説明

電解還元合成用電極および有機化合物の電解還元合成方法

【課題】安価で毒性の低い材料を使用し、有機化合物の高収率で選択性の高い合成が可能である電解還元合成用電極を提供する。
【解決手段】電解還元合成用電極は、マイエナイト型化合物のフリー酸素イオンの一部ないし全部が電子に置換された導電性マイエナイト型化合物(例えば、[Ca24Al28644+(4e))を、少なくとも電極表面に含有しており、有機化合物の電解還元合成の陰極3として使用される電極である。有機化合物の電解還元合成としては、ベンズアルデヒドの電解還元によるヒドロキシベンゾインの合成反応や、R−113の電解還元によるクロロトリフルオロエチレン(CTFE)の合成反応を例示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解還元合成に用いられる電極、およびその電極を使用する有機化合物の電解還元合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解合成法は、クリーンな電気エネルギーを利用し、反応試薬を用いずに合成を行うことができる化学合成手段のひとつであり、電流密度により反応速度を制御することができ、また電位を規制することで生成物を選択できる特徴を有している。また、合成反応が電極表面での不均一相反応であるため、大量生産には不向きであるが、選択的な合成が可能であるため、各種の有機化合物の電解による酸化・還元合成が提案されている。
【0003】
有機化合物の電解合成において、電極として使用される材料は、生成物の収率と選択性の点で十分に満足できる合成を可能にするとともに、長寿命を達成しかつ処理表面の汚染を防止するために耐食性を有するものであることが望ましい。従来から、陽極材料としては、白金、炭素(グラファイト、ガラス状炭素)、酸化鉛、酸化ニッケルなどが使用され、陰極材料としては、白金、銀、炭素(グラファイト、ガラス状炭素)、チタン、亜鉛、銅、鉛、水銀などが使用されている(特許文献1、特許文献2参照。)。
【0004】
しかし、これらの電極材料の中で白金、銀などの貴金属は高価であるため、大量に生産し使用するには経済性の点で難点があった。また、鉛や水銀などの金属は毒性が強いため、作業者の安全上の問題があるばかりでなく、合成された有機化合物へのこれらの金属の混入を回避する対策が必要である、という問題があった。
【0005】
したがって、有機化合物の電解合成において、生成物の収率および選択性の点で十分に満足できる合成を可能とし、かつ安価で毒性の低い電極材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−180288号公報
【特許文献2】特開2002−363784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、安価で毒性の低い材料を使用し、有機化合物の高収率で選択性の高い合成が可能である電解還元合成用電極と、この電極を使用する有機化合物の電解還元合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電解還元合成用電極は、有機化合物の電解還元合成に用いられる陰極であって、少なくともその表面に、マイエナイト型化合物のフリー酸素イオンの一部または全部が電子に置換された導電性マイエナイト型化合物を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の有機化合物の電解還元合成方法は、前記した本発明の電解還元合成用電極を陰極として使用し、電解還元反応により有機化合物を合成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電解還元合成用電極によれば、高価な金属材料あるいは毒性が高い金属材料が使用されていないので、安全かつ安価で大量に電極を製造し使用することができる。また、この電解還元合成用電極を使用して電解還元反応を行わせることにより、白金などの高価な貴金属の電極を使用した場合と同等の収率ならびに選択率で、有機化合物を合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電解還元合成用電極を備えた無隔膜型電解還元装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の電解還元合成用電極を備えた隔膜型電解還元装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る電解還元合成用電極は、後述するマイエナイト型化合物のフリー酸素イオンの一部ないし全部が電子に置換された導電性マイエナイト型化合物を、少なくとも電極表面に含有しており、有機化合物の電解還元合成の陰極として使用される電極である。
【0013】
本発明の実施形態において、マイエナイト型化合物とは、化学式:12CaO・7Alで表される化合物(以下、C12A7と記す。)、およびこの化合物と同等の結晶構造を有する化合物をいう。なお、C12A7は、Ca12Al1433またはCa24Al2866と表記されることがある。
