説明

露払い用の走行型茶葉摘採機

【課題】降雨があった場合、茶葉の表面が濡れているので、茶葉を収容する茶袋も濡れて重くなり、摘採が困難となる。濡れた茶葉は露葉と呼び、乾燥作業を主とする製茶工程では時間が長く掛り、能率が落ちると共に品質も低下する。この為、一般的には茶葉が乾くのを待って、摘採をしなければならないことである。
【解決手段】前記課題を解決するために、請求項1記載の発明では、茶畝を挟んだ2本の無限軌道式の走行装置、又は茶畝を挟んで敷設された2本のレール上を走行する走行装置を門型枠でつなぎ、門型枠の下方に摘採装置を設け、摘採装置に茶袋を接続して、茶畝に沿って走行しながら茶葉を摘採する走行型茶葉摘採機において、機体前方に茶樹の表面を吹き払う送風管を設置するという手段を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、茶畝に沿って走行しながら茶葉を摘採する走行型茶葉摘採機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行型茶葉摘採機のうち、茶畝を挟んだ2本の無限軌道式の走行装置によって走行するものとしては、特開平10−262436のような機体に作業者が乗って運転するものがある。また、茶畝を挟んだ2本のレール上を走行するものとしては、特開平7−115826に示すようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−262436号公報
【特許文献2】特開平7−115826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
降雨があった場合、茶葉の表面が濡れているので、茶葉を収容する茶袋も濡れて重くなり、摘採が困難となる。濡れた茶葉は露葉と呼び、乾燥作業を主とする製茶工程では時間が長く掛り、能率が落ちると共に品質も低下する。この為、一般的には茶葉が乾くのを待って、摘採をしなければならないことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明では、茶畝を挟んだ2本の無限軌道式の走行装置、又は茶畝を挟んで敷設された2本のレール上を走行する走行装置を門型枠でつなぎ、門型枠の下方に摘採装置を設け、摘採装置に茶袋を接続して、茶畝に沿って走行しながら茶葉を摘採する走行型茶葉摘採機において、機体前方に茶樹の表面を吹き払う送風管を設置するという手段を用いる。別途、送風ファンをつけた送風管を機体前方に設置すれば、これによって、茶樹の表面に付着している露を吹き飛ばすことができる。また、露を吹き払いながら同時に摘採作業を行って走行させることも出来る。
【0006】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の走行型茶葉摘採機において、機体前方の送風管と機体に設けた送風ファンをつなぐフレキシブルホースの脱着具を脱着自在とするという手段をとる。このようにして、茶畝に沿って走行すれば、露払い用に設けた送風管から茶樹の表面へ風を吹き付け、茶葉の表面に付着している露を吹き飛ばすことが出来る。
【0007】
また、前記課題を解決するための別の手段として、請求項3記載の発明では、請求項1または2記載の走行型茶葉摘採機において、摘採装置を構成する多数の吹出枝管を持つ送風管を移動させて、吹出枝管の吹き出し方向を刈刃面からはずし、茶樹の表面に向くように設置するという手段を用いる。摘採装置の送風管の吹出枝管は、摘採作業時、刈刃の上に吹くようにセットされており、直接茶樹の表面へ風を当てることはない。送風管の吹出枝管からの吹出方向を変え、直接茶樹の表面に当てるようにして走行すれば、茶葉に付着した露を吹き払うことが出来る。
【発明の効果】
【0008】
請求項2記載の実施例のように、露払い用のダクトと接続すれば、摘採用のファンを露払い用として用いることが可能となり、経済的である。請求項3記載の実施例では、茶葉表面の露払い用とし、摘採用の送風ダクトの位置を少し変えるだけで、露払い作業が出来るので、降雨後でもすぐに摘採が出来る。請求項1記載の実施例では、露払い用の送風ダクトを追加することで露払いと摘採作業を同時に行うことが出来るので、摘採の能率を上げることが出来る。雨が濡れたままの茶葉を摘採すると、茶袋も重く、摘採作業も困難であり、製茶工場で加工しても能率が上がらず、製品の品質も悪くなる。以下請求項1、2、3の実施例のように、露払いをすれば、摘採作業と製茶加工の能率を上げることができ、加工製品の品質を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】無限軌道の走行装置によって、走行する走行型茶葉摘採機の側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1の正面図。
