説明

電解めっき装置

【課題】 電解めっき処理において、電極間距離やアノード電極の面積を変えることで、めっき電流分布を調整して、めっき厚みの均一性を制御することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、めっき槽内に、多数の孔を備えた板状アノード電極を少なくとも2枚以上具備し、かつ2枚以上の板状アノード電極を階層状に配置する。そして、2枚以上の板状アノード電極の内、いずれか1枚にめっき電流を流し、若しくは、2枚両方にめっき電流を流すことにより、めっき電流分布を調整し、もって、めっき厚みの均一性、特に面内バラツキを小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解めっき装置に関し、さらに詳細には、半導体用のウェーハに対する電解めっき処理のように高精度なめっき厚みの均一性が要求される際に好適な電解めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被めっき品の周縁部と導通接触するカソード電極が配置された開口部を有するめっき槽と、該開口部に戴置した被めっき品のめっき処理面と対向するように、めっき槽内に配置された複数の孔を有する板状アノード電極とを具備し、めっき槽内にめっき液を供給して被めっき品にめっき液を接触させるとともに、めっき電流を供給することでめっき処理を行う電解めっき装置が知られている。
【0003】
当該電解めっき装置を用いたときのめっき処理に要求されるスペックには、めっき厚みの均一性、めっき面の平滑性(レベリング)、めっきの付回り性などがあり、特に、めっき厚みの均一性については、接合強度や導電性等の重要な物性に影響を及ぼすため、ウェーハの被めっき面の全面にわたり一定のスペックが要求されている。そのため、めっき厚みの均一性を向上させる手法として、めっき電流の電流分布(以下「めっき電流分布」という。) を調整する方法が一般的に採用されている。
【0004】
ところで、このめっき電流分布には、主に、アノード電極やカソード電極の幾何学的形状に影響される一次電流分布と、電極に電流が流れるために生じる、分極に基づく抵抗に左右される二次電流分布がある。そして、当該めっき電流分布を支配する因子を変更・調整することで、より均一なめっき厚みを実現する種々の方法が採用されている。
【0005】
ここで、一次電流分布の調整方法として、例えば以下のものがある。すなわち、アノード電極形状をカソード電極形状と相似形にする方法がその一つである。また、電極の端部に、めっき電流が集中し易いため、めっき処理が端部へ集中的に進行する。よって、電極端部への電流集中を緩和するために、マスク、遮蔽板などを配置して、端部とそれ以外の部分におけるめっき電流分布を調整する方法が他の一つである(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−74088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来から行われてきた、上述のめっき電流分布の調整による均一なめっき厚みの実現方法では、最近のウェーハへのめっき処理に十分に対応できない状況が生じてきている。例えば、ウェーハへのめっき処理には、ウェーハ全面に施されるめっきや、バンプや配線回路等の小さな部位を形成するために施されるめっきなどのための様々なめっき処理条件があるが、例えば、マスクや遮蔽板などをめっき槽内に設け、めっき厚みの均一性を図る対応を採ると、ウェーハのめっき処理条件が変わるたびに、マスクや遮蔽板などの設置状態を変更する必要が生じ、効率的にめっき処理を行うことが困難となる。1枚のウェーハに対して複数のめっき処理条件で、各条件毎に、電解めっき装置を別個に準備するか、又は、その電解めっき装置の構造を変更することが余儀なくされ、製造コストの増加が避けられない。
【0008】
