説明

静止型スプレー混合器

【課題】流動性を有する少なくとも2つの成分の混合及び吹き付けのための静止型スプレー混合器の提供。
【解決手段】この混合器は、成分の出口開口部22を有する遠位端部21まで、長手方向軸線Aの方向に延在する管状の一体型の混合器筐体2を有し、成分の混合のために混合器筐体2内に配置される少なくとも1つの混合要素3を有し、また、混合器筐体2をその端部領域において囲む内表面を有する噴霧スリーブ4を有し、この噴霧スリーブ4は、加圧された噴霧媒体の入口41を有する。複数の溝が、長手方向軸線Aの方向にそれぞれ延在する、混合器筐体2の外表面又は噴霧スリーブ4の内表面に設けられ、この溝の中を、噴霧媒体が、噴霧スリーブ4の入口41から混合器筐体2の遠位端部21へと流れ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前文に記載された、流動性を有する少なくとも2つの成分の混合及び吹き付けのための静止型スプレー混合器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流動性を有する少なくとも2つの成分の混合のための静止型混合器は、たとえば欧州特許出願公開第0749776号及び欧州特許出願公開第0815929号に記載されている。これらの非常に小型の混合器は、その混合器の構造が単純で材料を節約する構成であるにもかかわらず、特に、シーリング・コンパウンド、2成分の発泡体、又は2成分の接着剤などの粘度の高い材料の混合にも良好な混合結果をもたらす。このような静止型混合器は、通常、1回のみ使用するように構成され、硬化する製品に多く用いられており、この場合、実際、混合器は清掃できない。
【0003】
このような静止型混合器が使用されるいくつかの用途では、静止型混合器内での混合の後、2つの成分を基板上に吹き付けることが望まれる。この目的のために、混合された成分は、空気などの媒体の作用によって、混合器の出口において噴霧され、そうして、噴射体又は噴霧体の形態で所望の基板に塗布できる。このような装置は、たとえば、米国特許第6,951,310号に開示されている。
【0004】
この装置では、静的な混合のための混合要素を受け、リング形のノズル本体がねじ付けられる雄ねじを一端に有する管状の混合器筐体が設けられる。ノズル本体は、同様に雄ねじを有する。その円錐形の表面に長手方向に延在する複数の溝を有する円錐形の噴霧器要素が、混合器筐体から突出する混合要素の端部に配置される。内表面が同様に円錐形の構成であるこの噴霧器要素上に、噴霧器要素の円錐形の表面と接触するようにキャップが被される。結果として、溝が噴霧器要素とキャップとの間の流路を形成する。キャップは、ノズル本体の雄ねじにねじ留めされた保持ナットによって、噴霧器要素と共にノズル本体に固定される。ノズル本体は、圧縮空気のための連結部を有する。作動時には、圧縮空気が、噴霧器要素とキャップとの間の流路を通ってノズル本体から流れ出て、混合要素から放出される材料を噴霧する。
【0005】
この装置は完全に機能することがはっきりと証明されてはいるが、その構造は非常に複雑であり、設置は複雑及び/又は高価であって、そのため、この装置は、特に、1回のみの使用についての費用効果があまりよくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0749776号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0815929号明細書
【特許文献3】米国特許第6,951,310号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、この従来技術から出発して、本発明の目的は、その製造における費用効果がよく、成分の効率的な混合又は完全な混合及び噴霧を可能にする、流動性を有する少なくとも2つの成分の混合及び吹き付けのための、特に単純な静止型スプレー混合器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を満たす本発明の主題は、独立特許項の特徴部分によって特徴づけられる。
【0009】
このように、本発明によると、流動性を有する少なくとも2つの成分の混合及び吹き付けのための静止型スプレー混合器が提案される。この混合器は、成分の出口開口部を有する遠位端部まで、長手方向軸線の方向に延在する管状の一体型の混合器筐体を有し、成分の混合のために混合器筐体内に配置された少なくとも1つの混合要素を有し、さらに、混合器筐体をその端部領域において囲む内表面を有する噴霧スリーブを有する。この噴霧スリーブは、加圧された噴霧媒体の入口を有する。複数の溝が、長手方向軸線の方向にそれぞれ延在する混合器筐体の外表面又は噴霧スリーブの内表面に設けられ、この溝の中を、噴霧媒体が、噴霧スリーブの入口から混合器筐体の遠位端部まで流れることができる。
