説明

電解槽及び電解水生成装置

【課題】製造作業を簡素化できるとともに、製品の大型化を抑制できる電解槽、及び、電解槽を備える電解水生成装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る電解槽100は、電解間隔膜124を挟んで対向する陰極板11,12及び陽極板21を有し、流入される原水を電気分解することによって、アルカリイオン水及び酸性水に取水可能である。電解槽100は、陰極板11,12と陽極板21との間において、原水を電気分解可能な主流路30と、原水を電気分解しない副流路40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極(陰極板及び陽極板)を有する電解槽、及び、電解槽を備える電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電解水生成装置では、電極(陰極板及び陽極板)を有する電解槽で生成されたアルカリイオン水は、胃もたれや胃の不快感をやわらげたり、胃腸の働きを助けお通じを良好にするといった胃腸症状の改善に効果があるが、現在アルカリイオン水に溶存する水素が作用していると考えられているため、溶存水素濃度を高めることが望まれている。
【0003】
しかし、溶存水素は、強アルカリ性水にほど多く存在するため、所望する溶存水素量を確保使用とすると、アルカリイオン水のpH値が高くなる。従って、アルカリイオン水として、飲用に適するpH7〜8値(以下、中性域)で生成しようとすると、溶存水素量を確保できなかった。
【0004】
そこで、電解槽で生成されたアルカリイオン水が通過するイオン流出管に、電解槽の上流側から分岐した原水バイパス流路が連通した電解水生成装置が知れられている(例えば、特許文献1参照)。この電解水生成装置によれば、溶存水素濃度が高められたアルカリイオン水を、原水バイパス流路を通過する原水が合流して希釈することによって、溶存水素濃度が高く且つ飲用に適する中性域のアルカリイオン水を生成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−160503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の電解水生成装置では、原水バイパス流路を配設する必要があるため、複雑な構成となることに伴い製造作業(組立作業)が煩雑になってしまうという問題があった。また、従来の電解水生成装置では、原水バイパス流路によって、製品が大型化してしまうという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、製造作業を簡素化できるとともに、製品の大型化を抑制できる電解槽、及び、電解槽を備える電解水生成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、隔膜(電解間隔膜124)を挟んで対向する陰極板(陰極板11,12)及び陽極板(陽極板21)を有し、流入される原水を電気分解することによって、アルカリイオン水及び酸性水に取水可能な電解槽(例えば、電解槽100)であって、前記陰極板と前記陽極板との間において、前記原水を電気分解可能な主流路(主流路30)と、前記原水を電気分解しない副流路(副流路40)とを有することを要旨とする。
【0009】
かかる特徴によれば、電解槽は、原水を電気分解可能な主流路と、原水を電気分解しない副流路とを有する。これにより、従来のように電解槽の外部に原水バイパス流路を設けることなく、電解槽内のみで、主流路を通過することによって生成されるアルカリイオン水を、副流路を通過した原水によって希釈できる。このため、電解槽の外部に流路を設ける必要がなくなり、製造作業を簡素化できるとともに、製品の大型化を抑制できる。
【0010】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記陰極板及び前記陽極板の少なくとも一方には、前記原水が通過可能な開口部(例えば、開口部11A及び開口部21A)が形成されることを要旨とする。
【0011】
かかる特徴によれば、陰極板及び陽極板の少なくとも一方には、開口部が形成される。これにより、主流路(陰極板と陽極板との間)で原水が電気分解された際に発生する気泡を開口部から副流路側(陰極板又は陽極板の背面側)に排出できる。具体的には、主流路を流れる原水は、陰極板と陽極板とによる電気分解によって、副流路を流れる原水よりも遅く流れている。このため、主流路で発生した気泡は、開口部を介して主流路よりも早い副流路を流れる原水に引き込まれる。従って、主流路内に気泡が存在し難くなり、気泡が電気分解を阻害することなく、陰極板と陽極板とによって安定した電気分解を行うことが可能となる。
【0012】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は第2の特徴に係り、前記陰極板と前記陽極板との間隔は、前記原水の流れ方向上流側から下流側に向かって広く設定されることを要旨とする。
【0013】
