説明

静電塗装装置

【目的】 電動モータを静電的な高電圧が掛かる部材から電気的に絶縁できると共に、静電塗装装置を小型化及び軽量化することができる静電塗装装置を提供すること。
【構成】 静電塗装装置100は、静電的に高電圧が印加される回転霧化頭120と、静電的に接地されてなるACサーボモータ130と、回転霧化頭120及びこれと同電位とされる増速機125から、ACサーボモータ130を電気的に絶縁する回転軸140及び固設絶縁部材150を備える。回転軸140及び固設絶縁部材150は、増速機125からACサーボモータ130に至る沿面絶縁距離AB,CD等を大きくする形態の絶縁距離長大化部143,141kuk,153,155を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物に静電塗装を行う静電塗装装置に関し、特に、回転して塗料を霧化する回転霧化頭を備える静電塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転して塗料を霧化する回転霧化頭を備え、自動車のボディ等の被塗物に対して静電塗装を行う静電塗装装置が知られている。このような静電塗装装置は、静電的な高電圧を印加した回転霧化頭を回転駆動し、この回転霧化頭に供給された流体塗料を遠心力で微粒化させると共に、回転霧化頭に印加された静電的な高電圧で微粒化した塗料粒子を帯電させて、外部に噴出する。一般的には、被塗物を陽極とし、静電塗装装置側を陰極として、両極間に静電界を構成し、負側に帯電した霧化塗料を静電力により被塗物に吸着させることで静電塗装を行う。
【0003】
このような静電塗装装置が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の静電塗装装置は、回転霧化頭を回転駆動するための動力源として、電動モータを用いている。電動モータを利用すれば、立ち上がりや立ち下がりの制御応答性が良くなり、短時間のうちに(例えば0.5秒程度で)回転霧化頭を所望の回転数にすることができる。従って、エアモータの場合よりも効率よく塗装を行うことが可能となる。また、モータの回転数の安定性が良好になるので、塗装品質を向上させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−98382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転霧化頭には、静電的な高電圧が印加されるので、この高電圧が電動モータにも印加されると、その高電圧が電動モータの電源回路にも掛かり、該電源回路に負担が掛かる。このため、電動モータを回転霧化頭やこれと同電位とされる高電圧部材から、電気的に絶縁するのが好ましい。
しかしながら、回転霧化頭などに印加される電圧は、非常に高い電圧であるため、電動モータを回転霧化頭等から確実に絶縁するためには、回転霧化頭等と電動モータとの絶縁距離、特に沿面絶縁距離を十分に長くしなければならない。そうすると、絶縁距離を長く確保する分だけ、静電塗装装置が大型化してしまう。静電塗装装置は、例えばロボットに搭載して使用する場合があるため、小型化及び軽量化が望まれる。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、電動モータを静電的な高電圧が掛かる部材から電気的に確実に絶縁できると共に、静電塗装装置を小型化及び軽量化することができる静電塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その解決手段は、被塗物に静電塗装を行う回転霧化式の静電塗装装置であって、回転して塗料を霧化する回転霧化頭であって、静電的に高電圧が印加される回転霧化頭と、前記回転霧化頭を回転駆動する電動モータであって、静電的に接地されてなる電動モータと、前記回転霧化頭及びこれと同電位とされる高電圧部材から、前記電動モータを電気的に絶縁する絶縁部材であって、前記回転霧化頭又は前記高電圧部材から前記電動モータに至る沿面絶縁距離を大きくする形態の絶縁距離長大化部を一又は複数有する、一又は複数の絶縁部材と、を備える静電塗装装置である。
【0008】
本発明の静電塗装装置は、回転霧化頭及び高電圧部材から電動モータを電気的に絶縁する絶縁部材を備える。このため、回転霧化頭や高電圧部材に印加された静電的な高電圧が、電動モータを通じてその電源回路へ掛かることがなくなり、該電源回路に負担が掛からない。
