説明

電解銅メッキにおいて余分に溶け出す銅の回収装置

【目的】 タンク内に水平に収容される被製版ロールを受取ることができ、タンク内に腐食液に満たして被製版ロールを浸漬して回転しメッキ、腐食、現像、脱脂、水洗、或いはレジスト剥離等の腐食装置を行う,被製版ロールの腐食装置。
【構成】 回収槽2から硫酸銅と硫酸と光沢剤及び塩素イオンを含んだ銅メッキ液をメッキ槽1に供給してオーバーフローする銅メッキ液を回収槽2に回収するとともに、メッキ槽1内の含燐銅ボールBを陽極としかつメッキ槽1内の被メッキ製品Wを陰極としてメッキ電流を流して電解銅メッキを行う銅メッキ装置において、回収槽2に酸化イリジウム製陽極板3と銅製陰極板4とを備えて陽極板3と銅製陰極板4の間に銅回収電流を流すことにより、前記銅メッキ電流により含燐銅ボールBから溶け出す銅の中、前記被メッキ製品Wをメッキする銅の量よりも余分の量を銅製陰極板4にメッキさせて回収する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案が属する技術分野】
本考案は、電解銅メッキ装置に付属設備される,電解銅メッキにおいて余分に溶け出す銅の回収装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の銅メッキ装置は、メッキ槽と回収槽を上下二段に備え下側の回収槽から硫酸銅と硫酸と光沢剤及び塩素イオンを含んだ銅メッキ液を上側のメッキ槽に供給して貯留しオーバーフローする銅メッキ液を回収槽に回収するように構成されているとともに、メッキ槽内の含燐銅ボールを陽極としかつメッキ槽内の被メッキ製品を陰極としてメッキ電流を流して電解銅メッキを行うように構成されていた。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
銅メッキ液の組成は、硫酸銅が250g/l、硫酸が 50g/l、光沢剤が適量、及び塩素イオンが100mg/l の割合が良好である。電解銅メッキを行うと、銅メッキ電流により含燐銅ボールから溶け出す銅の量が被メッキ製品をメッキする銅の量よりも多いため、銅メッキ液の組成は、硫酸銅が増量することになる。硫酸銅が300g/lを越えると、含燐銅ボールの表面に銅が析出するようになる。すると、含燐銅ボールは銅メッキ電流により溶け出すことができなくなり、電解銅メッキが行えなくなる。このため、従来は二つの解決方法により対処していた。
一つの解決方法は、硫酸銅が300g/lになった銅メッキ液の一部を回収槽から抜いて等量の水を加えて硫酸銅が250g/lとなる銅メッキ液に調整していた。具体的な量としては、硫酸銅が300g/lになった銅メッキ液1,000 リットルに対して 200リットルの液抜きをして 200リットルの水を加えていた。このような濃度調整を頻繁に行うことは面倒なので改善が要望されていた。また、液抜きをした 200リットルの銅メッキ液の廃液処理の必要も生じていた。
他の解決方法は、回収槽に鉛製陽極板と銅製陰極板とを備えて鉛製陽極板と銅製陰極板の間に銅回収電流を流すことにより、前記銅メッキ電流により含燐銅ボールから溶け出す銅の中、前記被メッキ製品をメッキする銅の量よりも余分の量を銅製陰極板にメッキさせて回収していた。この反応は次のようになる。
CuSO4 +H2 O→Cu2 +H2 SO4 +1/2 O2 しかしながら、この化学反応は、鉛陽極板の表面の電位が2.07ボルトと添加剤の分解電圧の1.7ボルトよりも高いために、鉛陽極板の表面で酸素が十分に発生せず添加剤が分解する化学反応が並行して生じてしまい、添加剤の追加が必要であった。
それ故、添加剤を追加することが原因でメッキ製品にはピット(メッキが行われないピンホール)やブツ(突起)が生じてメッキ条件を悪化していた。
【0004】
本願考案は、上述した点に鑑み案出したもので、添加剤が分解する化学反応が生ずる惧れがなく、銅イオン濃度を自在に管理でき、銅メッキ液の液抜き・廃液処理が不要である電解銅メッキにおいて余分に溶け出す銅の回収装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願考案は、メッキ槽1と回収槽2を上下二段に備え下側の回収槽2から硫酸銅と硫酸と光沢剤及び塩素イオンを含んだ銅メッキ液を上側のメッキ槽1に供給して貯留しオーバーフローする銅メッキ液を回収槽2に回収するように構成されているとともに、メッキ槽1内の含燐銅ボールBを陽極としかつメッキ槽1内の被メッキ製品Wを陰極としてメッキ電流を流して電解銅メッキを行う銅メッキ装置において、 前記回収槽2にイリジウム酸化物被膜陽極板3と銅製陰極板4とを備えて陽極板3と銅製陰極板4の間に銅回収電流を流すことにより、前記銅メッキ電流により含燐銅ボールBから溶け出す銅の中、前記被メッキ製品Wをメッキする銅の量よりも余分の量を銅製陰極板4にメッキさせて回収するように構成されていることを特徴とする電解銅メッキにおいて余分に溶け出す銅の回収装置を提供するものである。