【0010】
静止型スプレー混合器の特に単純な構造が、混合又は噴霧の質にいかなる譲歩も要することなく、これらの方策によってもたらされる。個々の構成要素を理想的に使用することによって、スプレー混合器の費用効果がよく経済的な製造が可能になり、さらに、製造は少なくとも大部分が自動化された方式で行なうことができる。本発明による静止型スプレー混合器は、概ね3つのみの構成要素を必要とする、すなわち、一体型の混合器筐体、同様に一体部分として構成され得る噴霧器スリーブ及び混合要素である。これによって、既知の装置と比較して複雑さが相当低減され、製造又は設置が大幅により単純となる。
【0011】
特に、さらに製造をより単純化するために、噴霧スリーブが混合器筐体にねじ山のない方式で連結されると有利である。
【0012】
好ましい実施形態では、混合器筐体が、遠位端部に向かって先細になる遠位端部領域を有し、噴霧スリーブの内表面が、遠位端部領域と組み合わせられるように構成される。噴霧効果が、この先細形状によって改善される。
【0013】
遠位端部領域の混合器筐体の外表面は、少なくとも部分的に切頭円錐形の表面として構成されることが好ましい。
【0014】
この点について、切頭円錐形の表面が、少なくとも10°、最大45°をなす、長手方向軸線との円錐角を形成する場合に有利であることがわかった。
【0015】
溝への噴霧媒体の一様な分配を実現するために、リング状の空間が、混合器筐体の外表面と噴霧スリーブの内表面との間に設けられ、噴霧スリーブの入口及び溝と流体連通していることが好ましい。
【0016】
混合器筐体の出口開口部から放出される材料が、できるだけ均一に噴霧されるように、混合器筐体の外表面に溝を一様に分布させることが好ましい。
【0017】
それぞれの溝が半径方向の深さを有し、半径方向の深さが、長手方向軸線に対して及び半径方向に対して直角をなす方向のそれぞれの溝の大きさに比べてより小さい、特に最大で半分の大きさの場合、溝の形状に関して有利であることがわかった。
【0018】
それぞれの溝が、混合器筐体の遠位端部に向かって半径方向の深さが大きくなる場合に、このような実施形態が特に好ましい。
【0019】
噴霧スリーブが封止嵌合式の連結部によって混合器筐体に固定される場合、特に単純な製造又は設置に関して有利である。
【0020】
好ましい実施形態では、混合器筐体は、遠位端部領域の外側において長手方向軸線に対して直角をなす、実質的に方形、好ましくは正方形の断面を有する。こうして、商標名Quadro(登録商標)で利用可能な実績のある混合器が、静止型スプレー混合器に使用できる。
【0021】
したがって、混合要素は、Quadro(登録商標)混合器の場合と同様に、長手方向に対して直角をなす、方形、好ましくは正方形として構成されることも好ましい。
【0022】
噴霧媒体の信頼性の高い供給を確保するために、噴霧スリーブの入口は、好ましくは噴霧手段の供給部を固定するための固定手段を有する。
【0023】
混合器筐体及び/又は噴霧スリーブは、好ましくは熱可塑性物質から射出成形により作製されると、特に単純で費用効果のよい製造に関して有利である。
【0024】
同じ理由によって、混合要素は、一体部分として構成され、好ましくは熱可塑性物質から射出成形により作製されると有利である。
【0025】
本発明のさらに有利な方策及び実施形態は、従属請求項によってもたらされる。
【0026】
本発明は、実施形態及び図面を参照して以下にさらに詳細に説明される。概略図が一部断面図で示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による静止型スプレー混合器の一実施形態の長手方向の断面図。
【図2】図1の実施形態の斜視図。
【図3】遠位端部領域の断面の斜視図。
【図4】遠位端部領域の側面図。
【図5】図4のV−V線に沿った実施形態の断面図。
【図6】図4のVI−VI線に沿った実施形態の断面図。
【図7】図4のVII−VII線に沿った実施形態の断面図。
【図8】図4のVIII−VIII線に沿った実施形態の断面図。
【実施例】
【0028】
図1は、符号1によって全体として示される、本発明による静止型スプレー混合器の一実施形態の長手方向の断面を示す。よりよく理解するために、図2はこの実施形態の斜視図を示す。スプレー混合器は、流動性を有する少なくとも2つの成分の混合及び吹き付けを行う。
