説明

静翼及び蒸気タービン

【課題】簡素な構成で自励振動抑制すると共に、その減衰機能を容易に確保することができ、しかも、汎用性を向上することができる静翼及び蒸気タービンを提供する。
【解決手段】本発明は、腹側部材24と背側部材25との各裏面24c,25aによって空洞部30が画成され、空洞部30に配置された板状バネ部材32と、を備え、板状バネ部材32は、一方の縁部に設けられて一方の裏面24cに固定される固定部32aと、固定部32aから他方の縁部に連続する部分に設けられて他方の裏面25aに沿って延びると共に他方の裏面25aを摺接可能に押圧する押圧部32bと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンに用いられる静翼、及びこの静翼を備えた蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量化を図るために、内部を中空構造とした静翼を備えた蒸気タービンが知られている。
また、静翼の性能向上を図るために、静翼の内部と外部とを連通させるスリットを設け、静翼の表面に付着した水滴を内部に取り込んで除去する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように内部に取り込まれた水は、静翼と結合されているシュラウドに向けて流されて排出される。
【0003】
このような蒸気タービンの静翼には、その外装形状(幾何学的形状)や質量、タービン作動時における静翼周囲の環境(例えば、静翼を通過する蒸気の流速や質量等)に応じて、自励振動(フラッタ)が生じることがある。特に、静翼の質量が小さい場合や、翼高さが長い場合に、自励振動が生じ易くなってしまうことが知られている。
さらに、内部を中空構造とした静翼(以下、「中空静翼」と称する)は、内部を中実構造とした静翼(以下、「中実静翼」と称する)に比べて軽量なものとなる。よって、中空静翼には、中実静翼に比べて自励振動が生じ易いことから、これを抑制する必要が生じる。
【0004】
このような自励振動を抑制するため、中空静翼の内部に減衰機構(ダンパ)を設けることで、静翼に生じた振動を減衰させる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
図7は、このような減衰構造を設けた静翼の一例を示し、図7(A)は静翼の要部の横断面図、図7(B)は静翼の要部の側面図である。
【0006】
図において、静翼1は、主に腹側を構成する腹側部材2と、主に背側を構成する背側部材3とを有している。また、腹側部材2と背側部材3とは、それぞれ金属製の板状部材を湾曲することで構成されており、その両縁付近が互いに溶接により接合されている。腹側部材2は、表面側が静翼1の腹面4をとなるように反りが形成されている。また、背側部材3は、表面側が静翼1の背面5となるように反りが形成されている。さらに、腹側部材2と背側部材3とは、その反りを異ならせることによって内部を中空構造とし、その内部に空洞部6を形成している。
【0007】
空洞部6には、その中央部分を基部7aとして腹側部材2の裏面2aに溶接固定された弓形板バネ7が設けられている。また、空洞部6は、例えば、腹側部材2に形成されたスリット2b,2cによって、静翼1の内部(空洞部6)と外部とが連通され、静翼1の表面に付着した水滴を内部に取り込んで除去するようにしている。
【0008】
弓形板バネ7は、基部7aから端部7b,7cとの間に、腹側部材2から背側部材3に向う傾斜接続部7d,7eを形成し、端部7b,7cを背側部材3の裏面3cに当接させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−336503号公報
【特許文献2】特開2008−133825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述のような弓形板バネ7を用いた静翼1にあっては、弓形板バネ7の中央部分を基部7aとし、その両端を背側部材3の裏面3cに当接させていることから、そのバネ圧は静翼1の蒸気入口側(矢印Qで蒸気の流入方向を示す)と出口側の両方に加わるように設定されている。なお、蒸気入口側は静翼1の整流方向上流側、蒸気出口側は静翼1の整流方向下流側となる。
【0011】
一方、蒸気タービンの運転時の静翼1は、蒸気出口側が捩れる振動モードとなるため、ダンパ機能はできるだけ蒸気出口側に集中することが望ましい。
【0012】
