヒートガード39の後部に形成された係合孔90に差し込まれて係合され、さらに、各嵌合孔88にそれぞれ挿通されたピン(嵌合部材)92が、左右リヤフェンダ70の前端部上方に形成された各嵌合部94にそれぞれ嵌合され、これにより車体側に対して容易に着脱可能に取り付けられる。すなわち、当該配置構造10では、支持部材28を車体に対して容易に着脱することができ、これにより、そこに支持されるECU26も車体に対して容易に着脱可能である。
【0040】
図4に示すように、車体に取り付けられた支持部材28のサイドカバー取付部80には、左右サイドカバー68の後端側上方に形成された第1締結部95をボルト止めすることができる。また、図4及び図6に示すように、左右リヤフェンダ70の嵌合部94の外側にそれぞれ形成された締結部96に対して、左右サイドカバー68の後端部にそれぞれ形成された第2締結部98が重ねられ、ボルト97によってリヤフレーム36へと共締めされる。これにより、リヤフェンダ70及びサイドカバー68は、リヤフレーム36に対して締結されると共に、サイドカバー68は、支持部材28に対しても締結される。
【0041】
一方、ECU26は、イグニッションコイル106(図6参照)の点火時期制御、インジェクター107(図6参照)の燃料噴射制御、アイドルエアーコントロールバルブ108等の制御等を行うと共に、スロットル開度センサ109(図7参照)や、図示しない大気圧センサ、負圧センサ、クランク角センサ及び水温センサ等の各種センサからの検出値が入力される制御ユニットである。
【0042】
図5に示すように、当該配置構造10の場合、ECU26には、前記メインハーネス82から接続部Aで分岐された2本のサブハーネス(第1ハーネス)100a、100bがコネクタ端子102a、102bによって一面側(前面側)に接続される。この際、サブハーネス100a、100bは、支持部材28に設けられた係止爪(係止手段)104によって当該支持部材28に確実に固定される。係止爪104は、クリップ等でもよい。
【0043】
このようなECU26に対しては、サブハーネス100a、100b及びメインハーネス82を経由して、例えば、イグニッションコイル106に接続されるサブハーネス110(図6参照)、インジェクター107の電源供給コネクタ111に接続されるサブハーネス112(図6参照)、エアクリーナ44のコネクティングチューブ45の下方を通ってアイドルエアーコントロールバルブ108に接続されるサブハーネス113(図6参照)、スロットル開度センサ109に接続されるサブハーネス117(図7参照)、燃料ポンプ40に接続されるサブハーネス114(図2参照)、ハンドル20に設けられたハンドルスイッチ115に接続されるサブハーネス116(図2参照)、及び、テールライト60に接続されるサブハーネス119等が電気的に接続される。これらのサブハーネスは、例えば、メインハーネス82を介してバッテリ56に対しても電気的に接続される。なお、図6中、参照符号121はイグニッションコイル106から点火プラグ(図示せず)へと接続される配線であり、参照符号123は、サブハーネス110、112等を固定するハーネスクランプである。
【0044】
本実施形態に係る配置構造10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0045】
上記のように、ECU26は、その制御対象との間で各ハーネスを介して電気的に接続されており、該制御対象はエンジン24の近傍に多く集まっている。特に、スロットルボディ42等の吸気系部品には制御のための各種センサも集中する傾向にある。従って、メインハーネス82から分岐されてECU26へと接続されるサブハーネス100a、100bの長さを可及的に短くし、軽量化を図るためには、当該ECU26が前記吸気系部品やエンジン24の近傍に配置されることが望ましい。
【0046】
そこで、本実施形態に係る配置構造10では、図7に示すように、ECU26を支持する支持部材28を、スロットルボディ42の上方において、シート22の下方且つ燃料タンク38の後方となる位置に配置している。図2等から諒解されるように、また一般的にATV車両では、エンジン24やスロットルボディ42の近傍には、他の吸気系部品(エアクリーナ44等)や各種補機等が集中して配置されているが、スロットルボディ42の上部には、比較的スペースがあるからである。
【0047】
ところで、スロットルボディ42に関しては、例えば、スロットルバルブ(図示せず)をハンドル20側のアクセル(図示せず)によって開閉するためのスロットルワイヤ120(図6参照)の交換等、所定の整備が必要となる。特に、ATV車両12のように泥水や土砂等で汚れやすい環境で使用される車両では、スロットルワイヤ120が通常の自動二輪車等に比べて錆び易く、そのメンテナンス頻度も高い傾向にある。この場合、ATV車両12のような車両では、車体側方にメインフレーム32や排気管55、車体カバー(サイドカバー68やリヤフェンダ70)も存在するため、側面側からスロットルボディ42へとアクセスしてメンテナンスをすることが困難であり、通常は、上方からメンテナンスを行っている。
【0048】
