説明

静電センサシートの取付構造

【課題】気泡の発生に伴い静電センサシートの検出精度が低下するのを抑制し、簡易迅速に作業することのできる静電センサシートの取付構造を提供する。
【解決手段】三次元成形された絶縁性のハウジング1に、基材フィルム層12に導電層が積層形成された可撓性の静電センサシート10を内蔵し、この静電センサシート10の導電層を形成する複数の電極パターンのうち、選択された任意の電極パターンに指3がハウジング1を介して接近した場合に静電容量の変化を検出する取付構造であり、ハウジング1の内面2に静電センサシート10を積層する硬質の取付板20を備え、この取付板20の静電センサシート10に隙間を介して対向する対向面に、静電センサシート10に圧接してその導電層の複数の電極パターンのみに対向する弾性体21を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電機器や自動車搭載部品等に用いられる静電センサシートの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における静電センサシートの取付構造は、図5に示すように、三次元形成された絶縁性のハウジング1の内面2に、基材フィルム層の表面に導電層が形成された可撓性の薄い静電センサシート10が粘着剤を介して貼着されている。この静電センサシート10は、その表面の全体に粘着剤が塗布された後、ハウジング1の内面2に手作業で貼着される。
【0003】
このような静電センサシート10は、導電層を形成する複数の電極パターンのうち、任意の電極パターンにユーザの指3がハウジング1を介し接近すると、任意の電極パターンとユーザの指3との静電容量が変化し、この静電容量の変化を検出する(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006‐242883号公報
【特許文献2】特開2000‐230983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における静電センサシートの取付構造は、以上のようにハウジング1の内面2に静電センサシート10が粘着剤により単に貼着されるので、貼着作業の如何によってはハウジング1の内面2と静電センサシート10の電極パターン部分との間に予測不可能な気泡30が不規則に生じることがある。この気泡30が生じる場合、ハウジング1の内面2から静電センサシート10が部分的に離れるので、電極パターンとユーザの指3との距離が長くなり、電極パターンの検出精度が低下するという問題が生じる。
【0006】
係る問題を解消する手段としては、真空状態でハウジング1の内面2に静電センサシート10を貼着して密接させる方法が考えられる。しかしながら、この方法を採用する場合には、高価な設備が必要不可欠となり、しかも、真空状態にしなければならないので、取付作業の複雑化や遅延化を招くおそれもある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、気泡の発生に伴い静電センサシートの検出精度が低下するのを抑制し、簡易迅速に作業することのできる静電センサシートの取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、絶縁性のハウジングに、基材層に導電層が形成された可撓性の静電センサシートを内蔵し、この静電センサシートの導電層を形成する複数の電極パターンのうち、任意の電極パターンに指がハウジングを介して接近した場合に静電容量の変化を検出するものであって、
ハウジングの内面に静電センサシートを積層する取付板を備え、この取付板の静電センサシートに隙間を介して対向する対向面に、静電センサシートに圧接してその導電層の複数の電極パターンに対向する弾性体を取り付けたことを特徴としている。
【0009】
なお、ハウジングを三次元形成してその内面と静電センサシートのいずれか一方に位置決め用の凹部を、他方には凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部とを相互に嵌合可能とし、ハウジングに取付板用の支持部を形成することができる。
また、静電センサシートのハウジング内面に対向する対向面の周縁部等に、微粘着性を有する仮止め用の粘着テープを粘着することができる。
【0010】
ここで、特許請求の範囲におけるハウジングは、例えば各種機器を構成するケースの蓋体やカバー等からなり、断面略C字形、L字形、U字形、皿形、ハット形等に三次元形成することができる。このハウジングの内面は、平坦面や湾曲面、凹凸面を特に問うものではない。静電センサシートの導電層は、基材層の表面、裏面、あるいは表裏面に形成することができる。また、弾性体は、検出精度の向上を図る観点から絶縁性を有し、導電層の複数の電極パターンのみに対向することが好ましい。この弾性体としては、低誘電率の弾性スポンジ等を用いることができる。
【0011】
本発明によれば、ハウジングに静電センサシートを取り付ける場合には、ハウジングの内面に静電センサシートを重ね、ハウジングに取付板を取り付けるとともに、静電センサシートに複数の弾性体を圧接し、導電層の複数の電極パターンに弾性体を対向させれば、ハウジング内に静電センサシートを取り付けることができる。
ハウジングの内面に電極パターン部分を弾性体が圧接して最大限接近させるので、ハウジングの内面と静電センサシートの電極パターン部分との間に気泡や隙間等が生じるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気泡の発生に伴い、ハウジングに内蔵された静電センサシートの検出精度が低下するのを抑制し、簡易迅速に作業することができるという効果がある。
【0013】
