説明

静止誘導電器

【課題】
本発明の課題は、タンク表面での冷却効率を向上させてタンク表面での温度上昇を低下させて電器容量を増加させたり、或いは変圧器の小型化を図り据付面積を縮小すると共に、点検者や作業者等が直接タンク表面に触れることができない静止誘導電器を提供するにある。
【解決手段】
本発明は、鉄心に巻線を巻回してなる電器本体を絶縁媒体と共に内部に収納するタンクに、絶縁媒体が収納された容器を固定し、該容器と前記タンクとの間に空間を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静止誘導電器に係り、例えば変圧器等の如く、電器を高温で使用する場合に絶縁媒体を冷却媒体としても用いるものに好適な静止誘導電器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に変圧器は、防災の観点から不燃化が以前にも増して要望されている。この要求に対して、絶縁媒体としてパーフルオロカーボン液(以下PFC液と言う)や油入変圧器に代わるSF6 ガスを用いた不燃変圧器などが実用化されてきた。
【0003】
ところが、PFC液やSF6 ガス等の絶縁媒体は大気放出規制の対象となり、これらを用いた電器からPFC液やSF6 ガス等の絶縁媒体が万が一漏れた場合には、地球環境に与える影響が非常に大きくなり問題である。
【0004】
一方、鉱油に比べて引火点の高い絶縁媒体である難燃のシリコーン液は、電気的,化学的に優れていて屋内用の小容量変圧器や車両用変圧器等に適用されている。
【0005】
近年、絶縁媒体を高温で使用して変圧器の容量を増加させたり、変圧器の小型化を図り据付面積を縮小しようとする考えがある。
【0006】
しかし、変圧器の絶縁媒体を高温で使用した場合、点検者や作業者等が触れる恐れのある変圧器タンクの表面が高温になる可能性があるが、この点検者や作業者等が触れる恐れのある変圧器タンクの表面が高温となることに対しては十分な検討がなされていなかった。
【0007】
一方、タンクの側板の外側に一定の間隔をあけて設けた複数の補強ステーとタンクの側板、あるいは補強ステーの上に設けた枠状の取付け部材と取付け部材に取付けた薄鋼板と制振鋼板及び枠状重量体とからなる遮音板を備え、薄鋼板の表面に制振塗料を塗布し、取付け部材及びタンクの取付け部材との接続部分の表面に制振塗料を塗布するものが提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
また、タンクの側面にタンクの他の部分を構成する部材よりも振動し易い薄板を使用した振動吸収部を形成し、その振動吸収部の周囲に補強部材を取付け、その外側に防音板を取付けて振動吸収部と防音板の間に消音室としての空間を設けるものが提案されている
(特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2000−315609号公報
【特許文献2】特開平10−284328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術では、変圧器タンクの側板から遮音板の制振鋼板までへの振動の伝達を効率良く制御したり、振動吸収部の振動による騒音を低減できるが、絶縁媒体を高温で使用した場合のタンク表面での温度上昇を低くする冷却構造や点検者及び作業者等が直接タンク表面に触れないような構造となっていない。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、タンク表面での冷却効率を向上させてタンク表面での温度上昇を低下させて電器容量を増加させたり、或いは変圧器の小型化を図り据付面積を縮小すると共に、点検者や作業者等が直接タンク表面に触れることができない静止誘導電器を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の静止誘導電器は、上記目的を達成するために、鉄心に巻線を巻回してなる電器本体を絶縁媒体と共に内部に収納するタンクに、絶縁媒体が収納された容器を固定し、該容器と前記タンクとの間に空間を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の静止誘導電器によれば、タンクと容器との間に形成された空間で自然対流が可能となり、この自然対流によりタンク表面での温度上昇を効果的に低減させることができるため、変圧器容量を増加させたり、変圧器の小型化が図られ据付面積を縮小することができる。
【0014】
また、点検者や作業者等が直接タンク表面に触れないような構造となっているため火傷を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
タンクと容器との間に空間を形成することにより、前記空間で自然対流が可能となり、この自然対流によりタンク表面での温度上昇を効果的に低減させることができるため、変圧器容量を増加させたり、変圧器の小型化が図られ据付面積を縮小することができ、また、点検者や作業者等が直接タンク表面に触れないような構造となっているため火傷を防止することが可能となる。
【実施例1】
【0016】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の静止誘導電器の一実施例を説明する。
【0017】
図1乃至図3に本発明の静止誘電電器の一実施例である自冷式3相3脚変圧器を示す。
【0018】
