説明

霊長類で寛容を誘導するための抗CD4抗体で最適化された投薬

本発明は、少なくとも部分的に、CD4+細胞(そして選択的にCD8+細胞)の阻害により寛容を誘導することができるという発見に基づくものである。したがって、本発明の至適化された投薬法は、可溶性もしくは細胞結合型抗原(たとえば同種又は異種移植された抗原など)に対して霊長類の寛容を誘導するためなど、自己もしくは外来抗原などの少なくとも一種の抗原に対して寛容を誘導するためにCD4+T細胞を阻害することによりヒトなどの霊長類を処置する際に有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、2004年6月22日出願の標題「霊長類における寛容誘導性誘導のための抗CD4抗体の最適化された投薬」による米国仮出願60/582181に基づく優先権を主張するものである。本出願は、2002年12月9日出願の標題「霊長類におけるたんぱく質に対する寛容の誘導」による米国仮出願と、2003年12月9日出願の「寛容の誘導」によるU.S.S.N. 10/731,984に関する。これらの出願のそれぞれの内容全体を引用をもってここに編入する。
【0002】
発明の背景
本発明は、寛容誘導、より具体的には、抗原、特に外来抗原に対する霊長類における寛容の誘導に関する。
【0003】
霊長類で外来抗原及び自己抗原に対する寛容を誘導するために多くの試みがなされてきた。例えば移植の分野では、移植片の拒絶を防ぐために、その中の外来抗原に対する寛容を誘導する必要がある。現在では、感染、癌、及び薬物毒性のリスクのある長期の(慢性の)免疫抑制を用いてしか、拒絶を防ぐことはできない。
【0004】
加えて、治療的たんぱく質による患者の治療では、多くの場合、その外来たんぱく質に対する免疫応答の結果、治療の効果が低くなるか、あるいは完全に有効でなくなる。
【0005】
げっ歯類では抗CD4抗体を用いて成功が実証されているが、抗CD4抗体による寛容誘導が霊長類で実証されたことはない。結論的に、霊長類で、抗原、特に外来抗原に対する免疫抑制性薬物及び長期免疫抑制の必要を減らす又は無くすような、細胞結合型又は可溶性たんぱく質などの抗原に対する寛容を誘導する処置が必要なのである。
【0006】
発明の概要
本発明は、外来たんぱく質に対する免疫応答を、長期の免疫抑制なしで減らすことのできる、最適化された用量の抗CD4を提供することにより当業を進歩させるものである。本発明のある局面によれば、CD4抗体又はそのフラグメントを、少なくとも一種の抗原に対する寛容を誘導するために有効な量及び時間、用いることで、抗原に対して霊長類を寛容可するプロセスが提供される。ある実施態様では、抗CD4抗体が、寛容を促進する第二の作用薬と組み合わせて投与される。ある実施態様では、前記の第二の作用薬は抗CD8抗体、又は、CD8+細胞の活性を阻害する他の作用薬、である。
【0007】
ある局面では、本発明は、霊長類を処置して少なくとも一種の外来抗原に対する寛容を誘導する方法に関し、本方法は、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを霊長類に投与するステップであって、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、約20 mg/kg 乃至 40 mg/kg の用量を少なくとも3回の別々の用量にして投与される、ステップ、を含む。
【0008】
ある実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、約20mg/kgの用量にして投与される。
【0009】
別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、少なくとも4回の別々の用量にして投与される。別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、少なくとも5回の別々の用量にして投与される。
【0010】
ある実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、外来抗原の投与に対して少なくとも−1日目、3又は4日目、8日目及び12日目に投与される。
【0011】
ある実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、外来抗原の投与に対して少なくとも−1日目、1及び3日目に投与される。
【0012】
ある実施態様では、外来抗原は可溶性抗原である。
【0013】
ある実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体の一回目の用量は、外来抗原の投与の前に投与される。
【0014】
ある実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体はTRX1である。
【0015】
別の局面では、本発明は、霊長類を処置して少なくとも一種の外来抗原に対する寛容を誘導する方法に関し、本方法は、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを霊長類に投与するステップであって、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量は、外来抗原の投与の少なくとも1日前に投与される、ステップを含む。
【0016】
更に別の局面では、本発明は、霊長類を処置して少なくとも一種の外来抗原に対する寛容を誘導する方法に関し、本方法は、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを霊長類に投与するステップであって、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、寛容誘導段階中の抗CD4抗体の血清中濃度を約20μg/mlのレベルに維持するのに充分な用量にして投与される、ステップを含む。
【0017】
ある実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量は、外来抗原の投与の1日前に投与される。
【0018】
別の実施態様では、前記少なくとも1種の抗CD4抗体は、約20mg/kg乃至40mg/kgの間の用量にして投与される。
【0019】
別の局面では、本発明は、霊長類を処置して少なくとも一種の外来抗原に対する寛容を誘導する方法に関し、本方法は、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを霊長類に投与するステップであって、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、寛容誘導段階中の前記霊長類のT細胞上のCD4部位の約85%の飽和を達成するのに充分な用量にして投与される、ステップを含む。
【0020】
ある実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、約2週間を超えては投与されない。
【0021】
ある実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量は、外来抗原の投与の1日前に投与される。
【0022】
別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、約20mg/kg乃至40mg/kgの間の用量にして投与される。
【0023】
ある実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体はTRX1である。
【0024】
別の局面では、本発明は、霊長類で可溶性抗原に対する寛容を誘導する方法に関し、本方法は、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを霊長類に投与するステップであって、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、前記可溶性抗原に対する寛容が誘導されるように、約20-40mg/kgの間の用量で少なくとも3回の別々の用量にして投与される、ステップを含む。
【0025】
ある実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量は、可溶性抗原の投与の1日前に投与される。
【0026】
別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、約20mg/kgの用量にして投与される。
【0027】
発明の詳細な説明
対する寛容を誘導する先の抗原は自己抗原でも、又は外来抗原でもよいが、特に外来抗原である。
【0028】
ここで用いる場合の用語「寛容化する」又は「寛容性」又は「寛容」には、活性化性の受容体媒介性刺激に対する不応性が含まれる。このような不応性は、一般に、抗原特異的であり、寛容化抗原への暴露が終了後にも残る。例えば、寛容は、寛容化抗原への暴露後にもIL-2などのサイトカイン産生がないことを特徴とする。寛容は自己抗原に対しても、又は外来抗原に対しても起こり得る。ある実施態様では、寛容性のある霊長類は、寛容化剤による処置を停止した後でも、その後に当該抗原で刺激される、及び/又は、当該抗原がこの霊長類に存在し続けていても、長期間にわたってこの抗原に対する不利な免疫応答を生じることはないが、他の抗原に対しては免疫応答を起こすことができる。ある実施態様では、治療的レベルの一般的な免疫抑制剤の非存在下で寛容が誘導される。
【0029】
例えば、当該の外来抗原は以下の種類の抗原の一つ以上であってもよい:
(i)器官内に存在する組織又は細胞を含め、移植される組織又は細胞上に存在する外来抗原であって、この場合の移植片は同種でも、又は異種でもよい、外来抗原;
(ii)霊長類で免疫応答を生ずる(疾患の防止のために用いられる治療薬も含む)治療薬であって、前記免疫応答は、当該治療薬が治療薬として機能する能力を弱めるものである、治療薬。このような治療薬には、限定はしないが、例えば遺伝子治療で用いられるベクタなどの送達伝播体、当該霊長類に送達されるたんぱく質などの活性薬剤(例えばモノクローナル抗体、酵素、凝固因子などの組換えたんぱく質)、及び、例えば遺伝子治療などで当該霊長類に送達される薬剤から産生されるいくらかの低分子薬物又はたんぱく質、がある。
【0030】
本発明に従って対する寛容が誘導される外来抗原は、ホストに感染した疾患を起こす細菌、真菌、ウィルスなどに存在する外来抗原ではなく、即ち、外来抗原という用語には、霊長類に感染して疾患又は異常を起こす生物の一部としての外来抗原は含まれない。
【0031】
ある実施態様では、当該抗原は可溶性抗原である。
【0032】
CD4抗体や、又は、CD8抗体が用いられる場合のCD8抗体は、好ましくはモノクローナル抗体(又はそれぞれCD4又はCD8への結合能の残ったそのフラグメント)であるとよい。当該抗体はヒト抗体でも、又は非ヒト抗体でもよいが、但しこの場合、非ヒト抗体には、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体等も含まれる。
【0033】
CD4抗体又はその適したフラグメントは、外来抗原又は自己抗原に対し、好ましくは外来抗原に対し、寛容を誘導するのに有効な量及び時間、霊長類に投与される。抗霊長類CD4抗体は、このような抗体の作製法と同様、当業で公知である。
【0034】
ある実施態様では、抗CD4抗体は、対する寛容が欲しい抗原に対象を暴露(又は全身暴露)する前に投与される。別の実施態様では、抗CD4抗体は、対する寛容が欲しい抗原と同時に投与される。
【0035】
いくつかの実施態様では、特に移植片(例えば細胞又は組織移植片)への寛容を欲しい場合、CD8+細胞を付加的に阻害することが好ましいかも知れない。CD8+T細胞を阻害する化合物は、CD8+T細胞の活性を、例えばそれらの数を減らしたり、あるいはそれらのエフェクタ機能を阻害したりすることにより、阻害する。ある実施態様では、CD8+T細胞を阻害する化合物は、CD8+T細胞を特異的に阻害する。別の実施態様では、CD8+T細胞を阻害する化合物は、Treg細胞を特異的に阻害しないか、又は枯渇させない。このような化合物は、CD8+T細胞を枯渇させるか、又は枯渇させない抗体であってもよい。抗霊長類CD8抗体は、このような抗体の作製法と同様に、当業で公知である。CD8+T細胞を阻害する化合物は、このようなCD8+T細胞を阻害する(抗体以外の)化合物でもよい(このような抗体以外の化合物は、CD8+T細胞を枯渇させても、又は枯渇させなくてもよい)。非抗体化合物の例には、例えばベータ-ガラクトシド結合たんぱく質がある (Blaser et
al. 1998. Eur
J Immunol. 28:2311)。
【0036】
ある実施態様では、CD8+T細胞を阻害する化合物は、抗CD4抗体の投与前に投与される。別の実施態様では、CD8+T細胞を阻害する化合物は、抗CD4抗体と同時に投与される。別の実施態様では、CD8+T細胞を阻害する化合物は、抗CD4抗体の投与後に投与される。
【0037】
ここで用いられる場合の用語「調節性T細胞」には、低レベルのIL-2、IL-4、IL-5、及びIL-12を産生するT細胞が含まれる。調節性T細胞は、エフェクタT細胞よりも低レベルであるが、TNFα、TGFβ、IFN-γ、及びIL-10を産生する。TGFβは、調節性T細胞により産生される主なサイトカインであるが、このサイトカインは、例えばTh1又はTh2細胞よりも小さいオーダーでなど、Th1又はTh2細胞により産生されるものよりも小さいか、又は等しいレベルで産生される。調節性T細胞は、CD4+CD25+の細胞集団に見ることができる(例えばWaldmann and
Cobbold. 2001. Immunity.
14:399を参照されたい)。調節性T細胞は、活性化シグナルで(例えば抗原例えば抗原提示細胞で、又は、抗CD3抗体に抗CD28抗体が加わった場合など、MHCの関係で抗原を模倣するシグナルで)刺激を受けた培養Th1、Th2、又は未刺激T細胞の増殖及びサイトカイン産生を能動的に抑制する。
【0038】
CD8+T細胞を阻害する(抗体以外の)化合物の代表的な例には:ラパマイシン(シロリムス)及びCellCept(登録商標)(ミコフェノレートモフェチル)がある。ある実施態様では、シクロスポリンなどの化合物は、CD8+T細胞を阻害するが、Treg細胞も(枯渇などにより)阻害するために、用いないことが好ましい。
【0039】
本発明は、特に移植片に対して霊長類の寛容を誘導する用途を有する。好ましくは、このような霊長類がヒトであるとよい。移植片は同種でも、又は異種でもよい。
【0040】
好適な実施態様によれば、CD4抗体又はその適したフラグメントとCD8阻害性化合物のそれぞれは、このような抗体又はフラグメント及び化合物の適したレベルを、寛容を誘導するために充分な時間、当該霊長類で維持するために、ある一定の時間にわたって投与される。
【0041】
ある実施態様では、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントであって、前記少なくとも一種の抗CD4抗体が約20 mg/kgの用量、投与される。別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、約20乃至40 mg/kgの間の用量にして、投与される。別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、少なくとも約20 mg/kgの用量にして投与される。ある実施態様では、前記抗体の少なくとも3回の用量が投与される。各用量を、例えば希釈して24時間かけて輸注するなど、一定の時間にわたって投与してもよく、あるいは、前記用量の数部分を、例えば別々の接種にするなど、24時間の経過にわたって投与してもよい。
【0042】
別の実施態様では、前記抗CD4抗体の4回の別々の用量が投与され、例えば前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、少なくとも4回、別々の日に投与される。
【0043】
別の実施態様では、前記抗CD4抗体の5回の別々の用量が投与され、例えば前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、少なくとも5回、別々の日に投与される。
【0044】
別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量が、外来抗原の投与から少なくとも約7日前の日に投与される。別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量が、外来抗原の投与から少なくとも約5日前の日に投与される。別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量が、外来抗原の投与から少なくとも約4日前の日に投与される。別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量が、外来抗原の投与から少なくとも約3日前の日に投与される。別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量が、外来抗原の投与から少なくとも約2日前の日に投与される。別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量が、外来抗原の投与から少なくとも約1日前の日に投与される。
【0045】
ある実施態様では、少なくとも一種の抗CD4抗体の投与は、外来抗原への暴露後のほぼ1週間、継続する。更に別の実施態様では、少なくとも一種の抗CD4抗体の投与は、外来抗原への暴露後のほぼ2週間、継続する。別の実施態様では、少なくとも一種の抗CD4抗体の投与は、外来抗原への暴露後のほぼ1ヶ月間、継続する。
【0046】
別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、外来抗原の投与に対して少なくとも−1日目、3又は4日目、8日目及び12日目に投与される。
【0047】
更に別の実施態様では、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、外来抗原の投与に対して少なくとも−1日目、1日目、及び3日目に投与される。
【0048】
別の実施態様では、本発明は、霊長類を処置して、少なくとも一種の外来抗原に対する寛容を誘導するプロセスに関し、本プロセスは、前記霊長類に少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを投与するステップを含み、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、例えばこの寛容誘導段階中、前記霊長類のT細胞上のCD4部位の約95%、約90%、約85%、約80%、又は約75% の飽和など、CD4部位の完全な飽和より僅かに少ない飽和を達成するために充分な用量にして投与される。別の実施態様では、少なくとも一種の抗CD4抗体が、例えばこの寛容誘導段階中、前記霊長類のT細胞上のCD4部位の約95%、約90%、約85%、約80%、又は約75% の飽和など、CD4部位の完全な飽和より僅かに少ない飽和を達成するために充分な用量にして投与される。ある実施態様では、CD4部位の飽和レベルは約85%を超えない。CD4 の飽和度は当業で公知の方法を用いて判定することができる。例えば、付属の実施例では、循環性リンパ球上の遊離CD4部位の関数として飽和度を判定した。例えば遊離CD4部位は、検出可能な標識を含むなど、抗CD4で染色することにより、判定することができる。
【0049】
ある実施態様では、抗CD4抗体の投与は、寛容誘導段階後には必要でない。
【0050】
更に別の実施態様では、本発明は、移植される抗原に対して霊長類の寛容を誘導するプロセスに関し、本プロセスは、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントと、CD8+T細胞を阻害する少なくとも一種の化合物とを、それぞれ、前記移植片に対する寛容を誘導するのに有効な量及び時間、霊長類に投与するステップを含み、但しこの場合、前記移植される抗原が前記霊長類中に存在するときには前記抗CD4抗体又はフラグメントが前記霊長類中に存在し、そして前記抗CD4抗体は、前記移植される抗原に対する寛容が誘導されるように、一回目の用量を約20 mg/kgにして投与される。
【0051】
ある実施態様では、抗CD4の用量は、誘導段階中、毎回異なっていてもよい。例えば、CD4抗体(又はそのフラグメント)を、たとえばここで記載したように一回目の用量、投与し、その後の用量は、この一回目の用量より多くしても、等しくしても、又は少なくしてもよい。
【0052】
好ましくは、投与される抗CD4の用量(初回又はその後の用量)は、少なくとも約20mg/kgであるとよい。別の実施態様では、40 mg/kg未満が一用量にして投与される。別の実施態様では、約20 mg/kg 乃至40 mg/kg が一用量にして投与される。更に別の実施態様では、約10 mg/kg 乃至40mg/kg が一用量にして投与される。更に別の実施態様では、約 5 乃至40 mg/kg が一用量にして投与される。
【0053】
