説明

電解液およびそれを用いた電気二重層キャパシタ

【課題】ジメチルカーボネートを含有するにも関わらず安全性を向上させた電解液を提供することにある。
【解決手段】プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒にスピロビピロリジニウムアンモニウム塩の電解質を含有し、その発火点が70℃以上である電解液とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液およびそれを用いた電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、分極性電極に電解質中のアニオン、カチオンを正極、負極表面に物理吸着させて電気を蓄えることを原理としている。
【0003】
バイポーラ型電気二重層キャパシタ(以後、キャパシタと称する)は、活性炭電極(分極性電極)を接着した2枚の集電極の間に、分極基材の両面に接着した活性炭電極と、イオンが通過可能なセパレータとを交互に重ねた積層型である。対向した活性炭電極に挟まれるセパレートの最小単位をセルと呼称する。
【0004】
積層されたセルの階層にシール機能を有するパッキンが挟み込まれており、キャパシタ内の前記活性炭電極に含浸された電解液を漏れ出さないようにしている。また、このパッキンは、積層されたセル間にて絶縁する機能も有する。
【0005】
キャパシタでは、必要な耐電圧分のセル(単セル耐電圧2.5V程度)およびパッキンを積み重ねてなるモジュールの両面からエンドプレートにて挟み込まれ、絶縁体を介してボルトで締め付けられることにより、密閉構造が保たれている。
【0006】
前記キャパシタを積層してなる積層型キャパシタユニットは、各キャパシタの前記集電極の端面にリード線が取り付けられ、各キャパシタがユニット内にて直列に接続されて、(単セル耐電圧)×(積層数)だけの耐電圧を持たされている。この積層型キャパシタユニットは、一般的な巻取り方式を用いた同一容量のキャパシタと比較してケーブル等を必要とせず、コンパクトに耐電圧を高く設計できるため設置面積を小さくすることができる。
【0007】
前述したキャパシタは、前記活性炭電極、前記セパレータ、前記集電極、および前記パッキン等が交互に積み重ねられ、各セル間がシールされた後に、その内部に電解液が導入されて、活性炭電極、およびセパレータに電解液を含浸させることで製造されている。前記キャパシタの一箇所に設けられた電解液導入口に前記電解液が導入されて、前記導入口、各セルを仕切る分極基材の穴を介して全てのセル内に行き渡せられている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−351915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記電解液として、電解質塩にスピロビピロリジニウム(SBP−BF4)アンモニウム塩を用い、溶媒にプロピレンカーボネート(以下、PCと称する)とエチレンカーボネート(以下、ECと称する)とジメチルカーボネート(以下、DMCと称する)の3種類を混合したものを用いている。前記電解質塩は、一般に幅広く用いられており、キャパシタ用電解質塩としては標準的なものである。前記溶媒の中でDMCは低沸点溶媒と呼ばれ、沸点が96℃と低く、その液粘度もPCやECと比較して極めて低いといった特徴がある。本溶媒を使用することで電解液の粘度も低減し電導度は格段に向上し、キャパシタの内部抵抗も低減することが可能である。
【0010】
しかし、DMC単体は日本の消防法で定められる危険物区分の第4類第一石油類(1気圧で、引火点が21℃未満のもの)に該当し非常に引火性が強い物質である。DMCを数%程度混合させた電解液は危険物区分の第4類第二石油類(1気圧で、引火点が21℃以上70℃未満のもの)に該当し、DMCの混合量が80%を超えた電解液は危険物区分の第4類第一石油類に該当する。
【0011】
高沸点溶媒であるPCおよびECは、危険物区分の第4類第三石油類(1気圧で、温度20℃で液体であって、引火点が70℃以上200℃未満のもの)に該当する。一般的なキャパシタでは、PC単体またはPCとECの混合溶媒で使用されている。また、キャパシタが高温環境にて用いられる場合や安全性を重視する環境にて用いられる場合、または電解液を大量に保管する場合、電解液が1気圧での引火点が70℃以上である危険物区分の第4類第三石油類に該当することが望ましい。
【0012】
しかし、PC、EC溶媒では電解液の電導度を高くすることができずキャパシタの内部抵抗が高くなってしまう。
【0013】