また、近年、単結晶育成技術の進展により、大口径のウェーハが使用されることが多くなってきており、従来よりも大きな(広い)めっき処理面にわたり、めっき厚みの均一性が要求される。しかし、この要求に応えるためには、より精確なめっき電流分布の調整が必要とされる。その結果、従来の対応方法では、満足できるめっき厚みの均一性が実現できない場合が生じてきた。さらに、最近のウェーハ上でめっき処理により形成されるバンプや配線回路の微小化(ファイン化)が進行していることに加え、そのめっき厚みの均一性について要請されるスペックが非常に高くなってきている。例えば、直径が約300mm(若しくは12インチ)の大口径ウェーハに対してめっき処理をした場合、そのウェーハのめっき処理面上のめっき厚みの面内バラツキRを、2μm以下に制御したスペックが要求されている。ところが、従来のめっき電流分布の調整による対応によってしても、このような厳しいスペックを満足できるめっき処理の実現が非常に困難になってきたのである。
【0009】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたもので、めっき処理条件が変更される場合や、めっき処理面積が広くなる場合であっても、その状況に対応しためっき電流分布の調整が容易にできる電解めっき装置を提供することを目的とする。特に、本発明は、大口径のウェーハに関し、好適なめっき処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者は、アノード電極(以下、「板状アノード電極」)に着目し、様々なめっき処理条件に合わせて、板状アノード電極に関する変更を加えることで、めっき電流分布が調整され、もってめっき厚みが制御される電解めっき装置の本発明に想到した。
【0011】
すなわち、本発明は、被めっき品の周縁部と導通接触するカソード電極が配置された開口部を有するめっき槽と、該開口部に戴置した被めっき品のめっき処理面と対向するように、めっき槽内に配置された複数の孔を有する板状アノード電極とを具備し、めっき槽内にめっき液を供給して被めっき品にめっき液を接触させるとともに、めっき電流を供給することでめっき処理を行う電解めっき装置において、板状アノード電極が少なくとも2枚以上具備され、かつ、板状アノード電極が階層状に配置されているものとした。
【0012】
この発明では、上述のように2枚以上の板状アノード電極を階層状に配置している。ここで、階層状とは、上下の板状アノード電極の複数枚が一定間隔をもってお互いの面が向かい合うように配置されている状態をいう。そして、めっき電流均一化のために階層状に配置する板状アノード電極同士が平行となるようにすることが好ましい。また被めっき品がウェーハのような平坦面を有するものである場合には、この面とも2枚以上の板状アノード電極の対向面が平行に配置されていることが好ましい。なお、本明細書で、被めっき品とは、例えば、半導体用のウェーハ、プリント配線板(PWB)、プリント回路板(PCB)、アルミニウム板、銅板などを指す。また、めっき部とは、被めっき品の上でめっき処理される又はめっき処理された部品又は部位を指し、例えば、プリント配線板(PWB)、若しくはプリント回路板(PCB)などが具備するバンプ、電極、配線回路等を指す。
【0013】
本発明の電解めっき装置では、少なくとも2枚以上の板状アノード電極が階層状にめっき槽内に配置されるので、1枚のみの板状アノード電極にめっき電流の供給ができるばかりでなく、2枚以上の板状アノード電極のうち複数を選択して、めっき電流を供給することもできる。つまり、本発明の電解めっき装置であれば、複数の板状アノード電極を自由に選択してめっき電流を供給することができるため、所定のめっき処理条件に最適なめっき電流分布に調整することができる。また、階層状に配置された各板状アノード電極と、被めっき品(めっき処理面)との距離が各々異なるので、めっき電流を供給するために選択される板状アノード電極によって、いわゆる電極間距離を変更することもできる。
【0014】
このように、本発明の電解めっき装置によれば、種々のめっき処理条件に対して、最適なめっき電流分布を実現できるので、めっき処理条件が変更されても、従来のようにマスクや遮蔽板などを要することなく、めっき厚みの均一性に優れためっき処理が可能となる。
【0015】
そして、本発明の複数枚の板状アノード電極は、複数の板状アノード電極の各表面積が異なるようにすることが好ましい。
【0016】