ある実施態様では、CD4 抗体(又はそのフラグメント)を、約20 mg/kg以下の用量にして投与してもよい。別の実施態様では、CD4 抗体(又はそのフラグメント)を、約20 mg/kg未満の用量にして投与してもよい。例えば、抗CD4抗体をヒトに投与する場合、ヒトにおける免疫原性が低くなり、かつTRX1抗体の薬物動態が向上するのであれば、投与される抗CD4抗体の量を減らすことが好ましいであろう。例えば、ある実施態様では、投与される抗CD4の用量(初回又はその後の用量)は少なくとも約 5 mg/kgである。別の実施態様では、投与される抗CD4の用量(初回又はその後の用量)は少なくとも約7.5 mg/kgである。別の実施態様では、投与される抗CD4の用量(初回又はその後の用量)は少なくとも約 10 mg/kgである。別の実施態様では、投与される抗CD4の用量(初回又はその後の用量)は少なくとも約 12.5 mg/kgである。別の実施態様では、投与される抗CD4の用量(初回又はその後の用量)は少なくとも約 15 mg/kgである。別の実施態様では、投与される抗CD4の用量(初回又はその後の用量)は少なくとも約 17.5 mg/kgである。
【0054】
CD4抗体の一回目の用量は、24時間のうちで一回以上の部分にして投与されてもよく、そして好ましくは、24時間のうちの1回の用量にして投与されるとよい。
【0055】
投薬量に関してここで用いられる場合、一用量とは、たとえ24時間中に2回以上、投与される場合でも、24時間のうちに投与されるCD4抗体の総量である。
【0056】
ここで用いる場合の用語「寛容誘導段階」には、寛容を誘導するために抗CD4抗体が霊長類に投与される時間が含まれる。例えば、抗CD4抗体を、外来抗原への暴露時間に近い、短期間(例えば約1ヶ月以下、例えば約10、約13、約15、約20、約25、又は約30日間など)にわたって3乃至4回の用量にして投与してもよい。
【0057】
大半の場合、一回目の用量後、CD4抗体(又はその適切なフラグメント)を、数日間にわたって1回以上の追跡用量にして投与するが、各追跡用量を24時間のうちの1回以上の用量にして投与することとする。この追跡用量は、一般的には、一回目の用量で達成された血清中レベルにCD4抗体のレベルを戻す量にして提供される。
【0058】
ある好適な実施態様では、CD4抗体の一回又は複数回の最小追跡用量又は用量は、前述した量に概ね等しい量であり、最初の又は一回目の用量として投与された用量と同一であっても、又は同一でなくてもよい。
【0059】
CD4抗体の追跡用量が2回以上ある場合、24時間のうちのこのような付加的な追跡用量のそれぞれは、別の追跡用量と同じでも、又は異なっていてもよい。
【0060】
CD4抗体の追跡用量の回数は様々になるであろう。ある実施態様では、少なくとも1回の追跡用量がある。ある実施態様では、用量の総回数は、8回の毎日の用量を超えない。
【0061】
ある実施態様では、抗CD4抗体のその後の用量は、ほぼ4乃至5日毎に投与される。別の実施態様では、抗CD4抗体のその後の用量は、ほぼ2乃至3日毎に投与される。別の実施態様では、抗CD4抗体のその後の用量は、ほぼ1乃至2日毎に投与される。
【0062】
ある実施態様では、CD4抗体が投与される合計期間は4週間を超えず、そしてより好ましくは3週間を超えないとよい。多くの場合、2週間を超えない期間にわたって一回目の用量及び一回以上の追跡用量を用いることにより、寛容を達成することができる。
【0063】
本発明によれば、抗原に対する当初の寛容は、約4週間にも満たない寛容誘導期間で霊長類で達成することができるが、場合によっては、寛容を維持するために、CD4抗体による定期的な追跡処置を施してもよい。
【0064】
ある実施態様では、本発明は、霊長類を処置して、少なくとも一種の外来抗原に対する寛容を誘導するプロセスに関し、本プロセスは、前記霊長類に、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを投与するステップを含み、但しこの場合、前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、寛容誘導中の抗CD4抗体の血清中濃度を約20μg/mlのレベルに維持するために充分な用量にして、投与される。別の実施態様では、該血清中濃度を、少なくとも約20μg/mlのレベルに維持する。
【0065】
上述したように、少なくとも一種のCD4抗体(又はその適切なフラグメント)は、ある抗原に対する、そして好適な実施態様ではある外来抗原に対する、霊長類の寛容を誘導するのに少なくとも充分である量にして、送達される。もちろん、最大量は安全を考慮して制限される。該して、CD4抗体の一日当りの投薬量は6000mg未満であろう。
【0066】
追跡用量の回数及びその間の間隔は、部分的には、当該の少なくとも一種のCD4抗体の半減期により決定されるであろう。本発明が限定されることはないが、ある実施態様では、当該のCD4抗体は、まず、処置しようとする霊長類のCD4のすべてを飽和させるのに必要な量を超える抗体血清レベルを達成する量で送達され、追跡用量は、外来抗原に対してこの霊長類の寛容を誘導する期間にわたってこのような過剰を維持するために数回、投与される。
【0067】
ある好適な実施態様では、当該のCD4抗体は、ヒトIgG1に比較してエフェクタ(即ち溶解性の)機能が低いと思われるCD4抗体である。エフェクタ機能が低いと思われる抗体の例には、無糖鎖化した、及び/又は、Fc受容体への結合が減った、及び/又は、非溶解性であるFc部分を有する抗体がある。例えば、ある実施態様では、抗CD4抗体は、少なくとも一箇所の変異を重鎖の定常領域に含む。変異の例には、Leu 236 のAlaへの変異 (例えばCTGのGCGへの変異)、Gly 238 のAla への変異(例えばGGA のGCAへの変異)、Asn 297 の Ala への変異(例えば AAC の GCCへの変異)、がある。ある実施態様では、これらの変異のうちの一つ以上を作ってもよい。例えば、ある好適な実施態様では、位置297の変異を作ってエフェクタ機能の低下した無糖鎖化抗CD4 抗体を作製する。別の実施態様では、位置236 及び238 で変異を作る。この形には糖鎖はあるが、Fc受容体及び補体結合は減少している。
【0068】
ある実施態様では、エフェクタ機能の低下したCD4抗体は非枯渇性CD4抗体である。ここで用いる場合の「非枯渇性CD4抗体」とは、CD4細胞の50%未満、そして好ましくはCD4細胞の10%未満を枯渇させるようなCD4抗体である。
【0069】
ある実施態様では、異なる抗CD4抗体を含むカクテルを用いることができる。別の実施態様では、異なる抗CD4抗体を同じ患者に異なる日に投与することができる。
【0070】
ある実施態様では、CD8細胞阻害性化合物が、霊長類で寛容を亢進するために更に投与される。このCD8阻害性化合物は霊長類に、CD4抗体による最初の処置中、この霊長類のCD8+細胞の作用及び/又はレベルを減らすのに有効量にして、投与される。このような量は、CD4抗体について用いた量よりも低いであろう。CD8阻害性化合物を、CD4抗体と同じ時点で用いても、あるいは異なる時点で用いてもよい。CD8 阻害性化合物をCD4抗体と異なる日に投与しても、又は同じ日に投与してもよい。上述したように、CD8阻害性化合物は、抗体(又はそのフラグメント)であっても、又は、抗体以外の化合物であってもよい。CD8阻害性化合物による処置は、最初の処置(最初の追跡用量を含む)中に行われるが、この最初の処置期間(追跡用量を含む)後にCD4抗体による処置を更に用いる場合は、このような更なる処置を、CD8阻害性化合物による処置有りで行っても、又は、無しで行ってもよい。
【0071】
霊長類、特にヒトを処置する際には、CD4抗体(及び選択的にCD8阻害性化合物)を、例えば別の、もしくは同時投与用に調合されたものなど、薬学的に許容可能な担体と組み合わせて用いてもよい。CD4抗体及び/又はCD8阻害性化合物を含有する組成物には、例えば安定化剤及び/又は他の活性薬剤など、他の成分を含めてもよい。
【0072】
本発明に従って、ある抗原に対する寛容を霊長類で誘導するために抗CD4抗体を用いると、一種以上の抗原に対する寛容が提供され、この霊長類は、その他の抗原に対しては免疫応答することができる。このように、この関係で、この霊長類は、一種以上の抗原に対して寛容にされ、その免疫系は、その他の外来抗原に対しては免疫応答を提供することができるため、この霊長類は免疫学的に無防備状態ではない。
【0073】
ある外来抗原に対して寛容が誘導される好適な実施態様では、CD4抗体(及び選択的に、単独又は互いに組み合わせとなったCD8阻害性化合物)のそれぞれは、外来抗原が霊長類に送達される前、送達と同時に、又は送達される後に、霊長類に投与される。ある好適な実施態様では、寛容を誘導しようとする抗原も当該霊長類中に存在する場合に、CD4抗体及びCD8阻害性化合物の両者がこの霊長類中に存在するように、この霊長類には、CD4 抗体及びCD8 阻害性化合物が一度に提供される。ある特に好適な実施態様では、CD4 抗体(又はそのフラグメント)及びCD8 阻害性化合物のそれぞれは、霊長類を寛容化しようとする外来抗原にこの霊長類を接触させる前、あるいは、その後の1、2時間以内又は一日未満のうちに、この霊長類に送達される。
【0074】
ある実施態様では、CD4抗体(及び選択的にCD8阻害性化合物)のそれぞれは、当該霊長類に外来抗原が投与される少なくとも約5日、少なくとも約4日、少なくとも約3日、少なくとも約2日、又は少なくとも約1日前に、この霊長類に投与される。ある実施態様では、抗CD4抗体は、当該霊長類に外来抗原が投与される約5日前に投与される。
【0075】
上で示唆したように、ある実施態様では、当該霊長類を治療する際に用いることになる治療的たんぱく質に対して、この霊長類を寛容化する。このような治療的たんぱく質は、可溶性抗原でもよく、例えば(CD4抗体以外の)治療的抗体(この治療的抗体はヒト抗体でも、ヒト化抗体でも、キメラ抗体でも、又は非ヒト抗体であってもよい);代償療法に用いられるものなどの酵素;ホルモン;凝固因子;遺伝子治療で作製されるたんぱく質;遺伝子治療で用いられるベクタなどの遺伝子送達伝播体(例えばアデノウィルス・ベクタ);又は他の可溶性たんぱく質であってもよい。 ここで用いられる場合の用語「可溶性の」には、細胞に結合していない抗原(例えば細胞により天然で分泌されるたんぱく質や、又は、膜貫通ドメインや細胞質側ドメインの除去、及び/又は、抗体Fc領域ドメインなどの多様なドメインの導入などにより可溶性になるように操作されたたんぱく質など)が含まれる。
【0076】
外来抗原は移植器官内に存在しても、又は、細胞治療で用いられる移植細胞内に存在しても、あるいは、皮膚などの他の組織移植片中に存在していてもよい。
【0077】
ある実施態様では、当該霊長類は、抗CD4抗体による処置前には抗原に暴露されていない。別の実施態様では、当該霊長類は、抗CD4抗体による処置前に抗原に暴露されている。
【0078】
CD4抗体及びCD8阻害性化合物を用いた、外来抗原に対して霊長類を寛容化するための霊長類、特にヒトの処置は、場合によっては、例えば外来抗原の受容を促進する骨髄移植及び/又は免疫抑制などの補助的療法なしで達成できよう。
【0079】
場合によっては、補助的療法を用いてもよい。例えば移植法の一部として、適した免疫抑制剤を用いた免疫抑制を用いてもよいが、本発明を利用すると慢性的な免疫抑制は必要ではない。加えて、寛容化法の後又は最中に用いられるのであれば、場合によっては、免疫抑制剤を有効な免疫抑制を提供するのに必要な量よりも少ない量にして、用いてもよい。
【0080】
ある非限定的な実施態様では、CD4抗体は好ましくはTRX1抗体か、又は、TRX1と同じエピトープに結合するものであるとよく、そしてこのようなCD4抗体を、好ましくは、上述した通りの投薬計画で用いるとよい。
【0081】
本発明のある局面によれば、このようなCD4抗体(好ましくはヒト化抗体又はそのフラグメント)は、TRX1ヒト化抗体、例えば、それぞれ定常領域及び可変領域を含有する軽鎖及び重鎖などのその成分が図1A−1Gに示され、SEQ ID No: 1、2、3、4、5、6、7 及び 8に相当するもの;TRX1 ヒト化抗体、例えばそれぞれ定常領域及び可変領域を含有する軽鎖及び重鎖などのその成分が、図2A−2Gに示され、SEQ ID No: 9、10、11、12、13、14、15、及び16に相当するもの;TRX1 ヒト化抗体、例えばそれぞれ定常領域及び可変領域を含有する軽鎖及び重鎖などのその成分が図3A−3Gに示され、SEQ ID No: 17、18、19、20、21、22、23、及び 24に相当するもの;及びTRX1 ヒト化抗体、例えばそれぞれ定常領域及び可変領域を含有する軽鎖及び重鎖などのその成分が図4A−4Gに示され、SEQ ID No: 25、26、27、28、29、30、31、及び 32に相当するもの、から成る群より選択されるヒト化抗体と同じ、ヒトリンパ球上のエピトープ(又はその一部分)に結合するものである。
【0082】
前記の抗体を以降、時にTRX1と言及する。用語「分子」又は「TRX1と同じエピトープに結合する抗体」には、TRX1が含まれる。用語「TRX1」には、例えばそれぞれ定常領域及び可変領域を含有する軽鎖及び重鎖、例えばSEQ ID No: 1、3、4、5、7 及び8(図1A、1C、1D、1E、及び1G)に示されたアミノ酸配列などの当該ヒト化抗体の成分、例えばそれぞれ定常領域及び可変領域を含有する軽鎖及び重鎖、例えばSEQ ID No: 9、11、12、13、15、及び 16 (図2A、2C、2D、2E、及び2G)に示されたアミノ酸配列などの当該ヒト化抗体の成分、例えばそれぞれ定常領域及び可変領域を含有する軽鎖及び重鎖、例えばSEQ ID No:17、19、21、23、及び 24 (図3A、3C、3D、3E、及び3G)に示されたアミノ酸配列などの当該ヒト化抗体の成分、例えばそれぞれ定常領域及び可変領域を含有する軽鎖及び重鎖、例えばSEQ ID No: 25、27、28、29、31、及び 32(図4A、4C、4D、4E、及び4G)に示されたアミノ酸配列などの当該ヒト化抗体の成分、及び組換え技術などにより作製できると思われる、これらに同一のもの、が含まれる。
【0083】
好適なCD4抗体はTRX1であるが、ここの教示から、他のCD4抗体も本発明の方法で用いることができる。例えば、ある実施態様では、当業者であれば、TRX1に均等な抗体を作製することができる。例えばこのような抗体は:
1)CD4に(例えばTRX1と同じエピトープに結合することにより)結合するヒト化抗体;
2)TRX1と同じCDRを有するが、異なるヒト化フレームワーク及び/又は異なるヒト定常領域を有するヒト化抗体;
3)CD4に(例えばTRX1と同じエピトープに結合することにより)結合すると共に、TRX1のCDRのうちの一つ以上のアミノ酸が変更されており(好ましくは、しかし必ずしもではないが保存的アミノ酸置換)、そしてフレームワークがTRX1と同じフレームワークであっても、又は異なるヒト化フレームワークを有していてもよく、あるいは、TRX1のフレームワーク領域のアミノ酸のうちの一つ以上が変更されている、及び/又は、定常領域がTRX1と同じであっても、又は異なっていてもよい、ヒト化抗体;
4)CD4に(例えばTRX1と同じエピトープに結合することにより)結合すると共に、当該抗体のFc領域を通じてFc受容体に結合しない、ヒト化抗体;
5)CD4に(例えばTRX1と同じエピトープに結合することにより)結合すると共に、そのCDRが糖鎖修飾部位を含まない、ヒト化抗体;
6)CD4に(例えばTRX1と同じエピトープに結合することにより)結合すると共に、当該抗体のFc領域を通じてFc受容体に結合せず、そしてそのCDRが糖鎖修飾部位を含まない、ヒト化抗体;
7)CD4に(例えばTRX1と同じエピトープに結合することにより)結合するキメラ抗体;及び
8)CD4に(例えばTRX1と同じエピトープに結合することにより)結合するマウス抗体、であってよい。
【0084】
TRX1に均等な抗体を、TRX1と同じ態様及び同じ目的のために用いてもよい。
【0085】
ある好適な実施態様では、本発明で用いるCD4抗体は、TRX1ヒト化抗体と同じエピトープ(又はそのエピトープの一部分)に結合するものである。用語「TRX1ヒト化抗体と同じエピトープに結合する」とは、TRX1ヒト化抗体だけでなく、TRX1ヒト化抗体と同じエピトープに結合するその他の抗体、そのフラグメント又は誘導体も記述するものであると意図されている。TRX1ヒト化抗体と同じエピトープに結合する抗体は、例えば抗体競合検定法又はエピトープ・マッピングなど、当業で公知の技術を用いて特定することができる。
【0086】
ある好適な実施態様では、当該のCD4抗体は、この抗体のFC領域を通じてFc受容体に結合せず、またそのCDRは糖鎖修飾部位を含まない。
【0087】
当該の定常領域は糖鎖修飾部位を含んでも、又は含んでいなくてもよい。ある実施態様では、当該の定常領域は糖鎖修飾部位を含む。糖鎖修飾シグナルは当業で公知である。糖鎖修飾部位を含む重鎖配列の一例がSEQ ID NO:5(図1D及び1E)、SEQ ID NO:7 (図1G)及び SEQ ID NO:8(図1G)、及び SEQ ID NO:21(図3D及び3E)、SEQ ID NO:23 (図3G)及び SEQ ID NO:24(図3G)に示されている。別の実施態様では、当該の定常領域には、アスパラギン(N)のアラニン(A)へのアミノ酸変化のために、糖鎖修飾部位が含まれていない。糖鎖修飾部位を含まない重鎖配列の一例は、SEQ ID NO: 13 (図2D及び2E)、 SEQ ID NO:15 (図2G)及び SEQ ID NO:16 (図2G)、及び SEQ ID NO: 29 (図4D及び4E)、 SEQ ID NO:31(図4G)及び SEQ ID NO:32(図4G)に示されている。
【0088】
このような他の抗体には、例であって限定ではないが、ラット、マウス、ブタ、ウシ、ヒト、キメラ、ヒト化抗体、又はそのフラグメントもしくは誘導体がある。
【0089】
ここで用いる場合の用語「フラグメント」は、ある一つの一部分を意味し、例を挙げると、このような抗体部分には、限定はしないが、TRX1が認識するのと同じエピトープ又はその一部分に結合する、CDR、Fab、scFv 分子又はこのような他の部分が含まれよう。
【0090】
ここで用いる場合の用語「抗体」には、ヒト化抗体TRX1が認識するのと同じエピトープ又はその一部分に結合する、ポリクローナル及びモノクローナル抗体や、抗体フラグメント及び誘導体や、例えばキメラ又はヒト化抗体、一本鎖又は二重特異的抗体など、組換え技術により調製される抗体が含まれる。用語「分子」には、限定はしないが例を挙げると、いずれかの源を由来とし、当該抗体を模倣するか、又は、その抗体フラグメントもしくは誘導体と同じエピトープ又はその一部分に結合する、ペプチド、オリゴヌクレオチド、又はこのような他の化合物が含まれる。
【0091】
本発明の別の実施態様では、移植を受ける予定の又は受けた患者を、有効量の(i) TRX1抗体、あるいは、TRX1抗体と同じエピトープ(又はその一部分)に結合する抗体又はその誘導体もしくはフラグメント、から成る群より選択される少なくとも一種のメンバーと、(ii)CD8阻害性化合物とで処置する方法が提供される。該処置は、好ましくは、完全な、即ちインタクトTRX1抗体で行われるとよい。
【0092】
ある実施態様では、本発明の方法における抗CD4抗体をヒト化し、例えば当業で公知の方法を用いてFc受容体を減らす、及び/又は、補体結合を減らす修飾を行うなどにより、エフェクタ機能を低下させる修飾をする。
【0093】
ある実施態様では、当該の抗体は TRX1 (SEQ ID No:1、2、3、4、5、6、7、及び8;図1A、1B、1C、1D、1E、1F、及び1G)である。TRX1抗体、例えばそれぞれ可変領域及び定常領域を含有する軽鎖及び重鎖などのTRX1抗体の成分は、例えばSEQ ID No:1 (図1A)、2(図1B)、 3 (図1C、上側)、 4 (図1C、下側)、5 (図1D及び1E)、6 (図1F)、 7 (図1G、上側)、及び 8 (図1G、下側)に示されている。SEQ ID No:1 (図1A)は TRX1 軽鎖のアミノ酸配列であり、そしてSEQ ID No:2(図1B)はTRX1 軽鎖のヌクレオチド配列である。SEQ ID No:3(図1C上側)はリーダ配列を付したTRX1軽鎖のアミノ酸配列である。SEQ ID No:4(図1C、下側)は、例えばSEQ ID No.1のアミノ酸残基1-20などのリーダ配列を付した、例えばSEQ ID No:1又はSEQ ID No:3などのTRX1軽鎖のアミノ酸配列である。例えばアミノ酸残基317-319などの糖鎖修飾部位を含有するTRX1 重鎖アミノ酸配列は SEQ ID No:5 (図1D及び1E)に示され、そして TRX1 重鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID No:6(図1F)に示されている。SEQ ID No:7(図1G、上側)は、リーダ配列を付したTRX1 重鎖のアミノ酸配列である。SEQ ID No:8(図1G、下側)は、SEQ ID No:5(図1D及び1E)のアミノ酸残基1-19などのリーダ配列がなく、アミノ酸残基298-300などの糖鎖修飾部位を含有するSEQ ID No:5(図1D及び1E)などのTRX1 重鎖 のアミノ酸配列である。TRX1 は、ヒト抗体の修飾された定常領域、例えば SEQ ID No:1(図1A)又は SEQ ID No:3(図1C、上側)の軽鎖アミノ酸残基132-238及びSEQ ID No:4(図1C、下側)のアミノ酸残基112-218と、SEQ ID No:5(図1D及び1E)又はSEQ ID No:7(図1G、上側)の重鎖アミノ酸残基138-467及びSEQ ID No:8(図1G)のアミノ酸残基119-448と、軽鎖及び重鎖フレームワーク及びCDR領域とを含むヒト化抗体であり、但しこの場合、前記軽鎖及び重鎖可変領域のフレームワーク領域は、ヒト抗体を由来とする、例えばSEQ ID No:1(図1A)又はSEQ ID No:3(図1C、上側)のアミノ酸残基21-43、59-73、81-112、及び122-131 並びにSEQ ID No:4(図1C)のアミノ酸残基 1-22、33-53、61-92、及び102-111などの軽鎖可変領域のフレームワーク領域と、例えばSEQ ID No:5又はSEQ ID No:7(図1G、上側)のアミノ酸残基 20-49、55-68、86-117、及び127-137 並びにSEQ ID No:8のアミノ酸残基 1-30、36-49、67-98、及び108-118などの重鎖可変領域のフレームワーク領域に相当し、前記軽鎖のCDRは、NSM4.7.2.4と指定されたマウスモノクローナル抗体を由来とする、例えばSEQ ID No:1 又はSEQ ID No:3(図1C、上側) のアミノ酸残基 44-58、74-80、及び113-121 並びにSEQ ID No:4 のアミノ酸残基 24-32、54-60、及び93-101などであり、前記重鎖のCDRは、例えばSEQ ID No:5 又はSEQ ID No:7 (図1G、上側)のアミノ酸残基 50-54、69-85、及び118-126並びにSEQ ID No:8 のアミノ酸残基 31-35、50-66、及び99-107 などである。
