説明

静電センサ装置

【目的】 発振回路1から放射される高周波電流によるバックグラウンドノイズと電源のシールド線9の振動変位による振動雑音の除去を図る。
【構成】 静電センサ装置を発振回路1と共振回路2と検出電極3と検波回路4と増幅回路5と電源回路7とを有して構成し、発振回路1と共振回路2と電源の高周波部分との高周波回路側と、増幅回路5と電源の低周波部分を含む低周波回路側との間に超高周波フィルタ8を介設して高周波回路側から低周波回路側に流れる高周波電流を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ATM(Automated TellerMachine)、紙幣識別装置、改札装置、製紙産業、パルプ産業、製版、木工、食品産業、ロボット、情報機器等の各分野において、被検出体の厚みや性状を検出する静電センサ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】出願人は先に微小静電容量の変化を検出することができる高感度の静電センサ装置を例えば特願平1-126234号において提案している。
【0003】この提案装置は、図3に示すように、発振回路1と、共振回路2と、被検出体との静電容量変化を検出する検出電極3と、検波回路4と、増幅回路5とを有している。前記発振回路1と共振回路2はそれぞれ別個独立の誘電体共振器としてのセラミック共振器を含み、例えば、図4に示すように、発振回路1のGHz帯の固定発振周波数f1 に対して共振回路2の共振周波数f0 をわずかにずれた位置に設定しておき、検出電極3によって検出される微小静電容量の変化ΔCに対応させて共振周波数をf0 からΔfだけ偏倚させ、前記静電容量の変化ΔCを出力電圧ΔVの変化(発振周波数信号を搬送波とするΔVの変調信号)に変換し、これを検波して低周波帯域の数mmVの電圧信号とし、これをさらにボルトのオーダまで増幅して取り出すものである。
【0004】この提案装置では、発振回路1の発振周波数を例えば1〜3GHzという高周波数で発振し、非常に感度が高いために、例えば、検出電極3の近くに手を近付けたりすると、検出電極3に対する浮遊分布容量が変化し、これが共振回路2の共振周波数に影響を与えたり、あるいは、検出電極3と共振回路2が内蔵するセラミック共振器との導体リードの長さが、発振周波数の波長をλとしたとき、nλ/4(nは1以上の整数)になると、不安定な現象が生じるという問題がある。このような問題を解消するために、出願人は提案装置の改良を重ね、検出電極3をグランド電位となっているシャーシと同一面かこれよりもやや引っ込めて配置することにより前記浮遊分布容量等の影響を除去することに成功し、また、検出電極3と共振回路2のセラミック共振器までの導体リードをnλ/4よりも短くすることにより前記不安定化現象を解消することに成功した。その結果として10-4PFの微小静電容量の変化を安定に検出することが可能になった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、検出感度をさらに高め、10-5〜10-8PFの微小静電容量の変化を検出しようとすると、GHz帯で回路駆動を行うときの特有な不安定現象が生じ、前記改良された静電センサ装置を用いてもその微小静電容量の変化を安定に検出することができなくなるという問題に直面した。すなわち、この種の静電センサ装置ではどうしても高周波の回路部分と、低周波の回路部分とを混在した回路構成とせざるを得ず、発振回路1からGHz帯の高周波数で発振すると、この発振周波数信号が放射し、周りの回路導体に雑音として高周波電流が流れ、この高周波電流が高周波回路部分から低周波回路部分に流れると、発振回路1の発振条件が変動し、微小静電容量検出の分解能が低下するという問題が生じ、また、周りから機械振動を受けると検出電極や回路周辺の静電容量が変化し、これに起因して振動によるノイズが発生し、前記10-5〜10-8PFの微小静電容量の変化を安定に検出することができなくなるという問題が生じるに至った。