しかしながら、上述した弓形板バネ7にあっては、静翼1の蒸気入口側と出口側の双方に略同じ面積で裏面3cに当接していることから、蒸気出口側に必要なだけのダンパ機能を十分に付与することができず、静翼1全体として十分な減衰性能を得ることができないという問題が生じていた。また、蒸気入口側と出口側との減衰機能がアンバランスとなると、不十分な減衰に伴う振動の発生によって両端7b,7cと裏面3cとの当接状態が点接触や線接触となり易く、当接面積が確保されずにさらなる振動の発生要因となるという問題が生じていた。
【0013】
しかも、弓形板バネ7にあっては、両端7b,7cの二ヶ所を裏面3cに当接させていることから、板バネ全体が大型化するばかりでなく、中央部分の基部7aを含む三ヶ所を裏面2a,3aに面接触させる必要が生じることと相俟って、静翼1の外装形状や質量ごとにバネ圧や形状等を変更する専用品となってしまい、共用化が困難で汎用性に劣るという問題も生じていた。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、簡素な構成で自励振動抑制すると共に、その減衰機能を容易に確保することができ、しかも、汎用性を向上させることができる静翼及び蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る静翼は、腹側部と背側部との各裏面によって空洞部が画成された静翼本体と、前記空洞部に配置された板状バネ部材とを備え、前記板状バネ部材が、前記腹側部と前記背側部との各裏面のうち一方の前記裏面に固定される固定部と、前記固定部における前記静翼本体の後縁側に接続され、他方の前記裏面に沿って延びると共に該他方の前記裏面を摺接可能に押圧する押圧部とを有していることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、簡素な構成で自励振動抑制すると共に、その減衰機能を容易に確保することができ、しかも、汎用性を向上することができる。
【0017】
また、本発明に係る静翼においては、前記板状バネ部材が、前記固定部と前記押圧部とを接続するように、一方の前記裏面から他方の前記裏面に向かうに従って漸次前記後縁側に延在する接続部を有していることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、板状バネ部材のバネ圧を容易に設定することができる。
【0019】
さらに、本発明に係る静翼において、前記押圧部は、他方の前記裏面の前記後縁側の端部付近に至るまで該裏面に添って延びていることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、静翼本体の下流側の端部、即ち、静翼本体の整流方向下流側の自動振動抑制効果を容易に確保することができる。
【0021】
また、本発明の蒸気タービンは、上記静翼が、ロータ軸の周方向に所定の間隔で配列されていることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、簡素な構成で自励振動抑制すると共に、その減衰機能を容易に確保することができ、しかも、汎用性を向上することができる。
【0023】
さらに、本発明に係る蒸気タービンにおいては、前記静翼本体に、表面側から前記空洞部の内部へと水滴を案内するスリットが形成されていることを特徴とする。
【0024】
このような構成によれば、静翼本体の表面に付着した水滴を空洞部に取り込んで除去することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の静翼及び蒸気タービンによれば、簡素な構成で自励振動抑制すると共に、その減衰機能を容易に確保することができ、しかも、汎用性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る静翼を搭載した蒸気タービンを示し、蒸気タービンの概略構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る蒸気タービンを示し、蒸気タービンを低圧最終段側から見た要部の外観斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る静翼を示し、静翼を背側から見た拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る静翼を示し、(A)は静翼の翼形を示す断面図、(B)は板状バネ部材の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る変形例1の静翼を示し、(A)は静翼の翼形を示す断面図、(B)は板状バネ部材の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る変形例2の静翼を示し、静翼の翼形を示す断面図である。
