説明

静電容量型スイッチ及びそれを備える重量測定装置、並びに静電容量型スイッチの調整方法

【課題】感度調整を短時間で簡易に行え、薄型化できる静電容量型スイッチ及びそれを備える重量測定装置を提供することを目的とする。さらに、静電容量型スイッチの感度調整を短時間で簡易に行える調整方法を提供する。
【解決手段】 互いに離間して配置される複数の電極構成部材を有するパターン電極と、パターン電極と、対象物を介した接地と、の間の静電容量の変化に基づき、対象物の接近を識別する識別手段と、を備え、パターン電極は、複数の電極構成部材が、互いに導通可能に構成されていることにより、パターン電極の面積が可変であることを特徴とする静電容量型スイッチ、及びそれを備える重量測定装置、並びに、それを用いる静電容量型スイッチの調整方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定対象の荷重を検知するための重量測定装置等の電気機器に用いられる静電容量型スイッチ及びそれを備える重量測定装置、並びに静電容量型スイッチの調整方法に関する。特に、パターン電極の面積が可変である静電容量型スイッチ及びそれを備える重量測定装置、並びに、パターン電極の面積を変えることにより静電容量を調整できる静電容量型スイッチの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気機器等のオン及びオフするために、種々の静電容量型スイッチが利用されている。静電容量型スイッチは、金属製のセンサ電極に、使用者が指を接近又は接触すると生じる静電容量の変化を検知し、静電容量が閾値を超えたときに、電気機器のオン及びオフを実行する部材である。
【0003】
静電容量型スイッチを構成するIC(集積回路)は、スイッチ動作に必要な閾値が予め設定され、変更できないタイプや、ICの製造メーカが提供しているアプリケーションソフトを用いて、前述の静電容量型スイッチで用いる閾値等を設定するタイプが存在する。通常は、静電容量型スイッチを備える電気機器等を出荷する前に、機体間で当該スイッチの感度が異ならないように、性能検査が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−159661号公報
【特許文献2】特開2006−210843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
性能検査の結果、所定の感度を有さないことが識別されても、前者のタイプでは、ICの感度を調整することができない。従って、静電容量型スイッチを備える電気機器等の歩留まりを向上させることが困難である。一方、後者のタイプのICの感度を調整するためには、アプリケーションソフトを用いるための専門知識が必要であるのみならず、ICにパソコンを接続して調整するといった、複雑な作業が必要となる。結果として製品出荷に要する時間の短縮が難しい。
また、特許文献1及び2に開示されている可動電極をセンサ電極として用い、静電容量型スイッチを構成することも考えられる。しかし、センサ電極をその面に垂直な方向に可動させる構造とすると、装置の構造が複雑化してしまい、また、静電容量型スイッチの薄型化も難しい。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、感度調整を短時間で簡易に行うことができ、薄型化できる静電容量型スイッチ及びそれを備える重量測定装置を提供することを目的とする。さらに、静電容量型スイッチの感度調整を短時間で簡易に行える調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の静電容量型スイッチは、互いに離間して配置される複数の電極構成部材を有するパターン電極と、前記パターン電極と、対象物を介した接地と、の間の静電容量の変化に基づき、前記対象物の接近を識別する識別手段と、を備え、前記パターン電極は、前記複数の電極構成部材が、互いに導通可能に構成されていることにより、前記パターン電極の面積が可変であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の静電容量型スイッチによれば、前記複数の電極構成部材は、互いに同心に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の静電容量型スイッチによれば、前記複数の電極構成部材は、互いに同一面上に配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の静電容量型スイッチによれば、前記複数の電極構成部材のうち、第1の電極構成部材は基板