電解装置の単一セル電流効率のための方法及びシステム
電解装置の単一セル電流効率を決定するための方法が説明される。この方法は、電解装置の複数の単一セルの電圧を測定し、単一セルに供給される電解電流を測定し、遮断期間及び始動期間の一方を検出し、各単一セルに対し、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定し、そして時間tの関数としてセル電流効率を計算すること、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解セルの分野に係り、より詳細には、電解装置の個々のセルの効率を決定することに係る。
【0002】
関連出願の相互参照:本出願は、参考として内容をここに援用する2009年4月16日に出願された米国プロビジョナル特許出願第61/169,743号の、35 USC119(e)のもとでの優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
電解装置は、電解反応が行われる装置である。電解とは、化学的化合物をその元素に分解するか、又は電流の作用により新たな化合物を生成するプロセスである。電解セルは、典型的に、2つの電極とセパレータとで構成され、複数のセルを使用して、希望の電解プロセスを達成する。
【0004】
セルの膜へのダメージによってセルの電流効率が著しく低下することがある。これらのダメージは、一般的に、始動及び遮断手順の失敗や、電解液汚染のために、或いは通常のエージングプロセスの結果として出来る空所、膨らみ及び層剥離により引き起こされる穴から生じる。これらのダメージは、結局は、アノード区画内の水酸化ナトリウムの著しい後方移動のような欠点を通してセルに影響し、ひいては、生成される塩素(酸素発生)の質にも影響し、アノードとカソードとの間の近道のおそれを高め、セルへの構造上のダメージを引き起こすことになる。アノードとカソード区画との間の圧力アンバランスによるアノードの腐食は、別の欠点になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電解装置の効率を測定する既知の方法は、全体的な基礎に基づいて化学的な分析を行うことを含む。しかしながら、このような方法は、個々のセルの効率を識別することができない。それ故、セルごとに効率を決定することが要望される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の広い態様によれば、電解装置の単一セル電流効率を決定するための方法において、電解装置の複数の単一セルの電圧を測定し、単一セルに供給される電解電流を測定し、遮断期間及び始動期間の一方を検出し、各単一セルに対し、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定し、そして時間tの関数としてセル電流効率を計算すること、を含む方法が提供される。
【0007】
第2の広い態様によれば、電解装置の単一セル電流効率を決定するためのシステムにおいて、コンピュータシステムのプロセッサと、このプロセッサによりアクセスできるメモリと、そのプロセッサに結合された少なくとも1つのアプリケーションであって、電解装置の複数の単一セルの電圧を測定し、単一セルに供給される電解電流を測定し、遮断期間及び始動期間の一方を検出し、各単一セルに対し、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定し、そして時間tの関数としてセル電流効率を計算するように構成されたアプリケーションと、を備えたシステムが提供される。
【0008】
第3の広い態様によれば、電解装置の単一セル電流効率を決定するためのインストラクションを含み、コンピュータ読み取り可能な媒体上に実施されるソフトウェア製品において、電解装置の複数の単一セルの電圧及び電流測定値を受け取るための測定モジュールと、その測定モジュールに結合され、遮断期間及び始動期間の一方を検出するための検出モジュールと、その測定モジュール及び検出モジュールから入力を受け取り、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するに要する時間tを決定すると共に、時間tの関数としてセル電流効率を計算するようにされた計算モジュールと、を備えたソフトウェア製品が提供される。
【0009】
本発明の更に別の特徴及び効果は、添付図面を参照した以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】個々の電解セルの規範的な実施形態を示す図である。
【図2】直列に設けられた複数の双極電解セルの規範的な実施形態を示す。
【図3】図2に示す電解装置の回路図である。
【図4】一実施形態により電解装置の単一セル電流効率を決定するための方法を示すフローチャートである。
【図5】一実施形態により電解装置の単一セル電流効率を決定するためのシステムを示すブロック図である。
【図6】図5のシステムを適用するための規範的実施形態を示すブロック図である。
【図7】遮断の前後の電解装置の電流の規範的実施形態を示すグラフである。
【図8】遮断の前後の電解装置の電圧の規範的実施形態を示すグラフである。
【図9】始動の前後の電解装置の電流の規範的実施形態を示すグラフである。
【図10】始動の前後の電解装置の電圧の規範的実施形態を示すグラフである。
【図11】電解装置の各個々のセルのセル効率の規範的実施形態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面全体にわたり、同じ特徴部が同じ参照番号で示されている。
【0012】
図1は、典型的な電解セルを示す。膜1は、カソード2をアノード3から分離する。この例では、セルのアノード3側において第1の入口4を通して飽和塩水(塩化ナトリウムNaCl)が導入され、塩化イオン(Cl-)が酸化されて塩素(Cl2)となり、第1の出口6を経て放出される。セルのカソード2側では、水が還元されて、水素(H2)及び水酸化イオン(OH-)となる。水素は、第2の出口7を経て放出される。水酸化イオン(OH-)は、アノード側から膜を貫通して移動するナトリウムイオン(Na-)と結合して、カソード2の区画に苛性ソーダ(NaOH)を生成し、これは、別の出口8を通して放出される。