【0014】
このマイエナイト型化合物は、直径約0.4nmの空隙(ケージ)が三次元的に連結された特徴的な結晶構造を有する。このケージを構成する骨格は正電荷を帯びており、単位格子当たり12個のケージが形成されている。結晶の電気的中性を満たすために、ケージの全数の1/6は、酸素イオンによって占められているが、この酸素イオンは、骨格を構成する他の酸素イオンとは化学的に異なる特性を持つことから、特にフリー酸素イオンと呼ばれる。このことから、C12A7の結晶は、[Ca24Al28644+・2O2−と表記することができる。
【0015】
実施形態において、マイエナイト型化合物としては、C12A7の結晶格子の骨格とこの骨格により形成される前記ケージ構造が保持される範囲で、C12A7結晶骨格のCa原子やAl原子の一部ないし全部が他の原子に置換された化合物であってもよい。また、ケージに包接されているフリー酸素イオンの一部ないし全部が他の陰イオンにより置換された同型化合物であってもよい。
【0016】
C12A7以外のマイエナイト型化合物としては、具体的には、以下に記載する(1)〜(4)の化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
(1)C12A7の結晶のCa原子の一部ないし全部が、Sr、Mg、Baなどの金属原子に置換されたマイエナイト型化合物:例えば、Ca原子の一部ないし全部がSrに置換された化合物として、ストロンチウムアルミネート(Sr12Al1433)や、CaとSrの混合比が任意に調整された混晶であるカルシウムストロンチウムアルミネート(Ca12−xSrAl1433)(xは1〜11の整数であり、平均値は0を超え12未満の数である。)などがある。
【0018】
(2)C12A7の結晶のAl原子の一部ないし全部が、Si、Ge、Ga、In、Bなどの原子に置換されたマイエナイト型化合物:例えば、Ca12Al10Si35などがある。
【0019】
(3)C12A7の結晶、または上記(1)、(2)の化合物における金属原子や非金属原子(ただし、酸素原子を除く)の一部が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどの遷移金属原子や、典型金属原子(例えば、Li、Na、Kなどのアルカリ金属原子)などに置換されたマイエナイト型化合物。なお、遷移金属原子には、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどの希土類原子も含まれる。
【0020】
(4)上記(1)〜(3)のマイエナイト型化合物において、ケージに包接されているフリー酸素イオンの一部ないし全部が他の陰イオンにより置換されている化合物:他の陰イオンとしては、例えば、H、H、H2−、O、O、OH、F、Cl、S2−などがある。
【0021】
本発明の実施形態における導電性マイエナイト型化合物は、前記マイエナイト型化合物のフリー酸素イオン(他の陰イオンを有する場合は、その陰イオンを含む。)の一部ないし全部が電子によって置換された化合物をいう。置換された電子はケージに包接されている。導電性マイエナイト型化合物においては、ケージに包接されている電子はケージに緩く束縛され、結晶中を自由に動くことができるので、導電性を示す。フリー酸素イオンの全てが電子で置き換えられたC12A7は、[Ca24Al28644+(4e)と表記することができる。
【0022】
実施形態における導電性マイエナイト型化合物の電子密度は、1×1018/cm以上であることが好ましく、1×1020/cm〜2.3×1021/cmの範囲であることがより好ましい。導電性マイエナイト型化合物の電気伝導率としては、単結晶では最大1000S/cm程度が可能である。電子密度が1×1018/cmのときの電気伝導率は0.1S/cmであるので、導電性マイエナイト型化合物の電気伝導率については、0.1S/cm以上であることが好ましく、1.0S/cm以上であることがより好ましい。
【0023】
このような導電性マイエナイト型化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば以下に示す方法を採ることにより、内包される電子数が多く、導電率の高い導電性マイエナイト型化合物を得ることができる。まず、酸化カルシウム(CaO)と酸化アルミニウム(Al)を、11.8:7.2〜12.2:6.8のモル比となるように調合し混合した原料を、空気中で1200〜1350℃の温度に加熱して固相反応させることにより、C12A7を製造する。上記CaOの一部ないし全部をSrOに置換した原料を使用し、同様の条件で製造することにより、前記したストロンチウムアルミネートやカルシウムストロンチウムアルミネートを製造することができる。次いで、こうして得られたマイエナイト型化合物を、一旦粉砕し粉砕後の粉を加圧してペレット状にし、再び1200〜1400℃に加熱して保持し焼き固める。このペレットを、炭素、金属チタン、金属カルシウム、金属アルミニウムのいずれか1種類以上の粉末や破片とともに蓋付き容器に入れ、容器内を低酸素分圧に保った状態で1200℃以上の高温で熱処理することにより、導電性マイエナイト型化合物を得ることができる。