【図7】従来の静翼を示し、(A)は静翼の翼形を示す断面図、(B)は静翼の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の一実施形態に係る静翼及び蒸気タービンについて、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明の静翼及び蒸気タービンにおける好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0028】
図1は本発明の一実施形態に係る静翼を搭載した蒸気タービンの概略構成を模式的に示す説明図、図2は本発明の一実施形態を示す蒸気タービンを低圧最終段側から見た要部の外観斜視図、図3は本発明の一実施形態を示す静翼を背側から見た拡大図、図4は本発明の静翼を示し、図4(A)は静翼の翼形を示す断面図、図4(B)は板状バネ部材の断面図である。
【0029】
図1に示すように、本実施例に係る蒸気タービン10は、例えば、原子力発電プラント等で用いられる低圧蒸気タービンであり、高圧の蒸気を発生する蒸気発生器11と、蒸気発生器11から高圧の蒸気が直接供給される高圧蒸気タービン12と、蒸気発生器11及び高圧蒸気タービン12からの蒸気の湿分を分離して加熱する湿分分離加熱器13と、湿分分離加熱器13から低圧の蒸気が供給される蒸気タービン10が設けられている。以降、本実施の形態では、蒸気タービン10として湿分分離加熱器13から蒸気の供給を受ける低圧蒸気タービンについて説明する。
【0030】
蒸気タービン10において、湿分分離加熱器13からの蒸気は、蒸気入口14に供給されて該蒸気タービン10に形成されている蒸気通路15をロータ軸16の軸方向(図中、矢印Aで示す)に沿って流通する。蒸気通路15には、動翼17と静翼18が交互に配置されており、蒸気タービン10は、静翼18での圧力降下によって運動エネルギを生じさせ、これを動翼17によって回転トルクに変換している。これにより、動翼17を結合したロータ軸16は、動翼17で変換した回転トルクによって回転する。
【0031】
静翼18は、図1〜図3に示すように、ロータ軸16の径方向(図中、矢印Rで示す)の内側端18aがシュラウド19に、径方向の外側端18bが翼根リング20に、それぞれ溶接により結合されている(図3に溶接部を符号21で示す)。
【0032】
動翼17と静翼18とは、図1に示すように、一対となって一つの段22が必要に応じた数だけ配置されている。また、段18は、蒸気通路15を上流側から下流側に向かうに従って、動翼17及び静翼18の翼高さが長くなるよう構成されている。蒸気通路15の最も下流側にある段22を「低圧最終段」という。低圧最終段22の静翼18は、上流側の段22にある静翼18に比べて、特に翼高さが長いものとなっている。低圧最終段22において、静翼18は、図2及び図3に示すように、ロータ軸16の周方向(図中、矢印Qで示す)に所定の間隔で複数配列されており、翼群23を形成している。
【0033】
静翼18は、図4(A)に示すように、主に腹側を構成する腹側部材24と、主に背側を構成する背側部材25と、を備えている。腹側部材24と背側部材25とは、それぞれ金属製の板状部材を、互いに異なる反り方で湾曲させたもので、それぞれ金属製の板状部材を互いに異なる反り方で湾曲させ、その両縁付近を縁部に沿って互いに溶接により接合することで、その静翼本体としての外装形状が形成される。なお、本実施の形態においては、蒸気の入口側に位置する前縁部分(矢印Pで蒸気の流入方向を示す)はTIG溶接(符合26)、蒸気の出口側に位置する後縁部分はレーザ溶接(符合27)によって接合されている。腹側部材24は、表面側が静翼18の腹面28をとなるように反りが形成されている。また、背側部材25は、表面側が静翼18の背面29となるように反りが形成されている。さらに、腹側部材24と背側部材25とは、その反りの曲率を異ならせることによって内部を中空構造として空洞部30を形成している。すなわち、腹側部材24の裏面24cと背側部材25の裏面25aとの間には、翼高さ方向(ロータ軸16の径方向)に沿って延びる空洞部30が形成される。また、静翼18の内部には、腹側部材24の裏面24cと背側部材25の裏面25aとにより、翼内面が形成されることになる。なお、蒸気入口側は静翼18の整流方向上流側、蒸気出口側は静翼18の整流方向下流側となる。
