説明

静電容量可変型導電性シリコーンゴム組成物

【目的】 どのような設計あるいはどのような回路の中で用いても常に定常的な電気的応答を可能ならしめる静電容量可変型導電性シリコーンゴム組成物を提供する。
【構成】 シリコーンゴム組成物に、導電性カーボンブラックと共に複酸化物あるいは、元素周期表II族の金属もしくは金属化合物の表面に複酸化物層を形成してなる物質を配合する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、導電性シリコーンゴムを電気回路中に用いた製品において、主に電圧印加あるいは電流印加開始時(以下、「スイッチング時」と表記)に生じる電流あるいは電圧が定常状態に落ちつくまでの初期の不安定さを解消するためにゴムの配合設計の側から改善を図ったものであり、広く導電性シリコーンゴムをその電気回路中に組み込む全ての分野に応用可能な技術に関する。
【0002】
【発明の技術的背景とその問題点】近年、電気・電子部品の高性能化、小型化、多機能化が要求されている中で、電気回路等に導電性ゴムを用いる例が増大している。特に、極性がなく高純度であり、さらには耐候性、耐熱性、耐寒性、電気絶縁安定性等に優れていることから、シリコーンゴムを導電化した導電性シリコーンゴムが用いられることが多い。一方、上記電気回路等に用いられる導電性ゴムは、一般に導電性の尺度である体積抵抗率が100 〜1010Ω・cm程度の広い範囲で要求されていることから、現在、配合技術の改良とともに目的に合致した導電性シリコーンゴムの開発がなされつつある。ところで、上記導電性シリコーンゴムを使用する機器の中には、例えばPPC(静電複写機)の転写、帯電および除電ローラやゴム製スイッチング素子に見られる如く、回路に電圧印加した瞬間から常に安定した電流を、あるいは回路に電流を流した瞬間から常に安定した電圧を、あるいは回路に電圧印加した瞬間から常に安定した電力消費量になることを絶対条件として求められる機器がある。しかしながら、体積抵抗率(以下、ρv と表記)が102 Ω・cm以下程度であれば、その電気回路のコンデンサー、ダイオード、抵抗素子などを工夫すれば上記条件を満たすことも可能であるが、ρv が103 Ω・cm以上であると、いかに回路に工夫を凝らしたとしても上記条件すなわち電圧、電流、電力消費量等の安定化は望めなかった。従って、このことが上述した新技術展開のネックとなっており、現在に至ってもかかる技術課題を解決する有力な技術手段は確立されていない。上記スイッチング時の電圧、電流、電力消費量等の安定化には、いわゆる静電容量が関与する。ここで静電容量というのは、絶縁された導体に電荷eを与えてその電位がφとなった場合のe/φの値であり、一般に、その導体の有する体積抵抗率と等しい体積抵抗率を有するものであっても静電容量が異なるケースは多々存在する。例えば、PPCの導電性シリコーンゴムローラをその回路中に備えたトナー転写システムにおいては、設計方針に基づいて、硬さ20〜60程度でρvが100 〜1012Ω・cm程度の導電性のシリコーンゴムが求められる。しかしながら、従来、上記トナー転写システムの主に定電圧印加回路においては、スイッチング時に電流の乱れや吸収電流の発生が生じ、その結果使用不可能となることがあった。
【0003】
【発明の目的】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、どのような設計あるいはどのような回路の中で用いても常に定常的な電気的応答を可能ならしめる静電容量可変型導電性シリコーンゴム組成物の提供を目的とする。
【0004】
【発明の構成】本発明者は、上記課題解決へのアプローチを試みた結果、上記回路において、上述した不都合を生じさせない最適静電容量があること、また導電性シリコーンゴムの場合、ρv を変えないで静電容量を向上させるには、導電性付与剤として導電性カーボンブラックを、また静電容量コントロール剤として複酸化物あるいは、元素周期表II族の金属もしくは金属化合物の表面に複酸化物層を形成してなる物質を配合すればよいことを見い出し本発明を完成するに到った。即ち本発明は、導電性カーボンブラックが配合された導電性シリコーンゴム組成物において、複酸化物あるいは、元素周期表II族の金属もしくは金属化合物の表面に複酸化物層を形成してなる物質を配合したことを特徴とする静電容量可変型導電性シリコーンゴム組成物である。