さらには環境問題などから電気自動車が注目を集めており、エネルギー密度が高く、かつ密閉型でメンテナンスフリーの非水電解液二次電池、例えば電気二重層キャパシタを電気自動車に用いることが提案されている。しかし、一般に低粘度溶媒は引火点が低いため発火してしまうおそれがある。特に電気自動車用の大型電池では放熱が少ないため、過充電や短絡時に電池内部の温度の上昇が大きく、電池の不具合を発生させてしまう可能性がある。
【0014】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、ジメチルカーボネートを含有するにも関わらず安全性を向上させた電解液およびそれを用いた電気二重層キャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した課題を解決する第1の発明に係る電解液は、
プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒にスピロビピロリジニウムアンモニウム塩の電解質を含有し、その引火点が70℃以上である
ことを特徴とする。
【0016】
前述した課題を解決する第2の発明に係る電解液は、第1の発明に係る電解液であって、
前記混合溶媒における前記ジメチルカーボネートの混合割合が、3重量%以上5重量%以下である
ことを特徴とする。
【0017】
前述した課題を解決する第3の発明に係る電解液は、第1の発明または第2の発明に係る電解液であって、
前記混合溶媒における前記プロピレンカーボネートの混合割合が、60重量%以上である
ことを特徴とする。
【0018】
前述した課題を解決する第4の発明に係る電解液は、第1の発明乃至第3の発明の何れか一つに係る電解液であって、
前記プロピレンカーボネートと前記エチレンカーボネートと前記ジメチルカーボネートの混合割合が、60:35〜37:5〜3である
ことを特徴とする。
【0019】
前述した課題を解決する第5の発明に係る電気二重層キャパシタは、
第1の発明乃至第4の発明の何れか一つに係る電解液を用いて作製されてなる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電解液によれば、引火点が70℃以上であり、引火点が検討されていない従来のジメチルカーボネートを大量に含有する電解液の場合と比べて、引火点が高くなる。よって、ジメチルカーボネートを含有するにも関わらず安全性を向上させることができる。
【0021】
本発明に係る電解液によれば、混合溶媒におけるジメチルカーボネートの混合割合が、3重量%以上5重量%以下であることにより、引火点が70℃以上となり、引火点が検討されていない従来のジメチルカーボネートを含有する電解液の場合と比べて、引火点が高くなる。よって、ジメチルカーボネートを含有するにも関わらず安全性を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る電解液によれば、混合溶媒におけるプロピレンカーボネートの混合割合が、60重量%以上であることにより、ジメチルカーボネートを含有するにも関わらず安全性を向上させることができる上に、マイナス30℃以上で凝固しないため、この電解液を用いて作製されてなる電気二重層キャパシタの汎用性が向上する。
【0023】
本発明に係る電解液によれば、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合割合が、60:35〜37:5〜3であることにより、引火点が70℃以上となり、ジメチルカーボネートを含有するにも関わらず安全性を向上させることができる上に、この電解液を用いて作製されてなる電気二重層キャパシタにあっては低温特性を損なわずに内部抵抗を低減することができる。
【0024】
本発明に係る電気二重層キャパシタによれば、引火点が70℃以上であり、引火点が検討されていない従来のジメチルカーボネートを含有する電解液を用いて作製されてなる電気二重層キャパシタの場合と比べて、引火点が高くなる。よって、ジメチルカーボネートを含有するにも関わらず安全性を向上させることができる。その結果、電気二重層キャパシタの汎用性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る電解液およびそれを用いた電気二重層キャパシタを実施するための最良の形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
[第一の実施形態]
本発明に係る電解液およびそれを用いた電気二重層キャパシタの一実施形態につき図1〜3を参照して説明する。
図1は、電気二重層キャパシタの構成を示す断面図である。図2は、試験体1,2および比較試験体1,2の電気二重層キャパシタの特性評価結果(静電容量および内部抵抗)を示すグラフである。図3は、電解液の溶媒におけるジメチルカーボネートの混合割合と抵抗変化率との関係を示すグラフである。
【0027】