【0034】
腹側部材24と背側部材25とは、略同一の長さにわたって翼高さ方向に沿って延びている。また、腹側部材24には、前縁側のスリット24aと後縁側のスリット24bとが径方向Rに沿って複数形成されている。
なお、「翼高さ方向」とは、図4(A)に示す翼形断面(ロータ軸16の軸線と平行な横断面)に垂直な方向であり、静翼18の翼型中心線Cに直交する方向である。また、スリット24a,24bと略同様のスリットを背側部材25にも形成することができる。さらに、スリット24a,24bの形状や長さ等は任意である。
【0035】
このように、本実施例の静翼18においては、腹側部材24が静翼18の空洞部30よりも腹側を構成し、背側部材25が静翼18の空洞部30よりも背側を構成している。
【0036】
静翼18の内部に形成された空洞部30は、腹側部材24に形成されているスリット24a,24bを介して、静翼18の外部と連通している。空洞部30とスリット24a,24bが形成された静翼18において、腹面28に付着している水は、例えば、蒸気圧力を受けて腹面28を移動し、図4(A)に矢印Wで示すように、スリット24a,24bから空洞部30に流入可能となっている。
【0037】
空洞部30に取り込まれた水は、シュラウド19に向けて流れる。このシュラウド19には、図3に示すように、静翼18の空洞部30と連通する開口31が形成されており、空洞部30の水は、矢印Eで示すように、この開口31から排出可能となっている。
【0038】
このように内部に空洞部30を有する中空の静翼18は、内部に空洞部30を有しない中実静翼に比べて固有振動数が比較的小さなものとなっており、蒸気タービン10の作動時において、自励振動(フラッタ)が生じ易くなっている。自励振動が生じると、静翼18には弾性変形による撓みや捩れが生じ、静翼18の腹側部材24と背側部材25との間には、相対的な位置変動が生じる。
【0039】
この相対的な位置変動を減衰するため、本実施の形態に係る静翼18においては、空洞部30から、翼内面(裏面24c,裏面25a)の一方に摺接可能な板状バネ部材32が設けられており、静翼18が弾性変形すると、この板状バネ部材32は、翼内面(裏面24c,裏面25a)の一方との間に摩擦が生じるようにしている。
【0040】
具体的には、板状バネ部材32は、翼高さ方向に沿って長さ(以下、板状バネ部材32に関して「長さ方向」と称する)を有し、翼形中心線Cに沿って幅(以下、板状バネ部材32に関して「幅方向」と称する)を有する板金部材のプレス成形品から形成されている。また、板状バネ部材32は、長さ方向に沿う縁部のうち、前縁(蒸気の入口側)側を固定部32aとして害長さ方向に沿って溶接することによって腹側部材24の裏面24cに固定されている。さらに、板状バネ部材32は、幅方向の中央付近から後縁(蒸気の出口側)にわたる範囲を押圧部32bとして背側部材25の裏面25aを摺接可能に押圧している。また、板状バネ部材32の固定部32aと押圧部32bとの間の部分は、裏面24cと裏面25aとにわたるように傾斜して固定部32aと押圧部32bとを接続する接続部32cを構成しており、この接続部32cの傾斜角度(接続部32cと押圧部32bとの境界部分の角部分の角度を含む)によって、図4(B)に示すように、押圧部32bにバネ性を付与している。したがって、所定の長さ方向及び幅方向において裏面24cに固定部32aを密着させると共に、所定の長さ方向及び幅方向において裏面25aに押圧部32bを摺接可能な密着状態で押圧している。また、押圧部32bは裏面25aに対して摺接可能となっている。しかも、本実施の形態においては、押圧部32bは、翼型中心線Cの中央よりも前縁側から後縁付近にわたる範囲で裏面25aを押圧している。これにより、静翼18の蒸気の出口側において広範囲の面積で静翼18の自励振動を抑制する減衰作用を及ぼすことが可能となっている。
【0041】
このような構成において、空洞部30に配設された状態(初期状態)においては、板状バネ部材32は、撓み(接続部32cの傾斜角度)により、図4(B)に示すように、僅かに弾性変形するように形成されている。この弾性力により、板状バネ部材32は、図4(A)に示すように、押圧部32bが背側部材25を裏面25aから押圧するようになっている。つまり、板状バネ部材32は、空洞部30に配設すると、主として背側部材25の裏面25aを、静翼18の翼厚方向外向きに付勢するように構成されている。
