説明

電解エッチングを用いたナノチップの接着装置及び接着方法

【課題】ナノチップの接着装置及び接着方法に関し、より詳細には優れた付着安全性を有する電解エッチングを用いたナノチップの接着装置及び接着方法を提供する。
【解決手段】所定面積の平面を上部に有するガラス板5と、前記ガラス板5上に表面張力で置かれ、伝導性を有する電解質溶液4と、伝導性を有する基底物1を一方向へ往復移送させ得る移送手段と、前記基底物1の先端へ接着剤10によって接着され、末端が前記電解質溶液4に浸される炭素ナノチューブ2と、前記電解質溶液4と前記基底物1とへ電源を印加する電源手段により製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノチップの接着装置及び接着方法に関し、より詳細には優れた付着安全性を有する電解エッチングを用いたナノチップの接着装置及び接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ナノサイズの対象物体を取り扱うためには、これを操作する道具もやはりナノ水準の解像度を備えなければならない。そこで、ナノプローブ(マイクロチップ)の開発はナノ産業の必ず必要な分野である。
【0003】
現在まで、炭素ナノチューブの付着安全性を高めるために提示された方案は殆どないのが実情である。既存のナノプローブは、先ず、ナノプローブを製作した後、これを電子走査顕微鏡(SEM)の中に入れる。その後、電子ビームを付着部分に照射するようになるが、この時、電子走査顕微鏡内にある非晶質炭素が接着部分に蒸着される。このような方法により接着力を増大させて来た(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このような従来の方法は、付着安全性を高めるために追加の工程が必要であり、電子走査顕微鏡という高価の装備を必然的に要求するようになる。また、炭素ナノチューブ表面に望まない非晶質炭素が蒸着される短所があった。
【非特許文献1】“Carbon nanotube tips for a scanning probe microscope:their fabrication and properties”,Seiji Akita, et. Al., Journal of Physics D-Applied Physics, Vol.32, pp.1044-1048, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題点を解決するために創案されたものであって、本発明の第1の目的は、電解作用を用いて簡単に炭素ナノチューブと基底物との間の付着安全性を高めることができる電解エッチングを用いたナノチップの接着装置及び接着方法を提供することである。
【0006】
本発明の第2の目的は、個別的なナノプローブの付着安全性を高めることができる電解エッチングを用いたナノチップの接着装置及び接着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような本発明の目的は、所定面積の平面を上部に有するガラス板5と、前記ガラス板5上に表面張力で置かれ、伝導性を有する電解質溶液4と、伝導性を有する基底物1を一方向へ往復移送させ得る移送手段と、基底物1の先端へ接着剤10によって接着され、末端が前記電解質溶液4に浸される炭素ナノチューブ2と、電解質溶液4と前記基底物1とへ電源を印加する電源手段とから構成されることを特徴とする電解エッチングを用いたナノチップの接着装置によって達成され得る。
【0008】
そして、移送手段は、X軸方向へ数nm〜数十nmの分解能を有して往復できるナノステージ8であることが望ましい。
また、電源手段は、直流電源であり、更に電流計6が直列に連結されていることがより望ましい。
【0009】
それだけでなく、接着剤10は、高抵抗のアクリル接着剤であることが可能である。
さらに、基底物1は、タングステンを含むマイクロチップであることもできる。
そして、炭素ナノチューブ2の末端が前記電解質溶液4に浸される領域の上部には、更にセンシングユニット3が設けられていることが最も望ましい。
【0010】
ここで、センシングユニット3は、光学顕微鏡又は、電子顕微鏡であることが可能である。
前記のような本発明の目的は、他のカテゴリーであって、基底物1の末端に接着剤10を塗布し、炭素ナノチューブ2を付着する段階と、ガラス板5上に表面張力で置かれる伝導性電解質溶液4に電源を印加し、基底物1に電源を印加する段階と、基底物1を一方向へ移送させ、前記炭素ナノチューブ2の末端が前記電解質溶液4に浸されることによって通電される段階と、通電状態が維持されることによって前記接着剤10の抵抗に起因した熱が発生し、発生された熱を用いて前記接着剤10を溶融する段階と、電解作用が終了されることによって電流が遮断され、溶融された前記接着剤10が凝固して前記炭素ナノチューブ2が接着される段階とからなることを特徴とする電解エッチングを用いたナノチップの接着方法によっても達成され得る。