の一面側に配置され、第2の電極構成部材は前記基板の他面側に配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するための重量測定装置は、被測定対象の重量を測定する重量測定手段と、前記いずれか1に記載の静電容量型スイッチと、前記識別手段による前記対象物の接近の識別に基づいて前記重量測定手段を制御する制御手段と、を備え、前記識別手段により前記対象物が接近していることを識別されると、前記制御手段は、前記重量測定手段を作動させることを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するための静電容量型スイッチの調整方法は、上記いずれか一の本発明の静電容量型スイッチの調整方法であって、前記識別手段が、前記パターン電極と前記接地との間の電圧が閾値電圧を超えるまでの時間を計測する工程と、前記時間が閾値時間を超えない場合に、前記パターン電極の面積を拡大する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パターン電極の面積は可変である。従って、静電容量型スイッチの調整は、パターン電極の面積を変更するという簡易な方法により、厚さ寸法を増加させることなく、感度を調整できる静電容量型スイッチ及び当該スイッチを備える重量測定装置を実現できる。さらに、静電容量型スイッチの感度の調整は、パターン電極の面積を変更するという、簡易な方法で実現できる。
また、予めICに閾値等が設定されているタイプの静電容量型スイッチであっても、感度調整を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る重量測定装置のブロック図である。
【図2】図1に示される重量測定装置のスイッチ回路の回路図である。
【図3】図2に示されるパターン電極の正面図である。
【図4】図2に示されるスイッチ回路の電圧と時間及び放電カウントとの関係を示すグラフである。
【図5】変形例1に係るパターン電極の正面図である。
【図6】変形例2に係るパターン電極を示す図であり、(a)は基板の一面側のパターン電極、(b)は基板の他面側のパターン電極である。
【図7】変形例3に係るパターン電極を示す図であり、(a)は基板の一面側のパターン電極、(b)は基板の他面側のパターン電極である。
【図8】図1の重量測定装置の感度調整の方法を示す模式図である。
【図9】図1の重量測定装置の感度調整の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔重量測定装置〕
以下に、本発明の実施形態に係る静電容量型スイッチを、重量測定装置1に適用した場合を一例として、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る重量測定装置のブロック図、図2は、図1に示される重量測定装置のスイッチ回路の回路図、図3は、図2に示されるパターン電極の正面図、図4は、図2に示されるスイッチ回路の電圧と時間及び放電カウントとの関係を示すグラフである。なお、図4のグラフ中、横軸は、充電開始からの経過時間と、放電開始した後の放電カウントとを表し、縦軸は、電圧を表す。また、重量測定装置1は、被測定対象が人である体重計であってもよいし、被測定対象が物であるはかりであってもよく、特に限定されるものではない。
【0016】
図1に示すように、重量測定装置1は、重量測定部3と、制御部5と、電源部7と、表示部9と、スイッチ回路11と、操作部13と、記憶部15と、を備える。マイコンから構成される制御部5は、各構成要素に電気的に連結され、当該要素を制御する。
【0017】
重量測定部3は、被測定対象の重量を測定するためのセンサである。重量測定部3は、一例として、ロードセルと、重量検出回路と、で構成すればよい。ロードセルは、被測定対象が載せられる不図示の載置部に連結されて、被測定対象の荷重に応じて変形する金属部材からなる起歪体と、起歪体の歪み可能部分である起歪部に貼られて起歪部の変形(伸縮)に応じて抵抗値が変化する歪みゲージと、で構成する。また、重量検出回路は、前記ロードセルの抵抗値の変化を検出できるように構成する。
【0018】
また、重量測定装置1は、電池又は外部電源等から構成される電源部7から電力が供給され作動する。記憶部15は、ROM(不揮発性メモリ(Read Only Memory))、RAM(揮発性メモリ(Random Access Memory))などによって構成され、重量測定装置1を動作させるための初期設定事項等が格納される。表示部9は、液晶等から構成されている。操作部13は、初期設定事項等を記憶部15から呼び出すことや、その設定事項を変更するために利用される。ここで、設定事項とは、例えば、表示部9に表示される情報の文字や記号の大きさ、日時等である。
