説明

静電容量式タッチパネル操作用の手袋及びその製造方法

【課題】安価に製造でき、かつ優れた操作性を実現する静電容量式タッチパネル操作用の手袋及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】手に装着される柔軟な手袋本体12のうちの親指部18、人差指部20及び中指部22の先端側部分に、導電性を有する糸で編成された導電性繊維部18a,20a,22aを備える。導電性繊維部18a,20a,22aの手の平部14側の外面に、導電性を有する樹脂材料で形成された導電部である導電性突起部18b,20b,22bを備える。導電性繊維部18a,20a,22aと導電性突起部18b,20b,22bとが互いに導通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手に装着した状態で静電容量式タッチパネルの操作を行うことができる手袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、静電容量式タッチパネルを備えたスマートフォン等の携帯用機器が広く普及しつつある。この種の携帯用機器は屋外の寒い場所でも使用されるので、手袋をはめたままタッチパネルを操作したいという要求が少なくない。
【0003】
手に装着したまま静電容量式タッチパネルを操作できる手袋として、例えば特許文献1に開示されているように、導電性繊維の糸で編成された親指袋及び人差指袋を有し、その他の残部が非導電性繊維の糸で編成されたタッチパネル操作用の手袋がある。
【0004】
また、特許文献2に開示されているように、非導電性の手袋本体の指先のタッチパネル操作面に、所定面積を有する導電体を設けたタッチパネル操作用手袋がある。この導電体としては、導電性を有する糸、塗料、樹脂、金属材又はゴム材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3160211号公報
【特許文献2】特開2008−81896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の手袋の場合、手袋を装着しているだけで、細かな操作がしにくくなる上に、タッチパネルの操作画面に触れる導電部が手の指先よりも広くなるので、手袋を装着しないときに比べて著しく操作しにいという問題がある。特に、小型機器のタッチパネルは、操作画面に小さな操作ボタン(例えば、キーボードのキーやアイコン等)が密集して表示されているので、操作画面に触れる導電部の面積が広すぎると、誤って隣の操作ボタンにタッチしてしまうことが多くなる。この手袋は、手の指先全体が導電性の袋体に覆われ、導電部の面積が手の指先よりも広くなるので、手袋を装着しないときよりも誤タッチしやすくなり、慣れない使用者は思い通りに操作できず苦労する。
【0007】
特許文献2のタッチパネル操作用手袋の場合、例えば、指先部分の導電体を導電性の塗料で形成しその面積を適宜調整する旨が記載されているが、使用者は、操作中に指先のどの位置に導電性部分があるのかを認識できないので、導電性部分を所望の操作ボタンに的確にタッチさせるのが容易ではない。
【0008】
また、一般的な静電容量式タッチパネルは、標準状態でパネル全体に均一な電圧勾配が形成され、使用者が操作画面を指でタッチすると、その指先から人体(人体は、外部コンデンサに相当する。)を通じて電流が流れ、パネル全体の電圧勾配が部分的に不均一となり、その不均一さを検出することによってタッチされた箇所を特定する。導電性樹脂を指先部分に設けたタッチパネル操作用手袋は、導電性樹脂が手袋生地の外側に塗布されているだけなので、人体との導通が難しく、操作ボタンをタッチした時、人体を通じて流れる電流が変動する。従って、タッチパネルの感度が悪く、タッチされたか否かの判定やタッチされた箇所の特定が正確に行われず、操作性が良くないものであった。
【0009】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、安価に製造でき、かつ優れた操作性を実現する静電容量式タッチパネル操作用の手袋及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、手袋本体の少なくとも指部の先端部分に、導電性を有する樹脂材料で形成され前記先端部分の繊維中に染み込んで表裏に露出した導電部を備え、前記先端部分の前記導電部により前記手袋本体の表裏が電気的に導通している静電容量式タッチパネル操作用の手袋である。
【0011】
手袋本体の指部の先端側部分には、導電性を有する糸で編成された導電性繊維部が形成され、前記導電部は、前記導電性繊維部の手の平側の外面に突出した導電性突起部から成るものである。
【0012】