各板状アノード電極の表面積を異なるようにしておくと、めっき電流を供給するために選択する板状アノード電極次第で、そのめっき電流分布を変化させることができるので、多様なめっき処理条件に対応できる自由度が高くなる。この表面積を変える方法は、例えば板状アノード電極の有する孔の大きさ及び数を変えることで実現される。例えば、めっき槽内で、例えば3枚の板状アノード電極を階層状に配置した場合、即ち、上段、中段、下段の順に、板状アノード電極を設けた場合、下段、中段、上段の順に、孔の径が徐々に大きくなるようにしてもよく、この際、各段の孔が略同一の同心軸を持つように形成してもよい。
【0017】
また、本発明の電解めっき装置では、板状アノード電極の少なくともいずれかを選択する切換手段と、この切換手段により選択された板状アノード電極用の電流を供給する電源手段とを有するようにすることが好ましい。これにより、板状アノード電極の切り換えが容易になるので、めっき処理条件が変更されても、最適なめっき電流分布を迅速に決定することができる。
【0018】
さらに、本発明の電解めっき装置では、前記板状アノード電極を被めっき面と略同一形状とし、該板状アノード電極の周縁に複数の周縁電流供給部と、該板状アノード電極の中央に中央電流供給部とを有し、さらに、前記周縁電流供給部から供給する周縁めっき電流と、中央電流供給部から供給する中央めっき電流とを調整する、電流供給調整手段を有するようにすることが好ましい。これにより、板状アノード電極の中央部と周縁部におけるめっき電流の供給を調整することが可能となる。そのため、めっき処理面の中央と周縁側とのめっき厚みの均一性をより精確に調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電解めっき装置によれば、めっき処理条件が変更される場合や、めっき処理面積が広くなる場合であっても、その状況に対応しためっき電流分布の調整が容易にできる。特に、大口径のウェーハのような被めっき品に対しても均一性の高いめっき厚みの実現が、1台の電解めっき装置において達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る電解めっき装置及びその電解めっき方法について、図面を参照して以下に説明する。
【0021】
<第一実施形態>
第一実施形態では、電解めっき装置のめっき槽内に、2枚のメッシュ型板状アノード電極を階層状に配置した場合と、1枚のメッシュ型板状アノード電極の電極間距離を変えて配置した場合について述べるが、図1〜4を参照し本実施形態について説明することとする。
【0022】
図1は、カップ式電解めっき装置10の垂直断面概略図である。図1に示されるように、カップ式電解めっき装置10は、めっき槽20の上部開口に沿って、被めっき品として円板状のウェーハ(半導体ウェーハ等)30を戴置できるようになっており、ウェーハ30の周縁部40と全周にわたって導通接触するようにリング状のカソード電極50が配置されている。カソード電極50の下には、めっき液の漏洩防止用のシールパッキング60が配置されている。また、めっき槽20には、底部中央にめっき液供給口70と、戴置されたウェーハ30に向けて上昇流でめっき液供給口70から供給されためっき液がめっき槽20から外部へ流出できるようになっているめっき液流出口80と、が設けられている。
【0023】
そして、めっき槽20の内壁に、2枚の板状アノード電極100A及び100B(これら参照番号の総称を100とする。)を固定するためのねじ止め用段部(不図示)が2段平行に設けられており、戴置されたウェーハ30の平坦面と対向する対向面を持つ2枚の板状アノード電極100A及び100Bが、ねじ止め用段部で固定されることにより階層状かつ略平行となるように一定間隔をもって配置されているようになっている。
【0024】
次に、第一実施形態で用いる、板状アノード電極100について、図2を用いて説明する。この板状アノード電極100は、エクスパンドメッシュタイプで、線径1mmのチタニウム材により構成されている。この第一実施形態のアノード電極では、メッシュを形成するひし形孔105の大きさについて、対角線長さとして7mm×11mmのものを使用した(以下このような孔を備えた板状アノード電極をメッシュ型アノード電極と称する)。メッシュ型板状アノード電極100のベース金属がチタニウムであって、その上に順にプラチナめっきが1μm、次にイリジウムめっきが2μm施されている。この板状アノード電極は、めっき液中で、不溶性、耐食性、導電性などに優れた材料を用いることが好ましい。
