説明

静水圧加圧成形型

【課題】加圧成形時に、碍管の成形体の端面にクラックが発生することを防止することができる静水圧加圧成形型を提供する。
【解決手段】円柱状の芯金1と、芯金1の一方の端部に配設された蓋部2と、他方の端部に配設された底部3と、蓋部2から底部3に亘って配設された円筒状の成形用ゴム型4とを備え、蓋部2の芯金1側を向く面と、底部3の芯金1側を向く面とが、いずれも芯金1に直交する平面であり、曲面状の凹みが全周に亘って連続的に形成された凹面部16を有し、芯金1の側面部1cと底部3とが交わる位置に配設された下部リング状部材11を更に備え、曲面状の凹みが全周に亘って連続的に形成された凹面部26を有し、芯金の側面部1cと蓋部2とが交わる位置に配設された上部リング状部材21を更に備える碍管成形用の静水圧加圧成形型100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静水圧加圧成形型に関し、さらに詳しくは、加圧成形時に、碍管成形体の端面にクラックが発生することを防止することができる静水圧加圧成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
碍管のような円筒形状のセラミック成形体を加圧成形する方法として、静水圧加圧成形(以下、「CIP成形」ということがある。)を挙げることができる。一般に、CIPは、粉末充填、加圧、減圧、成形体取り出しの各工程からなり、円筒形状のセラミック成形体の成形に好適に用いられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、CIP成形では、得られる円筒形状のセラミック成形体の端面の内径側において、クラックが発生するという問題があった。
【非特許文献1】P.J.James編、海江田義也訳、「HIPとCIP」、日刊工業新聞社、昭和61年8月22日、p99
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような端面のクラックの発生を防止するため、静水圧加圧成形型の端部に相当する部分をゴムで形成する方法が考えられるが、ゴムは加圧成形時に変形するため、セラミック成形体の端面の水平度が損なわれるという問題があった。この場合、端面の加工工程を更に要することになる。
【0005】
また、セラミック成形体の端面の内径側を円弧状に形成することにより、クラックの発生を防止する方法が考えられるが、セラミック成形体の端面の内径側を円弧状に形成するように静水圧加圧成形型の芯金を加工するのは、特に、長さ50cmを超える大型のセラミック成形体を形成する場合には、容易ではないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加圧成形時に、碍管のような円筒形状のセラミック成形体の端面にクラックが発生することを防止することができる静水圧加圧成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によって以下の静水圧加圧成形型が提供される。
【0008】
[1] 円柱状の芯金と、前記芯金の一方の端部に着脱可能に配設された蓋部と、前記芯金の他方の端部に配設された底部と、前記芯金との間に空間を形成するように前記蓋部から前記底部に亘って配設された円筒状の成形用ゴム型とを備え、前記蓋部の前記芯金側を向く面と、前記底部の前記芯金側を向く面とが、いずれも前記芯金に直交する平面であり、前記芯金の側面部に接するリング内周部と、前記底部の前記芯金側を向く面に接するリング底面部と、前記リング内周部の前記リング底面部に対して反対側の端部から、前記リング底面部の最外周部分にかけて曲面状に凹む形状が全周に亘って連続的に形成されてなる凹面部とを有し、前記芯金の側面部を取り巻くようにして前記芯金の側面部と前記底部の前記芯金側を向く面とが交わる位置に配設された下部リング状部材を更に備え、前記芯金の側面部に接するリング内周部と、前記蓋部の前記芯金側を向く面に接するリング底面部と、前記リング内周部の前記リング底面部に対して反対側の端部から、前記リング底面部の最外周部分にかけて曲面状に凹む形状が全周に亘って連続的に形成されてなる凹面部とを有し、前記芯金の側面部を取り巻くようにして前記芯金の側面部と前記蓋部の前記芯金側を向く面とが交わる位置に配設された上部リング状部材を更に備える静水圧加圧成形型。