【0013】
クロールアルカリ産業では、電解の一次製品は、塩素、水素及び水酸化ナトリウム溶液(通常、「苛性ソーダ」又は単に「腐食剤」と称される)である。クロールアルカリ産業では、イオン交換膜、浸透性ダイヤフラム及びカソード水銀というセパレータの形式に基づいて、3つの主たる電解プロセスが使用される。イオン交換膜技術は、水銀プラントに比して電力消費が低く且つ環境への影響がないことが示されている。塩素酸塩の産業では、電解セルにセパレータがない状態で電気化学的に生成された塩素及び苛性ソーダから塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸ナトリウムが生成される。
【0014】
塩素及び苛性水酸化物を生成するための塩化ナトリウムの水溶液の電解プロセスは、次の式で表される。
2NaCl+2H2O → Cl2+H2+2NaOH
【0015】
工業的規模では、電解装置は、双極又は単極の2つの構成で運転される。双極膜の電解装置は、図2に示すように、多数のセルを直列に接続したもので構成される。行全体にまたがって電解電圧が印加され、各セル9のアノード11からカソード12へその行のバスバー13を通して電流が流れ、次いで、その行の次の隣接セルのアノードへと流れる。双極電解装置の等価回路が図3に示されている。
【0016】
或いは又、単極の電解装置は、全てのアノードが共通の正の極に接続され、そしてカソードが共通の負の極に接続された個別の基本的セルの行を備えている。
【0017】
化学プラントの要件に基づき、セルの数は、電解装置当たり1ないし200個のセルというように著しく変化し得る。行われるべき反応に対して要求される化学的電位は、一般的に、約2ないし4V DCであり、従って、端から端までの電解装置の合計電位は、公称、800V DCに到達し得る。プロセスに必要とされる電流は、電極の表面積及び希望の生産率に依存する。一般に、電解は、2ないし7kA/m2で運転される。電極は、特定の電力消費を減少するために、触媒が被覆されてもよい。アノードは、貴金属酸化物を伴うチタン基板で構成される。カソードは、貴金属酸化物を伴うニッケル基板で構成される。典型的な工業用の基本的電解セルは、電極表面積が0.5ないし5平方メータである。
【0018】
1トンの生成物を生産するためのエネルギー消費(kWh)は、次の式から得られる。
但し、
n:生成物の分子重量当たりに要求されるファラディーの数(Number of Faraday’s)(塩素の場合は、2)、
F:ファラディー定数
Ucell:セル電圧
CE:電流効率
M:生成物の分子重量(kg)
【0019】
電流効率CEは、膜の形式に少なくとも一部分依存する。典型的に、二層膜のCE値は、95%ないし97%の効率である。電解プラントの典型的なエネルギー消費は、膜セルを使用して塩素1トン当たり2100ないし2500kWhである。前記式から明らかなように、電流効率が低下すると、エネルギー消費が増加する。
【0020】
図4は、電解装置の個々のセル効率を決定するための方法を示す。その第1ステップ402は、電解装置の個々のセルの電圧及び電流を測定することより成る。そのような測定を遂行する種々の方法、例えば、参考としてここに内容が援用される米国特許第6,591,199号に述べられた方法を使用することができる。それ故、電解装置の各セルに対して電圧及び電流の個々の測定値が得られる。
【0021】
この方法の次のステップ404は、電解装置の遮断又は始動のいずれかを検出することより成る。負荷が実質的に除去されて0%になったときに遮断期間が生じる。図7は、規範的な電流曲線を示し、時間t=0は、負荷が除去された時点に対応する。この例では、電流が18kAから実質上0Aに降下し、その値に100分間維持される。図9は、今度は、始動期間中の別の規範的電流曲線を示す。時間t=0分に負荷が与えられ、18kAで100%に到達するまで次第に増加する。電流負荷が約60分の期間内に0から20%に増加したときに始動期間が生じたとみなされる。又、電流負荷が60分以内に20%に到達した場合にも始動とみなされる。
【0022】
負荷が0%に到達したときに分極電流がトリガーされる。図8は、遮断中に分極電流がトリガーされたとき(802)の電解装置の各セルの電圧振舞いを示す。図示されたように、電解装置の各個々のセルの電圧は、遮断に対して独自に反応する。同様に、図10は、始動中に分極電流がトリガーされたときの電解装置の各セルの電圧振舞いを示す。この場合に、分極電流は、本質的に時間t=0、即ち始動の始めに、作用し始める。
【0023】
遮断又は始動期間が検出されると、2つのステップを使用して、個々のセル効率を決定することができる。第1のステップでは、電圧レベルがトリガー点802の後に電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tが決定される(406)。次いで、時間tの関数としてセル効率CEが計算される(408)、CE=f(t)。
【0024】
遮断の場合に、所定の発生点に到達するのに長時間を要したセルは、短い時間フレーム内に所定の発生点に到達したセルより効率が高いことが分かった。それ故、図8に示した例では、曲線806のCE<曲線808のCE<曲線810のCEである。関数f(t)は、異なる時間の間の直線的な比較であり、効率は、比較ランクとして与えられる。或いは又、既知の時間ttargetでターゲット効率が確立され、測定された時間がttargetと比較され、それに応じてランク付けされる。
【0025】
1つの実施形態では、CE対tの式fは、複数の電解装置特性を考慮しながら、数値シミュレーションにより与えられた値の非直線的な回帰から導出された実験モデルを使用して計算される。これらの特性は、例えば、分極電流レベル、アノード区画容積、膜面積、全負荷レベル、塩水の流量、塩水の酸性度、塩水のレドックス電位、苛性強度、電圧及びpHである。
【0026】
ある場合に、ある形式の電解装置においてそれらの設計による漂遊電流の存在で効率が失われることがある。これらケースでは、セルの効率を決定するのに使用される計算は、各個々のセルに対して特定の分極電流を考慮するように変更されてもよい。
【0027】
一実施形態において、使用する式は、CE=P1+P2+log(P3*t)+P4*tP5の形態であり、P1、P2、P3、P4及びP5は、回帰パラメータである。例えば、次の規範的な回帰パラメータを使用する。
