静止誘導器における冷却構造、及び該冷却構造を有する静止誘導器
【課題】円板状巻線で構成された静止誘導器において、従来に比べて冷却能力を向上可能な静止誘導器における冷却構造、及び該冷却構造を有する静止誘導器を提供する。
【解決手段】円板状巻線31,32の内周側と外周側とで円板状巻線間の距離を異ならせ、かつ絶縁板101を介在させて円板状巻線を積層して形成した巻線を備える静止誘導器の冷却構造であって、円板状巻線と絶縁板との間に挟まれて冷媒流路181,182を形成するダクトピース102−1,102−2で、単体では一定の厚さにてなり、種別間では異なる厚みを有する複数種類を備え、厚みの異なるダクトピースを径方向に配置して冷媒流路の高さを径方向で異ならせた。
【解決手段】円板状巻線31,32の内周側と外周側とで円板状巻線間の距離を異ならせ、かつ絶縁板101を介在させて円板状巻線を積層して形成した巻線を備える静止誘導器の冷却構造であって、円板状巻線と絶縁板との間に挟まれて冷媒流路181,182を形成するダクトピース102−1,102−2で、単体では一定の厚さにてなり、種別間では異なる厚みを有する複数種類を備え、厚みの異なるダクトピースを径方向に配置して冷媒流路の高さを径方向で異ならせた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状巻線で構成された変圧器、リアクトル等の静止誘導器における冷却構造、及びこの冷却構造を有する静止誘導器に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線と鉄心とを含む変圧器を備えた静止誘導器では、外箱内に変圧器を配置するとともに、例えば絶縁油等の冷媒にて変圧器の冷却が行われる。変圧器は、巻線と鉄心との構造の違いにより、外鉄形と内鉄形との2種類が存在し、外鉄形では巻線の外部を磁路が通るように、内鉄形では巻線の内部を磁路が通るように構成される。また、巻線の構造としては、多重筒状巻線と円板状巻線との形態がある。多重筒状巻線は、素線を円筒状に巻回して一つの導体層を形成し、この導体層の外周側に、それよりも大径の円筒状の導体層を配置し、以下順次、より大径の円筒状の導体層を同心円状に配置した構造を有する。一方、円板状巻線は、素線を同心状に巻回して一つの板状の導体層を形成し、この板状導体層と同一形状で形成した次の板状導体層を同軸上に重ねて配置し、以下同様に、同一形状の板状導体層を積層した構造を有する。
【0003】
例えば特許文献1には、多重筒状巻線を有する静止誘導器について記載されている。この静止誘導器では、多重筒状巻線を構成する円筒状の導体層と導体層との間に、つまり隣接する2つの円筒状導体層において、内側の導体層の外周と、外側の導体層の内周との間に、冷却用の冷媒を流す冷媒流路が設けられている。このように多重筒状巻線を有する構造では、冷媒流路は、円筒状であるそれぞれの導体層の軸方向に沿って延在し、冷媒は、この軸方向に、つまり巻回される素線が延在する方向に対して直交する方向に流れることになる。
【0004】
さらに、それぞれの円筒状の導体層について、上記軸方向における多重筒状巻線の端部の内、導体層間に生じる電位差が小さい部分では、導体層間の隙間を小さくし、一方、電位差が大きい部分では隙間を大きくして、各導体層が配置されている。即ち、冷媒が流れる方向に沿って冷媒流路の断面積が変化する構造を有して多重筒状巻線は形成されている。このような冷媒流路を構成するため、棒状のダクトピースを、導体層間において上記軸方向に沿って延在させ、かつ上記軸方向に沿ってダクトピースの厚みを段階的に変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3933347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、図12に概略形状を示した、円板状巻線を有する外鉄形変圧器は、一例として以下のような構成を備えている。
即ち、上述したように構成される円板状巻線の、円板状巻線3−1、3−2にて巻線3が形成され、巻線3の外側に鉄心6が配置されている。ここで、円板状巻線3−1は1次巻線であり、円板状巻線3−2は2次巻線であり、円板状巻線3−1、3−2は、それぞれ複数枚の円板状巻線を有し、これらが積層方向91に沿って積層されて巻線3を形成している。尚、用途によっては、3次巻線も採用される場合もあり、更に、図12では縦方向に図示されている巻線3を90°回転させて配設した横置き型も存在する。
【0007】
巻線3について、対向する2枚の円板状巻線31,32を図13に示す。通常、円板状巻線の内周側4もしくは外周側5で、隣接する円板状巻線同士が接続されている。以下では、内周側4で接続されている場合に関して記述する。
【0008】
図13において点線で示した領域Iにおける円板状巻線31,32間の断面構造を図14に示す。それぞれの円板状巻線31,32は、上述したように、素線15が内周側4から外周側5へ径方向92において同心状に巻回されて形成されている。尚、径方向92とは、素線15が同心状に巻回されていく方向で、内周側4及び外周側5への向きに相当する。
また、円板状巻線間の電気的絶縁性能の観点において、本例では円板状巻線31,32を内周側4で接続しているので、内周側4では円板状巻線31,32間の電位差は小さい。よって、積層方向91における円板状巻線間の隙間(以下、「円板状巻線間距離」と記す)を内周側4では相対的に小さくして良く、一方、外周側5では円板状巻線31,32間の電位差が大きいため、円板状巻線間距離41を相対的に大きくする必要がある。よって、円板状巻線31と円板状巻線32とは、図示するように、内周側4と外周側5とで、円板状巻線間距離41を異ならせて配置されている。
【0009】
また、内周側4及び外周側5の両方における円板状巻線の角部は、放電の起点となりやすいため、巻線端部用絶縁材7にて巻線端部は覆われている。更に、電位が零である鉄心6や当該変圧器の筐体と、巻線端部との間には、絶縁板16を挿入することで、電気的絶縁性を強化している。更に、電位差の小さい内周側4では、円板状巻線31,32における各巻線端部用絶縁材7に、絶縁材にてなる巻線端部スペーサ10がそれぞれ配設されている。この巻線端部スペーサ10は、以下で説明する冷媒流路を確保するための部材となる。
【0010】
図15は、図14に点線で示した領域IIの拡大図である。円板状巻線31と円板状巻線32との電気的絶縁性を確保するために、円板状巻線31、32における各対向面31a,32aの全面に対向して、絶縁板1、1がそれぞれ挿入される。ここで各絶縁板1、1は、円板状巻線31の対向面31aに対して隙間を設けて、円板状巻線32の対向面32aに対して隙間を設けて、配置される。このような隙間は、冷却用の例えば絶縁油である冷媒を通過させる冷媒流路18になる。このような冷媒流路18を確保するため、絶縁材にてなるダクトピース2が絶縁板1、1と円板状巻線31、32(詳しくは対向面31a,32a)との間に挟まれて、径方向92において、不連続に配設される。ここでダクトピース2は、全て同じ厚みにてなる。
【0011】
このように、円板状巻線31,32を用いて巻線3を形成する場合、図14及び図15から明らかなように、冷媒流路18は、素線15の延在方向93(図14及び図15では、紙面に垂直な方向)に沿って形成され、冷媒は、素線15の延在方向93に沿って流れることになる。この点、冷媒が、素線の延在方向に対して直交方向に流れる、上述の多重筒状巻線の場合における構造とは相違する。
【0012】