【0009】
[2] 前記芯金が、前記底部側の他方の端部に、中心軸に直交する断面における直径が他の部分より小さい底部側リング嵌合部を有し、前記下部リング状部材が、前記リング内周部が前記底部側リング嵌合部の側面部に当接するようにして、前記底部側リング嵌合部に嵌合され、前記芯金の側面部と前記下部リング状部材の凹面部とが滑らかに繋がる[1]に記載の静水圧加圧成形型。
【0010】
[3] 前記底部が、その前記芯金側を向く面上に、前記下部リング状部材が内部に嵌まる貫通孔が形成された円板状の底部側スペーサを有し、前記底部側スペーサの前記底部に対して反対側を向く面が、前記芯金に直交する平面であり、前記底部側スペーサの前記底部に対して反対側を向く面と、前記下部リング状部材の凹面部とが滑らかに繋がる[1]又は[2]に記載の静水圧加圧成形型。
【0011】
[4] 前記芯金が、前記蓋部側の一方の端部に、中心軸に直交する断面における直径が他の部分より小さい蓋部側リング嵌合部を有し、前記上部リング状部材が、前記リング内周部が前記蓋部側リング嵌合部の側面部に当接するようにして、前記蓋部側リング嵌合部に嵌合され、前記芯金の側面部と前記上部リング状部材の凹面部とが滑らかに繋がる[1]〜[3]のいずれかに記載の静水圧加圧成形型。
【0012】
[5] 前記蓋部が、その前記芯金側を向く面上に、前記上部リング状部材が内部に嵌まる貫通孔が形成された円板状の蓋部側スペーサを有し、前記蓋部側スペーサの前記蓋部に対して反対側を向く面が、前記芯金に直交する平面であり、前記蓋部側スペーサの前記蓋部に対して反対側を向く面と、前記上部リング状部材の凹面部とが滑らかに繋がる[1]〜[4]のいずれかに記載の静水圧加圧成形型。
【0013】
[6] 前記上部リング状部材が、リング内周部を含み中心軸方向に伸びる内周側分割体と、リング底面部を含み径方向外側に伸びる底面側分割体とから形成される[1]〜[5]のいずれかに記載の静水圧加圧成形型。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の碍管成形用の静水圧加圧成形型によれば、曲面状の凹みが全周に亘って連続的に形成されてなる凹面部を有する下部リング状部材が、芯金の側面部を取り巻くようにして芯金の側面部と底部の芯金側を向く面とが交わる位置に配設され、更に、上部リング状部材が蓋部側に配設されたため、形成される円筒状のセラミック成形体の端面の内周側が円弧状(中心軸方向に平行な断面において)になり、クラックの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。また、各図面において、同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
【0016】
本発明の碍管成形用の静水圧加圧成形型の一の実施形態は、図1に示すように、円柱状の芯金1と、芯金1の一方の端部1aに着脱可能に配設された蓋部2と、芯金1の他方の端部1bに配設された底部3と、芯金1との間に空間(成形用空間)V1を形成するように蓋部2から底部3に亘って配設された円筒状の成形用ゴム型4と、成形用ゴム型4の外側を覆うように蓋部2から底部3に亘って配設され、複数の貫通孔6が形成された円筒状の孔付外筒部5とを備えるものである。