前記導電部を構成する樹脂材料は、主成分の合成樹脂に導電フィラーが配合されたものである。
【0013】
前記導電性繊維部と前記導電性突起部が、前記手袋本体の親指部、人差指部及び中指部に設けられているものである。また、前記手袋本体の手のひら側の面に、滑り止めが設けられているものでも良い。前記導電部は、前記手袋本体の前記指先部分から掌部分に設けられているものでも良い。
【0014】
またこの発明は、所定の編み糸を使用して編成された手袋本体の内側に、板状の手型部材を挿入する手型部材装着工程と、前記手型部材が装着された前記手袋本体の指部の少なくとも先端側部分に、導電性を有する樹脂材料を染み込ませて表裏に露出させて導電部を形成する導電部形成工程とを有し、前記先端部分の前記導電部により前記手袋本体の表裏を電気的に導通状態とする静電容量式タッチパネル操作用の手袋の製造方法である。
【0015】
さらに、前記手袋本体の指部の先端側部分に導電性の糸を使用し、その他の部分に所定の編み糸を使用して編成する手袋本体編成工程と、前記手袋本体の内側に入れられる板状の手型部材を、前記手袋本体内側に挿入する手型部材装着工程と、前記手型部材を挿入した状態で、前記導電性を有する糸で成る導電性繊維部の手の平側の外面に導電性を有する樹脂材料を塗布する導電性突起部形成工程とを有するものでも良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の静電容量式タッチパネル操作用の手袋は、導電性を有する材料が使用者の指先の広い範囲に安定に接触するので、使用者の操作がタッチパネルに精度よく認識されるようになる。
【0017】
特に、指先部分に導電性突起部を設けることにより、タッチパネルの操作画面に小さな操作ボタンが密集して表示されている場合でも、導電性突起部の先端で所望の操作ボタンに的確にタッチすることができる。
【0018】
また、導電性繊維部及び導電性突起部を、手袋本体の親指部、人差指部及び中指部に設けることによって、使用者は、操作画面をタッチするときに使う指を自分の好みや癖に合わせて選択することができ、複数点のタッチを検出するタッチパネルの操作も可能になる。
【0019】
さらに、本発明の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の製造方法によれば、上記の優れた特徴を有する手袋を、安価で効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第一実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋を示す正面図(a)と右側面図(b)である。
【図2】この発明の第一実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の製造方法に使用する手型部材を示す正面図(a)と右側面図(b)である。
【図3】この実施形態の手型部材装着工程を説明する正面図(a)と右側面図(b)である。
【図4】この実施形態の導電性突起部形成工程を説明する平面図(a)と正面図(b)である。
【図5】この実施形態の導静電容量式タッチパネル操作用の手袋の他の例を示す部分断面図である。
【図6】この実施形態の導静電容量式タッチパネル操作用の手袋のさらに他の例を示す正面図(a)と滑り止め突起の部分拡大図(b)、(c)である。
【図7】この実施形態の導静電容量式タッチパネル操作用の手袋のさらに他の例を示す正面図である。
【図8】この発明の第二実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋を示す正面図である。
【図9】第二実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の指先部分を示す部分断面図である。
【図10】この発明の第三実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋を示す正面図である。
【図11】第三実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の指先部分を示す部分断面図である。
【図12】第三実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の製造工程を説明する図である。
【図13】この発明の第四実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋を示す正面図(a)、左側面(b)である。