P1:98.6313491
P2:0.31263139
P3:57.9920046
P4:30.0224603
P5:1.07236003
【0028】
更に、t806=5分、t808=15分、t810=40分の規範的な測定時間を使用すると、次のCE値:CE806=94%、CE808=97.9、CE810=99を見出すことができる。
【0029】
測定された時間は、5分未満と40分超との間で変化し得る。前記回帰パラメータを使用すると、10分未満の時間では、効率が94%未満となり、10分超の時間では、CEが94%を越えることになる。
【0030】
セルは、効率についてユーザが定義した許容スレッシュホールドに基づき、2つのカテゴリー、即ち効率的及び非効率的に分類される。或いは又、セルは、3つ以上のカテゴリー、例えば、3つのカテゴリー(効率的、低性能(under-performing)、欠陥)、4つのカテゴリー(効率的、若干低性能、非常に低性能、及び欠陥)、或いはそれ以上に分類されてもよい。
【0031】
1つの実施形態において、図8に804として及び図10に1002として示された曲線上の所定の発生点は、導関数がゼロである曲線上の変曲点に対応する。別の実施形態では、第2の導関数が使用される。更に別の実施形態では、所定の発生点は、1.85V、1.9V、1.95V、等の特定のプリセット値に対応する。この値は、システムにより与えられるユーザインターフェイスを経てユーザ選択され、これについては、以下に詳細に述べる。当業者であれば、電圧曲線上の所定の発生点を見出し及び/又は設定する他の方法が明らかであろう。
【0032】
この方法の一実施形態において、セルの効率が表示される(410)。これに対する規範的な実施形態が図11に示されている。電解装置のセル位置に対してセルの効率がプロットされ、低性能セルは、視覚的にコード化された仕方(カラー)でハイライトされるか、又はスレッシュホールド未満のセルに対して数値を表示することにより(図示せず)ハイライトされる。当業者であれば、各セルの性能を表示する他の仕方が明らかであろう。
【0033】
図5は、電解装置501の個々のセル効率を決定するためのシステムの規範的実施形態を示す。コンピュータシステム500は、プロセッサ506で実行されるアプリケーション508を備え、プロセッサは、メモリ504に結合される。電解装置502は、コンピュータシステム500に接続される。この接続は、ワイヤードでもワイヤレスでもよく、又、電解装置502とコンピュータシステム500との間に種々の通信プロトコルを使用することができる。電解装置502は、複数の個々の電解セル(図示せず)を含む。
【0034】
プロセッサ506によりアクセスできるメモリ504は、測定された電圧、測定された電流、測定された時間、セルの効率、及びシステム501により使用される他の情報のようなデータを受け取って記憶する。メモリ504は、高速ランダムアクセスメモリ(RAM)のようなメインメモリ、或いはハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク又は磁気テープドライブのような補助記憶装置でよい。メモリは、リードオンリメモリ(ROM)のような他の形式のメモリ、或いはビデオディスク及びコンパクトディスクのような光学的記憶メディアでよい。
【0035】
プロセッサ506は、メモリ504にアクセスして、データを検索することができる。又、プロセッサ506は、データに対して動作を遂行できる任意の装置でよい。例えば、中央処理ユニット(CPU)、フロントエンドプロセッサ、マイクロプロセッサ、グラフィック処理ユニット(GPU/VPU)、物理的処理ユニット(PPU)、デジタル信号プロセッサ、ネットワークプロセッサ、等である。アプリケーション508は、プロセッサ506に結合され、以下に詳細に述べるように、種々のタスクを遂行するように構成される。出力は、ディスプレイ装置510へ送信される。
【0036】
図6は、システム801のコンピュータシステム500に見られるアプリケーション508の規範的実施形態である。測定モジュール602は、電解装置502から測定データ600を受け取り、この測定データ600は、各セルの電圧及び/又は電流測定値に個々に対応する。上述したように、種々の測定技術を使用して、個々のセルの測定値を得ることができる。
【0037】
測定モジュール602は、測定された電流及び電圧を使用して、電解装置の始動期間又は遮断期間を検出できる検出モジュール604に結合され、検出の際に、分極電流がトリガーされる。測定モジュール602及び検出モジュール604は、両方とも、計算モジュール606に結合され、この計算モジュールは、各電解セルに対し、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するに要する時間tを個々に決定する。次いで、上述した実施形態のように、この時間tを使用して、セルの効率を計算する。
【0038】
1つの実施形態では、計算モジュールは、複数の電解装置特性を考慮しながら、数値シミュレーションにより与えられた値の非直線的な回帰から導出された実験モデルを使用して、セル効率対時間の式を計算する。
【0039】
別の実施形態では、計算は、CE=P1+P2+log(P3*t)+P4*tP5の形態の式を使用し、ここで、P1、P2、P3、P4及びP5は、回帰パラメータである。
【0040】
図6に示すモジュールは、単一アプリケーション508において設けられてもよいし、或いはプロセッサ506に結合された2つ以上のアプリケーションの組み合わせにおいて設けられてもよいことを理解されたい。個別のデータ信号接続を経て互いに通信する個別のコンポーネントのグループとしてブロック図に示されたが、当業者であれば、ハードウェア及びソフトウェアコンポーネントの組み合わせにより実施形態が構成され、あるコンポーネントは、ハードウェア又はソフトウェアシステムの所与の機能又は動作により具現化され、そして多くのデータ経路は、コンピュータアプリケーション又はオペレーティングシステム内のデータ通信により具現化されることが理解されよう。従って、図示された構造は、本発明の実施形態を効率良く教示するために設けられたものである。
【0041】