【0094】
別の実施態様では、当該の抗体は TRX1(SEQ ID No:17、18、19、20、21、22、23、及び24;図3A、3B、3C、3D、3E、3F、及び3G)である。当該TRX1抗体、例えばそれぞれが可変及び定常領域を含有する、軽鎖及び重鎖などのTRX1抗体の成分は、例えばSEQ ID No: 17(図3A)、18(図3B)、19(図3C、上側)、20 (図3C、下側)、21(図3D及び3E)、22(図3F)、23 (図3G、上側)、及び 24 (図3G、下側)に示されている。SEQ ID No:17(図3A)はTRX1軽鎖のアミノ酸配列であり、そしてSEQ ID No:18(図3B)はTRX1軽鎖のヌクレオチド配列である。SEQ ID No:19 (図3C、上側)は、リーダ配列を付した、TRX1軽鎖のアミノ酸配列である。SEQ ID No:20 (図3C、下側)は、例えばSEQ ID No:17のアミノ酸残基1-20など、リーダ配列のない、TRX1軽鎖のアミノ酸配列である。SEQ ID No:21 (図3D及び3E)のアミノ酸残基317-319などの糖鎖修飾部位を含有するTRX1重鎖アミノ酸配列と、TRX1重鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID No:22 (図3F) に示されている。SEQ ID No:23 (図3G、上側)は、リーダ配列を付した、TRX1重鎖のアミノ酸配列である。SEQ ID No:24 (図3G、下側)は、SEQ ID No:21のアミノ酸残基1-19などのリーダ配列がなく、アミノ酸残基298-300などの糖鎖修飾部位を含有する、SEQ ID No:21などのTRX1重鎖のアミノ酸配列である。TRX1は、ヒト抗体の修飾された定常領域、例えばSEQ ID No:17(図3A)又はSEQ ID No:19(図3C、上側)の軽鎖アミノ酸残基 132-238及びSEQ ID No:20(図3C、下側)のアミノ酸残基112-218 と、SEQ ID No:21 (図3D及び3E)又は SEQ ID No:23 (図3G、上側)の重鎖アミノ酸残基 138-467 及びSEQ ID No:24 (図3G、下側)のアミノ酸残基 119-448 と、軽鎖及び重鎖フレームワーク及びCDR領域とを含むヒト化抗体であり、但しこの場合、前記軽鎖及び重鎖可変領域のフレームワーク領域は、ヒトを由来とする、例えばSEQ ID No:17(図3A)又はSEQ ID No:19 (図3C、上側)のアミノ酸残基 21-43、59-73、81-112、及び 122-131及び SEQ ID No:20 のアミノ酸残基 1-22、33-53、61-92、及び102-111などの軽鎖可変領域のフレームワーク領域と、例えばSEQ ID No:21(図3D及び3E)又は SEQ ID No:23(図3G、上側)のアミノ酸残基 20-49、55-68、86-117、及び 127-137 並びにSEQ ID No:24 (図3G、下側)のアミノ酸残基 1-30、36-49、67-98、及び108-118 などの重鎖可変領域のフレームワーク領域に相当し、前記軽鎖のCDRは、NSM4.7.2.4.と指定されたマウスモノクローナル抗体を由来とする、例えばSEQ ID No:17(図3A)又はSEQ ID No:19 (図3C、上側)のアミノ酸残基 44-58、74-80、及び113-121 並びにSEQ ID No:20 (図3C、下側)のアミノ酸残基 24-32、54-60、及び93-101 であり、前記重鎖のCDRは、例えばSEQ ID No:21 (図3D及び3E)又は SEQ ID No:23(図3G、上側)のアミノ酸残基50-54、69-85、及び118-126 並びにSEQ ID No:24 (図3G、下側)のアミノ酸残基 31-35、50-66、及び 99-107である。
【0095】
別の実施態様では、当該の抗体はTRX1 (SEQ ID No:9、10、11、12、13、14、15、及び 16;図2A、2B、2C、2D、2E、2F、及び2G)である。当該TRX1抗体、例えばそれぞれが可変及び定常領域を含有する、軽鎖及び重鎖などのTRX1抗体の成分は、例えばSEQ ID No:9 (図2A)、10(図2B)、11 (図2C、上側)、12(図2C、下側)、13 (図2D及び2E)、14 (図2F)、15 (図2G、上側)及び 16 (図2G、下側)に示されている。SEQ ID No:9 (図2A)はTRX1 軽鎖のアミノ酸配列であり、そしてSEQ ID No:10(図2B)はTRX1軽鎖のヌクレオチド配列である。SEQ ID No:11 (図2C)は、リーダ配列を付したTRX1 軽鎖のアミノ酸配列である。SEQ ID No:12 (図2C)は、SEQ ID No:9のアミノ酸残基1-20など、リーダ配列のないTRX1 軽鎖、例えばSEQ ID No:9(図2A)である。例えばアミノ酸残基317のアスパラギンのアラニンへの変更を含有するなど、糖鎖修飾部位を含有しないTRX1 重鎖アミノ酸配列は、SEQ ID No:13 (図2D
及び2E)に示されており、このTRX1 重鎖のヌクレオチド配列は、SEQ ID No:14 (図2F)に示されている。SEQ ID No:15 (図2G、上側)は、リーダ配列を付した該TRX1 重鎖のアミノ酸配列である。SEQ ID No:16(図2G、下側)は 、SEQ ID No:13のアミノ酸残基1-19など、リーダ配列がなく、そしてアミノ酸残基298のアスパラギンのアラニンへの変更を含有するなど、糖鎖修飾部位を含有しない、SEQ ID No:13などのTRX1重鎖のアミノ酸配列である。TRX1 は、ヒト抗体の修飾された定常領域、例えば、SEQ ID No:9 (図2A)又はSEQ ID No:11 (図2C、上側)の軽鎖アミノ酸残基132-238及びSEQ ID No:12 (図2C、下側)のアミノ酸残基112-218と、SEQ ID No:13 (図2D及び2E)又は SEQ ID No:15 (図2G、上側)の重鎖アミノ酸残基 138-467 及びSEQ ID No:16 (図2G、下側)のアミノ酸残基 119-448 と、軽鎖及び重鎖フレームワーク及びCDR領域とを含むヒト化抗体であり、但しこの場合、前記軽鎖及び重鎖可変領域のフレームワーク領域は、ヒト抗体を由来とする、例えばSEQ ID No:9(図2A)又は SEQ ID No:11 (図2C、上側)のアミノ酸残基 21-43、59-73、81-112、及び122-131 並びにSEQ ID No:12(図2C、下側)のアミノ酸残基 1-22、33-53、61-92、及び102-111などの軽鎖可変領域のフレームワーク領域と、例えばSEQ ID No:13 (図2D及び2E)又は SEQ ID No:15 (図2G、上側)のアミノ酸残基 20-49、55-68、86-117、及び 127-137 並びにSEQ ID No:16 (図2G、下側)のアミノ酸残基 1-30、36-49、67-98、及び108-118などの重鎖可変領域のフレームワーク領域に相当し、そして軽鎖のCDRは、NSM4.7.2.4.と指定されたマウスモノクローナル抗体を由来とする、例えば、SEQ ID No:9(図2A)又は SEQ ID No:11 (図2C、上側)のアミノ酸残基44-58、74-80、及び 113-121 並びにSEQ ID No:12 (図2C、下側)のアミノ酸残基 24-32、54-60、及び 93-101 であり、そして重鎖のCDRは、例えばSEQ ID No:13 (図2D及び2E)又は SEQ ID No:15 (図2G、上側)のアミノ酸残基 50-54、69-85、及び 118-126 並びにSEQ ID No:16(図2G、下側)のアミノ酸残基 31-35、50-66、及び 99-107 である。
【0096】
別の実施態様では、当該の抗体は TRX1(SEQ ID No:25、26、27、28、29、30、31、及び 32;図4A、4B、4C、4D、4E、4F、及び4G)である。当該TRX1抗体、例えばそれぞれが可変及び定常領域を含有する、軽鎖及び重鎖などのTRX1抗体の成分は、例えばSEQ ID No:25 (図4A)、26(図4B)、27 (図4C、上側)、28 (図4C、下側)、29 (図4D及び4E)、30 (図4F)、31 (図4G、上側)、及び32 (図4G、下側)に示されている。SEQ ID No:25 (図4A)はTRX1軽鎖のアミノ酸配列であり、そしてSEQ ID No:26 (図4B)はTRX1軽鎖のヌクレオチド配列である。SEQ ID No:27 (図4C、上側)はリーダ配列を付した、TRX1軽鎖のアミノ酸配列である。SEQ ID No:28 (図4C、下側)は、SEQ ID No:25のアミノ酸残基1-20などのリーダ配列のない、SEQ ID No:25などのTRX1軽鎖のアミノ酸配列である。例えばアミノ酸残基317でのアスパラギンのアラニンへの変更を含有するなど、糖鎖修飾部位を含有しないTRX1 重鎖アミノ酸配列は、SEQ ID No:29 (図4D及び4E)に示されており、そしてこのTRX1 重鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID No:30 (図4F)に示されている。SEQ ID No:31 (図4G、上側)は、リーダ配列を付したTRX1 重鎖のアミノ酸配列である。SEQ ID No:32 (図4G、下側)は、例えばSEQ ID No:29のアミノ酸残基1-19など、リーダ配列がなく、例えばアミノ酸残基298でのアスパラギンのアラニンへの変更を含有するなど、糖鎖修飾部位を含有しない、SEQ ID No:29などのTRX1重鎖のアミノ酸配列である。TRX1は、ヒト抗体の修飾された定常領域、例えば、SEQ ID No:25 (図4A)又は SEQ ID No:27 (図4C、上側)の軽鎖アミノ酸残基 132-238及びSEQ ID No:28 (図4C、下側)のアミノ酸残基 112-218 と、SEQ ID No:29 (図4D及び4E)又は SEQ ID No:31 (図4G、上側)の重鎖アミノ酸残基 138-467 及びSEQ ID No:32 (図4G、下側)のアミノ酸残基 119-448 と、軽鎖及び重鎖フレームワーク及びCDR領域とを含むヒト化抗体であり、但しこの場合、前記軽鎖及び重鎖可変領域のフレームワーク領域は、ヒトを由来とする、例えばSEQ ID No:25 (図4A) 又は SEQ ID No:27 (図4C、上側)のアミノ酸残基 21-43、59-73、81-112、及び 122-131 並びにSEQ ID No.:28 (図4C、下側)のアミノ酸残基 1-22、33-53、61-92、及び 102-111 などの軽鎖可変領域のフレームワーク領域と、例えばSEQ ID No:29 (図4D及び4E)又はSEQ ID No:31 (図4G、上側)のアミノ酸残基 20-49、55-68、86-117、及び127-137 並びにSEQ ID No:32 (図4G、下側)のアミノ酸残基 1-30、36-49、67-98、及び108-118 などの重鎖可変領域のフレームワーク領域とに相当し、そして前記軽鎖のCDRは、NSM4.7.2.4と指定されたマウスモノクローナル抗体を由来とする、例えばSEQ ID No:25(図4A) 又は SEQ ID No:27 (図4C、上側)のアミノ酸残基 44-58、74-80、及び113-121 並びにSEQ ID No:28 (図4C、下側)のアミノ酸残基 24-32、54-60、及び93-101 であり、そして前記重鎖のCDRは、例えばSEQ ID No:29 (図4D及び4E)又はSEQ ID No:31 (図4G、上側)のアミノ酸残基50-54、69-85、及び118-126 並びにSEQ ID No:32 (図4G、下側)のアミノ酸残基 31-35、50-66、及び 99-107 である。
【0097】
別の実施態様では、当該のTRX1抗体は、図7A−7C(SEQ ID NO:71 及び 72)に示された重鎖配列を含む。別の実施態様では、当該のTRX1 抗体は、リーダ配列のない図7A−7Cに示された重鎖配列を含む。更に別の実施態様では、当該のTRX1抗体は、図8A−8B(SEQ ID NO:73 及び 74)に示された軽鎖配列を含む。更に別の実施態様では、当該のTRX1抗体は、リーダ配列のない、図8A−8Bに示された軽鎖配列を含む。
【0098】
ある実施態様では、本発明は、NSM4.7.2.4. などのマウスモノクローナル抗体を由来とする少なくとも一つのCDRドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を持つ抗CD4抗体を提供するものである。別の実施態様では、軽鎖可変領域(LCVR)は、SEQ ID No:1 又はSEQ ID No:3 などのアミノ酸残基44-58、74-80、及び113-121 、又は、SEQ ID No:4のアミノ酸残基 24-32、54-60、及び93-101 から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも一つのCDRドメインを有する。別の実施態様では、軽鎖可変領域(LCVR)は、SEQ ID No:1又は SEQ ID No:3 などのアミノ酸残基 44-58、74-80、及び 113-121、又は、SEQ ID No:4のアミノ酸残基 24-32、54-60、及び93-101から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも2つのCDRドメインを有する。更に別の実施態様では、軽鎖可変領域(LCVR)は SEQ ID No:1又はSEQ ID No:3 などのアミノ酸残基 44-58、74-80、及び 113-121、又は、SEQ ID No:4のアミノ酸残基 24-32、54-60、及び93-101 から成るアミノ酸配列を含むCDRドメインを有する。
【0099】
本発明のある実施態様では、当該の抗CD4抗体は、NSM4.7.2.4などのマウスモノクローナル抗体を由来とする少なくとも一つのCDRを含むヒトフレームワーク領域及び可変領域を含む。例えば、ある実施態様では、本発明の方法で用いられる抗CD4抗体は、SEQ ID No:1 又は SEQ ID No:3 などのアミノ酸残基 44-58、74-80、及び113-121、又はSEQ ID No:4 のアミノ酸残基 24-32、54-60、及び93-101から成る群より選択される少なくとも一つの軽鎖CDR配列を含む。ある実施態様では、本発明の方法で用いられる抗体は、前記軽鎖CDR配列のうちの少なくとも二つを含む。更に別の実施態様では、本発明の方法で用いられる抗体は、前記軽鎖CDR配列のうちの少なくとも三つを含む。
【0100】
別の実施態様では、本発明の方法で用いられる抗CD4抗体は、SEQ ID No:5又は SEQ ID No:7 などのアミノ酸残基 50-54、69-85、及び118-126 、又は、SEQ ID No:8のアミノ酸残基 31-35、50-66、及び99-107 から成る群より選択される少なくとも一つの重鎖CDR配列を含む。ある実施態様では、本発明の方法で用いられる抗体は、前記重鎖CDR配列のうちの少なくとも二つを含む。更に別の実施態様では、本発明の方法で用いられる抗体は、前記重鎖CDR配列のうちの少なくとも三つを含む。
【0101】
本発明の目的に適したTRX1ヒト化抗体又は他の抗CD4抗体を調製するための適した方法は、ここの教示から当業者には明白なはずである。このような抗体を、当業者に公知の組換え技術により調製してもよい。
【0102】
更に本発明を以下の実施例により描出するが、以下の実施例を限定的なものと捉えられてはならない。本出願や図面全体を通じて引用された全参考文献、特許及び公開済み特許出願の内容を、引用をもってここに援用することとする。
【0103】
実施例
以下、本発明を以下の実施例を参照しながら解説することとする。しかしながら、本発明の範囲は、それによって限定されるとは意図されていない。
【0104】
実施例1: アミノ酸配列から開始するTRX1抗体の構築
cDNA ライブラリをマウスハイブリドーマ NSM 4.7.2.4 から、Superscript プラスミド系(Gibco/BRL社、カタログ番号 82485A)をこのメーカのプロトコル案に従って構築した。重鎖及び軽鎖cDNAを該ライブラリからDNAハイブリダイゼーションにより、プローブとしてラットハイブリドーマYTS 177由来のラット重鎖及び軽鎖遺伝子cDNAを用いてクローニングした。
【0105】
YTS 177のラット重鎖及び軽鎖遺伝子cDNAを発現ベクタ pHA Pr-1 から BamH1/Sal 1 断片として単離し、32Pで標識し、個別に用いてNSM 4.7.2.4をスクリーニングした。標準的な分子生物学技術 (Sambrook, et al., Molecular Cloning, A. Laboratory Manual, 3rd edition, Cold
Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); Ausubel, et al., Current Protocols in Molecular
Biology, John Wiley & Sons, New York (2001).) を用いたcDNAライブラリ。NSM 4.7.2.4 cDNA ライブラリ由来のcDNAを配列解析すると、そのNSM 4.7.2.4 重鎖がマウスガンマ-1サブクラスであり、そのNSM 4.7.2.4 軽鎖がカッパであることを確認できた。このNSM 4.7.2.4重鎖及び軽鎖V領域(それぞれVH 及びVL)を、フレームワーク領域でマウスのそれに「ベスト・フィット」、又は配列類似性が最高になるように、ヒトVH又はVL領域に成形した。軽鎖については、配列類似性が79%のヒト抗体HSIGKAW (EMBLから)を用いた (LA Spatz et al., 1990 J. Immunol. 144:2821-8)。HSIGKAW VL (SEQ ID No.35) の配列は: MVLQTQVFISLLLWISGAYGDIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPPMFGQGTKVEIKRT
であり、
D はフレームワーク1の開始点であり、
Q はGへ変更されていた。
【0106】
重鎖については、配列類似性が74%のヒト抗体A32483 (GenBankから)を用いた(Larrick, et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., Vol. 160, pgs. 1250-1256 (1989))。A32483 VH (SEQ ID
No.36)の配列は:LLAVAPGAHSQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMHWVRQAPGQGLEWMGIINPSGNSTNYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAREKLATTIFGVLI
ITGMDYWGQGTLVTVSSGSAS
であり、
Q はフレームワーク1の開始点である。
【0107】
ヒト化プロセスについては、抗CD4軽鎖クローン 77.53.1.2(インサート・サイズは 1kb)及び抗CD4重鎖クローン 58.59.1 (インサート・サイズは 1.7kb)はcDNAライブラリから選び出され、インサートはpSport ベクタから Sal I/Not I 断片から単離されて、M13mp18 ベクタ中にクローニングされて、配列決定及び変異誘発のテンプレート用の一本鎖DNAが作成された。NSM 4.7.2.4 のヒト化は、マウスcDNAの部位指定変異誘発により、Amersham
International 社(RPN 1523) のキットをメーカのプロトコル案に従って用いて行われた。
【0108】
VL 遺伝子フレームワーク領域の変異誘発は、29乃至76塩基長の範囲の5種のオリゴヌクレオチドを用いて行われた。用いられたオリゴヌクレオチドは:
プライマ #1998 (SEQ ID No.37) 76 塩基
5'-TGA CAT TGT GAT GAC CCA ATC
TCC AGA TTC TTT GGC TGT GTC TCT AGG TGA GAG GGC CAC CAT CAA CTG CAA GGC C