【図14】第四実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の第一実施形態である手袋10について、図1に基づいて説明する。手袋10は、ナイロンやポリエステル、綿やウール等の非導電性の編み糸を手袋状に編み上げた手袋本体12から成る。手袋本体12は手の平部14と手の甲部16が筒状に形成され、手の平部14と手の甲部16の一方の端部には、親指部18、人差指部20、中指部22、薬指部24、小指部26の5本の指部が形成されている。手の平部14と手の甲部16の他方の端部は筒状の手首部28が設けられ、手首部28は伸縮性が高い織り方で手首にフィットするように作られている。
【0022】
親指部18、人差指部20、中指部22の先端側部分は、導電性を有する糸で編成された導電性繊維部18a,20a,22aになっている。導電性を有する糸は、繊維表面に金属コーティング等がなされたものやカーボン繊維等から成り、適度な柔らかさを有する糸が用いられる。例えば、日本蚕毛染色株式会社のサンダーロン(登録商標)などが好適である。導電性繊維部18a,20a,22aは、各指の末節(第一関節から先端側の部分)を袋状に覆う範囲に設けられている。
【0023】
導電性繊維部18a,20a,22aの手の平部14側の外面には、導電性を有する樹脂で形成された導電部である導電性突起部18b,20b,22bがそれぞれ設けられている。導電性を有する樹脂は、導電性繊維部18a,20a,22aにしっかりと塗着して導通するものであればよく、ここでは、比較的安価で取り扱いが容易なものとして、例えば、主成分のPP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリウレタン、シリコーン、アクリル等の合成樹脂に、金属粒子である導電フィラーが配合された樹脂材料が使用されている。また、導電性突起部18b,20b,22bの形状は略円錐台状であり、例えば上底の直径が約3mm、下底の直径が約5mm、高さが約5mmに設定されている。
【0024】
次に、この発明の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の製造方法の一実施形態を、手袋10を製造する流れに沿って説明する。この実施形態に係る手袋の製造方法は、手袋本体編成工程、手型部材装着工程、及び導電性突起部形成工程から成る。
【0025】
まず、手袋本体編成工程で、非導電性の編み糸を手袋状に編成し、親指部18、人差指部20、中指部22の指先部分については、導電性を有した糸で導電性繊維部18a,20a,22aを編成して、手袋本体12を編み上げる。
【0026】
次に、図2に示すような、手袋本体12の内側に挿入可能な外形を有した板状の手型部材30を用意する。手型部材30は、金属板、木板又は樹脂板等を加工したもので、手袋本体12と同じように5本の指型部32が形成されている。隣り合う指型部32同士の間隔はやや広く、手袋本体12の各指部18〜26に差し込みやすくなっている。手型部材30の手首型部34は、手袋本体12の手首部28よりも長く形成されている。そして、手型部材装着工程において、この手型部材30を手袋本体12の内側に挿入する。手型部材30が手袋本体12に挿入されると、図3に示すように、個々の指型部32が、手袋本体12の各指部18〜26の奥深くまで入り込む。手首型部34は、手袋本体12の手首部28から突出し、工程間を移動するときの持ち手になる。
【0027】
次に、導電性突起部形成工程において、図4に示すように、手袋本体12が装着された手型部材30を手の平部14側を上にして基台35上面に載置して固定し、その上方から所定の部分に開口37を形成したマスク板36を押し当て、マスク板36の上面にクリーム状の導電性樹脂38を置き、スキージ40で移動させる。この動作により、導電性樹脂38が開口37に充填され、導電性繊維部18a,20a,22aの手の平部14側の外面に塗布される。ここで、導電性突起部18b,20b,22bの仕上がり形状が略円錐台形状なので、マスク板36の開口37に抜き勾配が設けられることになるので、導電性樹脂38の抜け性も良好である。
【0028】
その後、手袋本体12を所定の条件で加熱し、塗布された導電性樹脂38を硬化させる。導電性樹脂38は、主成分がポリ塩化ビニルの場合、約180℃の加熱炉を通過させることでゲル化させて冷却し硬化させる。これにより、図1に示すように、手袋本体12の導電性繊維部18a,20a,22aの外面に、導電性突起部18b,20b,22bがしっかりと塗着される。
【0029】
以上説明したように、この実施形態の手袋10は、手袋本体12の指先部分に面積の小さい導電性突起部18b,20b,22bが設けられ、使用者が手に装着した状態で、導電性突起部18b,20b,22bの位置を手の指先の感覚により容易に認識できるので、タッチパネルの操作画面に小さな操作ボタンが密集して表示されている場合でも、導電性突起部18b,20b,22bの先端で所望の操作ボタンに的確にタッチすることができる。
