説明

静止型混合器

静止型混合器は、カップリング部分と混合器ハウジングとを有する。混合器部材が、混合器ハウジング内に流れ方向に連続的に配置され、互いに対してある角度でオフセットされる。静止型混合器は、混合される材料に交互の回転方向を加える。混合器部材5A、5Bは、扇形部分7、8、20に分割された2つの横断壁6、19と出口に向けられた分離壁18とを備える。第1の横断壁6が入口に向けられた流入分離壁9、91、92によって分離された扇形部分7、8を含む。扇形部分と分離壁との間の移行部が切断縁部16、17を形成する。この分離壁が、流入分離壁に対してある角度で配置される。第2の横断壁19が扇形部分20に分割されている。第2の横断壁19は、出口に向けられた流出分離壁24を含む。この混合器は、特に極めて速く反応する成分のより効果的な混合を可能にし、医療に使用されるような小さな寸法にも適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の導入部分に記載の混合器ハウジングと、カップリング部分と、混合器ハウジング内に配置された混合器部材とを含む静止型混合器(スタティック・ミキサー)に関するものである。この種の混合器は、米国特許第5944419号で知られている。
【背景技術】
【0002】
混和させることがほとんどできない液体であり、かつ/又は、より詳細には非常に速く反応する成分の形態をした接着剤が、医療及び工業技術の両方において益々適用され、構成部品の間に中間層又はフイルムが即座に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5944419号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の従来技術の背景に基づいて、本発明の目的の1つは、非常に速く反応する成分であっても、その混合器部材がより効率的で完全な混合を確実におこない、医療で使用されるような小さな寸法に適した混合器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は請求項1に記載の混合器によって達成される。さらなる有利な実施例は、従属請求項に定義される。
【0006】
以下に、例示的な実施例の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明混合器の例示的な実施例の部分断面斜視図である。
【図2】図1の混合器の2つの混合器部材を概略的に示す拡大詳細図である。
【図3】段階的な混合動作を概略的に示す図である。
【図4】混合動作の単一のステップを示す図である。
【図5】混合動作の単一のステップを示す別の図である。
【図6】混合動作の単一のステップを示す別の図である。
【図7】図2に示す混合器部材のオフセット角度、特に混合器部材間のオフセット角度と個々の分離壁と混合器部材の横断壁との間のオフセット角度を、それぞれ概略的に示す図である。
【実施例】
【0008】
図1に、カップリング部分2と、出口4を有する混合器ハウジング3と、全ての混合器部材5とを有する、本発明の混合器1を示す。カップリング部分は任意の方式で設計することができる。すなわち、それは、バヨネット連結、プラグとソケットの連結、又はねじ連結の一部分とすることができる。
【0009】
図2に、2つの混合器部材5A及び5Bを示す。混合器部材5A及び5Bは、図示されていないハウジング内に配置される。流れ方向は矢印Fによって示されている。この例においては、混合器部材は、流れ方向に見て2つの扇形部分7及び8に分割された第1の横断壁6を有する。この実施例では、これらの扇形部分は互いに対向して配置されており、それぞれが90°の角度に広がっている。これら2つの扇形部分は、2部分からなる流入分離壁9によって互いから分離されている。流入分離壁9は、入口へ向けられ、3角形の断面を有している。その結果として、流入分離壁9の半分の部分91は、その一方の側10が対応する扇形部分7にほぼ直角に下降するように構成されている。そして、そのもう一方の側11は、2つの扇形部分の間の開口部12に向かって傾斜して下降するように構成されている。同様に、もう1つの分離壁部分92は、それに対して点対称に構成されている。直角の側13は扇形部分8に向かって下降し、傾斜側14は開口部15に向かって下降している。扇形部分7及び8の自由縁部16及び17は、そこを流れる材料に対する切断縁部を形成する。