かかる特徴によれば、陰極板と陽極板との間隔は、原水の流れ方向上流側から下流側に向かって広く設定される。これにより、主流路(陰極板と陽極板との間)で原水が電気分解された際に発生する気泡が原水の流れ方向上流側から下流側に向かって流れやすくなる。このため、上記気泡は、陰極板や陽極板の表面に付着しにくくなり、陰極板や陽極板の表面に滞留しにくくなる。従って、主流路内に気泡が存在し難くなり、気泡が電気分解を阻害することなく、陰極板と陽極板とによって安定した電気分解を行うことが可能となる。
【0014】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1乃至第3の特徴に係り、前記陰極板及び前記陽極板の少なくとも一方は、複数設けられており、前記陰極板及び前記陽極板には、前記陰極板及び前記陽極板に印加する電圧を制御するリレー(リレーRy1,Ry2)が接続され、前記主流路及び前記副流路は、前記リレーの切替動作により前記陰極板と前記陽極板との間に形成されることを要旨とする。
【0015】
かかる特徴によれば、主流路及び副流路は、リレーの切替動作により陰極板と陽極板との間に形成される。これにより、副流路を敢えて設けずに、電解槽内の広範囲で陰極板と陽極板とによる電気分解を行うことも可能となる。このため、飲用に適する中性域のアルカリイオン水を生成することができることは勿論、溶存水素濃度の高いアルカリイオン水を生成することもできる。
【0016】
本発明の第5の特徴は、本発明の第1乃至第4の特徴に係り、前記陰極板及び前記陽極板は、前記電解槽の壁面から離間した状態で配設され、前記副流路は、前記陰極板と前記電解槽の壁面との間に配設される陰極側副流路(陰極側副流路41)と、前記陽極板と前記電解槽の壁面との間に配設される陽極側副流路(陽極側副流路42)とによって構成されることを要旨とする。
【0017】
かかる特徴によれば、陰極板及び陽極板は、電解槽の壁面から離間した状態で配設される。これにより、電解槽の厚み方向において、主流路及び副流路が形成される。このため、主流路を通過することによって生成されるアルカリイオン水を、副流路を通過した原水によって希釈できることは勿論、電解槽の短手方向(幅方向)へのコンパクト化を実現できる。
【0018】
本発明の第6の特徴は、本発明の第1乃至第4の特徴に係り、前記陰極板及び前記陽極板は、前記電解槽の壁面に隣接し、前記電解槽の壁面における短手方向に偏在された状態で配設され、前記副流路は、前記陰極板及び前記陽極板が配設されていない領域に形成されることを要旨とする。
【0019】
かかる特徴によれば、陰極板及び陽極板は、電解槽の壁面に隣接し、電解槽の壁面における短手方向に偏在された状態で配設される。これにより、電解槽の壁面における短手方向(幅方向)において、主流路及び副流路が形成され、陰極板と陽極板とによる電気分解を局所的に行うことができる。このため、主流路を通過することによって生成されるアルカリイオン水を、副流路を通過した原水によって希釈できることは勿論、電解槽の厚み方向へのコンパクト化を実現できる。
【0020】
本発明の第7の特徴は、本発明の第1乃至第6の特徴に係る電解槽を備える電解水生成装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の特徴によれば、製造作業を簡素化できるとともに、製品の大型化を抑制できる電解槽、及び、電解槽を備える電解水生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、第1実施形態に係る電解水生成装置1に設けられる電解槽100を示す斜視図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る電解水生成装置1に設けられる電解槽100を示す分解斜視図である。
【図3】図3(a)は、第1実施形態に係る電解槽100内部の断面(図1のA矢視からの断面)を示す構成図であり、図3(b)は、第1実施形態に係る電解槽100内部の断面(図1のB矢視方向からの断面)を示す構成図である。
【図4】図4(a)は、電解間隔膜124近傍におけるアルカリイオン水のpH値の挙動を示すグラフであり、図4(b)は、副流路40の有無での水質を違いによるpH制御結果を示すグラフである。
【図5】図5は、第1実施形態の変更例に係る電解槽100Aを示す構成図である。
【図6】図6(a)は、第2実施形態に係る電解槽200を示す斜視図であり、図6(b)は、第2実施形態に係る電解槽200を示す構成図である。
【図7】図7(a)は、第2実施形態の変更例1に係る電解槽200A内の陰極板11(陽極板21)のみを示す正面図であり、図7(b)は、第2実施形態の変更例1に係る電解槽200Aを示す構成図である。
【図8】図8は、第2実施形態の変更例2に係る電解槽200Bを示す構成図である。
【図9】図9(a)は、第3実施形態に係る電解槽300を示す斜視図であり、図9(b)は、第3実施形態に係る電解槽300を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る電解水生成装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)第1実施形態、(2)第2実施形態、(3)第3実施形態、(4)その他の実施形態について説明する。