また、この例では、内周側4と外周側5とでは、円板状巻線間距離41が異なる。この構造を実現するために、絶縁材にてなる巻線間距離調整用部材17と、テーパーを設けた絶縁材にてなるテーパースペーサ9とが、各絶縁板1、1の間で、ダクトピース2とは反対側に配設されている。ここで、円板状巻線31,32において、内周側4と外周側5とで円板状巻線間距離41を緩やかに変化させて、円板状巻線31,32に大きな段差が発生しないようにするために、各絶縁板1,1、及び巻線間距離調整用部材17の内周側4には、テーパーを設けて徐々にそれらの肉厚を薄くしている。
【0013】
図16は、図14において、二点鎖線で示した部分における、円板状巻線32の対向面32aに配置されているダクトピース2、巻線端部スペーサ10、巻線端部用絶縁材7を、矢印A方向に見た図であり、これらの位置関係を示す概略図である。図示するように、ダクトピース2は、平面形状が平行四辺形であり、径方向92に規定の間隔にて、かつ素線15の延在方向93に規定の間隔にて、配置されている。よって、冷媒は、冷却効率向上のため、点線19で示すように、冷媒流路18においてダクトピース2が配設されていない箇所を素線15の大略、延在方向93にジグザグに流れる。
【0014】
一方、静止誘導器では、落雷等で急に送電が停止した場合等の短絡時に、急激な力が各円板状巻線、即ち巻線3に加わる。このような外力が加わった際に、巻線3は、ダクトピース2、絶縁板1、巻線端部用絶縁材7等の絶縁物や鉄心6を介して、静止誘導器の筐体で支持される。円板状巻線、つまり巻線3は、図14にも示すように、素線15の集合体であり、外力で極度な変形を引き起こさないために、素線15の延在方向に一定間隔で、素線15を支持する必要がある。図16の概略図においては、素線最大支持間隔8がその支持間隔に相当する。
【0015】
上述したように、円板状巻線では、多重筒状巻線の場合と異なり、冷媒の流れる方向が素線15の延在方向と同一である。従って、素線最大支持間隔8を維持しつつ、冷媒流路18の形成が可能な構造にするため、ダクトピース2は、図16に示すように径方向92において細かく分割した小さな部材で形成されている。例えば上記特許文献1に開示されるような長尺棒状のダクトピースを用いた場合には、冷媒の流れが遮られてしまうという問題が生じる。
【0016】
また、特許文献1に開示されるように、ダクトピース自体にテーパーを形成して流路高さを変更しようとした場合には、円板状巻線の内周側4と外周側5との位置間で、個々のダクトピース自体がテーパーを有し、かつそれぞれのダクトピースの厚みが異なるようなダクトピースが必要となる。よって、部品の種類が増し、費用対効果が得られないという問題がある。
【0017】
また、特許文献1の図1に示すように、素線間に大きな段差が発生することを前提にした場合、特許文献1にも記載されているように、段差部で素線に巻かれている絶縁紙にダメージを与えて、絶縁耐力を低下させる原因となるため、好ましくない。
【0018】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、円板状巻線で構成された静止誘導器において、従来に比べて冷却能力を向上可能な静止誘導器における冷却構造、及び該冷却構造を有する静止誘導器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様である、静止誘導器における冷却構造は、巻線を備えた静止誘導器における冷却構造であって、上記巻線は、素線を同心状に径方向に巻回して形成されたそれぞれの円板状巻線に絶縁部材を対向させ挟んで各円板状巻線を積層し、かつ巻線の内周側と外周側とで円板状巻線間の距離を異ならせて形成され、上記円板状巻線と上記絶縁部材との間には上記素線の延在方向へ冷媒を流す冷媒流路を有する、静止誘導器における冷却構造である。この冷却構造は、上記円板状巻線と上記絶縁部材との間に挟まれて配置され上記冷媒流路の高さを規定するダクトピースであって、単体では一定の厚さにてなり、種別間では異なる厚みにてなる複数種類のダクトピースを備え、上記円板状巻線間の内周側と外周側とにおける円板状巻線間距離の大小に対応して厚みの異なるダクトピースを上記径方向において不連続にて配置して、異なる種類の冷媒流路高さを上記径方向に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様における静止誘導器の冷却構造によれば、同種類では同じ厚みを有し異種間では異なる厚みにてなる複数種類のダクトピースを備え、異なる厚みのダクトピースを巻線の径方向に配置した。よって、巻線における冷媒流路の高さを径方向で異ならせることができ、従来に比べて冷媒流路が拡大でき、巻線の冷却性能を向上させることができる。また、ダクトピース自体にテーパーを設ける構成と比較すると、ダクトピースの種類の増加を大幅に抑制することができ、製造コストの上昇を抑制することが可能となる。更に、設計上、巻線に局所的に大きな段差を発生させることがなくなり、絶縁性能の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における冷却構造を形成する円板状巻線間の構造を示す断面図であり、図7に示す領域Iの断面図である。
【図2】図1に示す領域IIIの拡大図である。
【図3】図1に示すB視における図である。
【図4】図3に対応した図であり、長方形のダクトピース設置用スペーサを用いた場合における不具合を説明するための図である。
【図5】図1に示す絶縁板及びダクトピース設置用スペーサの平面図であり、両者の位置関係を説明するための図である。
【図6】図1に示す円板状巻線の構造を有する巻線を備えた外鉄形変圧器の概略斜視図である。
【図7】図6に示す巻線を形成する、対向する2枚の円板状巻線の概略斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態2における冷却構造を形成する円板状巻線間の構造を示す断面図であり、図7に示す領域Iに相当する領域の断面図である。
【図9】図8に示す領域IVの拡大図である。
【図10】図8に示す第1絶縁板及び第2絶縁板の平面図であり、両者の位置関係を説明するための図である。
【図11】図8に示す第1絶縁板の外周端部の形状を説明するための図である。
【図12】外鉄形変圧器の概略斜視図である。
【図13】図12に示す巻線を形成する、対向する2枚の円板状巻線の概略斜視図である。
【図14】図13に示す領域Iにおける断面図である。
【図15】図14に示す涼気IIの拡大図である。
【図16】図14に示すA視における図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態である静止誘導器における冷却構造、及びこの冷却構造を有する静止誘導器について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0023】
本実施形態における静止誘導器の冷却構造について、図12から図14を参照して既に説明した円板状巻線を有する外鉄形変圧器を例に採り、以下に説明を行う。また、上記冷却構造を有する静止誘導器は、例えば絶縁油等の冷媒が入った外箱内に、上記冷却構造を有する外鉄形変圧器を配置して、冷媒によってこれらの変圧器の冷却が可能な構造を有するものである。
尚、図12及び図13に対応して、図6には、本実施形態における冷却構造を有する外鉄形変圧器100を示し、図7には外鉄形変圧器100に備わる巻線103を示す。また、円板状巻線の基本的構成については、図12から図14を参照して上述した内容を参照するものとし、その内容と同一又は同様の構成部分については以下の説明でも同じ符号を使用して詳しい説明は省略する。
【0024】
実施の形態1.