【0010】
これら2つの切断縁部16及び17は分離壁18に統合される。この分離壁18は、出口に向けられ、両方の自由端部のところにそれぞれの斜面18A、18Bを有する。そして、第2の横断壁19が分離壁18に続く。第2の横断壁19は、同様に2つの扇形部分20及び21に分割されている。図2では、扇形部分21は見えない。扇形部分20及び21の2つの自由縁部22及び23も切断縁部である。図2では、切断縁部23は見えない。これら2つの切断縁部22及び23は、出口に向けられた流出分離壁24に統合される。
【0011】
第2の混合器部材5Bは、第1の混合器部材5Aの構成部材に対応する個々の構成部材から基本的に構成される。これらの個々の構成部材は、混合器部材5A、5Bのそれぞれの流入分離壁9、9’の中央を直角に通過する平面に対して各々ミラー反転されている。これは、混合器部材5B上に対応して設けられた流入分離壁9’の分離壁部分91’、92’がミラー反転されており、混合器部材5Bの流入分離壁9’の傾斜した側が、混合器部材5A上の流入分離壁9の対応する傾斜した側に対向する方向に向けられていることを意味する。横方向に反転し、従って向かい合わせに向けられた、流入分離壁9’のこれらの傾いた側の表面と同様に、混合器部材5Bの他の個々の構成部材、特に横断壁6’の扇形部分7’(図示せず)及び8’並びに第2の横断壁19’の扇形部分20’及び21’が、混合器部材5Aにおける構成部材に対応して構成されている。上記に記載した混合器部材5Aの個々の構成部材に直接的に対応するが、本明細書に明示的に記載されていない混合器部材5Bの他の個々の構成部材は、図において、対応する参照数字及び以下のダッシュ記号「’」によって同様に示されている。連続的な混合器部材5A、5Bのこのミラー反転の好ましい実施形態では、本実施例によると、混合器部材5Aの流入分離壁9’の中央を直角に通過する対称平面に関して、混合器部材5Bは混合器部材5Aに対して基本的にミラー対称に設計される。とりわけ、これは、個々の混合器部材5A、5B上の対応する個々の構成部材がミラー対称に設計されているということを意味する。
【0012】
第2の混合器部材5Bは、第1の混合器部材5Aに対して回転させられてオフセットされている。そして、例示的な本実施例では、それぞれの流入分離壁9、9’が、互いに対して本質的に直角に位置合わせされており、扇形部分7、7’、8、8’、20、20’、21、21’が、流れ方向Fにおいてそれぞれ一致している。
【0013】
混合器部材5A及び5Bのこの回転的なオフセットは、図7においてより明瞭に見ることができる。図7は、図2の混合器部材5A及び5Bの図に対応するが、角度が示されている。その角度によって、個々の構成部材の上述のオフセット角度が特定されている。図中において、分離壁18が流入分離壁9に対して角度α、ここでは=90°でオフセットされている。そして、扇形部分20及び21(図示せず)を有する第2の横断壁19が第1の横断壁6に対して角度β、ここでは=90°でオフセットされている。さらに、図7において、第2の混合器部材5Bも第1の混合器部材5Aに対して角度γ、ここでは=90°でオフセットされていることが図示されている。
【0014】
本発明によれば、混合器部材5A、5Bのそれぞれの個々の構成部材を上述のオフセット構成とした結果、そこを通って流れる材料に回転が加えられる。この回転は、本質的に、材料内に角度的な回転を作り出すことに対応する。混合器部材5A、5Bの上述のミラー反転設計によって、特定の混合器部材5Bによってそこを通って流れる材料に加えられる回転の方向は、先行する混合器部材5Aの方向に対して入れ替わる。任意の2つの連続する混合器部材5A、5Bによって、そこを流れる材料に加えられる回転方向が反転することによって、とりわけ効果的な材料の混合が実現される。出口分離壁24は入口分離壁9に対して平行に構成されているが、あるオフセット角度を設けることもできる。
【0015】
その上、一方では、剪断及び旋回作用を生じさせる2つの横断壁及び切断縁部16、17及び22、23の使用によって、効果的な混合が実現される。他方では、切断縁部16、17を含む表面部分と下の扇形部分20、21の表面部分から分離壁18に沿って移行する部分でそれぞれ生じる絞り部25及び26によって効果的な混合がもたらされる。このことによって、材料流れが角度のある方向に導かれる。
【0016】