【0025】
メッシュ型板状アノード電極100には、めっき装置10の内壁の段部(不図示)に取り付けるための係止穴(ねじ止め用の穴)102p及び102a〜dを外周フレーム部103に5つ備えている。ここで、係止穴102p及び102a〜dは、めっき電流供給部も兼ねている。
【0026】
また、図1に示すように、メッシュ型板状アノード電極100A、100Bのそれぞれ別個に、かつカソード電極50にめっき電流を供給するための電源手段95が、メッシュ型板状アノード電極100A、100Bにそれぞれ配線91A及び91Bと、切換手段90とを介して設けられている。そして、この第一実施形態では、メッシュ型板状アノード電極100の係止穴102pの1箇所に配線91A、91Bを接続するようにした。さらに、切換手段90は、メッシュ型板状アノード電極100A、100Bのいずれかに電源手段95からの電流を切り換えて供給するスイッチとして機能する。どのメッシュ型板状アノード電極100を何枚使用するか、電流値を何アンペアにするかの命令については、切換手段90と電源手段95とに接続されたコンピュータ等の制御装置から送られる(不図示)。尚、2枚のメッシュ型板状アノード電極100A、100Bを設置した場合には、両電極同士が直接導通しないようにした。
【0027】
以上のカップ式電解めっき装置10を用いて行っためっき処理について、実施例1〜4で説明する。また、各実施例において、バンプA及びバンプBの2種類を形成してそれらのバンプ高さの均一性を評価した。この実施例1〜4では、電極間距離と、メッシュ型板状アノード電極の表面積とをパラメータとして当該バンプ高さの均一性を調べたものである。
【実施例1】
【0028】
実施例1では、カップ式電解めっき装置10を用い下記条件に従ってめっき処理を行った。総表面積は400cmであるメッシュ型板状アノード電極100Aを1枚準備し使用した。電極間距離(=d1(図1参照)、以下同様。)を21mmとした。
【0029】
めっき処理は、図1に示される電源手段95からめっき電流が供給されるカソード電極と導通接触した直径30mm(12インチ)のウェーハに行った。ウェーハ面の被めっき表面にはシード金属層として厚み0.15μmの金を被覆し、レジスト(厚み25μm)をこのシード金属層上へ被覆後、バンプAあるいはバンプBを形成するためのパターン形成を行った。バンプAは直方体状で高さ23μmの形状である。またウェーハ上に形成されたバンプAの総てが占める面積(めっき面積)は0.1dmであった。一方、バンプBは、バンプAと同様に直方体状であるが高さが16μmの形状のものである。さらにこのバンプBの場合は、ウェーハ上に形成されたバンプBの総てが占める面積(めっき面積)は1.0dmであり、バンプAに比べて総めっき面積が10倍大きなものである。このようなパターン形成をしたウェーハに対し金めっき処理を行うことで、金バンプの、バンプA及びバンプBを形成した。
【0030】
めっき液は、ノンシアン系で、弱アルカリ性の高純度金めっき液(日本エレクトロプレイティング・エンジヤース社製、製品名MICROFAB AU660)を使用した。めっき処理条件は、バンプAについては電流密度0.8A/dm及びめっき時間約45分間で目標高さ23μmとし、バンプBについては電流密度0.8A/dm及びめっき時間約30分間で目標高さ16μmとして、形成した。
【0031】
めっき処理後、カップ式電解めっき装置10よりウェーハ30を取り外し、めっき処理後のウェーハ30を水洗及び乾燥をし、レジストを剥離した後、再度水洗及び乾燥処理を行った。そして、めっき厚みの均一性を評価するために、図3に示すウェーハ表面の17ポイントの部分に位置するバンプ高さを測定した。
【0032】
測定方法は、触針式のバンプ高さ測定器(Veeco社製Dektak V320−Si)を用いて、図4に示されるようにバンプのトップ表面のLの範囲における高さ(シード金属表面からバンプトップまでの距離)を測定しその平均値を各バンプの高さとした。そして、測定結果により、最大高さ、最小高さ、平均高さ、標準偏差、均一性、及びR(面内バラツキ)を求めた。その結果を表1に示す。