【0029】
以下には、特に2つのみの成分が混合及び吹き付けをされる態様に関する場合について言及される。しかしながら、本発明は、3つ以上の成分の混合及び吹き付けにも使用できることが理解されよう。
【0030】
スプレー混合器1は、長手方向軸線Aの方向に遠位端部21まで延在する管状の一体型の混合器筐体2を含む。この点について、この端部は、混合された成分が作動状態の混合器筐体2から放出される遠位端部21を意味する。遠位端部21は、この目的のための出口開口部22を備える。混合器筐体2は、近位端部に連結部分23を有する。これは、この端部から混合される成分が混合器筐体2に導入され、混合器筐体2がこの連結部分によって成分の保管容器に連結できることを意味する。この保管容器は、たとえば、それ自体が既知の2成分カートリッジであり得るか、同軸カートリッジとして、若しくは並置式カートリッジとして構成され得るか、又は、2つの成分が互いに別々に保管される2つのタンクであり得る。保管容器又はその出口の構成次第で、連結部分は、たとえば、嵌合式連結部、差込み式連結部、ねじ付き連結部、又はその組み合わせとして構成される。
【0031】
2つの成分が混合要素3を介して近位端部から出口開口部22までのみ動くことができるように、少なくとも1つの静止型混合要素3が、混合器筐体2内にそれ自体が既知の方式で配置され、混合器筐体2の内壁に接触する。互いの後方に配置される複数の混合要素3が設けられるか、又は、本実施形態の場合のように、好ましくは射出成形され、熱可塑性物質でできた一体型の混合要素のいずれかが設けられる。このような静止型混合器又は混合要素3は、当業者には十分知られており、したがってさらなる説明は必要ない。
【0032】
Sulzer Chemtech AG(スイス)によって商標名QUADRO(登録商標)の下で販売されているような混合器又は混合要素3が特に適する。たとえば、このような混合要素は、すでに引用された文献欧州特許出願公開第0749776号及び欧州特許出願公開第0815929号に述べられている。Quadro(登録商標)タイプのそのような混合要素3は、長手方向Aに対して直角をなす方形の断面、特に正方形の断面を有する。したがって、一体型の混合器筐体2は、少なくとも混合要素3を囲む領域においても、長手方向軸線Aに対して直角をなす、実質的に方形、特に正方形の断面を有する。
【0033】
混合要素3は、混合器筐体2の遠位端部21まで完全には延在せず、当接部25(図3を参照)のところの端部まで延在する。この当接部25の上流の向きに見ると、混合器筐体2の内部空間は、混合要素3を受けるために実質的に正方形の断面を有する。混合器筐体2の内部空間は、この当接部25において合わさって円錐形状になる。すなわち、円形の断面を有し、遠位端部21の方向に先細になって、出口開口部22へとそこで開口する出口領域26を形成する。
【0034】
さらに、静止型スプレー混合器1は、その端部領域において混合器筐体2を囲む内面を有する噴霧スリーブ4を有する。噴霧スリーブ4は、一体部分として構成され、好ましくは、特に熱可塑性物質から射出成形により作製される。噴霧スリーブ4は、特に気体である加圧された噴霧媒体のための入口41を有する。噴霧媒体は、圧縮空気であることが好ましい。噴霧スリーブ4への圧縮空気の確実な導入を確保するために、入口41は、圧縮空気のホースの連結部がねじ付けられ得る、圧縮空気の供給部を固定するための固定手段42(ここではねじ山である)を有する。リフリング(riffling)、クリップ、締め付け連結部若しくは波形連結部、差込み式連結部又は同様のものなどの他の固定手段42も当然ながら可能である。入口42は、あらゆる既知の連結部として、特にルアーロックとしても構成できる。
【0035】
特に単純な設置又は製造を可能にするために、噴霧スリーブ4は、好ましくはねじ山のない方式で、本実施形態では嵌合式の連結部によって、混合器筐体に連結される。この目的のために、つば状の高くなった部分24が混合器筐体2(図3を参照)に設けられ、混合器筐体2の全周に延在する。周囲の溝43が、噴霧スリーブ4の内表面に設けられ、隆起部分24と組み合わせられるように構成される。噴霧スリーブ4が混合器筐体2上に押しつけられると、隆起部分24が周囲の溝43の中に嵌り、混合器筐体2に対して噴霧スリーブを安定的に連結する。周囲の溝43及び隆起部分24から構成されるこの連結部を介して噴霧媒体(ここでは圧縮空気)が逃げることができないように、この嵌合式の連結部は、好ましくは封止的な方式で構成される。
【0036】