以上に述べた本発明の実施形態は、単なる例示に過ぎない。それ故、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって限定されるものとする。
【符号の説明】
【0042】
1:膜
2:カソード
3:アノード
4:第1の入口
6:第1の出口
7:第2の出口
8:別の出口
9:セル
11:アノード
12:カソード
500:コンピュータシステム
502:電解装置
504:メモリ
506:プロセッサ
508:アプリケーション
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解セルの分野に係り、より詳細には、電解装置の個々のセルの効率を決定することに係る。
【0002】
関連出願の相互参照:本出願は、参考として内容をここに援用する2009年4月16日に出願された米国プロビジョナル特許出願第61/169,743号の、35 USC119(e)のもとでの優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
電解装置は、電解反応が行われる装置である。電解とは、化学的化合物をその元素に分解するか、又は電流の作用により新たな化合物を生成するプロセスである。電解セルは、典型的に、2つの電極とセパレータとで構成され、複数のセルを使用して、希望の電解プロセスを達成する。
【0004】
セルの膜へのダメージによってセルの電流効率が著しく低下することがある。これらのダメージは、一般的に、始動及び遮断手順の失敗や、電解液汚染のために、或いは通常のエージングプロセスの結果として出来る空所、膨らみ及び層剥離により引き起こされる穴から生じる。これらのダメージは、結局は、アノード区画内の水酸化ナトリウムの著しい後方移動のような欠点を通してセルに影響し、ひいては、生成される塩素(酸素発生)の質にも影響し、アノードとカソードとの間の近道のおそれを高め、セルへの構造上のダメージを引き起こすことになる。アノードとカソード区画との間の圧力アンバランスによるアノードの腐食は、別の欠点になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電解装置の効率を測定する既知の方法は、全体的な基礎に基づいて化学的な分析を行うことを含む。しかしながら、このような方法は、個々のセルの効率を識別することができない。それ故、セルごとに効率を決定することが要望される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の広い態様によれば、電解装置の単一セル電流効率を決定するための方法において、電解装置の複数の単一セルの電圧を測定し、単一セルに供給される電解電流を測定し、遮断期間及び始動期間の一方を検出し、各単一セルに対し、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定し、そして時間tの関数としてセル電流効率を計算すること、を含む方法が提供される。
【0007】
第2の広い態様によれば、電解装置の単一セル電流効率を決定するためのシステムにおいて、コンピュータシステムのプロセッサと、このプロセッサによりアクセスできるメモリと、そのプロセッサに結合された少なくとも1つのアプリケーションであって、電解装置の複数の単一セルの電圧を測定し、単一セルに供給される電解電流を測定し、遮断期間及び始動期間の一方を検出し、各単一セルに対し、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定し、そして時間tの関数としてセル電流効率を計算するように構成されたアプリケーションと、を備えたシステムが提供される。
【0008】
第3の広い態様によれば、電解装置の単一セル電流効率を決定するためのインストラクションを含み、コンピュータ読み取り可能な媒体上に実施されるソフトウェア製品において、電解装置の複数の単一セルの電圧及び電流測定値を受け取るための測定モジュールと、その測定モジュールに結合され、遮断期間及び始動期間の一方を検出するための検出モジュールと、その測定モジュール及び検出モジュールから入力を受け取り、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するに要する時間tを決定すると共に、時間tの関数としてセル電流効率を計算するようにされた計算モジュールと、を備えたソフトウェア製品が提供される。
【0009】
本発明の更に別の特徴及び効果は、添付図面を参照した以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】個々の電解セルの規範的な実施形態を示す図である。
【図2】直列に設けられた複数の双極電解セルの規範的な実施形態を示す。
【図3】図2に示す電解装置の回路図である。
【図4】一実施形態により電解装置の単一セル電流効率を決定するための方法を示すフローチャートである。
【図5】一実施形態により電解装置の単一セル電流効率を決定するためのシステムを示すブロック図である。
【図6】図5のシステムを適用するための規範的実施形態を示すブロック図である。
【図7】遮断の前後の電解装置の電流の規範的実施形態を示すグラフである。
【図8】遮断の前後の電解装置の電圧の規範的実施形態を示すグラフである。
【図9】始動の前後の電解装置の電流の規範的実施形態を示すグラフである。
【図10】始動の前後の電解装置の電圧の規範的実施形態を示すグラフである。
【図11】電解装置の各個々のセルのセル効率の規範的実施形態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面全体にわたり、同じ特徴部が同じ参照番号で示されている。
【0012】
図1は、典型的な電解セルを示す。膜1は、カソード2をアノード3から分離する。この例では、セルのアノード3側において第1の入口4を通して飽和塩水(塩化ナトリウムNaCl)が導入され、塩化イオン(Cl-)が酸化されて塩素(Cl2)となり、第1の出口6を経て放出される。セルのカソード2側では、水が還元されて、水素(H2)及び水酸化イオン(OH-)となる。水素は、第2の出口7を経て放出される。水酸化イオン(OH-)は、アノード側から膜を貫通して移動するナトリウムイオン(Na-)と結合して、カソード2の区画に苛性ソーダ(NaOH)を生成し、これは、別の出口8を通して放出される。
