説明

電解コンデンサおよびその製造方法

【課題】小型、大容量、低ESR、低漏れ電流、高耐圧であると共に、生産性を向上させた電解コンデンサを提供する。
【解決手段】表面に誘電体層を備えた陽極箔12aにセパレータ12cを介して陰極箔12bを積層し、陽極箔12a、陰極箔12b、セパレータ12cの表面に導電性ポリマー微粒子の導電性ポリマー層を形成したコンデンサ素子12と、このコンデンサ素子12に夫々一端を接続した一対のリード線11a、11bと、コンデンサ素子12に含浸された駆動用電解液と、一対のリード線11a、11bの夫々の他端を外部に導出してコンデンサ素子12を駆動用電解液と共に封じた外装体15とからなる電解コンデンサにおいて、セパレータ12cの気密度が2.0s/100ml以下であり、さらに導電性ポリマー微粒子が粒子径100nm以下であると共に陽極箔の単位面積当たり0.3〜1.2mg/cm2の範囲で含有された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車用機器等に使用される電解コンデンサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器等のデジタル化に伴い、それらの電源出力側の回路、例えば平滑回路や制御回路に使用されるコンデンサに対して小型、大容量で高周波領域における等価直列抵抗(以下、ESRと略す)の小さいものが求められるようになってきている。これらの電源出力側の回路に用いられるコンデンサとして、駆動用電解液に代表される液体電解質を用いた液体型電解コンデンサが適用されてきたが、昨今、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物、TCNQ錯塩等の有機半導体、またはポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性ポリマーといった固体電解質を用いた固体型電解コンデンサが適用されるようになってきており、電解コンデンサの低ESR化が進んできている。
【0003】
しかし、これらの固体型電解コンデンサは、液体型電解コンデンサに比べて特に低ESRである点では優れているものの、誘電体である陽極酸化皮膜の欠陥部の修復作用が乏しいため、漏れ電流の増大や最悪の場合ショートとなる恐れがある。一方、特に昨今のAV機器や自動車電装機器においては、高信頼化の要望がますます高まってきており、固体型電解コンデンサにおいても、小型、大容量、低ESRといった性能に加え、低漏れ電流、耐ショート性能の向上が必要となってきている。こうした要望に対し、電解質材料として、導電性ポリマーなどの固体電解質材料以外に、誘電体である陽極酸化皮膜の欠陥部の修復作用に優れた液体電解質材料である駆動用電解液を合わせて用いる構成、いわゆるハイブリッド型電解コンデンサが提案されてきている。
【0004】
ここで、図4は、従来の電解コンデンサの一例であるハイブリッド型電解コンデンサ(巻回形コンデンサ素子タイプ)の構成を示した断面図、図5は、同ハイブリッド型電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図、図6は、コンデンサ素子の断面の要部を拡大した模式図である。
【0005】
この従来のハイブリッド型電解コンデンサは、図4に示すように、機能素子であるコンデンサ素子2と、このコンデンサ素子2にそれぞれ一方の端部を接続した一対のリード線1a、1bと、これらリード線1a、1bの他方の端部を外部に導出するようにして、コンデンサ素子2を駆動用電解液(図示せず)と共に封じた外装体5とからなっている。
【0006】
また、前記外装体5は、駆動用電解液を含浸したコンデンサ素子2を収納した有底筒状の外装ケース3と、前記リード線1a、1bをそれぞれ挿通させる貫通孔4a、4bを備えると共に外装ケース3の開口部に配置され、外装ケース3の外周面に設けた絞り加工部3aで圧縮変形させることによって外装ケース3の開口部を封止した封口体4とで構成されている。なお、封口体4には、ゴムパッキングが用いられている。
【0007】
また、前記コンデンサ素子2は、図5、6に示すように、アルミニウム等の弁金属からなる箔をエッチング処理により粗面化しさらにその表面に陽極酸化皮膜の誘電体層2eを化成処理によって形成した陽極箔2aと、アルミニウム等の弁金属からなる陰極箔2bとを、セパレータ2cを介して積層して巻回し、さらに前記陽極箔2aと陰極箔2bとの間にポリエチレンジオキシチオフェン等の導電性ポリマーの粒子または凝集体からなる導電性ポリマー層6を備えており、この導電性ポリマー層6は、陽極箔2a表面、陰極箔2b表面、及びセパレータ2cの表面上に形成されている。そして、前記リード線1a、1bは、それらの一方の端部が陽極箔2aと陰極箔2bにそれぞれ接続されており、それらの他方の端部はコンデンサ素子2の同一端面より引出されている。
【0008】
次に、以上のように構成した従来のハイブリッド型電解コンデンサの製造方法について説明する。
【0009】
まず、図5に示すように、陽極酸化皮膜の誘電体層2eを表面に有するアルミニウム等の弁金属からなる陽極箔2aと、陰極箔2bと、セパレータ2cとを準備し、一対のリード線1a、1bの一方の端部をそれぞれ陽極箔2aと陰極箔2bに接続した後、その陽極箔2aと陰極箔2bとの間にセパレータ2cを介在させてロール状に巻回して略円筒形とし、その外周側面を絶縁テープ2dで巻き止めて固定し、コンデンサ素子2を形成する。
【0010】
その後、そのコンデンサ素子2の陽極箔2aと陰極箔2bの間に、導電性ポリマー層6を形成する。この導電性ポリマー層6は、コンデンサ素子2を、ドーパント剤を含有するポリエチレンジオキシチオフェンの微粒子を溶媒である水に分散させた分散体溶液に減圧下で含浸し、その後、コンデンサ素子2を引き上げ、125℃の乾燥炉に入れて乾燥させることによって形成する。
【0011】
次に、コンデンサ素子2に駆動用電解液を含浸させ、このコンデンサ素子2をアルミニウム製の外装ケース3に収納する。
【0012】
その後、この外装ケース3の開口部にゴムパッキングの封口体4を配置する。
【0013】
次に、外装ケース3の外周側面から巻き締めて絞り加工部3aを形成することによって、外装ケース3の開口部を封止する。
【0014】
その後、リード線1a、1bの間に電圧を印加して再化成(エージング)を行い、ハイブリッド型電解コンデンサを作製する。
【0015】
以上のように構成された従来のハイブリッド型電解コンデンサでは、コンデンサ素子内部に形成される導電性ポリマー層が、コンデンサ素子に重合材料(モノマー、酸化剤、ドーパント)を含ませてコンデンサ素子内部で化学重合反応を起こすことによって形成されるのではなく、コンデンサ素子外部で導電性ポリマーの微粒子等を溶媒に分散させた分散体溶液を予め準備し、この分散体溶液をコンデンサ素子に含浸した後、分散体溶液の溶媒を除去することによって形成される。これにより、コンデンサ素子内部の化学重合反応による導電性ポリマー層の形成方法を適用した場合と比較すると、酸化剤を適用しないため、誘電体酸化皮膜の損傷を低減できると共に、電極箔及びセパレータの表面全体に平面状の導電性ポリマー層を緻密に形成できるとされている。この結果、熱等により誘電体酸化皮膜の損傷が生じても損傷の程度を抑えられ、電解液による誘電体酸化皮膜の高い修復性を確保できるため、半田耐熱性に優れた長寿命の電解コンデンサを製造することができるとされている。さらに、この従来のハイブリッド型電解コンデンサは、コンデンサ素子内部での化学重合反応後に残存する酸化剤の洗浄、乾燥工程が必要でないため、生産工程を簡易化できるとされている。
【0016】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2009−16770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記従来のハイブリッド型電解コンデンサでは、上述した作用効果の中で、特に、電極箔等の表面全体に導電性ポリマー層を緻密に形成できる導電性ポリマー微粒子の充填量が、コンデンサ素子の空隙量に対して5〜55体積%であるとしている。しかしながら、この導電性ポリマー微粒子の充填量を確保することにより、電解コンデンサの半田耐熱性や長寿命化を図れる一方で、導電性ポリマーの使用量を削減し、コンデンサ素子への分散体溶液の含浸工程等で要する時間を短縮して生産性をさらに向上させていくことが困難であるという課題を有していた。
【0019】
