説明

静置型ハウスダスト除去シートおよびハウスダスト除去用キット

【課題】より簡単に、労力をかけることなく静置するだけでハウスダストを除去することができるシートおよびキットを提供することである。
【解決手段】被設置箇所に静置し、所定時間後に前記被設置箇所から取り除くことで、付着した前記被設置箇所のハウスダストを除去するためのシートであって、表面および/または内部に界面活性剤を含有した不織布からなる静置型ハウスダスト除去シート、ならびに界面活性剤を含む薬液および不織布からなるハウスダスト除去用キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静置するだけで、床等に散在するチリやホコリ、花粉、繊維クズ、ダニの死骸等のハウスダストを除去することができるシートおよびハウスダスト除去用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
床面に散在するチリやホコリを除去するための清掃部材として清掃ワイパーやシートが用いられている。この清掃部材には繊維素材が用いられている。清掃部材で床面を拭くとその繊維間の空隙にホコリを捕捉することができ、これにより清掃するというものである(例えば、特許文献1参照)。
また、ダニ等の屋内害虫を防除するために防虫シートが用いられている。この防虫シートは繊維素材や紙等の基材に防除剤や殺虫剤等の薬剤を担持させてできており、カーペットや畳等の敷物の下に設置して用いるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。そして薬剤が持続する間、害虫を防除することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平11−253382号公報(第1−6頁)
【特許文献2】特開2002−20208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、清掃ワイパーやシートを用いてチリやホコリを除去するには、床面を繰り返し拭く作業が必要である。しかも一度に拭き取れる面積が狭く、意外に労力がかかるものであった。
また、敷物の下に上記防虫シートを設置して用いる際、敷物の上は掃除機などで清掃するが、敷物の下側はシートの交換時期まで放置しておく場合が多い。そのためダニの死骸や糞が溜まってハウスダストの原因となる。そして使用後に防虫シートを取り除く際、被設置箇所に溜まったハウスダストを除去するためにさらなる清掃が必要であるとともに、ハウスダストが舞い上がる等の問題がある。しかし、かかる箇所のハウスダストを除去するための手段は十分に検討されていない。
【0005】
そこで本発明の目的は、より簡単に、労力をかけることなく静置するだけでハウスダストを除去することができるシートおよびキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の(1)〜(4)からなるシートおよびキットによって所期の目的を達成することを見出した。
(1)被設置箇所に静置し、所定時間後に前記被設置箇所から取り除くことで、付着した前記被設置箇所のハウスダストを除去するためのシートであって、表面および/または内部に界面活性剤を含有した不織布からなる静置型ハウスダスト除去シート。
(2)前記界面活性剤が第四級アンモニウム塩である上記(1)記載の静置型ハウスダスト除去シート。
(3)界面活性剤を含む薬液および不織布からなるハウスダスト除去用キット。
(4)前記界面活性剤が第四級アンモニウム塩である上記(3)記載のハウスダスト除去用キット。
【発明の効果】
【0007】
本発明の静置型ハウスダスト除去シートおよびハウスダスト除去用キットにより、簡単に、労力をかけることなく被設置箇所のハウスダストを除去することができる。さらに界面活性剤として第四級アンモニウム塩を用いることで、屋内塵性ダニやチャタテムシに対する防除効果を付与することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の静置型ハウスダスト除去シートおよびハウスダスト除去用キットから調製されたシート(以下単に「シート」とも言う)は、清掃用ワイパーや清掃用シートのようにホコリ等の散在する床面を繰り返し拭く必要がなく、静置するだけで、被設置箇所に散在するホコリ等を除去することができる。
【0009】
本発明に用いる界面活性剤としては、所期の効果を奏する限り限定されるものではない。例えば、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、POEアルキルアミン、POEアルキルアミド、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルホスフェート等のアニオン系界面活性剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型、アルキルアラニン型等の両性系界面活性剤等を用いることができる。これらは単独または2種以上を混合して用いてもよい。中でも、屋内塵性ダニやチャタテムシに対する防除効果を付与することもできることから、第四級アンモニウム塩を用いることが好ましい。第四級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(各アルキル基の炭素数12〜15)、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(各アルキル基の炭素数14〜18)、塩化ジココイルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチル型が好ましい。