本実施形態における冷却構造の特徴の一つは、ダクトピース単体では均一の厚みにてなるが、種別間では異なる厚みを有する複数種類のダクトピースを備えた点である。即ち、図14に示した構造を有する巻線3では、冷媒流路18を形成するダクトピース2の全ては、同じ厚みにてなり、冷媒流路18の高さは、図示するように巻線3の内周側4及び外周側5において同じである。これに対し本実施形態では、異なる厚みの複数種類のダクトピースを備え、相対的に厚いダクトピースを配置した部分は、相対的に大きな流路断面を得ることができ、静止誘導器における冷却性能の向上を図ることができる。
本実施形態におけるこのような冷却構造について、具体的に以下に説明する。
【0025】
図14及び図15を参照して説明したように円板状巻線31、32を形成し、これらを積層して、本実施形態の冷却構造を有する巻線103が形成される。図1は、図14に対応した図であり、外鉄形変圧器100における巻線103の図7に示す領域Iにおける円板状巻線31,32間の断面構造を示す。また、図2は、図1に点線で囲んだ領域IIIの拡大図である。本実施形態においても、巻線103の内周側4が接続されて、内周側4で円板状巻線31,32間の電位差が小さくなる場合を例に採る。内周側4では電位差が小さいため、円板状巻線31,32間の電気的絶縁距離を小さくでき、内周側4における円板状巻線間距離41は、外周側5の円板状巻線間距離41に比べて小さい。よって、コスト低減を図ることが可能である。
【0026】
また、図14に示した巻線3と同様に、本実施形態に関する巻線103においても、巻線端部には巻線端部用絶縁材7及び絶縁板16を設け、内周側4には、巻線端部スペーサ10を配設している。また、内周側4及び外周側5における円板状巻線間距離41の調整は、図14に示す構造と同様に、テーパースペーサ9で調整し、円板状巻線間の距離41を連続的に変えることができる。
【0027】
巻線3の場合と同様に、巻線103においても、円板状巻線31と円板状巻線32との電気的絶縁性を確保するために、円板状巻線31、32における各対向面31a,32aに対向して、絶縁板101がそれぞれ挿入される。絶縁板101は、円板状巻線31、32に対応した形状、つまり円板状巻線31、32と相似形状で、図5に示すような形状の電気的絶縁材からなる板材である。尚、本実施の形態1では、絶縁板101は一種類からなり、巻線103の外周側5からほぼ内周側4までにわたり延在する。
【0028】
さらに、図14に示す構造と同様に、絶縁板101、101と、円板状巻線31、32との間には、ダクトピースを挟んで冷媒流路が形成されるが、本実施形態では上述のように複数種類のダクトピースを備えている。このダクトピースは、具体的に以下で説明するが、厚みが相対的に薄い薄厚ダクトピースと、この薄厚ダクトピースよりも大きい厚みにてなる一又は複数種類の厚型ダクトピースとを備える。
【0029】
具体的には、本実施形態では、図1及び図2に示すように、絶縁材にてなり、2種類の異なる厚みのダクトピース102−1、102−2を備える。ここで、ダクトピース102−1、及びダクトピース102−2の各単体における厚みは、一定であり、テーパーは設けていない。本実施形態では、円板状巻線間距離41を内周側4で小さく、外周側5で大きく設定しているため、内周側4には、相対的に厚みを薄くした薄厚ダクトピース102−1を配置し、外周側5には、薄厚ダクトピース102−1よりも大きい厚みを有する厚型ダクトピース102−2を配置する。
【0030】
より詳しく説明する。円板状巻線間距離41が相対的に大きい、本実施形態では外周側5の領域103bでは、各絶縁板101、101は、円板状巻線31の対向面31aに対して冷媒流路182となる隙間を設けて、及び、円板状巻線32の対向面32aに対して冷媒流路182となる隙間を設けて、それぞれ配置される。絶縁板101、101と、円板状巻線31、32との間にそれぞれ冷媒流路182を確保するため、厚型ダクトピース102−2が絶縁板101、101と円板状巻線31、32(詳しくは対向面31a,32a)との間に挟まれて、径方向92において、不連続に配設される。尚、それぞれの厚型ダクトピース102−2は、同一の厚みにてなることから、絶縁板101、101と円板状巻線31、32とは、それぞれ平行に位置し、冷媒流路182の高さは、径方向92において一定である。また、本実施形態では、厚型ダクトピース102−2は、絶縁板101に接着されている。
尚、厚型ダクトピース102−2の厚さ及び冷媒流路182の高さとは、板状の円板状巻線31,32の厚み方向に沿ったそれぞれの寸法に対応する。
【0031】
このような構成により、円板状巻線間距離41を大きくした、本実施形態では外周側5において、積層方向91における冷媒流路182の高さを、図14に示す構造に比べて拡大することができ、より冷却効率を向上させることができる。
【0032】
一方、円板状巻線間距離41が小さい、本実施形態では内周側4の領域103aに対応した、絶縁板101における内周側には、ダクトピース設置用スペーサ111が配置される。ダクトピース設置用スペーサ111は、図5に示すように、円板状巻線31、32と相似形状の絶縁材からなる板状の部材であり、図1及び図2に示すように、くさび状でテーパーが付された部材である。即ち、上述のように内周側4には薄厚ダクトピース102−1を配置することから、図2に示すように絶縁板101、101と、薄厚ダクトピース102−1との間には隙間が生じる。ダクトピース設置用スペーサ111は、この隙間に対応する部材である。尚、ダクトピース設置用スペーサ111、111と、円板状巻線31,32との間で薄厚ダクトピース102−1にて形成される隙間が冷媒流路181となる。薄厚ダクトピース102−1にて高さが規定されるため、冷媒流路181の高さは、冷媒流路182に比べて小さい。また、それぞれの薄厚ダクトピース102−1は、同一の厚みにてなり、ダクトピース設置用スペーサ111にはテーパーを付けていることから、冷媒流路181の高さは、径方向92において一定である。
尚、薄厚ダクトピース102−1の厚さ及び冷媒流路181の高さとは、厚型ダクトピース102−2の厚さ及び冷媒流路182の高さと同様に、板状の円板状巻線31,32の厚み方向に沿ったそれぞれの寸法に対応する。
【0033】
本実施形態では、薄厚ダクトピース102−1は、ダクトピース設置用スペーサ111に接着しておき、このダクトピース付きのダクトピース設置用スペーサ111を絶縁板101に接着して、円板状巻線31,32間の距離を調整している。また、このようなダクトピース付きのダクトピース設置用スペーサ111は、本実施形態では、テーパーを予め設けたダクトピース設置用スペーサ111の上に、自動貼り機で薄厚ダクトピース102−1を接着、切断することで作製する。
【0034】
薄厚ダクトピース102−1においても、厚型ダクトピース102−2と同様に、テーパーをつけていないため、ダクトピースの部品点数の増加を抑制することが可能であり、製造コストの抑制が可能となる。
【0035】
図3は、図16に対応する図であり、図1において二点鎖線で示した部分における、円板状巻線32の対向面32aに配置されているダクトピース102−1,102−2、巻線端部スペーサ10、巻線端部用絶縁材7を、矢印B方向に見た図であり、これらの位置関係を示す概略図である。図示するように、ダクトピース102−1,102−2は、平行四辺形であり、径方向92に規定の間隔にて、かつ素線15の延在方向93に規定の間隔にて、配置されている。さらに、ダクトピース設置用スペーサ111についても、径方向92に沿う辺111a、及び径方向92における端辺111bの少なくとも一方は、薄厚ダクトピース102−2における対応の辺と平行になるような形状にしている。これは、図4に示すように、ダクトピース設置用スペーサ111を長方形にした場合には、厚型ダクトピース102−2、巻線端部用絶縁材7、巻線端部スペーサ10と干渉する箇所が発生するためである。
【0036】
尚、本実施形態では、説明の簡略化のために、冷媒流路180は、冷媒流路181と冷媒流路182との2段階の流路高さ構成で説明しているが、費用対効果の許容する範囲で、多段化が可能である。尚、この多段化に対応して、複数種類のダクトピース設置用スペーサ111が設けられることになる。
【0037】
また、外周側5の巻線が接続されている場合、外周側5における円板状巻線間距離41が小さくなり、内周側4における円板状巻線間距離41が大きくなる。この場合、薄厚ダクトピース102−1、及びダクトピース設置用スペーサ111は、外周側5において、絶縁材101,101と、円板状巻線31,32との間に設置される。
【0038】
上述したように本実施形態の冷却構造によれば、従来に比べて静止誘導器における冷却能力を向上させることができ、これにより、さらにまた以下の効果を得ることが可能となる。即ち、冷却能力の向上により、一枚の円板状巻線当たりの熱流束を増やすことができ、変圧器サイズの縮小を図ることが可能となる。変圧器のサイズが小さくなることで、重量及び材料費の低減ができ、さらに運搬費用の低減も可能となる。また、冷却用のファンやポンプを減らすこともでき、省エネにもつながる。