また、混合器筐体2と噴霧スリーブ4との間に追加の封止材(たとえばOリング)を配置することも可能である。
【0037】
示された実施形態の代替として、周囲の溝を混合器筐体2に設け、この周囲の溝に係合する隆起部分を噴霧スリーブ4に設けることも可能である。
【0038】
本発明によると、複数の溝5が、長手方向軸線Aの方向にそれぞれ延在する混合器筐体2の外表面又は噴霧スリーブ4の内表面に設けられ、その中を、噴霧媒体が、噴霧スリーブ4の入口42から混合器筐体2の遠位端部21まで流れることができる。
【0039】
「長手方向軸線Aの方向」という用語は、それぞれの溝5が湾曲できる、たとえば円弧形状に構成され得ることをも意味する。したがって、溝5のそれぞれが、必ずしも、長手方向軸線Aの方向に又は長手方向軸線Aに向かって直線状に延在しなければならないわけではない。
【0040】
溝5が混合器筐体2の外表面にのみ設けられる場合について以下に言及する。しかしながら、溝5は、代替として又は追加で、噴霧スリーブ4の内表面にも同じ方式で同様に設けられ得ることが理解されよう。
【0041】
溝5及び噴霧スリーブ4の詳細な説明のために図3〜図8を参照する。図3は、静止型スプレー混合器の端部領域の断面の斜視図を示し、図4は側面図である。図5〜図8は、長手方向軸線Aに直角をなす断面をそれぞれ示し、実際、図5は図4のV−V線に沿い、図6はVI−VI線に沿い、図7はVII−VII線に沿い、図8は図4のVII−VIII線に沿っている。
【0042】
混合器筐体2は、遠位端部21に向かって先細になる遠位端部領域27を有する。遠位端部領域27の混合器筐体の外表面は、特に、少なくとも部分的に切頭円錐形の表面として構成される。混合器筐体2の外表面が遠位領域27において長手方向軸線Aと形成する円錐角αは、少なくとも10°、最大45°になる。この円錐角αは、混合器筐体2の内部空間において開始領域26が先細になる円錐角とは概ね異なり、詳しくはその円錐角よりも小さい。
【0043】
噴霧スリーブ4の内表面は、遠位端部領域27と組み合わせられるように構成される。Kで示される混合器筐体2の遠位端部21の領域では、噴霧スリーブ4の内表面は、同様に、この領域Kの混合器筐体2の外表面と同じ円錐角αを有する切頭円錐形の表面として構成される。領域Kにおいて、噴霧スリーブ4の内表面と混合器筐体2の外表面とは、堅固に封止状態を形成するように互いに接触し、それによって、この領域Kでは、混合器筐体2の外表面の溝5が、それぞれ、分離した流路を形成する(図5を参照)。
【0044】
領域Kの上流では、噴霧スリーブ4の内表面は、初めは依然として切頭円錐形であるが混合器筐体2の外表面よりも大きい断面を有し、それによって、混合器筐体2の外表面と噴霧器スリーブ4の内表面との間にリング状の空間6が存在する(図7を参照)。リング状の空間6は、噴霧器スリーブ4の入口41と流体連通している。さらに上流では、噴霧スリーブ4の内表面は、実質的に円形の円筒形状になり、リング状の空間6はここにも存在する。リング状の空間6は、周囲の溝43に封止的に係合する隆起部分24によって遠位端部21から離れた側に限られる。
【0045】
この実施形態では溝5は8つであるが、混合器筐体2の外表面全体に一様に分布させられている。溝5によって生成される圧縮空気流が半径方向に関して浅い場合、すなわち、長手方向軸線Aに対して直角をなす方向に大きすぎないことが、できるだけ完全で均一な、出口開口部から放出される混合成分の噴霧にとって有利であることがわかっている。
【0046】
これに適する溝5の形状は、図5〜図7において容易に認識できる。混合器筐体2の外表面の溝5は、2つの寸法によって特徴づけられる。すなわち、長手方向軸線Aから半径方向外向きに向いた半径方向を意味する長手方向軸線Aに直角をなす方向に、深さTとして示される半径方向の大きさと、長手方向軸線A及び半径方向に対して直角をなす方向の大きさBとである。それぞれの溝5の深さTは、長手方向軸線A及び半径方向に対して直角をなす方向での同じ点における大きさBよりも小さく、特に最高でも大きさBの半分の大きさであることが好ましい。詳しくは、深さTは、それぞれ大きさBのおよそ3分の1であることが好ましい。
【0047】
さらなる有利な方策は、流れの方向に見て、すなわち遠位端部21に向かって深さTが増すように、溝5がそれぞれ構成されることである。この特徴は、図5〜図7の比較によって認識されよう。
【0048】
溝5の形状及び大きさについて、多くの他の実施形態が当然ながら可能である。また、溝5は、特別な用途の場合に関して、その数、その大きさ、及びその寸法について最適化できる。
【0049】