【0005】本発明は、弾性体中に複酸化物を含有することを特徴とする帯電部材に最適なシリコーンゴム組成物であり、かかる本発明のシリコーンゴム組成物を用いた帯電部材によれば、従来安定しなかった半導電領域における電気的応答が安定的で且つ再現性のよいものが製造できる。しかも適宜補強剤あるいは軟化剤を該弾性体中に配合することによって、半導電領域において任意の抵抗値の材料が安定して得られるだけでなく補強性や柔軟性などの物性も弾性体に付与することができる。従って、本発明の帯電材料を例えば感光体の帯電に適用した場合には、感光体に対する充分なニップ巾が得られ、これにより良好な帯電特性が得られる。本発明の基本構成は、(A) 導電性カーボンブラックが配合された導電性シリコーンゴム組成物と(B) 複酸化物あるいは、元素周期表II族の金属もしくは金属化合物の表面に複酸化物層を形成してなる物質とからなる。
【0006】本発明の(A) 成分である導電性シリコーンゴム組成物は、(a) ポリオルガノシロキサンベースポリマーと、(b) 硬化剤と(c) 導電性カーボンブラック、更に必要に応じて各種添加剤等を配合し、均一に分散させたものである。このようなシリコーンゴム組成物に用いられる各種成分のうち、(a) ポリオルガノシロキサンベースポリマーと(b) 硬化剤とは、ゴム状弾性体を得るための反応機構に応じて適宜選択されるものである。その反応機構としては、(1) 有機過酸化物加硫剤による架橋方法、(2) 付加反応による方法等が知られており、その反応機構によって、(a) 成分と(b) 成分すなわち硬化用触媒もしくは架橋剤との好ましい組合わせが決まることは周知である。すなわち、上記(1) の架橋方法を適用する場合において、通常(a) 成分のベースポリマーとしては、1分子中のケイ素原子に結合した有機基のうち、少なくとも2個がビニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニルなどのアルケニル基であるポリオルガノシロキサンが用いられる。特に合成の容易さ、原料の入手のし易さからビニル基のものが多用される。また、(b) 成分の硬化剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クミル−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の各種の有機過酸化物加硫剤が用いられ、特に低い圧縮永久歪みを与えることから、ジクミルパーオキサイド、クミル−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドが好ましい。尚、これらの有機過酸化物加硫剤は、1種または2種以上の混合物として用いられる。(b) 成分の硬化剤である有機過酸化物の配合量は、(a) 成分のシリコーンベースポリマー100 重量部に対して0.05〜15重量部の範囲が好ましい。有機過酸化物の配合量が0.05重量部未満では加硫が充分に行われず、15重量部を超えて配合してもそれ以上の格別な効果がないばかりか、得られたシリコーンゴムの物性に悪影響を与えることがあるからである。また、上記(2) の付加反応を適用する場合の(a) 成分のベースポリマーとしては、上記(1) の反応におけるベースポリマーと同様のものが用いられる。また、(b) 成分の硬化剤としては、硬化用触媒として、塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金ビニルシロキサン錯体、白金黒、白金トリフェニルホスフィン錯体等の白金系触媒が用いられ、架橋剤としてケイ素原子に結合した水素原子が1分子中に少なくとも平均2個を超える数を有するポリジオルガノシロキサンが用いられる。(b) 成分の硬化剤のうち、硬化用触媒の配合量は、(a) 成分のベースポリマー100 重量部に対して白金元素量で1〜1000ppm の範囲が好ましい。硬化用触媒の配合量が白金元素量として1ppm 未満では充分に硬化が進行せず、また1000ppmを超えて配合しても特に硬化速度の向上等が期待できない。また、架橋剤の配合量は、(a) 成分中のアルケニル基1個に対して架橋剤中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5 〜4.0 個の範囲となる量が好ましく、さらに好ましくは上記水素原子が1.0 〜3.0 個の範囲となる量である。上記水素原子の量が0.5 個未満である場合は、組成物の硬化が充分に進行せずに硬化後の組成物の硬さが低下し、水素原子の量が4.0 個を超えると、硬化後の組成物の物理的性質と耐熱性が低下する。