上記課題の主原因としては、上記の導電性ポリマー微粒子の充填量範囲で導電性ポリマー層6を形成した場合、図6に示すように、この導電性ポリマー層6が、陽極箔2a表面に付着した導電性ポリマー微粒子6aと、陰極箔2b表面に付着した導電性ポリマー微粒子6bと、セパレータ2cの繊維表面に付着した導電性ポリマー微粒子6cとを含む一方で、これらの各表面から分岐して陽極箔2aと陰極箔2bの間の空隙部分へ向かって突出した状態の導電性ポリマー微粒子6d、つまり、電極箔間の電荷移動の向上には寄与しないものを多く含んでしまう点にある。このため、従来のハイブリッド型電解コンデンサは、導電性ポリマー微粒子の充填量の観点ではロス分を多く含んでおり、電解コンデンサの生産性を低下させる一因となっている。
【0020】
そこで本発明は、このような従来の課題を解決し、小型、大容量、低ESR、低漏れ電流、高耐圧であると共に、生産性を向上させた電解コンデンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、表面に誘電体層を備えた陽極箔にセパレータを介して陰極箔を積層し前記陽極箔と陰極箔及びセパレータの表面上に導電性ポリマー微粒子からなる固体電解質層を形成したコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子にそれぞれ一方の端部を接続した一対のリード線と、前記コンデンサ素子に含浸された駆動用電解液と、前記一対のリード線のそれぞれ他方の端部を外部に導出するようにしてコンデンサ素子を駆動用電解液と共に封じた外装体とからなる電解コンデンサにおいて、前記セパレータの気密度が2.0s/100ml以下であり、さらに前記導電性ポリマー微粒子が粒子径100nm以下であると共に陽極箔の単位面積当たり0.3mg/cm2以上1.2mg/cm2以下の範囲で含有されている構成としたものである。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、セパレータの気密度が2.0s/100ml以下であり、さらに前記導電性ポリマー微粒子が粒子径100nm以下であると共に陽極箔の単位面積当たり0.3mg/cm2以上1.2mg/cm2以下の範囲で含有されていることにより、導電性ポリマー微粒子が、陽極箔表面、陰極箔表面、及び陽極箔表面と陰極箔表面間の電荷移動のパスとなるようにセパレータの繊維表面に付着する一方で、セパレータの繊維間等のコンデンサ素子内の空隙部分へ枝分かれする状態、つまり、電荷移動の向上には寄与しない状態で付着することを最小化でき、導電性ポリマー使用量のロス分を低減することができる。この結果、小型、大容量、低ESR、低漏れ電流、高耐圧であると共に、生産性を向上させた電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における電解コンデンサの一例であるハイブリッド型電解コンデンサ(巻回形コンデンサ素子タイプ)の構成を示した断面図
【図2】同ハイブリッド型電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図
【図3】同ハイブリッド型電解コンデンサのコンデンサ素子の断面の要部拡大模式図
【図4】従来の電解コンデンサの一例であるハイブリッド型電解コンデンサ(巻回形コンデンサ素子タイプ)の構成を示した断面図
【図5】同ハイブリッド型電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図
【図6】同ハイブリッド型電解コンデンサのコンデンサ素子の断面の要部拡大模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態の電解コンデンサについて説明する。
【0025】
ここで、図1は、本発明の実施の形態における電解コンデンサの一例であるハイブリッド型電解コンデンサ(巻回形コンデンサ素子タイプ)の構成を示した断面図、図2は、同ハイブリッド型電解コンデンサのコンデンサ素子の展開斜視図、図3は、コンデンサ素子の断面の要部を拡大した模式図である。
【0026】
まず、本発明の実施の形態における電解コンデンサの一例であるハイブリッド型電解コンデンサの構成について図1、2、3を用いて説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明のハイブリッド型電解コンデンサは、機能素子であるコンデンサ素子12と、このコンデンサ素子12にそれぞれ一方の端部を接続した一対のリード線11a、11bと、これらリード線11a、11bの他方の端部を外部に導出するようにして、コンデンサ素子12を駆動用電解液(図示せず)と共に封じた外装体15とからなっている。
【0028】
また、前記外装体15は、駆動用電解液を含浸したコンデンサ素子12を収納した有底筒状の外装ケース13と、前記リード線11a、11bをそれぞれ挿通させる貫通孔14a、14bを備えると共に外装ケース13の開口部に配置され、外装ケース13の外周面に設けた絞り加工部13aで絞ることによって外装ケース13の開口部を封止した封口体14とで構成されている。
【0029】
また、封口体14は、EPTやIIR等のゴム材料のほか、エポキシ樹脂などの樹脂材料を用いることができる。
【0030】
また、図2、3に示すように、前記コンデンサ素子12は、アルミニウム等の弁金属からなる箔をエッチング処理により粗面化しさらにその表面に陽極酸化皮膜の誘電体層12eを化成処理によって形成した陽極箔12aと、アルミニウム等の弁金属からなる陰極箔12bとを、セパレータ12cを介して巻回して形成されている。そして、前記リード線11a、11bは、それらの一方の端部が陽極箔12aと陰極箔12bにそれぞれ接続されており、それらの他方の端部はコンデンサ素子12の同一端面より引出されている。
【0031】
なお、コンデンサ素子12を構成する電極は、電極箔を巻回する以外に複数枚の電極箔を積層する構成であってもよい。
【0032】
また、図3に示すように、コンデンサ素子12を構成する前記陽極箔12aと陰極箔12bとの間には、ポリチオフェンやその誘導体等の導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16が形成されている。この導電性ポリマー微粒子の一例として、電導度及び耐電圧が高いポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(PEDOT・PSS)が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、この導電性ポリマー微粒子は、溶媒中に分散させることにより、分散体溶液として取り扱うことができる。
【0033】
前記導電性ポリマー層16は、陽極箔12a表面に付着した導電性ポリマー微粒子16aと、陰極箔12b表面に付着した導電性ポリマー微粒子16bと、セパレータ12cの繊維表面に付着した導電性ポリマー微粒子16cとを含んでおり、これらの粒子径は100nm以下となっている。
【0034】
なお、これらの導電性ポリマー微粒子16a、16b、16cの粒子径は、動的光散乱法に基づき、これらの微粒子を溶媒中に分散させた分散体溶液にレーザー光を照射し、その散乱光を光子検出器で観測した値である。また、この粒子径とは、メジアン径のことであり、俗にd50と言われる径である。
【0035】
そして、前記導電性ポリマー微粒子16a、16b、16cは、隣接する微粒子間同士で接触して陽極箔12aと陰極箔12b間における電荷移動の経路となっているもの以外に、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、及びセパレータ12cの繊維表面から分岐して陽極箔12aと陰極箔12bの間の空隙部分へ向かって突出した導電性ポリマー微粒子16dを含んでいる。この導電性ポリマー微粒子16dは、陽極箔12aの有効面積の拡大や、電極箔間の電荷移動の向上には寄与しない状態で付着しているものである。
【0036】
ここで、導電性ポリマーの微粒子を付着させるには、一般的に、溶媒中に導電性ポリマー微粒子を分散させた分散体溶液を準備し、この分散体溶液をコンデンサ素子12に含浸し、コンデンサ素子12内の空隙部分に拡散させていく手段が用いられるが、コンデンサ素子12内への導電性ポリマー微粒子の付着量と電解コンデンサの電気特性には、ある傾向が見られる。
【0037】