また、請求項2記載の発明によれば、ハウジング内面の所定箇所に静電センサシートを位置合わせして前後左右方向等へのずれを有効に防ぐことができる。また、ハウジングから取付板が外れることにより、静電センサシートから弾性体が離れたり、取付板ががたつくのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る静電センサシートの取付構造の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る静電センサシートの取付構造の実施形態における静電センサシートを模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る静電センサシートの取付構造の実施形態における取付板と弾性体とを模式的に示す断面説明図である。
【図4】本発明に係る静電センサシートの取付構造の第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図5】従来における静電センサシートの取付構造を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における静電センサシートの取付構造は、図1ないし図3に示すように、絶縁性のハウジング1に可撓性の薄い静電センサシート10を内蔵する取付構造であり、ハウジング1の内部内面2に静電センサシート10を積層押圧する硬質の取付板20を備え、この取付板20に、静電センサシート10に圧接する弾性変形可能な複数の弾性体21を配設するようにしている。
【0016】
ハウジング1は、図1に示すように、特に限定されるものではないが、例えば四輪自動車のセンターコンソール等が該当し、所定の樹脂(ポリカーボネート、ポリアミドアロイ、ポリフェニレンエーテル等)を含有する成形材料により断面略U字形の三次元形状に射出成形され、表面にユーザの指3が操作のために接触する。
【0017】
ハウジング1は、その凹んだ内部内面2の中央部等に位置決め用の凸部4が必要数突出形成され、この凸部4が静電センサシート10を位置決めして取付作業の便宜を図るよう機能する。また、ハウジング1の周壁内面の下部には、取付板20の周縁部に干渉して傾かないよう支持する断面板形の支持片5が内方向に向けて周設される。
【0018】
静電センサシート10は、図1や図2に示すように、絶縁性の基材フィルム層12と、この基材フィルム層12に複数の電極パターン14と導電引回しライン15とが形成される導電層13と、この導電層13を被覆してハウジング1の内面2に接触する絶縁性の保護カバー層16とを備えて形成される。この静電センサシート10には、位置決め用の貫通孔11が必要数穿孔され、この貫通孔11がハウジング1の凸部4に貫通されることにより位置決め作用を発揮する。
【0019】
基材フィルム層12は、例えば耐熱性や強度等に優れる屈曲可能なポリエチレンテレフタレート製の薄いフィルム等が使用され、最終的には平面略T字形に形成される。
【0020】
導電層13は、基材フィルム層12の表面に所定の間隔で配列形成される複数の電極パターン14を備え、この複数の電極パターン14の周縁部に導電引回しライン15がそれぞれ一体形成される。この導電層13は、例えば膜厚の自由度や汎用性等を考慮して導電性ポリマー、銀ペースト、カーボン等を使用したスクリーン印刷法等により形成され、透明性が選択的に付与される。各電極パターン14は、接近してくるユーザの指3の大きさを考慮した平面矩形に形成され、周縁部の後方等に導電引回しライン15の先端部が接続される。
【0021】
複数の導電引き回しライン15は、それぞれ細長い線条に形成され、所定の間隔で一箇所に集約される。各導電引き回しライン15は、接続される電極パターン14の位置に応じ、平面略L字形に屈曲形成されたり、略I字形に伸長形成され、末端部が保護カバー層16の端部から露出して他の電子回路との接続用に利用される。
【0022】
保護カバー層16は、例えば優れた耐候性、加工性を有するポリエチレンテレフタレートやアクリル樹脂製等の透明なフィルムが使用され、基材フィルム層12の表面に接着剤や粘着シートを介し積層接着されて導電層13の複数の電極パターン14と導電引回しライン15の大部分とを有効に被覆保護する。この保護カバー層16は、基材フィルム層12と同様、最終的には平面略T字形に形成され、表面の周縁部等に、ハウジング1の内面2に対する仮止め用の粘着テープ17が選択的に粘着される。この粘着テープ17は、必要に応じ、枠形に形成されたり、細長い紙片形等に形成される。
【0023】
取付板20は、図1や図3に示すように、例えば所定の樹脂(ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン等)を含有する成形材料により静電センサシート10よりも大きい平坦な板に成形され、ハウジング1の支持片5に着脱自在に支持されて静電センサシート10の裏面、すなわち基材フィルム層12に隙間を介して対向する。この取付板20は、ハウジング1の内面2の形状に応じて平坦に形成されたり、屈曲形成される。
【0024】
複数の弾性体21は、同図に示すように、例えばウレタンやシリコーンの各種エラストマー等を用いて形成され、静電センサシート10の基材フィルム層12に対向する取付板20の表面に適宜並べて接着される。この複数の弾性体21は、性状がソリッドゴムやゲル状、スポンジ(発泡体)等とされるが、低い誘電率が好ましいので、スポンジの利用が最適である。
【0025】
複数の弾性体21の間には、静電容量に悪影響が生じないよう空気層が区画形成される。各弾性体21は、電極パターン14の形に応じて平面円形、矩形、多角形等に形成され、電極パターン14に基材フィルム層12を介して間接的に対向することにより、ハウジング1の内面2に電極パターン14を保護カバー層16を介し隙間なく密接させる。
【0026】
