説明

電解装置

【課題】簡単な構成で、電解質膜の損傷を可及的に阻止することを可能にする。
【解決手段】水電解装置10を構成する単位セル12は、電解質膜・電極構造体32をアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36により挟持する。アノード側給電体40と固体高分子電解質膜38との間には、多数の貫通孔44aが形成された保護シート部材44が介装される。貫通孔44aの両端には、固体高分子電解質膜38に向かって拡径する第1テーパ形状部45aと、アノード側給電体40に向かって拡径する第2テーパ形状部45bとが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、前記給電体にセパレータが積層される電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、アノード側電極に燃料ガス(主に水素を含有するガス、例えば、水素ガス)が供給される一方、カソード側電極に酸化剤ガス(主に酸素を含有するガス、例えば、空気)が供給されることにより、直流の電気エネルギを得ている。
【0003】
一般的に、燃料ガスである水素ガスを製造するために、水電解装置が採用されている。この水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設してユニットが構成されている。すなわち、ユニットは、実質的には、上記の燃料電池と同様に構成されている。
【0004】
そこで、複数のユニットが積層された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってユニットから排出される。
【0005】
この種の設備として、例えば、特許文献1に開示されている給電体が知られている。この特許文献1では、図15に示すように、粉末焼結部1と繊維焼結部2とを一体に結合することにより、二重構造給電体3が構成されている。
【0006】
粉末焼結部1は、チタン粉末が焼結されて形成される一方、繊維焼結部2は、チタン繊維シートが焼結されて形成されている。二重構造給電体3は、水素酸素発生装置の電解セルにおいて、固体電解質膜4に粉末焼結部1が圧接された状態で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−279481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1では、粉末焼結部1がチタン粉末を焼結させて形成されるため、前記粉末焼結部1は、粒子の凝集状態により開口にばらつきが生じ易く、開口径の分布が広範囲になってしまう。このため、二重構造給電体3を、特に、高圧水素を発生させる高圧水電解装置に適用すると、アノード側とカソード側との差圧によって固体電解質膜4が粉末焼結部1に圧接する際、前記固体電解質膜4に損傷等のダメージが生じるという問題がある。
【0009】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、電解質膜の損傷を可及的に阻止することが可能な電解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、前記給電体にセパレータが積層される電解装置に関するものである。この電解装置は、電解質膜と給電体との間には、多数の貫通孔が形成された保護シート部材が介装されるとともに、前記貫通孔の両端には、前記電解質膜に向かって拡径する第1テーパ形状部と、前記給電体に向かって拡径する第2テーパ形状部とが設けられている。
【0011】
また、給電体は、水が供給されるアノード側給電体と、前記水の電気分解により常圧よりも高圧な水素が得られるカソード側給電体とを備え、保護シート部材は、電解質膜と前記アノード側給電体との間に介装されることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る電解装置は、給電体には、多数の貫通孔が形成されるとともに、前記貫通孔の両端には、電解質膜に向かって拡径する第1テーパ形状部と、前記電解質膜から離間する方向に向かって拡径する第2テーパ形状部とが設けられている。
【0013】
さらにまた、給電体は、水が供給されるアノード側給電体と、前記水の電気分解により常圧よりも高圧な水素が得られるカソード側給電体とを備え、前記アノード側給電体に、貫通孔が形成されることが好ましい。
【0014】
また、アノード側給電体には、貫通孔に連通し且つ水を流通させる流路が一体に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電解質膜と給電体との間に介装される保護シート部材、又は前記給電体に複数の貫通孔が設けられており、前記貫通孔は、開口径の制御が容易に行われる。
【0016】
さらに、貫通孔の一端には、電解質膜に向かって拡径する第1テーパ形状部が設けられているため、前記貫通孔内での前記電解質膜のせん断及び伸びが良好に抑制される。これにより、簡単な構成で、電解質膜が損傷することを可及的に阻止することができる。
【0017】
しかも、貫通孔の他端には、給電体に向かって又は電解質膜から離間する方向に向かって拡径する第2テーパ形状部が設けられている。このため、貫通孔内に水が円滑に導入され、電解質膜に対して前記水を良好に供給するとともに、発生ガスの離脱が容易に遂行可能になる。これにより、簡単な構成で、水供給性及びガス離脱性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水電解装置の斜視説明図である。