【0024】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0025】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0026】
(1)第1実施形態
(1.1)電解水生成装置の概略構成
まず、第1実施形態に係る電解水生成装置1の概略構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る電解水生成装置1に設けられる電解槽100を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る電解水生成装置1に設けられる電解槽100を示す分解斜視図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、電解水生成装置1は、原水を電気分解(電極に電圧を印加)することによって、原水からアルカリイオン水及び酸性水に取水可能とするものである。なお、第1実施形態では、原水として、水道水や井戸水などが不図示の浄水フィルター(例えば、活性炭などの吸着手段や砂濾過、イオン交換樹脂)を通過して浄化されることによって生成される浄水であるものとする。
【0028】
この電解水生成装置1は、不図示の浄水フィルターよりも下流側に配設される略矩形状の電解槽100を備えている。この電解槽100は、電解間隔膜124を挟んで対向する複数の陰極板11,12及び陽極板21を有する。具体的には、電解槽100は、上側ケース111と下側ケース112とに分割可能な電解槽ケース110と、電解槽ケース110内に収容される矩形箱状の隔膜ケース120(図2参照)とによって構成される。
【0029】
電解槽ケース110内には、陰極板11,12を内蔵する陰極室10と、陰極板11,12と対向する陽極板21を内蔵する陽極室20とが設けられる。この陽極板21は、隔膜ケース120の内部に内臓されており、この陽極板21(陽極室20)の両側に、陰極板11,12が配設されている。
【0030】
陰極板11,12及び陽極板21は、電解槽ケース110の壁面113(陰極室10の壁面及び陽極室20の壁面)における短手方向略中央に配設される。この陰極板11,12及び陽極板21には、電解槽ケース110の下側から外部に突出する電極端子T(図7(a)参照)がそれぞれ設けられている。それぞれの電極端子Tは、Oリングにより水密にシールされ、陰極板11,12及び陽極板21に印加する電圧を制御する電極式のリレー(不図示)などが接続されている。
【0031】
このような電解槽ケース110には、浄水供給管130と、アルカリ水流出管140と、酸性水流出管150とが配設されている。
【0032】
浄水供給管130には、上側ケース111側において浄水を電解槽100内に供給すvる供給口131が形成されている。この浄水供給管130の途中には、電気分解を促進するカルシウム添加剤などの電解補助剤が充填される電解補助剤添加筒160が配設される。また、浄水供給管130は、電解補助剤添加筒160の下流側(上側ケース111と下側ケース112との分割部分近傍)において、陰極供給管130Aと、陽極供給管130Bとに分岐する。
【0033】
陰極供給管130Aは、下側ケース112の下側(すなわち、陰極室10の下部)に連通する。一方、陽極供給管130Bは、隔膜ケース120の下側(すなわち、陽極室20の下部)に連通する。
【0034】
アルカリ水流出管140は、陰極室10を通過することによって生成されるアルカリイオン水を流出する。このアルカリ水流出管140は、上側ケース111の上側に連通している。また、酸性水流出管150は、隔膜ケース120(陽極室20)を通過することによって生成される酸性水を流出する。
【0035】
隔膜ケース120は、電解間隔膜120Aを有し、電解間隔膜120A及び樹脂がインサート成型されることにより形成される。この隔膜ケース120は、陽極室20を構成する。また、隔膜ケース120には、浄水を流入する流入口121Aと、隔膜ケース120内で生成される酸性水を流出する流出口121Bが形成されている。流出口121Bは、酸性水流出管150に連通する。
【0036】
(1.2)電解槽の内部構成
次に、上述した電解槽100の内部構成について、図2及び図3を参照しながら説明する。なお、図3(a)は、第1実施形態に係る電解槽100の平面視(図1のA矢視)を示す構成図であり、図3(b)は、第1実施形態に係る電解槽100の側面視(図1のB矢視)を示す構成図である。
【0037】
図2、図3(a)及び図3(b)に示すように、陰極板11,12及び陽極板21は、それぞれ板状をなしており、電解槽ケース110の壁面113と略平行に配設されている。陰極板11,12は、電解槽ケース110の壁面113及び隔膜ケース120(陽極板21)から離間した状態で配設されている。
【0038】