【0011】
そして、通電段階、溶融段階及び接着段階は、炭素ナノチューブ2の末端が電解質溶液4に浸される領域を更に顕微鏡で観察する段階を含むことが最も望ましい。
本発明のその他の目的、特定の長所など及び新規の特徴などは、添付された図面などと関連した以下の詳細な説明と、好適実施例などから更に明らかになるはずである。
【発明の効果】
【0012】
前記のような本発明による電解エッチングを用いたナノチップの接着装置及び接着方法によれば、電解作用を用いて簡単に炭素ナノチューブと基底物との間の付着安全性を高めることができる。
また、個別的なナノプローブの付着安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、添付された図面を参照して本発明の好適実施例に関して詳細に説明する。
図1は、本発明による電解エッチングを用いたナノチップの接着装置の概略的な構成図である。図1に図示されたように本発明の構成は、大きく、ガラス板5とナノステージ8とで区分できる。
【0014】
ガラス板5は、不導体であって、水平に置かれ、上面は平滑な平面をなす。このようなガラス板5の上面には電解質溶液4が所定の厚さで置かれる。電解質溶液4は、別の容器に収容されるのではなく、ガラス板5の上で表面張力により位置される。このような電解質溶液4の一側には電極が浸漬され、直流電源を通電できるように構成される。
【0015】
ナノステージ8は、上部に基底物1が置かれてあり、このような基底物1をガラス板5に向かって数nmの分解能で往復移送させることができる部材である。このようなナノステージ8の駆動部などに関しては当業者にとって公知の事項であるため、図面の図示及び説明を省略する。
【0016】
基底物1は、代表的にはタングステンを含むマイクロチップにすることができ、ナノステージ8上に装着され、ガラス板5に向かって往復移送できるように配置される。
基底物1の形状は代表的に円筒状であり、末端が尖った形に成型され、尖った末端には炭素ナノチューブ2が付着される。
【0017】
センシングユニット3は、炭素ナノチューブ2が電解質溶液4内に浸される部分の上部でこれを観察する部材である。このようなセンシングユニット3の代表的な例は光学顕微鏡又は、電子走査顕微鏡(SEM)にすることができる。
【0018】
電源装置7は、数十ボルトの直流電源を供給することができ、電流計6は、電源装置7と直列に連結されて電流の量を計測する。
図2は、図1のうち、基底物1と炭素ナノチューブ2との拡大正面図である。図2に図示されたように、炭素ナノチューブ2と基底物1との間には接着剤10が塗布され、このような接着剤10の代表的な例は高抵抗のアクリル接着剤にすることができる。
【0019】
以下では前記のような構成を有する電解エッチングを用いたナノチップの接着装置を利用して接着する方法を詳細に説明する。
先ず、基底物1の末端にアクリル系接着剤10を塗布し、炭素ナノチューブ2を付着する。
【0020】
その後、ガラス板5上に表面張力で置かれる伝導性電解質溶液4に直流電源(陰極)を印加し、基底物1に直流電源(陽極)を印加する。このような状態では回路構成が開放されているので、電流は流れないようになる。
【0021】
その後、ナノステージ8をX軸方向へ漸進的に移送させる。この時、移送量は数nmの分解能である。これは炭素ナノチューブ2の長さが極めて短いからである。このような移送過程は、センシングユニット3を介して肉眼で観察することができる。
【0022】
このような移送が続けて行われると、ある瞬間で炭素ナノチューブ2の末端が電解質溶液4に浸されるようになり、これによって通電される。通電が始まると、同時に電解作用が始まる。
【0023】
即ち、通電状態が維持されることにより接着剤10の抵抗によって接着剤10部分で多くの抵抗熱が発生するようになる。基底物1と電解質溶液4とは、抵抗が極めて低い伝導性物質であるので、発熱は接着剤10領域で集中的に発生する。
【0024】
このように発生した熱によって接着剤10が溶融される。
その後、電解作用が終了することにより電流が遮断され、溶融した接着剤10が凝固して炭素ナノチューブ2が基底物1に堅固に接着される。電解作用の開始と終了とは電流計6の計測値を通して認知できる。
【0025】
以下では、従来の炭素ナノチューブと本発明によって付着した炭素ナノチューブとの付着安全性状態の差を肉眼で確認できる拡大写真に関して説明する。
先ず、図3は、従来技術によるナノチップの拡大写真であり、付着安全性が極めて低い状態であることを写真で表す。即ち、図3に図示された4枚の写真のうち、左側から右側に進行される手順で説明する。
【0026】
先ず、図3の一番左側の写真は初期状態であり、未だ電圧が印加されないで接近した状態であり、左側から2番目の写真はこれを部分拡大した写真である。そして、左側から3番目の写真は電圧を印加して炭素ナノチューブが撓める状態を撮影したものであり、一番右側の写真は撓めた部分の拡大写真である。即ち、一番右側の写真から分かるように従来のナノチップでは基底物1と炭素ナノチューブ2との間に付着安全性が低く、撓めるような僅かな動きでも付着部分が落ちる現状を見付けることができる。