具体的には、導電性ポリマー微粒子16a〜16dの付着量と電解コンデンサの静電容量値(エージング処理を行った後に計測される、いわゆる初期値)との関係において、導電性ポリマー微粒子16a〜16dの付着量を減少させていくと、静電容量値が次第に低下していくが、前記付着量が、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.3mg/cm2未満となると、静電容量値の低下が急激となってくる。一方、前記付着量を増加させていくと、静電容量値が次第に上昇していくが、前記付着量が陽極箔12aの単位面積当たりに換算して1.2mg/cm2を超えてくると、静電容量値はもはや上昇しなくなってしまう。
【0038】
また、導電性ポリマー微粒子16a〜16dの付着量と電解コンデンサのESR値(エージング処理を行った後に計測される、いわゆる初期値)との関係において、導電性ポリマー微粒子16a〜16dの付着量を減少させていくと、ESR値が次第に上昇していくが、前記付着量が、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.3mg/cm2未満となると、ESR値が急激に上昇してしまう。一方、前記付着量を増加させていくと、ESR値が次第に低下していくが、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して1.2mg/cm2を超えてくると、ESR値はもはや低下しなくなってしまう。
【0039】
この導電性ポリマー微粒子16a〜16dの付着量と電解コンデンサの電気特性の関係から、導電性ポリマー微粒子16a〜16dの付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.3mg/cm2以上0.6mg/cm2以下となっている。つまり、前記付着量の下限値は、静電容量値やESR値の急激な変化を起こさない臨界値である。また、前記付着量の上限値は、静電容量値やESR値が安定領域に入る臨界値であり、すなわち、陽極箔12aの有効面積の拡大や電極箔間の電荷移動の向上には寄与しない導電性ポリマー微粒子16dの付着を最小化した状態である。
【0040】
なお、陽極箔12aの単位面積当たりとは、陽極箔12aの投影面積、つまり表裏二面のうち一方の面の面積当たりということである。
【0041】
なお、導電性ポリマー微粒子16a〜16dの付着量を、特許文献1で用いているコンデンサ素子の空隙量に対する充填率で表現してみると、0.96〜3.85体積%となっている(コンデンサ素子の空隙量を48μl、陽極箔面積を2cm2、導電性ポリマー微粒子の比重を1.3として計算)。
【0042】
また、コンデンサ素子12の構成要素の一つであるセパレータ12cは、その材質としては、セルロース、クラフト、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、レーヨン、ガラス質等を含有する不織布を用いることができる。ただし、導電性ポリマー微粒子16a〜16dの粒子径が100nm以下の場合、導電性ポリマー微粒子16a〜16dをコンデンサ素子内に均一分布させ、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面及びセパレータ12cの繊維表面に安定して付着させるには、セパレータ12cの気密度を2.0s/100ml以下とすることが好ましい。
【0043】
なお、セパレータ12cの気密度は、JIS P 8117(紙及び板紙の透気度及び透気抵抗度試験方法)に準拠して測定した値であり、B型測定器の下部試験片取り付け部分に直径6mmの円筒絞りを取り付け、絞り面にセパレータ紙を挟み込み、セパレータ紙の直径6mm円筒面を100mlの空気が通過するのに要する時間(s/100ml)を測定した。
【0044】
また、駆動用電解液は、溶媒に溶質を溶解する形で構成されている。溶媒材料としては、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、スルホラン等が挙げられる。また、ハイブリッド形電解コンデンサの場合、陽極箔12aと陰極箔12bとの間の電極間抵抗は、導電性ポリマー層16の電導度に大きく左右され、駆動用電解液の電導度の影響度が低いため、一般的には、液体電解質系の電解コンデンサでは溶媒として大量に適用できないポリエチレングリコールを適用することもできる。そして、溶質材料としては、無機酸アンモニウム塩、無機酸アミン塩、無機酸アルキル置換アミジン塩またはその4級化物、有機酸アンモニウム塩、有機酸アミン塩、有機酸アルキル置換アミジン塩またはその4級化物等が挙げられる。
【0045】
なお、駆動用電解液には、ガス吸収、耐電圧の安定化、pH調整、酸化防止等を目的とした添加剤を適宜含むことができる。例えば、酸化防止剤としては、アミン系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤がコンデンサ用途として効果的であり、ジフェニルアミンや、ナフトール、ニトロフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール等が挙げられる。中でもヒドロキノンまたはピロガロールは、OH基が複数個あり、酸化防止効果が高い。
【0046】
次に、以上のように構成した実施の形態における電解コンデンサの一例であるハイブリッド型電解コンデンサ(巻回形コンデンサ素子タイプ)の製造方法について図1、2、3を用いて説明する。
【0047】
まず、図2、3に示すように、陽極酸化皮膜の誘電体層12eを表面に有するアルミニウム等の弁金属からなる陽極箔12aと、陰極箔12bと、セパレータ12cとを一定の幅と長さに切断し、一対のリード線11a、11bの一方の端部をそれぞれ陽極箔12aと陰極箔12bにカシメ、超音波などの方法によって接続した後、その陽極箔12aと陰極箔12bとの間にセパレータ12cを介在させてロール状に巻回して略円筒形とし、その外周側面を絶縁テープ12dで巻き止めて固定し、コンデンサ素子12を形成する。
【0048】
なお、陽極箔12aの表面は、エッチングや金属粒子の蒸着等によって表面積を適宜拡大する。また、誘電体層12eは、電極材であるアルミニウム等の弁金属を陽極酸化することにより陽極体酸化皮膜として得られる他、電極材に蒸着や塗布によって形成してもよい。
【0049】
なお、陰極箔12bの表面は、導電性ポリマー層16との接触状態をよくするため、必要に応じて、エッチング、酸化皮膜、金属粒子蒸着、カーボン等の導電粒子付着等の表面処理を行う。
【0050】
その後、形成したコンデンサ素子12を化成液に浸漬し、リード線11a、11bに電圧を印加することにより、陽極箔12aの表面の酸化皮膜を修復化成してもよい。
【0051】
次に、図1に示すように、封口体14に設けた一対の貫通孔14a、14bにコンデンサ素子12から引出された一対のリード線11a、11bをそれぞれ挿通させ、コンデンサ素子12に封口体14を装着する。
【0052】
なお、封口体14は、コンデンサ素子12を化成液に浸漬する前に装着しておいてもよい。
【0053】
その後、図3に示すように、そのコンデンサ素子12の陽極箔12aと陰極箔12bの間に、導電性ポリマー層16を形成する。まず、導電性ポリマー微粒子を溶媒中に分散させた分散体溶液を準備する。この分散体溶液を前記コンデンサ素子12に含浸させ、コンデンサ素子12内部全体へ分散体溶液を浸透させる。
【0054】
なお、前記分散体溶液を前記コンデンサ素子12に含浸させる方法として、コンデンサ素子12を、前記一対のリード線11a、11bが引出されていない巻回端面を上面として水平に配置した後、この巻回端面に前記分散体溶液を滴下するようにするとよい。この方法であれば、コンデンサ素子12に含浸させる分散体溶液の液量のバラツキを抑えることができ、導電性ポリマー微粒子の付着量を安定して確保できる。
【0055】
なお、分散体溶液を含浸させたコンデンサ素子12の周辺環境の気圧を減圧した後、大気圧へ戻すことにより、気圧変化を生じさせ、コンデンサ素子12内部への前記分散体溶液の浸透性をより高めるようにしてもよい。
【0056】
次に、前記分散体溶液を含浸させたコンデンサ素子12に加熱処理を施し、溶媒を減少させることにより、導電性ポリマー微粒子を凝集させて、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、セパレータ12cの繊維表面に膜状に付着させる。この導電性ポリマー微粒子の付着量が、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.3mg/cm2以上、かつ1.2mg/cm2以下となるように前記分散体溶液を調製する。
【0057】
ここで、生産効率を高めるため、1回の含浸作業で導電性ポリマー微粒子の前記付着量を得るには、溶媒中に粒子径100nm以下で、かつ、1.25〜2.8wt%の濃度の前記導電性ポリマー微粒子を分散させるようにするとよい。