【図2】前記水電解装置の一部断面側面図である。
【図3】前記水電解装置を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図4】前記単位セルの断面説明図である。
【図5】前記単位セルの要部拡大断面説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの要部拡大断面説明図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの要部拡大断面説明図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの要部拡大断面説明図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの断面説明図である。
【図10】本発明の第6の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの断面説明図である。
【図11】本発明の第7の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの断面説明図である。
【図12】前記単位セルを構成するアノード側給電流路部材の斜視説明図である。
【図13】前記アノード側給電流路部材の、図12中、XIII−XIII線断面図である。
【図14】本発明の第8の実施形態に係る水電解装置を構成するアノード側給電流路部材の断面説明図である。
【図15】特許文献1に開示されている給電体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水電解装置10は、高圧水素製造装置を構成しており、複数の単位セル12が水平方向(矢印A方向)又は鉛直方向(矢印B方向)に積層された積層体14を備える。積層体14の積層方向一端には、ターミナルプレート16a、絶縁プレート18a及びエンドプレート20aが、順次、配設される。積層体14の積層方向他端には、同様にターミナルプレート16b、絶縁プレート18b及びエンドプレート20bが、順次、配設される。
【0020】
水電解装置10は、例えば、矢印A方向に延在する複数のタイロッド22を介して円盤形状のエンドプレート20a、20b間を一体的に締め付け保持する。なお、水電解装置10は、エンドプレート20a、20bを端板として含む箱状ケーシング(図示せず)により一体的に保持される構成を採用してもよい。また、水電解装置10は、全体として略円柱体形状を有しているが、立方体形状等の種々の形状に設定可能である。
【0021】
図1に示すように、ターミナルプレート16a、16bの側部には、端子部24a、24bが外方に突出して設けられる。端子部24a、24bは、配線26a、26bを介して電源28に電気的に接続される。陽極(アノード)側である端子部24aは、電源28のプラス極に接続される一方、陰極(カソード)側である端子部24bは、前記電源28のマイナス極に接続される。
【0022】
図2〜図4に示すように、単位セル12は、円盤状の電解質膜・電極構造体32と、この電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36とを備える。アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36は、円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0023】
電解質膜・電極構造体32は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜38と、前記固体高分子電解質膜38の両側に配設されるアノード側給電体40及びカソード側給電体42とを備える。
【0024】
固体高分子電解質膜38の両面には、アノード電極触媒層40a及びカソード電極触媒層42aが形成される。アノード電極触媒層40aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層42aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0025】
アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%〜50%、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に設定される。
【0026】
図3及び図4に示すように、固体高分子電解質膜38とアノード側給電体40との間には、多数の貫通孔44aが形成された保護シート部材44が介装される。この保護シート部材44は、例えば、チタンシートで構成され、厚さが、例えば、20μm〜500μmの範囲内に設定される。チタンシートの表面粗さとしては、6.3μm以下、好ましくは、3.2μm以下に設定される。このチタンシートは、好ましくは、冷間圧延により成形される。
【0027】
貫通孔44aは、この貫通孔44aの分布幅がアノード側給電体40の孔部の分布幅よりも小さく設定される。貫通孔44aの一端には、固体高分子電解質膜38に向かって拡径する第1テーパ形状部45aが設けられる一方、前記貫通孔44aの他端には、アノード側給電体40に向かって拡径する第2テーパ形状部45bが設けられる。なお、貫通孔44aは、円形に限定されるものではなく、固体高分子電解質膜38にダメージを与えない形状であればよく、例えば、楕円形の他、鋭利な突起形状がなければ、種々の形状に設定可能である。