【0027】
図4は、本発明によるナノチップの拡大写真であり、付着安全性が極めて高い状態であることを写真で表す。即ち、図4の左側の写真は2つのナノチップを相互接近させ、電源を印加することによって2つの炭素ナノチューブ2が対称的に撓んでいる状態である。そして、図4の右側の写真は撓んだ状態で電源を遮断したものであり、炭素ナノチューブ2が初期状態(丸い円部分)に回復したことが分かる。即ち、炭素ナノチューブ2と基底物1との間の付着安全性が極めて高く、撓み作用の以後にも初期状態にそのまま復帰されることを確認することができた。
【0028】
本発明は前記言及された好適実施例と関連して説明されたが、発明の要旨と範囲から脱することなく、多様な修正や変形をすることが可能である。従って、添付された特許請求の範囲は本発明の要旨に属するこのような修正や変形を含むでしょう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による電解エッチングを用いたナノチップの接着装置の概略的な構成図である。
【図2】図1のうち、基底物1と炭素ナノチューブ2との拡大正面図である。
【図3】従来技術によるナノチップの拡大写真であり、付着安全性が極めて低い状態であることを示す写真である。
【図4】本発明によるナノチップの拡大写真であり、付着安全性が極めて高い状態であることを示す写真である。
【符号の説明】
【0030】
1 基底物(マイクロチップ)
2 炭素ナノチューブ
3 センシングユニット(顕微鏡)
4 電解質溶液
5 ガラス板
6 電流計
7 電源装置
8 ナノステージ
10 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定面積の平面を上部に有するガラス板(5)と、
前記ガラス板(5)上に表面張力で置かれ、伝導性を有する電解質溶液(4)と、
伝導性を有する基底物(1)を一方向へ往復移送させ得る移送手段と、
前記基底物(1)の先端へ接着剤(10)によって接着され、末端が前記電解質溶液(4)に浸される炭素ナノチューブ(2)と、
前記電解質溶液(4)と前記基底物(1)とへ電源を印加する電源手段とから構成されることを特徴とする電解エッチングを用いたナノチップの接着装置。
【請求項2】
前記移送手段は、X軸方向へ数nm〜数十nmの分解能を有して往復できるナノステージ(8)であることを特徴とする請求項1に記載の電解エッチングを用いたナノチップの接着装置。
【請求項3】
前記電源手段は、直流電源であり、更に電流計(6)が直列連結されていることを特徴とする請求項1に記載の電解エッチングを用いたナノチップの接着装置。
【請求項4】
前記接着剤(10)は、アクリル接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の電解エッチングを用いたナノチップの接着装置。
【請求項5】
前記基底物1は、タングステンを含むマイクロチップであることを特徴とする請求項1に記載の電解エッチングを用いたナノチップの接着装置。
【請求項6】
前記炭素ナノチューブ(2)の末端が前記電解質溶液(4)に浸される領域の上部には、更にセンシングユニット(3)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電解エッチングを用いたナノチップの接着装置。
【請求項7】
前記センシングユニット(3)は、光学顕微鏡又は、電子顕微鏡であることを特徴とする請求項6に記載の電解エッチングを用いたナノチップの接着装置。
【請求項8】
基底物(1)の末端に接着剤(10)を塗布し、炭素ナノチューブ(2)を付着する段階と、
ガラス板(5)上に表面張力で置かれる伝導性電解質溶液(4)に電源を印加し、基底物(1)に電源を印加する段階と、
前記基底物(1)を一方向へ移送させ、前記炭素ナノチューブ2の末端が前記電解質溶液(4)に浸されることによって通電される段階と、
通電状態が維持されることによって前記接着剤(10)の抵抗に起因した熱が発生し、発生された熱を用いて前記接着剤(10)を溶融する段階と、
電解作用が終了されることによって電流が遮断され、溶融された前記接着剤(10)が凝固して前記炭素ナノチューブ(2)が接着される段階とからなることを特徴とする電解エッチングを用いたナノチップの接着方法。
【請求項9】
前記通電段階、溶融段階及び接着段階は、
前記炭素ナノチューブ(2)の末端が前記電解質溶液(4)に浸される領域を更に顕微鏡で観察する段階を含むことを特徴とする請求項8に記載の電解エッチングを用いたナノチップの接着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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