【0039】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、円板状巻線31,32の対向面31a,32aのほぼ全面にわたり延在する一種類の絶縁板101,101に対して、ダクトピース設置用スペーサ111,111を取り付ける形態を示した。これに対して本実施の形態2に関する巻線103−1では、図10に示すように、主に円板状巻線間距離41が大きい方の領域103bに対応して配置される第1絶縁板121と、主に円板状巻線間距離41が小さい方の領域103aに対応して配置される第2絶縁板122との2種類の絶縁板を用いる。本実施の形態2は、この点で実施の形態1と相違し、変圧器におけるその他の構成は、実施の形態1における構成と同じであり、本実施の形態2においても、実施の形態1の場合と同様に、複数種類の厚みを有するダクトピースを備える。よって、実施の形態2における静止誘導器の冷却構造においても、実施の形態1の冷却構造が奏する上述の効果を奏することができる。また、実施の形態1にて説明した変形例は、本実施の形態2における冷却構造にも適用可能である。
以下では、主に上述の相違点について説明する。
【0040】
図8は、図1に対応する図であり、図7に示す領域Iに相当する領域における、実施の形態2に関する巻線103−1の断面を示している。図9は、図8に示す領域IVの拡大図である。
上述のように本実施形態における巻線103−1では、第1絶縁板121と第2絶縁板122との2種類の絶縁板を有する。第1絶縁板121は、外周側5の電位差の大きい側に対応して配置され、相対的に厚みが小さい電気的絶縁性の板状部材であり、図10に示すように、巻線103−1の形状に相似した形状である。第2絶縁板122は、内周側4の電位差の小さい側に配置され、第1絶縁板121の最大厚み121b(図9)よりも大きい厚み122bの一又は複数種類の厚みを有する電気的絶縁性の板状部材であり、図10に示すように、巻線103−1の形状に相似した形状である。また、図8に示すように、第1絶縁板121及び第2絶縁板122は、円板状巻線31,32の径方向92における長さのほぼ半分ずつに相当する長さをそれぞれ有し、第1絶縁板121の内周部分と、第2絶縁板122の外周部分とを重ね、この重なり領域123にて両者を接着して一体的な絶縁板を形成している。尚、相対的に薄い第1絶縁板121は、重なり領域123付近にテーパーを設けることで、重なり領域123の巻線間距離を調整している。
【0041】
また、第1絶縁板121側に位置する第2絶縁板122の外周端部122aは、図11に示すように、厚型ダクトピース102−2の配置に対応してジグザグ状に、例えばレーザー加工機にて加工される。このように加工することで、外周端部122aが厚型ダクトピース102−2に干渉するのを防止することができる。
【0042】
また、第1絶縁板121に対応して、上述の厚型ダクトピース102−2が配置される。つまり、第1絶縁板121、121と、円板状巻線31、32(詳しくは対向面31a,32a)との間に厚型ダクトピース102−2が挟まれ、冷媒流路182が形成される。また、第2絶縁板122に対応して、上述の薄厚ダクトピース102−1が配置される。つまり、第2絶縁板122、122と、円板状巻線31、32(詳しくは対向面31a,32a)との間に薄厚ダクトピース102−1が挟まれ、冷媒流路181が形成される。
【0043】
このように、第1絶縁板121及び第2絶縁板122と、厚型ダクトピース102−2及び薄厚ダクトピース102−1とを組み合わせ、第1絶縁板121の厚み+厚型ダクトピース102−2の厚み = 第2絶縁板122の厚み+薄厚ダクトピース102−1の厚み、とすることで、円板状巻線31、32に接触するダクトピース102−1、102−2のあたり面を平坦にしている。
【0044】
以上のような構成を有する本実施形態2における静止誘導器の冷却構造では、実施の形態1と同じく、流路拡大による冷却能力増強が可能であり、また、巻線部に急激な段差を発生させずに、巻線間距離の調整が可能になる。
更に、第1絶縁板121及び第2絶縁板122を接着することで、1枚の絶縁板として取り扱うことが可能になり、絶縁耐力の維持が可能になる。更に、このように接着にて1枚として形成された絶縁板に対して、薄厚ダクトピース102−1及び厚型ダクトピース102−2のほとんどを、例えばダクトピース自動貼り機にて、接着することが可能になる。
【0045】
尚、実施の形態1でも説明したように、冷媒流路180は多段化が可能である。この多段化に対応して、複数種類の第2絶縁板122が設けられることになる。
【符号の説明】
【0046】
6 鉄心、15 素線、31,32 円板状巻線、
100 静止誘導器、101 絶縁板、102 ダクトピース、
102−1 薄厚ダクトピース、102−2 厚型ダクトピース、103 巻線、
111 ダクトピース設置用スペーサ、121 第1絶縁板、122 第2絶縁板、
180 冷媒流路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状巻線で構成された変圧器、リアクトル等の静止誘導器における冷却構造、及びこの冷却構造を有する静止誘導器に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線と鉄心とを含む変圧器を備えた静止誘導器では、外箱内に変圧器を配置するとともに、例えば絶縁油等の冷媒にて変圧器の冷却が行われる。変圧器は、巻線と鉄心との構造の違いにより、外鉄形と内鉄形との2種類が存在し、外鉄形では巻線の外部を磁路が通るように、内鉄形では巻線の内部を磁路が通るように構成される。また、巻線の構造としては、多重筒状巻線と円板状巻線との形態がある。多重筒状巻線は、素線を円筒状に巻回して一つの導体層を形成し、この導体層の外周側に、それよりも大径の円筒状の導体層を配置し、以下順次、より大径の円筒状の導体層を同心円状に配置した構造を有する。一方、円板状巻線は、素線を同心状に巻回して一つの板状の導体層を形成し、この板状導体層と同一形状で形成した次の板状導体層を同軸上に重ねて配置し、以下同様に、同一形状の板状導体層を積層した構造を有する。
【0003】
例えば特許文献1には、多重筒状巻線を有する静止誘導器について記載されている。この静止誘導器では、多重筒状巻線を構成する円筒状の導体層と導体層との間に、つまり隣接する2つの円筒状導体層において、内側の導体層の外周と、外側の導体層の内周との間に、冷却用の冷媒を流す冷媒流路が設けられている。このように多重筒状巻線を有する構造では、冷媒流路は、円筒状であるそれぞれの導体層の軸方向に沿って延在し、冷媒は、この軸方向に、つまり巻回される素線が延在する方向に対して直交する方向に流れることになる。
【0004】
さらに、それぞれの円筒状の導体層について、上記軸方向における多重筒状巻線の端部の内、導体層間に生じる電位差が小さい部分では、導体層間の隙間を小さくし、一方、電位差が大きい部分では隙間を大きくして、各導体層が配置されている。即ち、冷媒が流れる方向に沿って冷媒流路の断面積が変化する構造を有して多重筒状巻線は形成されている。このような冷媒流路を構成するため、棒状のダクトピースを、導体層間において上記軸方向に沿って延在させ、かつ上記軸方向に沿ってダクトピースの厚みを段階的に変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3933347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、図12に概略形状を示した、円板状巻線を有する外鉄形変圧器は、一例として以下のような構成を備えている。
即ち、上述したように構成される円板状巻線の、円板状巻線3−1、3−2にて巻線3が形成され、巻線3の外側に鉄心6が配置されている。ここで、円板状巻線3−1は1次巻線であり、円板状巻線3−2は2次巻線であり、円板状巻線3−1、3−2は、それぞれ複数枚の円板状巻線を有し、これらが積層方向91に沿って積層されて巻線3を形成している。尚、用途によっては、3次巻線も採用される場合もあり、更に、図12では縦方向に図示されている巻線3を90°回転させて配設した横置き型も存在する。
【0007】
巻線3について、対向する2枚の円板状巻線31,32を図13に示す。通常、円板状巻線の内周側4もしくは外周側5で、隣接する円板状巻線同士が接続されている。以下では、内周側4で接続されている場合に関して記述する。
【0008】
図13において点線で示した領域Iにおける円板状巻線31,32間の断面構造を図14に示す。それぞれの円板状巻線31,32は、上述したように、素線15が内周側4から外周側5へ径方向92において同心状に巻回されて形成されている。尚、径方向92とは、素線15が同心状に巻回されていく方向で、内周側4及び外周側5への向きに相当する。
また、円板状巻線間の電気的絶縁性能の観点において、本例では円板状巻線31,32を内周側4で接続しているので、内周側4では円板状巻線31,32間の電位差は小さい。よって、積層方向91における円板状巻線間の隙間(以下、「円板状巻線間距離」と記す)を内周側4では相対的に小さくして良く、一方、外周側5では円板状巻線31,32間の電位差が大きいため、円板状巻線間距離41を相対的に大きくする必要がある。よって、円板状巻線31と円板状巻線32とは、図示するように、内周側4と外周側5とで、円板状巻線間距離41を異ならせて配置されている。
【0009】