プライマ #1999(SEQ ID No.38) 29 塩基
5'-TGA ACT GGT ATC AAC AGA AAC
CAG GAC AG

プライマ #2000(SEQ ID No.39) 28 塩基
5'-AGA GTC TGG GGT CCC AGA CAG GTT TAG T

プライマ #2001 (SEQ ID No.40) 42 塩基
5'-GTC TTC AGG ACC CTC CGA CGT
TCG GTG GAG GTA CCA AGC TGG

プライマ #2008 (SEQ ID No.41) 52 塩基
5'-CAC CCT CAC CAT CAG TTC TCT
GCA GGC GGA GGA TGT TGC AGT CTA TTA GTG T
であった。
【0109】
前記オリゴヌクレオチドをリン酸化させ、変異誘発を一ステップ当り二種以下のオリゴヌクレオチドを用いて三ステップで行って、以下の手法に従って変更を導入した:
(1)リン酸化した変異オリゴヌクレオチドをssDNAテンプレートにアニールする
(2)重合化させる
(3)濾過して一本鎖DNAを取り除く
(4)非変異鎖をNci Iでニッキンングする
(5)非変異鎖をExo IIIで消化する
(6)ギャップの有るDNAを再重合化させる
(7)コンピテントJM101を形質転換させる
(8)クローンを配列決定する
【0110】
M13 プライマ -20 及び -40 並びに変異原性プライマ # 1999 及び# 2000を用いて一本鎖DNAを配列決定することにより、変異を確認した。
【0111】
可変領域の5’末端にあるSal I 部位をリンカ・オリゴヌクレオチド #2334 及び #2335 によりHind IIIに変更して、可変領域をHind III/Kpn I 断片としてCAMPATH-1Hの軽鎖定常領域中にクローニングできるようにした。

プライマ #2334
(SEQ ID No.42) 24 塩基
5’-AGC TTT ACA GTT ACT GAG CAC ACA

プライマ #2335
(SEQ ID No.43) 24 塩基
5’-TCG ATG TGT GCT CAG TAA CTG TAA
【0112】
VH遺伝子フレームワーク領域の変異誘発を、24 乃至75 塩基長の範囲の5種のオリゴヌクレオチドを用いて行った。用いられたオリゴヌクレオチドは:
プライマ #2003 (SEQ ID No.44) 75 塩基
5’-GGT TCA GCT GGT GCA GTC TGG
AGC TGA AGT GAA GAA GCC TGG GGC TTC AGT GAA GGT GTC CTG TAA GGC TTC TGG