さらなる変形例は、図3において最もわかりやすいつば状の隆起部分24が、混合器筐体2の全周のすべてには延在せず、長手方向軸線Aによって決められた方向に対して互いに偏位した2対のつば状の隆起部分が存在することである。図3のように混合器筐体2の上側に設けられた隆起部分と下側に設けられた隆起部分とが、こうして一方の対の隆起部分を形成し、他方の対は、前側に設けられた隆起部分と、後側に設けられた隆起部分とによって形成される。それぞれの個々の隆起部分は、それぞれの場合において、最大で周囲の片側に延在するか、又は、円形の実施形態では、最大で周辺の90°(4分の1)に延在する。この点において、上側及び下側の対は、前側及び後側の対に対して、長手方向軸線Aによって規定される方向に関して偏位している。すなわち、第1の対が、たとえば、後者の対よりも混合器筐体2の遠位端部21のより近くに配置され、同じ対に属する隆起部分が、それぞれ、遠位端部21から同じ距離のところに設けられる。したがって、周囲の溝43は、噴霧スリーブ4の内周全体には延在せず、2つの部分でできた溝が、互いに180°偏位して設けられ、溝の周囲方向の長さは、それぞれ場合において、最大で、個々の隆起部分の長さと同じ大きさである。この実施形態では、噴霧スリーブは、互いに対して90°回転した2つの異なる向きに混合器筐体上へ押しつけられ得る。一方の向きにおいて、部品の溝が第1対の隆起部分に嵌り、他方の向きでは、溝は第2の対又は他方の対の隆起部分に嵌る。異なる流れが噴霧媒体に設定可能であるように、リング状の空間6又は溝5のサイズ又は流れの断面が、この方策によって変化され得る。
【0050】
作動時には、この実施形態は、次のように働く。静止型スプレー混合器は、その連結部分23によって、たとえば2成分カートリッジを備えた、2つの成分を互いに分離して包含する保管容器に連結される。噴霧スリーブ4の入口41は、噴霧媒体の供給源、たとえば圧縮空気源に連結される。こうして、2つの成分が分配され、静止型スプレー混合器1に移動し、そこで混合要素3によってよく混合される。混合要素3を介して流れた後、2つの成分は均一に混合された材料として混合器筐体2の出口領域26を通って放出口22へと移動する。圧縮空気が、噴霧スリーブ4の入口41を通って、噴霧スリーブ4の内表面と混合器筐体2の外表面との間のリング状の空間6へと流れ、そこから、流路を形成する溝5を通って遠位端部21へ、そして混合器筐体3の出口開口部22へと流れる。ここで、出口開口部22を通って放出されつつある混合済み材料に衝撃が加えられ、この材料が一様に噴霧され、処理又は被覆される基板へと噴射体として運ばれる。保管容器からの成分の分配は圧縮空気によって、又はいくつかの用途では圧縮空気によって支持されて起こるので、この圧縮空気が、噴霧にも使用され得る。
【0051】
本発明による静止型スプレー混合器1の特定の利点が、その特に単純な構造及び製造について理解されるであろう。原理上、3つの部分、すなわち、一体型の混合器筐体2、一体型の混合要素3、及び一体型の噴霧スリーブ4のみが、ここに述べられる実施形態に必要とされ、これらの部品のそれぞれは、射出成形によって単純で経済的なやり方で製造可能である。この特に単純な構造はまた、静止型スプレー混合器1の部品を少なくとも大部分自動的に組み立てることを可能にする。特に、これらの3つの部分のねじ連結部は必要ない。
【符号の説明】
【0052】
1 静止型スプレー混合器
2 混合器筐体
3 静止型混合要素
4 噴霧スリーブ
5 溝
6 リング状の空間
21 遠位端部
22 出口開口部
23 連結部分
24 隆起部分
25 当接部
26 出口領域
27 遠位端部領域
41 入口
42 固定手段
43 周囲の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する少なくとも2つの成分の混合及び吹き付けのための静止型スプレー混合器であって、前記成分の出口開口部(22)を有する遠位端部(21)まで長手方向軸線(A)の方向に延在する管状の一体型の混合器筐体(2)を有し、前記成分の混合のために前記混合器筐体(2)内に配置される少なくとも1つの混合要素(3)を有し、前記混合器筐体(2)を端部領域において囲む内表面を有する噴霧スリーブ(4)を有し、前記噴霧スリーブ(4)が、加圧された噴霧媒体の入口(41)を有する、静止型スプレー混合器において、
複数の溝(5)が、前記長手方向軸線(A)の方向にそれぞれ延在する前記混合器筐体(2)の外表面又は前記噴霧スリーブ(4)の前記内表面に設けられ、前記溝の中を、前記噴霧媒体が、前記噴霧スリーブ(4)の前記入口(41)から前記混合器筐体(2)の前記遠位端部(21)まで流れることができるようになっていることを特徴とする静止型スプレー混合器。