本実施形態に係る電気二重層キャパシタ1は、図1に示すように、セル6を有する。セル6はセパレータ2と、このセパレータ2の両側にそれぞれ配設された一対の分極性電極3A,3Bと、これら一対の分極性電極3A,3Bの両側にそれぞれ配設された一対の集電極4A,4Bとを有してなるものである。ただし、集電極4A,4Bにおける分極性電極3A,3B側には、導電性材料5A,5Bがそれぞれ塗布される。
【0028】
集電極4A,4Bの両側にはそれぞれ、一対の押え板8A,8Bが配設される。また、これら押え板8A,8Bの周縁部の間には、電解液7のシール材としてのパッキン9が介設される。パッキン9は分極性電極3A,3Bおよびセパレータ2の外周を囲んでいる。
【0029】
パッキン9が介設された状態で押え板8A,8Bの周縁部はネジ(図示せず)によって締め付けられる。このため、電解液7がセル内に密封され、且つ、セル6を構成するセパレータ2、分極性電極3A,3Bおよび集電極4A,4Bが押え板8A,8Bによって両側から押え付けられる。また、かかるキャパシタ本体10はアルミラミネートフィルム11によって包まれることにより、外気から遮断される。集電極4A,4Bにはそれぞれ一対の導線(出力端子)12A,12Bの基端側が接続されており、これらの導線12A,12Bの先端側はアルミラミネートフィルム11の外に出ている。
【0030】
なお、上述したネジと集電極4A,4Bの間や、出力端子12A,12Bとアルミラミネートフィルム11との間は図示しない絶縁材によって電気的に絶縁される。また、セパレータ2、分極性電極3A,3B、集電極4A,4Bおよび押え板8A,8Bは矩形状のものであり、パッキン9はエチレンブタジエンゴムの薄膜シートを額縁状に切り抜いたものを使用している。
【0031】
セパレータ2としてはセルロースセパレータなど適宜のものが用いられ、例えばセルロース繊維などからなる不織布などが用いられる。集電極4A,4Bとしては、例えばアルミニウム箔が用いられる。
【0032】
そして、本実施形態に係る電気二重層キャパタ1では、セル6の内部が電解液7で満たされており、この電解液7は分極性電極3A,3Bやセパレータ2に浸透している。
【0033】
この電解液7は、日本の消防法で定められている危険物区分の第4類第三石油類(1気圧で、温度20℃で液体であって、引火点が70℃以上200℃未満のもの)に該当し、かつ可能な限り電導度を上げキャパシタの内部抵抗を低減させる溶媒の混合比となっている。
【0034】
すなわち、電解液7は、プロピレンカーボネート(以下、PCと称する)とエチレンカーボネート(以下、ECと称する)とジメチルカーボネート(以下、DMCと称する)の3種類を混合した混合溶媒にスピロビピロリジニウム(SBP−BF4)アンモニウム塩の電解質を含有し、電解液7の引火点が70℃以上となっているものである。電解液の引火点が70℃よりも低くなると、その電解液は危険物区分の第4類第二石油類に該当する。そのため、70℃よりも低い温度にて電解液が引火や発火してしまう可能性があるため安全性が低下してしまい、不都合である。また、危険物区分の第4類第二石油類に該当する電解液は、危険物区分の第4類第三石油類に該当する場合と比べて大量に保管することができず、取扱性が悪く、不都合である。よって、引火点が検討されていない従来のジメチルカーボネートを含有する電解液の場合と比べて、引火点が高くなる。その結果、ジメチルカーボネートを含有するにも関わらず安全性を向上させることができる。また、電解液の引火点が70℃以上であることにより、この電解液を用いて作製してなる電気二重層キャパシタを70℃未満の高温環境、例えば、車両に搭載して利用することが可能となり、その汎用性を向上させることができる。
【0035】
好適には、電解液7の混合溶媒におけるDMCの混合割合を3重量%以上5重量%以下とする。このDMCの混合割合が3重量%より低くなると、DMCを含有する効果が小さく、不都合である。他方、DMCの混合割合が5重量%を超えると、その引火点が70℃より低くなり、この電解液が危険物区分の第4類第二石油類に該当してしまう。その結果、70℃よりも低い温度にて電解液が引火や発火してしまう可能性があるため安全性が低下してしまい、不都合である。よって、このようにDMCの混合割合を3重量%以上5重量%以下にすることで、電解液7の混合溶媒にDMCを含有することによる効果を発現させつつ、電解液7を危険物区分の第4類第三石油類に該当させることができる。よって、電解液7の引火点が70℃以上となり、引火点が検討されていない従来のジメチルカーボネートを含有する電解液の場合と比べて、引火点が高くなる。よって、ジメチルカーボネートを含有するにも関わらず安全性を向上させることができる。
【0036】
さらに好適には、電解液7の混合溶媒におけるPCの混合割合を60重量%以上とする。このPCの混合割合が60重量%より低くなると、電解液がマイナス30℃程度で凝固してしまい、この電解液を用いて作製してなる電気二重層キャパシタの汎用性を低下させてしまい、不都合である。よって、このようにPCの混合割合を60重量%以上とすることで、マイナス30℃でも電解液7が凝固しないという効果を発現させることができる。