プライマ # 2004 (SEQ ID No.45) 52 塩基
5’-AGC TGG GTG AGG CAG GCA CCT
GGA CAG GGC CTT GAG TGG ATG GGA GAG ATT T

プライマ #2005 (SEQ ID No.46) 60 塩基
5’-CAA GGG CAG GGT CAC AAT GAC
TAG AGA CAC ATC CAC CAG CAC AGT CTA CAT GGA ACT CAG

プライマ #2006(SEQ ID No.47) 43 塩基
5’CAG CCT GAG GTC TGA GGA CAC
TGC GGT CTA TTA CTG TGC AAG A

プライマ #2007 (SEQ ID No.48) 24 塩基
5’-GCC AAG GGA CAC TAG TCA CTG
TGT
だった。
【0113】
変異誘発を、一度に二種以下のオリゴヌクレオチドを用いて再度軽鎖について上述したように行って変更を導入した。M13 プライマ -20 及び -40 や変異原性プライマ #2002 及び#2004を用いて一本鎖DNAの配列決定を行うことにより、変異を確認した。
【0114】
プライマ #2002 を用いて、開始クローン58.59.1中の読み枠エラーを修正した。
【0115】
プライマ #2002 (SEQ ID No.49) 39 塩基
5’-ACT CTA ACC ATG GAA TGG ATC
TGG ATC TTT CTC CTC ATC
【0116】
プライマ #2380を用いて、#2004 により加えられた、最初の配列決定になかった余分な変異を修正した。
プライマ #2380 (SEQ ID No.50) 39 塩基
5’-TCA CTG CCT ATG TTA TAA GCT
GGG TGA GGC AGG CAC CTG
【0117】
軽鎖と同様に、重鎖の 5’ Sal I 部位をHind III にリンカ・オリゴヌクレオチド #2334 及び #2335 を用いて変更して、重鎖可変領域をHind III/ Spe I(プライマ #2007により導入された部位) 断片としてCAMPATH-1Hの重鎖定常領域にクローニングできるようにした。
【0118】
重鎖の構築
以下のDNA試料を用いた:
1.プラスミド1990。pUC18 (Wellcome Foundation
社のマーチン・シムズ氏より入手)中にクローニングされたヒトガンマ-1重鎖定常領域遺伝子。
2.プラスミド 2387:ヒトフレームワーク領域及びマウスガンマ1手以上領域を含有するNSM 4.7.2.4 の成形された重鎖。
【0119】
成形後のCD4重鎖のSal I 部位をHind III 部位に変更した。その可変領域遺伝子をHind III/Spe I による消化で切り出し、定常領域遺伝子にプラスミド1990 内でライゲートして、完全なヒト化重鎖(プラスミド2486)を作製した。該重鎖遺伝子をこのプラスミドからHind III/EcoR I で切り出し、発現ベクタpEE6にライゲートした。
【0120】
軽鎖の構築
以下のDNA試料を用いた。
1.プラスミド2028;M13mp18にSal I/BamH I 制限部位でクローニングされたCAMPATH-1H 軽鎖遺伝子。
2.プラスミド2197;ヒトフレームワーク領域及びマウスカッパ定常領域を含有するNSM 4.7.2.4 の成形された軽鎖。 Kpn I 部位は既にこの遺伝子の可変及び定常部に導入されている。
【0121】
Kpn I制限部位をプラスミド2197中の部位に相当するCAMPATH 1H軽鎖遺伝子に導入し、EcoR I 部位をその定常領域の3'側末端に導入した。該定常領域遺伝子を当該プラスミド(2502) からHind III/Kpn Iによる消化で切り出した。
【0122】
その間、プラスミド2197 中のSal I 部位をHind III 部位に変更した(不慮のフレーム−シフト変異が初回で導入されたために、このステップを繰り返さねばならなかった)。新たなプラスミド (2736) をHind III/Kpn Iで消化した。CD4可変領域断片を、プラスミド2502由来のカッパ定常領域遺伝子を含有するプラスミドにクローニングして、完全なヒト化軽鎖(プラスミド2548)を作製した。該軽鎖遺伝子をこのプラスミドからHind III/EcoR Iで切り出し、発現ベクタpEE12 にライゲートしてプラスミド2798を作製した。
【0123】
重鎖及び軽鎖のライゲーション及びNS0細胞での発現
該重鎖遺伝子をpEE6 ベクタからSal I/Bgl II による消化で切り出し、BamH I/Sal Iで消化してある軽鎖pEE12ベクタ中にクローニングした。
【0124】
最終的なベクタコンストラクトを、Hind III、EcoR I、Sal I、BamH I、BgI II 及び Spe I による制限消化で、pEE6の700 bp の軽鎖、1400 bp の重鎖、2300 bp の断片、及びpEE12の7000 bp の断片を含む予想される断片の存在についてチェックした。
【0125】
pEE12 ベクタをSal I で消化して直線化し、エレクトロポレーションでNSO 細胞に標準的なプロトコル (Celltech 1991) に従って移したが、例外として選択培地はDMEMではなくIMDMに基づいて僅かに改良された。推奨通りにグルタミンを欠き、透析済みFCS、リボヌクレオシド、グルタミン酸、及びアスパラギンを添加した培地でトランスフェクタントを選抜した。
【0126】
トランスフェクション混合物を3枚の96ウェル・プレートで培養すると、検査した36個の成長中のウェルのうちで5個がヒト重鎖及び軽鎖の産生について強陽性だった(18個の他のものは、一方又は他方について陽性であるか、又は両者について弱陽性だった)。
【0127】
SDG/B7B.A.7 と指定されたクローンを選抜し、凍結保存したが、それ以上の特徴付けはこの野生型抗体については行われなかった。
【0128】
エフェクタ機能を失わせると指摘された変異IgG1抗体の構築
多様な臨床知見で報告された他のCD4抗体の副作用に関して懸念があったため、Fc受容体の結合の可能性を避けることが好ましいと考えられる。ヒトIgG4は最小限のFc結合能又は補体活性化能を有すると考えられる。しかしながら、実験では、個人によってはそれがFc受容体に結合することがある示されており (Greenwood et al., Eur. J. Immunol., Vol.
23, pgs. 1098-1104, 1993)、CAMPATH-1H に対するヒトIgG4バリアントを用いた臨床研究では、in vivoでの細胞致死能が実証されている (Isaacs et al., Clin. Exp. Immunol., Vol. 106, pgs. 427-433 (1996))。Fc受容体の結合の可能性をなくすために、IgG1重鎖定常領域に変異のあるコンストラクトを作製した。
【0129】
SEQ ID No:5 及び6、並びにSEQ ID No:21 及び22に示すように、例えばLeu236 を Ala に、そしてGly238 をAlaにするなど、変異を有するようにTRX 1 を作製することができる。これら特定の残基が選ばれたのは、これらがIgGのあらゆる種類のヒトFc受容体への結合を最大限に損ねると予測されるからである。いずれかの変異があれば、Fc(RI (Woof, et al., Mol. Immunol, Vol. 332, pgs. 563-564,
1986; Duncan, et al., Nature,
Vol. 332, pgs. 563-564 1988; Lund, et al.,
J. Immunol, Vol. 147, pgs. 2657-2662 1991)又はFc(RII (Lund
et al., 1991; Sarmay et al., Mol. Immunol., Vol. 29, pgs.
633-639 1992) への結合を減らすのに充分であるが、Gly238 のAla への変更は、Fc(RIII (Sarmay et al., 1992)への結合に対しては最大の効果を有する。
【0130】
以下のDNA試料を用いた。
1.プラスミド2555 及びプラスミド 2555 Mut; pEE6 発現ベクタ中にHind III/Spe I 制限部位でクローニングされたNSM 4.7.2.4のヒト化VH領域。次にプラスミド 2555を部位指定変異誘発法で変異させて、SEQ ID Nos:5 及び6、並びにSEQ ID Nos:21 及び 22で示されるように、アミノ酸残基Asn101 をAsp101に変更した。その結果のプラスミド はプラスミド 2555 Mutだった。
2.プラスミド 2798; NSM 4.7.2.4 のヒト化VH領域をヒトカッパ定常領域に接合してpEE12 発現ベクタにHind III/EcoR Iでクローニングされたほぼ700 bp 断片を生じさせた。
3.プラスミド MF4260; ヒトIgG1重鎖を、Leu236 がAla に、そしてGly238 がAla になった変異と、フレームワーク領域4に導入されたSpe I 制限部位とを、pUC18中にクローニングさせて有するヒト化CD18 VH領域に結合させた。
【0131】
該Spe I 制限部位の目的は、異なる可変領域を分離及び組換え可能にすることだった。
【0132】
該CD18 VH 領域遺伝子は、プラスミド MF 4260から、Spe I 及びHind III による消化で切り出され、今や重要な重鎖定常領域のみを有することとなった残りのベクタは、Genecleanを用いて精製された。それを、プラスミド2555 Mutから単離してあったNSM 4.7.2.4 のヒト化VH領域DNAに同じ方法でライゲートした。この産物を用いて「確かな」細胞を形質転換し、コロニーを、予想上の1400 bpの完全な重鎖インサートの存在についてチェックする。
【0133】
完全なVH 及び定常領域インサートをpUC ベクタからHind III 及び EcoR Iによる消化で切り出した。該1400 bp の断片をQiaexII (Qiagen社) を用いて精製した後、予め同じ酵素で切断してあるベクタpEE6にライゲートする。
【0134】
次のステップは、CD4 重鎖遺伝子をpEE6 ベクタから切り出し、それらを、既にヒト化CD4軽鎖遺伝子(プラスミド2798)を含有しているpEE12中にクローニングすることだった。pEE6 ベクタをSal I 及びBgI II で消化し、pEE12 ベクタをSal I 及びBamH I で消化して、再ライゲーション用の適した部位を作る。
【0135】
最終的なベクタコンストラクトをHind III、EcoR I、Sal I 及びSpe I による制限消化産物で、予想上の断片、即ち、700 bp の軽鎖、1400 bp の重鎖、pEE6の2300 bp の断片、及びpEE12の 7000 bpの断片 の存在についてチェックした。
【0136】
pEE12 ベクタをSal I で消化して直線化し、上述したようにエレクトロポレーションでNSO 細胞にトランスフェクトした。このトランスフェクション混合物を6枚の96ウェル・プレートで培養すると、検査した90個の成長中のウェルの全てがヒト重鎖及び軽鎖の産生について陽性だった。この段階でpEE12 ベクタDNA の試料をSal I で消化し、エタノールで沈降させた。
【0137】
最終的なトランスフェクタントのトランスフェクション及び選抜
TRX1発現ベクタ DNA「pTX/C4」を、「親CHO DHFR-MCB1から増殖させた指数関数的に成長中のCHO/dhfr- 細胞にトランスフェクトした。
【0138】
該TRX1 DNA を直線化し、(10)μgの該直線化TRX1 DNA を、エレクトロポレーション・キュベットに入れた1 ml (3×106細胞) の指数関数的に成長中のCHO/dhfr- 細胞に氷上で加えた。その細胞に(1000ボルト、25マイクロファラデーの静電容量、及び∞オームの抵抗に設定した BioRad Gene Pulser IIを用いて)トランスフェクトした。エレクトロポレーション後、細胞を氷上に10分間、置いた後、T25 組織培養フラスコに加え、37℃、5%のCO2インキュベータ内でインキュベートした。ネオマイシン耐性の表現型について形質転換体を選抜した後、DHFR + 形質転換体の選抜及び増殖を、10%が米国産の(2001年に収穫)メトトレキセート、放射線照射及び透析済みのFBS、及びネオマイシンを添加したα-MEMを用いて行った。メトトレキセート及びネオマイシンを含有するこの培地で生き延びた細胞を生産能でスクリーニングし、96ウェル・プレート中の限界希釈でクローニングした。次にこれらのクローンを、より生産能の高いものについてスクリーニングした。サブクローン「E9/3A2」が最も高い特異的生産能を有することが見出された。このクローンを選抜し、その後、播種前ストックの調製に向けて増殖させた。
【0139】
抗体の精製
Biopilot クロマトグラフィ・システム(Pharmacia社)を用い、以下の通りに3つのステップで培養上清を精製する:
(1)プロテインA-Sepharose Fast Flow上でのアフィニティ・クロマトグラフィ。
(2)S-Sepharose Fast Flowでのイオン交換クロマトグラフィ。
(3)Superdex 20でのサイズ排除クロマトグラフィ。
【0140】
精製後の産物を濾過し、一本のバイオコンテナ中にプールした。
【0141】
当該の精製プロセス全体を通じ、システムが無菌であるように注意を払う。緩衝液及び試薬はすべて、0.2 ミクロンのメンブレン・フィルタを通し、精製済みの産物も、プール前に0.2 ミクロンのメンブレン・フィルタを通す。一バッチの抗体を処理後は、全クロマトグラフィ・システム及びカラムを0.5M NaOHで消毒し、無菌PBSで洗浄し、20% エタノールに入れて保管する。それを再度用いる前に、エタノールを無菌PBSで洗い流し、一回の完全な試験泳動を行う。緩衝液及びカラム溶出物の試料をエンドトキシン・レベルについてチェックする。
【0142】
実施例2: ヌクレオチド配列から開始するTRX1抗体の構築
ヒト定常領域のクローニング
重鎖定常領域
ヒトガンマ重鎖定常領域(IgG1)をヒト白血球cDNA(QUICK-CloneTM
cDNA カタログ番号 7182-1、Clontech社) から以下のプライマ・セットを用いて増幅し、pCR-Script
(Stratagene社)中にクローニングする。ヒトガンマ重鎖定常領域をpCR-Scriptに含有するプラスミドをpHCγ-1と指定する。
【0143】
プライマ hcγ-1 (SEQ ID No.51)
Spe I
5’ プライマ: 5’- ACT AGT CAC AGT CTC CTC AGC
プライマ hcγ-2 (SEQ ID No.52)

EcoR I
3’ プライマ: 5’- GAA TTC ATT TAC CCG GAG ACA G
【0144】
非-Fc 結合性の変異(Leu236Ala、Gly238Ala
)を重鎖定常領域に部位指定変異誘発により以下のプライマ及びClontech社のTransformerTM
Site-Directed Mutagenesis Kit (カタログ番号 No. K1600-1)を用いて作る。ヒトガンマ1重鎖非Fc結合性の変異定常領域をpCR-Script に含有するプラスミドを pHCγ-1Fcmutと指定する。
【0145】
プライマ hcγ-3(SEQ ID No.53)
Fc mut oligo: 5’- CCG TGC CCA GCA CCT GAA CTC
GCG GGG GCA CCG TCA GTC TTC CTC CCC C
【0146】
軽鎖定常領域
ヒトカッパ軽鎖定常領域をヒト白血球cDNA (QUICK-CloneTM
cDNA カタログ番号 No. 7182-1、Clontech社) から以下のプライマ・セットを用いて増幅し、pCR-Script (Stratagene社)中にクローニングする。ヒトカッパ軽鎖定常領域をpCR-Script 含有するプラスミドをpLCκ-1と指定する。
【0147】
プライマ lcκ-1 (SEQ ID No.54)
Kpn I
5’ プライマ: 5’-
GGT ACC AAG GTG GAA ATC AAA
CGA AC
プライマ lcκ-2 (SEQ ID No.55)
Hind III
3’ プライマ: 5’-
AAG CTT CTA ACA CTC TCC CCT
GTT G
【0148】
TRX1可変領域の合成、構築及びクローニング
重鎖及び軽鎖可変領域を、可変領域全体を包含する一組の部分的に重複し、かつ相補的な合成オリゴヌクレオチドから構築する。各可変領域に用いられたオリゴヌクレオチド・セットを下に示す。
【0149】
重鎖定常領域合成オリゴヌクレオチド
コーディング鎖重鎖可変領域プライマ
プライマ hv-1 (1 − 72) + 6 ヌクレオチド・リンカ (SEQ ID No.56)
5’- aagctt ATG GAA TGG ATC TGG
ATC TTT CTC CTC ATC CTG TCA GGA ACT CGA GGT GTC CAG TCC CAG GTT CAG CTG GTG

プライマ hv-2 (120 − 193) (SEQ ID No.57)
5’- C TGT AAG GCT TCT GGA TAC
ACA TTC ACT GCC TAT GTT ATA AGC TGG GTG AGG CAG GCA CCT GGA CAG GGC CTT G

プライマ hv-3 (223 − 292) (SEQ ID
No.58)
5’- GGT AGT AGT TAT TAT AAT
GAG AAG TTC AAG GGC AGG GTC ACA ATG ACT AGA GAC ACA TCC ACC AGC ACA G

プライマ hv-4 (322 − 399) (SEQ ID No.59)
5’- GAG GAC ACT GCG GTC TAT
TAC TGT GCA AGA TCC GGG GAC GGC AGT CGG TTT GTT TAC TGG GGC CAA GGG ACA CTA GT

非コーディング鎖重鎖可変領域プライマ
プライマ hv-5 (140 − 51) (SEQ ID No.60)
5’- GTG TAT CCA GAA GCC TTA CAG GAC ACC TTC ACT
GAA GCC CCA GGC TTC TTC ACT TCA GCT CCA GAC TGC ACC AGC TGA ACC TGG GAC TGG

プライマ hv-6 (246 − 170) (SEQ ID No.61)
5’- CTT CTC ATT ATA ATA ACT
ACT ACC GCT TCC AGG ATA AAT CTC TCC CAT CCA CTC AAG GCC CTG TCC AGG TGC CTG CC

プライマ hv-7 (342 − 272) (SEQ ID No.62)
5’- GTA ATA GAC CGC AGT GTC
CTC AGA CCT CAG GCT GCT GAG TTC CAT GTA GAC TGT GCT GGT GGA TGT GTC TC
【0150】
軽鎖可変領域合成オリゴヌクレオチド
コーディング鎖軽鎖可変領域プライマ

プライマ lv-1 (1 - 63) + 6 ヌクレオチド・リンカ (SEQ ID No.63)
5’- gaattc ATG GAG ACA GAC ACA
ATC CTG CTA TGG GTG CTG CTG CTC TGG GTT CCA GGC TCC ACT GGT GAC

プライマ lv-2 (93 - 158) (SEQ ID
No.64)
5’- GGC TGT GTC TCT AGG TGA
GAG GGC CAC CAT CAA CTG CAA GGC CAG CCA AAG TGT TGA TTA TGA TGG

プライマ lv-3 (184 - 248) (SEQ ID
No.65)
5’- CAG AAA CCA GGA CAG CCA
CCC AAA CTC CTC ATC TAT GTT GCA TCC AAT CTA GAG TCT GGG GTC CC

プライマ lv-4 (275 - 340) (SEQ ID
No.66)
5’- GGA CAG ACT TCA CCC TCA
CCA TCA GTT CTC TGC AGG CGG AGG ATG TTG CAG TCT ATT ACT GTC AGC

非コーディング鎖軽鎖可変領域プライマ
プライマ lv-5 (109-43) (SEQ ID No.67)
5’- CAC CTA GAG ACA CAG CCA
AAG AAT CTG GAG ATT GGG TCA TCA CAA TGT CAC CAG TGG AGC CTG GAA C

プライマ lv-6 (203-138)
(SEQ ID No.68)
5’- GGT GGC TGT CCT GGT TTC TGT
TGA TAC CAG TTC ATA TAA CTA TCA CCA TCA TAA TCA ACA CTT TGG

プライマ lv-7 (294-228) (SEQ ID No.69)
5’- GGT GAG GGT GAA GTC TGT
CCC AGA CCC ACT GCC ACT AAA CCT GTC TGG GAC CCC AGA CTC TAG ATT G