【0033】
なお、表1における均一性の値は、均一性(%)=((最大高さ−最小高さ)/平均高さ)×100で、算出した。また、表1中の標準偏差は17箇所の測定バンプ高さの値より算出し、めっき厚みの面内バラツキRは、最大高さと最小高さとの差(R=最大高さ−最小高さ)により算出した。
【実施例2】
【0034】
実施例2は、実施例1の条件に準じて、2枚のメッシュ型板状アノード電極100A、100B(実施例1で使用したものと同一)を用いたものである。従って、この実施例2のメッシュ型板状アノード電極100A,100Bの総表面積は800cmである。またメッシュ型板状アノード電極100Aの位置は実施例1と同様であるが、メッシュ型板状アノード電極100Bの位置については、電極間距離(=d2(図1参照)、以下同様。)を33mmとした。そして、それぞれのメッシュ型板状アノード電極100A、100Bのそれぞれに供給された電流の電流密度は、両方共、0.8A/dmとした。
【実施例3】
【0035】
実施例3では、実施例1の条件に準じてめっき処理を行った。実施例1と同様に1枚のメッシュ型板状アノード電極100Aを用いた。メッシュ型板状アノード電極100Aの位置は、電極間距離(=d2)を33mmとなるようにした。
【実施例4】
【0036】
実施例4では、実施例1の条件に準じてめっき処理を行った。実施例1と同様に1枚のメッシュ型板状アノード電極100Aを用いた。メッシュ型板状アノード電極100Aの位置は、電極間距離(=d2)を45mmとなるようにした。
【0037】
以下表1に測定結果と統計処理結果をまとめる。
【表1】

【0038】
表2は、目標スペックとなる面内バラツキRと、各実施例の態様との関係をまとめて示す。
【表2】

【0039】
以下、表2を参照して評価結果を述べる。ここでの評価はめっき均一性を面内バラツキRによって評価するものであって、面内バラツキRの目標スペックを2μm以下とした。
【0040】
まず、パラメータを電極間距離とし測定結果について見ると、実施例1、3、及び4では、バンプAでは電極間距離が長くなるほど面内バラツキRが小さくなったが、バンプBでは電極間距離が短くなるほど面内バラツキRが大きくなった。このように、めっき面積や形状によって、面内バラツキRを小さくしうる電極間距離が変わることが分かった。つまり、バンプAについては実施例1、3、4のすべてにおいて面内バラツキRの目標スペックをクリアしたが、バンプBについての面内バラツキRは実施例1(d1=21mm)のときに目標スペックをクリアした。よって、目標スペックをクリアするには、バンプAについては電極間距離を21mm以上にする必要があり、バンプBについては電極間距離を21mmと33mmとの間のいずれかの距離以下にする必要があることが分かった。
【0041】
このことから、面内バラツキRを小さくするためには、電極間距離を変更することによりその対応が可能であることが判明した。
【0042】
次に、パラメータをメッシュ型アノード電極の配置枚数(電極表面積)とした測定結果について見ると、バンプAでは、メッシュ型板状アノード電極(100A、100B)の表面積が、小さい方(実施例1及び3)が大きい方(実施例2)よりも面内バラツキRが小さくなることが分かった。バンプBでは、実施例1と実施例2との間には大きな有意差はないが、実施例3よりも実施例2は面内バラツキRがより小さくなることが分かった。つまり、バンプAについてはメッシュ型板状アノード電極の表面積が小さい実施例1及び3において目標スペックをクリアした。一方、バンプBについてはメッシュ型板状アノード電極の表面積に対して、メッシュ型板状アノード電極が1枚の場合であってd1=21mmのとき(実施例1)と、メッシュ型板状アノード電極が2枚の場合(実施例2)において目標スペックをクリアした。よって、目標スペックをクリアするには、バンプAについてはメッシュ型板状アノード電極の表面積をむしろ小さくする必要があり、バンプBについてはメッシュ型板状アノード電極の表面積は大きくするか、メッシュ型板状アノード電極の電極間距離を小さくする方がよいことが分かった。
【0043】