【0037】
さらに好適には、PCとECとDMCの混合割合を60:35〜37:5〜3とする。このようにDMCの混合割合を5〜3%に抑えることで、電解液7が危険物区分の第4類第三石油類にとどまる。これ以上混合割合を大きくすると引火点が70℃未満となり危険物区分の第4類第二石油類となってしまう。
【0038】
よって、このようなDMCの混合割合とすることで電導度はDMCを混合させないときと比較して5〜10%増加し、この混合溶媒を含む電解液7を用いて作製してなる電気二重層キャパシタの内部抵抗を5%程度低減させることが可能となる。さらに、このような混合割合としたことでマイナス30℃まで電解液7が凝固しないため、この電解液7を用いて作製してなる電気二重層キャパシタを一般的な用途、例えば、電子機器や電源設備などの周囲環境が低温である場合であっても使用することができ、汎用性を向上させることができる。なお、電解質塩濃度は1.3mol/L〜1.6mol/Lに設定したときキャパシタの抵抗が最も低くなり好適である。
【実施例1】
【0039】
以下に、本発明に係る電気二重層キャパシタの第1の実施例について具体的に説明する。
本実施例に係る電気二重層キャパシタに用いられる電解液では、その電解質塩としてスピロビピロリジニウム(SBP−BF4)アンモニウム塩が用いられ、その溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の3種類の溶媒の重量比(混合割合)を60:37:3にて混合した混合溶媒が用いられる。なお、電極として賦活活性炭をPTFEバインダで成形したシート状電極を用いると共に、セパレータとしてセルロース紙を用い、積層型電気二重層キャパシタを組み立てその内部に当該電解液を注入して電気二重層キャパシタ(試験体(No.1))を得た。
【実施例2】
【0040】
以下に、本発明に係る電気二重層キャパシタの第2の実施例について具体的に説明する。
本実施例に係る電気二重層キャパシタは、上述した第1の実施例に係る電気二重層キャパシタにおいて、電解液の混合溶媒における混合割合を変更したものであり、それ以外はこの電気二重層キャパシタと同一である。
【0041】
本実施例に係る電気二重層キャパシタで用いられる電解液では、溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の3種類の溶媒の重量比(混合割合)を60:35:5にて混合した混合溶媒が用いられる。この電解液を上述した積層型電気二重層キャパシタの内部に注入して電気二重層キャパシタ(試験体(No.2))を得た。
【0042】
[比較例1]
以下に、比較例1の電気二重層キャパシタについて、具体的に説明する。
比較例1の電気二重層キャパシは、上述した第1の実施例に係る電気二重層キャパシタにおいて、電解液の溶媒を変更したものであり、それ以外はこの電気二重層キャパシタと同一である。
【0043】
比較例1の電気二重層キャパシで用いられる電解液では、溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)の2種類の溶媒の重量比(混合比)を60:40にて混合した混合溶媒が用いられる。この電解液を上述した積層型電気二重層キャパシタの内部に注入して電気二重層キャパシタ(比較試験体(No.1))を得た。
【0044】
[比較例2]
以下に、比較例2の電気二重層キャパシタについて、具体的に説明する。
比較例2の電気二重層キャパシは、上述した第1の実施例に係る電気二重層キャパシタにおいて、電解液の混合溶媒の混合割合を変更したものであり、それ以外はこの電気二重層キャパシタと同一である。
【0045】
比較例2の電気二重層キャパシで用いられる電解液では、溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の3種類の溶媒の重量比(混合割合)を60:32:8にて混合した混合溶媒が用いられる。この電解液を上述した積層型電気二重層キャパシタの内部に注入して電気二重層キャパシタ(比較試験体(No.2))を得た。
【0046】
[電気二重層キャパシタの性能評価試験]
上記試験体(No.1、No.2)および比較試験体(No.1、No.2)について、静電容量および内部抵抗をそれぞれ測定した。
【0047】
上記測定結果を図2、図3および表1に示す。
図2において、縦軸に静電容量(F)および内部抵抗(Ω)を示す。白抜き太線は静電容量を示し、ドット付き太線は内部抵抗を示す。図3において、横軸に電解液の混合溶媒におけるジメチルカーボネートの混合割合(Wt%)を示し、縦軸に抵抗変化率(%)を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