【0028】
図5に示すように、第1テーパ形状部45aのテーパ角度θは、5°<θ<85°の範囲、より好ましくは、30°<θ<60°の範囲内に設定される。第1テーパ形状部45aの深さL及び貫通孔44aの内径Dは、固体高分子電解質膜38に損傷を与えることがない寸法に設定される。貫通孔44aは、種々の製法により形成可能であり、例えば、エッチングの他、両側からのマイクロドリル、電子ビーム、レーザー又は切削等の加工を採用することができる。
【0029】
図3に示すように、単位セル12の外周縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔46と、反応により生成された酸素及び使用済みの水を排出するための排出連通孔48と、反応により生成された水素を流すための水素連通孔50とが設けられる。
【0030】
アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34aには、水供給連通孔46に連通する供給通路52aと、排出連通孔48に連通する排出通路52bとが設けられる。面34aには、供給通路52a及び排出通路52bに連通する第1流路54が設けられる。この第1流路54は、アノード側給電体40の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される(図2及び図4参照)。
【0031】
図3に示すように、カソード側セパレータ36の電解質膜・電極構造体32に向かう面36aには、水素連通孔50に連通する排出通路56が設けられる。面36aには、排出通路56に連通する第2流路58が形成される。この第2流路58は、カソード側給電体42の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される(図2及び図4参照)。
【0032】
アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36の外周端部を周回して、シール部材60a、60bが一体化される。このシール部材60a、60bには、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0033】
図1及び図2に示すように、エンドプレート20aには、水供給連通孔46、排出連通孔48及び水素連通孔50に連通する配管62a、62b及び62cが接続される。配管62cには、図示しないが、背圧弁(又は電磁弁)が設けられており、水素連通孔50に生成される水素の圧力を高圧に維持することができる。
【0034】
このように構成される水電解装置10の動作について、以下に説明する。
【0035】
図1に示すように、配管62aから水電解装置10の水供給連通孔46に水が供給されるとともに、ターミナルプレート16a、16bの端子部24a、24bに電気的に接続されている電源28を介して電圧が付与される。このため、図3に示すように、各単位セル12では、水供給連通孔46からアノード側セパレータ34の第1流路54に水が供給され、この水がアノード側給電体40内に沿って移動する。
【0036】
従って、水は、アノード電極触媒層40aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜38を透過してカソード電極触媒層42a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0037】
このため、カソード側セパレータ36とカソード側給電体42との間に形成される第2流路58に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔46よりも高圧に維持されており、水素連通孔50を流れて水電解装置10の外部に取り出し可能となる。一方、第1流路54には、反応により生成した酸素と、使用済みの水とが流動しており、これらが排出連通孔48に沿って水電解装置10の外部に排出される。なお、第2流路58は、第1流路54よりも圧力が高い。
【0038】
この場合、第1の実施形態では、図4に示すように、固体高分子電解質膜38とアノード側給電体40との間に、複数の貫通孔44aを設けた保護シート部材44が介装されている。このため、高圧水素ガスが生成される第2流路58と、水及び酸素が流通する常圧の第1流路54との圧力差によって、固体高分子電解質膜38がアノード側給電体40に向かって押圧される際、この固体高分子電解質膜38が前記アノード側給電体40に直接接触することがない。
【0039】
さらに、保護シート部材44に設けられる貫通孔44aは、開口径の制御が容易に行われる。従って、保護シート部材44では、貫通孔44aの開口径を狭小な範囲内に設定することができ、アノード側給電体40の分布幅よりも著しく狭小な分布幅に設定することが可能になる。
【0040】
さらにまた、貫通孔44aの一端には、固体高分子電解質膜38に向かって拡径する第1テーパ形状部45aが設けられている。このため、図5に示すように、貫通孔44a内での固体高分子電解質膜38のせん断及び伸びが良好に抑制される。
【0041】
しかも、貫通孔44aの他端には、アノード側給電体40に向かって拡径する第2テーパ形状部45bが設けられている。これにより、図5に示すように、アノード側給電体40から貫通孔44a内に水が円滑に導入され、固体高分子電解質膜38のアノード電極触媒層40aに対して前記水を良好に供給することが可能になる。一方、アノード電極触媒層40aで生成される酸素は、貫通孔44aの第2テーパ形状部45bに沿ってアノード側給電体40に円滑に移動し、前記酸素の離脱が容易に遂行される。