プライマ lv-8 (378-319) (SEQ ID No.70)
5’- GGT ACC TCC ACC GAA CGT
CGG AGG GTC CTG AAG ACT TTG CTG ACA GTA ATA GAC TGC AAC
【0151】
HPLC精製及び有機溶媒除去後、オリゴヌクレオチドをTE pH8.0 に再懸濁させ、リン酸化させる。次に、各可変領域組中の各オリゴヌクレオチドの一アリクォートを等モル量、組み合わせる。このオリゴヌクレオチド混合物を68℃まで10分間、加熱し、室温までゆっくりと冷ます。その後、アニール後にオリゴヌクレオチドを伸長させて二本鎖可変領域DNA 断片を作製する。伸長には、dNTPを最終濃度0.25 mMになるまで加えた後、適した容量の5X T4 DNA ポリメラーゼ緩衝液 [165 mM Tris 酢酸、 pH 7.9, 330 mM 酢酸ナトリウム、50mM 酢酸マグネシウム、500 (g/ml BSA,
2.5mM DTT] 及び4単位のT4 DNA ポリメラーゼを加える。この混合物を37℃で1時間、インキュベートした後、T4 DNA ポリメラーゼを65℃で5分間、熱失活させる。
【0152】
前記の二本鎖DNA をエタノール沈降させ、同じ容量のTE pH 8.0に再懸濁させる。次に、適した容量の5X T4 DNA リガーゼ緩衝液 [250mM Tris-HCl、pH7.6、50mM MgCl2、 5mM ATP、5mM DTT、25% w/v ポリエチレングリコール-8000] をその二本鎖DNAに加えた後、2単位のT4 DNA リガーゼを加え、当該混合物を1時間、37℃でインキュベートして、伸長後の断片をライゲートさせる。その後、T4 DNA リガーゼを65℃で10分間、熱失活させる。次に可変領域DNA 断片をフェノール抽出し、エタノール沈降させ、TE, pH 8.0 に再懸濁させた後、pCR-Script
(Stratagene社)中にクローニングする。重鎖可変領域を含有する、その結果のプラスミドをpHV-1と指定し、軽鎖可変領域を含有するプラスミドをpLV-1と指定した。
【0153】
最終的な重鎖及び軽鎖発現ベクタをpcDNA 3.1
(Invitrogen社)中に構築する。重鎖発現ベクタの場合、Fc 変異させた定常領域を プラスミド pHC-1Fcmut から、Spe I 及び EcoR I による消化で遊離させ、アガロース・ゲル電気泳動法で単離する。重鎖可変領域を、プラスミド pHV-1 から、Hind III 及び Spe I による消化で放出させ、アガロース・ゲル電気泳動法で単利する。等モル量のこの2つの断片をpcDNA3.1(+)
(Invitrogen社)
のHind
III/EcoR I 部位に標準的な分子生物学技術を用いてライゲートする。その結果できるTRX1 重鎖発現ベクタをpTRX1/HCと指定する。
【0154】
同様に、軽鎖発現ベクタについては、軽鎖定常領域をプラスミド pLC-1 からKpn I 及び Hind III による消化で遊離させた後、アガロース・ゲルによる精製を行う。軽鎖可変領域をpLV-1からEcoR I 及び Kpn I による消化で遊離させた後、アガロース・ゲルによる精製を行う。等モル量のこの2つの軽鎖断片をpcDNA3.1(-)
(Invitrogen) のEcoR I/Hind III 部位に標準的な分子生物学技術を用いてライゲートして、TRX1 軽鎖発現ベクタpTRX1/LCを得る。
【0155】
TRX1 抗体の産生に向け、TRX1 重鎖及びTRX1 軽鎖発現プラスミドをCHO 細胞に標準的な分子生物学技術を用いて同時トランスフェクトする。
【0156】
実施例3: 無糖鎖化TRX1抗体の構築
ヒト化抗体、例えばそれぞれが定常領域及び可変領域を含有する、軽鎖及び重鎖などのヒト化抗体の成分、例えばアミノ酸残基はSeq ID No:9、11、12、13、15、及び16 (図2A、2C、2D、2E、及び2G)に示されているが、実施例1と同様の手法により作製した。このヒト化抗体は無糖鎖化抗体である。
【0157】
実施例4: 無糖鎖化TRX1抗体の構築
ヒト化抗体、例えばそれぞれが定常領域及び可変領域を含有する、軽鎖及び重鎖などのヒト化抗体の成分、例えばアミノ酸残基はSeq ID No:25、27、28、29、31、及び 32 (図4A、4C、4D、4E、及び4G)に示されているが、実施例1と同様の手法により作製した。このヒト化抗体は無糖鎖化抗体である。
【0158】
実施例5: 霊長類のTRX1抗体による処置
1日目に、体重4.6 gのヒヒに別にヒヒ由来の不適合腎移植片を移植し、ヒト化抗体、例えばそれぞれが定常領域及び可変領域を含有する、軽鎖及び重鎖などのヒト化抗体の成分、例えばアミノ酸残基はSeq ID No:9、11、12、13、15、及び16 に示されたものなどのCD4抗体と、例えばそのアミノ酸配列をSEQ ID No:33 (図5A−5C)及び34 (図 6)(核酸配列は SEQ ID No:75 (図5A−5C)及び76 (図 6)に記載した通りである)に示すような枯渇性ヒト化CD8抗体の両者で、以下の表1のプロトコルに従って処置した。
【0159】
この動物は、免疫抑制剤の投与無しで80日を越えて生存した。加えて、約20日間の期間を除き、クレアチン・レベルは 2 mg/dL未満だった。
【0160】
【表1】