【0030】
また、導電性突起部18b,20b,22bが、面積の広い導電性繊維部18a,20a,22aの外面に導通状態で形成され、導電性繊維部18a,20a,22aの内面が使用者の指先の広い範囲に安定に接触するので、使用者が操作画面をタッチしたとき、人体を通じて電流が流れる経路の回路インピーダンスが低下して安定になり、使用者の操作がタッチパネルに精度よく認識されるようになる。
【0031】
また、導電性繊維部18a,20a,22a及び導電性突起部18b,20b,22bが、手袋本体12の親指部18、人差指部20及び中指部22に設けられているので、使用者は、操作画面をタッチするときに使う指を自分の好みや癖に合わせて選択することができる。また、複数点のタッチを検出するタッチパネルの操作も可能になる。
【0032】
さらに、この実施形態に係る手袋10の製造方法によれば、手袋10を安価で効率よく製造することができる。
【0033】
なお、この実施形態の手袋10は、図5に示すように、手袋本体12の親指部18、人差指部20及び中指部22に設けられた導電性突起部18b,20b,22bが、親指部18、人差指部20及び中指部22の内側に達して導電性樹脂38が露出しているものでも良い。これにより、指先46での導電性突起部18b,20b,22bの感触がより確実になり、導電性も良く、操作性が良い。このような導電性突起部18b,20b,22bの形成は、マスク板36でのスキージ40の移動を複数回行うことにより、導電性樹脂38を親指部18、人差指部20及び中指部22の裏面側に浸透させることができる。
【0034】
その他、図6に示すように、手袋10の手のひら側の面に突起状の滑り止め42が形成されているものでも良い。これにより、スマートフォン等の携帯用機器を落としたりすることを未然に防止することができる。編み物等の布製の手袋は滑りやすく、しかも手の感触も鈍くなるので、表面が滑らかなスマートフォン等を手に保持している際に落としてしまう危険性があるが、滑り止め42を手のひら側に設けることにより、確実な保持が可能となり、不意の落下を防止することができる。さらに、図7に示すように、突起状の滑り止め42以外に、任意の模様や絵柄等の滑り止め44を形成しても良い。滑り止め42,44の素材は、シリコーンゴム等の従来用いられている滑り止め用素材でも良く、導電性がなくても良い。
【0035】
次に、この発明の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の第二実施形態について図8、図9を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の手袋50は、ナイロンやポリエステル、綿やウール等の非導電性の編み糸を手袋状に編み上げた手袋本体52から成り、手の平部54と手の甲部56が筒状に形成され、手の平部54と手の甲部56の一方の端部には、親指部58、人差指部60、中指部62、薬指部64、小指部66の5本の指部が形成されている。手の平部54と手の甲部56の他方の端部には、筒状の手首部68が設けられ、手首部68は伸縮性が高い織り方で手首にフィットするように作られている。
【0036】
親指部58、人差指部60、中指部62の先端側部分は、導電性を有する樹脂で形成された導電部58a,60a,62aがそれぞれ設けられている。導電部58a,60a,62aの導電性樹脂38は、親指部58、人差指部60、中指部62の先端側部分の繊維にしっかりと浸透し、裏面にまで染み出て塗着され、親指部58、人差指部60、中指部62の先端側部分の表裏を、電気的に導通可能とするものである。導電性樹脂38としては、例えば、主成分のPP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリウレタン、シリコーン、アクリル等の合成樹脂に、金属粒子である導電フィラーが配合された樹脂材料が使用されている。また、導電部58a,60a,62aの形状は略円形であり、手袋内で指先46の腹部分に当接するように設定されている。
【0037】
この実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋50の製造方法の製造方法は、上記実施形態の図4に示した製造方法と同様の工程で、導電性樹脂38が編み地の裏側まで十分に染み込むように塗布して、手袋50を製造する。
【0038】
この実施形態の手袋50も、上記実施形態と同様の効果を有し、より安価に製造することができる。
【0039】