【図4】摘採装置の実施例を示す説明図。
【図5】送風管とフレキシブルホースの脱着関係を示す説明図。
【図6】図5の平面図。
【図7】整枝用の走行型茶葉摘採機。
【図8】図7の後正面図。
【図9】請求項2記載の露払い用の走行型茶葉摘採機。
【図10】請求項3記載の露払い用の走行型茶葉摘採機の実施例1。
【図11】請求項3記載の露払い用の走行型茶葉摘採機の実施例2。
【図12】請求項1記載の露払い用の走行型茶葉摘採機。
【図13】図12の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の走行型茶葉摘採機として、無限軌道式の走行装置によって、直接大地に接して走るものと、茶畝に敷設したレール上を走る走行装置によるものがある。この発明に関しては、走行装置はどちらであっても同じであるので、以下、無限軌道式の走行装置を有する走行型茶葉摘採機を実施例として実施の形態を説明する。
【0011】
図1は走行型茶葉摘採機の側面図、図2は平面図、図3は正面図である。1、2は無限軌道式の走行装置であり、茶畝3を挟んでその両側を走行する。左右の走行装置は門型枠4によりつながっている。門型枠4の下には、刈刃11が摘採装置のガイド枠12に取り付けられて、設置されている。門型枠4の上には、送風ファン9が設けてあり、刈刃11の前方に設けた送風管10とフレキシブルホース13でつながれている。送風ファン9の風は送風管10に付いている多数の吹出枝管16から刈刃11の上へ吹き付けられる。ガイド枠12の後には、茶袋15を取り付けて摘採する。茶袋15は茶袋保持板14で保持する。
【0012】
本発明とは別の実施例について、図4に従って説明する。刈刃11の後方には、やや上方へ傾斜した底板17と底板18が接続している。刈刃11の左右には、ガイド枠側板20が設けてある。ガイド枠側板20の後上部は、袋保持具21を取り付けた桁でつながっている。底板17とガイド枠側板20には、請求項1記載の滑りやすい非粘着性の被膜による塗装としてテフロン(登録商標)コーティングがしてある。又、底板17の後部は、屈曲部19を設けて上方に曲げてある。ガイド枠側板20の前部には、吹出枝管16の付いた送風管10が設けてあり、摘採装置を構成している。ガイド枠12に続いて、茶袋保持板14が設けてある。
【0013】
次に作業手順を説明する。まず作業者は茶袋15を袋保持具21にセットする。茶袋15の開口部にはゴムひもがつけてあり、茶袋15の下側を底板17の下へ差し込む。このとき、屈曲部19が設けてあるので、容易に袋を差し込むことが出来る。次いで、ガイド枠12の左右外側と、上側に設けてある袋保持具21に引っかける。茶袋15の後は、茶袋保持板14の上へ長く伸ばしておく。送風ファン9を廻すと、吹出枝管16から刈刃11上へ空気が噴出し、底板17上を通って、屈曲部19で向きを変え上方へ吹き上げ、茶袋15を丸く膨らまし、摘採した茶葉35を収容しやすくする。刈刃11を動かして、機体をゆっくりと前進させると、摘採された茶葉35は、吹出枝管16から噴出す空気に飛ばされて、茶袋15内へ収容される。屈曲部19によって、上方へ吹き飛ばされるので、茶袋15の一番奥まで飛ばすことが出来る。茶葉35が茶袋15の底側へだんだんたまってくるが、屈曲部19により上側を飛ばされるので、底側にたまった茶葉に邪魔されることなく、茶袋15の全体へ均一に収容される。ガイド枠側板20と底板17には、テフロン(登録商標)コーティングにより茶葉の摩擦を少なくしてあるので、茶葉は弱い風でもうまく滑っていく。又、テフロン(登録商標)コーティングは茶渋が付着するのを防ぐ効果がある。
【0014】
本発明とは別の実施例を図5、6に従って説明する。図5、6にフレキシブルホース13と送風管10の接続部37の詳細を示す。フレキシブルホース13の先端には、接続フランジ36を設ける。送風管10側にも接続フランジ38を設ける。39はパッキンである。送風管側のフランジ38とフレキシブルホース側のフランジ38をパッキン39を介して接合し、押え具23、引っ掛け金具22によって、脱着する。
【0015】