【0161】
これらの材料及び方法を以下の実施例で用いた。
【0162】
抗原の源としてのウマ免疫グロブリン
抗蛇毒素(クロタリダエ−ポリバレント(原語:Crotalidae
polyvalent))をFort Dodgeラボラトリーズ(カンザス州オーバーランド・パーク)から購入し、メーカの提供した希釈剤で再構築し、我々のウマIg供給源として用いた。この溶液を2ミクロンのシリンジ・フィルタで濾過し、0.9% 理食塩水で25 mg/ml に希釈し、64℃で35分間、インキュベートした後、氷上で一晩、インキュベートすることにより、凝集させた。使用するまで材料を−80℃で保存した。各ロット中の凝集した材料の量を、HPLC サイズ排除クロマトグラフィで判定すると、総たんぱく質の21.2% 乃至 29.9% だった。
【0163】
TRX1の作製及び精製
TRX1 はマウス抗ヒトCD4ハイブリドーマNSM 4.7.2.4由来である。親重鎖及び軽鎖cDNA をNSM 4.7.2.4 cDNA ライブラリから、標準的な分子生物学技術を用いたラット重鎖及び軽鎖遺伝子cDNAプローブとの交差ハイブリダイゼーションにより、クローニングした。NSM 4.7.2.4 由来のcDNAの配列解析で、重鎖アイソタイプがガンマ-1 及び軽鎖カッパであることを確認した。NSM 4.7.2.4 マウスVH 及びVL 領域を、このマウスVH及びVLのそれに最も類似性の高い「ベスト・フィット」又はヒトフレームワークを用いて、ヒトVH 及びVL 領域に成形した。軽鎖については、配列類似性が79%のヒト抗体 HSIGKAW (EMBLから) を標的配列として用いた。重鎖については、配列類似性が74%のヒト抗体A32483 (GenBank) を用いた。ヒト化は、マウスcDNAクローンの部位指定変異誘発により行われた。抗体のFc受容体への結合や補体固定を無くすために、一箇所のアミノ酸置換を、Fc領域に、γ1重鎖定常領域のアミノ酸位置297で部位指定変異誘発により導入して、N結合糖鎖修飾部位をなくした。
【0164】
TRX1 抗体は Therapeutic
Antibody Centre (英国オックスフォード) でCHO細胞トランスフェクタントの中空ファイバー発酵により作製された。この抗体を培養上清からプロテインAアフィニティ・クロマトグラフィ、続いて陽イオン/陰イオン交換、ナノ濾過、及び最後にサイズ排除クロマトグラフィを行うことにより、精製した。精製後の材料をPBSで調合し、−80℃で保存した。
【0165】
寛容誘導及び抗原刺激プロトコル
ヒヒ実験はすべて、Southwest Foundation for
Biomedical Research (テキサス州サンアントニオ) で、Institutional Animal Care and
Use Committeeの承諾を受けたプロトコルの下で行われた。当該研究から7乃至21日前に、動物を身体検査、CBC及び血清化学検査でスクリーニングした。リンパ球サブセット数と、CD3+細胞上のCD4発現レベルを、基線値のために判定した。 二組目の基線値を、一回目のTRX又は生理食塩水輸注の直前の−1日目に採集した。必要に応じて動物を一回の用量の10 mg/kg ケタミンに5 mg ジアゼパムで鎮静化させて、容易に扱えるようにした。TRX1及び生理食塩水の輸注液を30 ml/1時間の速度で静脈内投与した。輸注前及び輸注後の温度、血圧及び呼吸を観察した。各輸注時と、その後の血清試料最終時に、動物の皮膚の発疹及びリンパ節膨張を調べた。加えて、不快、倦怠、関節痛及び胃腸管合併症の兆候について動物を毎日、観察した。一回目の用量の抗原(ウマIg)は、0日目に10 mg/kgを 静脈内ボーラス投与された。その後のウマIgの用量(4日目、8日目、68日目、95日目及び130日目)はすべて、1 mg/kgの皮下ボーラスだった最後の抗原刺激を除き、10 mg/kg 皮下ボーラスで投与された。
【0166】
TRX暴露後にneo抗原に対して免疫コンピテントであることを実証するために、動物をSRBC (カリフォルニア州ディクソン、HemoStat
Laboratories社) で免疫処理した。全ての動物に、0.9% 無菌生理食塩水に10% SRBCを溶かした溶液を当該研究の68日目に1.7 mg/kgの用量にして一回、静脈内注射した。
【0167】
TRX1血清中濃度
血清中のTRX1の濃度はELISAにより判定された。可溶性CD4をPBSに溶かした50μlの5μg/mlの溶液(英国オックスフォード、Therapeutic
Antibody Centreのご厚誼により提供された)を96ウェル・プレートに分注し、一晩、2−8℃でインキュベートした。0.05% Tween 20(洗浄緩衝液)を含有するPBSで3回、洗浄した後、プレートを1% BSA、0.05% Tween 20 のPBS (遮断緩衝液)で1時間、37℃で遮断した後、2乃至8℃で保存した。使用直前にプレートを3回、洗浄緩衝液で洗浄した。ヒヒ血清試料を1:10 又は 1:100 になるように遮断緩衝液に入れた希釈液から調製し、続いて1:20に連続希釈した後、希釈後の試料を50μl、可溶性CD4で被覆したプレートに移した。各プレート上に含まれた標準曲線は、1:4に連続希釈された未結合のTRX抗体の1μg/mlの溶液から作製された。37℃で2時間、インキュベートした後、プレートを3回、洗浄し、50μlのペルオキシダーゼ結合ロバ抗ヒトIgG (遮断緩衝液に入れた0.08μg/ml) を各ウェルに加えた。プレートを1時間、室温でインキュベートし、3回、洗浄し、展開させた。TRX1 血清中濃度を、TRX1標準曲線の直線部分に来る全てのOD値から計算した。
【0168】
ウマIgに対する免疫応答
ウマIgに対するヒヒ抗グロブリン応答をELISAで判定した。抗ヘビ毒素を炭酸緩衝液に溶かした10μg/mlの溶液で50μl/ウェルになるように被覆した96ウェルプレートを、一晩、4℃でインキュベートした。次にプレートを3回、洗浄し、2時間、37℃で遮断した。この遮断ステップ後、プレートを3回、洗浄し、ヒヒ血清試料をウェル(50μl/ウェル)に、1:10希釈度で始まる3倍連続希釈スキームを用いて加え、室温で2時間、インキュベートした。
【0169】
3回の洗浄後、ペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヒトIgG/IgM 抗体(1/10,000に希釈)を各ウェルに加え(50μl/ウェル)に加え、室温で1時間、インキュベートした。次にプレートを3回、洗浄し、100μlの基質を各ウェルに加えた後、室温で8分間、インキュベートした。各プレート上に陽性コントロール血清を含めることにより、検定を正規化した。この陽性コントロール血清は、予め免疫してある動物から得られ、すべての検定で標準として1:25,000の希釈度で用いられた。抗体価は、標準の1:25,000希釈度のOD値の2倍に等しいOD値になる希釈度の逆数であると定義しておく。
【0170】
SRBC溶血検定
SRBCに対する免疫応答を溶血で評価した。血清試料を56℃で30分間、熱失活させた後、PBSに0.1%のBSAを加えたものの中で1:10の希釈度から開始する2倍の連続希釈液を調製した。100μlの希釈済み血清を等容の1% SRBC溶液に配合した後、PBS1に1:10に希釈したSRBCで予め吸着させた100μlのモルモット補体(Sigma-Aldrich社) を加えた。該プレートを37℃で30分間、インキュベートした。抗体価は、明白な溶血を起こさない最も高い血清希釈度の逆数であると定義しておく。
【0171】
抗体及びフローサイトメトリ
正常なロバ血清、ロバ抗ヒトIgG-ビオチン、ロバ抗ヒトIgG F(ab’)2-ビオチン、ロバ抗ヒトIgG-ペルオキシダーゼ、ロバIgG-ビオチン、ウサギ抗ヒト IgG/IgM 及びヒトIgG-ビオチンは Jackson
ImmunoResearchから購入された。FITC 結合マウス抗ヒトCD4、クローン M-T441、及びFITC 結合マウスIgG2b、クローンBPC 4はAncell社から購入された。マウス抗ヒトCD3 FITC、クローン SP34、マウス IgG3 FITC、及びマウス抗ヒトCD45RA-PE はBD Pharmingen社から購入された。マウス抗ヒト CD8-PerCP及びマウス IgG1−PerCPはBD Biosciences社から購入された。Streptavidin-Quantum
Red はSigma-Aldrich
から購入され、そしてFITC 及びCy5 結合標準ビーズはBangs Laboratories (インディアナ州フィッシャーズ社)から購入された。
【0172】
CD4 飽和は、循環性リンパ球上の遊離CD4部位の関数として判定された。100μlのヘパリン処理済み全血を遠心分離でペレットにし、血漿を吸引で取り除いた。細胞を、100μlのビオチン化TRX1又はビオチン化ヒトIgGの1.0μg/ml溶液に再懸濁させた。氷上で20分間、インキュベートした後、細胞を1 mlの洗浄緩衝液で洗浄し、50μlのStreptavidin
Quantum Red (ストックの1:5 希釈液) と一緒に20分間、氷上でインキュベートした。 次に、2 ml の溶解緩衝液 (0.15M NH4Cl、10mM KHCO3、100μM ジソジウム EDTA)を加えたPBCを溶解させた。試料を渦流させ、明澄するまで室温でインキュベートした(ほぼ10分間)。RBC 細片を遠心分離及び 1 ml の洗浄緩衝液での洗浄で取り除いた。PBS、0.1% ホルマリンを添加して細胞を固定した。蛍光感受性の日内変動をFITC 及びCy5 結合標準ビーズを用いて調節した。
【0173】
CD4+リンパ球数
末梢血中のCD4+リンパ球の数は、CBCデータから得られた絶対リンパ球数にCD4+リンパ球のパーセンテージを乗算することにより判定された。全血中のCD4+リンパ球のパーセンテージは、フローサイトメトリにより、CD4への結合をめぐってTRX1と競合しないCD4のドメイン2を認識するマウス抗体であるFITC結合M-T441によるリンパ球ゲート染色のうちのCD4+細胞のパーセンテージとして判定された。これらの実施例で用いられたTRX1抗体は、一箇所のアミノ酸置換(AsnからAlaへ)を重鎖定常領域の位置297に導入することで、高親和性Fc受容体相互作用及び補体結合に必要な主要な糖鎖修飾部位をなくす改変を更にしてあるヒトCD4のドメイン1を認識するヒト化IgG1抗体だった (Bolt, S., E. et
al. 1993. Eur. J. Immunol. 23:403; Friend, P. J., et al.
1997. Transplantation 68:1632;
Routledge, E. G., et al. 1995. Transplantation 60:847)。
【0174】
研究デザイン
TRX1による寛容誘導を検査する対象となるモデル種を特定するために、アフリカミドリザル、カニクイザル及びアカゲザル、ヒヒ及びチンパンジーを含め、数多くの非ヒト霊長類を、TRX1との交差反応性でスクリーニングした。 全てが何らかの程度の免疫反応性を示したが、チンパンジー及びヒヒの結合親和性のみがヒトに匹敵した。このように、ヒヒがモデル種として選択された。
【0175】
寛容誘導を行う対象の抗原としては、単純ではあるが臨床的には関係のあるモデル抗原を探した。これにより、臓器移植及び自己免疫疾患などのより複雑なモデルで調査を行う前に、抗原特異的寛容の検査や、誘導プロトコルの至適化を行うことが可能になった。よく特徴付けられた免疫原性生物性アンチベニン即ちヘビ毒抗毒素であるクロタリデ−ポリバレント(原語:Crotalidae
polyvalent)という、ハブ類のヘビ毒で免疫されたウマから単離されたウマ免疫血清グロブリン(ウマIg)の市販の製剤が選択された (Jurkovich, G.
J.,et al., 1988. J. Trauma 28:1032; Dart, R. C., and J. McNally. 2001. Ann. Emerg. Med. 37:181)。該ウマIgの免疫原性を確認するために、この材料を熱凝集させ、当該製剤をパイロット実験で検査して、強力な免疫応答が生じるであろう用量及び投与経路を、寛容誘導プロトコルで用いる前に決定した。
【0176】
ヒヒでTRX1により寛容誘導が実際にできるかどうかを調べるために、誘導、洗浄及び抗原刺激といった3段階に分かれた実験プロトコルをデザインし(図9A)、21匹のヒヒ(パピオ-シノセファラス-アヌビス(原語:Papio cynocephalus
anubis) )を、4つの実験群及び3つのコントロール群を含む7つの群(3匹の動物/1つの群)に割り振ることで実施した(図9B)。実験側の誘導段階は、1回の用量当り1、10、20、又は 40 mg/kg を13日の間の−1日目、3日目又は4日目、8日目及び12日目の4回で輸注する4TRX1投薬コホートから成った。熱で凝集させた抗原(ウマIg)の10 mg/kg 静脈内ボーラスを0日目に送達した後、4日目、8日目に同じ用量の皮下ボーラスを送達した。コントロール側では、コントロール群I(抗原のみ)の動物に、等容の通常の生理食塩水をTRX1の代わりに実験群の動物とまったく同じ時点で輸注した。コントロール群II(TRX1のみ)は、20 mg/kg 及び40 mg/kg のTRX1を実験群と同じスケジュールで、しかし、寛容化段階ではウマIgの代わりに通常の生理食塩水を投与する2つのコホートから成った。TRX1 血清中濃度は、抗体の最初の用量から24時間後と、3回のその後の用量の直前と、その後の毎週、判定された。TRX1及びウマIg の血清レベルを、それ以上検出できなくなるまで(洗浄段階)観察し、その時点ですべての動物に皮下注射により、熱凝集させたウマIg(抗原刺激段階)で抗原刺激を与えた。
【0177】
実施例6. TRX1は、誘導中、T細胞を枯渇させることなく体液性応答を抑制する
TRX1血清中濃度の用量依存的増加は、初回の用量後に、1 mg/kgを投与された動物の平均15.6±4.1μg/ml (n=3) から40 mg/kgを投与された動物の平均 542.5±138.1μg/ml (n=6) (図10A)の範囲で、明白に見られた。その後の用量直前に判定されたTRX1血清中濃度は、 20 mg/kg 及び40 mg/kg で処置を受けた動物で、平均トラフ・レベル濃度が各用量後に増加するというTRX1の用量蓄積を示していた。最小TRX1血清中濃度は抗体の初回及び二回目用量の間に起きており、20 mg/kgのTRX1処置動物の平均 39.4±18.0μg/ml (n=6) から、最高で、40 mg/kgのTRX1を投与されたものの平均162±63.3μg/ml (n=6) までの幅があった。抗体の最後の3回の用量直前に判定されたトラフ・レベル濃度は、コントロール群I動物、即ち抗原のみを投与されたものと同様に、検定の検出限界(0.2 ng/ml)未満だったため、1 mg/kg 乃至10 mg/kg TRX1 を投与された動物でTRX1の用量蓄積はなかった。二回目のTRX1輸注の時点でのプロトコル逸脱により、20 mg/kg TRX1 のみのコントロール群IIのうちの一匹の動物(#16250)をその後の研究から外した。
【0178】
TRX1 はフローサイトメトリにより、CD3+ リンパ球上でビオチン化F(ab’)2 ロバ抗ヒトIgGを用いて検出された。初回の輸注から24時間後では、MCF 値は基線値より遥かに上であり、27日目で基線レベルに戻り始めるまで処置期間中ずっとそのままであった。TRX1 は、48日目までに細胞上で検出不能になった。TRX1によるCD4飽和レベルを判定するために、ビオチン化TRX1を全血試料に加え、細胞染色をフローサイトメトリで評価した(図10B)。TRX1血清中濃度データから予測されたように、遊離CD4部位は、1 mg/kg TRX1 群で容易に検出された。最初の24時間目の時点を除き、1 mg/kg群で3日目、8日目及び12日目のTRX1投与直前に得られた試料で判定されたMCF値は、平均で基線(範囲、86.0% − 92.9%)の89.5%、即ち10.5%の飽和の少し下方であった。遊離結合部位も、10 mg/kg TRX1群で、3日目、8日目及び12日目のTRX1投薬直前に採取された試料から検出され、その平均MCF値は、誘導段階中、基線(範囲19.3%−33.4%)の25.8%だったことから、前記部位の74.2%が飽和していたことが示唆された。20 mg/kg 群の平均は、誘導段階中、基線MCF染色の14.9%(範囲、10.2% − 18.2%)、即ち、85.1% の飽和だったが、40 mg/kg 群の平均 MCF 値は、基線(範囲 8.1% − 10.7%)の 9.5%、即ち90.5%の飽和だった。TRX1の最後の用量から1週間経った20日目までには、1 mg/kg 及び10 mg/kg TRX1 群の両方のMCF値が基線まで戻り、他方、20 mg/kg TRX1 群の染色は、遊離CD4部位の数が基線のほぼ25%であることを示した。40 mg/kg TRX1群では最大の飽和を20日目でも維持していたが、27日目に遊離CD4部位が検出され、平均MCF 値は基線の24.7%であり、75.3% の飽和を反映していた。20 mg/kg 及び40 mg/kg TRX1 群の両方で、48日目までにMCF値は基線に戻った。遊離CD4部位の再出現は、ビオチン化TRX1染色による洗浄段階のTRX1血清中濃度の減少と相関し、TRX1血清レベルがいったんほぼ10μg/ml未満まで低下して初めて増加し始めた。
【0179】
20 mg/kg TRX1実験群のうちの1匹の動物(#15983) は、遊離CD4部位の基線へより急速に戻り、またその血清からのTRX1クリアランスもより急速だった。次に、これがTRX1に対する免疫応答の発生が原因であったことをELISAで確認した。注目すべきことに、この動物は、20 mg/kg TRX1 群の全動物で最も低いTRX1血清中濃度トラフ・レベルを有しており、初回及び2回目の抗体用量の間の4日目では13.4μg/mlであった。この群のすべての他の動物のTRX1 血清中濃度は35.0μg/ml以上だった。この動物からのデータは、20 mg/kg 群の平均計算に含まれていない。1 mg/kg (3/3) 及び10 mg/kg (3/3) TRX1
実験群のすべての動物は、抗体の一回目の用量から7乃至10日後にELISAで検出可能な、TRX1に対する免疫応答を起こした。他に1匹だけの動物(#16313)が、TRX1に対して検出可能な免疫応答を起こし、これは、 40 mg/kg TRX1 コントロール群II中であった。しかしながら、この応答はTRX1の最後の用量から2週間を越えた27日目までは検出不能だった。
【0180】
当該研究の期間中、輸注の間も、又はTRX1投与後のいずれの時点でも、処置に関連する有害反応は何ら、観察されなかった。全血球計算値及びフローサイトメトリ・データも、いずれの用量でもCD4+リンパ球の見かけの枯渇を何ら示さなかった。リンパ球数の日毎の変動は見られたが、TRX1処置動物と生理食塩水投与のものとの間で何ら有意な違いは観察されず、また、TRX1処置動物同士の間でもいずれの用量依存的違いは見られなかった(図10C)。in vitro での評価と同様に、細胞表面から観察されたCD4調節は限られた程度のものだった。
【0181】
誘導及び洗浄段階で、TRX1を投与すると、ウマIgへの体液性応答が確かに用量依存的に阻害された(図11A)。この期間全体を通じ、40 mg/kg TRX1 実験群のいずれの動物でも、ウマIgへの免疫応答は検出されなかった。しかしながら、ウマIgに対する群平均抗体価の上昇が、20 mg/kg TRX1 実験群では見られた。この群の3匹の動物のうちの2匹#16276 及び #16096が、基線から上方の10倍未満の最大ピーク抗体価で応答し、これは、27日目に起き、48日目までには基線まで戻った。TRX1への免疫応答が観察された同じ動物である動物#15983が、41日目で基線の10倍を超えるピークを迎え、洗浄段階を通じて基線の10倍を超えたまま留まる、より大きく、かつより持続的なウマIgに対する応答を誘導段階及び洗浄段階で起こしたことが観察された。1 mg/kg 及び 10 mg/kg TRX1 実験群の両方や、コントロール群I(抗原のみ)でも、高い抗体価が見られた。驚くべきことに、1 mg/kg TRX1 実験群の平均抗体価は、コントロール群Iのほぼ10乃至15倍上方であった。この見かけ上亢進された応答の解釈の一つは、ウマIgに対して交差反応性のヒトIgエピトープの初回刺激であろう。
【0182】
実施例7. TRX1は、抗原特異的応答低下及び寛容を誘導する
TRX1 血清レベルがいったん検出限界を下回ってすぐに、免疫原性の、熱で凝集させた抗原で動物を刺激し、その結果生じる特異的体液性免疫応答を測定することにより、ウマIgに対する寛容を評価した。まず動物を68日目に10 mg/kg のウマIgの皮下投与で刺激した。1 mg/kg 及び10 mg/kg TRX1 用量群の動物はすべて、強力な二次的免疫応答ウマIgを生じ、群平均抗体価は、コントロール群Iのそれに近似していた(図11B)。この応答は、抗体価の急速な上昇や、寛容化段階中にこれらの群で観察された応答と比較したときの高い最大抗体価を特徴とした。ウマIgに対して何の寛容の証拠も示すことなく、1 mg/kg 及び10 mg/kg TRX1 実験群の動物は、初回の抗原刺激後に実験から解放された。68日目に初めて抗原を投与されたコントロール群IIは、初回応答から予測されたように、ウマIgへの群平均抗体価の、コントロール群Iの想起応答よりもゆっくりとした上昇で応答した(図11B)。20 mg/kg 40 mg/kg
TRX1 実験群の群平均抗体価も、刺激に対して応答の上昇を示したが、ピーク抗体価はコントロール群Iに比較して著しく低かった(50乃至250分の1)(図11B)。20 mg/kg TRX1 実験群の3匹の動物のうちの1匹は、コントロール群Iと同様な抗体価の上昇をみせて抗原刺激に応答し、この上昇は、誘導及び洗浄段階中、TRX1に対する免疫応答も起こした動物#15983で起きた。この群の他の2匹の動物#16276及び#16096は、抗原刺激に対して低応答性であり、その最大平均ピーク応答はコントロール群Iの10分の1未満だった。40 mg/kg TRX1 実験群のうち、1匹の動物#16192が、抗原刺激に対して同様に低応答性であり、この群の他の2匹の動物#16178及び#16286は、抗原刺激に対して何の応答も示さなかった。
【0183】
20 mg/kg 及び40 mg/kg TRX1 実験群で抗原刺激時に強力な免疫応答が惹起されなかったことは、抗原特異的なものであって、処置に関係する免疫抑制の結果ではないことを実証するために、68日目の初回抗原刺激の時点で、第三者抗原であるSRBCで全ての動物を免疫することにより、免疫コンピテンスを評価した。全ての群が基本的に同等な抗SRBC溶血性応答をこの刺激に対して起こし(図11C)、これは主にIgGであることをELISAにより確認した。
【0184】
コントロール群I及びIIや、20 mg/kg 及び40 mg/kg TRX1 実験群に、95日目に10 mg/kg のウマIg で、そして再度130日目に1 mg/kg のウマIgで再抗原刺激した(図12A)。抗原のみと、TRX1のみという全てのコントロール群が、ウマIgに対する体液性応答で同様な上昇を示したことから、TRX1処置単度では、長持ちする免疫抑制が誘導されないことが更に実証された。しかしながら、20 mg/kg 及び40 mg/kg 実験群の群平均抗体価は、抗原刺激を繰り返した場合でも、初回抗原刺激の最大ピーク抗体価よりも上には上昇しなかった。動物#15983を除く20 mg/kg TRX1 実験群の動物では、最大抗体価は初回抗原刺激後に起き、そのピーク抗体価はそれぞれ動物#16096及び16276について269 及び145だった。その後、抗原刺激を繰り返すと、三回目の抗原刺激後、ピーク応答はそれぞれ 35 及び 92まで減衰した(図12A)。40 mg/kg TRX1 実験群の群平均抗体価は、1匹の動物#16192だけである20 mg/kg 群のそれよりも押しなべて低く、初回抗原刺激後の最大ピーク抗体価313での応答の基本的にすべてを構成していた。20 mg/kg TRX1 群の動物と同様に、それぞれのその後の抗原刺激に対するピーク応答は、前の抗原刺激の場合よりも低く、動物#16192の応答は、3回目の抗原刺激後、和すかに39のピーク抗体価まで減少した(図12B)。40 mg/kg TRX1 実験群の他の2匹の動物#16178及び#16286は、抗原刺激を反復すると、ウマIgに対して事実上、何の検出可能な免疫応答も生じなかった(図12B)。
【0185】
二番目の研究(3匹の動物/群)を、20 mg/kg TRX1 用量にし、TRX1用量の回数を4回から3回に減らすが、それらを−1日目、1日目及び3日目という一日置きに投与することにより、行った。コントロール群(コントロール群I)も、TRX1の代わりに生理食塩水の輸注を受ける動物に含めた。ウマIg投薬は変更されず、動物には、10 mg/kg を0日目、3日目及び8日目という3回の用量にして与えた。 一番目の研究と同様に、TRX1投与の結果、動物#16224一匹であるコントロール群Iに比較して、誘導及び洗浄段階中、ウマIgに対する、検出可能な応答の実質的にすべてを占める体液性応答の抑制が起きていた(図13A)。TRX1の血清レベルが検出可能なレベルを下回った68日目に、動物にウマIgで抗原刺激を与えた。コントロール群I動物は、予想通り応答し、 急速かつ強力に抗体価を上昇させて平均ピーク応答を7652にした。20 mg/kg TRX1 処置群では、動物#16224はコントロール群動物と同様に抗体価の急速な上昇を示し、最大ピーク抗体価は6139だった。しかしながら、この群の他の2匹の動物#12093及び#16130は、抗原刺激に対して低応答性であり、それぞれ37 及び 161のピーク抗体価を生じた。2回目の97日目の抗原刺激では、動物#12093及び#16130の抗体価はそれぞれ20 及び 26という僅かな上昇しか生じず、これも急速に基線まで落ちた。これら2匹の動物は、三回目の抗原刺激に対して何の応答も示さなかった。前の研究と同様に、全ての動物が、1回目の初回抗原刺激の時点でSRBC新生抗原による免疫処理に応答した。
【0186】
TRX1 用量を20 mg/kg に増加させると、3匹の動物のうちの2匹で低応答性が誘導され、それぞれその後の抗原刺激後に対して最大応答抗体価が減衰した。3匹の動物の2匹が40 mg/kgの用量で複数の抗原刺激に対して完全に非応答性となり、3番目が抗原に対して低応答性となって、そのピーク応答抗体価もやはり、各抗原刺激で減少した。マウスの研究で非枯渇性抗CD4抗体を20 − 25 mg/kg の3回の用量にして一日置きに投与すれば、寛容を誘導するのに充分であることが実証されているが、寛容が明確になるのに必要な時間は、投薬開始からほぼ1ヶ月間であった。20 mg/kg TRX1 の投薬を変更して、3回の用量を抗原投与から1日前に始めて一日置きに投与した。この変更により、3匹の動物のうちの2匹が、最初の低応答性期間後の抗原刺激に対しても完全に非応答性となった。
【0187】
ヒトでは、免疫原性を低下させ、薬物動態を向上させると、TRX1の有効用量を低くするのに役立つであろう。例えば、TRX1に対する免疫応答が、僅かに1回の用量のこの抗体を投与されたすべてのヒヒ(n=9)で検出されているが、ヒト(n=9)では、一回の用量のこの抗体後にTRX1に対して何の免疫応答も検出されたことはない。更に、ヒトでのTRX1の血清半減期の2.5倍という上昇により、ヒヒに比べて少ない抗体で持続的なCD4有効範囲が得ることが可能になるはずである。
【0188】
低応答性及び寛容に至ったいずれの用量のTRX1、及び投薬計画にも、何ら急性の有害な事象は伴わず、誘導段階での明白な免疫抑制にも、いずれの臨床上もしくは組織病理的な副作用も伴わなかった。TRX1 処置動物は、隔離状態又は無菌もしくは無特異的病原体の条件下で飼育されなかった。少なくとも21日間、末梢リンパ球上のCD4部位が実質的に完全に飽和したにも係わらず、腸内寄生生物又は日和見性細菌、真菌、又はウィルス感染の蔓延率の上昇や、あるいは内因性ウィルスの再燃の証拠は、TRX1処置期間中、又はその後のいずれの時点でも、何ら見出されなかった。
【0189】
コントロール群動物#16313でTRX1が自己寛容を誘導できなかった原因は、SA8ウィルスという、本研究で全ての動物を得るもととなったヒヒ・コロニーで蔓延していたアルファヘルペスウィルスに誘導段階で感染したことであろう。動物#16313は誘導段階中にSA8に血清陽性となったが、他の動物すべては、本研究前に血清陽性であったか、あるいは本研究全体を通じて血清陽性のままだった。
【0190】
実施例8. 抗CD4抗体は、単球/マクロファージに対して効果を有する
この実施例では、ヒト末梢血単球を単独で、又は、抗CD4 (TRX1) ヒトIgG 又はアグリコシルCD8 抗体と一緒に、3、4、又は5日間、インキュベートした。RNAを定性的PCR で解析して、FcγRIIa又はFcγgRIIBメッセージ・レベルを調べた。TRX1 インキュベーションは、FcγRIIa及びFcγRIIbのメッセージ・レベルを増加させることが見出された。
【0191】
更にTRX1処置済みヒト単球/マクロファージをCD14、CD83、CD16、CD32、CD80、CD86、MHCII、CD11b、CD62L、CCR2、及びCXCR4についても染色した。処置済み細胞の表現型を、CD86、CD11b、CCR2 及びCXCR4の発現が低下したCD14 dim と判定した。これらの細胞のCC16 (FcγRIII)、CD32 (FcγRII) 及びMHC クラスIIの発現は増加していた。(FcγRIIa 及び FcγRIIIが送達する炎症性シグナルを阻害することが知られている)FcγRIIb の発現に対する最大効果を4乃至7日後に観察した。
【0192】
CD4 処置済みマウス単球/マクロファージも、産生する炎症性サイトカイン(例えばIL4、IFNγ、GM-CSF)はより少なく、またTreg 細胞の発生に伴うサイトカイン(例えばIL-10 及びTGFβ)は多かった。
【0193】
PBMCをフィッコールで単離した後、単球を除く全ての細胞種を認識する抗体に結合させた磁気ビーズからなる負の選択キットを用いて単球をリンパ球から分離し、タグの付いた細胞をMACS セル・ソーティング機で除去することにより、ヒト単球を全血から調製した。精製後の単球を単独で、あるいはヒトIgG (100ug/ml 又は 50 ug/ml)、TRX1 (50 ug/ml 又は10 ug/ml) 又はアグリコシル抗ヒトCD8 抗体 (50 ug/ml 又は10 ug/ml) と一緒に5日間、インキュベートした。その時点で、細胞を新鮮な培地中で洗浄して残留抗体を除去し、同種の精製済みヒトT細胞(やはり磁気ビーズを用いて負の選択プロセスで精製済み) と一緒に2T細胞:1単球の比でプレートした。5日後にこの培養株に3H-チミジンを含有する培地を与えて分裂細胞を測定し、培養株を18時間後に採集した。データを、未処置の単球及びT細胞を含有するウェルに取り込まれたチミジンのパーセンテージで表した。抗CD8 抗体はMLR 応答に対して何の効果も有さなかった(あるいは応答を僅かに減少させた)が、抗TRX1は50 及び10 ug/ml の両方で応答をコントロールの20%未満のレベルまで減少させた。50 ug/ml でのヒトIgGの応答はコントロールの約90%だった。
【0194】
上記の教示を鑑みつつ、本発明の数多くの改変及び変更が可能である。従って、本発明は、付属の請求項の範囲内で、特に解説されたもの以外の他の態様で実施され得る。
【0195】
均等物
当業者であれば、ごく慣例的な実験を用いるのみで、ここで解説した具体的なポリペプチド、核酸、方法、検定及び試薬の均等物を数多く認識され、又は確認できることであろう。このような均等物は、本発明の範囲内にあり、また以下の請求項に網羅されるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】図1Aは、第一の実施例のTRX1抗体軽鎖のアミノ酸配列を示す。図1Bは、第一の実施例のTRX1抗体軽鎖のヌクレオチド配列を示す。図1Cは、リーダ配列を付した、そして付していない、第一の実施例のTRX1抗体軽鎖のアミノ酸配列を示す。図1Dは、第一の実施例のTRX1抗体重鎖のアミノ酸配列を示す。図1Eは、図1Dの配列の続きである。図1Fは、第一の実施例のTRX1抗体重鎖のヌクレオチド配列を示す。図1Gは、リーダ配列を付した、そして付していない、第一の実施例のTRX1抗体重鎖のアミノ酸配列を示す。
【図2】図2Aは、別の実施例のTRX1抗体軽鎖のアミノ酸配列を示す。図2Bは、別の実施例のTRX1抗体軽鎖のヌクレオチド配列を示す。図2Cは、リーダ配列を付した、そして付していない、別の実施例のTRX1抗体軽鎖のアミノ酸配列を示す。図2Dは、別の実施例のTRX1抗体重鎖のアミノ酸配列を示す。図2Eは、図2Dの配列の続きである。図2Fは、別の実施例のTRX1抗体重鎖のヌクレオチド配列を示す。図2Gは、リーダ配列を付した、そして付していない、別の実施例のTRX1抗体重鎖のアミノ酸配列を示す。
【図3】図3Aは、別の実施例のTRX1抗体軽鎖のアミノ酸配列を示す。図3Bは、別の実施例のTRX1抗体軽鎖のヌクレオチド配列を示す。図3Cは、リーダ配列を付した、そして付していない、別の実施例のTRX1抗体軽鎖のアミノ酸配列を示す。図3Dは、別の実施例のTRX1抗体重鎖のアミノ酸配列を示す。図3Eは、図3Dの配列の続きである。図3Fは、別の実施例のTRX1抗体重鎖のヌクレオチド配列を示す。図3Gは、リーダ配列を付した、そして付していない、別の実施例のTRX1抗体重鎖のアミノ酸配列を示す。
【図4】図4Aは、別の実施例のTRX1抗体軽鎖のアミノ酸配列を示す。図4Bは、別の実施例のTRX1抗体軽鎖のヌクレオチド配列を示す。図4Cは、リーダ配列を付した、そして付していない、別の実施例のTRX1抗体軽鎖のアミノ酸配列を示す。図4Dは、別の実施例のTRX1抗体重鎖のアミノ酸配列を示す。図4Eは、図4Dの配列の続きである。図4Fは、別の実施例のTRX1抗体重鎖のヌクレオチド配列を示す。図4Gは、リーダ配列を付した、そして付していない、別の実施例のTRX1抗体重鎖のアミノ酸配列を示す。
【図5】図5A−5Cは、実施例5で用いたヒト化CD8抗体の重鎖の配列を示す。
【図6】図6は、実施例5で用いたヒト化CD8抗体の軽鎖の配列を示す。
【図7】図7A−7Cは、TRX1重鎖の別の実施例を示す。この実施例では、位置236のアミノ酸はLeuであり、位置238のアミノ酸はGlyであり、そして位置297のアミノ酸はAlaである。
【図8】図8A−8Bは、TRX1軽鎖の別の実施例を示す。この実施例では、位置117のアミノ酸はLeuである。
【図9】図9A−9Bは、寛容誘導及び抗原刺激プロトコルの概観を示す。本プロトコルは3つの段階:誘導、洗浄、及び抗原刺激に分割された。誘導段階では、TRX1抗体又は生理食塩水を−1日目、3日目又は4日目、8日目及び12日目に輸注した。抗原(ウマIg又は生理食塩水)を0日目、3日目、及び8日目に投与した。誘導段階には、TRX1及び今Igの血清レベルを検出不能になるまで観察した洗浄段階が続く。抗原刺激段階は、すべての動物にウマIgと新生抗原SRBCを投薬することにより、68日目に開始された。付加的なウマIg抗原刺激を95日目及び130日目に施与した、9B。処置群は4つの実験的TRX1投薬コホートと2つのコントロール群とから成った。実験群には、 1、10、20、or 40 mg/kg という4回のTRX1輸注と、3回の用量の抗原が投与された。抗原のみのコントロール群Iには、4回の生理食塩水輸注と、3回の用量のウマIgが投与された。TRX1のみのコントロール群IIは、動物が20 又は 40 mg/kgのTRX1輸注を4回、受ける2つのコホートから成った。コントロール群IIの動物は、抗原ではなく生理食塩水を3回の用量、受けた。動物はすべて、抗原で3回、刺激を受け、一回目のウマIg抗原刺激の時点でSRBCによる一回の免疫処理を受けた。
【図10】図10A−10Cは、誘導及び洗浄段階中のTRX1の薬物動態及び薬力学を示す。10Aでは、群平均TRX1 血清中濃度(μg/ml)を示す。等量のTRX1用量(20 及び 40 mg/kg)を受けた実験群及びコントロール群IIの動物が組み合わされている。→は、TRX1の投薬を示す。中抜きの記号は、投与されたTRX1の用量:1 mg/kg (n=3); 10mg/kg (n=3); 20 mg/kg (n=4); 又は40 mg/kg (n=6):に従ってグループ分けされた動物を表す。10Bでは、寛容誘導段階及び洗浄段階中のTRX1用量の関数としての、末梢血中のCD3+細胞上のCD4部位の飽和を示す。全血試料のTRX1-ビオチン染色を用いて遊離CD4部位を検出した。各群の平均MCF値は、群平均MCF基線値のパーセントで表されている;コントロール群I、抗原のみ、塗りつぶした丸 (n=3);中抜き記号は、投与されたTRX1用量、1 mg/kg 群 (n=3);10 mg/kg (n=3); 20mg/kg; 及び 40 mg/kg (n=6)に従ってグループ分けされた動物を表す;10Cは、血液1 ml当たりの総 CD4+ T 細胞を表す。群平均絶対CD4+ リンパ球数は、群平均基線値のパーセンテージとして計算されている;コントロール群I、抗原のみ、塗りつぶした丸 (n=3);中抜き記号は、投与されたTRX1用量、1 mg/kg (n=3); 10mg/kg (n=3); 20 mg/kg (n=4); 40 mg/kg (n=6)に従ってグループ分けされた動物を表す。
【図11】図11A−11Cは、誘導及び初回抗原刺激中の免疫応答を示す。11Aは、誘導段階でウマIgに対して生じた群平均抗体価を示す。動物は、矢印で示された3回の用量の抗ヘビ毒素を投与された。抗ヘビ毒素に対する抗体価は、陽性コントロール標準の1:25,000希釈度のOD値の2倍に等しいOD値が生じる希釈度の逆数であると定義しておく。塗りつぶされた丸はコントロール群I、抗原のみ(n=3)、である;中抜き記号は、TRX1実験的投薬コホート、1 mg/kg TRX1 (n=3);10 mg/kg TRX1 (n=3); 20mg/kg TRX1 (n=2); 及び40mg/kg TRX1 (n=3)を表す、;11Bは、68日目の初回抗原刺激(矢印)後にウマIgに対して生じた群平均抗体価を示す。塗りつぶした丸は、抗原のみのコントロール群I(n=3)であり;灰色の記号は、TRX1のみのコホート、20mg/kg TRX1 (n=2);及び40mg/kg (n=3)であるコントロール群IIであり、中抜き呼号はTRX1実験的投薬コホート、1mg/kg (n=3); 10mg/kg (n=3); 20mg/kg (n=3); 及び 40mg/kg (n=3)を表す。11Cは、68日目の初回抗原刺激(矢印)の時点で投与された新生抗原SRBCに対する、SRBCの溶血で測定された免疫応答を示す。コントロール群Iに対する群平均抗体価、塗りつぶした丸、(n=3); コントロール群IIコホート、灰色の記号、20mg/kg TRX1 (n=2);及び 40mg/kg (n=3); 並びにTRX1 実験的投薬コホート、中抜き記号、1mg/kg (n=3); 10 mg/kg (n=3);20mg/kg (n=3); 及び40mg/kg (n=3)。抗体価は、明白な溶血を起こさなかった最も高い血清機尺度の逆数と定義しておく。
【図12】図12A−12Bは、複数の抗原刺激後のウマIgに対する免疫応答を示す。12Aは、コントロール群Iの群平均抗体価を示し、塗りつぶした丸、(n=3); コントロール群コホート、灰色の記号、20mg/kg TRX1 (n=2) 及び 40mg/kg (n=3);並びにTRX1実験群コホート、中抜き記号、20mg/kg TRX1 (n=2) 及び40mg/kg TRX1 (n=3)。12Bは、TRX1実験群 20 mg/kg (#16276 及び#16096、中抜き記号、実線) 及び 40 mg/kg (#16178、#16192、及び #16286、塗りつぶした記号、実線) コホートでの個々の動物のウマIgに対する抗体価を、コントロール群(灰色の丸、実線)及びコントロール群II、20 mg/kg (中抜き三角、点線、n=2) 及び40 mg/kg (塗りつぶした四角、点線、n=3) コホートのウマIgに対する群平均抗体価と一緒に表にした。
【図13】図13A−13Bは、改変されたTRX1投薬によるウマIgに対する免疫応答を示す。塗りつぶした丸は、抗原のみである生理食塩水コントロール群I (n=3)を表し;中抜き三角は 20 mg/kg TRX1 処置実験群 (n=2)を表す。抗体価は、陽性コントロール血清の1:25,000希釈度のOD値の2倍に等しいOD値が生じる血清希釈度の逆数であると定義しておく。 13Aは、誘導段階中にウマIgに対して生じた群平均抗体価を示す。動物は、矢印で示す3回の用量のTRX1を−1日目、1日目及び3日目に投与された。ウマIgは0日目、4日目及び8日目に投与された。13Bは、抗原刺激段階中にウマIgに対して生じた群平均抗体価を示す。動物は、68日目及び97日目に10 mg/kg 抗ヘビ毒素による抗原刺激を皮下で、そして133日目に1 mg/kg ウマIgによる抗原刺激を皮下で受けた。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図2F】

