説明

露光装置

【課題】 フォトマスクM及びプラテン5の粘着性塵埃の除去を効率的に行うことにより、歩留まりの高い露光を実現する。
【解決手段】
第1クリーニングヘッド1は搬入ハンド3の露光部20側に装着され、搬入ハンド3の搬入動作の際に、所定位置でスクレーパ11が延出してプラテン5の上面に接触し、搬入ハンド3の移動に伴ってプラテン5上を移動しつつ塵埃を除去する。第2クリーニングヘッド2は搬出ハンド4の露光部20側に装着され、搬出ハンド4の露光部20への移動及び/又は搬出動作の際に、フォトマスクMの除塵を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、露光装置(exposing device)に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジスト(photo resist)などの感光材料を塗布した基板表面に所定のパターンを露光装置により感光焼き付けし、その後エッチング工程により基板上にパターンを形成するフォトリソグラフィ法(photolithographic method)が種々の分野で広く応用されており、プリント配線基板等も近年露光装置を用いて製造されている。
プリント配線基板(print circuit board)の露光装置において、フォトマスク(photo mask)と基板との間に塵埃が存在すると、その部分が未露光となり製品不良となる問題がある。
この塵埃には、例えば銅箔のようにそれ自体が粘着性を持たない塵埃と、ドライフィルムフォトレジスト(dry film photo resist)やソルダーレジストのようにそれ自体が粘着性を持った塵埃とがあり、このような塵埃を除去するために露光装置に除塵装置を設ける提案が特許第3533380号、特許第2847808号等においてなされている。
【0003】
【特許文献1】特許第3533380号
【特許文献2】特許第2847808号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来技術は何れも、クリーンローラを用いた構造であり、レジストのような粘着性を持つ塵埃に対してはほとんど効果がないのが現状である。また、露光装置では、真空密着や露光の工程があるためレジストはマスク及びプラテンに頑固に固着してしまうため、更に除塵することが困難になっており、従来のローラを用いた除塵では限界があった。
更にクリーンローラに付着した塵埃を除去するための粘着ローラ機構が必要であり、装置の大型化、コストアップを招く問題があった。
本発明は上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、スクレーパ(scraper)を用いてフォトマスク及びプラテンの除塵を行う露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は露光すべきプリント配線基板を載置するプラテンと、該プリント配線基板をプラテン上に載置すべく基板を搬入する基板搬入装置と、該プリント配線基板をプラテンから搬出する基板搬出装置と、露光すべきパターンを描いたフォトマスクと、を備えた露光装置において、前記基板搬入装置に連動して移動し、前記プラテンを除塵する第1のスクレーパ装置と、前記基板搬出装置に連動して移動し、前記フォトマスクを除塵する第2のスクレーパ装置と、を備えたことを特徴とする。
第1と第2のスクレーパ装置によりプラテンとフォトマスクの粘着性を持つ塵埃を効果的に除去することができる。前記第2のスクレーパ装置は、前記基板搬出装置がプリント配線基板位置まで移動する際、又は前記基板搬出装置がプリント配線基板位置から戻る際、の中のどちらかでフォトマスクを除塵すれば良く、また往復で除塵することも可能である。
前記スクレーパ装置は、対象物に接触するスクレーパと、該スクレーパを前記対象物に押しつける加圧機構と、を備えることが望ましく、該加圧機構によりスクレーパと対象物との接触を維持でき、スクレーパに摩耗などが生じても好適な接触を維持できる。更に該スクレーパが対象物に接触する接触角度を変更可能なスクレーパ角度調整機構を備えることが望ましく、スクレーパの対象物への接触角度を変更調整することにより更に効果的な除塵を行える。
また除電装置を備え、除塵前及び/又は除塵後において、除塵する部位が帯びている静電気を除去するように構成しても良い。これにより、除塵前では除塵効率を向上させ、除塵後では塵埃の再付着を防止することが可能になる。