【0024】
本発明の実施形態の電解還元合成用電極においては、少なくとも電極表面に導電性マイエナイト型化合物が含有されていればよい。すなわち、電極全体を前記した導電性マイエナイト型化合物により形成してもよいが、白金、銀、金、チタン、亜鉛、銅、鉛などの金属や炭素(グラファイト、ガラス状炭素)から成る給電体(電極基体)の表面に前記導電性マイエナイト型化合物の被覆層を設け、電極としてもよい。導電性マイエナイト型化合物の被覆層を形成するには、導電性マイエナイト型化合物を含む分散液(スラリー)を、電極基体の表面にスピンコート、スプレイコート、ダイコート、スクリーン印刷、グラビア印刷などの方法で塗布した後、加熱・焼成する方法を採ることができる。
【0025】
次に、実施形態の電解還元合成用電極を陰極として使用し、電解還元反応により有機化合物を合成する方法について説明する。まず、電解還元合成装置について説明する。
【0026】
図1は、有機化合物の電解還元合成方法に用いる無隔膜型(一室型)電解還元合成装置の構成を概略的に示す図である。この図において、符号1は、例えば円筒状の電解槽を示し、この電解槽1内に、白金から成る陽極2と、導電性マイエナイト型化合物[Ca24Al28644+(4e)(以下、C12A7;eと示す。)から成る陰極3が、互いに離間して配置されている。これらの陽極2および陰極3の上端部は、いずれも給電用の導線4を介して直流電源5に接続されている。そして、このような電解槽1内には、少なくとも陽極2および陰極3の全体が浸漬するように電解液6が満たされている。また、電解槽1内の底部には、例えば磁力により回転する撹拌子7が配置されている。
【0027】
このように構成される電解還元合成装置により有機化合物の還元合成を行うには、原料である有機化合物(基質)を電解槽1内の電解液6に加え、撹拌子7により電解液6を撹拌しながら、直流電源5により陽極2と陰極3の間に一定の電流を流す。こうして両電極間に通電すると、電解槽1内の反応原料である基質が導電性マイエナイト型化合物から成る陰極3の表面で還元され、この還元反応により所望の有機化合物が合成される。
【0028】
図2は、電解還元合成装置の別の例である隔膜型電解還元合成装置の構成を概略的に示す図である。この電解還元合成装置は、図2に示すように、例えば円筒状の2本の電解筒を有し、各電解筒は陽極室8と陰極室9を構成している。陽極室8と陰極室9とは連結筒10により連結されている。連結筒10内には、イオン交換膜のような隔膜11が配置されており、この隔膜11により陽極室8と陰極室9は分隔されている。また、陰極室9において反応生成物としてガスが発生する場合には、発生するガス成分を捕集するために、冷却トラップ20とプラスチックバック21を接続することが好ましい。
【0029】
陽極室8内には白金から成る陽極12が配置されるとともに、少なくとも陽極12の全体が浸漬する深さまで陽極液13が満たされている。また、陰極室9内には導電性マイエナイト型化合物(C12A7;e)から成る陰極14が配置されるとともに、少なくとも陰極14の全体が浸漬する深さまで陰極液15が満たされている。そして、陽極12と陰極14は給電用の導線16を介して直流電源17に接続されている。さらに、陽極室8内で陽極12の下方には、陽極液13を撹拌するための撹拌子18が配置されており、陰極室9内で陰極14の下方には、陰極液15を撹拌するための撹拌子19が配置されている。
【0030】
このように構成される隔膜型電解還元合成装置により有機化合物の還元合成を行うには、原料である有機化合物(基質)を陰極室9内の陰極液15に加え、撹拌子18,19によりそれぞれ陽極液13および陰極液15を撹拌しながら、直流電源17により陽極12と陰極14の間に一定の電流を流す。こうして両電極間に通電すると、陰極室9内の反応原料である基質が導電性マイエナイト型化合物から成る陰極14の表面で還元され、この還元反応により所望の有機化合物が合成される。
【0031】
本発明において、電解還元合成の原料である反応基質には、還元されうる基を有する全ての有機化合物が含まれる。また、電解還元合成反応の種類としては、“Electroorganic Reduction Synthesis” (S. Torii, Wiley-VHC, 2006)に記載されている反応が挙げられる。例えば、アルデヒド類やケトン類のアルコールへの還元反応やカップリング反応、あるいは含ハロゲン化合物の脱ハロゲン化反応などが挙げられるが、これに限定されない。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
図1に示す無隔膜型の電解還元合成装置を使用し、以下に示す、ベンズアルデヒドの電解還元によるヒドロベンゾインの合成を行った。
【化1】