次に、この発明の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の第三実施形態について図10〜図12を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の手袋70も、ナイロンやポリエステル、綿やウール等の非導電性の編み糸を手袋状に編み上げた手袋本体52から成り、手の平部54と手の甲部56が筒状に形成され、手の平部54と手の甲部56の一方の端部には、親指部58、人差指部60、中指部62、薬指部64、小指部66の5本の指部が形成されている。手の平部54と手の甲部56の他方の端部には、筒状の手首部68が設けられ、手首部68は伸縮性が高い織り方で手首にフィットするように作られている。
【0040】
親指部58、人差指部60、中指部62、薬指部64、小指部66の5本の指部の先端側全周には、導電性樹脂38で形成された導電部58b,60b,62b,64b,66bがそれぞれ設けられている。導電部58b,60b,62b,64b,66bの導電性樹脂38は、親指部58、人差指部60、中指部62、薬指部64、小指部66の5本の指部の繊維にしっかりと浸透し、図11に示すように、裏面にまで染み出て塗着され、親指部58、人差指部60、中指部62、薬指部64、小指部66の先端側部分の表裏を、電気的に導通可能とするものである。
【0041】
この実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋70の製造方法は、手袋本体編成工程で、非導電性の編み糸を手袋状に編成して、手袋本体52を編み上げる。次に、図12に示すような、手袋本体52の内側に挿入可能な外形を有した板状の手型部材74を用意する。手型部材74は、金属板、木板又は樹脂板等を加工したもので、手袋本体52と同じように5本の指型部76が形成されている。隣り合う指型部76同士の間隔はやや広く、手袋本体52の各指部58〜66に差し込みやすくなっている。
【0042】
手型部材74の手首部分は、手袋本体52の手首部68よりも長く形成され、手型部材装着工程において、この手型部材74を手袋本体52の内側に挿入する。手型部材74が手袋本体52に挿入されると、図12(a)に示すように、個々の指型部76が、手袋本体52の各指部58〜66の奥深くまで入り込む。手型部材74の手首部分は、手袋本体52の手首部68から突出し、工程間を移動するときの持ち手になる。
【0043】
次に、液状の導電性樹脂38が入れられた浸漬槽78に、手型部材74及び手袋本体52の指先部を入れる。このとき、図12(a),(b)に示すように、浸漬槽78は5本の指先毎に分かれて形成され、中の導電性樹脂38の液面の高さは、手袋本体52の指先の第一関節程度の所定の位置まで浸かるように、指毎に液面の高さが各々調節されている。導電性樹脂38が手袋本体52の各指部58〜66内に十分に染み込み、編み地の裏側まで導電性樹脂38が染み込んだ後、図12(c)に示すように、浸漬槽78から手型部材74及び手袋本体52を引き上げ、加熱硬化させて、手袋70が完成する。
【0044】
この実施形態の手袋70によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
次に、この発明の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の第四実施形態について図13、図14を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の手袋80も、ナイロンやポリエステル、綿やウール等の非導電性の編み糸を手袋状に編み上げた手袋本体52から成る。
【0046】
親指部58、人差指部60、中指部62、薬指部64、小指部66の5本の指部の手の平部54側及び手の平部54には、導電性樹脂38で形成された導電部82が設けられている。導電部82の導電性樹脂38は、5本の指部の手の平部54側の繊維にしっかりと浸透し、裏面にまで染み出て塗着され、手袋80の手の平部54側の表裏を、電気的に導通可能とするものである。
【0047】
この実施形態の静電容量式タッチパネル操作用の手袋80の製造方法は、手袋本体編成工程で、非導電性の編み糸を手袋状に編成して、手袋本体52を編み上げる。次に、図14に示すような、手袋本体52の内側に挿入可能な外形を有した板状の手型部材84を用意する。手型部材84は、金属板、木板又は樹脂板等を加工したもので、手袋本体52と同じように5本の指型部86が形成され、各指部がやや手の平部54側に湾曲している。
【0048】
先ず、手型部材装着工程において、この手型部材84を手袋本体52の内側に挿入し、手型部材84が手袋本体52に挿入されると、図14(a)に示すように、個々の指型部86が、手袋本体52の各指部58〜66の奥深くまで入り込む。手型部材84の手首部分は、手袋本体52の手首部68から突出し、工程間を移動するときの持ち手になる。