【0013】
クロールアルカリ産業では、電解の一次製品は、塩素、水素及び水酸化ナトリウム溶液(通常、「苛性ソーダ」又は単に「腐食剤」と称される)である。クロールアルカリ産業では、イオン交換膜、浸透性ダイヤフラム及びカソード水銀というセパレータの形式に基づいて、3つの主たる電解プロセスが使用される。イオン交換膜技術は、水銀プラントに比して電力消費が低く且つ環境への影響がないことが示されている。塩素酸塩の産業では、電解セルにセパレータがない状態で電気化学的に生成された塩素及び苛性ソーダから塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸ナトリウムが生成される。
【0014】
塩素及び苛性水酸化物を生成するための塩化ナトリウムの水溶液の電解プロセスは、次の式で表される。
2NaCl+2H2O → Cl2+H2+2NaOH
【0015】
工業的規模では、電解装置は、双極又は単極の2つの構成で運転される。双極膜の電解装置は、図2に示すように、多数のセルを直列に接続したもので構成される。行全体にまたがって電解電圧が印加され、各セル9のアノード11からカソード12へその行のバスバー13を通して電流が流れ、次いで、その行の次の隣接セルのアノードへと流れる。双極電解装置の等価回路が図3に示されている。
【0016】
或いは又、単極の電解装置は、全てのアノードが共通の正の極に接続され、そしてカソードが共通の負の極に接続された個別の基本的セルの行を備えている。
【0017】
化学プラントの要件に基づき、セルの数は、電解装置当たり1ないし200個のセルというように著しく変化し得る。行われるべき反応に対して要求される化学的電位は、一般的に、約2ないし4V DCであり、従って、端から端までの電解装置の合計電位は、公称、800V DCに到達し得る。プロセスに必要とされる電流は、電極の表面積及び希望の生産率に依存する。一般に、電解は、2ないし7kA/m2で運転される。電極は、特定の電力消費を減少するために、触媒が被覆されてもよい。アノードは、貴金属酸化物を伴うチタン基板で構成される。カソードは、貴金属酸化物を伴うニッケル基板で構成される。典型的な工業用の基本的電解セルは、電極表面積が0.5ないし5平方メータである。
【0018】
1トンの生成物を生産するためのエネルギー消費(kWh)は、次の式から得られる。
但し、
n:生成物の分子重量当たりに要求されるファラディーの数(Number of Faraday’s)(塩素の場合は、2)、
F:ファラディー定数
Ucell:セル電圧
CE:電流効率
M:生成物の分子重量(kg)
【0019】
電流効率CEは、膜の形式に少なくとも一部分依存する。典型的に、二層膜のCE値は、95%ないし97%の効率である。電解プラントの典型的なエネルギー消費は、膜セルを使用して塩素1トン当たり2100ないし2500kWhである。前記式から明らかなように、電流効率が低下すると、エネルギー消費が増加する。
【0020】
図4は、電解装置の個々のセル効率を決定するための方法を示す。その第1ステップ402は、電解装置の個々のセルの電圧及び電流を測定することより成る。そのような測定を遂行する種々の方法、例えば、参考としてここに内容が援用される米国特許第6,591,199号に述べられた方法を使用することができる。それ故、電解装置の各セルに対して電圧及び電流の個々の測定値が得られる。
【0021】
この方法の次のステップ404は、電解装置の遮断又は始動のいずれかを検出することより成る。負荷が実質的に除去されて0%になったときに遮断期間が生じる。図7は、規範的な電流曲線を示し、時間t=0は、負荷が除去された時点に対応する。この例では、電流が18kAから実質上0Aに降下し、その値に100分間維持される。図9は、今度は、始動期間中の別の規範的電流曲線を示す。時間t=0分に負荷が与えられ、18kAで100%に到達するまで次第に増加する。電流負荷が約60分の期間内に0から20%に増加したときに始動期間が生じたとみなされる。又、電流負荷が60分以内に20%に到達した場合にも始動とみなされる。
【0022】
負荷が0%に到達したときに分極電流がトリガーされる。図8は、遮断中に分極電流がトリガーされたとき(802)の電解装置の各セルの電圧振舞いを示す。図示されたように、電解装置の各個々のセルの電圧は、遮断に対して独自に反応する。同様に、図10は、始動中に分極電流がトリガーされたときの電解装置の各セルの電圧振舞いを示す。この場合に、分極電流は、本質的に時間t=0、即ち始動の始めに、作用し始める。
【0023】
遮断又は始動期間が検出されると、2つのステップを使用して、個々のセル効率を決定することができる。第1のステップでは、電圧レベルがトリガー点802の後に電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tが決定される(406)。次いで、時間tの関数としてセル効率CEが計算される(408)、CE=f(t)。
【0024】
遮断の場合に、所定の発生点に到達するのに長時間を要したセルは、短い時間フレーム内に所定の発生点に到達したセルより効率が高いことが分かった。それ故、図8に示した例では、曲線806のCE<曲線808のCE<曲線810のCEである。関数f(t)は、異なる時間の間の直線的な比較であり、効率は、比較ランクとして与えられる。或いは又、既知の時間ttargetでターゲット効率が確立され、測定された時間がttargetと比較され、それに応じてランク付けされる。
【0025】
1つの実施形態では、CE対tの式fは、複数の電解装置特性を考慮しながら、数値シミュレーションにより与えられた値の非直線的な回帰から導出された実験モデルを使用して計算される。これらの特性は、例えば、分極電流レベル、アノード区画容積、膜面積、全負荷レベル、塩水の流量、塩水の酸性度、塩水のレドックス電位、苛性強度、電圧及びpHである。
【0026】
ある場合に、ある形式の電解装置においてそれらの設計による漂遊電流の存在で効率が失われることがある。これらケースでは、セルの効率を決定するのに使用される計算は、各個々のセルに対して特定の分極電流を考慮するように変更されてもよい。
【0027】
一実施形態において、使用する式は、CE=P1+P2+log(P3*t)+P4*tP5の形態であり、P1、P2、P3、P4及びP5は、回帰パラメータである。例えば、次の規範的な回帰パラメータを使用する。