【0058】
次に、コンデンサ素子12を駆動用電解液と共に外装ケース13に収納し、封口体14を外装ケース13の開口部に配置する。
【0059】
なお、コンデンサ素子12への駆動用電解液の含浸方法としては、外装ケース13内に予め一定量の駆動用電解液を注入しておき、コンデンサ素子12を外装ケース13に収納する際に含浸させる他、コンデンサ素子12を、駆動用電解液が蓄えられた含浸槽に浸漬含浸(場合によって真空度を調整する)して引き上げた後に外装ケース13に収納するようにしてもよい。
【0060】
なお、駆動用電解液は、コンデンサ素子12に含浸しきれない余剰分を外装ケース13内に保有してもよい。
【0061】
次に、外装ケース13の外周側面から巻き締めて絞り加工部13aを形成することによって、外装ケース13の開口部を封止する。
【0062】
なお、外装体15として、エポキシ樹脂等からなる絶縁性の外装樹脂を用い、コンデンサ素子12を被覆すると共に、その外装材の外部にリード線11a、11bの他方の端部を導出するようにしてもよい。
【0063】
なお、絶縁端子板(図示せず)を、外装ケース13の開口部に接するように配置し、外装ケース13の開口部を封止した封口体14の外面より導出した一対のリード線11a、11bの他方の端部を、その絶縁端子板に設けた一対の貫通孔(図示せず)に挿通した後、リード線11a、11bを、互いに相反する方向へ略直角に折り曲げて、絶縁端子板の外表面に設けた溝部(図示せず)に収納するようにし、面実装タイプの電解コンデンサとしてもよい。
【0064】
なお、外装ケース13の開口部を封止した後、もしくは絶縁端子板を取り付けた後に、適宜、リード線11a、11bの間に電圧を印加し、再化成を行う。
【0065】
以上のように、本発明の実施の形態における電解コンデンサによれば、セパレータ12cの気密度が2.0s/100ml以下であり、さらに前記導電性ポリマー微粒子16aから16dが粒子径100nm以下であると共に陽極箔12aの単位面積当たり0.3mg/cm2以上1.2mg/cm2以下の範囲で含有されていることにより、導電性ポリマー微粒子16a〜16cが、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、及び陽極箔12a表面と陰極箔12b表面間の電荷移動のパスとなるようにセパレータ12cの繊維表面に付着する一方で、セパレータ12cの繊維間等のコンデンサ素子12内の空隙部分へ枝分かれした状態の導電性ポリマー微粒子16dの付着量を最小化でき、導電性ポリマー使用量のロス分を低減することができる。この結果、小型、大容量、低ESR、低漏れ電流、高耐圧であると共に、生産性を向上させた電解コンデンサを提供することができる。
【0066】
また、導電性ポリマー微粒子16a〜16cは、分散体溶液の溶媒中に分散している状態においては、静電反発力によりその形状は略球状を保っているが、溶媒を減少させていくと、静電反発力が低下し、その形状は偏平状となってくる。このため、導電性ポリマー微粒子を凝集させて成膜する場合、導電性ポリマー微粒子の粒子径が大きすぎると、導電性ポリマー微粒子の配向性の影響が大きくなり、平滑な膜形成の阻害要因となってしまう。一方で、導電性ポリマー微粒子16a〜16cの粒子径を100nm以下に制御することにより、凝集した導電性ポリマー微粒子が、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、及びセパレータ12cの繊維表面に平滑な膜として付着できると共に、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、及びセパレータ12cの繊維表面から面分岐して陽極箔12aと陰極箔12bの間の空隙部分へ向かって突出してしまうことを抑制できる。
【0067】
なお、陽極箔12a表面には微細なエッチングピット(一般的なエッチングピット直径は100〜200nm)が存在しているため、導電性ポリマー微粒子の凝集した膜を陽極箔12a表面に均一かつ平滑に形成するためには、導電性ポリマー微粒子を前記エッチングピット内部にまで入り込ませるのが好ましいが、導電性ポリマー微粒子16aの粒子径を100nm以下に制御しているため、導電性ポリマー微粒子16aが陽極箔12a表面のエッチングピット内部にまで入り込むことができ、静電容量の引き出し率を向上できると共に、ESRを低下させることもできる。
【0068】
また、電解コンデンサが、200℃以上となるリフロー耐熱性を要求される場合や、最高使用温度が105℃以上となるような高温環境下での長期耐熱性を要求される場合、熱ストレスにより、導電性ポリマー層16を構成している導電性ポリマー微粒子の凝集した膜において、酸化劣化現象や熱収縮現象が生じてくる。ハイブリッド形電解コンデンサでは、導電性ポリマー層16の表面を駆動用電解液が被覆しているため、前記熱ストレスの影響を緩和できる。しかし、導電性ポリマー微粒子16a〜16dの付着量が少なすぎると、駆動用電解液で前記熱ストレスの影響を緩和しきれず、電解コンデンサの電気特性が悪化してしまい、そして、駆動用電解液が減少してくるとさらに顕著に悪化する。このため、初期特性だけでなく、リフロー耐熱や長期耐熱に対する信頼性を向上させるためには、導電性ポリマー微粒子16a〜16dの付着量の下限値として、陽極箔12aの単位面積当たり0.4mg/cm2以上を含有させるとよい。これにより、高温度の熱ストレスの影響を受けにくい導電性ポリマー層16内部の導電性ポリマー微粒子が十分に確保されるため、電解コンデンサが電気特性を安定的に維持することができる。
【0069】
また、導電性ポリマー微粒子16a〜16dには、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、および/またはそれら誘導体等が挙げられるが、特に、ポリチオフェンの誘導体であるポリエチレンジオキシチオフェンは、熱分解温度が350℃と高く、高温度環境下における耐熱性を要求される場合に好ましい。
【0070】
また、本発明の実施の形態における電解コンデンサの製造方法によれば、導電性ポリマー微粒子を溶媒中に分散させた分散体溶液を用いて導電性ポリマー微粒子を陽極箔12a表面等に付着させる方法の場合、コンデンサ素子12側の条件として、コンデンサ素子12の構成要素の一つであるセパレータ12cの気密度を2.0s/100ml以下とする一方で、前記分散体溶液側の条件として、導電性ポリマー微粒子の粒子径を100nm以下とし、かつ粒子濃度を2.8wt%以下とすることにより、導電性ポリマー微粒子がコンデンサ素子12内に均一に拡散される。
【0071】
その後、前記分散体溶液の溶媒を減少させると、導電性ポリマー微粒子が凝集し、陽極箔12a、陰極箔12b、及びセパレータ12cの繊維の各表面に均一で平滑な膜を形成することができる。そして、コンデンサ素子12に含浸する前記分散体溶液の液量、含浸回数等の含浸条件を調整することにより、導電性ポリマー微粒子の付着量を、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.3mg/cm2以上1.2mg/cm2以下となるようにすることにより、導電性ポリマー微粒子の付着ロス分、つまり、導電性ポリマー微粒子がコンデンサ素子12内の空隙部分へ枝分かれして電荷移動に寄与していない分を最小限に抑えた状態で、電解コンデンサの初期的な電気特性を安定化するために最低必要な付着量を確保できる。
【0072】
また、導電性ポリマー微粒子の付着量を、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.4mg/cm2以上1.2mg/cm2以下となるようにすることにより、高温度の熱ストレスの影響を受けにくい導電性ポリマー層16内部の導電性ポリマー微粒子が十分に確保されるため、電解コンデンサが電気特性を安定的に維持することができる。
【0073】
また、セパレータ12cは、前記分散体溶液に分散している粒子径100nm以下の導電性ポリマー微粒子をセパレータ12cの繊維間の空隙に均一に拡散することができる条件である2.0s/100ml以下の気密度を有する材料であればよい。
【0074】
なお、フィブリル繊維を含むセパレータは、薄厚化しやすいが、その半面、高密度となり気密度が高くなる傾向があり、分散体溶液中の導電性ポリマー微粒子の均一拡散を阻害するため好ましくなく、フィブリル繊維を含まない長繊維で構成されたセパレータのほうが好ましい。
【0075】