本実施形態の静水圧加圧成形型100は、更に、蓋部2の芯金1側を向く面(蓋部の内表面)2aと、底部3の芯金1側を向く面(底部の内表面)3aとが、いずれも芯金1に直交する平面であり、芯金1の側面部1cに接するリング内周部12と、底部3の芯金1側を向く面に接するリング底面部13と、リング内周部12のリング底面部13に対して反対側の端部(リング上端部)14から、リング底面部13の最外周部分15にかけて曲面状に凹む形状が全周に亘って連続的に形成されてなる凹面部16とを有し、芯金1の側面部1cを取り巻くようにして芯金1の側面部1cと底部3の芯金1側を向く面とが交わる位置に配設された下部リング状部材11を備え、更に、芯金1の側面部1cに接するリング内周部22と、蓋部2の芯金1側を向く面に接するリング底面部23と、リング内周部22のリング底面部23に対して反対側の端部(リング下端部)24から、リング底面部23の最外周部分25にかけて曲面状に凹む形状が全周に亘って連続的に形成されてなる凹面部26とを有し、芯金1の側面部1cを取り巻くようにして芯金1の側面部1cと蓋部2の芯金1側を向く面とが交わる位置に配設された上部リング状部材21を備えるものである。図1は、本発明の静水圧加圧成形型の一実施形態の、中心軸方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。
【0017】
本実施形態の静水圧加圧成形型100を用いて、円筒形状の碍管を成形する場合、まず、蓋部2を開け、上部リング状部材21をはずした状態でセラミック粉末を成形用空間V1に充填し、上部リング状部材21を嵌め込み、蓋部2を閉める。その後、静水圧加圧成形型100を圧力容器27内に入れ、圧力容器27内に加圧媒体を圧入し、成形用ゴム型4を中心軸方向に押圧することにより、セラミック粉末を圧縮成形して円筒形状の成形体を得ることができる。その後、加圧媒体を圧力容器27内から外部に取出し、成形用ゴム型4を復元させて、成形用空間V1内を常圧に戻し、円筒形状の成形体を取り出す。ここで、加圧媒体としては、防食及び潤滑性の添加剤の入った水等を使用することができる。また、加圧媒体を圧入するときの圧力は50〜200MPaであることが好ましい。50MPaより低いと、十分に圧縮成形できないことがあり、200MPaより高いと、装置に負担がかかりすぎることがある。加圧媒体は加圧ポンプによって供給される。尚、静水圧加圧成形型100を使用する場合は、通常、蓋部2を上側にして芯金1が鉛直方向を向いた状態で使用するため、本明細書における「上」「下」の記載は、この状態における上下を意味することとする。
【0018】
このように、円筒形状の成形体を形成する際に、高圧で成形された成形体は常圧に戻るときにスプリングバック現象により径方向及び垂直方向に膨張する。この際、円筒形状の成形体の端部の内周側が直角な断面形状であると、応力集中が生じクラックが発生する。このようなクラックは、特に環境問題等を考慮して有機バインダー等を用いずに、陶石、長石、粘土等の碍子原料を微粉砕したセラミック粉末のみを成形しようとする場合に顕著に現れる。これに対し、本実施形態の静水圧加圧成形型100を用いた場合、得られる円筒形状の成形体の端部の内周側が円弧状の断面形状となるため、応力集中が解消され、クラックの発生を防止することができる。本明細書において、単に「断面」又は「断面形状」というときは、特に説明がない限り、中心軸方向に平行な平面で切断した断面又は断面形状を意味する。また、蓋部2の芯金1側を向く面(蓋部の内表面)2aと、底部3の芯金1側を向く面(底部の内表面)3aとが、いずれも芯金1に直交する平面であるため、得られる円筒形状の成形体が、両端面が平行、且つ円筒形状の内周面と直交する形状となる。これにより、優れた碍管を形成することが可能となる。
【0019】
本実施形態の静水圧加圧成形型100においては、下部リング状部材11が、芯金1の側面部1cを取り巻くようにして芯金1の側面部1cと底部の内表面3aとが交わる位置に配設されている。下部リング状部材11は、芯金1の側面部1cに接するリング内周部12と、底部の内表面3aに接するリング底面部13と、リング上端部14から、リング底面部13の最外周部分15にかけて形成される曲面状の凹みが全周に亘って連続的に形成されてなる凹面部16とを有する。「全周に亘って連続的に形成される」というときは、全周に亘って帯状に繋がった状態であることを意味する。凹面部16の断面形状は、円弧状に凹んだ形状であることが好ましい。ここで「円弧状」というときは、円形の外周形状の一部、楕円形の外周形状の一部、又はこれらを組み合わせた形状を意味する。