また、内周側4及び外周側5の両方における円板状巻線の角部は、放電の起点となりやすいため、巻線端部用絶縁材7にて巻線端部は覆われている。更に、電位が零である鉄心6や当該変圧器の筐体と、巻線端部との間には、絶縁板16を挿入することで、電気的絶縁性を強化している。更に、電位差の小さい内周側4では、円板状巻線31,32における各巻線端部用絶縁材7に、絶縁材にてなる巻線端部スペーサ10がそれぞれ配設されている。この巻線端部スペーサ10は、以下で説明する冷媒流路を確保するための部材となる。
【0010】
図15は、図14に点線で示した領域IIの拡大図である。円板状巻線31と円板状巻線32との電気的絶縁性を確保するために、円板状巻線31、32における各対向面31a,32aの全面に対向して、絶縁板1、1がそれぞれ挿入される。ここで各絶縁板1、1は、円板状巻線31の対向面31aに対して隙間を設けて、円板状巻線32の対向面32aに対して隙間を設けて、配置される。このような隙間は、冷却用の例えば絶縁油である冷媒を通過させる冷媒流路18になる。このような冷媒流路18を確保するため、絶縁材にてなるダクトピース2が絶縁板1、1と円板状巻線31、32(詳しくは対向面31a,32a)との間に挟まれて、径方向92において、不連続に配設される。ここでダクトピース2は、全て同じ厚みにてなる。
【0011】
このように、円板状巻線31,32を用いて巻線3を形成する場合、図14及び図15から明らかなように、冷媒流路18は、素線15の延在方向93(図14及び図15では、紙面に垂直な方向)に沿って形成され、冷媒は、素線15の延在方向93に沿って流れることになる。この点、冷媒が、素線の延在方向に対して直交方向に流れる、上述の多重筒状巻線の場合における構造とは相違する。
【0012】
また、この例では、内周側4と外周側5とでは、円板状巻線間距離41が異なる。この構造を実現するために、絶縁材にてなる巻線間距離調整用部材17と、テーパーを設けた絶縁材にてなるテーパースペーサ9とが、各絶縁板1、1の間で、ダクトピース2とは反対側に配設されている。ここで、円板状巻線31,32において、内周側4と外周側5とで円板状巻線間距離41を緩やかに変化させて、円板状巻線31,32に大きな段差が発生しないようにするために、各絶縁板1,1、及び巻線間距離調整用部材17の内周側4には、テーパーを設けて徐々にそれらの肉厚を薄くしている。
【0013】
図16は、図14において、二点鎖線で示した部分における、円板状巻線32の対向面32aに配置されているダクトピース2、巻線端部スペーサ10、巻線端部用絶縁材7を、矢印A方向に見た図であり、これらの位置関係を示す概略図である。図示するように、ダクトピース2は、平面形状が平行四辺形であり、径方向92に規定の間隔にて、かつ素線15の延在方向93に規定の間隔にて、配置されている。よって、冷媒は、冷却効率向上のため、点線19で示すように、冷媒流路18においてダクトピース2が配設されていない箇所を素線15の大略、延在方向93にジグザグに流れる。
【0014】
一方、静止誘導器では、落雷等で急に送電が停止した場合等の短絡時に、急激な力が各円板状巻線、即ち巻線3に加わる。このような外力が加わった際に、巻線3は、ダクトピース2、絶縁板1、巻線端部用絶縁材7等の絶縁物や鉄心6を介して、静止誘導器の筐体で支持される。円板状巻線、つまり巻線3は、図14にも示すように、素線15の集合体であり、外力で極度な変形を引き起こさないために、素線15の延在方向に一定間隔で、素線15を支持する必要がある。図16の概略図においては、素線最大支持間隔8がその支持間隔に相当する。
【0015】
上述したように、円板状巻線では、多重筒状巻線の場合と異なり、冷媒の流れる方向が素線15の延在方向と同一である。従って、素線最大支持間隔8を維持しつつ、冷媒流路18の形成が可能な構造にするため、ダクトピース2は、図16に示すように径方向92において細かく分割した小さな部材で形成されている。例えば上記特許文献1に開示されるような長尺棒状のダクトピースを用いた場合には、冷媒の流れが遮られてしまうという問題が生じる。
【0016】
また、特許文献1に開示されるように、ダクトピース自体にテーパーを形成して流路高さを変更しようとした場合には、円板状巻線の内周側4と外周側5との位置間で、個々のダクトピース自体がテーパーを有し、かつそれぞれのダクトピースの厚みが異なるようなダクトピースが必要となる。よって、部品の種類が増し、費用対効果が得られないという問題がある。
【0017】
また、特許文献1の図1に示すように、素線間に大きな段差が発生することを前提にした場合、特許文献1にも記載されているように、段差部で素線に巻かれている絶縁紙にダメージを与えて、絶縁耐力を低下させる原因となるため、好ましくない。
【0018】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、円板状巻線で構成された静止誘導器において、従来に比べて冷却能力を向上可能な静止誘導器における冷却構造、及び該冷却構造を有する静止誘導器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様である、静止誘導器における冷却構造は、巻線を備えた静止誘導器における冷却構造であって、上記巻線は、素線を同心状に径方向に巻回して形成されたそれぞれの円板状巻線に絶縁部材を対向させ挟んで各円板状巻線を積層し、かつ巻線の内周側と外周側とで円板状巻線間の距離を異ならせて形成され、上記円板状巻線と上記絶縁部材との間には上記素線の延在方向へ冷媒を流す冷媒流路を有する、静止誘導器における冷却構造である。この冷却構造は、上記円板状巻線と上記絶縁部材との間に挟まれて配置され上記冷媒流路の高さを規定するダクトピースであって、単体では一定の厚さにてなり、種別間では異なる厚みにてなる複数種類のダクトピースを備え、上記円板状巻線間の内周側と外周側とにおける円板状巻線間距離の大小に対応して厚みの異なるダクトピースを上記径方向において不連続にて配置して、異なる種類の冷媒流路高さを上記径方向に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様における静止誘導器の冷却構造によれば、同種類では同じ厚みを有し異種間では異なる厚みにてなる複数種類のダクトピースを備え、異なる厚みのダクトピースを巻線の径方向に配置した。よって、巻線における冷媒流路の高さを径方向で異ならせることができ、従来に比べて冷媒流路が拡大でき、巻線の冷却性能を向上させることができる。また、ダクトピース自体にテーパーを設ける構成と比較すると、ダクトピースの種類の増加を大幅に抑制することができ、製造コストの上昇を抑制することが可能となる。更に、設計上、巻線に局所的に大きな段差を発生させることがなくなり、絶縁性能の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における冷却構造を形成する円板状巻線間の構造を示す断面図であり、図7に示す領域Iの断面図である。
【図2】図1に示す領域IIIの拡大図である。
【図3】図1に示すB視における図である。
【図4】図3に対応した図であり、長方形のダクトピース設置用スペーサを用いた場合における不具合を説明するための図である。
【図5】図1に示す絶縁板及びダクトピース設置用スペーサの平面図であり、両者の位置関係を説明するための図である。
【図6】図1に示す円板状巻線の構造を有する巻線を備えた外鉄形変圧器の概略斜視図である。
【図7】図6に示す巻線を形成する、対向する2枚の円板状巻線の概略斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態2における冷却構造を形成する円板状巻線間の構造を示す断面図であり、図7に示す領域Iに相当する領域の断面図である。
【図9】図8に示す領域IVの拡大図である。
【図10】図8に示す第1絶縁板及び第2絶縁板の平面図であり、両者の位置関係を説明するための図である。
【図11】図8に示す第1絶縁板の外周端部の形状を説明するための図である。
【図12】外鉄形変圧器の概略斜視図である。
【図13】図12に示す巻線を形成する、対向する2枚の円板状巻線の概略斜視図である。
【図14】図13に示す領域Iにおける断面図である。
【図15】図14に示す涼気IIの拡大図である。
【図16】図14に示すA視における図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態である静止誘導器における冷却構造、及びこの冷却構造を有する静止誘導器について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0023】
本実施形態における静止誘導器の冷却構造について、図12から図14を参照して既に説明した円板状巻線を有する外鉄形変圧器を例に採り、以下に説明を行う。また、上記冷却構造を有する静止誘導器は、例えば絶縁油等の冷媒が入った外箱内に、上記冷却構造を有する外鉄形変圧器を配置して、冷媒によってこれらの変圧器の冷却が可能な構造を有するものである。
尚、図12及び図13に対応して、図6には、本実施形態における冷却構造を有する外鉄形変圧器100を示し、図7には外鉄形変圧器100に備わる巻線103を示す。また、円板状巻線の基本的構成については、図12から図14を参照して上述した内容を参照するものとし、その内容と同一又は同様の構成部分については以下の説明でも同じ符号を使用して詳しい説明は省略する。
【0024】
実施の形態1.