上述したような各種反応機構において用いられる(a) 成分のベースポリマーとしてのポリオルガノシロキサンにおける有機基は、一価の置換または非置換の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基のようなアルキル基、フェニル基のようなアリール基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基のようなアラルキル基等の非置換の炭化水素基や、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の置換炭化水素基が例示される。なお、一般的には、メチル基が合成のし易さ等から多用される。(c) 成分の導電性カーボンブラックは、一般的に導電性付与の目的で使用されるものであれば特にその特性・形状は制限されない。またその配合量も、硬化後に必要とされる導電特性に応じて適宜決定されるが、一般的には(a) 成分のベースポリマー100 重量部に対し0.01〜150 重量部の範囲で配合される。
【0007】本発明に用いる(B) 成分の複酸化物あるいは、元素周期表II族の金属もしくは金属化合物の表面に複酸化物層を形成してなる物質とは、2種以上の酸化物から成る高次化合物(分子間の結合によって生じた化合物)、即ち2種以上の金属が共存している金属酸化物、あるいは元素周期表II族の金属もしくは金属化合物の表面に複酸化物の層を設けたものである。ここで用いられる複酸化物の製造方法の1例を挙げると、金属酸化物結晶格子中に1種又は2種以上の異種の金属イオンを分散させ、還元雰囲気中で焼成する方法である。例えば、酸化亜鉛と酸化アルミニウムとの複酸化物の場合には、酸化亜鉛とアルミニウム塩をアンモニウム塩水溶液中で処理し、脱水処理後水素雰囲気中で焼成して得る(特公昭62−41171号公報参照)。従って、本発明で用いる複酸化物は、単なる金属酸化物とは異なる。このような複酸化物としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)と酸化アルミニウム(Al2O3)との固溶体の化合物、酸化スズ(SnO2)と酸化アンチモン(Ab2O5)との固溶体、酸化インジウム(In2O3)と酸化スズ(SnO2)との固溶体、酸化亜鉛(ZnO)と酸化チタン(Ti2O3)との固溶体、酸化亜鉛(ZnO)と酸化スズ(SnO2)との固溶体、酸化マグネシウム(MgO)と酸化アルミニウム(Al2O3)との固溶体の化合物、および酸化鉄(FeO)と酸化チタン(TiO2) との固溶体などが挙げられる。このような複酸化物の特徴は、それぞれの金属の原子半径が近く、置換型固溶体を成していること、およびそれぞれの原子価数が異なることより、夫々単独の金属酸化物では得られない導電性が得られることである。これらの複酸化物の比抵抗値は101 〜103 Ω・cmであり、導電性カーボンブラックや補強性カーボンブラック又はTiO2や酸化ルテニウムなど(10-2〜100 Ω・cm)より高く、また酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、四三酸化鉄および酸化スズなど(104 Ω・cm)より低い。上記の複酸化物の中でも、得られる導電性シリコーンゴムの電気特性のコントロールのし易さから、酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体、酸化インジウムと酸化スズとの固溶体、および酸化アルミニウムと酸化亜鉛との固溶体が好ましい。又、(B) 成分のもう一つの原料である元素周期表II族の金属もしくは金属化合物としては、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、スチロンチウム、バリウム等及びその酸化物、水酸化物、硫化物、硝化物あるいは炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これら元素周期表II族の金属もしくは金属化合物の表面に、通常の被覆方法により上記複酸化物の層を形成させることにより、本発明の(B) 成分が製造される。この(B) 成分は、一般に粒径0.01〜20μm の粉粒体として(A) 成分に配合される。(B) 成分の配合量は、そのシリコーンゴム組成物を用いた回路に求められる設計の要求や条件により実証的に決定されるが、多くは、導電性カーボンブラック配合量の1〜50%(重量比)である。(B) 成分は、1種又は2種以上を混合して配合される。