【0049】
次に、液状の導電性樹脂38が入れられた浸漬槽88に、手型部材84を入れる。このとき、図14(b)に示すように、浸漬槽88の液面に対して、手型部材84を斜めにして、手袋本体52の各指部58〜66と手の平部54のみが導電性樹脂38の液に浸かるように挿入する。この後、導電性樹脂38が手袋本体52の各指部58〜66に十分に染み込み、編み地の裏側まで樹脂が染み込んだ後、図14(c)に示すように、浸漬槽88から手型部材84及び手袋本体52を引き上げ、加熱乾燥して、手袋80が完成する。
【0050】
この実施形態の手袋80によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、導電性樹脂38は、手袋80の指先部分のみが編み地の裏側まで導電性樹脂38が染み込む程度にした方が、手袋80全体が硬くならず、好ましい。
【0051】
なお、この発明の手袋は、上記実施形態に限定されず、導電性樹脂は、適宜の種類を選択可能である。また、導電性繊維部が特定の指の末節(第一関節から先端側の部分)を袋状に覆う範囲に設けられているが、指の末節の手の平側の面のみを覆う範囲に設けても同様の作用効果が得られる。導電性突起部の形状は、静電容量式タッチパネルの操作画面に表示される操作ボタンの大きさや密集度、手袋本体の導電性繊維部の生地の柔らかさ、導電性突起部の強度や形状の保持特性などに鑑みて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 手袋
12 手袋本体
14 手の平部
18 親指部
18a,20a,22a 導電性繊維部
18b,20b,20b 導電性突起部
20 人差指部
22 中指部
24 薬指部
26 小指部
30 手型部材
36 マスク板
38 導電性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手袋本体の少なくとも指部の先端部分に、導電性を有する樹脂材料で形成され前記先端部分の繊維中に染み込んで表裏に露出した導電部を備え、
前記先端部分の前記導電部により前記手袋本体の表裏が電気的に導通していることを特徴とする静電容量式タッチパネル操作用の手袋。
【請求項2】
手袋本体の指部の先端側部分には、導電性を有する糸で編成された導電性繊維部が形成され、前記導電部は、前記導電性繊維部の手の平側の外面に突出した導電性突起部から成る請求項1記載の静電容量式タッチパネル操作用の手袋。
【請求項3】
前記導電部を構成する樹脂材料は、主成分の合成樹脂に導電フィラーが配合されたものである請求項1又は2記載の静電容量式タッチパネル操作用の手袋。
【請求項4】
前記導電性繊維部と前記導電性突起部が、前記手袋本体の親指部、人差指部及び中指部に設けられている請求項3記載の静電容量式タッチパネル操作用の手袋。
【請求項5】
前記手袋本体の手のひら側の面に、滑り止めが設けられている請求項1乃至4のいずれか記載の静電容量式タッチパネル操作用の手袋。
【請求項6】
前記導電部は、前記手袋本体の前記指先部分から掌部分に設けられている請求項1乃至4のいずれか記載の静電容量式タッチパネル操作用の手袋。
【請求項7】
所定の編み糸を使用して編成された手袋本体の内側に、板状の手型部材を挿入する手型部材装着工程と、
前記手型部材が装着された前記手袋本体の指部の少なくとも先端側部分に、導電性を有する樹脂材料を染み込ませて表裏に露出させて導電部を形成する導電部形成工程とを有し、
前記先端部分の前記導電部により前記手袋本体の表裏を電気的に導通状態とすること特徴とする静電容量式タッチパネル操作用の手袋の製造方法。
【請求項8】
前記手袋本体の指部の先端側部分に導電性の糸を使用し、その他の部分に所定の編み糸を使用して編成する手袋本体編成工程と、
前記手袋本体の内側に入れられる板状の手型部材を、前記手袋本体内側に挿入する手型部材装着工程と、
前記手型部材を挿入した状態で、前記導電性を有する糸で成る導電性繊維部の手の平側の外面に導電性を有する樹脂材料を塗布する導電性突起部形成工程とを有する請求項7記載の静電容量式タッチパネル操作用の手袋の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−214946(P2012−214946A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−6183(P2012−6183)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【出願人】(391013036)勝星産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】