また、凹面部16の断面形状は、これらの形状以外でも、リング上端部14から、リング底面部13の最外周部分15にかけて滑らかに凹む曲線状であればよい。また、「リング内周部12のリング底面部13に対して反対側の端部(リング上端部)14から」というときは、「リング内周面における上端部分から」という意味に加えて、図2に示すようにリングの上端部分に厚さがある場合は、「リング内周面における上端部分からその厚さを隔てた位置から」という意味も含む。また、「リング底面部13の最外周部分15にかけて」というときは、図2に示すようにリングの底面部の最外周部分に厚さがある場合は、「リング底面部における最外周部分からその厚さを隔てた位置から」という意味も含む。従って、「リング上端部からリング外周部にかけて曲面状に凹む形状が全周に亘って連続的に形成される」ということもできる。
【0020】
下部リング状部材11のリング内周部12の中心軸方向の長さは、静水圧加圧成形型100の大きさに応じて適宜決定することができる。また、凹面部16の断面形状において、凹みの大きさは、例えば円弧状に凹む場合、その円弧の半径が、5〜20mmが好ましい。5mmより小さいと、応力緩和の程度が小さくなることがあり、20mmより大きいと端面の水平度が損なわれることがある。
【0021】
下部リング状部材11の材質は、普通鋼のような金属材質が好ましい。
【0022】
本実施形態の静水圧加圧成形型100においては、上部リング状部材21は、芯金1の側面部1cに接するリング内周部22と、蓋部2の芯金1側を向く面に接するリング底面部23と、リング内周部22のリング底面部23に対して反対側の端部(リング下端部)24から、リング底面部23の最外周部分25にかけて曲面状に凹む形状が全周に亘って連続的に形成された凹面部26とを有するものであり、芯金1の側面部1cを取り巻くようにして芯金1の側面部1cと蓋部2の芯金1側を向く面とが交わる位置に配設されている。本実施形態の静水圧加圧成形型100においては、上部リング状部材21の各条件は、上記、下部リング状部材11と同様であることが好ましい。
【0023】
本実施形態の静水圧加圧成形型100においては、芯金1の長さ及び断面の直径は、作製する円筒状の成形体の大きさに合わせて適宜決定することができ、例えば、500〜4000mmのものを好適に用いることができる。また、芯金1の材質は、普通鋼のような金属材質が好ましい。
【0024】
本実施形態の静水圧加圧成形型100においては、蓋部2及び底部3は、互いに対向する面(蓋部の内表面2aと底部の内表面3a)が平面上であり、円盤状であることが好ましい。また、蓋部2及び底部3は、図1に示すように、成形用ゴム型4及び孔付外筒部5を備えるため、円盤形状に対して段差が形成されるように加工されたものが好ましい。また、蓋部2及び底部3は、それぞれの中心が、芯金1の中心軸上に、位置するように配置されることが好ましい。蓋部2及び底部3の厚さ及び外径は、作製する円筒状の成形体の大きさに合わせて適宜決定することができる。蓋部2及び底部3の材質は、普通鋼のような金属材質が好ましい。
【0025】
本実施形態の静水圧加圧成形型100においては、成形用ゴム型4は、円筒状であり、芯金1との間に空間(成形用空間)V1を形成するように蓋部2から底部3に亘って配設される。成形用ゴム型4は、圧力媒体により外周側を押圧され、円筒内部の空間側に凹むように変形し、成形用空間V1を加圧する。これにより、成形用空間V1内に充填されたセラミック粉末が円筒状に成形される。成形用ゴム型4の長さは、図1に示すように、蓋部2及び底部3に対して固定できる長さであれば特に限定されない。また、成形用ゴム型4の外径は、作製する円筒状の成形体の大きさに合わせて適宜決定することができる。成形用ゴム型4の肉厚は、5〜30mmが好ましい。成形用ゴム型4を蓋部2及び底部3に取り付けるときには、固定バンドで締め付ける方法で取り付けることが好ましい。
【0026】
本実施形態の静水圧加圧成形型100は、外径250〜600mm、内径50〜300mm、高さ500〜4000mmの円筒状の碍管を製造するのに好適に用いることができる。
【0027】