その上、絶縁部材は、沿面絶縁距離を大きくする形態の絶縁距離長大化部を有するので、回転霧化頭又は高電圧部材から電動モータに至る沿面絶縁距離を十分に大きくすることができる。このため、回転霧化頭又は高電圧部材から電動モータまでの距離を小さくした状態で、これらを静電塗装装置に配置できる。また、絶縁部材に絶縁距離長大化部を設けて沿面絶縁距離を稼ぐことで、絶縁部材も小型化及び軽量化できる。従って、電動モータを静電的な高電圧が掛かる部材から電気的に確実に絶縁できると共に、静電塗装装置を小型化及び軽量化することができる。
【0009】
なお、「絶縁部材」は、上記沿面絶縁距離を大きくする形態の「絶縁距離長大化部」を有するものである。「絶縁距離長大化部」としては、例えば、後述するように、上記沿面絶縁距離を大きくするジグザグ状をなすジグザグ部や、上記沿面絶縁距離を大きくする延出形状をなす延出部などが挙げられる。
【0010】
更に、上記の静電塗装装置であって、前記絶縁距離長大化部として、前記沿面絶縁距離を大きくするジグザグ状をなすジグザグ部を有する静電塗装装置とすると良い。
【0011】
本発明の静電塗装装置は、前述の絶縁距離長大化部として、回転霧化頭又は高電圧部材から電動モータに至る沿面絶縁距離を大きくするジグザグ状をなすジグザグ部を有する。このようなジグザグ部を設けることにより、上記沿面絶縁距離を容易に大きくすることができるので、回転霧化頭又は高電圧部材から電動モータを確実に絶縁できる。
【0012】
更に、上記のいずれかに記載の静電塗装装置であって、前記絶縁距離長大化部として、前記沿面絶縁距離を大きくする延出形状をなす延出部を有する静電塗装装置とすると良い。
【0013】
本発明の静電塗装装置は、前述の絶縁距離長大化部として、回転霧化頭又は高電圧部材から電動モータに至る沿面絶縁距離を大きくする延出形状をなす延出部を有する。このような延出部を設けることにより、上記沿面絶縁距離を容易に大きくすることができるので、回転霧化頭又は高電圧部材から電動モータを確実に絶縁できる。
【0014】
更に、上記のいずれかに記載の静電塗装装置であって、前記電動モータに挿通される回転軸を電気絶縁材により形成すると共に、この回転軸に前記絶縁距離長大化部を設けて、この回転軸を前記絶縁部材の1つとしてなる静電塗装装置とすると良い。
【0015】
本発明の静電塗装装置では、回転軸を電気絶縁材により形成すると共に、この回転軸に絶縁距離長大化部を設けて、前述の絶縁部材としている。このように回転軸を前述の絶縁部材とすることで、回転霧化頭又は高電圧部材から電動モータをより確実に絶縁できる。
【0016】
更に、上記の静電塗装装置であって、前記回転軸を絶縁性樹脂により形成してなり、前記回転霧化頭及び前記回転軸にそれぞれ接続され、前記回転軸の回転を増速して前記回転霧化頭に伝達する増速機を更に備える静電塗装装置とすると良い。
【0017】
本発明の静電塗装装置は、増速機を備えるので、増速機で増速する分だけ、電動モータの回転数を小さくできる。このため、回転軸を絶縁性樹脂により形成しているにも拘わらず、回転軸に遠心力等に起因する破損が生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に本実施形態に係る静電塗装装置100を示す。また、図2に図1におけるA−A断面図を示す。また、図3にこの静電塗装装置100の先端側部分を拡大して示す。また、図4に静電塗装装置100を構成する回転軸(第1絶縁部材)140を示し、図5に固設絶縁部材(第2絶縁部材)150を示す。
この静電塗装装置100は、図1中に一部を破線で示すロボットのアームAMに搭載して、被塗物である自動車のボディ(図示しない)に対して静電塗装を行う装置である。なお、図1,図3〜図5においては、図中の左側が先端側、図中の右側が後端側、図中の上側が上側、図中の下側が下側となる。
【0019】
この静電塗装装置100は、図1に示すように、ハウジング110と、このハウジング110よりも先端側に取り付けられた回転霧化頭120と、回転霧化頭120に機械的に接続された増速機(高電圧部材)125とを備える。また、静電塗装装置100は、回転霧化頭120の駆動源となるACサーボモータ(電動モータ)130と、このACサーボモータ130に挿通され、増速機125に機械的に接続された回転軸140とを備える。更に、静電塗装装置100は、増速機125とACサーボモータ130との間に固設した固設絶縁部材150と、塗料が充填される塗料カートリッジ160と、塗料を汲み出す塗料バルブ165とを備える。
【0020】