換言すれば、一般的には、当該配置構造10のようにECU26をスロットルボディ42の上方に配置することは好ましくなく、スロットルボディ42の上部にはメンテナンスのための空間を確保しておくことが望ましい。仮に、ECU26をスロットルボディ42の上部で車体フレーム14に対してボルト止め等で固定する場合には、当該スロットルボディ42のメンテナンス時には、ECU26の取り外し及び取り付けが必要となる。この際、ECU26に接続されるハーネスの結線作業や取り廻しは非常に煩雑である。つまり、単にECU26をスロットルボディ42の上部に配置してしまうと、当該スロットルボディ42のメンテナンス性を著しく損なうことになる。
【0049】
これに対して、本実施形態に係る配置構造10では、ECU26を支持部材28に支持することにより、車体に対して容易に着脱可能に取り付けることができる。このため、スロットルボディ42のメンテナンス時には、支持部材28を取り外すだけで、簡単にスロットルボディ42にアクセスすることができる。
【0050】
支持部材28を車体から取り外す際には、先ず、シート22を取り外すことにより、支持部材28上に支持されたECU26を露呈させる(図4参照)。次いで、サイドカバー68を取り外す。すなわち、第2締結部98のリヤフレーム36への締結を解除すると共に、第1締結部95の支持部材28のサイドカバー取付部80への締結も解除して、サイドカバー68を取り外す(図5等参照)。
【0051】
そうすると、図7及び図8に示すように、ピン92をリヤフェンダ70の嵌合部94から引き抜き、係合片86をヒートガード39の係合孔90から引き抜くだけで、ECU26を支持部材28と共に、車体から容易に取り外すことができる。
【0052】
この際、図8に示すように、ECU26及びそれを支持する支持部材28は、ECU26に接続されているサブハーネス100a、100bとメインハーネス82との分岐点である接続部Aを支点とし、さらにサブハーネス100a、100bをヒンジ代わりとして容易に取り外し及び移動が可能であり、スロットルボディ42をメンテナンスの邪魔にならない車体の一側方等に保持しておくことができる。しかも、支持部材28には、サブハーネス100a、100bを係止する係止爪104が設けられているため(図5参照)、支持部材28を車体に対して着脱する際や取り外した支持部材28を車両の一側方等に保持しておく際、前記ヒンジとして機能するサブハーネス100a、100bの基端側にあるコネクタ端子102a、102bに負担がかかることを有効に回避することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る配置構造10では、スロットルボディ42及び該スロットルボディ42の後方に配置されるエアクリーナ44と別体に設けられる支持部材28でECU26を支持すると共に、この支持部材28を、所定の整備を必要とし、しかもECU26で制御される各種センサ等も多く接続されるスロットルボディ42の上方且つ近接した位置に配置する。これにより、ECU26に接続されるサブハーネス100a、100bの長さを必要最小限とすることができ、その配線効率を大幅に向上させることができる。さらに、支持部材28を介してECU26を車体に対して容易に着脱可能であるため、その下方に配置されるスロットルボディ42のメンテナンス性を確保することができる。
【0054】
換言すれば、本実施形態に係る配置構造10によれば、従来、スロットルボディ42のメンテナンス空間として確保しておく必要があった上部空間を含めた所望の位置にECU26を含む電装品を配置することができ、スペースを有効に且つ効率的に利用することができる。
【0055】
この場合、ECU26を、シート22や燃料タンク38及び支持部材28によって囲まれた空間に配置することができるため、当該ECU26に対する泥水等の外的影響を有効に抑制することができる。さらに、ECU26等の電装品を車両の重心近くに配置することができることから、車両バランス等の点でも好適である。しかも、支持部材28は、左右のメインフレーム32に渡って設けられるので、車幅の中央付近に電装品を配置することができ、車両左右の重量バランスも良好にすることができる。また、ECU26は、エンジン24等の上方に配置されているにも係わらず、その下面側が支持部材28によって覆われるため、エンジン24等からの排熱がECU26に影響を及ぼすことを有効に遮断することができる。すなわち、支持部材28は、ECU26のヒートガードとしても機能する。
【0056】
ECU26を支持する支持部材28は、ボルト等の締結部材を用いず、ピン92及び係合片86によって車体側に嵌合されるため、その着脱作業を一層容易に行うことができる。さらに、支持部材28は、左右のリヤフェンダ70に渡って取り付けられることから、左右のリヤフェンダ70間が当該支持部材28によって接続されて補強される。換言すれば、支持部材28をリヤフェンダ70の補強部材として機能させることができる。同様に、支持部材28にはサイドカバー68を取り付けるためのサイドカバー取付部80が設けられることにより、左右のサイドカバー68間も当該支持部材28によって接続されて補強される。従って、支持部材28による補強効果によって、サイドカバー68やリヤフェンダ70のがたつきや車幅方向への広がり等を有効に防止することができ、特に、走行時に揺れや振動が生じやすい当該ATV車両12の場合にはその防止効果が顕著である。
【0057】