なお、セパレータ12cは、電解質として固体の導電性ポリマーの他に駆動用電解液と接触することから、耐溶剤性が必要とされ、例えば、化学繊維系材料ではアラミド、セルロース系材料ではマニラやエスパルトなどを適用することができる。
【0076】
また、前記分散体溶液の導電性ポリマー微粒子の濃度が2.8wt%よりも高くなると、分散体溶液に分散している導電性ポリマーの微粒子が、コンデンサ素子12内に均一に拡散しにくくなり、前記分散体溶液の溶媒を減少させて導電性ポリマー微粒子を成膜する際に、膜が不均一となり、良好な電気特性を得られなくなってくる。
【0077】
一方、前記分散体溶液の導電性ポリマー微粒子の濃度が1.25wt%よりも低いと、コンデンサ素子12に含浸可能な分散体溶液の最大液量を注入しても、1回の操作では導電性ポリマー微粒子を陽極箔12aの単位面積当たり0.3mg/cm2以上付着させることができない。
【0078】
したがって、前記導電性ポリマー微粒子の濃度を1.25〜2.8wt%の範囲とした分散体溶液を用いれば、コンデンサ素子12への含浸、溶媒除去の一連の操作を1回行うだけで、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.3mg/cm2以上0.67mg/cm2以下の導電性ポリマー微粒子を、陽極箔12a、陰極箔12b、及びセパレータ12cの繊維の各表面に付着させることができる。この結果、このコンデンサ素子12を駆動用電解液と共に外装体15に封じることによって、優れた電気特性を備えた電解コンデンサを高効率で生産することができる。
【0079】
また、前記導電性ポリマー微粒子の濃度の下限値を1.67wt%とすると、導電性ポリマー微粒子の付着量の下限値を、前記陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.4mg/cm2以上に制御できる。この結果、高温度の熱ストレスの影響を受けにくい導電性ポリマー層16内部の導電性ポリマー微粒子が十分に確保されるため、リフロー耐熱や長期耐熱に対して極めて信頼性の高い電解コンデンサを作製することができる。
【0080】
また、前記分散体溶液の溶媒に極性有機溶剤を含ませることで、陽極箔12a、陰極箔12b、及びセパレータ12cの繊維の各表面を被覆する導電性ポリマー微粒子の成膜状態の平面性を向上できる。このため、膜自身の電気伝導度が上昇すると共に、電極箔表面やセパレータ繊維表面から空隙部分へ枝分かれしてしまう電荷移動に寄与しない付着ロス分を減らすことができる。この極性有機溶剤の具体例として、エチレングリコールが挙げられる。
【0081】
なお、エチレングリコールは、電解コンデンサの駆動用電解液の主溶媒として汎用的に用いられているものであるため、電解コンデンサへの品質的な影響も少なく好ましい。
【0082】
ただし、極性有機溶剤の含有量を増やしすぎると分散体溶液の粘度が上昇してコンデンサ素子への含浸性の低下等を招いてしまうため、50%以下の含有率が好ましい。
【0083】
以下、具体的な実施例1について説明をする。
【0084】
(実施例1)
本発明の実施の形態における電解コンデンサの実施例1として、定格電圧35V、初期静電容量33μF(許容公差±20%)の巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサ(直径φ6.3mm、高さ5.8mm、高温負荷の保証寿命105℃5000時間)を作製した。
【0085】
まず、図2に示すように、酸化アルミニウム層を表面に有するアルミニウムからなる陽極箔12aと、陰極箔12bと、セパレータ12cとを一定の幅と長さに切断し、一対のリード線11a、11bの一方の端部をそれぞれ陽極箔12aと陰極箔12bに針カシメによって接続した後、その陽極箔12aと陰極箔12bとの間にセパレータ12cを介在させてロール状に巻回して略円筒形とし、その外周側面を絶縁テープ12dで巻き止めて固定し、コンデンサ素子12を形成した。
【0086】
また、陽極箔12aとしては、純度99.99%以上のアルミニウム箔を用い、このアルミニウム箔にエッチング処理を施してその表面積を拡大し、さらに、陽極酸化処理(化成電圧60V)を施し、図3に示すように、陽極酸化皮膜の誘電体層12eを形成した。そしてこの陽極箔12aを方形状に裁断し、その投影面積が2.0cm2となるように調整した。
【0087】
また、陰極箔12bとしては、純度99.99%以上のアルミニウム箔を用い、このアルミニウム箔にエッチング処理を施してその表面積を拡大し、さらに、化成処理(化成電圧2V)を施し、図3に示すような酸化アルミニウム層12fを形成した。そしてこの陰極箔12bを方形状に裁断し、その投影面積が陽極箔に対向する所定の面積となるように調整した。
【0088】
また、セパレータ12cとしては、厚み50μm、密度0.35g/cm2、気密度2.0s/100mlのマニラとエスパルトの混抄紙(材質A)を用い、陽極箔12aと陰極箔12bとの接触を防止できる所定の面積となるように裁断した。
【0089】
なお、フィブリル化処理した微細繊維を含まない、長繊維で構成されたものを選択した。
【0090】
次に、ゴムパッキングからなる封口体14に設けた一対の貫通孔14a、14bにコンデンサ素子12から引出された一対のリード線11a、11bをそれぞれ挿通させ、コンデンサ素子12に封口体14を装着した。
【0091】
その後、陽極箔12a表面の誘電体酸化皮膜の欠陥部及び未形成部の修復を目的として、コンデンサ素子12を化成液に浸漬し、リード線11a、11bに60Vの電圧を60℃10分間印加して化成処理を施した。
【0092】
続いて、このコンデンサ素子12に105℃で30分間の乾燥処理を施した。
【0093】
次に、図3に示すように、そのコンデンサ素子12の陽極箔12aと陰極箔12bの間に、導電性ポリマー層16を形成した。
【0094】
まず、導電性ポリマー微粒子を溶媒中に分散させた分散体溶液を準備した。前記導電性ポリマー微粒子を分散させる溶媒としては、水とエチレングリコールの混合溶媒を用い、分散体溶液の総重量に対してエチレングリコール(EG)を50wt%以下の割合とした。また、前記導電性ポリマー微粒子としては、電導度及び耐電圧が高く、さらに耐熱性も高いポリエチレンジオキシチオフェンを選択し、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を適用した。また、この導電性ポリマー微粒子の粒子径は50nmとし、粒子濃度を2.0wt%に調整した。また、この導電性ポリマー微粒子の電導度が、分散体溶液を平板に滴下してシート状に成膜した状態で計測して200S/cmとなるように、ドーパント量等を調整した。
【0095】
その後、前記分散体溶液28.8μlを前記コンデンサ素子12に含浸させ、コンデンサ素子12内部全体へ分散体溶液を浸透させた。含浸方法としては、コンデンサ素子12を、前記一対のリード線11a、11bが引出されていない巻回端面を上面として水平に配置した後、この巻回端面に前記分散体溶液を滴下するようにして行った。
【0096】
次に、分散体溶液を含浸させたコンデンサ素子12の周辺環境の気圧を減圧して60mmHg(7999.2Pa)以下とした後、大気圧の760mmHg(101325Pa)へ戻すことにより気圧変化を生じさせ、コンデンサ素子12内部への前記分散体溶液の浸透性をより高めるようにした。
【0097】
その後、前記分散体溶液を含浸させたコンデンサ素子12に100〜150℃の温度で60分間程度の加熱処理を施し、溶媒を減少させることにより、導電性ポリマー微粒子を凝集させて、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、セパレータ12cの繊維表面に膜状に付着させた。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.3mg/cm2となった。
【0098】
一方で、駆動用電解液を準備し、この駆動用電解液をアルミニウム製の有底筒状の外装ケース13内に注入しておいた。
【0099】
なお、駆動用電解液の注入量は、駆動用電解液が封口体14を通して外部へ透過拡散する速度と設計寿命時間との関係、及びリフロー時の高温下での駆動用電解液の体積膨張量と外装ケース13内の空隙量との関係を考慮して決定した。
【0100】
この駆動用電解液は、溶質としてフタル酸エチルジメチルアミン塩を含み、溶媒としてγ−ブチロラクトン、スルホランを含んでいる他、ポリエチレングリコール(分子量300)も含んでおり、このポリエチレングリコールが難揮発性であることから、最高使用温度85〜150℃下において、電解コンデンサを長時間使用した場合であっても揮発せずに残存するため、駆動用電解液による誘電体酸化皮膜の修復性を持続させることができるものである。