本実施形態の静水圧加圧成形型100の製造方法は特に限定されず、公知の金属加工、ゴム成形方法及びこれらの組み立て方法により製造することができる。
【0028】
次に、本発明の静水圧加圧成形型の他の実施形態について説明する。
【0029】
本実施形態の静水圧加圧成形型200は、図2に示すように、芯金1が、底部側の他方の端部1bに、中心軸に直交する断面における直径が他の部分より小さい底部側リング嵌合部41を有し、下部リング状部材11が、リング内周部12が底部側リング嵌合部41の側面部(嵌合部の側面部)42に当接するようにして、底部側リング嵌合部41に嵌合され、芯金1の側面部1cと下部リング状部材11の凹面部16とが滑らかに繋がるように形成され、底部3が、その芯金側を向く面(底部の内表面)3a上に、下部リング状部材11が内部に嵌まる貫通孔(スペーサ貫通孔)17bが形成された円板状の底部側スペーサ17を有し、底部側スペーサ17の底部3に対して反対側を向く面(底部側スペーサ内表面)17aが、芯金1に直交する平面であり、底部側スペーサ内表面17aと、下部リング状部材11の凹面部16とが滑らかに繋がるように形成されている。更に、静水圧加圧成形型200は、図3に示すように、芯金1が、蓋部側の一方の端部1aに、中心軸に直交する断面における直径が他の部分より小さい蓋部側リング嵌合部51を有し、上部リング状部材21が、リング内周部12が蓋部側リング嵌合部51の側面部(嵌合部の側面部)52に当接するようにして、蓋部側リング嵌合部51に嵌合され、芯金1の側面部1cと上部リング状部材21の凹面部26とが滑らかに繋がるように形成され、蓋部2が、その芯金側を向く面(蓋部の内表面)2aが平面状であり、芯金1に直交するように形成されている。底部3が有する底部側スペーサ内表面17aが、芯金1に直交する平面であるため、底部の芯金側を向く面が芯金に直交する平面であることになる。図2及び図3においては、セラミック粉末を加圧成形して円筒形状の成形体31を形成し、成形用空間内を常圧に戻した状態の静水圧加圧成形型を示している。図2は、本発明の静水圧加圧成形型の他の実施形態の底部側を示し、中心軸方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。図3は、本発明の静水圧加圧成形型の他の実施形態の蓋部側を示し、中心軸方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。各図面において、同一の構成要素には、同一の符号を付している。
【0030】
このように、下部リング状部材11の凹面部16が、芯金1の側面部1c及び底部側スペーサ内表面17aに滑らかに繋がり、つまり段差や溝が形成されないことより、得られる円筒状の成形体の端部の内周側に段差が形成されず、クラックの発生を更に防止することが可能となる。また、同様に、上部リング状部材21の凹面部26が、芯金1の側面部1cに滑らかに繋がり、段差が形成されないことより、得られる円筒状の成形体の端部の内周側に段差が形成されず、クラックの発生を更に防止することが可能となる。このように、底部側及び蓋部側の両方にリング嵌合部を設けてリング状部材を嵌合させ、底部側及び蓋部側の両方にスペーサを設けてリング状部材をスペーサ貫通孔に嵌め込むようにすることが最も好ましいが、底部側又は蓋部側の一方だけに芯金のリング嵌合部を設けてもよいし、リング嵌合部又はスペーサの一方だけを備えても、クラックの防止効果はある。
【0031】
底部側スペーサ17は、厚さが2〜20mmであることが好ましい。20mmより厚いと、型重量が重くなる問題があり、2mmより薄いと、ハンドリングで変形することがある。また、底部側スペーサ17は、中央部分に貫通孔が形成された円盤状であることが好ましいが、貫通孔の直径は、それぞれ、下部リング状部材又は上部リング状部材が嵌合する大きさであることが好ましい。また、底部側スペーサ17は、円筒状の成形用ゴムに内接する大きさであることが好ましい。底部側スペーサ17は、普通鋼のような金属材質が好ましい。
【0032】