【0019】
上記構成の重量測定装置1の制御部5は、後述するスイッチ回路11からオンを示すスイッチ信号を受けると、所定のプログラムに従った動作信号を発する。例えば、重量測定部3を機能させ、被測定対象の重量測定を開始できる状態とする。この状態で、被測定対象が載置部に載せられたときには、重量測定部3からの荷重信号に基づき、制御部5は、被測定対象の荷重を演算し、表示部9に荷重を表示させる。
【0020】
〔スイッチ回路〕
以下に、重量測定装置1のオン・オフ等の操作をするための静電容量型スイッチであるスイッチ回路11について、図2乃至図4を参照しつつ説明する。図2に示すように、スイッチ回路11は、一例として、識別手段であるIC(集積回路)21と、センサ電極23と、タッチ部25と、抵抗51、53と、コンデンサ55、59と、を備える構成とする。
【0021】
センサ電極23は、所定のパターンを有するパターン電極23a(図3参照)と、パターン電極23aが形成される基板(不図示)と、から構成される板状部材である。このパターン電極23aにより静電容量57が形成される。すなわち、抵抗51に連結するセンサ電極23と接地58とが、コンデンサとして機能する。
【0022】
さらに、センサ電極23は、タッチ部25の裏面25aに貼着される。また、タッチ部25は、重量測定装置1の本体ケース(不図示)のうち、対象物としての使用者の指等が接触できる部位に配置される。従って、センサ電極23が貼着される面(25a)とは反対側のタッチ部25の面、すなわちタッチ部25の表面25bに、対象物としての使用者の指等が接近又は接触すると、人体(使用者)を電気的に接地導体とみなせるため、静電容量57の容量値が増加する。なお、タッチ部25は、誘電体として機能する。
【0023】
パターン電極23a(図3参照)は、アルミニウム、ステンレス、銅等の導電性を有する金属又は導電性ペイントを利用できる。タッチ部25は、アクリル、ポリカーボネート等のプラスチック材料やガラス材料といった絶縁物から作製される板状部材である。
【0024】
また、IC21の入力ポート21aには、抵抗51の一端側が接続され、抵抗51の他端側は、電極パターン23aを構成する第1の電極構成部材31(図3参照)へ接続される。IC21の出力ポート21bには、抵抗53の一端側が接続され、抵抗53の他端側が、コンデンサ59の一端側に接続され、コンデンサ59の他端側は接地される。さらに、抵抗51の一端側と抵抗53の一端側とは、コンデンサ55により接続されている。
【0025】
〔パターン電極〕
次に、センサ電極23の構成要素であるパターン電極23aについて、図3を参照して説明する。なお、図3には、基板は示されていない。パターン電極23aは、導電性の薄膜部材から形成され、一例として同一面上に配置された、第1の電極構成部材31、第2の電極構成部材33、第3の電極構成部材35、及び第4の電極構成部材37、から構成されている。第1の電極構成部材31は、円形領域部31aと、円形領域部31aの円周上の一点から、円形領域部31aの中心から離れるように直径方向で直線状に延びる直線領域部31bと、を有する。なお、図2の抵抗51の他端は、第1の電極構成部材31の直線領域部31bに連結されている。
【0026】
また、第2の電極構成部材33は、第1の電極構成部材31の円形領域部31aと同心で、直線領域部31bに交差しないように延在するC字状領域部33aと、C字状領域部35aの一端部から、直線領域部31bに平行で直線状に延びる直線領域部33bと、を有する。
【0027】
第3の電極構成部材35は、第1の電極構成部材31の円形領域部31aと同心で、C字状領域部33aの外周側に配置されるC字状領域部35aと、直線領域部35bとを有する。直線領域部35bは、C字状領域部35aの一端部から、直線領域部31bと同方向で平行に延びる。
【0028】
第4の電極構成部材37は、第1の電極構成部材31の円形領域部31aと同心で、C字状領域部35aの外周側に配置されるC字状領域部37aと、直線領域部37bとを有する。直線領域部37bは、C字状領域部37aの一端部から、直線領域部31bと同方向で平行に延びる。
【0029】
さらに、直線領域部31b、33bには、後述の第1の導体配置領域41を設け、同様に、直線領域部31b、33b、35bには、導体配置領域43を設け、直線領域部31b、33b、35b、37bには、導体配置領域45を設けている。
【0030】