【0101】
そして、この外装ケース13内に前記コンデンサ素子12を挿入してコンデンサ素子12に駆動用電解液を含浸させると共に、コンデンサ素子12に装着した封口体14を外装ケース13の開口部に配置した。
【0102】
次に、外装ケース13の開口部付近の外周側面から巻き締めて絞り加工部13aを形成し、ゴム弾性体である封口体14に圧縮応力を発生させることによって外装ケース13の開口部を封止した。
【0103】
その後、外部に導出された一対のリード線11a、11b間に電圧40Vを60分印加して再化成を行い、実施例1の電解コンデンサを作製した。
【0104】
この実施例1の構成に対し、実施例2〜4及び比較例1、2は、導電性ポリマー微粒子の陽極箔12aの単位面積当たりの付着量を変化させたものである。
【0105】
また、実施例5、6及び比較例3は、実施例2の構成に対し、導電性ポリマー微粒子の平均粒子径を変化させたものである。
【0106】
また、実施例7〜11及び比較例4、5は、実施例2の構成に対し、導電性ポリマー微粒子の分散体溶液の微粒子濃度、及び導電性ポリマー微粒子の分散体溶液の含浸量を変化させたものである。
【0107】
また、実施例12は、実施例2の構成に対し、導電性ポリマー微粒子の分散体溶液の溶媒を変化させたものである。
【0108】
また、比較例6は、実施例2の構成に対し、セパレータ12cの気密度を変化させたものである。
【0109】
また、比較例7は、実施例4の構成に対し、駆動用電解液を用いない構成としたものである。
【0110】
以下にこれら実施例2〜12及び比較例1〜7について詳細を説明する。
【0111】
(実施例2)
実施例2は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の液量を実施例1の条件から変化させ、38.4μlへ増量した。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.4mg/cm2となった。これ以外は実施例1と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0112】
(実施例3)
実施例3は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の液量を実施例1の条件から変化させ、76.6μlへ増量した。なお、コンデンサ素子12の空隙体積が48μlであることから、分散体溶液の含浸及び加熱処理の一連の作業を2回繰り返して行った。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.8mg/cm2となった。これ以外は実施例1と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0113】
(実施例4)
実施例4は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の液量を実施例1の条件から変化させ、115.0μlへ増量した。なお、コンデンサ素子12の空隙体積が48μlであることから、分散体溶液の含浸及び加熱処理の一連の作業を3回繰り返して行った。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して1.2mg/cm2となった。これ以外は実施例1と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0114】
(比較例1)
比較例1は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の液量を実施例1の条件から変化させ、19.1μlへ減量した。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.2mg/cm2となった。これ以外は実施例1と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0115】
(比較例2)
比較例2は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の液量を実施例1の条件から変化させ、153.0μlへ増量した。なお、コンデンサ素子12の空隙体積が48μlであることから、分散体溶液の含浸及び加熱処理の一連の作業を4回繰り返して行った。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して1.6mg/cm2となった。これ以外は実施例1と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0116】
(実施例5)
実施例5は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液に分散させる微粒子の平均粒子径を実施例2の条件から変化させ、25nmとした。これ以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0117】
(実施例6)
実施例6は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液に分散させる微粒子の平均粒子径を実施例2の条件から変化させ、100nmとした。これ以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0118】
(比較例3)
比較例3は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液に分散させる微粒子の平均粒子径を実施例2の条件から変化させ、150nmとした。これ以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0119】
(実施例7)
実施例7は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の微粒子濃度を実施例2の条件から変化させ、1.25wt%とした。また、分散体溶液の液量も変化させ、1回の含浸でコンデンサ素子12の全空隙を充填可能な48μlとした。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.3mg/cm2となった。これら以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0120】
(実施例8)
実施例8は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の微粒子濃度を実施例2の条件から変化させ、1.67wt%とした。また、分散体溶液の液量も変化させ、1回の含浸でコンデンサ素子12の全空隙を充填可能な48μlとした。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.4mg/cm2となった。これら以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0121】
(実施例9)
実施例9は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の微粒子濃度は実施例2の条件と同様に、2.0wt%とした。一方、分散体溶液の液量を変化させ、1回の含浸でコンデンサ素子12の全空隙を充填可能な48μlとした。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.48mg/cm2となった。これら以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0122】
(実施例10)
実施例10は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の微粒子濃度を実施例2の条件から変化させ、2.5wt%とした。また、分散体溶液の液量も変化させ、1回の含浸でコンデンサ素子12の全空隙を充填可能な48μlとした。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.6mg/cm2となった。これら以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0123】
(実施例11)