【0010】
界面活性剤はそのまま不織布に処理してもよいが、水、アルコール、有機溶剤等の液体担体を用いて処理しやすいように調製してもよい。また界面活性剤を液体担体に混合した調製品(例えば、商品名「パイオニンB−2211」(竹本油脂社製))を用いてもよい。
【0011】
本発明に係るシート中の界面活性剤含有量は、不織布1m当たり0.1〜5g、好ましくは0.3〜3gとなるように処理すればよい。
【0012】
本発明に用いる不織布としては、限定されるものではない。例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、アクリル、綿等の素材を用いて、例えば、湿式、乾燥パルプ、乾式、スパンボンド、サーマルボンド、スパンレース法、メルトブロー、フラッシュ紡糸、トウ開織式により製造された各不織布を用いることができる。中でも、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)を素材とし、スパンレース法(ウォータージェット法)により製造されたものがよい。また目付量としては、10〜500g/m、好ましくは、15〜300g/mがよい。
【0013】
本発明において、界面活性剤に加え、必要に応じて殺虫成分、共力剤、忌避剤、酸化防止剤、分解防止剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤、香料、着色料等の添加剤を適宜併用してもよい。
【0014】
殺虫成分としては、例えば、天然ピレトリン、プラレトリン、イミプロトリン、フタルスリン、アレスリン、トランスフルトリン、レスメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、d,d−T99−シフェノトリン、ペルメトリン、サイパーメスリン、エトフェンプロックス、シフルスリン、デルタメスリン、ビフェントリン、フェンバレレート、フェンプロパスリン、シラフルオフェン、メトフルトリン、プロフルトリン、S−1864(住友化学工業社製)などのピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリホス、ジクロルボス等の有機リン系化合物、カルバリル、プロポクスル、メソミル、チオジカルブ等のカーバメート系化合物、メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物、アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物、ジノテフラン等のニコチノイド系化合物、メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御化合物、ホウ酸、クロルフェナピル、フィプロニル、S−1991(住友化学工業社製)、ベンジルアルコール、ハッカ油等の殺虫・殺ダニ性精油類、これらの異性体、誘導体等が挙げられる。
【0015】
共力剤としては、例えば、ピペロニルブトキサイド、サイネピリン500、サイネピリン222、S−421、MGK−264等が挙げられる。
【0016】
殺菌剤、防黴剤としては、例えば、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N,N−ジメチル−N´−フェニル−N´−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2,4,4´−トリクロロ−2´−ヒドロキシジフェニルエーテル、O−フェニルフェノール、P−クロロ−m−キシレノール、4−クロロフェニル−3´−ヨードプロパルギル、ホルマール、銀担持ゼオライト等が挙げられる。
【0017】
消臭剤としては、例えば、活性炭、木炭、酸添着炭、銀担持ゼオライト、メチル化サイクロデキストリン、ラウリルメタアクリレート、ポリフェノール、カテキン、タンニン、柿抽出物、茶抽出物等が挙げられる。
【0018】
上記界面活性剤および添加剤を不織布に処理する方法としては、特に制限はなく、例えば噴霧、塗布、含浸、滴下、浸漬、グラビア印刷等の操作により行うことができる。そしてその後、風乾等によって乾燥させればよい。
【0019】
以下の表1に、本発明に係る静置型ハウスダスト除去シートの好ましい処方例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではなく、明細書に記載された各成分を適宜選択して用いることができる。例えば、第四級アンモニウム塩以外の上述した界面活性剤でも同様に用いることができる。
【0020】
【表1】