具体的には、隔膜ケース120には、陰極板11,12の側部に対応するように電極長手方向(図面では、上下方向)に沿って位置決め用リブ122(図2及び図3(a)参照)と、陰極板11,12を支持する支持リブ123とが形成される。この位置決め用リブ122は、陰極板11,12を電解槽ケース110の壁面113及び隔膜ケース120から離間させた状態で位置決めする。
【0039】
ここで、第1実施形態では、図3(a)及び図3(b)に示すように、隔膜ケース120から陰極板11,12までの離間距離D1に対して、陰極板11,12から電解槽ケース110の壁面113までの離間距離D2が2倍に設定されている(D1:D2=1:2)。
【0040】
このような電解槽100は、陰極板11,12と陽極板21との間において浄水供給管130から導入される浄水を電気分解可能な主流路30と、浄水供給管130から導入される浄水を電気分解しない副流路40とを有している。
【0041】
主流路30は、陰極板11,12と陽極板21との間に設けられる。一方、副流路40は、陰極板11,12と電解槽ケース110の壁面113との間に設けられる。つまり、副流路40を通過する浄水は、陰極板11,12と陽極板21とによる電気分解が行われない。
【0042】
(1.3)浄水の動き
次に、上述した電解槽100内で流れる浄水の動きについて、図1〜3を参照しながら説明する。
【0043】
図1及び図2に示すように、浄水フィルター(不図示)を通過した浄水は、浄水供給管130に導入され、電解補助剤添加筒160を通過する。この電解補助剤添加筒160を通過した浄水は、陰極供給管130A及び陽極供給管130Bに分岐し、陰極室10及び陽極室20(隔膜ケース120)にそれぞれ導入される。
【0044】
そして、図3に示すように、陰極供給管130Aから陰極室10に導入された浄水は、主流路30を通過する浄水と、副流路40を通過する浄水とに分岐する。主流路30を通過する浄水は、陰極板11,12と陽極板21とによる電気分解され、陰極板11,12と陽極板21とによる電気分解が行われなかった副流路40を通過する浄水と合流し、アルカリ水流出管140からアルカリイオン水として吐出される。
【0045】
一方で、陽極供給管130Bから陽極室20(隔膜ケース120)に導入された水は、陽極板21と隔膜ケース120との間を通過して酸性水流出管150から酸性水として吐出される。
【0046】
(1.4)作用・効果
以上説明した第1実施形態では、電解槽100は、原水(浄水)を電気分解可能な主流路30と、原水(浄水)を電気分解しない副流路40とを有する。これにより、従来のように電解槽100の外部に原水バイパス流路を設けることなく、電解槽100内のみで、主流路30を通過することによって生成されるアルカリイオン水を、副流路40を通過した浄水によって希釈できる。このため、電解槽100の外部に流路を設ける必要がなくなり、製造作業を簡素化できるとともに、製品の大型化を抑制できる。
【0047】
ここで、図4(a)には、電解間隔膜124近傍におけるアルカリイオン水のpH値の挙動を示している。図4(a)に示すように、陰極板11,12と陽極板21とによる電気分解時では、浄水の流れに伴い主流路30において電解反応が局所的に行われている。このため、陽極板21表面におけるpHが低いと、電解間隔膜124で濃度勾配(イオンH+が多く)が生じて、アルカリイオン水を中性域(pH7〜8)にし易くなる中和効果が促進される。
【0048】
従って、例えば炭酸成分をあまり含まない水質では、陰極板11,12側でpH値が上がりやすく、陽極板21側ではpH値が下がりやすくなるため、電解間隔膜124でのpH勾配は大きくなり、中和効果が大きく働くことによって、アルカリイオン水のpH値の過度の上昇が抑制される。
【0049】
一方、例えば炭酸成分を多く含む水質では、陰極板11,12側でpH値があまり上がらず、陽極板21側ではpH値が下がりにくいため、電解間隔膜124でのpH勾配は小さくなり、中和効果が余り働かないことによって、アルカリイオン水のpH値の上昇を抑制することによる影響が少なくなる。
【0050】
また、図4(b)には、副流路40の有無での水質を違いによるpH制御結果を示している。図4(b)に示すように、副流路40が無いと、印加電流に対して傾きが急であること、及び、水質のばらつき(炭酸成分の含有量のばらつき)の影響が大きい。これにより、アルカリイオン水のpH値が8.6を超えてしまい、浄水の制御が難しい。
【0051】
一方、本願発明のように、副流路40を設けると、印加電流に対する傾きが緩やかであり、且つ、水質のバラツキによる影響も小さい。このため、浄水を制御し易くなり、pHが約8.0〜8.5の弱アルカリ性のアルカリイオン水を得ることが可能となる。
【0052】
第1実施形態では、陰極板11,12及び陽極板21は、電解槽100(電解槽ケース110の壁面113)から離間した状態で配設される。これにより、電解槽100の厚み方向において、主流路30及び副流路40が形成される。このため、主流路30を通過することによって生成されるアルカリイオン水を、副流路40を通過した浄水によって希釈できることは勿論、電解槽100の短手方向(幅方向;図面では左右方向)へのコンパクト化を実現できる。