ここで、図示しない導電性部材、例えば半田部材が、基板上の第1の導体配置領域41に配置されると、第1の電極構成部材31と第2の電極構成部材33とが導通する。これにより、配置前よりも配置後の方が、パターン電極23aの面積を拡大させることが可能となる。同様に、第1の導体配置領域41、及び第2の導体配置領域43に半田部材等が配置されると、第1乃至第3の電極構成部材31、33、35が互いに導通し、パターン電極23aの面積をさらに拡大できる。また、第1乃至第3の導体配置領域41、43、45に半田部材が載置されると、第1乃至第4の電極構成部材31、33、35、37が互いに導通し、パターン電極23aの面積が最大となる。本発明によるスイッチ回路11の感度の調整は、上記のように、パターン電極23aの面積を変えることによって実現するものである。
【0031】
なお、本実施形態は、重量測定装置1の出荷前に、スイッチ回路の感度調整を行う目的で、製造者が導電部材により電極構成部材間を導通させる構成である。しかし、電極構成部材同士を機械的又は電気的に選択できるスイッチ機構を周知の手段で設けることも可能である。スイッチ機構を利用することにより、重量測定装置の使用者自身が、必要に応じてスイッチ回路の感度調整を行うこともできることとなる。
【0032】
次に、スイッチ回路11の動作について、図2及び図3を参照して説明する。本実施形態のスイッチ回路11は、静電容量57の容量値C2の変化を、電圧値V1の変化として捉え、重量測定装置1のオン及びオフ等の操作を行う構成である。V1は、パターン電極23aと接地58との間の電圧である。
【0033】
まず、出力ポート21bを介してコンデンサ59に電荷を蓄える充電工程を行う。なお、入力ポート21aを介して、電圧値V1を検知する。なお、V1は、以下の式(1)で表わされる。
V1=C1/(C1+C2)×V3・・・(1)
ここで、V3は、コンデンサ59の両端の電圧である。C1は、コンデンサ55の容量値である。従って、使用者の指がタッチ部25に触れるとC2は増大するので、V1が下がる関係となる。
【0034】
次に、出力ポート21bをグラウンドレベルに切り替え、コンデンサ59及び静電容量57の電荷を放電する放電工程を行う。放電工程において、電圧V1の変化を、入力ポート21aを介して検知する。
併せて、(1)放電開始時(図4における放電カウント0の点)から、電圧V1(図4におけるVa、Vb)が閾値電圧Vt(図4参照)に至るまで放電されるのにかかった時間(図4におけるNa、Nb)を、「放電カウント」として計測する。
或いは、(2)充電開始(図4における時間0の点)後、電圧V1(図4におけるVa、Vb)が閾値電圧Vt(図4参照)を超えた時から、放電開始後、閾値電圧Vt(図4参照)に至るまで放電されるのにかかった時間(図4におけるσa、σb)を計測する。
以上のような、充電、放電、時間(放電カウントN又は時間σ)の計測、が繰り返し実行される。
【0035】
使用者の指がタッチ部25に触れているか否かの識別は、IC21により、以下の通り行われる。
一例としては、前記(1)で計測した放電カウントNを用いて識別する場合である。使用者の指がタッチ部25に触れていない場合には、静電容量57の容量値C2(図2参照)の値は小さいので、式(1)よりV1は大きい値となり、図4におけるグラフFaに示すようになる。一方、使用者の指がタッチ部25に触れている場合には、静電容量57の容量値C2の値は大きくなるので、式(1)よりV1は小さい値となり、図4におけるグラフFbに示すようになる。すなわち、放電開始時(図4における放電カウント0の点)においては、指がタッチ部25に触れている場合の電圧Vbよりも、指がタッチ部25に触れていない場合の電圧Vaの方が大きい。従って、放電開始時(図4における放電カウント0の点)から、電圧Vaが閾値電圧Vtに至るまで放電されるのにかかる時間(すなわち放電カウントNa)は、電圧Vbが閾値電圧Vtに至るまで放電されるのにかかる時間(すなわち放電カウントNb)よりも長くなるので、放電開始から、閾値電圧Vtまで放電されるまでの放電カウントNに差異が生じる。そこで、放電カウントNに関する閾値(閾値時間)として、閾値カウントNtを予め設定しておく。これにより、閾値カウントNt以上の時間(例えば放電カウントNa)が計測された場合(すなわち、閾値カウントNtを超えない場合)、IC21は指がタッチ部25に触れていないと識別し、反対に、閾値カウントNt未満の時間(例えば放電カウントNb)が計測された場合(すなわち、閾値カウントNtを超えた場合)、IC21は指がタッチ部25に触れていると識別する。
【0036】