【0034】
すなわち、図1の電解還元合成装置において、陽極2を13mm×12mmの白金板(厚さ0.1mm)とし、陰極3を15mm×10mmのC12A7;eから成る板状体(厚さ1.0mm)とした。そして、電解液6として、0.1Mのテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(BuNBF)−N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(15ml)を使用し、電解槽1内に基質であるベンズアルデヒド1.5mmolを仕込んだ。電解槽1内の液を撹拌子7により撹拌しながら、15mAの電流を総通電量が1.5mFになるまで通電した。得られた溶液に水を加えた後、反応生成物を塩化メチレンにより抽出した。次いで、抽出物を無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、ヒドロベンゾインを得た。得られたヒドロベンゾインの収率を算出したところ、68%であった。
【0035】
(比較例1)
図1に示す電解還元合成装置において、陰極3として、C12A7;eから成る板状体の代わりに、13mm×12mmの白金板を使用した。それ以外は、実施例1と同様にして電解還元合成を行なったところ、得られたヒドロベンゾインの収率は31%であった。
【0036】
(実施例2,比較例2〜4)
図2に示す隔膜型の電解還元合成装置を使用し、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(R−113)の電解還元によるクロロトリフルオロエチレン(CTFE)の合成を行った。
【化2】

【0037】
図2の電解還元合成装置において、15mm×20mm(厚さ0.1mm)の白金板を陽極12とするとともにし、陰極14として、表1に示す材料から成る板状体をそれぞれ使用した。すなわち、実施例2では15mm×20mm(厚さ1.0mm)のC12A7;eから成る板状体を、比較例2では15mm×20mm(厚さ0.1mm)の白金板を、比較例3では17mm×17mm(厚さ3mm)のグラッシーカーボン(ガラス状炭素)の板を、比較例4では13mm×12mm(厚さ0.1mm)の銅板をそれぞれ使用した。また、陽極液13としては、塩化アンモニウムの飽和水溶液(15ml)を、陰極液15としては、0.1Mのテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(BuNBF)−メタノール溶液(15ml)をそれぞれ使用し、隔膜11としてはナフィオンN−324(デュポン社の商品名)を用いた。
【0038】
そして、16mmolのR−113を陰極室9に仕込んだ後、陰極室9および陽極室8内の液を撹拌子19,18によりそれぞれ撹拌しながら、電圧が30Vを超えないように電流値を調整しながら、総通電量が32mFになるまで通電した。通電中は−78℃に冷却した冷却トラップ20により気化したガス成分を捕集・回収した。
【0039】
反応終了後、冷却トラップ20を常温に戻し、気化したガス成分をプラスチックバック21に捕集した。なお、プラスチックバック21としては、テドラー(デュポン社のポリフッ化ビニル系樹脂の商品名)製のバックを使用した。次いで、反応後の陰極液14と、冷却トラップ20内の液およびテドラー製のバックに回収されたガス成分を、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した。この分析によって、CTFEとともに、式:
【化3】

で示されるトリフルオロエチレン(以下、R−1123と示す。)、および式:
【化4】

で示される1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(R−123a)が生成していることがわかった。
【0040】
そして、陰極液15に関しては、内部標準法を用いたガスクロマトグラフィー分析により、各成分(反応の基質であるR−113と生成されたCTFE、および副生成物であるR−1123およびR−123a)の含有量(モル量)を算出した。また、冷却トラップ20内の液およびテドラーバック捕集物に関しては、ガスクロマトグラフィーの面積比をファクター補正して重量比を算出し、重量比に回収総重量(g)を掛けることで、各成分の重量およびモル量を算出した。そして、生成されたCTFE、R−1123およびR−123aの選択率、CTFEの収率を、以下の式によりそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
【0041】
・選択率(%)=(各生成物のモル量)/(各生成物のモル量の総和)×100
・CTFEの収率(%)
=(CTFEのモル量)/(原料であるR−113の仕込み量(モル))×100
【0042】
【表1】

【0043】
表1の結果から、実施例2と比較例2〜4とでは、反応生成物の選択率とCTFEの収率に大きな差異はなく、陰極材料として導電性マイエナイト型化合物を使用した場合に、白金、ガラス状炭素、銅の各材料から成る陰極を用いた場合と同等の結果が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の電解還元合成用陰極においては、高価な金属材料あるいは毒性が高い金属材料が使用されていないので、安全かつ安価に電極を製造し使用することができ、各種の有機化合物の電解還元合成反応の電極(陰極)として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…電解槽、2,12…陽極、3,14…陰極、4,16…給電用導線、5,17…直流電源、6…電解液、7,18,19…撹拌子、8…陽極室、9…陰極室、11…隔膜、13…陽極液、15…陰極液、20…冷却トラップ、21…プラスチックバック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物の電解還元合成に用いられる陰極であって、少なくともその表面に、マイエナイト型化合物のフリー酸素イオンの一部または全部が電子に置換された導電性マイエナイト型化合物を含有することを特徴とする電解還元合成用電極。
【請求項2】
前記導電性マイエナイト型化合物の電子密度は1×1018/cm以上である請求項1に記載の電解還元合成用電極。
【請求項3】
電極全体が前記導電性マイエナイト型化合物により構成されている請求項1または2に記載の電解還元合成用電極。
【請求項4】
給電用基体の表面に、前記導電性マイエナイト型化合物の層が設けられている請求項1または2に記載の電解還元合成用電極。
【請求項5】
請求項1に記載の電解還元合成用電極を陰極として使用し、電解還元反応により有機化合物を合成することを特徴とする有機化合物の電解還元合成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−261086(P2010−261086A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114402(P2009−114402)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】