【0042】
従って、第1の実施形態では、固体高分子電解質膜38に向かって拡径する第1テーパ形状部45a及びアノード側給電体40に向かって拡径する第2テーパ形状部45bを有する貫通孔44aを設けるだけでよい。これにより、簡単な構成で、固体高分子電解質膜38が損傷することを可及的に阻止し、且つ水供給性及びガス離脱性の向上を図ることができるという効果が得られる。
【0043】
なお、第1の実施形態では、少なくとも第1テーパ形状部45aの固体高分子電解質膜38側の開口形状及び貫通孔44aの開口断面形状は、円形状が望ましいが、これに限定されるものではない。固体高分子電解質膜38にダメージを与えることのない形状であれば、例えば、楕円形状や四角形状等であってもよく、種々選定可能である。一方、第2テーパ形状部45bの形状は、円形状の他、楕円形状、三角形状、又は多角形状等、種々の形状に設定することができる。
【0044】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セル70の要部拡大断面説明図である。
【0045】
なお、第1の実施形態に係る水電解装置10を構成する単位セル12と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態以降においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0046】
単位セル70は、固体高分子電解質膜38とアノード側給電体40との間に介装される保護シート部材72を備える。保護シート部材72は、例えば、チタンシートで構成され、複数の貫通孔72aを設ける。
【0047】
貫通孔72aの一端には、固体高分子電解質膜38に向かって拡径する第1テーパ形状部74aが設けられるとともに、前記貫通孔72aの他端には、アノード側給電体40に向かって拡径する第2テーパ形状部74bが設けられる。第1テーパ形状部74a及び第2テーパ形状部74bは、断面開口形状が略半円形を有する湾曲面によって構成される。
【0048】
この第2の実施形態では、保護シート部材72に複数の貫通孔72aが設けられるとともに、前記貫通孔72aの両端には、固体高分子電解質膜38に向かって拡径する第1テーパ形状部74aと、アノード側給電体40に向かって拡径する第2テーパ形状部74bとが設けられている。従って、第2の実施形態は、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる他、水及び酸素が、湾曲面によって貫通孔72a内を円滑に流通することができる。
【0049】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セル80の要部拡大断面説明図である。
【0050】
単位セル80は、固体高分子電解質膜38とアノード側給電体40との間に介装される保護シート部材82を備える。保護シート部材82は、複数の貫通孔82aを設けるとともに、前記貫通孔82aは、固体高分子電解質膜38に向かって拡径する第1テーパ形状部84aと、アノード側給電体40に向かって拡径する第2テーパ形状部84bとを有する。
【0051】
第1テーパ形状部84aの固体高分子電解質膜38側の最大開口径D1は、第2テーパ形状部84bのアノード側給電体40側の最大開口径D2よりも小径に設定される(D1<D2)。従って、保護シート部材82は、厚みを増加させることがなく、水の供給を一層円滑に行うことが可能になる。
【0052】
図8は、本発明の第4の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セル90の要部拡大断面説明図である。
【0053】
単位セル90は、固体高分子電解質膜38とアノード側給電体40との間に介装される保護シート部材92とを備える。保護シート部材92は、複数の貫通孔92aを設けるとともに、前記貫通孔92aは、固体高分子電解質膜38に向かって拡径する湾曲面状の第1テーパ形状部94aと、アノード側給電体40に向かって拡径する湾曲面状の第2テーパ形状部94bとを有する。第1テーパ形状部94aの最大開口径D3は、第2テーパ形状部94bの最大開口径D4よりも小径に設定される(D3<D4)。
【0054】
上記の第3及び第4の実施形態では、上述した第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
図9は、本発明の第5の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セル100の断面説明図である。
【0056】
単位セル100は、アノード側給電体40に代えて、アノード側給電プレート102を備える。このアノード側給電プレート102には、複数の貫通孔102aが、例えば、エッチング、電子ビーム、レーザー、ドリル、放電、パンチング、またはエキスパンドメタル等による微細多孔加工を施すことにより、設けられる。貫通孔102aの孔径>保護シート部材44の貫通孔44aの孔径に設定される。
【0057】
なお、第5の実施形態では、第1の実施形態の保護シート部材44を用いているが、これに代えて、第2〜第4の実施形態を適用することも可能である。
【0058】
図10は、本発明の第6の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セル110の断面説明図である。