【0053】
第1実施形態では、隔膜ケース120から陰極板11,12までの離間距離D1に対して、陰極板11,12から電解槽ケース110の壁面113までの離間距離D2が2倍に設定されている(D1:D2=1:2)。これにより、主流路30を通過することによって生成されるアルカリイオン水を、副流路40を通過した浄水によって希釈し易くなる。
【0054】
(1.5)変更例
次に、上述した第1実施形態に係る電解槽100の変更例について、図面を参照しながら説明する。図5は、第1実施形態の変更例に係る電解槽100Aを示す構成図である。なお、上述した第1実施形態に係る電解槽100と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0055】
上述した第1実施形態では、陰極板11,12は、電解槽ケース110の壁面113及び隔膜ケース120から離間した状態で配設されている。これに対して、変更例では、図5に示すように、陰極板11,12は、電解槽ケース110の壁面113に隣接した状態で配設されている。
【0056】
具体的には、陰極板11,12(電極端子T)には、陰極板11,12及び陽極板21に印加する電圧を制御する電極式のリレーRy1,Ry2が接続されている。このリレーRy1,Ry2の切替動作により、低pHの電気分解時には、陰極板11,12の一方のみに電圧が印加され、高pHの電気分解時を得る場合には、陰極板11,12の両方に電圧が印加される。
【0057】
例えば、弱アルカリ水を得る場合、リレーRy1のみを作動させる。この場合、陰極板11と陽極板21との間が主流路30となり、陰極板12と陽極板21との間が副流路40となる。また、強アルカリ水を得る場合、リレーRy1,Ry2を作動させる。この場合、副流路40を設けずに、陰極板11,12と陽極板21との間が主流路30となる。つまり、副流路40は、リレーの切替動作により、陰極板12と陽極板21との間に形成されることとなる。
【0058】
このような変更例では、主流路30及び副流路40は、リレーRy1,Ry2の切替動作により陰極板11,12と陽極板21との間に形成される。これにより、副流路40を敢えて設けずに、電解槽100A内の広範囲で陰極板11,12と陽極板21とによる電気分解を行うことも可能となる。このため、飲用に適する中性域のアルカリイオン水を生成することができることは勿論、溶存水素濃度の高いアルカリイオン水を生成することもできる。
【0059】
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態に係る電解槽200について、図面を参照しながら説明する。図6(a)は、第2実施形態に係る電解槽200を示す斜視図であり、図6(b)は、第2実施形態に係る電解槽200を示す構成図である。なお、上述した第1実施形態に係る電解槽100と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0060】
(2.1)電解槽の内部構成
第1実施形態では、陽極室20(陽極板21)の両側に、陰極板11,12が配設されている。これに対して、第2実施形態では、陽極室20(陽極板21)の片側に、陰極板11が配設されている。
【0061】
図6(a)及び図6(b)に示すように、陰極板11が内蔵される陰極室10と、陽極板21が内蔵される陽極室20とは、板状の電解間隔膜124によって区画されている。この陰極板11及び陽極板21は、電解槽ケース110の壁面113(陰極室10の壁面及び陽極室20の壁面)及び電解間隔膜124から離間した状態で配設される。なお、第2実施形態においても、陰極板11及び陽極板21は、電解槽300(電解槽ケース110の壁面113)の短手方向略中央に配設される。
【0062】
そして、主流路30は、陰極板11,12と電解間隔膜124との間に配設される陰極側主流路31と、陽極板21と電解間隔膜124との間に配設される陽極側主流路32とによって構成される。
【0063】
一方、副流路40は、陰極板11,12と電解槽ケース110(陰極室10)の壁面113との間に配設される陰極側副流路41と、陽極板21と電解槽ケース110(陽極室20)の壁面113との間に配設される陽極側副流路42とによって構成される。
【0064】
以上説明した第2実施形態では、陰極板11及び陽極板21は、電解槽300(電解槽ケース110の壁面113)から離間した状態で配設される。これにより、電解槽300の厚み方向(図面では、奥行き方向)において、主流路30及び副流路40が形成される。このため、主流路30を通過することによって生成されるアルカリイオン水を、副流路40を通過した浄水によって希釈できることは勿論、電解槽300の短手方向(幅方向)へのコンパクト化を実現できる。
【0065】
(2.2)変更例