【請求項2】
前記噴霧スリーブ(4)が、前記混合器筐体(2)にねじのない方式で連結される、請求項1に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項3】
前記混合器筐体(2)が、前記遠位端部(21)に向かって先細になる遠位端部領域(27)を有し、前記噴霧スリーブ(4)の前記内表面が、前記遠位端部領域(26)と組み合わせられるように構成される、請求項1又は請求項2に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項4】
前記遠位端部領域(21)における前記混合器筐体(2)の前記外表面が、少なくとも部分的に切頭円錐形の表面として構成される、請求項3に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項5】
前記切頭円錐形の表面が、少なくとも10°、最大45°をなす、前記長手方向軸線(A)との円錐角(α)を形成する、請求項4に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項6】
リング状の空間(6)が、前記混合器筐体(2)の前記外表面と前記噴霧スリーブ(4)の前記内表面との間に設けられ、前記噴霧スリーブ(4)の前記入口(41)及び前記溝(5)と流体連通している、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項7】
前記溝(5)が、前記混合器筐体(2)の前記外表面全体に一様に分布される、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項8】
それぞれの溝(5)が、前記それぞれの溝(5)の前記長手方向軸線(A)に対して及び半径方向に対して直角をなす方向の大きさ(B)よりも小さい、とりわけ最大で半分の大きさの、半径方向の深さ(T)を有する、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項9】
それぞれの溝(5)が、前記混合器筐体(2)の前記遠位端部(21)に向かって大きくなる半径方向の深さ(T)を有する、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項10】
前記噴霧スリーブ(4)が封止嵌合式の連結部(24、43)によって前記混合器筐体(2)に固定される、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項11】
前記混合器筐体(2)が、前記遠位端部領域(27)の外側において前記長手方向軸線(A)に対して直角をなす実質的に方形、好ましくは正方形の断面を有する、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項12】
前記混合要素(3)が、前記長手方向(A)に対して直角をなす方形、好ましくは正方形として構成される、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項13】
前記噴霧スリーブ(4)の前記入口(41)が、前記噴霧手段の供給部を固定するための固定手段を有する、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項14】
前記混合器筐体(2)及び/又は前記噴霧スリーブ(4)が、好ましくは熱可塑性物質から射出成形により作製されている、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載された静止型スプレー混合器。
【請求項15】
前記混合要素(3)が、一体部分として構成され、好ましくは熱可塑性物質から射出成形により作製されている、請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載された静止型スプレー混合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−41943(P2011−41943A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183918(P2010−183918)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(508105773)スルザー ミックスパック アクチェンゲゼルシャフト (14)
【Fターム(参考)】