また、他の例としては、前記(2)で計測した時間σを用いて識別する場合である。すなわち、コンデンサ59及び静電容量57の充電及び放電の完了を一周期とした場合に、その一周期内において、閾値電圧Vtを超えている時間(σ)が、閾値時間σtを超えているか否かを基準として、指がタッチ部25に触れているか否かの識別を行う構成にすることもできる。前記(1)と同様、放電開始時(図4における放電カウント0の点)において、指がタッチ部25に触れている場合の電圧Vbよりも、指がタッチ部25に触れていない場合の電圧Vaの方が大きい。従って、電圧Vaが閾値電圧Vtに至るまで放電されるのにかかる時間Taは、電圧Vbが閾値電圧Vtに至るまで放電されるのにかかる時間Tbよりも長くなる。よって、充電開始から放電されるまでの1周期内において、閾値電圧Vtを超えている時間(σ)に差異が生じる。そこで、閾値電圧Vtを超えている時間(σ)に関する閾値(閾値時間)として、閾値時間σtを予め設定しておくことにより、閾値時間σt以上の時間(例えば、時間σa)が計測された場合(すなわち、閾値時間σtを超えない場合)、IC21は指がタッチ部25に触れていないと識別し、反対に、閾値時間σt未満の時間(例えば、時間σb)が計測された場合(すなわち、閾値時間σtを超えた場合)、IC21は指がタッチ部25に触れていると識別する。
【0037】
指がタッチ部25に触れたと識別されると、IC21の制御ポート21cから制御部5へ駆動信号が送られ、予め設定されているプログラムに従って、重量測定装置1が作動される。例えば、重量測定部3からの荷重信号を制御部5が受け、その荷重信号に対応する荷重が演算され、表示部9に表示させる。
【0038】
静電型スイッチの感度は、図3に示すパターン電極23aの面積を変更することで調整できる。まず、第1の電極構成部材31のみを利用する(半田部材が導体配置領域41、43、45に配置されていない状態)の場合において、指をタッチ部25へ接触させたときに、図4のグラフFaに示す関係が取得されたとする。この場合には、指をタッチ部25に接触させても、閾値カウントNt以上の時間(放電カウントNa)が計測される(すなわち、閾値カウントNtを超えない)。よって、指がタッチ部25に触れているにも拘わらず、IC21からの駆動信号が、制御部5に送られず、重量測定装置1が作動しない。
【0039】
そこで、製品出荷前の性能検査等において、第1の導体配置領域41、さらに必要であれば、第2及び第3の導体配置領域43、45に導電部材を配置することで、パターン電極23aの面積を拡大し、スイッチ回路の感度の調整を行う。なお、静電容量57の容量値C2は、以下の式(2)で示される。
C2=ε×ε×S/L・・・(2)
【0040】
ここで、εは、真空の誘電率、εは、誘電体の比誘電率、Sは、電極の有効面積、Lは、センサ電極23と使用者の指との間の距離を示す。なお、電極の有効面積Sとは、使用者の指に対して対向するパターン電極の面積である。従って、パターン電極23aの面積を大きくすることにより、指に対する電極の有効面積Sが大きくなり、静電容量57の容量値C2が大きくなる。従って、パターン電極23aと接地58との間の電圧V1は下がり、タッチ部25に指が触れたときには、検出される電圧V1の値が相対的に小さくなる。パターン電極の面積を大きくすることにより、図4のグラフFbに示す関係がIC21により取得されると、指のタッチ部25への接触を識別することができるようになる。
【0041】
以下に、パターン電極の変形例1乃至3について説明する。後述のパターン電極は、前述のパターン電極23aと同様にスイッチ回路に組み込むことができる。
〔パターン電極の変形例1〕
変形例1に係るパターン電極71について説明する。図5は、基板(不図示)に設けられているパターン電極71の正面図である。パターン電極71は、薄膜の導電性材料から形成され、第1の電極構成部材73と、第2の電極構成部材75と、を有する。第1の電極構成部材73は、矩形領域部73aと、矩形領域部73aの中心を通り、一方の辺から、該辺に対して垂直に延びる引出部73bと、を有する。引出部73bには、第1の電極構成部材73と第2の電極構成部材75とを電気的に接続させるための第1の導体配置領域73cが設けられている。
【0042】
第2の電極構成部材75は、三辺を有するコ字形状であり、第1の電極構成部材73の矩形領域部73aを取り囲み、引出部73bが、開口する一辺から第2の電極構成部材75の外部に向かい延びている。また、第2の電極構成部材75の一端部には、第2の導体配置領域75cが設けられている。
【0043】
前記実施形態と同様に、第1の電極構成部材73だけでは、指がタッチ部に触れていることを識別できる程度の、接地に対するパターン電極71の静電容量57の容量値C2が変化しない場合には、第1の導体配置領域73cと、第2の導体配置領域75cとを、導電部材で連結することにより、パターン電極71の面積を拡大することができる。結果として、スイッチ回路の感度を高めることができる。