更にスクレーパ除塵装置により除去された塵埃を吸引する吸引集塵手段を設けることにより、スクレーパ装置により削り取られた塵埃を吸引除去できる。また.この吸引集塵手段により削った塵埃だけでなく、対象物上の塵埃も吸引することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の露光装置によれば、粘着性の高い塵埃であっても効率的に除塵ができるから、歩留まりの高い露光を実現できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はプリント配線基板を製造するための露光装置であり、フォトレジストを施されたプリント配線基板Bはプラテン5上に載置され、露光ステージ7によりXYZ及びθ方向に移動可能になっている。露光部20において、基板Bの上方にはマスクフォルダ6に装着されたフォトマスクMが配置されており、更にその上に光源9が設けられている。光源9からの露光光はフォトマスクMに描かれたパターンを基板Bに露光するようになっている。
【0008】
上記露光部20の一方側には搬入部30が設けられ、ここに前工程から基板Bが搬送されてくる。搬入部30には搬入ハンド3が設けられており、この搬入ハンド3により基板Bを吸着固定し、基板Bをプラテン5上まで運搬するようになっている。
【0009】
露光部20の他方側には搬出部40が設けられており、露光部20で露光された基板Bがここに搬送され、後工程に送られるように構成されている。搬出部40には搬出ハンド4が設けられており、搬出ハンド4がプラテン5上の基板Bの位置まで移動し、基板Bを吸着固定して搬出部40まで移送するように構成されている。
【0010】
前記搬入ハンド3には第1クリーニングヘッド1が装着されている。第1クリーニングヘッド1は搬入ハンド3の露光部20側に装着され、搬入ハンド3の搬入動作の際に、プラテン5上面の除塵を行うようになっている。即ち、搬入ハンド3が露光部20方向に移動する際に、所定位置で第1クリーニングヘッド1がプラテン5の上面に接触し、搬入ハンド3の移動に伴ってプラテン5上を移動しつつ除塵を行う。搬入ハンド3がプラテン5上に達すると、プラテン5が上昇して基板Bを受け取り、吸着固定して下降する。その後搬入ハンド3は搬入部30に退避する。
以上の動作により、第1クリーニングヘッド1によりプラテン5の除塵を行うように構成されている。
なお、基板の搬入の際ではなく、単に搬入ハンド3を移動させることにより除塵を行うことも可能である。
【0011】
図2と図3に第1クリーニングヘッド1の構成を示す。後述する第2クリーニングヘッド2も同一の構成になっている。
第1クリーニングヘッド1と第2クリーニングヘッド2はスクレーパ装置10と吸引集塵機である吸引ノズル15及び除電ブラシ16を備えている。
【0012】
図2と図3に示すように、第1クリーニングヘッド1と第2クリーニングヘッド2において、スクレーパ装置10は第1クリーニングヘッド1本体に傾動可能に装着されている。スクレーパ装置10はスクレーパ11を有し、該スクレーパ11はシリンダ12により対象物であるマスクM又はプラテン5に押しつけられている。
スクレーパ11は図3に示すように、マスクM、プラテン5の幅と略同幅の幅を有し、その両端においてシリンダ12により進退可能に支持され、所定の圧力でマスクM、プラテン5に接触し、押圧するようになっている。スクレーパ11は使用するにつれて摩耗するため、シリンダ12により該摩耗を補償することができる。
シリンダ12は、それ自身の特性により凹凸を吸収し、スクレーパ11が塵埃を削る際に緩衝作用を有するようになっている。
【0013】
スクレーパ11は所定の角度でマスクM、プラテン5に接触するようになっており、所定の角度調整機構により、その角度を調整できるようになっている。角度調整機構としては種々のものが採用可能であるが、この実施形態においては、図2に示すように回動軸17によりスクレーパ装置10を回動可能にクリーニングヘッド1又は2に支持し、長穴18とネジ19により所定の角度で固定するように構成されている。
スクレーパ11は図2に示すように進行方向に向かって水平から所定角度下向きになってプラテン5,マスクMに接触するように構成されており、第1クリーニングヘッド1の進行に従って、プラテン5、マスクM上の粘着性の塵埃を削りとるように構成されている。
【0014】
スクレーパ装置10の進行方向側のスクレーパ11先端近傍の上には、吸引塵埃手段である吸引ノズル15が設けられており、スクレーパ11により削られた粘着性塵埃を吸引除去するようになっている。また、この吸引ノズル15はプラテン5、マスクM上の粘着性を持たない塵埃も吸引して除塵するようになっている。