P1:98.6313491
P2:0.31263139
P3:57.9920046
P4:30.0224603
P5:1.07236003
【0028】
更に、t806=5分、t808=15分、t810=40分の規範的な測定時間を使用すると、次のCE値:CE806=94%、CE808=97.9、CE810=99を見出すことができる。
【0029】
測定された時間は、5分未満と40分超との間で変化し得る。前記回帰パラメータを使用すると、10分未満の時間では、効率が94%未満となり、10分超の時間では、CEが94%を越えることになる。
【0030】
セルは、効率についてユーザが定義した許容スレッシュホールドに基づき、2つのカテゴリー、即ち効率的及び非効率的に分類される。或いは又、セルは、3つ以上のカテゴリー、例えば、3つのカテゴリー(効率的、低性能(under-performing)、欠陥)、4つのカテゴリー(効率的、若干低性能、非常に低性能、及び欠陥)、或いはそれ以上に分類されてもよい。
【0031】
1つの実施形態において、図8に804として及び図10に1002として示された曲線上の所定の発生点は、導関数がゼロである曲線上の変曲点に対応する。別の実施形態では、第2の導関数が使用される。更に別の実施形態では、所定の発生点は、1.85V、1.9V、1.95V、等の特定のプリセット値に対応する。この値は、システムにより与えられるユーザインターフェイスを経てユーザ選択され、これについては、以下に詳細に述べる。当業者であれば、電圧曲線上の所定の発生点を見出し及び/又は設定する他の方法が明らかであろう。
【0032】
この方法の一実施形態において、セルの効率が表示される(410)。これに対する規範的な実施形態が図11に示されている。電解装置のセル位置に対してセルの効率がプロットされ、低性能セルは、視覚的にコード化された仕方(カラー)でハイライトされるか、又はスレッシュホールド未満のセルに対して数値を表示することにより(図示せず)ハイライトされる。当業者であれば、各セルの性能を表示する他の仕方が明らかであろう。
【0033】
図5は、電解装置501の個々のセル効率を決定するためのシステムの規範的実施形態を示す。コンピュータシステム500は、プロセッサ506で実行されるアプリケーション508を備え、プロセッサは、メモリ504に結合される。電解装置502は、コンピュータシステム500に接続される。この接続は、ワイヤードでもワイヤレスでもよく、又、電解装置502とコンピュータシステム500との間に種々の通信プロトコルを使用することができる。電解装置502は、複数の個々の電解セル(図示せず)を含む。
【0034】
プロセッサ506によりアクセスできるメモリ504は、測定された電圧、測定された電流、測定された時間、セルの効率、及びシステム501により使用される他の情報のようなデータを受け取って記憶する。メモリ504は、高速ランダムアクセスメモリ(RAM)のようなメインメモリ、或いはハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク又は磁気テープドライブのような補助記憶装置でよい。メモリは、リードオンリメモリ(ROM)のような他の形式のメモリ、或いはビデオディスク及びコンパクトディスクのような光学的記憶メディアでよい。
【0035】
プロセッサ506は、メモリ504にアクセスして、データを検索することができる。又、プロセッサ506は、データに対して動作を遂行できる任意の装置でよい。例えば、中央処理ユニット(CPU)、フロントエンドプロセッサ、マイクロプロセッサ、グラフィック処理ユニット(GPU/VPU)、物理的処理ユニット(PPU)、デジタル信号プロセッサ、ネットワークプロセッサ、等である。アプリケーション508は、プロセッサ506に結合され、以下に詳細に述べるように、種々のタスクを遂行するように構成される。出力は、ディスプレイ装置510へ送信される。
【0036】
図6は、システム801のコンピュータシステム500に見られるアプリケーション508の規範的実施形態である。測定モジュール602は、電解装置502から測定データ600を受け取り、この測定データ600は、各セルの電圧及び/又は電流測定値に個々に対応する。上述したように、種々の測定技術を使用して、個々のセルの測定値を得ることができる。
【0037】
測定モジュール602は、測定された電流及び電圧を使用して、電解装置の始動期間又は遮断期間を検出できる検出モジュール604に結合され、検出の際に、分極電流がトリガーされる。測定モジュール602及び検出モジュール604は、両方とも、計算モジュール606に結合され、この計算モジュールは、各電解セルに対し、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するに要する時間tを個々に決定する。次いで、上述した実施形態のように、この時間tを使用して、セルの効率を計算する。
【0038】
1つの実施形態では、計算モジュールは、複数の電解装置特性を考慮しながら、数値シミュレーションにより与えられた値の非直線的な回帰から導出された実験モデルを使用して、セル効率対時間の式を計算する。
【0039】
別の実施形態では、計算は、CE=P1+P2+log(P3*t)+P4*tP5の形態の式を使用し、ここで、P1、P2、P3、P4及びP5は、回帰パラメータである。
【0040】
図6に示すモジュールは、単一アプリケーション508において設けられてもよいし、或いはプロセッサ506に結合された2つ以上のアプリケーションの組み合わせにおいて設けられてもよいことを理解されたい。個別のデータ信号接続を経て互いに通信する個別のコンポーネントのグループとしてブロック図に示されたが、当業者であれば、ハードウェア及びソフトウェアコンポーネントの組み合わせにより実施形態が構成され、あるコンポーネントは、ハードウェア又はソフトウェアシステムの所与の機能又は動作により具現化され、そして多くのデータ経路は、コンピュータアプリケーション又はオペレーティングシステム内のデータ通信により具現化されることが理解されよう。従って、図示された構造は、本発明の実施形態を効率良く教示するために設けられたものである。
【0041】