このうち、ハウジング110は、絶縁性樹脂から形成されてなり、図1及び図3に示すように、その先端側の開口110cには、これを閉塞するようにして金属製の先端部材115が固設されている。この先端部材115には、その内外間を貫通するエア噴出部116が設けられている。このエア噴出部116は、シェーピングエアSAを外部(図1中、左側)に噴射するエア噴出口116cを有する。また、このエア噴出部116は、その後端側において後述するエア通路180に連通している。このため、エア通路180からエア噴出部116に圧縮空気(本実施形態では後述する空冷エアKA)が供給されると、その圧縮空気(空冷エアKA)の全量をシェーピングエアSAの全量として、エア噴出口116cから噴射する。
【0021】
また、この先端部材115には、ハウジング110内の下方側に配設された高電圧カスケード(高電圧発生器)119が、ハウジング110内に配置した高電圧ケーブル118を介して、電気的に接続されている。この高電圧カスケード119は、静電的な高電圧を発生させて、これを先端部材115に印加する。これにより、先端部材115は、使用時に−90kV程度の電位となる。
【0022】
先端部材115の先端側には、金属製の回転霧化頭120が回転自在に取り付けられ、一方、先端部材115の後端側には、回転霧化頭120と機械的に接続する増速機125が配設されている。
回転霧化頭120は、上記のように増速機125と機械的に接続しており、増速機125は、後端側において後述するACサーボモータ130に挿通された回転軸140と機械的に接続している。このため、回転霧化頭120は、増速機125及び回転軸140を介して、ACサーボモータ130の回転駆動力により回転駆動する。
また、前述したように、先端部材115には、高電圧カスケード119により静電的な高電圧が印加される。先端部材115に固設された増速機125とこれに接続した回転霧化頭120も金属から形成されているので、増速機125及び回転霧化頭120にも同様に静電的な高電圧が印加されて、いずれも−90kV程度の電位となる。
【0023】
また、回転霧化頭120には、その径方向中央にSUSチューブからなる塗料供給管170(図1及び図3の他、図2も参照)が接続されている。回転霧化頭120は、ACサーボモータ130及び増速機125により高速回転(本実施形態では約3万回転)し、塗料供給管170からこの回転霧化頭120に供給された流体塗料をその遠心力で微粒子化させて、外部に噴射する。その際、回転霧化頭120には、静電的な高電圧が印加されるので、回転霧化頭120に供給された塗料は負に帯電する。従って、被塗物である自動車のボディを相対的に正電圧(具体的には接地電圧)として塗装を行えば、回転霧化頭120と自動車のボディとの間に静電界が形成されて、負に帯電した霧化塗料を自動車のボディに効率よく塗着させることができる。
【0024】
増速機125は、公知の構成を有する。即ち、この増速機125は、図示しない前段遊星歯車機構と後段遊星歯車機構との2段の増速機構を有する。このうち、前段遊星歯車機構側の入力軸には、後述する回転軸140が機械的に接続されており、一方、後段遊星歯車機構側の出力軸には、回転霧化頭120が機械的に接続されている。これにより、ACサーボモータ130の回転駆動力が、増速機125の前段遊星歯車機構と後段遊星歯車機構とで2段に増速された後、回転霧化頭120に伝達される。本実施形態の増速機125は、6倍に増速するので、ACサーボモータ130の回転数を5千回転とすることにより、回転霧化頭120の回転数を、塗料の噴霧に必要となる3万回転とすることができる。
【0025】
ACサーボモータ130は、ハウジング110内のうち、増速機125よりも後端側の所定位置に配設されている。このACサーボモータ130は、その外周面130gが、周方向に延びる凸部と凹部が軸線方向に交互に並んで形成されたジグザグ状の凹凸形状とされている(図3参照)。従って、この外周面130gは、凹凸がない場合に比して、表面積が大幅に大きくなっている。なお、図1では、記載の都合上、凹凸を省略してある。このACサーボモータ130は、電源ケーブル133等を介して、図示外の電源回路と電気的に接続されており、その電源回路から供給される電力により回転駆動する。ACサーボモータ130は、電源ケーブル133等を介して外部に繋がり、静電的に接地されている。
【0026】