該図に示す如く、自冷式3相3脚変圧器は、鉄心1に巻回された巻線2を上部鉄心締付金具3と下部鉄心締付金具4で締付けて構成された変圧器本体が絶縁媒体9と共にタンク5内に収納されて形成されている。また、タンク5の表面には複数の取付金具14が設けられ、絶縁媒体9′を収納した容器20がタンク5の全周に渡って取付金具14で固定され、タンク5と容器20との間には空間8を形成している。
【0019】
一方、矢印で示すように、絶縁媒体9を流すためにタンク5の外側には、絶縁媒体9をタンク5外へ排出する出口配管11,出口配管11から出てきた絶縁媒体9を冷却する冷却器12,冷却器12で冷却された絶縁媒体9をタンク5内に導く入口配管10が設けられた構成となっている。タンク5の内部は、入口配管10と出口配管11とに圧力差を設けて変圧器本体に絶縁媒体9が流れ易いようになっている。
【0020】
このような本実施例の構成によれば、タンク5と絶縁媒体9′を入れた容器20との間に空間8を設けているために、タンク5の表面での温度上昇が空間8でタンク5の上下方向の自然対流により温度上昇が低下し、しかも容器20内の絶縁媒体9′から外気側への熱伝達や取付金具14から容器20へ熱伝導した後に外気側へ熱伝達するためタンク5の表面での温度上昇を低減でき、変圧器容量を増加させたり、小型の変圧器を提供して据付面積を縮小することができる。
【0021】
しかも、絶縁媒体9′を入れた容器20でタンク5の表面を覆っているため点検者や作業者が直接タンク5の表面に触れられないような構造となっているために火傷する危険性もなく、火傷を防止するための対策が不要となる。
【0022】
また、絶縁媒体9を高温で使用した場合、タンク5の表面も高温になるため、点検者や作業者等が触れて火傷するような危険性があるときは変圧器の運転を停止しなければならないが、絶縁媒体9′を入れた容器20でタンク5の表面を覆っているため点検者や作業者が直接タンク5に触れることができないため、変圧器の運転を停止する必要性がなくなるメリットもある。
【実施例2】
【0023】
図4は本発明の静止誘導電器の他の実施例である変圧器を示す平面図である。図3と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0024】
該図に示す本実施例は、自冷式単相センタコア変圧器であり、鉄心1に巻回された巻線2と、巻線2が巻回されない鉄心13を上部鉄心締付金具3と下部鉄心締付金具(図示せず)で構成された変圧器本体と絶縁媒体9と共にタンク5内に収納されている。また、タンク5の表面には複数の取付金具14が設けられ、この取付金具14で絶縁媒体9′を入れた容器20をタンク5の全周に渡って固定し、タンク5と容器20との間に空間8を形成している。
【0025】
このような本実施例の構成によれば、巻線2が1個しかないために変圧器で発生する損失が小さく、しかも、タンク5と絶縁媒体9′を入れた容器20との間に空間8を設けているために、タンク5の表面での温度上昇が空間8をタンク5の上下方向の自然対流により温度上昇が低下し、しかも容器20内の絶縁媒体9′から外気側への熱伝達や取付金具14から容器20へ熱伝導した後に外気側へ熱伝達するためタンク5の表面での温度上昇を大幅に低減でき、変圧器容量を増加させたり、小型の変圧器を提供して据付面積を縮小することができる。
【実施例3】
【0026】
図5は本発明の更に他の実施例を示すもので、3相5脚変圧器の正面図を示している。図3と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0027】
該図に示す如く、本実施例では巻線2が巻回されない鉄心13が配置され、タンク5の全周に渡って絶縁媒体9′を入れた容器20を固定し、タンク5と容器20との間に空間8を形成している。
【0028】
このような本実施例の構成によれば、タンク5と容器20との間に空間8を設けているために、タンク5の表面での温度上昇が空間15をタンク5の上下方向の自然対流により温度上昇が低下し、しかも容器20内の絶縁媒体9′から外気側への熱伝達や取付金具
14から容器20へ熱伝導した後に外気側へ熱伝達するためタンク5の表面での温度上昇を大幅に低減でき、変圧器容量を増加させたり、小型の変圧器を提供して据付面積を縮小することができる。
【0029】
また、絶縁媒体9′を入れた容器20でタンク5の表面を覆っているため点検者や作業者が直接タンク5に触れることができないために火傷を防止することができる。
【実施例4】
【0030】
図6は本発明の更に他の実施例を示すもので、3相3脚変圧器の正面図である。図3と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0031】
該図に示す如く、本実施例ではタンク5の両側に冷却器12を配置した構成となっている。
【0032】
このような本実施例の構成によれば、タンク5内の絶縁媒体9やタンク5の表面の温度上昇した絶縁媒体9をタンク5の両側に配置した冷却器12で冷却するために絶縁媒体9やタンク5の表面での温度が低下する。さらに、タンク5と絶縁媒体9′を入れた容器
20との間の空間8を上下方向の自然対流によりタンク5での温度上昇を低減できるため変圧器容量を増加させたり、小型の変圧器を提供して据付面積を縮小することができる。
【0033】
また、冷却器12による冷却効率が向上するために、絶縁媒体9′を入れた容器20を小さくできると共に容器20に入れる絶縁媒体9′の液量も低減できるメリットもある。
【実施例5】
【0034】
図7は本発明の更に他の実施例を示すもので、3相3脚変圧器の正面図である。図6と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0035】