本実施形態の静水圧加圧成形型は、上述した、下部リング状部材及び上部リング状部材の嵌合構造以外の構成については、上記本発明の静水圧加圧成形型の一実施形態(静水圧加圧成形型100)と同様である。
【0033】
次に、本発明の静水圧加圧成形型の更に他の実施形態について説明する。
【0034】
本実施形態の静水圧加圧成形型300は、図4に示すように、上部リング状部材21が、リング内周部22を含み中心軸方向に伸びる内周側分割体61と、リング底面部23を含み径方向外側に伸びる底面側分割体62とから形成されることが好ましい。「径方向外側に伸びる」というときは、中心から外周に向かう方向に伸びることを意味する。本発明の静水圧加圧成形型を使用する場合、セラミック粉末を成形用空間内に充填した後に上部リング状部材を装着すると、セラミック粉末が芯金の上端付近まで充填されるため、上部リング状部材と芯金との間にセラミック粉末が入り込み、上部リング状部材が所望の位置、角度で配置し難くなることが考えられる。これに対し、本実施形態の静水圧加圧成形型300は、上部リング状部材21を、分割可能な内周側分割体61と底面側分割体62とから構成されるようにしたため、図5,6に示すように、内周側分割体61をセラミック粉末充填前に芯金1の蓋部側リング嵌合部51に嵌合させ、その後、セラミック粉末を充填し、その後、底面側分割体62を内周側分割体61に嵌め込んで上部リング状部材21として機能させることができる。このように、セラミック粉末を充填する前に、内周側分割体61を蓋部側リング嵌合部51に嵌合させることにより、上部リング状部材21のリング内周部22と蓋部側リング嵌合部51との間にセラミック粉末が入り込むことを防止することが可能となる。ここで、図4は、本発明の静水圧加圧成形型の更に他の実施形態の蓋部側を示し、中心軸方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。図4においては、セラミック粉末を加圧成形して円筒形状の成形体31を形成し、成形用空間内を常圧に戻した状態の静水圧加圧成形型を示している。図5は、本発明の静水圧加圧成形型の更に他の実施形態の使用状態を示し、中心軸方向に平行な平面で切断した蓋部側についての断面を示す模式図である。図6は、本発明の静水圧加圧成形型の更に他の実施形態の使用状態を示し、中心軸方向に平行な平面で切断した蓋部側についての断面を示す模式図である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
長さ2000mm×直径150mmの円柱状の芯金の一方の端部に、上部リング状部材を嵌合させて直径460mmの円盤状の蓋部を配置し、芯金の他方の端部に、下部リング状部材を嵌合させて同径の円盤状の底部を配置し、芯金との間に空間を形成して蓋部から底部に亘るように円筒状の成形用ゴム型を、固定バンドで締め付ける方法で蓋部及び底部に固定し、成形用ゴム型の外側を覆うように蓋部から底部に亘って円筒状の孔付外筒部を、蓋部及び底部に固定して、図1に示すような静水圧加圧成形型を作製した。蓋部は着脱可能にするため、芯金には固定せず、底部は、ボルト締めで芯金に固定した。また、蓋部の内表面及び底部の内表面が、いずれも芯金に直交する平面であった。芯金、蓋部、底部及び孔付外筒部の材質は、普通鋼とした。上部リング状部材の凹面部の半径Rは5mmとした。また、成形用ゴム型の材質は、天然ゴムとした。以下の方法で、碍管作製評価を行った。その結果、セラミック成形体にクラックは発生しなかった。
【0037】
(碍管作製評価)
静水圧加圧成形型の蓋部を開け、上部リング状部材をはずした状態で、陶石、長石、及び粘土を含有するセラミック粉末を成形用空間に充填し、上部リング状部材を嵌め込み、蓋部を閉める。その後、加圧用空間に加圧媒体を圧入し、成形用ゴム型を中心軸方向に押圧することにより、セラミック粉末を圧縮成形して円筒形状の成形体を得る。その後、加圧媒体を加圧用空間から外部に取出し、成形用ゴム型を復元させて、成形用空間内を常圧に戻し、円筒形状のセラミック成形体を取り出す。加圧媒体としては水を用いる。また、加圧媒体を加圧用空間に圧入するときの圧力は、100MPaとする。
【0038】
(実施例2)