【0008】さらに、この(B) 成分を表面処理して使用することは引張強さや耐圧縮永久歪みなどの物理的特性を向上させるのに有効である。表面処理剤としては、シラン化合物、シラザン、ポリオルガノシロキサン等を挙げることができるが、(B) 成分に対する表面処理効果を考慮すると、特にシラン化合物が好ましい。シラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルシランジオール、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン等が例示される。また、ポリオルガノシロキサンとしては、下記一般式で示されるものが例示され、その重合度は100 以下、好ましくは50以下である。
RaSiO(4-a)/2式中、R は水素及び/又は一価の置換または非置換の炭化水素基であり、一価の置換または非置換の炭化水素基としては、ビニル基のようなアルケニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基のようなアルキル基、フェニル基のようなアリール基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基のようなアラルキル基等の非置換の炭化水素基や、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の置換炭化水素基が例示される。なお、一般的には、メチル基、ビニル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。また、a は0〜3.0 の数である。また、シラザンとしては、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザンなどが例示される。これらの表面処理剤は、求められる本組成物の要求特性により1種又は2種以上を組み合わせて用いても良い。表面処理剤の添加量は、(B) 成分量の0.1 〜5重量%が好ましく、更に好ましくは0.2 〜1.5 重量%である。これらの表面処理剤で(B) 成分を表面処理する方法としては、■組成物を調製する際に一緒に表面処理剤を混合させる方法や、■予め表面処理した(B) 成分を配合する方法などがある。■予め表面処理する方法としては、通常、本発明の条件を満たすように調製された(B) 成分に表面処理剤を加え、ヘンシェルミキサー等の通常の攪拌装置で混和させる方法が用いられる。混和に際しては、常温でも加熱でも良いが、100 〜300 ℃程度の加熱下で行うのが好ましい。作業性の点では■の方法が有効であり、表面処理の点では■の方法が効果的であり、(B) 成分の表面処理方法はこれらを考慮して適宜選択される。
【0009】なお、本発明の静電容量可変型導電性シリコーンゴム組成物には、充填剤、顔料、発泡剤、耐熱性向上剤、難燃剤などを随時付加的に配合してもよい。このようなものとしては、通常、煙霧質シリカ、沈澱法シリカ、けいそう土などの補強性充填剤、マイカ、クレイ、グラファイト、ガラスビーズなどが例示される。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリジメチルシロキサン、アルケニル基含有ポリシロキサン、ポリオルガノシルセスキオキサンのような他のポリオルガノシロキサンを併用してもよい。
【0010】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、以下の実施例中、部は重量部を表す。
実施例1シロキサンベースポリマーとしてメチルビニルシロキサン単位を0.15モル%含有するポリジメチルシロキサン(重合度約5000)100 部、導電性カーボンブラックとして「デンカブラックHS−100」(電気化学工業(株)製)20部、金属化合物として、酸化亜鉛と酸化スズとの固溶体(B-1;「パストラン2100」三井金属鉱業(株)製) 3部、及び硬化剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン1.5 部を混合・混練し、コンパウンドを調製した。次に、このコンパウンドを用いて10mm×10mm×1mmの試料シートを作成し、作成した試料シートの体積抵抗率を測定して導電性を評価した。なお、この試料シートは、シート成形後、170 ℃、10分間の条件でプレス加硫を行い、次いで二次加硫として200 ℃、4時間の熱空気加硫を行って作成したものである。また、体積抵抗率ρV の測定は、JIS K-6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠し、500 Vの印加電圧で行った。又、静電容量というファクターは、その試料の容積で変化するので、試料の誘電率を測定した。即ち、上記加硫シートについて、25℃、110Hz の条件で、安藤電気(株)製「TR−1100型 誘電体損自動測定装置」を用い誘電率を測定した。更に、厚さ1mmの上記加硫シートをその回路中に含む直流回路に100 Vの電圧を印加した際のスイッチング時の電流波形を測定した。結果を表1及び図1に示す。