【0044】
〔パターン電極の変形例2〕
変形例2に係るパターン電極81について説明する。図6は、変形例2に係るパターン電極を示す図であり、(a)は基板の一面側のパターン電極、(b)は基板の他面側のパターン電極である。パターン電極81は、薄膜の導電性材料から形成され、第1の電極構成部材83及び第2の電極構成部材85と、を有する。第1の電極構成部材83は、基板の一面側に配置される矩形部83aと、基板の他面側に配置されて、矩形部83aに電気的に接続される引出部83bと、を有する。
【0045】
第2の電極構成部材85は、基板の一面側に配置される矩形状リング部85aと、基板の他面側に配置され、矩形状リング部85aに電気的に接続される引出部85bと、を有する。また、矩形状リング部85aは、矩形部83aの外周側に、同心に配置されている。また、第2の電極構成部材85の引出部85bと、第1の電極構成部材83の引出部83bとは、互いに離間して配置されている。
【0046】
矩形部83aと、引出部83bとは、基板の厚さ方向に貫通するスルーホール83dを介して導電部材(不図示)により導通している。同様に矩形状リング部85aと、引出部85bとは、基板の厚さ方向に貫通するスルーホール85dを介して導電部材(不図示)により導通している。
【0047】
前記変形例1と同様に、第1の電極構成部材83だけでは、指がタッチ部に触れていることを識別できる程度に、接地に対するパターン電極の静電容量57の容量値C2が変化しない場合には、第1の導体配置領域83cと、第2の導体配置領域85cとを、導電部材で連結することにより、パターン電極81の面積を拡げ、静電容量57の変化量を大きくする。結果として、スイッチ回路の感度を高めることができる。
【0048】
〔パターン電極の変形例3〕
変形例3に係るパターン電極91について説明する。図7は、変形例3に係るパターン電極を示す図であり、(a)は基板の一面側のパターン電極、(b)は基板の他面側のパターン電極である。変形例3は、変形例2の矩形部83aの代わりに、円形部93aを有し、矩形状リング部85aの代わりに、円形リング部95a、を有する。変形例3のパターン電極91の、その他の構成や配置関係は、変形例2のパターン電極81と同じであり、同様の効果を奏する。
【0049】
なお、図7中、符号93、95は、それぞれ第1及び第2の電極構成部材であり、符号93b、95bは、それぞれ第1及び第2の電極構成部材93、95の引出部である。符号93d、95dは、スルーホールであり、93c、95cは、それぞれ第1及び第2の導体配置領域である。
【0050】
〔スイッチ回路の調整方法〕
実施形態1に係る重量測定装置1のスイッチ回路(静電容量型スイッチ)の感度の調整方法について、主として図8及び図9を参照して説明する。図8は、図1の重量測定装置1の感度を調整する方法を示す模式図、図9は、図1の重量測定装置1の感度調整の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図面の明瞭化のため、図8から、重量測定装置1の制御部5及びスイッチ回路11の一部のみを記載し、その他の構成を割愛している。
【0051】
重量測定装置1の感度の調整方法には、感度の適否を示す検査治具101と、導電ゴム等から成る検査棒100と、が用いられる。また、重量測定装置1には、IC21と制御部5とを接続する電気回路上に検査用テストランド61が設けられている。この検査用テストランド61は、例えば重量測定装置1の外部から、検査治具101の検査治具ピン109を接続させることができるようになっている。
検査治具101は、電源103と、電源103に一端部が連結される発光ダイオード(LED)105と、発光ダイオード105の他端部が、抵抗107を介して連結される検査治具ピン109と、を備える。
【0052】
スイッチ回路11の調整方法は、以下のように行なわれる。なお、以下の説明では、一例として、放電カウントNを用いて識別する場合を説明するが、前記の通り、時間σを用いて識別してもよいことは言うまでもない。
まず、治具装着工程(ステップS1)において、検査治具101及び検査棒100が、調整対象である重量測定装置1に装着される。具体的には、検査治具101の検査治具ピン109を、検査用テストランド61に接続させる。さらに、検査棒100をタッチ部25に当接させる。
【0053】
タッチ部25に使用者の指が触れている状態を再現するため、検査棒100は、アース接続されている。従って、検査棒100がタッチ部25に接触すると、静電容量57の容量値C2が増加する(図2参照)。