上部リング状部材及び下部リング状部材の凹面部の半径Rを10mmとした以外は、実施例1と同様にして静水圧加圧成形型を作製した。実施例1の場合と同様にして、碍管作製評価を行った。その結果、セラミック成形体にクラックは発生しなかった。
【0039】
(実施例3)
上部リング状部材及び下部リング状部材の凹面部の半径Rを15mmとした以外は、実施例1と同様にして静水圧加圧成形型を作製した。実施例1の場合と同様にして、碍管作製評価を行った。その結果、セラミック成形体にクラックは発生しなかった。
【0040】
(実施例4)
上部リング状部材及び下部リング状部材の凹面部の半径Rを20mmとした以外は、実施例1と同様にして静水圧加圧成形型を作製した。実施例1の場合と同様にして、碍管作製評価を行った。その結果、セラミック成形体にクラックは発生しなかった。
【0041】
(比較例1)
長さ2000mm×直径150mmの円柱状の芯金71の一方の端部71aに、直径460mmの円盤状の蓋部72を配置し、芯金71の他方の端部71bに同径の円盤状の底部73を配置し、芯金71との間に空間V71を形成して蓋部72から底部73に亘るように円筒状の成形用ゴム型74を、固定バンドで締め付ける方法で蓋部72及び底部73に固定し、成形用ゴム型74の外側を覆うように蓋部72から底部73に亘って円筒状の孔付外筒部75を、蓋部72及び底部73に固定して、図7に示すような静水圧加圧成形型400を作製した。蓋部は着脱可能にするため、芯金には固定せず、底部は、ボルト締めで芯金に固定した。また、蓋部の内表面及び底部の内表面が、いずれも芯金に直交する平面であった。芯金、蓋部、底部及び孔付外筒部の材質は、普通鋼とした。また、成形用ゴム型の材質は、天然ゴムとした。得られた静水圧加圧成形型について、実施例1の場合と同様に、碍管作製評価を行った。その結果、セラミック成形体の端面の内径側にクラックが発生した。図7は、比較例1の静水圧加圧成形型の、中心軸方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
碍管のような円筒形状のセラミック成形体を、端面のクラック発生を防止しながら加圧成形するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の静水圧加圧成形型の一実施形態の、中心軸方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。
【図2】本発明の静水圧加圧成形型の他の実施形態の底部側を示し、中心軸方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。
【図3】本発明の静水圧加圧成形型の他の実施形態の蓋部側を示し、中心軸方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。
【図4】本発明の静水圧加圧成形型の更に他の実施形態の蓋部側を示し、中心軸方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。
【図5】本発明の静水圧加圧成形型の更に他の実施形態の使用状態を示し、中心軸方向に平行な平面で切断した蓋部側についての断面を示す模式図である。
【図6】本発明の静水圧加圧成形型の更に他の実施形態の使用状態を示し、中心軸方向に平行な平面で切断した蓋部側についての断面を示す模式図である。
【図7】比較例1の静水圧加圧成形型の、中心軸方向に平行な平面で切断した断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1,71:芯金、1a,71a:一方の端部、1b,71b:他方の端部、1c:側面部、2,72:蓋部、2a:蓋部の内表面、3,73:底部、3a:底部の内表面、4,74:成形用ゴム型、5,75:孔付外筒部、6:貫通孔、11:下部リング状部材、12:リング内周部、13:リング底面部、14:リング上端部、15:最外周部分、16:凹面部、17:底部側スペーサ、17a:底部側スペーサ内表面、17b:スペーサ貫通孔、21:上部リング状部材、22:リング内周部、23