ACサーボモータ130には、その径方向中央に回転軸140が挿通されている。この回転軸140は、絶縁性樹脂により一体成形されている。この回転軸140は、図4に別途示すように、先端側から後端側に円筒状をなして延びる筒状部141を有する。この筒状部141は、その軸線方向中央よりも後端側に位置し、肉薄に形成された後端側肉薄部141kuと、軸線方向中央よりも先端側に位置し、肉厚に形成された肉厚部141wと、この肉厚部141wよりも更に先端側に位置し、肉薄に小さく形成された先端側肉薄部141suとからなる。
【0027】
後端側肉薄部141kuのうち、自身の中央よりも先端側に位置する先端側部141kusは、ACサーボモータ130内に挿通されており、一方、自身の中央よりも後端側に位置する後端側部(第1延出部(絶縁距離長大化部))141kukは、ACサーボモータ130から後端側に向かって延出している。また、肉厚部141wのうち、自身の中央よりも後端側に位置する後端側部141wkは、ACサーボモータ130内に挿通されており、一方、自身の中央よりも先端側に位置する先端側部141wsは、ACサーボモータ130から先端側に向かって延出している。この肉厚部141wの先端近傍は、増速機125に機械的に接続されている。
【0028】
また、筒状部141の径方向内側には、間隙を介して、絶縁性樹脂からなる円筒状の樹脂管173が配設されている(図1〜図3参照)。この樹脂管173は、回転霧化頭120に塗料を供給する塗料供給管170を隙間なく覆っている。この樹脂管173は、回転軸140の筒状部141と共に、ACサーボモータ130を静電的な高電圧から電気的に絶縁するためのものである。即ち、前述したように、先端部材115には、高電圧カスケード119により静電的な高電圧が印加され、増速機125及び回転霧化頭120にも静電的な高電圧が印加されるので、回転霧化頭120に供給される塗料にも、静電的な高電圧が印加される。このため、ACサーボモータ130の内部に挿通された金属製の塗料供給管170も、塗料から静電的な高電圧が印加されて、−90kV程度の電位となる。従って、この高電圧とされる塗料供給管170からACサーボモータ130を電気的に絶縁するために、塗料供給管170とACサーボモータ130との間に、樹脂管173と樹脂製の回転軸140(筒状部141)とを配置している。
【0029】
また、回転軸140の筒状部141のうち、肉厚部141wの先端側部141wsの径方向外側には、図4に示すように、ジグザグ状で断面櫛歯状をなす第1ジグザグ部(絶縁距離長大化部)143が設けられている。この第1ジグザグ部143は、肉厚部141wの先端側部141wsから径方向外側に円板状に延出する円板部143aを有する。また、第1ジグザグ部143は、円板部143aの径方向内側寄りの所定位置から先端側に延出し、肉厚部141wの先端側部141wsの外側を同心円状に取り囲む円筒状の第1−1円筒部143bを有する。また、第1ジグザグ部143は、円板部143aの所定位置から先端側に延出し、第1−1円筒部143bの外側を同心円状に取り囲む円筒状の第1−2円筒部143cを有する。更に、第1ジグザグ部143は、円板部143aの径方向外側の所定位置から先端側に延出し、第1−2円筒部143cの外側を同心円状に取り囲む円筒状の第1−3円筒部143dを有する。
【0030】
このように本実施形態では、回転軸140が第1ジグザグ部143を有しているので、静電的な高電圧が印加される増速機125からACサーボモータ130までの沿面絶縁距離が十分に長くなっている。具体的に説明すると、増速機125のうちの後端側に位置する部位Aから、ACサーボモータ130のうちの先端側に位置する部位Bまでの沿面絶縁距離ABが、第1ジグザグ部143が存在することにより、大幅に長くなっている。従って、増速機125からACサーボモータ130まで届く沿面放電を確実に防止できるので、ACサーボモータ130を増速機125から確実に絶縁できる。なお、本実施形態では、回転霧化頭120は、増速機125よりも更に先端側に離れて配置されているので、ACサーボモータ130は、回転霧化頭120からも確実に絶縁されている。
【0031】
また、回転軸140は、後端側肉薄部141kuの後端側部(第1延出部)141kukを有しているので、これによっても静電的な高電圧が印加される増速機125からACサーボモータ130までの沿面絶縁距離が十分に長くなっている。具体的には、増速機125のうちの後端側に位置する部位Cから、ACサーボモータ130のうちの後端側に位置する部位Dまでの、ACサーボモータ130の内部を通る沿面絶縁距離CDが、後端側部141kukが存在することにより、大幅に長くなっている。従って、増速機125からACサーボモータ130まで届く沿面放電を確実に防止できるので、ACサーボモータ130を増速機125から確実に絶縁できる。