【0054】
次に、充電されたコンデンサ59及び静電容量57から電荷の放電を開始する時点から、電圧V1が閾値電圧Vtを超えるまでの時間(放電カウントN)を、IC21により計測・取得する(ステップS2)。
【0055】
IC21により取得された放電カウントNが閾値カウントNtを超えているか否かを識別する識別工程に移行する(ステップS3)。放電カウントNが、閾値カウントNtを超えている場合(ステップS3でYes)、IC21の制御用出力ポート21c(図2参照)が、Lowレベル(すなわち、0V)に切り替えられる。従って、検査用テストランド61の電位は0Vである。例えば、電源103の電圧が3Vの場合には、発光ダイオード105の両端に生じる電位差により電流が流れ、発光ダイオード105が点灯する(ステップS4)。すなわち、スイッチ回路の感度が正常であることを示す。
【0056】
反対に、ステップS2において取得された放電カウントNが閾値カウントNtと等しい、又は到達していないと識別されると(ステップS3でNo)、ステップS5に移行する。この場合には、IC21の制御用出力ポート21cはHighレベルのまま、例えば、制御用出力ポート21cから3Vが出力される。このときには、検査用テストランド61の電位が3Vとなる。従って、発光ダイオード105の両端に電位差が無いため、電流が流れず、発光ダイオード105は点灯しない。すなわち、スイッチ回路の感度が悪いことを示す。
【0057】
取得された放電カウントNが閾値カウントNtを超えていないときは、静電容量57の容量値C2の変化が十分でないことを示している。従って、ステップS5において、パターン電極23aの導体配置領域41に導電部材を配置し、第1の電極構成部31と第2の電極構成部33を導通させることで、パターン電極23aの面積を拡大する(図3、図4参照)。
【0058】
その後、ステップS1に戻り、パターン電極23aとして、第1及び第2の電極構成部31、33(図3参照)を用いて、上記のステップS1乃至S3を繰り返し、スイッチ回路11が所定の感度を有するか否か(すなわち、発光ダイオード105が点灯するか否か)が識別される。ステップS2において、取得された放電カウントNが閾値カウントNtを超えていると識別されると(ステップS3でYes)、ステップS4に移行し、発光ダイオード105が点灯し、調整完了である。
【0059】
取得された放電カウントNが閾値カウントNtを超えていないと再度識別されると(ステップS3でNo)、ステップS5に移行し、導体配置領域43(図3参照)にも導電部材を配置しパターン電極23aの面積をさらに拡大する(ステップS5)。
【0060】
その後、ステップS1乃至S3を経て、取得された放電カウントNが閾値カウントNtを超えるか否かが識別され、その閾値を超えていれば(ステップS3でYes)、発光ダイオード105が点灯し(ステップS4)、調整完了である。取得された放電カウントNが閾値カウントNtを超えていなければ(ステップS3でNo)、導電部材を導体配置領域45(図3参照)に配置してパターン電極23aの面積をさらに拡大して(ステップS5)、ステップS1乃至S3を繰り返す。このように、ステップS1乃至S3は、パターン電極23aに設けられている導体配置領域の数だけ繰り返すことができる。
【0061】
最終的に、取得された放電カウントNが閾値カウントNtを超えていなければ、スイッチ回路の修理又は取り替え作業が行われる。反対に、取得された放電カウントNが閾値カウントNtを超えていれば発光ダイオード105が点灯し感度調整を完了する。
【0062】
このように、パターン電極23aは、導通部材を使わない場合と、導電部材を3つの導体配置領域に装着する場合とで、スイッチ回路11の感度を調整できる。よって、スイッチ回路毎に生じる製造誤差に基づく感度の差異を、容易に調整することができる。
【0063】
以上の実施形態では、本発明に係る静電容量型スイッチを、重量測定装置に適用した場合について説明したが、本発明に係る静電容量型スイッチは、重量測定装置に限らず、あらゆる機器に適用できることについては言うまでもない。
また、パターン電極23aの電極構成部材の材料、形状、数、及び寸法等は、実施形態や変形例1乃至3の構成に限定されることなく、適宜変更できる。
さらに、前述の実施形態、変形例、及び静電容量式スイッチの調整方法では、静電容量の変化によるパターン電極と接地との間の電圧変化に基づき、使用者の身体の接触及び非接触を識別し、スイッチ回路をオン、オフしたり、感度調整を行う構成である。しかし、本発明はこの構成に限定されることはない。例えば、ウィーンブリッジ発振回路等のCR発振回路を用い、静電容量の変化による周波数の変化に基づき、使用者のタッチ部への接触及び非接触を識別することや、感度調整を行う構成としてもよい。