【0015】
第1クリーニングヘッド1と第2クリーニングヘッド2は夫々、更に2つの除電ブラシ16を備えており、プラテン5表面又はフォトマスクMの静電気を除去するようになっている。除電ブラシ16は吸引ノズル15の前とスクレーパ装置10の後に設けられており、一方は除塵前に静電気を除去して除塵効率を向上させる。また他方の除電ブラシ16は除塵後に静電気を除去し、除塵後に塵埃の再付着を防止する機能を有している。
【0016】
次に搬出ハンド4について説明する。搬出ハンド4には第2クリーニングヘッド2が装着されている。第2クリーニングヘッド2は搬出ハンド4の露光部20側に装着され、搬出ハンド4の露光部20への移動の際にフォトマスクMの除塵を行うようになっている。また後述するように搬出動作の際に除塵しても良いし、両方でフォトマスクMの除塵を行うように構成してもよい。また、更に、基板の搬出と関係なく、単に搬入ハンド4を移動させることにより除塵を行うことも可能である。
搬出ハンド4が露光部20方向に移動する際に、所定位置で第2クリーニングヘッド2がフォトマスクMに接触し、スクレーパ11がマスクMに接触し、搬出ハンド4の移動に伴ってフォトマスクM上を移動しつつ、塵埃を削って除塵を行う。搬出ハンド4が基板B上に達すると、搬出ハンド4が基板Bを吸着固定し、プラテン5が下降する。その後搬出ハンド4は搬出部40に移動して基板Bを搬出するが、この搬出の際にも第2クリーニングヘッド2をフォトマスクMに接触させて搬出ハンド4の移動に伴ってフォトマスクM上の除塵を行っても良い。
なお、搬出ハンド4は上向きに装着されていることを除いて第1クリーニングヘッド1と全く同一の構成であり、図2と図3に示す構成を備えている。
また、基板Bを搬出する際にも除塵を行うためには、スクレーパ装置10の傾斜方向を変える必要がある。またスクレーパ装置10と吸引ノズル15の位置関係も変える必要がある。露光部20への移動時と搬出時と両方で除塵を行う場合には、スクレーパ装置10と吸引ノズル15を夫々新規に加えるか、或いはスクレーパ装置10の傾斜を逆方向に変更可能とし、スクレーパ装置10と吸引ノズル15の位置関係を変更可能なように構成する。
【0017】
以上の構成における動作を説明する。
最初に第1クリーニングヘッド1の動作を図4により説明する。まず、前工程から基板Bが搬入部30に搬入される。搬入部30に待機している搬入ハンド3が基板Bをチャッキング(吸着固定)し、このまま搬入ハンド3がプラテン5上の基板受け渡し位置まで移動(往路)する。搬入ハンド3移動中の所定位置で、第1クリーニングヘッド1のシリンダ12が作動し、スクレーパ11を延出させ、図4(A)に示すようにスクレーパ11をプラテン5の上面に接触させる。吸引ノズル15はプラテン5上面に近接した位置に設定してある。搬入ハンド3は移動を続け、移動中にスクレーパ11がプラテン5に付着した塵埃を削り、同時に吸引ノズル15により、削られた塵埃を吸引する。除電ブラシ16による除電は継続的に行われる。搬入ハンド3が基板受け渡し位置に到達したら、図4(B)に示すように、プラテン5が上昇し基板Bを受け取る。この時、第1クリーニングヘッド1はプラテン5の外位置にありプラテン5とは接触はしない。
【0018】
次に、プラテン5は基板Bを吸着固定し下降退避する。そして、搬入ハンド3は搬入部30まで戻り、プラテン5が上昇し、基板BとフォトマスクMとが密着し光源9が点灯し露光が行われる。
【0019】
次に第2クリーニングヘッド2の動作を図5により説明する。
基板Bの露光が完了すると、プラテン5と基板Bが下降し、搬出ハンド4が搬出部40からプラテン5上の基板受け渡し位置まで移動(往路)する。搬出ハンド4移動中の所定位置で、図5(A)に示すように第2クリーニングヘッド2のシリンダ12が作動し、スクレーパ11を延出させ、スクレーパ11をフォトマスクMに接触させ、搬出ハンド4は移動を続け、該移動により、スクレーパ11はフォトマスクMに付着した塵埃を削り取り、除去する。該削り取られた塵埃は同時に吸引ノズル15により集塵される。また除電ブラシ16による除電が継続的に行われる。搬出ハンド4が基板受け渡し位置に到達したら、図5(B)に示すように露光ステージ7とプラテン5が上昇し、プラテン5上の露光済み基板Bを搬出ハンド4がチャッキング(吸着固定)する。そして、プラテン5が下降退避し、搬出ハンド4が搬出部40に移動(復路)する。前記したように、この時も往路と同様に除塵を行うことも可能である。
なお、上記では、基板の搬入搬出に伴って、除塵を行う動作を説明したが、基板の搬入搬出を行わずに、単に搬入ハンド3、搬出ハンド4を移動させることにより除塵を行わせることも可能である。