該図に示す如く、本実施例ではタンク5の表面に複数の取付金具14が設けられ、前記取付金具14で絶縁媒体9′を入れた容器20が分割され、前記タンク5と前記容器20との間に空間8が形成されている。
【0036】
このような本実施例の構成によれば、タンク5と絶縁媒体9′を入れた容器20との間の空間8をタンク5の上下方向の自然対流によりタンク5での温度上昇が低下する。しかも、容器20間に間隙部が生じるためにタンク5の表面が外気による冷却効果も期待でき、変圧器容量を増加させたり、小型の変圧器を提供して据付面積を縮小することができる。
【0037】
また、容器20が分割されているために容器20自身や絶縁媒体9′の重量が軽くなり、運搬や取付け作業等が容易にできるため安価に製作することが可能となる。
【0038】
なお、本実施例は自冷式変圧器の場合を述べてきたが、冷却経路に送油ポンプを配置した送油式変圧器の場合でも同様な効果が期待できるのは言うまでもない。
【0039】
また、タンク内の絶縁媒体を容器内の絶縁媒体と同程度あるいはそれより低粘度で難燃液としても良い。変圧器タンク内及び容器内に入れる絶縁媒体としては引火点200℃以上のものが好都合である。
【0040】
更に、変圧器タンク内及び容器内に入れる絶縁媒体としてはシリコーン液が有効である。
【0041】
また、タンク内の絶縁媒体を低粘度の難燃液とし、容器に入れた絶縁媒体を不燃液の水としても良い。
【0042】
容器内に入れる絶縁媒体は工場内で入れて出荷するかあるいは現地で入れても変圧器性能及び効果も同様に期待できる。
【0043】
本発明では容器内に絶縁媒体を入れた場合を例について述べてきたが、冷却器とポンプを用いて容器内の絶縁媒体を循環させることにより、さらにタンク表面での温度上昇を低減できるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の静止誘導電器の一実施例である自冷式3相3脚変圧器の内部構造を示す図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図2のA−A断面における平面図である。
【図4】本発明の他の実施例である単相センタコア変圧器の図3に相当する平面図である。
【図5】本発明の更に他の実施例である3相5脚変圧器の図3に相当する平面図である。
【図6】本発明の更に他の実施例である3相3脚変圧器の図3に相当する平面図である。
【図7】本発明の更に他の実施例である3相3脚変圧器の図3に相当する平面図である。
【符号の説明】
【0045】
1,13…鉄心、2…巻線、3…上部鉄心締付金具、4…下部鉄心締付金具、5…タンク、8…空間、9,9′…絶縁媒体、10…入口配管、11…出口配管、12…冷却器、14…取付金具、20…容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心、この鉄心に巻回された巻線からなる電器本体と、該電器本体を絶縁媒体と共に内部に収納するタンクと、該タンク内で前記電器本体を冷却した後の絶縁媒体を冷却する冷却器と、該冷却器へ前記タンク内の絶縁媒体を導くための出口配管と、前記冷却器により冷却された絶縁媒体を前記タンク内に導くための入口配管とを備え、前記電器本体を冷却した絶縁媒体を出口配管を介して冷却器に導き、ここで冷却された絶縁媒体を入口配管を介して前記タンク内に導く循環経路を形成する静止誘導電器において、
前記タンクに、絶縁媒体が収納された容器を固定し、該容器と前記タンクとの間に空間を形成したことを特徴とする静止誘導電器。
【請求項2】
鉄心、この鉄心に巻回された巻線からなる電器本体と、該電器本体を絶縁媒体と共に内部に収納するタンクと、該タンク内で前記電器本体を冷却した後の絶縁媒体を冷却する冷却器と、該冷却器へ前記タンク内の絶縁媒体を導くための出口配管と、前記冷却器により冷却された絶縁媒体を前記タンク内に導くための入口配管とを備え、前記電器本体を冷却した絶縁媒体を出口配管を介して冷却器に導き、ここで冷却された絶縁媒体を入口配管を介して前記タンク内に導く循環経路を形成する静止誘導電器において、
前記タンクに、絶縁媒体が収納され、かつ、複数に分割された容器を固定し、該容器と前記タンクとの間に空間を形成したことを特徴とする静止誘導電器。
【請求項3】
前記タンク内の絶縁媒体を、前記容器内に入れた絶縁媒体と同程度あるいはそれより低粘度の難燃液としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の静止誘導電器。
【請求項4】
前記タンク内及び容器内の絶縁媒体の引火点を200℃以上にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の静止誘導電器。
【請求項5】
前記タンク内及び容器内の絶縁媒体を難燃のシリコーン液としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の静止誘導電器。
【請求項6】
前記タンク内の絶縁媒体を低粘度の難燃液とし、前記容器内の絶縁媒体を不燃液の水としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の静止誘導電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−24725(P2006−24725A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201277(P2004−201277)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(503020574)株式会社日本AEパワーシステムズ (56)
【Fターム(参考)】