【0042】
なお、「翼厚方向」とは、図4(A)に示す翼形断面において、翼型中心線Cと直交する静翼18の厚さ方向を意味している。
【0043】
板状バネ部材32の弾性力により、主として静翼18の蒸気の出口側が弾性変形して腹側部材24の裏面24cと背側部材25の裏面25aとの間に相対的な位置変動が生じると、この付勢力に応じた大きさの動摩擦力が作用可能となっている。
【0044】
蒸気タービン10の作動時において、その運転条件によっては、静翼18に自励振動が生じ、静翼18が弾性変形しようとすることがある。
【0045】
このとき、板状バネ部材32は、主として背側部材25の裏面25aと広い範囲で押圧することにより、腹側部材24と背側部材25との相対的な位置変動を抑制する方向に動摩擦力が生じる。この動摩擦力により、腹側部材24と背側部材25との間における相対的な位置変動が減衰される。この結果、静翼18に生じる自励振動を抑制することができる。
【0046】
ところで、上記実施の形態においては、板状バネ部材32は、固定部32aを腹側部材24の裏面24cに片持ち状態で接合し、押圧部32bをへ側部材25の裏面25aに広い範囲で押圧させる構成を開示したが、例えば、図5に示すように、板状バネ部材42の前縁側の固定部42aを背側部材25の蒸気の入口側付近の裏面25aに片持ち状態で接合し、板状バネ部材42の後縁側の摺接部42bを腹側部材24の裏面24cの蒸気の入口側付近から出口側付近に跨って当接させ、接続部42cの傾斜角度によってバネ性(撓み)を持たせる構成としても良い。また、図6に示すように、板状バネ部材32と板状バネ部材42とを径方向Rに沿って(紙面奥行き方向に沿って)交互に配置しても良い。この際、板状バネ部材32と板状バネ部材42とは、各々1つ以上を用いるが、同数(対)とする必要はない。
【0047】
このように、本発明の静翼及び蒸気タービンにあっては、片持ちの板状バネ部材32,42として蒸気の出口側を主として押圧するように構成し、そのバネ圧を一つの接続部32c,42cで設定可能とすることができ、しかも、押圧部32b,42bのみを裏面25a(又は裏面24c)に沿うように形成することにより、簡素な構成で自励振動抑制すると共に、その減衰機能を容易に確保することができ、しかも、汎用性を向上することができる。
【符号の説明】
【0048】
10…蒸気タービン
18…静翼
24…腹側部材(腹側部)
24a…スリット
24b…スリット
24c…裏面
25…背側部材(背側部)
25a…裏面
30…空洞部
32…板状バネ部材
32a…固定部
32b…押圧部
32c…接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部と背側部との各裏面によって空洞部が画成された静翼本体と、
前記空洞部に配置された板状バネ部材とを備え、
前記板状バネ部材が、
前記腹側部と前記背側部との各裏面のうち一方の前記裏面に固定される固定部と、
前記固定部における前記静翼本体の後縁側に接続され、他方の前記裏面に沿って延びると共に該他方の前記裏面を摺接可能に押圧する押圧部とを有していることを特徴とする静翼。
【請求項2】
前記板状バネ部材が、
前記固定部と前記押圧部とを接続するように、一方の前記裏面から他方の前記裏面に向かうに従って漸次前記後縁側に延在する接続部を有していることを特徴とする請求項1に記載の静翼。
【請求項3】
前記押圧部は、他方の前記裏面の前記後縁側の端部付近に至るまで該裏面に添って延びていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静翼。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の静翼が、ロータ軸の周方向に所定の間隔をあけて配列されていることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項5】
前記静翼本体に、表面側から前記空洞部の内部へと水滴を案内するスリットが形成されていることを特徴とする請求項4に記載の蒸気タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−72333(P2013−72333A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211044(P2011−211044)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】