【0006】
【実施の形態】
この電解銅メッキにおいて余分に溶け出す銅の回収装置は、 メッキ槽1を上側に回収槽2を下側に備え、一対のチャックコーンにより水平に両端チャックされた被製版ロール(被メッキ製品)Wをメッキ槽1に収容してから、回収槽2から硫酸銅と硫酸と光沢剤及び塩素イオンを含んだ銅メッキ液をポンプアップしてメッキ槽1に供給して貯留しオーバーフローさせて液面管理し、メッキ槽1内の含燐銅ボールBを陽極とし被製版ロールWを陰極としてメッキ電流を流すとともに被製版ロールWを回転させて電解銅メッキを行い、前記オーバーフローした銅メッキ液を回収槽2に戻すようになっている銅メッキ装置において、 前記回収槽2にチタンをイリジウム酸化物で被膜処理した陽極板3を二枚の銅製陰極板4で挟むように位置させて陽極板3と銅製陰極板4の間に銅回収電流を流すことにより、前記銅メッキ電流により含燐銅ボールBから溶け出す銅の中、前記被メッキ製品Wをメッキする銅の量よりも余分の量を銅製陰極板4にメッキさせて回収するように構成されている。
【0007】
【考案の効果】
以上説明してきたように、本願考案の電解銅メッキにおいて余分に溶け出す銅の回収装置によれば、■イリジウム酸化物被膜陽極板3は、表面の電位が1.53ボルトと添加剤の分解電圧の1.7ボルトよりも低い。この条件下では、陽極板3の表面に酸素が盛んに発生する。すなわち、 CuSO4 +H2 O→Cu2 +H2 SO4 +1/2 O2 の化学反応が円滑に促進され、陽極板3の表面に添加剤が近づけず、添加剤が分解する化学反応が生じることはない。添加剤が分解が生じないので添加剤の追加は必要ない。ただし、積算電流量に対する添加剤の補給は必要である。
発生する酸素は、銅メッキ液中に不純物として存在する第一銅イオンを酸化して銅メッキ液をグリーンから建浴時の青色に戻し、メッキ製品にはピット(メッキが行われないピンホール)やブツ(突起)が生じることを回避することができる。
■銅回収メッキ電流を流す時間を自由に決められるので、銅イオン濃度を自在に管理できる。脱銅量は次式により計算できる。
Cu(g)=1.186g×積算電流量 回収した銅は含燐銅ボールとは組成が異なるので含燐銅ボールにとって替わる再利用ができないが経済的である。銅メッキ液中の硫酸銅の低下に伴い硫酸は上昇するので、硫酸の補給は汲み出し量のみとなる。塩素イオン濃度はほとんど変化しない。
■銅メッキ液の液抜き・廃液処理が不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願考案の電解銅メッキにおいて余分に溶け出す銅の回収装置の概略縦断面図。
【符号の説明】
1 ・・・メッキ槽
2 ・・・回収槽
W ・・・被メッキ製品
3 ・・・陽極板
4 ・・・銅製陰極板
B ・・・含燐銅ボール

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 メッキ槽と回収槽を上下二段に備え下側の回収槽から硫酸銅と硫酸と光沢剤及び塩素イオンを含んだ銅メッキ液を上側のメッキ槽に供給して貯留しオーバーフローする銅メッキ液を回収槽に回収するように構成されているとともに、メッキ槽内の含燐銅ボールを陽極としかつメッキ槽内の被メッキ製品を陰極としてメッキ電流を流して電解銅メッキを行う銅メッキ装置において、前記回収槽にイリジウム酸化物被膜陽極板と銅製陰極板とを備えて該陽極板と該陰極板の間に銅回収電流を流すことにより、前記銅メッキ電流により含燐銅ボールから溶け出す銅の中、前記被メッキ製品をメッキする銅の量よりも余分の量を該陰極板にメッキさせて回収するように構成されていることを特徴とする電解銅メッキにおいて余分に溶け出す銅の回収装置。

【図1】
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【登録番号】第3043191号
【登録日】平成9年(1997)8月27日
【発行日】平成9年(1997)11月11日
【考案の名称】電解銅メッキにおいて余分に溶け出す銅の回収装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−4255
【出願日】平成9年(1997)5月8日
【出願人】(000131625)株式会社シンク・ラボラトリー (52)