本発明とは別の実施例を図7、8に従って説明する。フレキシブルホース13と送風管10の接続部37をはずし、整枝用ホース24と接続する。整枝用ホース24の先端には、吹出ノズル25が設けてある。機体後部に整枝用刈刃26を取り付ける。整枝用刈刃26は枝を切るために、摘採用刈刃11より丈夫に出来ていて、別に設けたエンジン27により駆動する。刈刃26は茶袋保持板14に支持棒28を取り付けて、支持棒28に取り付けたブラケット29を介して保持する。吹出ノズル25も支持腕30により支持棒28に固定する。茶袋保持板14は上下調節可能となっているので、茶袋保持板14を上下させ、整枝用刈刃26を整枝したい高さにあわせる。エンジン27を起動させて、刈刃26を動かし、送風ファン9を廻してノズル25から刈刃26の上へ空気を吹き付けながら、ゆっくりと機体を前進させる。刈り取られた枝は、ノズル25から吹き出す強風によって、左右へ吹き飛ばされる。このようにして整枝作業を行う。
【0016】
請求項1記載の発明の実施例を図12、13によって説明する。図12、13では、機体の前方に露払い用の送風管32を取り付ける。送風管32には、吹出用枝管33が前方へ吹き出すように付いている。又、この送風管32にはエンジンファン34が取り付けてある。この送風管32は機体へ脱着自在とし、茶葉が濡れているときはこれを取り付け、エンジンファン34を廻して茶葉の露払いをしながら、同時に摘採作業を行うことが出来る。
【0017】
請求項2記載の発明の実施例を図9によって説明する。雨が降って、茶葉の表面が濡れている場合、送風管10の前へ露払い用送風管31を設ける。フレキシブルホース13を脱着自在にしてある接続部37ではずし、露払い用送風管31に接続する。露払い用送風管31から強風を茶葉表面へ吹き付けながら、機体を前進させて、露払いを行う。
【0018】
請求項3記載の発明の実施例について、図10、11により説明する。吹出枝管16から吹き出す風は摘採された茶葉を吹き飛ばすために設けてあるので、刈刃11の下側へ吹き出すことはない。図10の実施例では、送風管10を少し回動させて、吹出枝管16を16’位置まで持っていき、直接茶葉40の上に吹き付けるようにする。図11の実施例では、送風管10の位置を前方下側へ移動させて、10’の位置とし、やはり直接茶葉の上に吹き付けるようにする。上記のように、送風管10を移動させ、刈刃11が茶葉40に当たらないように上にあげ、送風ファン9を廻して茶葉表面へ強風を当てて、露払いをしながら機体を前進させる。
【符号の説明】
【0019】
1 走行装置
2 走行装置
3 茶畝
4 門型枠
5 エンジン
6 座席
7 運転席
8 ハンドル
9 送風ファン
10、10’ 送風管
11 刈刃
12 ガイド枠
13 フレキシブルホース
14 茶袋保持板
15 茶袋
16、16’ 吹出枝管
17 底板
18 底板
19 屈曲部
20 ガイド枠側板
21 袋保持具
22 引っ掛け金具
23 押え具
24 整枝用ホース
25 吹出ノズル
26 整枝用刈刃
27 エンジン
28 支持棒
29 ブラケット
30 支持腕
31 露払い用の送風管
32 露払い用の送風管
33 吹出用枝管
34 エンジンファン
35 茶葉
36 接続フランジ
37 接続部
38 接続フランジ
39 パッキン
40 茶葉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を挟んだ2本の無限軌道式の走行装置、又は茶畝を挟んで敷設された2本のレール上を走行する走行装置を門型枠でつなぎ、門型枠の下方に摘採装置を設け、摘採装置に茶袋を接続して、茶畝に沿って走行しながら茶葉を摘採する走行型茶葉摘採機において、機体前方に茶樹の表面を吹き払う送風管を設置したことを特徴とした露払い用の走行型茶葉摘採機。
【請求項2】
請求項1記載の走行型茶葉摘採機において、機体前方の送風管と機体に設けた送風ファンをつなぐフレキシブルホースの脱着具を脱着自在としたことを特徴とした露払い用の走行型茶葉摘採機。
【請求項3】
請求項1または2記載の走行型茶葉摘採機において、摘採装置を構成する多数の吹出枝管を持つ送風管を移動させて、吹出枝管の吹き出し方向を刈刃面からはずし、茶樹の表面に向くように設置したことを特徴とした露払い用の走行型茶葉摘採機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−148519(P2010−148519A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47241(P2010−47241)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【分割の表示】特願2000−400201(P2000−400201)の分割
【原出願日】平成12年12月28日(2000.12.28)
【出願人】(000145116)株式会社寺田製作所 (90)
【Fターム(参考)】