本実施形態における冷却構造の特徴の一つは、ダクトピース単体では均一の厚みにてなるが、種別間では異なる厚みを有する複数種類のダクトピースを備えた点である。即ち、図14に示した構造を有する巻線3では、冷媒流路18を形成するダクトピース2の全ては、同じ厚みにてなり、冷媒流路18の高さは、図示するように巻線3の内周側4及び外周側5において同じである。これに対し本実施形態では、異なる厚みの複数種類のダクトピースを備え、相対的に厚いダクトピースを配置した部分は、相対的に大きな流路断面を得ることができ、静止誘導器における冷却性能の向上を図ることができる。
本実施形態におけるこのような冷却構造について、具体的に以下に説明する。
【0025】
図14及び図15を参照して説明したように円板状巻線31、32を形成し、これらを積層して、本実施形態の冷却構造を有する巻線103が形成される。図1は、図14に対応した図であり、外鉄形変圧器100における巻線103の図7に示す領域Iにおける円板状巻線31,32間の断面構造を示す。また、図2は、図1に点線で囲んだ領域IIIの拡大図である。本実施形態においても、巻線103の内周側4が接続されて、内周側4で円板状巻線31,32間の電位差が小さくなる場合を例に採る。内周側4では電位差が小さいため、円板状巻線31,32間の電気的絶縁距離を小さくでき、内周側4における円板状巻線間距離41は、外周側5の円板状巻線間距離41に比べて小さい。よって、コスト低減を図ることが可能である。
【0026】
また、図14に示した巻線3と同様に、本実施形態に関する巻線103においても、巻線端部には巻線端部用絶縁材7及び絶縁板16を設け、内周側4には、巻線端部スペーサ10を配設している。また、内周側4及び外周側5における円板状巻線間距離41の調整は、図14に示す構造と同様に、テーパースペーサ9で調整し、円板状巻線間の距離41を連続的に変えることができる。
【0027】
巻線3の場合と同様に、巻線103においても、円板状巻線31と円板状巻線32との電気的絶縁性を確保するために、円板状巻線31、32における各対向面31a,32aに対向して、絶縁板101がそれぞれ挿入される。絶縁板101は、円板状巻線31、32に対応した形状、つまり円板状巻線31、32と相似形状で、図5に示すような形状の電気的絶縁材からなる板材である。尚、本実施の形態1では、絶縁板101は一種類からなり、巻線103の外周側5からほぼ内周側4までにわたり延在する。
【0028】
さらに、図14に示す構造と同様に、絶縁板101、101と、円板状巻線31、32との間には、ダクトピースを挟んで冷媒流路が形成されるが、本実施形態では上述のように複数種類のダクトピースを備えている。このダクトピースは、具体的に以下で説明するが、厚みが相対的に薄い薄厚ダクトピースと、この薄厚ダクトピースよりも大きい厚みにてなる一又は複数種類の厚型ダクトピースとを備える。
【0029】
具体的には、本実施形態では、図1及び図2に示すように、絶縁材にてなり、2種類の異なる厚みのダクトピース102−1、102−2を備える。ここで、ダクトピース102−1、及びダクトピース102−2の各単体における厚みは、一定であり、テーパーは設けていない。本実施形態では、円板状巻線間距離41を内周側4で小さく、外周側5で大きく設定しているため、内周側4には、相対的に厚みを薄くした薄厚ダクトピース102−1を配置し、外周側5には、薄厚ダクトピース102−1よりも大きい厚みを有する厚型ダクトピース102−2を配置する。
【0030】
より詳しく説明する。円板状巻線間距離41が相対的に大きい、本実施形態では外周側5の領域103bでは、各絶縁板101、101は、円板状巻線31の対向面31aに対して冷媒流路182となる隙間を設けて、及び、円板状巻線32の対向面32aに対して冷媒流路182となる隙間を設けて、それぞれ配置される。絶縁板101、101と、円板状巻線31、32との間にそれぞれ冷媒流路182を確保するため、厚型ダクトピース102−2が絶縁板101、101と円板状巻線31、32(詳しくは対向面31a,32a)との間に挟まれて、径方向92において、不連続に配設される。尚、それぞれの厚型ダクトピース102−2は、同一の厚みにてなることから、絶縁板101、101と円板状巻線31、32とは、それぞれ平行に位置し、冷媒流路182の高さは、径方向92において一定である。また、本実施形態では、厚型ダクトピース102−2は、絶縁板101に接着されている。
尚、厚型ダクトピース102−2の厚さ及び冷媒流路182の高さとは、板状の円板状巻線31,32の厚み方向に沿ったそれぞれの寸法に対応する。
【0031】
このような構成により、円板状巻線間距離41を大きくした、本実施形態では外周側5において、積層方向91における冷媒流路182の高さを、図14に示す構造に比べて拡大することができ、より冷却効率を向上させることができる。
【0032】
一方、円板状巻線間距離41が小さい、本実施形態では内周側4の領域103aに対応した、絶縁板101における内周側には、ダクトピース設置用スペーサ111が配置される。ダクトピース設置用スペーサ111は、図5に示すように、円板状巻線31、32と相似形状の絶縁材からなる板状の部材であり、図1及び図2に示すように、くさび状でテーパーが付された部材である。即ち、上述のように内周側4には薄厚ダクトピース102−1を配置することから、図2に示すように絶縁板101、101と、薄厚ダクトピース102−1との間には隙間が生じる。ダクトピース設置用スペーサ111は、この隙間に対応する部材である。尚、ダクトピース設置用スペーサ111、111と、円板状巻線31,32との間で薄厚ダクトピース102−1にて形成される隙間が冷媒流路181となる。薄厚ダクトピース102−1にて高さが規定されるため、冷媒流路181の高さは、冷媒流路182に比べて小さい。また、それぞれの薄厚ダクトピース102−1は、同一の厚みにてなり、ダクトピース設置用スペーサ111にはテーパーを付けていることから、冷媒流路181の高さは、径方向92において一定である。
尚、薄厚ダクトピース102−1の厚さ及び冷媒流路181の高さとは、厚型ダクトピース102−2の厚さ及び冷媒流路182の高さと同様に、板状の円板状巻線31,32の厚み方向に沿ったそれぞれの寸法に対応する。
【0033】
本実施形態では、薄厚ダクトピース102−1は、ダクトピース設置用スペーサ111に接着しておき、このダクトピース付きのダクトピース設置用スペーサ111を絶縁板101に接着して、円板状巻線31,32間の距離を調整している。また、このようなダクトピース付きのダクトピース設置用スペーサ111は、本実施形態では、テーパーを予め設けたダクトピース設置用スペーサ111の上に、自動貼り機で薄厚ダクトピース102−1を接着、切断することで作製する。
【0034】
薄厚ダクトピース102−1においても、厚型ダクトピース102−2と同様に、テーパーをつけていないため、ダクトピースの部品点数の増加を抑制することが可能であり、製造コストの抑制が可能となる。
【0035】