実施例11は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の微粒子濃度を実施例2の条件から変化させ、2.8wt%とした。また、分散体溶液の液量も変化させ、1回の含浸でコンデンサ素子12の全空隙を充填可能な48μlとした。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.67mg/cm2となった。これら以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0124】
(比較例4)
比較例4は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の微粒子濃度を実施例2の条件から変化させ、0.83wt%とした。また、分散体溶液の液量も変化させ、1回の含浸でコンデンサ素子12の全空隙を充填可能な48μlとした。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.2mg/cm2となった。これら以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0125】
(比較例5)
比較例5は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の微粒子濃度を実施例2の条件から変化させ、3.3wt%とした。また、分散体溶液の液量も変化させ、1回の含浸でコンデンサ素子12の全空隙を充填可能な48μlとした。その結果、導電性ポリマー微粒子の付着量は、陽極箔12aの単位面積当たりに換算して0.8mg/cm2となった。これら以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0126】
(実施例12)
実施例12は、コンデンサ素子12内部に導電性ポリマー微粒子からなる導電性ポリマー層16を形成する工程において、コンデンサ素子12に含浸する分散体溶液の溶媒を実施例2の条件から変化させ、水のみとした。これら以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0127】
(比較例6)
比較例6は、コンデンサ素子12を構成しているセパレータ12cとして、実施例2の条件から変化させ、厚み50μm、密度0.35g/cm2、気密度6.2s/100mlのヘンプと特殊レーヨンの混抄紙(材質B)を用いた。なお、フィブリル化処理した微細繊維を含んだものを選択した。これら以外は実施例2と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプのハイブリッド型電解コンデンサを作製した。
【0128】
(比較例7)
比較例7は、実施例4の構成に対し、駆動用電解液を適用しない構成とした。これ以外は実施例4と同様とし、定格電圧35V、初期静電容量33μFの巻回形コンデンサ素子タイプの完全固体型電解コンデンサを作製した。
【0129】
上記実施例1〜12および比較例1〜7の電解コンデンサについて、これらの構成条件を(表1)にまとめた。
【0130】
【表1】

【0131】
また、これら実施例1〜12および比較例1〜7の電解コンデンサのサンプルを各30個ずつ作製し、初期の電気特性を計測した結果を(表1)に示した。
【0132】
なお、初期の電気特性として、静電容量値(単位:μF、測定条件:120Hz、20℃)、ESR値(単位:Ω、測定条件:100kHz、20℃)を計測し、その平均値を算出した。
【0133】
また、実施例1〜6の電解コンデンサのサンプルについては、さらにリフロー耐熱試験を行い、次いで、高温負荷試験も実施し、これらの試験後の電気特性を計測した結果を(表1)に示した。
【0134】
なお、リフロー耐熱試験条件は、ピーク温度が255℃であり、かつ250℃以上10秒以下、かつ230℃以上30秒以下、かつ217℃以上40秒以下、かつプレヒートが160℃以上120s以下、かつリフロー回数を2回とした。また、高温負荷試験条件は、電解コンデンサのサンプルに定格電圧を印加しながら105℃環境下で5000時間放置することとした。
【0135】
なお、リフロー耐熱試験後及び高温負荷試験後の電気特性として、静電容量値(単位:μF、測定条件:120Hz、20℃)、ESR値(単位:Ω、測定条件:100kHz、20℃)を計測し、その平均値を算出すると共に、初期特性からの変化率も算出した。
【0136】
(表1)からわかるように、実施例1〜4に示す本実施形態のハイブリッド型電解コンデンサは、導電性ポリマー微粒子の陽極箔12aの単位面積当たりの付着量を0.3mg/cm2以上1.2mg/cm2以下の範囲とすることにより、初期ESR値を低く、安定化することができる。
【0137】
一方、比較例1に示すハイブリッド型電解コンデンサのように、導電性ポリマー微粒子の陽極箔12aの単位面積当たりの付着量が0.3mg/cm2未満の場合、初期ESR値が急激に高くなってしまう。
【0138】
また、比較例2に示すハイブリッド型電解コンデンサのように、導電性ポリマー微粒子の陽極箔12aの単位面積当たりの付着量が1.2mg/cm2を超えてくる場合、もはや初期ESRをより低減する作用効果は失われてしまい、電荷移動の向上には寄与しないロス分が増大してくる。
【0139】
つまり、セパレータ12cの気密度が2.0s/100ml以下であると共に、粒子径100nm以下の前記導電性ポリマー微粒子が陽極箔12aの単位面積当たり0.3mg/cm2以上1.2mg/cm2以下の範囲で含有されていることにより、導電性ポリマー微粒子が、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面、及び陽極箔12a表面と陰極箔12b表面間の電荷移動のパスとなるようにセパレータ12cの繊維表面に付着する一方で、セパレータ12cの繊維間等のコンデンサ素子12内の空隙部分へ枝分かれする状態、つまり、電荷移動の向上には寄与しない状態で付着することを最小化でき、導電性ポリマー使用量のロス分を低減することができる。
【0140】
また、さらに、実施例1〜4に示す本実施形態のハイブリッド型電解コンデンサに対し、200℃以上となるリフロー処理や、最高使用温度105℃以上での長時間放置等によって熱ストレスを与えた場合、導電性ポリマー微粒子の陽極箔12aの単位面積当たりの付着量が0.4mg/cm2以上確保されていれば、熱ストレスの影響を抑制でき、電気特性を安定化することができる。
【0141】
また、実施例5、6の評価結果が示すように、導電性ポリマー微粒子の平均粒子径が100nm以下であれば、高い静電容量値及び低いESR値を安定的に得ることができる。
【0142】
一方、比較例3の評価結果が示すように、導電性ポリマー微粒子の平均粒子径が100nmを超えてくる場合、静電容量値の低下及びESR値の増大を生じ、電気特性の急激な悪化を招く。
【0143】
また、実施例2の評価結果が示すように、セパレータ12cの気密度が2.0s/100ml以下である場合、セパレータと電極箔を巻回した構成のコンデンサ素子であっても、その内部まで粒子径100nm以下の導電性ポリマー微粒子を含有した分散体溶液を浸透させて均一に拡散させることができる。その結果、導電性ポリマー微粒子がコンデンサ素子12内部全体に渡ってセパレータ12cの繊維表面、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面に効率よく付着するため、静電容量値を増大し、ESR値を低減することができる。
【0144】
一方、比較例6の評価結果が示すように、セパレータ12cの気密度が2.0s/100mlを越える場合、分散体溶液のコンデンサ素子12内部への浸透性が悪化するため、セパレータ12cの繊維表面等への導電性ポリマー微粒子の付着状態の均一性が低下し、静電容量値の低下、ESR値の増大を招く。
【0145】
また、実施例4及び比較例7の評価結果が示すように、本実施形態のハイブリッド型電解コンデンサの構成要件である導電性ポリマー微粒子の陽極箔12aの単位面積当たりの付着量として、その上限値である1.2mg/cm2を確保しても、駆動用電解液を用いない場合は、駆動用電解液を用いた場合に得られるような高い静電容量値や低いESR値を達成することはできない。
【0146】
また、実施例7〜11の評価結果が示すように、コンデンサ素子12に含ませる前記分散体溶液の導電性ポリマー微粒子の濃度を1.25〜2.8wt%の範囲とすれば、コンデンサ素子12への含浸、溶媒除去の一連の操作を1回行うだけで、陽極箔12aの単位面積当たり0.3mg/cm2以上0.67mg/cm2以下の導電性ポリマー微粒子を、陽極箔12a、陰極箔12b、及びセパレータ12cの繊維の各表面に付着させることができる。この結果、このコンデンサ素子12と駆動用電解液とを外装体15で封じることによって、優れた電気特性を備えた電解コンデンサを高効率で生産することができる。