【図2G】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図3E】

【図3F】

【図3G】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図4D】

【図4E】

【図4F】

【図4G】

【図5A】

【図5B】

【図5C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
霊長類を処置して少なくとも一種の外来抗原に対する寛容を誘導する方法であって、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを霊長類に投与するステップを含み、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、約20 mg/kg 乃至 40 mg/kg の用量を少なくとも3回の別々の用量にして投与される、方法。
【請求項2】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、約20mg/kgの用量にして投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、少なくとも4回の別々の用量にして投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、少なくとも5回の別々の用量にして投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、外来抗原の投与に対して少なくとも−1日目、3又は4日目、8日目及び12日目に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、外来抗原の投与に対して少なくとも−1日目、1及び3日目に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
外来抗原が可溶性抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体の一回目の用量が、外来抗原の投与の前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、ヒト化されており、かつ、Fc受容体及び補体の結合を減らすために改変されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
霊長類を処置して少なくとも一種の外来抗原に対する寛容を誘導する方法であって、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを霊長類に投与するステップを含み、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも一回の用量が、外来抗原の投与の少なくとも1日前に投与される、方法。
【請求項11】
霊長類を処置して少なくとも一種の外来抗原に対する寛容を誘導する方法に関し、本方法は、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを霊長類に投与するステップを含み、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、寛容誘導段階中の抗CD4抗体の血清中濃度を約20μg/mlのレベルに維持するのに充分な用量にして投与される、方法。
【請求項12】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量が、外来抗原の投与の1日前に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の抗CD4抗体が、約20mg/kg乃至40mg/kgの間の用量にして投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
霊長類を処置して、少なくとも一種の外来抗原に対する寛容を誘導する方法であって、前記霊長類に少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを投与するステップを含み、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、寛容誘導段階中、前記霊長類のT細胞上のCD4部位の約85%の飽和を達成するために充分な用量にして投与される、方法。
【請求項15】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、約2週間を超えては投与されない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量が、外来抗原の投与の1日前に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体は、約20mg/kg乃至40mg/kgの間の用量にして投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、ヒト化されており、かつ、Fc受容体及び補体の結合を減らすために改変されている、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
霊長類で可溶性抗原に対する寛容を誘導する方法であって、少なくとも一種の抗CD4抗体又はそのCD4結合フラグメントを霊長類に投与するステップを含み、但し前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、前記可溶性抗原に対する寛容が誘導されるように、約20-40mg/kgの間の用量で少なくとも3回の別々の用量にして投与される、方法。
【請求項20】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体の少なくとも1回の用量が、可溶性抗原の投与の1日前に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも一種の抗CD4抗体が、約20mg/kgの用量にして投与される、請求項19に記載の方法。

【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−503593(P2008−503593A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518312(P2007−518312)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/022500
【国際公開番号】WO2006/002377
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(505131946)トーラーレックス, インク. (6)
【氏名又は名称原語表記】TOLERRX, INC.
【住所又は居所原語表記】300 Technology Square,Cambridge, MA 02139 (US).
【Fターム(参考)】