図3は、図16に対応する図であり、図1において二点鎖線で示した部分における、円板状巻線32の対向面32aに配置されているダクトピース102−1,102−2、巻線端部スペーサ10、巻線端部用絶縁材7を、矢印B方向に見た図であり、これらの位置関係を示す概略図である。図示するように、ダクトピース102−1,102−2は、平行四辺形であり、径方向92に規定の間隔にて、かつ素線15の延在方向93に規定の間隔にて、配置されている。さらに、ダクトピース設置用スペーサ111についても、径方向92に沿う辺111a、及び径方向92における端辺111bの少なくとも一方は、薄厚ダクトピース102−2における対応の辺と平行になるような形状にしている。これは、図4に示すように、ダクトピース設置用スペーサ111を長方形にした場合には、厚型ダクトピース102−2、巻線端部用絶縁材7、巻線端部スペーサ10と干渉する箇所が発生するためである。
【0036】
尚、本実施形態では、説明の簡略化のために、冷媒流路180は、冷媒流路181と冷媒流路182との2段階の流路高さ構成で説明しているが、費用対効果の許容する範囲で、多段化が可能である。尚、この多段化に対応して、複数種類のダクトピース設置用スペーサ111が設けられることになる。
【0037】
また、外周側5の巻線が接続されている場合、外周側5における円板状巻線間距離41が小さくなり、内周側4における円板状巻線間距離41が大きくなる。この場合、薄厚ダクトピース102−1、及びダクトピース設置用スペーサ111は、外周側5において、絶縁材101,101と、円板状巻線31,32との間に設置される。
【0038】
上述したように本実施形態の冷却構造によれば、従来に比べて静止誘導器における冷却能力を向上させることができ、これにより、さらにまた以下の効果を得ることが可能となる。即ち、冷却能力の向上により、一枚の円板状巻線当たりの熱流束を増やすことができ、変圧器サイズの縮小を図ることが可能となる。変圧器のサイズが小さくなることで、重量及び材料費の低減ができ、さらに運搬費用の低減も可能となる。また、冷却用のファンやポンプを減らすこともでき、省エネにもつながる。
【0039】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、円板状巻線31,32の対向面31a,32aのほぼ全面にわたり延在する一種類の絶縁板101,101に対して、ダクトピース設置用スペーサ111,111を取り付ける形態を示した。これに対して本実施の形態2に関する巻線103−1では、図10に示すように、主に円板状巻線間距離41が大きい方の領域103bに対応して配置される第1絶縁板121と、主に円板状巻線間距離41が小さい方の領域103aに対応して配置される第2絶縁板122との2種類の絶縁板を用いる。本実施の形態2は、この点で実施の形態1と相違し、変圧器におけるその他の構成は、実施の形態1における構成と同じであり、本実施の形態2においても、実施の形態1の場合と同様に、複数種類の厚みを有するダクトピースを備える。よって、実施の形態2における静止誘導器の冷却構造においても、実施の形態1の冷却構造が奏する上述の効果を奏することができる。また、実施の形態1にて説明した変形例は、本実施の形態2における冷却構造にも適用可能である。
以下では、主に上述の相違点について説明する。
【0040】
図8は、図1に対応する図であり、図7に示す領域Iに相当する領域における、実施の形態2に関する巻線103−1の断面を示している。図9は、図8に示す領域IVの拡大図である。
上述のように本実施形態における巻線103−1では、第1絶縁板121と第2絶縁板122との2種類の絶縁板を有する。第1絶縁板121は、外周側5の電位差の大きい側に対応して配置され、相対的に厚みが小さい電気的絶縁性の板状部材であり、図10に示すように、巻線103−1の形状に相似した形状である。第2絶縁板122は、内周側4の電位差の小さい側に配置され、第1絶縁板121の最大厚み121b(図9)よりも大きい厚み122bの一又は複数種類の厚みを有する電気的絶縁性の板状部材であり、図10に示すように、巻線103−1の形状に相似した形状である。また、図8に示すように、第1絶縁板121及び第2絶縁板122は、円板状巻線31,32の径方向92における長さのほぼ半分ずつに相当する長さをそれぞれ有し、第1絶縁板121の内周部分と、第2絶縁板122の外周部分とを重ね、この重なり領域123にて両者を接着して一体的な絶縁板を形成している。尚、相対的に薄い第1絶縁板121は、重なり領域123付近にテーパーを設けることで、重なり領域123の巻線間距離を調整している。
【0041】
また、第1絶縁板121側に位置する第2絶縁板122の外周端部122aは、図11に示すように、厚型ダクトピース102−2の配置に対応してジグザグ状に、例えばレーザー加工機にて加工される。このように加工することで、外周端部122aが厚型ダクトピース102−2に干渉するのを防止することができる。
【0042】
また、第1絶縁板121に対応して、上述の厚型ダクトピース102−2が配置される。つまり、第1絶縁板121、121と、円板状巻線31、32(詳しくは対向面31a,32a)との間に厚型ダクトピース102−2が挟まれ、冷媒流路182が形成される。また、第2絶縁板122に対応して、上述の薄厚ダクトピース102−1が配置される。つまり、第2絶縁板122、122と、円板状巻線31、32(詳しくは対向面31a,32a)との間に薄厚ダクトピース102−1が挟まれ、冷媒流路181が形成される。
【0043】
このように、第1絶縁板121及び第2絶縁板122と、厚型ダクトピース102−2及び薄厚ダクトピース102−1とを組み合わせ、第1絶縁板121の厚み+厚型ダクトピース102−2の厚み = 第2絶縁板122の厚み+薄厚ダクトピース102−1の厚み、とすることで、円板状巻線31、32に接触するダクトピース102−1、102−2のあたり面を平坦にしている。
【0044】
以上のような構成を有する本実施形態2における静止誘導器の冷却構造では、実施の形態1と同じく、流路拡大による冷却能力増強が可能であり、また、巻線部に急激な段差を発生させずに、巻線間距離の調整が可能になる。
更に、第1絶縁板121及び第2絶縁板122を接着することで、1枚の絶縁板として取り扱うことが可能になり、絶縁耐力の維持が可能になる。更に、このように接着にて1枚として形成された絶縁板に対して、薄厚ダクトピース102−1及び厚型ダクトピース102−2のほとんどを、例えばダクトピース自動貼り機にて、接着することが可能になる。
【0045】
尚、実施の形態1でも説明したように、冷媒流路180は多段化が可能である。この多段化に対応して、複数種類の第2絶縁板122が設けられることになる。
【符号の説明】
【0046】
6 鉄心、15 素線、31,32 円板状巻線、
100 静止誘導器、101 絶縁板、102 ダクトピース、
102−1 薄厚ダクトピース、102−2 厚型ダクトピース、103 巻線、
111 ダクトピース設置用スペーサ、121 第1絶縁板、122 第2絶縁板、
180 冷媒流路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を備えた静止誘導器における冷却構造であって、
上記巻線は、素線を同心状に径方向に巻回して形成されたそれぞれの円板状巻線に絶縁部材を対向させ挟んで各円板状巻線を積層し、かつ巻線の内周側と外周側とで円板状巻線間の距離を異ならせて形成され、上記円板状巻線と上記絶縁部材との間には上記素線の延在方向へ冷媒を流す冷媒流路を有し、
上記冷却構造は、