図2および表1に示すように、試験体(No.1)では、静電容量が1.81Fとなり、内部抵抗が1.57Ωとなった。試験体(No.2)では、静電容量が1.81Fとなり、内部抵抗が1.55Ωとなった。比較試験体(No.1)では、静電容量が1.76Fとなり、内部抵抗が1.67Ωとなった。比較試験体(No.2)では、静電容量が1.81Fとなり、内部抵抗が1.52Ωとなった。
【0050】
よって、試験体(No.1)では、比較試験体(No.1)に対して、抵抗比が−6.1%となり、容量比が+3.0%となることが分かった。試験体(No.2)では、比較試験体(No.1)に対して、抵抗比が−7.5%となり、容量比が+2.7%となることが分かった。すなわち、電解液の混合溶媒におけるジメチルカーボネートの混合割合を3重量%から5重量%とすることで、このような混合割合のジメチルカーボネートを含有する電解液を内部に注入した電気二重層キャパシタは、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートを含有する一方、ジメチルカーボネートを含有しない電解液を内部に注入した電気二重層キャパシタと比べて内部抵抗が小さくなり、静電容量が増加することが分かった。
【0051】
ここで、図3に示すように、電解液の混合溶媒におけるジメチルカーボネートの混合割合が5重量%を超える領域A1では、危険物区分の第4類第二石油類に該当し、そのジメチルカーボネートの混合割合が5重量%以下の領域A2では危険物区分の第4類第三石油類に該当する。よって、ジメチルカーボネートの混合割合を5重量%以下にすることで、電解液を危険物区分の第4類第三石油類に該当させて、電解液の引火点を70℃以上に引き上げ、その安全性を向上させることができる。よって、このような混合割合のジメチルカーボネートを含む電解液を内部に注入した電気二重層キャパシタを常温よりも高い温度(高温)の環境、例えば車両に搭載して利用することが可能となり、その汎用性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、電解液およびそれを用いた電気二重層キャパシタに利用することが可能であり、ジメチルカーボネートを含有するにも関わらず安全性を向上させる電解液およびそれを用いた電気二重層キャパシタに広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る電気二重層キャパシタの一実施形態の構成を示す断面図である。
【図2】試験体1,2および比較試験体1,2の電気二重層キャパシタの評価特性(静電容量、内部抵抗)を示すグラフである。
【図3】電解液の溶媒におけるジメチルカーボネートの混合割合と抵抗変化率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1 電気二重層キャパシタ
2 セパレータ
3A,3B 分極性電極
4A,4B 集電極
5A,5B 導電性材料
6 セル
7 電解液
8A,8B 押え板
9 パッキン
11 アルミラミネートフィルム
12A,12B 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒にスピロビピロリジニウムアンモニウム塩の電解質を含有し、その引火点が70℃以上である
ことを特徴とする電解液。
【請求項2】
請求項1に記載された電解液であって、
前記混合溶媒における前記ジメチルカーボネートの混合割合は、3重量%以上5重量%以下である
ことを特徴とする電解液。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された電解液であって、
前記混合溶媒における前記プロピレンカーボネートの混合割合は、60重量%以上である
ことを特徴とする電解液。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載された電解液であって、
前記プロピレンカーボネートと前記エチレンカーボネートと前記ジメチルカーボネートの混合割合は、60:35〜37:5〜3である
ことを特徴とする電解液。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電解液を用いて作製されてなる
ことを特徴とする電気二重層キャパシタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−62231(P2010−62231A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224229(P2008−224229)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】