【0006】本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、発振回路からの高周波の放射干渉によるノイズ(以下、バックグラウンドノイズという)や機械振動に起因するノイズ(以下、振動ノイズという)を大幅に低減してより分解能の高い安定した微小静電容量の検出を可能にする静電センサ装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、次のように構成されている。すなわち、本発明は、誘電体共振器を備え高周波数の発振周波数信号を出力する発振回路と、誘電体共振器を備え検出部によって検出される静電容量の変化を受けて共振周波数を変化させ、この共振周波数の変化に対応する信号を変調出力する共振回路と、前記変調出力信号が低周波数帯域の信号に検波された後、検波出力を増幅して出力する増幅回路と、電源回路とが共通の回路基板に形成されている静電センサ装置において、発振回路と共振回路と電源の高周波部分とを含む高周波回路側と、増幅回路と電源の低周波部分を含む低周波回路側との間には高周波回路側から低周波回路側に高周波電流が流れるのを遮断する高周波分離回路が介設されていることを特徴として構成されている。
【0008】
【作用】上記構成の本発明において、発振回路から高周波信号が放射し、高周波回路側から低周波回路側に高周波電流が流れようとするが、このとき、高周波分離回路が高周波回路側から低周波回路側への高周波電流の流れを遮断する結果、低周波回路側と高周波回路側の干渉が防止され、発振回路の発振周波数信号は安定に保たれる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1には本発明に係る静電センサ装置の一実施例の回路構成が示されており、また、図2には同実施例装置を駆動するときの等価回路が示されている。本実施例の静電センサ装置は、前記提案装置と同様に、誘電体共振器(セラミック共振器)を備えてGHz帯(この実施例では1〜3GHz)の発振周波数信号を出力する発振回路1と、誘電体共振器としてのセラミック共振器6を備えた共振回路2と、検波回路4と、増幅回路5と、電源回路7とを備えている。そして、回路動作も、前記提案装置と同様に、被検出体の微小静電容量が検出部の検出電極3によって検出されたときに、その静電容量の変化によって共振回路2の共振周波数が変化し、この共振周波数の変化に対応する信号が発振周波数信号を搬送波として振幅変調信号が作り出され、この振幅変調信号が検波回路4によって低周波帯域の信号に包絡線検波され、この検波出力が低周波の増幅回路5によって信号増幅されて所望の信号処理回路に加えられる。
【0010】本実施例において特徴的なことは、発振回路1と共振回路2と電源の高周波部分とを含む高周波回路側と、増幅回路5と電源の低周波部分を含む低周波回路側とを高周波分離回路としての超高周波フィルタ8によって高周波的に遮断したことである。
【0011】静電センサ装置の回路駆動時には、発振回路1からGHz帯の高周波の発振信号が放射される結果、図2の等価回路では、発振回路1はバックグラウンドノイズの雑音源として働く。そして、雑音源から放射される高周波信号により、周りの電源ラインやグランドライン等、至るところに高周波電流が流れ、高周波回路側には回路素子間や配線間にストレーキャパシタンスCS1〜CS4 が発生し、回路基板上の例えば銅箔等の細いところにはインダクタンスLm1 〜Lm4 の成分が現れる。
【0012】この等価回路で、バックグラウンドノイズを低減するためにはバイパスコンデンサCb1 ,Cb2 を設けることが必要となる。この場合、Cb2 の容量をCb1 の容量よりも大きくすると、Cb2 側に雑音電流(高周波電流)Ib2 が流れ、バイパスコンデンサCb2 間の電位が高くなり、静電センサ装置の雑音電位と電源供給部のシールド線9との電位が等電位となり、シールド線9に雑音電流が乗り、雑音に対するバックグラウンドノイズは低下するが、シールド線9の振れ等に起因する振動雑音が新たに発生するという問題が生じる。この振動雑音とバックグラウンド雑音をともに小さくするためには、バイパスコンデンサCb1 の容量をCb2 の容量よりも遙かに大きくすることが必要になる。しかし、現状の技術では、大容量の高周波コンデンサを作ることは困難であり、一般には、高周波のコンデンサであるCb1 の容量よりも低周波のコンデンサであるCb2 の容量の方が大きな容量となり、Cb1 の容量をCb2 の容量よりも遙かに大きくすることは難しい。