:リング底面部、24:リング下端部、25:最外周部分、26:凹面部、27:圧力容器、31:成形体、41:底部側リング嵌合部、42:嵌合部の側面部、51:蓋部側リング嵌合部、52:嵌合部の側面部、61:内周側分割体、62:底面部分割体、100,200,300,400:静水圧加圧成形型、V1:成形用空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の芯金と、前記芯金の一方の端部に着脱可能に配設された蓋部と、前記芯金の他方の端部に配設された底部と、前記芯金との間に空間を形成するように前記蓋部から前記底部に亘って配設された円筒状の成形用ゴム型とを備え、
前記蓋部の前記芯金側を向く面と、前記底部の前記芯金側を向く面とが、いずれも前記芯金に直交する平面であり、
前記芯金の側面部に接するリング内周部と、前記底部の前記芯金側を向く面に接するリング底面部と、前記リング内周部の前記リング底面部に対して反対側の端部から、前記リング底面部の最外周部分にかけて曲面状に凹む形状が全周に亘って連続的に形成されてなる凹面部とを有し、前記芯金の側面部を取り巻くようにして前記芯金の側面部と前記底部の前記芯金側を向く面とが交わる位置に配設された下部リング状部材を更に備え、
前記芯金の側面部に接するリング内周部と、前記蓋部の前記芯金側を向く面に接するリング底面部と、前記リング内周部の前記リング底面部に対して反対側の端部から、前記リング底面部の最外周部分にかけて曲面状に凹む形状が全周に亘って連続的に形成されてなる凹面部とを有し、前記芯金の側面部を取り巻くようにして前記芯金の側面部と前記蓋部の前記芯金側を向く面とが交わる位置に配設された上部リング状部材を更に備える碍管成形用の静水圧加圧成形型。
【請求項2】
前記芯金が、前記底部側の他方の端部に、中心軸に直交する断面における直径が他の部分より小さい底部側リング嵌合部を有し、
前記下部リング状部材が、前記リング内周部が前記底部側リング嵌合部の側面部に当接するようにして、前記底部側リング嵌合部に嵌合され、
前記芯金の側面部と前記下部リング状部材の凹面部とが滑らかに繋がる請求項1に記載の静水圧加圧成形型。
【請求項3】
前記底部が、その前記芯金側を向く面上に、前記下部リング状部材が内部に嵌まる貫通孔が形成された円板状の底部側スペーサを有し、
前記底部側スペーサの前記底部に対して反対側を向く面が、前記芯金に直交する平面であり、
前記底部側スペーサの前記底部に対して反対側を向く面と、前記下部リング状部材の凹面部とが滑らかに繋がる請求項1又は2に記載の静水圧加圧成形型。
【請求項4】
前記芯金が、前記蓋部側の一方の端部に、中心軸に直交する断面における直径が他の部分より小さい蓋部側リング嵌合部を有し、
前記上部リング状部材が、前記リング内周部が前記蓋部側リング嵌合部の側面部に当接するようにして、前記蓋部側リング嵌合部に嵌合され、
前記芯金の側面部と前記上部リング状部材の凹面部とが滑らかに繋がる請求項1〜3のいずれかに記載の静水圧加圧成形型。
【請求項5】
前記蓋部が、その前記芯金側を向く面上に、前記上部リング状部材が内部に嵌まる貫通孔が形成された円板状の蓋部側スペーサを有し、
前記蓋部側スペーサの前記蓋部に対して反対側を向く面が、前記芯金に直交する平面であり、
前記蓋部側スペーサの前記蓋部に対して反対側を向く面と、前記上部リング状部材の凹面部とが滑らかに繋がる請求項1〜4のいずれかに記載の静水圧加圧成形型。
【請求項6】
前記上部リング状部材が、リング内周部を含み中心軸方向に伸びる内周側分割体と、リング底面部を含み径方向外側に伸びる底面側分割体とから形成される請求項1〜5のいずれかに記載の静水圧加圧成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−241448(P2009−241448A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91499(P2008−91499)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】