以上に述べた本発明の実施形態は、単なる例示に過ぎない。それ故、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって限定されるものとする。
【符号の説明】
【0042】
1:膜
2:カソード
3:アノード
4:第1の入口
6:第1の出口
7:第2の出口
8:別の出口
9:セル
11:アノード
12:カソード
500:コンピュータシステム
502:電解装置
504:メモリ
506:プロセッサ
508:アプリケーション
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解装置の単一セル電流効率を決定するための方法において、
電解装置の複数の単一セルの電圧を測定し、
単一セルに供給される電解電流を測定し、
遮断期間及び始動期間の一方を検出し、
各単一セルに対して、
分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定し、
時間tの関数としてセル電流効率を計算する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記セル電流効率の計算は、複数の電解装置特性を考慮しながら、数値シミュレーションにより与えられた値の非直線的な回帰から導出された実験モデルを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セル電流効率の計算は、P1、P2、P3、P4及びP5を回帰パラメータとすれば、CE=P1+P2+log(P3*t)+P4*tP5の形態の式を使用することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の電解装置特性は、分極電流レベル、アノード区画容積、膜面積、全負荷レベル、塩水の流量、塩水の酸性度、塩水のレドックス電位、苛性強度、電圧及びpHより成るグループから選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記単一セルの全てに対するセル電流効率を、所定の効率スレッシュホールドを満足しないセルを強調しながら表示することを更に含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記セルを強調することは、前記単一セルを3つのカテゴリーに分類することを含み、その3つのカテゴリーは、高い効率、低い性能及び欠陥である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電圧曲線の所定の発生点は、導関数がゼロの点に対応する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記電圧曲線の所定の発生点は、第2導関数がゼロの点に対応する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記電圧曲線の所定の発生点は、電圧が所定値に到達する点に対応する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記セル電流効率の計算は、各単一セルに対して特定の分極電流を使用することを含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
電解装置の単一セル電流効率を決定するためのシステムにおいて、
コンピュータシステムのプロセッサと、
前記プロセッサによりアクセスできるメモリと、
前記プロセッサに結合された少なくとも1つのアプリケーションであって、
電解装置の複数の単一セルの電圧を測定し、
単一セルに供給される電解電流を測定し、
遮断期間及び始動期間の一方を検出し、
各単一セルに対して、
分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定し、
時間tの関数としてセル電流効率を計算する、
ように構成されたアプリケーションと、
を備えたシステム。
【請求項12】
セル電流効率を表すデータを受け取って表示するためのディスプレイ装置を更に備えた、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記アプリケーションは、更に、請求項2ないし10のいずれかに対して構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
電解装置の単一セル電流効率を決定するためのインストラクションを含み、コンピュータ読み取り可能な媒体上に実施されるソフトウェア製品において、
電解装置の複数の単一セルの電圧及び電流測定値を受け取るための測定モジュールと、
前記測定モジュールに結合され、遮断期間及び始動期間の一方を検出するための検出モジュールと、
前記測定モジュール及び検出モジュールから入力を受け取り、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定すると共に、時間tの関数としてセル電流効率を計算するようにされた計算モジュールと、
を備えたソフトウェア製品。
【請求項15】
前記計算モジュールは、複数の電解装置特性を考慮しながら、数値シミュレーションにより与えられた値の非直線的な回帰から導出された実験モデルを使用して、セル電流効率を計算する、請求項14に記載のソフトウェア製品。
【請求項16】
前記計算モジュールは、P1、P2、P3、P4及びP5を回帰パラメータとすれば、CE=P1+P2+log(P3*t)+P4*tP5の形態の式を使用する、請求項15に記載のソフトウェア製品。
【請求項17】
前記電圧曲線の所定の発生点は、導関数がゼロの点に対応する、請求項14から16のいずれかに記載のソフトウェア製品。
【請求項18】
前記電圧曲線の所定の発生点は、第2導関数がゼロの点に対応する、請求項14から16のいずれかに記載のソフトウェア製品。
【請求項19】
前記電圧曲線の所定の発生点は、電圧が所定値に到達する点に対応する、請求項14から16のいずれかに記載のソフトウェア製品。
【請求項1】
電解装置の単一セル電流効率を決定するための方法において、
電解装置の複数の単一セルの電圧を測定し、
単一セルに供給される電解電流を測定し、
遮断期間及び始動期間の一方を検出し、
各単一セルに対して、
分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定し、