以下、混合動作を図3及び図4から図6を参照して説明する。説明を簡単にするために、混合される成分を「材料」と呼ぶ。混合される成分は、液体又はペーストであることができ、混合器入口を通り混合器部材に到達する。ステップ1から5について混合器部材5Aを参照して説明し、ステップ6から10について混合器部材5Bを参照して説明する。第2の混合器部材5B内において、材料は、第1の混合器部材と反対の回転方向に流れていることが、図から分かる。そして、その出口縁部も先行する部材の出口縁部に対してオフセットされており、この実施例では90°であるということが、図から分かる。
【0017】
ステップ1を参照すると、材料は、第1の混合器部材に到達すると、分離壁9によって2つの部分的な流れに分割される。次に、第1の横断壁6は、全横断面積のそれぞれ4分の1に横断面を絞る。続いて、ステップ2を参照すると、この部分的な流れはそれぞれ切断縁部16及び17に到達し、これらの切断縁部が流れの旋回を生じさせる。ステップ3では、この材料は再び、直径の半分にわたって分配される。そして、ステップ4のように第2の横断壁19に到達する前に、材料は、扇形部分12の下側縁部とそれに続く切断縁部23との間の横断面絞り部25を通って流れる。材料は、この横断壁によって偏向させられ、切断縁部22、23及び絞り部26を通過して流れる。そして、材料は、ステップ5で、次の混合器部材5Bの第1の分離壁9’のそれぞれ91’及び92’に到達する前に、再び直径の半分にわたって広がる。
【0018】
次のステップ6から10は、ステップ1から5と同様であるが、次の混合器部材5Bの分割及び切断縁部が、先行する混合器部材5Aのものに対して90°オフセットされているという違いがある。ここで、混合器部材5A、5Bが互いにミラー反転されている設計によって、この混合器部材の回転効果と、混合される材料に結果的に加えられる回転状態が、先行する混合器部材に対して確実に反対方向に向けられる。第1の混合器部材の出口分離壁に対して第2の混合器部材が90°オフセットされていることによって、最初の媒体の4つの部分的な流れが第2の混合器部材内を流れている。結果として、次に4つの部分的な流れが混合されている。次の混合器部材内で、8つの部分的な流れが結果として生じる。これらの部分的な流れは、乱流によって極めて迅速に混合し、結果として均一に混合された材料になる。一般的に、材料に応じて6個から20個の混合器部材があれば十分である。
【0019】
この例示的な実施例に基づいて、この混合器部材の設計の改変及び強化が可能である。したがって、これらの横断壁は、2つの扇形部分の代わりに、互いに対して120°の角度に配置された3つの扇形部分に、或いは4つの対称的に配置された扇形部分に分割されることも可能である。さらに、これらの横断壁は、混合器部材の長手方向延長部に対して直角以外に配置されてもよい。そして、これらの横断壁については、中央軸線に対して角度αを20°から90°とすることができる。そして、個々の横断壁が、異なる角度を示すこともできる。このことは、分離壁についても同様に当てはまる。分離壁は、必ずしも長手方向中央軸線に対して平行に配置される必要はない。そして、分離壁については、中央軸線に対して角度βを20°から90°とすることができる。さらに、個々の混合器部材間のオフセット角度γは、1°から179°の値とすることができる。
【0020】
例示的な実施例では、円筒形状の混合器ハウジングが開示されたが、長方形又は正方形の混合器ハウジングを検討することも可能である。混合器部材の外形は、混合器ハウジングに適合させるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合器ハウジングと、カップリング部分と、混合器ハウジング内に配置された混合器部材とを含む静止型混合器であって、
前記混合器部材が、流れ方向に見て互いに対しある角度(γ)でオフセットされるように連続的に配置され、各混合器部材は少なくとも1つの横断壁を含み、前記横断壁は入口に向けられた分離壁によって分離された扇形部分に分割されている、静止型混合器において、