このことから、面内バラツキRを小さくするためには、メッシュ型板状アノード電極の表面積を変更することによっても、その対応が可能であることが判明した。
【0044】
以上のように、同一ウェーハ上で同一種のめっき処理がされたとしても、ウェーハのマスクパターン(ここではバンプAとバンプB)に応じて目標スペックをクリアするための、メッシュ型板状アノード電極の好適な適用条件が異なってくる。
【0045】
以上の第一実施形態のカップ式解めっき装置では、メッシュ型板状アノード電極(100A、100B)を2枚、めっき槽20内に階層状に配置することができるので、2枚のメッシュ型板状アノード電極のうち、いずれか1枚にめっき電流を供給することで、電極間距離を変えることができ、またメッシュ型板状アノード電極の表面積も変えることができる。このように、第一実施形態の電解めっき装置によれば、めっき電流分布の調整の自由度が高いために、めっき面積がその形状などのめっき処理条件が異なっても目標スペックであるめっき厚さの均一性を実現するためのメッシュ型板状アノード電極の好適な適用条件を見つけることが容易となる。つまり、ウェーハのマスクパターン毎にメッシュ型板状アノード電極の好適な適用条件を決定しておけば、マスクパターンが変更されても、そのマスクパターンに対応するメッシュ型板状アノード電極の好適な適用条件に変更すれば、目標スペックをクリアできる均一な厚みのめっき処理が容易に行えるようになる。
【0046】
<第二実施形態>
第二実施形態では、図6に示されるパンチ孔を備えた板状アノード電極(以下「パンチ孔型アノード電極」という。)を3枚(200A、200B、及び200C)を備えたカップ式電解めっき装置10について説明する。
【0047】
図6に示されるように、パンチ孔型アノード電極200A、200B、及び200Cは、金属製の円板にパンチ加工を多数施したパンチ孔を有する。当該パンチ孔は基本的に断面形状を円形とし、200A、200B、及び200Cの順で、パンチ孔の径が段々小さくなるように作成されている。
【0048】
なお、パンチ孔の断面は、円形以外の、楕円形や、三角形、四角形などの多角形とすることもできる。また、すべての孔を同一径(同一の大きさ)にする必要もなく、また様々な孔形状が混在するようにしてもよい。このようにパンチ孔型アノード電極にあっては、パンチ孔の大きさや数を調整することで1枚のパンチ孔型板状アノード電極の表面積を自由に変えることができる。
【0049】
第二実施形態では、3枚のパンチ孔型板状アノード電極200A、200B、及び200Cを、この順に、めっき槽10内にウェーハ30からパンチ孔型板状アノード電極までの距離(電極間距離)が、21cm(=d1)、33cm(=d2)、及び45cm(=d3)となるように階層状に各板状アノード電極同士が直接導通しないように配置した。そして、パンチ孔型板状アノード電極200A、200B、及び200Cのいずれかが切換手段90によって選択され、電源手段、切換手段90、及び配線91A、91B、及び91Cの少なくともいずれかを介してめっき電流が3枚のパンチ孔型板状アノード電極200A、200B、及び200Cの少なくとも1枚に選択的に供給されるようにした。
【0050】
そのため、第二実施形態では、3枚のパンチ孔型板状アノード電極(200A、200B、及び200C)を配置した際、3枚すべてが動作される場合の1通り、3枚のうち2枚が動作される場合の3通り、及び3枚のうち1枚が動作される場合の3通り、の計7通りのめっき電流供給方法を切換手段90によって採りうる。このように第二実施形態によれば、3枚のパンチ孔型板状アノード電極200A、200B、及び200Cの組み合わせ次第で、めっき電流分布が調整でき、めっき厚みの均一化のための最適条件を決める自由度が、パンチ孔型板状アノード電極が1枚や2枚の場合よりもさらに高まる。またパンチ孔型板状アノード電極を4枚以上についても同様に配置できさらに当該自由度を高めることもできる。
【0051】