【0013】そこで、本発明者はかかる困難を解消するために、低周波回路側と高周波回路側との間に高周波的に負荷抵抗の大きいインダクタンスLを介設し、前記バイパスコンデンサCb1 ,Cb2 とによって超高周波フィルタ8を形成している。このように、インダクタンスLを設けることにより、高周波回路側に流れる高周波電流は負荷抵抗の大きいインダクタンスLのところで遮断され、高周波電流が高周波回路側から低周波回路側に流れるのを確実に遮断する。この高周波電流の遮断により、シールド線9に高周波電流が流れることもなくなり、したがって、シールド線9が振動変位しても振動ノイズを発生させることがなくなり、発振回路1の発振動作を安定に行うことが可能となるのである。
【0014】この実施例では図1に示すように、高周波分離回路としての超高周波フィルタ8をインダクタンスLと電解コンデンサ11とコンデンサ12とによって構成し、電源と超高周波フィルタ8とを3端子レギュレータ10を用いて接続し、高周波回路側のグランドラインGN1 と低周波回路側のグランドラインGN2 との間に高周波的に負荷抵抗の大きいインダクタンスLを介設し、さらに、高周波回路側の電源ラインVcc1 と低周波回路側の電源ラインVcc2 との間に同様に高周波的に負荷抵抗の大きいインダクタンスLを介設している。なお、図1の回路図で、グランドラインGNは回路仕様に応じ、高周波回路側のグランドラインGN1 あるいは低周波回路側のグランドラインGN2 のいずれかに接続されるものである。
【0015】この実施例によれば、発振回路1から放射される高周波信号によって高周波電流がバックグラウンドノイズとして高周波回路側に流れたとしても、この高周波電流は負荷抵抗の大きいインダクタンスLによって遮られて低周波回路側に流れることがなく、高周波回路側のループに沿って流れるので、高周波回路側と低周波回路側とで干渉を起こすことがなくなり、これにより、発振周波数の安定化が図れるとともに、シールド線9の振動等に起因する振動ノイズの発生もなく、10-5〜10-8PFという極めて微小な静電容量の変化を高分解のもとで安定に検出することが可能となった。
【0016】なお、本発明は上記実施例に限定されることはなく、様々な実施の態様を採り得るものである。
【0017】
【発明の効果】本発明は、静電センサ装置の高周波回路側と低周波回路側との間には高周波回路側から低周波回路側に高周波電流が流れるのを遮断する高周波分離回路を設けたものであるから、高周波電流が高周波回路側から低周波回路側に流れて高周波回路側と低周波回路側との干渉を起こすことがなくなり、これにより、発振回路から放射されるバックグラウンドノイズや電源のシールド線の振動等による振動ノイズのほとんどない静電センサ装置の提供が可能となる。このように、雑音を除去することができるので、分解能も飛躍的に改善され、前記提案装置に較べ10倍以上の安定化が可能となり、これに伴い検出能も飛躍的に改善され、10-5〜10-8という微小静電容量の変化を安定に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る静電センサ装置の一実施例を示す回路図である。
【図2】同実施例装置の回路動作の等価回路図である。
【図3】出願人が先に提案した静電センサ装置のブロック図である。
【図4】提案装置および本実施例装置の微小静電容量の検出動作の説明図である。
【符号の説明】
1 発振回路
2 共振回路
3 検出電極
4 検波回路
5 増幅回路
8 超高周波フィルタ
10 3端子レギュレータ
L インダクタンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】 誘電体共振器を備え高周波数の発振周波数信号を出力する発振回路と、誘電体共振器を備え検出部によって検出される静電容量の変化を受けて共振周波数を変化させ、この共振周波数の変化に対応する信号を変調出力する共振回路と、前記変調出力信号が低周波数帯域の信号に検波された後、検波出力を増幅して出力する増幅回路と、電源回路とが共通の回路基板に形成されている静電センサ装置において、発振回路と共振回路と電源の高周波部分とを含む高周波回路側と、増幅回路と電源の低周波部分を含む低周波回路側との間には高周波回路側から低周波回路側に高周波電流が流れるのを遮断する高周波分離回路が介設されていることを特徴とする静電センサ装置。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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