【0021】
また、上記界面活性剤を含んだ薬液と上記不織布からなるキットとすれば、使用者が必要な時に不織布に薬液を処理して静置型ハウスダスト除去シートと同様のシートを調製することができる。さらに、界面活性剤の保存性も向上させることができる。なお、薬液には、上記添加剤および適当な液体担体を任意に含んでよい。ここで、薬液をエアゾール剤や加圧型ハンドスプレー剤とすると、不織布に対し噴霧すればよいので処理が容易となり好ましい。本発明は、このようなハウスダスト除去用キットにも関するものである。
【0022】
本発明に係る静置型ハウスダスト除去シートを用いる場合は、被設置箇所にシートを広げ、静置する。また、本発明に係るハウスダスト除去用キットを用いる場合は、被設置箇所に不織布を広げて静置し、薬液を処理した後、乾燥させ、シートを調製する。さらに、シートとハウスダストがよく接触するように、シートの上から押し付けたり物を置いてもよい。シートと接触したハウスダストは被設置箇所からシート側に捕捉されるため、被設置箇所からシートを取り除くとハウスダストも一緒に除去することが出来る。
【0023】
上記被設置箇所は特に限定されるものではなく、ハウスダストを除去したい箇所にシートを静置すればよい。静置期間は、最大、薬剤の持続する限り可能である。従って、剥き出しのフローリング上だけでなく、例えばカーペットや畳の下面、押入れやクローゼットの床面、机上面などに、その期間中は敷いておいてもよい。さらに本シートには不織布を用いているため、様々な形状に追従させることが出来る。したがって平面に限らず、凹凸のある場所もしくは物品等にかぶせて用いてもよい。また、使用場所は用いる薬剤に応じてもよい。シートの大きさに特に制限はなく、被設置箇所の面積に合わせて設定すればよい。シートを切断したり、折り曲げて用いてもよい。
【実施例】
【0024】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
10cm×15cmの不織布(PXE0045MD、カナエ社製)に第四級アンモニウム塩(商品名「パイオニンB−2211」、竹本油脂社製)を滴下、含浸した後風乾させ、含有量が1g/mとなるように処理したシートを製造した。PXE0045MDは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を素材とし、スパンレース法により製造された、厚さ1mm、目付量45g/mの不織布である。
【0026】
まず机上にハウスダスト(ビール酵母粉末)を0.1g散在させた。その上に上記シートを載せ、さらにシートの全面上に1kgの重しを載せて静置した。その後に摩擦が生じないように静かに重しを取り去った。そしてシートに付着したハウスダストの重量より除去率を求めた。試験は3回繰り返して行いその平均値を除去率とした。比較例として、上記の不織布のみを用いて同じ試験を行った。
【0027】
その結果、ハウスダストの除去率は、本発明のシートでは56%、比較例のシートでは22%であった。不織布のみでは効果はさほど得られなかったが界面活性剤を処理したシートとしたことで、ハウスダストの除去率は顕著に向上した。このことから本発明のシートは静置するだけで、ハウスダストを効率的に除去できることが確認された。
【0028】
実施例2
以下の素材、目付量、厚さから選択した各種の不織布を用いて、実施例1と同じ条件で試験を行った。その結果、いずれの不織布においても界面活性剤を処理したシートとしたことで、ハウスダストの除去率が向上した。結果の幾つかを具体的に表2に示す。
素材:ポリプロピレン(PP)、アクリル、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン(PET/PE)、レーヨン、ナイロン、アラミド、コットン
目付量:20〜400g/m
厚さ:0.15〜4mm
【0029】
【表2】

【0030】
実施例3
実施例1において、第四級アンモニウム塩を表3記載の界面活性剤に替えて同じ条件で試験を行った。但し不織布のサイズは8cm×8cmを用いた。
試験の結果、いずれの界面活性剤においてもハウスダストの除去率が向上した。
【0031】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被設置箇所に静置し、所定時間後に前記被設置箇所から取り除くことで、付着した前記被設置箇所のハウスダストを除去するためのシートであって、表面および/または内部に界面活性剤を含有した不織布からなる静置型ハウスダスト除去シート。
【請求項2】
前記界面活性剤が第四級アンモニウム塩である請求項1記載の静置型ハウスダスト除去シート。
【請求項3】
界面活性剤を含む薬液および不織布からなるハウスダスト除去用キット。
【請求項4】
前記界面活性剤が第四級アンモニウム塩である請求項3記載のハウスダスト除去用キット。

【公開番号】特開2006−158771(P2006−158771A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356810(P2004−356810)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】