図7は、パンチ孔型板状アノード電極200A’、200B’、及び200C’のそれぞれが備えるパンチ孔205A’、205B’、及び205C’の各1個に焦点を当てて鉛直方向に配列した一態様を概略的に示した立面図である(実際には図6のようにパンチ孔205A’、205B’、及び205C’が多数個存在する)。図7に示されるように、3枚のパンチ孔型板状アノード電極200A’、200B’、及び200C’が、めっき槽20内で互いに平行かつ鉛直下方から上方に向かうにつれパンチ孔の径が大きくなるように配置されたものであって、それぞれのパンチ孔205A’、205B’、及び205C’が、略同一の同心軸を持つようにすることも可能である。このように配置しておけば、めっき液供給口70から上昇流で供給されるめっき液の流動をスムーズに行うことが可能となる。
【0052】
上記態様では、3枚のパンチ孔型アノード電極を備えたカップ式電解めっき装置10について説明したが、代わりに、対角線が、7mm×11mm、14mm×22mm、21mm×33mm径であって、メッシュ線径略1mmのメッシュ型アノード電極を1台のめっき装置について3枚準備し、同様にして、これら3枚のメッシュ型アノード電極が電解めっき装置10のめっき槽20内で階層状に配置されるようにしてもよい。その結果、パンチ孔型アノード電極を3枚配置した場合と同様の効果が得られると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の電解めっき装置の第一実施形態の垂直断面図。
【図2】第一実施形態で具備されるメッシュ型板状アノード電極の上面図。
【図3】ウェーハの測定箇所を示す平面図。
【図4】バンプ断面概略図。
【図5】本発明の電解めっき装置の第二実施形態の垂直断面図。
【図6】第二実施形態で具備されるパンチ孔型板状アノード電極の上面図。
【図7】3枚のパンチ孔型板状アノード電極を階層状に配置したときの第二実施形態の一配置例を示す概略立面図。
【符号の説明】
【0054】
10 カップ式電解めっき装置
20 めっき槽
30 ウェーハ
40 ウェーハの周縁部
50 カソード電極
60 シールパッキング
70 めっき液供給口
80 めっき液流出口
90 切換手段
91A、91B、91C 配線
95 電源手段
100A、100B メッシュ型板状アノード電極
105 メッシュ孔
200A、200B,200C、200A’、200B’,200C’ パンチ孔型板状アノード電極
205A、205B、205C、205A’、205B’、205C’ パンチ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき品の周縁部と導通接触するカソード電極が配置された開口部を有するめっき槽と、該開口部に戴置した被めっき品のめっき処理面と対向するように、めっき槽内に配置された複数の孔を有する板状アノード電極とを具備し、めっき槽内にめっき液を供給して被めっき品にめっき液を接触させるとともに、めっき電流を供給することでめっき処理を行う電解めっき装置において、
板状アノード電極が少なくとも2枚以上具備され、かつ、板状アノード電極が階層状に配置されていることを特徴とする電解めっき装置。
【請求項2】
前記複数の板状アノード電極の各表面積が異なるようにされている請求項1に記載の電解めっき装置。
【請求項3】
前記板状アノード電極の少なくともいずれかを選択する切換手段と、この切換手段により選択された板状アノード電極に電流を供給する電源手段と、を有する請求項1又は2に記載の電解めっき装置。
【請求項4】
前記板状アノード電極を被めっき面と略同一形状とし、該板状アノード電極の周縁に複数の周縁電流供給部と、該板状アノード電極の中央に中央電流供給部とを有し、
さらに、前記周縁電流供給部から供給する周縁めっき電流と、中央電流供給部から供給する中央めっき電流とを調整する、電流供給調整手段を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解めっき装置。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−297586(P2008−297586A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143866(P2007−143866)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000228165)日本エレクトロプレイテイング・エンジニヤース株式会社 (29)