【0064】
実施形態及び変形例では、パターン電極を構成する複数の電極構成部材は、同一平面上(同一基板上)に設ける構成としたが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、一の電極構成部材と、他の電極構成部材とが、タッチ部材の厚み方向に関し異なる配置、すなわち、複数枚重ねられた基板のそれぞれに配置してもよい。接地に対する静電容量の容量値は、式(2)に示す通り距離Lに反比例するので、選択できる静電容量の容量値の選択の自由度を広げることができる。
【0065】
実施形態において説明した本発明に係る静電容量型スイッチの感度調整は、主として出荷前の工場で行うことを想定したものであったが、出荷後、使用者自身が感度調整を簡易に行うことができるようにしてもよい。この場合には、本発明に係る静電容量型スイッチを適用した機器を分解することなく、自分自身の指をタッチさせながら感度調整を行えるようにするのが好適であり、簡単な機械的操作、例えば、機器の本体ケース上のいずれかに設けられているスライドボタンを操作することなどによって、パターン電極の導体配置領域に導電部材が配置され、第1の電極構成部と第2の電極構成部(更には第3の電極構成部)が導通されるように構成する。
【0066】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態及び変形例は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1 重量測定装置
3 重量測定部
5 制御部
7 電源部
9 表示部
11 スイッチ回路
13 操作部
15 記憶部
21 IC
23 センサ電極
23a、71、81、91 パターン電極
25 タッチ部
31、33、35、37、73、
75、83、85、93、95 電極構成部材
41、43、45 導体配置領域
51、53、107 抵抗
55、59 コンデンサ
57 静電容量
61 検査用テストランド
100 検査棒
101 検査治具
103 電源
105 発光ダイオード
109 検査治具ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間して配置される複数の電極構成部材を有するパターン電極と、
前記パターン電極と、対象物を介した接地と、の間の静電容量の変化に基づき、前記対象物の接近を識別する識別手段と、を備え、
前記パターン電極は、前記複数の電極構成部材が、互いに導通可能に構成されていることにより、前記パターン電極の面積が可変であること
を特徴とする静電容量型スイッチ。
【請求項2】
前記複数の電極構成部材は、互いに同心に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型スイッチ。
【請求項3】
前記複数の電極構成部材は、互いに同一面上に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電容量型スイッチ。
【請求項4】
前記複数の電極構成部材のうち、第1の電極構成部材は基板の一面側に配置され、第2の電極構成部材は前記基板の他面側に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電容量型スイッチ。
【請求項5】
被測定対象の重量を測定する重量測定手段と、
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1に記載の静電容量型スイッチと、
前記識別手段による前記対象物の接近の識別に基づいて前記重量測定手段を制御する制御手段と、を備え、
前記識別手段により前記対象物が接近していることを識別されると、前記制御手段は、前記重量測定手段を作動させること
を特徴とする重量測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1に記載の静電容量型スイッチの調整方法であって、
前記識別手段が、前記パターン電極と前記接地との間の電圧が閾値電圧を超えるまでの時間を計測する工程と、
前記時間が閾値時間を超えない場合に、前記パターン電極の面積を拡大する工程と、を有すること
を特徴とする静電容量型スイッチの調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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