次に、上述した第2実施形態に係る電解槽200の変更例について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1実施形態に係る電解槽100と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0066】
(2.2.1)変更例1
まず、第2実施形態に係る電解槽200Aの変更例1について、図7を参照しながら説明する。図7(a)は、第2実施形態の変更例1に係る電解槽200A内の陰極板11(又は陽極板21)のみを示す正面図であり、図7(b)は、第2実施形態の変更例1に係る電解槽200Aを示す構成図である。
【0067】
上述した第2実施形態では、陰極板11及び陽極板21は、開口などが形成されていない板状をなしている。これに対して、変更例1では、図7(a)及び図7(b)に示すように、陰極板11には、陰極板11を貫通する開口部11Aが複数形成され、陽極板21には、陽極板21を貫通する開口部21Aが複数形成される。この開口部11A及び開口部21Aでは、陰極板11と陽極板21とによる電気分解により発生した気泡が通過可能である。また、開口部11A及び開口部21Aは、陰極板11及び陽極板21の正面視において、格子状に配列されている。
【0068】
このような変更例1では、陰極板11及び陽極板21の少なくとも一方には、開口部11A又は開口部21Aが形成される。これにより、主流路30(陰極板11と陽極板21との間)で浄水が電気分解された際に発生する気泡を開口部から副流路40側(陰極板11又は陽極板21の背面側)に排出できる。具体的には、主流路30を流れる浄水は、陰極板11と陽極板21とによる電気分解によって、副流路40を流れる浄水よりも遅く流れている。このため、主流路30で発生した気泡は、開口部11A又は開口部21Aを介して主流路30よりも早い副流路40を流れる浄水に引き込まれる。従って、主流路30内に気泡が存在し難くなり、気泡が電気分解を阻害することなく、陰極板11と陽極板21とによって安定した電気分解を行うことが可能となる。
【0069】
変更例1では、開口部11A及び開口部21Aは、陰極板11及び陽極板21の正面視において、格子状に配列されている。これにより、主流路30で発生した気泡は、開口部11A又は開口部21Aを介して主流路30よりも早い副流路40を流れる浄水に引き込まれ易くなり、主流路30内により存在し難くなる。
【0070】
ここで、開口部11A及び開口部21Aは、陰極板11及び陽極板21の正面視において、格子状に配列されているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、配列方法については任意に設定できる。
【0071】
(2.2.2)変更例2
次に、第2実施形態に係る電解槽200Bの変更例2について、図8を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態の変更例2に係る電解槽200Bを示す構成図である。
【0072】
上述した第2実施形態では、陰極板11及び陽極板21は、開口などが形成されていない板状をなしている。これに対して、変更例2では、上述した変更例1と同様に、陰極板11に開口部11Aが複数形成され、陽極板21に開口部21Aが複数形成されている。
【0073】
また、図8に示すように、陰極板11及び陽極板21は、電解槽ケース110の壁面113に対して傾斜した状態で配設されている。具体的には、陰極板11と陽極板21との間隔Dは、浄水の流れ方向上流側から下流側(図面では、下方から上方)に向かって徐々に広くなるように設定される。
【0074】
このような変更例2では、陰極板11と陽極板21との間隔は、浄水の流れ方向上流側から下流側に向かって広く設定される。これにより、主流路30(陰極板11と陽極板21との間)で浄水が電気分解された際に発生する気泡が浄水の流れ方向上流側から下流側に向かって流れやすくなる。このため、上記気泡は、陰極板11や陽極板21の表面に付着しにくくなり、陰極板11や陽極板21の表面に滞留しにくくなる。従って、主流路30内に気泡が存在し難くなり、気泡が電気分解を阻害することなく、陰極板11と陽極板21とによって安定した電気分解を行うことが可能となる。
【0075】
(3)第3実施形態
次に、第3実施形態に係る電解槽300について、図面を参照しながら説明する。図9(a)は、第3実施形態に係る電解槽300を示す斜視図であり、図9(b)は、第3実施形態に係る電解槽300を示す構成図である。なお、上述した第1実施形態に係る電解槽100(100A)や第2実施形態に係る電解槽200(200A,B)と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0076】
(3.1)電解槽の内部構成
第1実施形態及び第2実施形態では、陰極板11(12)及び陽極板21は、電解槽ケース110の壁面113(陰極室10の壁面及び陽極室20の壁面)の短手方向略中央に配設される。これに対して、第3実施形態では、図9(a)及び図9(b)に示すように、陰極板11及び陽極板21は、電解槽300(電解槽ケース110の壁面113)の短手方向において偏在された状態で配設される。
【0077】