混合器部材(5A、5B)が、扇形部分(7、8;20、21)に分割された2つの横断壁(6、6’、19、19’)と出口に向けられた前記分離壁(18)とを備え、第1の前記横断壁(6、6’)が、前記入口に向けられた流入分離壁(9、9’)によって分離された扇形部分(7、7’、8、8’)を含み、前記扇形部分と前記分離壁(18)との間の移行部がそれぞれの切断縁部(16、17)を形成しており、前記分離壁(18)が前記流入分離壁(9、9’)に対してある角度(α)で配置されており、第2の前記横断壁(19)が扇形部分(20、21)に分割されており、第2の前記横断壁(19)は流出分離壁(24)を含み、前記流出分離壁(24)は、前記出口に向けられ、前記第1の横断壁に対してある角度(β)でオフセットされており、連続する混合器部材(5A、5B、5N)が、混合動作中に、交互に向けられる回転効果を混合すべき材料に加えることができるように設計されている、ことを特徴とする静止型混合器。
【請求項2】
絞り部(25、26)が、前記切断縁部(16、17;22、23)を含む前記分離壁(9、24)の表面から前記扇形部分(7、8;20、21)の下に配置された表面までの前記移行部に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載された混合器。
【請求項3】
前記流入分離壁(9、9’)が、前記第1の横断壁(6、6’)の扇形部分(7、8、7’、8’)の前においてそれぞれの分離壁部分(91、92、91’、92’)に分割され、前記流入分離壁(9、9’)が3角形の断面を有しており、一方の側(10)が前記扇形部分(7、8、7’、8’)に対して直角になっており、もう一方の側が傾斜している、ことを特徴とする、請求項1に記載された混合器。
【請求項4】
少なくとも2つの連続する混合器部材(5A、5B)の前記分離壁部分(91、92、91’、92’)が互いに対してミラー反転されており、前記連続する混合器部材(5A、5B)のそれぞれの前記流入分離壁(9、9’)の対応する傾斜した側面が対向する方向に向けられている、ことを特徴とする、請求項3に記載された混合器。
【請求項5】
対応する部分(7、7’、8、8’、20、20’、21、21’、91、91’、92、92’)が、少なくとも2つの連続する混合器部材(5A、5B)上において、前記混合器部材(5A、5B)のそれぞれの前記流入分離壁(9、9’)の中央を直角に通過する平面に対して、本質的にミラー反転されて構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載された混合器。
【請求項6】
前記角度(α、β)が、20°から160°の範囲を含み、前記角度(γ)が1°から179°の範囲を含むことを特徴とする、請求項1に記載された混合器。
【請求項7】
前記角度(α、β、γ)がそれぞれ90°に等しいことを特徴とする、請求項1に記載された混合器。
【請求項8】
前記分離壁(9、9’、18、24)が前記混合器の長手方向中央線に対してそれぞれ平行になっており、前記横断壁(6、19)がそれに対して直角に構成されている、ことを特徴とする、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載された混合器。
【請求項9】
前記横断壁(6、19)が、それぞれ90°の開口角度を有する2つの扇形部分(7、8;20、21)をそれぞれ含むことを特徴とする、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載された混合器。
【請求項10】
前記横断壁が、それぞれ60°の開口角度を有する3つの扇形部分をそれぞれ含むことを特徴とする、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載された混合器。
【請求項11】
前記流入分離壁(9、91、92)が前記流出分離壁(24)に対して平行に配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載された混合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−509761(P2012−509761A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537809(P2011−537809)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000371
【国際公開番号】WO2010/060225
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507123729)メッドミックス システムズ アーゲー (24)
【Fターム(参考)】