【0059】
単位セル110は、アノード側セパレータ34と固体高分子電解質膜38との間に介装されるアノード側給電プレート112を備える。アノード側給電プレート112は、例えば、第1の実施形態に用いられているアノード側給電体40及び保護シート部材44に代えて採用されており、実質的には、第3の実施形態に用いられる保護シート部材82、又は、第4の実施形態に用いられる保護シート部材92を適用することができる。
【0060】
これにより、第6の実施形態では、上記の第1〜第5の実施形態と同様の効果が得られる他、部品数の削減が図られ、構成の簡素化が可能になるという利点がある。
【0061】
図11は、本発明の第7の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セル120の断面説明図である。
【0062】
単位セル120は、固体高分子電解質膜38とアノード側セパレータ34との間に介装されるアノード側流路部材122を備える。図12及び図13に示すように、アノード側給電流路部材122は、例えば、チタンプレートで構成された略円盤状を有する。
【0063】
アノード側給電流路部材122の固体高分子電解質膜38に対向する面には、複数の貫通孔122aが形成される。貫通孔122aは、固体高分子電解質膜38に向かって拡径する第1テーパ形状部124aと、この固体高分子電解質膜38から離間する方向に向かって拡径する第2テーパ形状部124bとを有する。アノード側給電流路部材122の逆側の面には、互いに並列される複数の第1流路126が形成される。第1流路126は、所定の第2テーパ形状部124bを連通することにより直線状に構成される。
【0064】
この第7の実施形態では、上記の第1〜第6の実施形態と同様の効果が得られる他、例えば、第1の実施形態における第1流路54、アノード側給電体40及び保護シート部材44に代えて、単一のアノード側給電流路部材122を用いることができる。これにより、単位セル120全体の構成が、一層簡素化されるという利点がある。
【0065】
図14は、本発明の第8の実施形態に係る水電解装置を構成するアノード側給電流路部材130の断面説明図である。
【0066】
アノード側給電流路部材130は、上記の第7の実施形態のアノード側給電流路部材122と略同様に構成され、複数の貫通孔130aを設ける。貫通孔130aは、湾曲形状を有する第1テーパ形状部132aと、湾曲形状を有する第2テーパ形状部132bとを有する。第2テーパ形状部132bを所定の部位毎に連通することによって、第1流路134が形成される。従って、第8の実施形態では、上記の第7の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0067】
10…水電解装置
12、70、80、90、100、110、120…単位セル
14…積層体 16a、16b…ターミナルプレート
18a、18a…絶縁プレート 20a、20b…エンドプレート
24a、24b…端子部 28…電源
32…電解質膜・電極構造体 34…アノード側セパレータ
36…カソード側セパレータ 38…固体高分子電解質膜
40…アノード側給電体 42…カソード側給電体
44、72、82、92…保護シート部材
44a、72a、82a、92a、102a、122a、130a…貫通孔
45a、45d、74a、74b、84a、84b、94a、94b、124a、124b、132a、132b…テーパ形状部
46…水供給連通孔 48…排出連通孔
50…水素連通孔 54、58、126、134…流路
102、112…アノード側給電プレート
122、130…アノード側給電流路部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に給電体が設けられ、前記給電体にセパレータが積層される電解装置であって、
前記電解質膜と前記給電体との間には、多数の貫通孔が形成された保護シート部材が介装されるとともに、
前記貫通孔の両端には、前記電解質膜に向かって拡径する第1テーパ形状部と、
前記給電体に向かって拡径する第2テーパ形状部と、
が設けられることを特徴とする電解装置。
【請求項2】
請求項1記載の電解装置において、前記給電体は、水が供給されるアノード側給電体と、
前記水の電気分解により常圧よりも高圧な水素が得られるカソード側給電体と、
を備え、
前記保護シート部材は、前記電解質膜と前記アノード側給電体との間に介装されることを特徴とする電解装置。
【請求項3】
電解質膜の両側に給電体が設けられ、前記給電体にセパレータが積層される電解装置であって、
前記給電体には、多数の貫通孔が形成されるとともに、
前記貫通孔の両端には、前記電解質膜に向かって拡径する第1テーパ形状部と、
前記電解質膜から離間する方向に向かって拡径する第2テーパ形状部と、
が設けられることを特徴とする電解装置。
【請求項4】
請求項3記載の電解装置において、前記給電体は、水が供給されるアノード側給電体と、
前記水の電気分解により常圧よりも高圧な水素が得られるカソード側給電体と、
を備え、
前記アノード側給電体に、前記貫通孔が形成されることを特徴とする電解装置。
【請求項5】
請求項4記載の電解装置において、前記アノード側給電体には、前記貫通孔に連通し且つ前記水を流通させる流路が一体に形成されることを特徴とする電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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