図7及び図8から諒解されるように、当該配置構造10では、支持部材28に支持されたECU26からのサブハーネス100a、100bが、車両の一側方(左側)に向けてのみ配策されてメインハーネス82と接続されている。換言すれば、支持部材28は、所定の方向に移動可能な状態でサブハーネス100a、100bによって車体側へと接続されている。従って、例えば、支持部材28の左右両側からハーネスが延びているような構造に比べて、支持部材28を取り外して移動させるために必要なハーネス長(サブハーネス100a等の長さ)を最小限に抑えることができ、支持部材28の着脱に係る作業性も向上させることができる。さらに、当該サブハーネス100a、100b自体の取り廻しも容易となると共に、支持部材28を車両側方へと一層容易に移動させることができ、その取り外した空間に広い作業スペースを確保することができる。
【0058】
この際、スロットルボディ42のメンテナンス前後における支持部材28の着脱時に、ECU26へのサブハーネスの結線作業等が不要であり、サブハーネス100a、100bの取り廻しも容易に元の状態へと戻すことができる。つまり、本実施形態によれば、所定の整備を必要とする被整備部品であるスロットルボディ42のメンテナンス性を確保したまま、ハーネス等の長さが最小ですむ最適な配置にすることができる。
【0059】
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0060】
例えば、上記実施形態では電装品としてECUのみを例示したが、当該配置構造で配置できる電装品は少なくともECUを含むものであれば、他の電装品(リレー等)を一緒に支持部材に支持させるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…電装品の配置構造 12…ATV車両
14…車体フレーム 24…エンジン
26…ECU 28…支持部材
32…メインフレーム 38…燃料タンク
42…スロットルボディ 68…サイドカバー
70…リヤフェンダ 82…メインハーネス
86…係合片 88…嵌合孔
90…係合孔 92…ピン
94…嵌合部 95…第1締結部
96…締結部 98…第2締結部
100a、100b、110、112、113、114、116、117、119…サブハーネス
104…係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前方側から後方側へと延びる左右一対のメインフレームを有する車体フレームと、
前記車体フレームに支持されるエンジンと、
前記エンジンの近傍に設けられ、所定の整備が必要とされるスロットルボディと、
前記スロットルボディの後方に配置されるエアクリーナと、
前記エンジンを制御するECUと、
を備える鞍乗り型車両の電装品の配置構造であって、
少なくとも前記ECUを含む電装品を支持すると共に、車体に対して着脱可能に取り付けられ、且つ、前記スロットルボディ及び前記エアクリーナと別体に設けられる支持部材を備え、
前記支持部材は、前記スロットルボディの上方且つ近接した位置に配置されることを特徴とする電装品の配置構造。
【請求項2】
請求項1記載の電装品の配置構造において、
前記支持部材は、車体側に形成された嵌合部に対して嵌め合いされることにより、車体に対して着脱されることを特徴とする電装品の配置構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電装品の配置構造において、
前記左右一対のメインフレームの間に燃料タンクが支持されると共に、該燃料タンクの後方に乗員のシートが設けられ、
前記支持部材は、前記燃料タンクの後方であって前記シートの下方に配置されると共に、該燃料タンク及び前記シートによって囲まれることを特徴とする電装品の配置構造。
【請求項4】
請求項3記載の電装品の配置構造において、
車体の左右にそれぞれ設けられ、前記燃料タンクの側部から前記シートの前部下方を覆うサイドカバーを備え、
前記支持部材は、前記サイドカバー及び前記シートを取り外した状態で、前記車体に対して着脱可能に取り付けられることを特徴とする電装品の配置構造。
【請求項5】
請求項3又は4記載の電装品の配置構造において、
車体の左右にそれぞれ設けられ、前記シートの下方から車体後方側を覆うリヤフェンダを備え、
前記支持部材は、左右の前記リヤフェンダに渡って取り付けられることを特徴とする電装品の配置構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電装品の配置構造において、
前記支持部材は、左右の前記メインフレームに渡って設けられることを特徴とする電装品の配置構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電装品の配置構造において、
前記支持部材に支持される前記電装品から延びた第1ハーネスは、前記支持部材に設けられた係止手段で係止された状態で、前記メインフレームに固定された第2ハーネスへと接続されており、
前記支持部材は、前記第1ハーネスと前記第2ハーネスとの接続部を支点として移動可能であることを特徴とする電装品の配置構造。
【請求項8】
請求項7記載の電装品の配置構造において、
前記第1ハーネスは、車体の一側方に向けて配策されて前記第2ハーネスに接続されることを特徴とする電装品の配置構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate