説明

静電噴霧装置

【課題】 漏電の発生を防止し、静電効果を安定的に発揮させるようにする。
【解決手段】 本発明の静電噴霧装置は、液体を無数の液滴Dにして噴出する噴霧ノズル25と、液滴Dの拡散範囲の外側に近接するように配設された環状電極26と、絶縁性材料からなり、噴霧ノズル25に対して環状電極26を支持する電極ホルダ27とを備え、前記液体及び環状電極26の間に印加される高電圧により液滴Dを帯電させるように構成されている。そして、液滴Dが噴霧ノズル25、環状電極26、又は電極ホルダ27に付着することを防止するように圧縮エアA1,A2を放出するエアノズル32及び通気穴33を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助的に圧縮エアを利用した静電噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の静電噴霧装置として、特許文献1に開示された静電式薬液散布装置を例示する。この装置は作業者の背中に背負われる背負動力噴霧機を利用したものであり、図8に示すように、導電性の薬液を帯電させるため電極82を噴頭81に備えるとともに、該電極に高電圧を印加するための高電圧発生部83を備えている。
【0003】
【特許文献1】実公平6−41641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、作物に効率よく付着させるため、薬液は浸透性及び展着性を備えるように作成されているので、薬液の噴霧は噴頭81の電極82はもちろんながら、送風パイプ84や薬液用ホース85の表面にもよく付着し、蓄積される。また、電極82はプラスに、噴霧はマイナスに誘導帯電するため、マイナス帯電の噴霧はプラスの電極82に引きつけられて付着し、蓄積される。特に長時間にわたって連続噴霧をしていると、噴頭81から送風パイプ84や薬液用ホース85へと薬液の連続膜が形成されて行く。前述したように薬液は導電性を備えているので、この連続膜を介して電極82の高電圧が背負動力噴霧機側(作業者側)へ伝わることになる。このため、例えば、この連続膜に作業者の手が触れたり、この連続膜が静電噴霧装置のアースされた部位に達したりすれば漏電が発生し、高電圧発生部83に過大な電流が流れ、十分な静電効果が得られないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の静電噴霧装置は、
液体を無数の液滴にして噴出する噴霧ノズルと、前記液滴の拡散範囲の外側に近接するように配設された電極と、絶縁性材料からなり、前記噴霧ノズルに対して前記電極を支持する電極ホルダとを備え、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧により前記液滴を帯電させるように構成された静電噴霧装置であって、
前記液滴が前記噴霧ノズル、前記電極、又は前記電極ホルダに付着することを防止するように圧縮エアを放出するエア放出口を備えている。
【0006】
この構成によれば、前記液滴が前記噴霧ノズル、前記電極、又は前記電極ホルダに付着することを防止して、該液滴の付着による連続膜が形成されないようにすることができる。これにより、導電性を有する前記液滴の連続膜を通じて漏電が発生することを防止できる。
【0007】
前記エア放出口は、前記噴霧ノズル、前記電極、又は前記電極ホルダに対して前記圧縮エアを放出するように設けられた態様を例示する。
【0008】
この構成によれば、前記噴霧ノズル、前記電極、又は前記電極ホルダに対して前記液滴が付着することを防止し、また、付着した前記液滴を乾燥させることにより、前記連続膜の形成を防止することができる。
【0009】
前記エア放出口は、前記液滴の拡散範囲の外側に近接するように、前記噴霧ノズルの液滴噴出方向と略平行に前記圧縮エアを放出するように設けられた態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、前記エア放出口から吹き出される前記圧縮エアにより、前記液滴が噴霧方向以外へ飛散することを防止し、前記電極ホルダへ前記液滴が付着することを防止することができる。また、前記エア放出口から放出される前記圧縮エアは、前記液滴を前記噴霧方向へ加速し、前記液滴の到達距離と、前記液滴の作物間への貫通力を増大させるようにも作用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る静電噴霧装置によれば、漏電の発生を防止し、静電効果を安定的に発揮させることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図3は本発明を具体化した第一実施形態の静電噴霧装置を示している。図1は、本発明の静電噴霧装置の全体構成を示しており、この装置は、作物の病気や虫の防除用薬液を収容し供給するための薬液供給部としての収容タンク1と、該収容タンク1から供給される薬液を加圧する薬液圧力発生部としてのポンプ2と、圧縮エアを供給するエアコンプレッサ15と、該薬液圧力発生部及びエアコンプレッサ15にホース3,16を介してそれぞれ接続された手持ち式ノズル部9とを備えている。ポンプ2やエアコンプレッサ15としては、所定の圧力が得られるものであれば特に限定されないが、エンジンやモータ等の原動機で駆動されるものを例示する。
【0013】
手持ち式ノズル部9は、手持ち用のグリップ部4と、該グリップ部4の先端側に取り付けられた支持体としての噴管11と、該噴管11の先端にコネクタ14を介して着脱可能に接続された噴霧部21とを備えている。
【0014】
グリップ部4は、その基端側にホース3が接続され、該ホース3からの薬液供給を制御するための薬液供給制御弁5と、直流高電圧を発生させるための高電圧発生装置6と、高電圧発生装置6の駆動源としての蓄電池7と、高電圧発生装置6の動作を制御する感圧センサー8とを備えている。そして、薬液の圧力を検知する感圧センサー8により、薬液供給制御弁5が開かれることによる噴霧出力の有無を検出して高電圧発生装置6を作動させるようにしている。
【0015】
噴管11は、噴霧部21をグリップ部4に対して間隔をおいて支持するためのもので、中空パイプ状に形成されている。噴管11の基端側外周には、電気絶縁性材料からなる補助グリップ部11aが装着されている。噴管11の内部には、薬液供給制御弁5から噴霧部21の噴霧ノズル25へ薬液を供給する接続チューブ12と、高電圧発生装置6から噴霧部21へ高電圧を送電する高電圧ケーブル13とが収容されている。この高電圧ケーブル13は絶縁物で被覆されている。
【0016】
噴霧部21は、コネクタ14を介して噴管11に支持されており、薬液を無数の液滴Dにして噴出する噴霧ノズル25と、該噴霧ノズル25から噴出される液滴Dの拡散範囲の外側に近接するように配設された電極としての環状電極26と、該環状電極26を噴霧ノズル25に結合する電気絶縁性を有する電極ホルダ27と、該電極ホルダ27の噴管11側に設けられた電気絶縁性を有する漏電防止部22と、該電極ホルダ27に着脱可能に装着されたエアアシスト部28とを備えている。噴霧ノズル25は、本例では導電性材料で形成されているが、これに限定されず、プラスチックやセラミックで形成されたものも適宜採用できる。この噴霧部21は、噴霧ノズル25に供給される薬液と環状電極26の間に印加される高電圧により液滴Dを帯電させるように構成されている。薬液と環状電極26の間に高電圧を印加する方法としては、特に限定されないが、薬液に接する導電性部位(噴霧ノズル25や、導電性材料で形成された接続チューブ12、収容タンク1等)や薬液中に浸けられた電極等と、環状電極26との間に高電圧を印加することを例示する。
【0017】
電極ホルダ27は、噴管11先端側が開口した略カップ状に形成されている。電極ホルダ27の底壁部の中央には噴管11を挿通するための噴管挿通穴27aが設けられている。電極ホルダ27の周壁部には、その内外を連通する複数(本例では4つ)の貫通穴27bが設けられており、電極ホルダ27にエアアシスト部28が装着されていないときは、この貫通穴27bから電極ホルダ27内に溜まった液滴Dを電極ホルダ27外に排出することができるようになっている。また、電極ホルダ27の開口部側の内周縁部には、環状電極26が配設されている。
【0018】
漏電防止部22は、噴管11の全周に渡る環状凹部23を備えており、該環状凹部23の内側には、液滴Dが入り込み難いので、噴管11への液滴Dの付着による連続膜を環状凹部23で途切れさせるようにすることができる。これにより、導電性を有する液滴Dを通じて噴霧部21の高電位がグリップ部4側に伝わることを防止することができる。
【0019】
エアアシスト部28は、図2に示すように、電極ホルダ27の外周に嵌装可能な筒体状に形成されており、電極ホルダ27に固定手段としてのネジ29で固定されるようになっている。エアアシスト部28の周壁は、内部が圧縮エアが通過可能な空洞30となっている。そして、エアアシスト部28には、エアホース16を介してエアコンプレッサ15からの圧縮エアを空洞30内に供給するためのエア導入口31と、該空洞30内の圧縮エアを放出するための第一のエア放出口としての複数(本例では4つ)のエアノズル32と、電極ホルダ27の貫通穴27bを通して該電極ホルダ27内に圧縮エアを放出するための第二のエア放出口としての複数(本例では4つ)の通気穴33とが設けられている。エアノズル32は、エアアシスト部28の噴霧方向側端面において、環状電極26の周囲を囲むように列設されており、液滴Dの拡散範囲の外側に近接するように、噴霧ノズル25の液滴D噴出方向と略平行に圧縮エアA1を放出するようになっている。
【0020】
このような構成で噴霧ノズル25から噴出する液滴Dは誘導帯電されることになる。本例では、薬液に対して環状電極26に直流正電圧を印加し、噴霧ノズル25先端において液滴Dをマイナスに誘導帯電させるように構成されている。これと同時にエアコンプレッサ15を作動させると、エアアシスト部28に供給された圧縮エアA1がエアノズル32から放出されるるとともに、通気穴33から電極ホルダ27内にも圧縮エアA2が流入し、環状電極26の内側を通過して電極ホルダ27外へ放出される。
【0021】
以上のように構成された本例の静電噴霧装置によれば、液滴Dが噴霧ノズル25、環状電極26、又は電極ホルダ27に付着することを防止するように圧縮エアA1,A2を放出するエアノズル32及び通気穴33を備えているので、これらの表面に該液滴Dの付着による連続膜が形成されないようにすることができる。これにより、導電性を有する液滴Dの連続膜を通じて漏電が発生することを防止できる。
【0022】
また、通気穴33は、電極ホルダ27内に対して圧縮エアA2を放出するように設けられているので、電極ホルダ27、並びにその中に配設された噴霧ノズル25及び環状電極26に対して液滴Dが付着することを防止し、また、付着した液滴Dを乾燥させることにより、連続膜の形成を防止することができる。また、電極ホルダ27内に放出された圧縮エアA2は、環状電極26の内側を通過して電極ホルダ27外へ放出されるときに、噴霧ノズル25から噴出された液滴Dを噴霧方向へ加速し、液滴Dの到達距離と、液滴Dの作物間への貫通力を増大させるようにも作用する。
【0023】
また、エアノズル32は、液滴Dの拡散範囲の外側に近接するように、噴霧ノズル25の液滴D噴出方向と略平行に圧縮エアA1を放出するように設けられているので、この圧縮エアA1により、液滴Dが噴霧方向以外へ飛散することを防止し、電極ホルダ27へ液滴Dが付着することを防止することができる。また、エアノズル32から放出される圧縮エアA1は、液滴Dを噴霧方向へ加速し、液滴Dの到達距離と、液滴Dの作物間への貫通力を増大させるようにも作用する。
【0024】
次に、図4は本発明を多数の噴霧部21が取り付けられた幅の広いブーム35を備えたブームスプレイヤタイプの静電噴霧装置に具体化した第二実施形態を示している。本例の各噴霧部21は、第一実施形態と同様のものであるため、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く(以下、他の実施形態についても同様)。
【0025】
本例の静電噴霧装置は、略水平に延びるブーム35を備え、該ブーム35には、その長さ方向へ複数の噴霧部21が所定の間隔をおいて列設されている。ブーム35の内部には、噴霧部21へ薬液を供給する接続チューブ12と、噴霧部21へ高電圧を送電する高電圧ケーブル13とが収容されており、これらから各噴霧部21へ薬液と高電圧とを供給するようになっている。また、ブーム35と平行にエアホース16が配設されており、該エアホース16から各噴霧部21へ圧縮エアが供給されるようになっている。
【0026】
本例の静電噴霧装置によっても、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
次に、図5及び図6は本発明を具体化した第三実施形態を示している。この静電噴霧装置は、エアアシスト部41が、主に第一実施形態と相違している。
【0028】
本例のエアアシスト部41は、電極ホルダ27の外周に嵌装可能な筒体状に形成されている点については第一実施形態と同様であるが、これに加え、該筒体の噴霧方向側の開口を狭めるように、環状凸部42が形成されており、該環状凸部42も内部が空洞43になっており、周壁の空洞30と連通している。また、このエアアシスト部41には、第一実施形態におけるエアノズル32に代えて、環状凸部42の噴霧方向側の面における内周側縁部に、該縁部に沿って延びる環状穴44が形成されており、該環状穴44は空洞43と連通している。そして、この環状穴44から、液滴Dの拡散範囲の外側に近接するように、噴霧ノズル25の液滴D噴出方向と略平行に圧縮エアA1を放出するようになっている。
【0029】
本例の静電噴霧装置によっても、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0030】
次に、図7は本発明を具体化した第四実施形態を示している。この静電噴霧装置は、噴霧部51が以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。
【0031】
本例の噴霧部51は、第一実施形態におけるエアアシスト部28を備えていない。そして、電極ホルダ27には、貫通穴27bに代えて、エアホース16を介してエアコンプレッサ15からの圧縮エアA2を電極ホルダ27内へ供給するためのエア導入口31が設けられている。
【0032】
本例の静電噴霧装置によっても、第一実施形態と同様に電極ホルダ27内に圧縮エアA2が流入し、環状電極26の内側を通過して電極ホルダ27外へ放出されるので、この点において、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)第一〜第三実施形態において、電極ホルダ27と、エアアシスト部28,41とを一体化した構成とすること。
(2)本発明の静電噴霧装置を液肥の散布に使用すること。
(3)第一、第三、又は第四実施形態において、基部が機体支持されるように構成すること。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を具体化した第一実施形態に係る静電噴霧装置の全体構成を示す図である。
【図2】同静電噴霧装置の噴霧部の分解斜視図である。
【図3】同静電噴霧装置の噴霧部の側断面図である。
【図4】本発明を具体化した第二実施形態に係る静電噴霧装置の噴霧部の側面図である。
【図5】本発明を具体化した第三実施形態に係る静電噴霧装置の噴霧部の側断面図である。
【図6】同静電噴霧装置の噴霧部の分解斜視図である。
【図7】本発明を具体化した第四実施形態に係る静電噴霧装置の噴霧部の側断面図である。
【図8】従来の静電噴霧装置の要部を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0035】
11 噴管
15 エアコンプレッサ
21 噴霧部
22 漏電防止部
25 噴霧ノズル
26 環状電極
27 電極ホルダ
28 エアアシスト部
30 空洞
31 エア導入口
32 エアノズル
33 通気穴
41 エアアシスト部
44 環状穴
51 噴霧部
D 液滴
S 噴霧
A1 圧縮エア
A2 圧縮エア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を無数の液滴にして噴出する噴霧ノズルと、前記液滴の拡散範囲の外側に近接するように配設された電極と、絶縁性材料からなり、前記噴霧ノズルに対して前記電極を支持する電極ホルダとを備え、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧により前記液滴を帯電させるように構成された静電噴霧装置であって、
前記液滴が前記噴霧ノズル、前記電極、又は前記電極ホルダに付着することを防止するように圧縮エアを放出するエア放出口を備えた静電噴霧装置。
【請求項2】
前記エア放出口は、前記噴霧ノズル、前記電極、又は前記電極ホルダに対して前記圧縮エアを放出するように設けられた請求項1記載の静電噴霧装置。
【請求項3】
前記エア放出口は、前記液滴の拡散範囲の外側に近接するように、前記噴霧ノズルの液滴噴出方向と略平行に前記圧縮エアを放出するように設けられた請求項1又は2記載の静電噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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