【0032】
また、ACサーボモータ130と増速機125との間には、固設絶縁部材150が介在している。この固設絶縁部材150は、絶縁性樹脂から一体成形されている。この固設絶縁部材150は、図5に別途示すように、その大部分がACサーボモータ130と増速機125との間に位置して、先端側で増速機125に当接すると共に、後端側でACサーボモータ130に当接する概略筒状の本体部151を有する。
【0033】
本体部151の径方向内側には、ジグザグ状で断面櫛歯状をなす第2ジグザグ部(絶縁距離長大化部)153が設けられている。この第2ジグザグ部153は、本体部151の所定位置から後端側に延出し、回転軸140のうち肉厚部141wの先端側部141wsの外側を同心円状に取り囲む円筒状の第2−1円筒部153bを有する。また、第2ジグザグ部153は、本体部151の所定位置から後端側に延出し、第2−1円筒部153bの外側を同心円状に取り囲む円筒状の第2−2円筒部153cを有する。更に、第2ジグザグ部153は、本体部151の所定位置から後端側に延出し、第2−2円筒部153cの外側を同心円状に取り囲む円筒状の第2−3円筒部153dを有する。
【0034】
第2ジグザグ部153の第2−1円筒部153bは、回転軸140の肉厚部141wの径方向外側であり、かつ、回転軸140における第1ジグザグ部143の第1−1円筒部143bの径方向内側に配置されている(図5の他、図4も参照)。また、第2ジグザグ部153の第2−2円筒部153cは、第1ジグザグ部143の第1−1円筒部143bの径方向外側であり、かつ、第1ジグザグ部143の第1−2円筒部143cの径方向内側に配置されている。また、第2ジグザグ部153の第2−3円筒部153dは、第1ジグザグ部143の第1−2円筒部143cの径方向外側であり、かつ、第1ジグザグ部143の第1−3円筒部143dの径方向内側に配置されている。
【0035】
また、本体部151の後端側には、本体部151から後端側に向かって延出する円筒状の第2延出部(絶縁距離長大化部)155が設けられている。この第2延出部155は、ACサーボモータ130の外周面130gよりも径方向外側に配置されている。
【0036】
このように本実施形態では、固設絶縁部材150が第2ジグザグ部153を有しているので、静電的な高電圧が印加される増速機125からACサーボモータ130までの沿面絶縁距離が十分に長くなっている。具体的に説明すると、増速機125のうちの後端側に位置する部位Eから、ACサーボモータ130のうちの先端側に位置する部位Fまでの沿面絶縁距離EFが、第2ジグザグ部153が存在することにより、大幅に長くなっている。従って、ACサーボモータ130を増速機125から確実に絶縁できる。なお、本実施形態では、回転霧化頭120は、増速機125よりも更に先端側に離れて配置されているので、ACサーボモータ130は、回転霧化頭120からも確実に絶縁されている。
【0037】
また、固設絶縁部材150は、第2延出部155を有しているので、これによっても静電的な高電圧が印加される増速機125からACサーボモータ130までの沿面絶縁距離が十分に長くなっている。具体的には、増速機125の部位GからACサーボモータ130の部位Hまでの沿面絶縁距離GHが、第2延出部155が存在することにより、大幅に長くなっている。従って、ACサーボモータ130を増速機125から確実に絶縁できる。
【0038】
次に、空冷エアKAが流通するエア通路180について説明する(図1及び図3参照)。このエア通路180は、ACサーボモータ130の外周面130gの後端近傍からこの外周面130gに沿って先端側に延びる第1通路部181を有する。この第1通路部181は、ハウジング110のうち、ACサーボモータ130の外周面130gを取り囲む円筒状のハウジング筒部111の内周面111fによって構成されており、第1通路部181内には、ACサーボモータ130の外周面130gが露出している。
【0039】
また、この第1通路部181の後端部181kは、図示しない通路部を介して、静電塗装装置100の外部に通じており、外部に設置された図示外の加圧エア源に接続されている。このため、加圧エア源から空冷エア(圧縮空気)KAがエア通路180に供給されると、空冷エアKAは第1通路部181をその後端部181kから先端部181sに向かって流れる。その際、この第1通路部181内には、ACサーボモータ130の凹凸状をなす表面積の大きい外周面130gが露出しているので、ACサーボモータ130が空冷エアKAにより効率よく冷却される。