時間tの関数としてセル電流効率を計算する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記セル電流効率の計算は、複数の電解装置特性を考慮しながら、数値シミュレーションにより与えられた値の非直線的な回帰から導出された実験モデルを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セル電流効率の計算は、P1、P2、P3、P4及びP5を回帰パラメータとすれば、CE=P1+P2+log(P3*t)+P4*tP5の形態の式を使用することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の電解装置特性は、分極電流レベル、アノード区画容積、膜面積、全負荷レベル、塩水の流量、塩水の酸性度、塩水のレドックス電位、苛性強度、電圧及びpHより成るグループから選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記単一セルの全てに対するセル電流効率を、所定の効率スレッシュホールドを満足しないセルを強調しながら表示することを更に含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記セルを強調することは、前記単一セルを3つのカテゴリーに分類することを含み、その3つのカテゴリーは、高い効率、低い性能及び欠陥である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電圧曲線の所定の発生点は、導関数がゼロの点に対応する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記電圧曲線の所定の発生点は、第2導関数がゼロの点に対応する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記電圧曲線の所定の発生点は、電圧が所定値に到達する点に対応する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記セル電流効率の計算は、各単一セルに対して特定の分極電流を使用することを含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
電解装置の単一セル電流効率を決定するためのシステムにおいて、
コンピュータシステムのプロセッサと、
前記プロセッサによりアクセスできるメモリと、
前記プロセッサに結合された少なくとも1つのアプリケーションであって、
電解装置の複数の単一セルの電圧を測定し、
単一セルに供給される電解電流を測定し、
遮断期間及び始動期間の一方を検出し、
各単一セルに対して、
分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定し、
時間tの関数としてセル電流効率を計算する、
ように構成されたアプリケーションと、
を備えたシステム。
【請求項12】
セル電流効率を表すデータを受け取って表示するためのディスプレイ装置を更に備えた、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記アプリケーションは、更に、請求項2ないし10のいずれかに対して構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
電解装置の単一セル電流効率を決定するためのインストラクションを含み、コンピュータ読み取り可能な媒体上に実施されるソフトウェア製品において、
電解装置の複数の単一セルの電圧及び電流測定値を受け取るための測定モジュールと、
前記測定モジュールに結合され、遮断期間及び始動期間の一方を検出するための検出モジュールと、
前記測定モジュール及び検出モジュールから入力を受け取り、分極電流がトリガーされた後に電圧レベルが電圧曲線の所定の発生点に到達するのに要する時間tを決定すると共に、時間tの関数としてセル電流効率を計算するようにされた計算モジュールと、
を備えたソフトウェア製品。
【請求項15】
前記計算モジュールは、複数の電解装置特性を考慮しながら、数値シミュレーションにより与えられた値の非直線的な回帰から導出された実験モデルを使用して、セル電流効率を計算する、請求項14に記載のソフトウェア製品。
【請求項16】
前記計算モジュールは、P1、P2、P3、P4及びP5を回帰パラメータとすれば、CE=P1+P2+log(P3*t)+P4*tP5の形態の式を使用する、請求項15に記載のソフトウェア製品。
【請求項17】
前記電圧曲線の所定の発生点は、導関数がゼロの点に対応する、請求項14から16のいずれかに記載のソフトウェア製品。
【請求項18】
前記電圧曲線の所定の発生点は、第2導関数がゼロの点に対応する、請求項14から16のいずれかに記載のソフトウェア製品。
【請求項19】
前記電圧曲線の所定の発生点は、電圧が所定値に到達する点に対応する、請求項14から16のいずれかに記載のソフトウェア製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−524164(P2012−524164A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505009(P2012−505009)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000595
【国際公開番号】WO2010/118533
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511248216)ルシェルシュ 2000 インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000595
【国際公開番号】WO2010/118533
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511248216)ルシェルシュ 2000 インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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