上記円板状巻線と上記絶縁部材との間に挟まれて配置され上記冷媒流路の高さを規定するダクトピースであって、単体では一定の厚さにてなり、種別間では異なる厚みにてなる複数種類のダクトピースを備え、
上記円板状巻線間の内周側と外周側とにおける円板状巻線間距離の大小に対応して厚みの異なるダクトピースを上記径方向において不連続にて配置して、異なる種類の冷媒流路高さを上記径方向に形成した、
ことを特徴とする静止誘導器の冷却構造。
【請求項2】
上記厚みの異なるダクトピースは、薄厚ダクトピースと、上記薄厚ダクトピースよりも大きい厚みの一又は複数種類の厚型ダクトピースとを有し、上記薄厚ダクトピースは、上記円板状巻線間距離が相対的に小さい領域に対応して配置され上記冷媒流路の高さを相対的に小さく設定し、上記厚型ダクトピースは、上記円板状巻線間距離が相対的に大きい領域に対応して配置され上記冷媒流路の高さを相対的に大きく設定する、請求項1記載の静止誘導器の冷却構造。
【請求項3】
上記絶縁部材は、絶縁板及びダクトピース設置用スペーサから形成され、上記絶縁板は、上記円板状巻線と相似形状で電気的絶縁材料にて形成される板材であり、上記円板状巻線間距離が相対的に大きい領域にて上記円板状巻線との間に上記厚型ダクトピースを挟んで配置され、上記ダクトピース設置用スペーサは、電気的絶縁材料にて形成され、上記円板状巻線間距離が相対的に小さい領域にて上記絶縁板と上記薄厚ダクトピースとの間に配置される、請求項2記載の静止誘導器の冷却構造。
【請求項4】
上記ダクトピース設置用スペーサにおいて、上記径方向に沿う辺、及び上記径方向における端部の辺の少なくとも一方は、上記薄厚ダクトピースにおける対応の辺と平行に形成される、請求項3記載の静止誘導器における冷却構造。
【請求項5】
上記薄厚ダクトピースは、上記ダクトピース設置用スペーサに予め取り付けられてダクトピース付スペーサとして一体的に形成され、このダクトピース付スペーサが上記絶縁板に取り付けられる、請求項3又は4記載の静止誘導器における冷却構造。
【請求項6】
上記絶縁部材は、第1絶縁板及び第2絶縁板から形成され、上記第1絶縁板は、上記円板状巻線と相似形状で第1板厚にてなり電気的絶縁材料にて形成される板材であり、上記円板状巻線間距離が相対的に大きい領域に対応して配置され、上記第2絶縁板は、上記円板状巻線と相似形状で上記第1板厚よりも大きい厚みの一又は複数種類の第2板厚にてなり電気的絶縁材料にて形成される板材であり、上記円板状巻線間距離が相対的に小さい領域に対応して配置され、上記第1絶縁板及び上記第2絶縁板は、互いに重なり合う重なり領域を有する、請求項2記載の静止誘導器の冷却構造。
【請求項7】
上記第1絶縁板は、上記円板状巻線との間に上記厚型ダクトピースを挟み、上記第2絶縁板は、上記円板状巻線との間に上記薄厚ダクトピースを挟む、請求項6記載の静止誘導器の冷却構造。
【請求項8】
素線を同心状に巻回して形成された円板状巻線を複数枚積層して構成される巻線と、
巻線の外周側に配置され巻線の外部に磁路を形成する鉄心と、を備えた静止誘導器において、
上記巻線を冷却する静止誘導器の冷却構造で、請求項1から7のいずれか1項に記載の冷却構造を備えたことを特徴とする静止誘導器。
【請求項1】
巻線を備えた静止誘導器における冷却構造であって、
上記巻線は、素線を同心状に径方向に巻回して形成されたそれぞれの円板状巻線に絶縁部材を対向させ挟んで各円板状巻線を積層し、かつ巻線の内周側と外周側とで円板状巻線間の距離を異ならせて形成され、上記円板状巻線と上記絶縁部材との間には上記素線の延在方向へ冷媒を流す冷媒流路を有し、
上記冷却構造は、
上記円板状巻線と上記絶縁部材との間に挟まれて配置され上記冷媒流路の高さを規定するダクトピースであって、単体では一定の厚さにてなり、種別間では異なる厚みにてなる複数種類のダクトピースを備え、
上記円板状巻線間の内周側と外周側とにおける円板状巻線間距離の大小に対応して厚みの異なるダクトピースを上記径方向において不連続にて配置して、異なる種類の冷媒流路高さを上記径方向に形成した、
ことを特徴とする静止誘導器の冷却構造。
【請求項2】
上記厚みの異なるダクトピースは、薄厚ダクトピースと、上記薄厚ダクトピースよりも大きい厚みの一又は複数種類の厚型ダクトピースとを有し、上記薄厚ダクトピースは、上記円板状巻線間距離が相対的に小さい領域に対応して配置され上記冷媒流路の高さを相対的に小さく設定し、上記厚型ダクトピースは、上記円板状巻線間距離が相対的に大きい領域に対応して配置され上記冷媒流路の高さを相対的に大きく設定する、請求項1記載の静止誘導器の冷却構造。
【請求項3】
上記絶縁部材は、絶縁板及びダクトピース設置用スペーサから形成され、上記絶縁板は、上記円板状巻線と相似形状で電気的絶縁材料にて形成される板材であり、上記円板状巻線間距離が相対的に大きい領域にて上記円板状巻線との間に上記厚型ダクトピースを挟んで配置され、上記ダクトピース設置用スペーサは、電気的絶縁材料にて形成され、上記円板状巻線間距離が相対的に小さい領域にて上記絶縁板と上記薄厚ダクトピースとの間に配置される、請求項2記載の静止誘導器の冷却構造。
【請求項4】
上記ダクトピース設置用スペーサにおいて、上記径方向に沿う辺、及び上記径方向における端部の辺の少なくとも一方は、上記薄厚ダクトピースにおける対応の辺と平行に形成される、請求項3記載の静止誘導器における冷却構造。
【請求項5】
上記薄厚ダクトピースは、上記ダクトピース設置用スペーサに予め取り付けられてダクトピース付スペーサとして一体的に形成され、このダクトピース付スペーサが上記絶縁板に取り付けられる、請求項3又は4記載の静止誘導器における冷却構造。
【請求項6】
上記絶縁部材は、第1絶縁板及び第2絶縁板から形成され、上記第1絶縁板は、上記円板状巻線と相似形状で第1板厚にてなり電気的絶縁材料にて形成される板材であり、上記円板状巻線間距離が相対的に大きい領域に対応して配置され、上記第2絶縁板は、上記円板状巻線と相似形状で上記第1板厚よりも大きい厚みの一又は複数種類の第2板厚にてなり電気的絶縁材料にて形成される板材であり、上記円板状巻線間距離が相対的に小さい領域に対応して配置され、上記第1絶縁板及び上記第2絶縁板は、互いに重なり合う重なり領域を有する、請求項2記載の静止誘導器の冷却構造。
【請求項7】
上記第1絶縁板は、上記円板状巻線との間に上記厚型ダクトピースを挟み、上記第2絶縁板は、上記円板状巻線との間に上記薄厚ダクトピースを挟む、請求項6記載の静止誘導器の冷却構造。
【請求項8】
素線を同心状に巻回して形成された円板状巻線を複数枚積層して構成される巻線と、
巻線の外周側に配置され巻線の外部に磁路を形成する鉄心と、を備えた静止誘導器において、
上記巻線を冷却する静止誘導器の冷却構造で、請求項1から7のいずれか1項に記載の冷却構造を備えたことを特徴とする静止誘導器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−69621(P2012−69621A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211660(P2010−211660)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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