【0040】
また、エア通路180は、第1通路部181の先端部181sと繋がり、第1通路部181の径方向外側を後端側に延びる第2通路部183を有する。この第2通路部183は、ハウジング110のハウジング筒部111の外周面111gと、固設絶縁部材150の第2延出部155の内周面115fによって構成されている。ACサーボモータ130を冷却しながら第1通路部181を流れてきた空冷エアKAは、この第2通路部183をその先端部183sから後端部183kへと流れる。
【0041】
また、エア通路180は、第2通路部183よりも径方向外側に配置され、一方で第2通路部183の後端部183kに繋がると共に、他方でエア噴出部116に繋がる第3通路部185を有する。この第3通路部185は、ハウジング110の内周面111fと固設絶縁部材150の外周面150g、及び、先端部材115の内面115fと増速機125の外周面125gによって構成される。第2通路部183を流れてきた空冷エアKAは、この第3通路部185をその後端部185kから先端部185sへと流れる。そして、空冷エアKAはエア噴出部116に供給される。その後は、この空冷エアKAの全量が、シェーピングエアSAの全量として、エア噴出口116cから外部に噴射される。
【0042】
また、静電塗装装置100は、図1に示すように、樹脂製の塗料カートリッジ160を備える。この塗料カートリッジ160は、ハウジング110の後端側に装着されている。この塗料カートリッジ160には、塗装に用いる水性塗料が充填されている。また、この塗料カートリッジ160の先端側には、ハウジング110内のうち、ACサーボモータ130よりも後端側に配設された金属製の塗料バルブ165が接続されている。この塗料バルブ165は、塗料カートリッジ160から塗料を汲み出し、塗料供給管170を通じて、回転霧化頭120に塗料を供給する。
【0043】
前述したように、高電圧カスケード119により、先端部材115、増速機125及び回転霧化頭120には、静電的な高電圧が印加されるので、回転霧化頭120に供給される塗料にも、静電的な高電圧が印加される。また、この塗料は、上記のように、塗料カートリッジ160から塗料バルブ165、塗料供給管170を通じて回転霧化頭120に供給される。このため、塗料に静電的な高電圧が印加されると、金属製の塗料バルブ165や塗料供給管170にも、静電的な高電圧が印加されて、いずれも−90kV程度の電位となる。しかしながら、塗料バルブ165とACサーボモータと130との間には、絶縁性樹脂からなるハウジング110の一部が介在するので、ACサーボモータ130は、静電的な高電圧が掛かる塗料バルブ165からも確実に電気的に絶縁されている。
【0044】
以上で説明したように、本実施形態の静電塗装措置100は、回転霧化頭120及び増速機125からACサーボモータ130を電気的に絶縁する回転軸140及び固設絶縁部材150を備えるので、回転霧化頭120や増速機125に印加された静電的な高電圧が、ACサーボモータ130を通じてその電源回路へ掛かることがなくなり、該電気回路に負担が掛からない。
【0045】
その上、回転軸140は、絶縁距離長大化部として、第1ジグザグ部143と後端側肉薄部141kuの後端側部(第1延出部)141kukを有するので、増速機125からACサーボモータ130に至る沿面絶縁距離AB,CDを大きくすることができる。このため、増速機125とACサーボモータ130との距離を小さくして、これらを静電塗装装置100内に配置できる。また、回転軸140も、特にその軸線方向について小型化して、軽量化できる。従って、ACサーボモータ130を静電的な高電圧が掛かる増速機125から電気的に確実に絶縁しつつ、静電塗装装置100を小型化及び軽量化することができる。
【0046】
また、固設絶縁部材150は、絶縁距離長大化部として、第2ジグザグ部153と第2延出部155を有するので、増速機125からACサーボモータ130に至る沿面絶縁距離EF,GHを大きくすることができる。このため、増速機125とACサーボモータ130との距離を小さくして、これらを静電塗装装置100内に配置できる。また、固設絶縁部材150も、特にその軸線方向について小型化して、軽量化できる。従って、ACサーボモータ130を静電的な高電圧が掛かる増速機125から電気的に確実に絶縁しつつ、静電塗装装置100を小型化及び軽量化することができる。
【0047】