【0020】
以上説明した構成によれば、マスクMとプラテン5の粘着性の塵埃を効果的に除去できる。またフォトマスクMについては1回の露光につき2回の除塵も可能である。特にプラテン5の除塵により基板Bの露光面の反対面にドライフィルムフォトレジストやソルダレジストなどの付着を防止できる効果がある。また吸引ノズル15は、スクレーパ11により削り取られた粘着性の塵埃と粘着性のない塵埃の両方を効果的に除去でき、確実な除塵が可能である。更に除電ブラシ16により静電気が除去されるので、除塵効率が上がり、また除塵後の塵埃の付着が防止できる。
また、クリーンローラを用いる場合のように、クリーンローラに付着した塵埃を除去するための粘着ローラなどの機構が不要になり、装置の小型化、コスト低減が可能である。
また、第1クリーニングヘッド1と第2クリーニングヘッド2は搬入ハンド3と搬出ハンド4に装着されているため、新たな駆動機構などを設ける必要がない等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略正面図。
【図2】本発明の一実施形態の第1クリーニングヘッド1と第2クリーニングヘッド2の構成を示す概略正面図。
【図3】本発明の一実施形態の第1クリーニングヘッド1と第2クリーニングヘッド2の構成を示す概略平面図。
【図4】本発明の一実施形態の第1クリーニングヘッド1の動作説明図。
【図5】本発明の一実施形態の第2クリーニングヘッド2の動作説明図。
【符号の説明】
【0022】
1:第1クリーニングヘッド、2:第2クリーニングヘッド、3:搬入ハンド、4:搬出ハンド、5:プラテン、6:マスクフォルダ、7:露光ステージ、9:光源、10:スクレーパ装置、11:スクレーパ11、12:シリンダ、15:吸引ノズル、16:除電ブラシ、17:回動軸、18:長穴、19:ネジ、20:露光部、30:搬入部、40:搬出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光すべきプリント配線基板を載置するプラテンと、該プリント配線基板をプラテン上に載置すべく基板を搬入する基板搬入装置と、該プリント配線基板をプラテンから搬出する基板搬出装置と、露光すべきパターンを描いたフォトマスクと、を備えた露光装置において、
前記基板搬入装置に連動して移動し、前記プラテンを除塵する第1のスクレーパ装置と、
前記基板搬出装置に連動して移動し、前記フォトマスクを除塵する第2のスクレーパ装置と、
を備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記第2のスクレーパ装置は、前記基板搬出装置がプリント配線基板位置まで移動する際、又は前記基板搬出装置がプリント配線基板位置から戻る際、の中のどちらかでフォトマスクを除塵する、
請求項1の露光装置。
【請求項3】
前記第2のスクレーパ装置は、前記基板搬出装置がプリント配線基板位置まで移動する際にフォトマスクを除塵し、前記基板搬出装置がプリント配線基板位置から戻る際にフォトマスクを再度除塵する、
請求項1の露光装置。
【請求項4】
前記スクレーパ装置は、
対象物に接触するスクレーパと、
該スクレーパを前記対象物に押しつける加圧機構と、を備える、
請求項1又は2又は3の露光装置。
【請求項5】
前記スクレーパ装置は、
対象物に接触するスクレーパと、
該スクレーパが対象物に接触する接触角度を変更可能なスクレーパ角度調整機構と、を備える、
請求項1又は2又は3の露光装置。
【請求項6】
前記スクレーパ装置が除電装置を備える、
請求項1又は2又は3又は4又は5の露光装置。
【請求項7】
前記スクレーパ除塵装置が、該装置により除去された塵埃を吸引する吸引集塵手段を、備える、
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6の露光装置。
【請求項8】
前記第1スクレーパ装置は基板搬入装置に装着され、前記第2スクレーパ装置は基板搬出装置に装着されている、
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−40287(P2008−40287A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216431(P2006−216431)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(300091670)株式会社アドテックエンジニアリング (23)
【Fターム(参考)】