【0147】
また、前記分散体溶液の導電性ポリマー微粒子の濃度の下限値を1.67wt%とすると、導電性ポリマー微粒子の付着量の下限値を、陽極箔12aの単位面積当たり0.4mg/cm2以上に制御できる。この結果、高温度の熱ストレスの影響を受けにくい導電性ポリマー層16内部の導電性ポリマー微粒子が十分に確保されるため、リフロー耐熱や長期耐熱に対して極めて信頼性の高い電解コンデンサを作製することができる。
【0148】
一方、比較例4の評価結果が示すように、前記分散体溶液の導電性ポリマー微粒子の濃度が1.25wt%よりも低いと、コンデンサ素子12に含浸可能な分散体溶液の最大液量を注入しても、1回の操作では導電性ポリマー微粒子を陽極箔12aの単位面積当たり0.3mg/cm2以上付着させることができない。
【0149】
また、比較例5の評価結果が示すように、前記分散体溶液の導電性ポリマー微粒子の濃度が2.8wt%よりも高くなると、分散体溶液に分散している導電性ポリマーの微粒子が、コンデンサ素子12内に均一に拡散しにくくなり、分散体溶液の溶媒を減少させて導電性ポリマー微粒子を成膜する際に、膜が不均一となり、良好な電気特性を得られなくなってくる。
【0150】
また、実施例2、12の評価結果が示すように、前記分散体溶液の溶媒として、水以外に極性有機溶剤であるエチレングリコールを含むものを用いると、陽極箔12a、陰極箔12b、及びセパレータ12cの繊維の各表面を被覆する導電性ポリマー微粒子の成膜状態の平面性をさらに向上させることができる。この結果、膜状の導電性ポリマー層16自身の電導度が上昇すると共に、陽極箔12a表面、陰極箔12b表面及びセパレータ12cの繊維表面から空隙部分へ枝分かれしてしまう電荷移動に寄与しない状態で余分に付着する分を減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の電解コンデンサは、セパレータの気密度が2.0s/100ml以下であり、さらに前記導電性ポリマー微粒子が粒子径100nm以下であると共に陽極箔の単位面積当たり0.3mg/cm2以上1.2mg/cm2以下の範囲で含有されていることにより、導電性ポリマー微粒子が、陽極箔表面、陰極箔表面、及び陽極箔表面と陰極箔表面間の電荷移動のパスとなるようにセパレータの繊維表面に付着する一方で、セパレータの繊維間等のコンデンサ素子内の空隙部分へ枝分かれする状態、つまり、電荷移動の向上には寄与しない状態で付着することを最小化でき、導電性ポリマー使用量のロス分を低減することができる。この結果、本発明の電解コンデンサは、小型、大容量、低ESR、低漏れ電流、高耐圧であると共に、生産性を向上させることができるという特徴を有し、長期にわたる高信頼性が要求されるAV機器や自動車電装機器の電源出力側の平滑回路や制御回路に適用される電解コンデンサとして有用である。
【符号の説明】
【0152】
1a、1b、11a、11b リード線
2、12 コンデンサ素子
2a、12a 陽極箔
2b、12b 陰極箔
2c、12c セパレータ
2d、12d 絶縁テープ
2e、12e 誘電体層
12f 酸化アルミニウム層
3、13 外装ケース
3a、13a 絞り加工部
4、14 封口体
4a、4b、14a、14b 貫通孔
5、15 外装体
6、16 導電性ポリマー層
6a、6b、6c、6d、16a、16b、16c、16d 導電性ポリマー微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に誘電体層を備えた陽極箔にセパレータを介して陰極箔を積層し前記陽極箔と陰極箔及びセパレータの表面上に導電性ポリマー微粒子からなる固体電解質層を形成したコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子にそれぞれ一方の端部を接続した一対のリード線と、
前記コンデンサ素子に含浸された駆動用電解液と、
前記一対のリード線のそれぞれ他方の端部を外部に導出するようにしてコンデンサ素子を駆動用電解液と共に封じた外装体とからなる電解コンデンサにおいて、
前記セパレータの気密度が2.0s/100ml以下であり、さらに前記導電性ポリマー微粒子が粒子径100nm以下であると共に陽極箔の単位面積当たり0.3mg/cm2以上1.2mg/cm2以下の範囲で含有されている電解コンデンサ。
【請求項2】
前記導電性ポリマー微粒子が、前記陽極箔の単位面積当たり0.4mg/cm2以上1.2mg/cm2以下の範囲で含有されている請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記セパレータが、フィブリル化処理した微細繊維を含まない長繊維から構成されている請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記導電性ポリマーが、ポリチオフェンおよび/またはその誘導体を含む請求項1〜3に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
誘電体層を表面に形成した陽極箔と、陰極箔とをセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、
次に、溶媒中に導電性ポリマー微粒子を分散させた分散体溶液を前記コンデンサ素子に含浸し、
その後、前記コンデンサ素子に加熱処理を施して前記分散体溶液の溶媒を減少させ、前記コンデンサ素子を構成する陽極箔と陰極箔及びセパレータの表面上に導電性ポリマー微粒子からなる固体電解質層を形成し、
次に、前記固体電解質層を形成したコンデンサ素子を駆動用電解液と共に外装体で封じる電解コンデンサの製造方法において、
前記セパレータの気密度が2.0s/100ml以下である前記コンデンサ素子に、前記導電性ポリマー微粒子の粒子径が100nm以下で、かつ、粒子濃度が2.8wt%以下である前記分散体溶液を含浸した後、この分散体溶液の溶媒を減少させ、前記陽極箔の単位面積当たりで換算して0.3mg/cm2以上1.2mg/cm2以下となるように導電性ポリマー微粒子を陽極箔と陰極箔及びセパレータの表面上に付着させて前記固体電解質層を形成するようにした電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記導電性ポリマーが、前記陽極箔の単位面積当たりで換算して0.4mg/cm2以上1.2mg/cm2以下となるように、陽極箔と陰極箔及びセパレータの表面上に付着して前記固体電解質層を形成するようにした請求項5に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記分散体溶液の溶媒中に分散した導電性ポリマー微粒子の濃度を1.25〜2.8wt%とし、この分散体溶液を、前記コンデンサ素子に1回含浸するようにした請求項5に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記導電性ポリマー微粒子の濃度が1.67〜2.8wt%である請求項6に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記分散体溶液の溶媒が、水と極性有機溶剤を含む請求項5〜8に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記極性有機溶剤が、エチレングリコールである請求項9に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記コンデンサ素子が、一対の引出端子を備えた前記陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回され、前記一対の引出端子を同一の巻回端面より導出するようにして形成されており、このコンデンサ素子を、前記一対の引出端子が引出されていない巻回端面を上面として水平に配置した後、この巻回端面に前記分散体溶液を滴下するようにした請求項5〜10に記載の電解コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−26536(P2013−26536A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161674(P2011−161674)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)