【0011】実施例2金属化合物として、硫酸バリウムの表面に複酸化物層として酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体を被覆したもの(B-2;「パストラン4110」三井金属鉱業(株)製) を用いた他は実施例1と同様にシリコーンゴムシートを得て、評価した。結果を表1及び図1に示す。
【0012】実施例3金属化合物として、酸化亜鉛と酸化アルミニウムの固溶体(B-3;「導電性亜鉛華」本荘ケミカル(株)製) を用いた他は実施例1と同様にシリコーンゴムシートを得て、評価した。結果を表1及び図1に示す。
【0013】比較例1〜2比較例として金属化合物を配合しない場合、酸化チタン(元素周期表IV族)の表面に複酸化物層として酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体を被覆したもの(B'-1 ;「W−1」三菱マテリアル(株)製 )を用いた場合について、実施例1と同様にシリコーンゴムシートを得て、評価した。結果を表1及び図1に示す。
【0014】
【表1】


【0015】上記実施例1〜3と比較例1〜2との対比からも明らかなように、本発明にかかるシリコーンゴム組成物は、比較例1〜2の従来のシリコーンゴム組成物に比べて体積抵抗率(ρv )がほとんど同等のままであるにもかかわらず、誘電率が2〜3倍の大きさであり、しかも電流波形が極めて安定であった。
【0016】実施例4金属化合物として、酸化亜鉛と酸化アルミニウムの固溶体(B-3;「導電性亜鉛華」本荘ケミカル(株)製) を10部用いる以外は実施例1と同様の方法で、厚さ1mmおよび2mmのシリコーンゴムシートを得た。また、圧縮永久歪み測定用の、厚さ12.7mm、直径29.0mmの直円柱状の試験片を作製した。これらを用いて、実施例1と同様の評価、並びに引張強さおよび圧縮永久歪みの測定を行った。結果を表2に示す。
【0017】実施例5金属化合物として、上記 B-3を1.0 重量%(対 B-3)のビニルトリエトキシシランと共にヘンシェルミキサーにより150 ℃で処理したもの(B-4)を用いた以外は、実施例4と同様にして試験片を得て、評価した。結果を表2に示す。
【0018】
【表2】


【0019】
【発明の効果】以上述べたように、本発明のシリコーンゴム組成物を用いることにより、ρvが従来と変わることなく静電容量の向上した帯電部材が得られる。従って、かかる帯電部材によれば、どのような設計あるいはどのような回路の中で用いても常に定常的な電気的応答が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a) 〜(e) は、夫々実施例1〜3、比較例1〜2により得たシートを用いた直流回路に電圧を印加した際のスイッチング時の電流波形を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電性カーボンブラックが配合された導電性シリコーンゴム組成物において、複酸化物あるいは、元素周期表II族の金属もしくは金属化合物の表面に複酸化物層を形成してなる物質を配合したことを特徴とする静電容量可変型導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】 複酸化物が、酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体、酸化インジウムと酸化スズとの固溶体、および酸化アルミニウムと酸化亜鉛との固溶体から選ばれた少なくとも1つである請求項1記載の静電容量可変型導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】 複酸化物が、シラン化合物、シラザン及びポリオルガノシロキサンから選ばれた少なくとも1種の表面処理剤により処理されたものである請求項1又は2記載の静電容量可変型導電性シリコーンゴム組成物。

【図1】
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