上記構成において、ハウジング1に静電センサシート10を取り付ける場合には、先ず、ハウジング1の内面2に静電センサシート10の保護カバー層16を重ねて凸部4と貫通孔11とを相互に嵌合し、ハウジング1の内部に取付板20を支持片5を介して固定支持させるとともに、静電センサシート10の基材フィルム層12に複数の弾性体21を圧接し、導電層13の複数の電極パターン14に弾性体21を基材フィルム層12を介しそれぞれ間接的に対向させれば、ハウジング1に静電センサシート10を取り付けることができる。
【0027】
ハウジング1に内蔵された静電センサシート10は、導電層13を形成する複数の電極パターン14のうち、選択された任意の電極パターン14にユーザの指3がハウジング1を介し接近して対向すると、任意の電極パターン14とユーザの指3との静電容量が変化し、この静電容量の変化を検出して所定の機器の入力操作に資することとなる。
【0028】
上記構成によれば、ハウジング1の内面2に電極パターン14を弾性体21が可能な限り圧接して近接させるので、ハウジング1の内面2と静電センサシート10の電極パターン14部分との間に気泡30が生じるのを抑制することができる。したがって、ハウジング1の内面2から静電センサシート10が部分的に離れて電極パターン14の検出精度が低下するのを有効に防止することができる。また、真空状態を確保してハウジング1の内面2に静電センサシート10を密接させる必要がないので、真空ポンプ等の高価な設備を何ら必要とせず、作業の簡素化や迅速化を図ることができる。
【0029】
また、保護カバー層16の表面全体に粘着剤を塗布する必要もないので、粘着剤の塗布に伴い空気の流通が阻害されることがなく、ハウジング1の内面2と静電センサシート10との間から空気を速やかに除去したり、取付作業の容易化も大いに期待できる。さらに、ハウジングの内面2形状に応じて弾性体21が追従して変形するので、例えハウジング1やその内面2が複雑に三次元成形されていても、静電センサシート10の良好な密接が期待できる。
【0030】
次に、図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング1の周壁内面の下部に切り欠き段差部6を形成し、この切り欠き段差部6と支持片5とに取付板20の周縁部を挟持させ、密嵌するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0031】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、支持片5と切り欠き段差部6とに取付板20の周縁部をきつく挟持させせるので、ハウジング1の内面2方向に取付板20がずれたり、がたつくのを有効に防止することができるのは明らかである。
【0032】
なお、上記実施形態ではハウジング1の支持片5や切り欠き段差部6に指3の検出に支障を来たさない取付板20の周縁部を支持させたが、何らこれに限定されるものではなく、例えばハウジング1の周壁に取付板20の周縁部を螺着しても良い。また、ハウジング1と取付板20の周縁部のいずれか一方に凹部を、他方には凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部とを相互に嵌合して取付板20を支持しても良い。
【0033】
また、ハウジング1を、相互に嵌合する表面側ハウジングと裏面側ハウジングとに分割し、これら表面側ハウジングと裏面側ハウジングとの間に取付板20を介在させて裏面側ハウジングに取付板20を支持させても良い。さらに、弾性体21の表面は、必要に応じて平坦にしたり、凹凸等に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る静電センサシートの取付構造は、携帯機器等よりも大型の家電機器、ゲーム機器、自動車搭載部品等の分野で用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ハウジング
2 内面
3 指
4 凸部
5 支持片(支持部)
6 切り欠き段差部(支持部)
10 静電センサシート
11 貫通孔(凹部)
12 基材フィルム層(基材層)
13 導電層
14 電極パターン
16 保護カバー層
17 粘着テープ
20 取付板
21 弾性体
30 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性のハウジングに、基材層に導電層が形成された可撓性の静電センサシートを内蔵し、この静電センサシートの導電層を形成する複数の電極パターンのうち、任意の電極パターンに指がハウジングを介して接近した場合に静電容量の変化を検出する静電センサシートの取付構造であって、
ハウジングの内面に静電センサシートを積層する取付板を備え、この取付板の静電センサシートに隙間を介して対向する対向面に、静電センサシートに圧接してその導電層の複数の電極パターンに対向する弾性体を取り付けたことを特徴とする静電センサシートの取付構造。
【請求項2】
ハウジングを三次元形成してその内面と静電センサシートのいずれか一方に位置決め用の凹部を、他方には凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部とを相互に嵌合可能とし、ハウジングに取付板用の支持部を形成した請求項1記載の静電センサシートの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−154629(P2012−154629A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11027(P2011−11027)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】