更に、本実施形態では、回転軸140及び固設絶縁部材150に、絶縁距離長大化部として、第1ジグザグ部143、後端側部(第1延出部)141kuk、第2ジグザグ部153、及び、第2延出部155を有するので、上記沿面絶縁距離AB,CD,EF,GHを、容易に大きくすることができ、増速機125からACサーボモータ130を確実に絶縁できる。
更に、本実施形態では、増速機125を備えるので、増速機125で増速する分だけ、ACサーボモータ130の回転数を小さくできる。具体的には、ACサーボモータ130の回転数を回転霧化頭120の回転数の6分の1である5千回転に小さくできる。このため、回転軸140を金属等に比して剛性の低い絶縁性樹脂により形成しているにも拘わらず、回転軸140に遠心力等に起因する破損が生じにくい。
【0048】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施形態に係る静電塗装装置の側面断面図である。
【図2】実施形態に係る静電塗装装置のうち、図1におけるA−A断面図である。
【図3】実施形態に係る静電塗装装置のうち、図1の先端側の部分を拡大して示す部分断面図である。
【図4】実施形態に係る静電塗装装置のうち、回転軸を示す説明図である。
【図5】実施形態に係る静電塗装装置のうち、固設絶縁部材を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
100 静電塗装装置
110 ハウジング
116c エア噴出口
116 エア噴出部
120 回転霧化頭
125 増速機(高電圧部材)
130 ACサーボモータ(電動モータ)
130g 外周面
140 回転軸(第1絶縁部材)
141 筒状部
141kuk (後端側肉薄部の)後端側部(第1延出部)(絶縁距離長大化部)
143 第1ジグザグ部(絶縁距離長大化部)
150 固設絶縁部材(第2絶縁部材)
151 本体部
153 第2ジグザグ部(絶縁距離長大化部)
155 第2延出部(絶縁距離長大化部)
160 塗料カートリッジ
165 塗料バルブ
170 塗料供給管
180 エア通路
KA 空冷エア
SA シェーピングエア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物に静電塗装を行う回転霧化式の静電塗装装置であって、
回転して塗料を霧化する回転霧化頭であって、静電的に高電圧が印加される回転霧化頭と、
前記回転霧化頭を回転駆動する電動モータであって、静電的に接地されてなる電動モータと、
前記回転霧化頭及びこれと同電位とされる高電圧部材から、前記電動モータを電気的に絶縁する絶縁部材であって、前記回転霧化頭又は前記高電圧部材から前記電動モータに至る沿面絶縁距離を大きくする形態の絶縁距離長大化部を一又は複数有する、一又は複数の絶縁部材と、
を備える静電塗装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の静電塗装装置であって、
前記絶縁距離長大化部として、前記沿面絶縁距離を大きくするジグザグ状をなすジグザグ部を有する
静電塗装装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の静電塗装装置であって、
前記絶縁距離長大化部として、前記沿面絶縁距離を大きくする延出形状をなす延出部を有する
静電塗装装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の静電塗装装置であって、
前記電動モータに挿通される回転軸を電気絶縁材により形成すると共に、この回転軸に前記絶縁距離長大化部を設けて、この回転軸を前記絶縁部材の1つとしてなる
静電塗装装置。
【請求項5】
請求項4に記載の静電塗装装置であって、
前記回転軸を絶縁性樹脂により形成してなり、
前記回転霧化頭及び前記回転軸にそれぞれ接続され、前記回転軸の回転を増速して前記回転霧化頭に伝達する増速機を更に備える
静電塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−39684(P2009−39684A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209580(P2007−209580)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591274059)ランズバーグ・インダストリー株式会社 (38)
【出願人】(390040051)株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ (91)
【Fターム(参考)】