この場合、主流路30は、陰極板11と陽極板21との間に配設され、副流路40は、陰極板11と陽極板21が配設されていない領域に形成されることになる。
【0078】
以上説明した第3実施形態では、陰極板11及び陽極板21は、電解槽300(電解槽ケース110の壁面113)に隣接し、壁面113における短手方向に偏在された状態で配設される。これにより、壁面113における短手方向(幅方向)において、主流路30及び副流路40が形成され、陰極板11と陽極板21とによる電気分解を局所的に行うことができる。このため、主流路30を通過することによって生成されるアルカリイオン水を、副流路40を通過した浄水によって希釈できることは勿論、電解槽300の厚み方向へのコンパクト化を実現できる。
【0079】
(4)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0080】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、電解水生成装置1は、浄水フィルターを有しているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、浄水フィルターを有していない装置(例えば、飲料水を貯水するボトルウォーターサーバー)などであってもよい。
【0081】
また、電解槽ケース110は、上側ケース111と下側ケース112とに分割可能であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、一つのケース及び蓋体とによって構成されていてもよい。
【0082】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0083】
1…電解水生成装置
10…陰極室
11,12…陰極板
11A…開口部
20…陽極室
21…陽極板
21A…開口部
30…主流路
31…陰極側主流路
32…陽極側主流路
40…副流路
41…陰極側副流路
42…陽極側副流路
100,100A,200,200A,200B,300…電解槽
110…電解槽ケース
113…壁面
120…隔膜ケース
120A,124…電解間隔膜
130…浄水供給管
140…アルカリ水流出管
150…酸性水流出管
160…電解補助剤添加筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔膜を挟んで対向する陰極板及び陽極板を有し、流入される原水を電気分解することによって、アルカリイオン水及び酸性水に取水可能な電解槽であって、
前記陰極板と前記陽極板との間において前記原水を電気分解可能な主流路と、前記原水を電気分解しない副流路とを有することを特徴とする電解槽。
【請求項2】
請求項1に記載の電解槽であって、
前記陰極板及び前記陽極板の少なくとも一方には、前記原水が通過可能な開口部が形成されることを特徴とする電解槽。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電解槽であって、
前記陰極板と前記陽極板との間隔は、前記原水の流れ方向上流側から下流側に向かって広く設定されることを特徴とする電解槽。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電解槽であって、
前記陰極板及び前記陽極板の少なくとも一方は、複数設けられており、
前記陰極板及び前記陽極板には、前記陰極板及び前記陽極板に印加する電圧を制御するリレーが接続され、
前記主流路及び前記副流路は、前記リレーの切替動作により前記陰極板と前記陽極板との間に形成されることを特徴とする電解槽。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電解槽であって、
前記陰極板及び前記陽極板は、前記電解槽の壁面から離間した状態で配設され、
前記副流路は、
前記陰極板と前記電解槽の壁面との間に配設される陰極側副流路と、
前記陽極板と前記電解槽の壁面との間に配設される陽極側副流路と
によって構成されることを特徴とする電解槽。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電解槽であって、
前記陰極板及び前記陽極板は、前記電解槽の壁面に隣接し、前記電解槽の壁面における短手方向に偏在された状態で配設され、
前記副流路は、前記陰極板及び前記陽極板が配設されていない領域に形成されることを特徴とする電解槽。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の電解槽を備えることを特徴とする電解水生成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−240037(P2012−240037A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116258(P2011−116258)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】