説明

静電気帯電防止靴用靴底

【課題】 半導体工場などで躓きにくい静電気帯電防止靴を提供する。
【解決手段】 親箱以下各指を載置する部分Pを囲む、靴底面の先端側周端部1aに、該周端部1aの縁部1´に沿わせて接地ブロック2,3,4,5,6を突設し、該接地ブロック2,3,4,5,6は、接地面2a,3a,4a,5a,6aを凹凸状にする。そして、接地面2a,3a,4a,5a,6aの靴底表面の面外方向側の、接地ブロック2,3,4,5,6の周側面2b,3b,4b,5b,6bに連続する端縁部を曲面上にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体に帯電する静電気を床に逃がすために半導体工場等で用いている静電気帯電防止靴用靴底に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電気帯電防止靴は、具体例を挙げるまでもなく公知であるが、これまでの靴底は設置部全面にブロック意匠を配するなど一般靴の延長線上にあるものが多く、そのため床材との摩擦による靴本体からの摩耗による発塵が起こりやすく、半導体を汚染する危険性があった。さらに、静電気帯電靴は人体に帯電する静電気を床に逃がすものであるため、その靴底は、床との接地面が広くなることが望ましいために靴底接地面のブロック意匠を無くし、フラットな靴底にしたものが上市されるようになってきた。しかしその反面フラットで接地面が広くなったために床との摩擦抵抗が大きくなり、その結果として踏付け部が床にふれると全く滑らず、従って、前につんのめるようになり、転倒事故がしばしば生じるという事態となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体工場等ではロンリウムやリノリウムといったプラスチック床材が用いられ、また、半導体に対する埃の付着を防止するためにダウンフローで清浄な空気を流すため用いられているグレーチング構造も躓きの原因となっていることが判明し、それに対処手段が望まれるようになってきているが、この発明は、該対処手段のひとつとして提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
親指以下各指を載置する部分を囲む、靴底表面の先端側周端部に、該周端部の縁部に沿わせて接地ブロックを連続又は非連続にして突設し、該接地ブロックは、接地面を凹凸状にすると共に、接地面の靴底表面の面外方向側の、接地ブロックの周側面に連続する端縁部を曲面状にしたことを基本的手段とし、この具体的手段に靴底面の、親指の先部で押圧される部分と親指のつけ根部で押圧される部分および小指のつけ根部で押圧される部分のそれぞれに、第二接地ブロックを突設したことを付加することにより、これら第二接地ブロックが歩行時に最も荷重がかかる位置であることによりバランスよく、従って、躓き防止効果を尚一層期待できる靴を提供できる。
【0005】
また、前記の基本的事項等に接地ブロックと第二接地ブロックの一方又は双方の周側面は、接地面から基端部にかけて接地面の面外方向に向かって高さが漸小する形態の点を負荷することにより耐久的にも支障のない靴を提供できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、踏付け部の先端側の周端部に他と独立した接地ブロックがあり、しかも、床面をける側の端縁を曲面状としてあるので、当該接地ブロック部分は適度に滑り易くなって、躓きにくく、半導体工場などで用いるに好適な静電気帯電防止靴を提供できる。
【実施例】
【0007】
図面は本発明に係る静電気帯電防止靴用の靴底の一実施例を示し、図1は一部の底面図、図2は図1のx−x線拡大断面図、図3は図1のy−y線拡大断面図である。
【0008】
実施例の靴底は、アウトソール部とミッドソール部の2層構造になっており(この2層構造については具体的に図示していない)、ウレタン樹脂を主材とする導電性素材をクッション性と軽量化を図るために発泡成形し、前記のアウトソール部側を微発砲に、ミッドソール部側を高発砲にして好適な履き心地(靴としての)を期待したものである。
【0009】
図示1は、靴底Aの踏付け部で、該踏付け部1の表面(接地面)には、接地ブロック2,3,4,5,6(以下、接地ブロック2等という)と第二接地ブロック7,8,9(以下、第二接地ブロック7等という)を突設し、該接地ブロック2等と第二接地ブロック7等および靴底Aの踵部側の意匠(接地)ブロックの全部又は一部が床面に接触して静電気を逃がし、人体への静電気の帯電を防ぐようにしてある。
【0010】
前記接地ブロック2等は、前記踏付け部1(靴底A)の先端側周端部1aすなわち、靴底Aの先端側の周端縁1´と図示2点鎖線で示す親指等の各指t1,t2,t3,t4,t5を載置する部分(位置は、足の大きさすなわち靴底の大きさに対応して特定される)pとの間に突設し、その先端側の自由端側の先端の接地面2a,3a,4a,5a,6a(以下、接地面2a等という)は梨地状にして凹凸状と成し(各接地面2a等の凹凸状は梨地状に限定する必要はない)、該接地面2a等と接地ブロック2等の基端(前期踏みつけ部1の本体)との間の周側面2b,3b,4b,5b,6b(接地ブロック等は、この周側面2b等と前記接地面2a等で構成される)を接地面2a等側から前記基端部にかけて接地面の面外方向に向かって高さが漸小する形態として補強効果を期待している。
【0011】
また、接地ブロック2等の接地面2a等と周側面2b等とが互いに連続する接続部(接地面2a等の端縁部)は曲面状としてある。もっとも、この曲面状は、前記踏付け部1の表面すなわち靴底1の表面の面外方向側(踏付け部1の先端側、側端側)の端縁部が成っていれば、角が床面に引っ掛って躓かないという該「曲面状にする」目的は達成できるのである。
【0012】
実施例の接地ブロック2等は互いに独立して(不連続で)、前記周端部に並設してあるが、連続していても必ずしも不都合はないが、実施例のように互いに独立させていると、各接地ブロック2等間に間隙sがあるため、歩行時に折り曲がりやすく、履き心地の低減を防ぐことができる。このため、実施例の接地ブロック2等は、靴底1の表面の面外方向側に対応する面内方向側に符号mで示す切除部を設け、書く設置ブロック2等が歩行時に折り曲がり易くしてある。
【0013】
前記第二接地ブロック7等は、その内の一の第二接地ブロック7が符号t1で示す前記親指t1の先部で押圧される部分M1に、他の1つの第二接地ブロック8が親指t1の付け根部で押圧される部分M2に、そして、もう一つの第二接地ブロック9が符号t5で示す前記小指t5で押圧される部分M3にそれぞれ配されて、前記接地ブロック2等とほぼ同じ高さ(0.1mm〜5.0mm)で踏付け部1の表面に突設されており、この位置関係によって、バランスよく歩行できるという利点を得られる。
【0014】
第二接地ブロック7等は、接地面7a,8a,9aを接地ブロック2等の接地面2a等と同様に凹凸状(実施例は梨地状)と成し、周側面7b,8b,9bを接地ブロック2等の周側面2b等と同様に、接地面7a,8a,9a側からブロック基端縁にかけて接地面7a,8a,9aの面外方向に向かって高さが漸小する形態としてブロック7,8,9に補強効果が奏するようにしてある。
【0015】
実施例の第二接地ブロック7,8,9は平面視欠円リング状としてあるが、これは、指で押圧される前記部分M1,M2,M3にできるだけ狭い面積(広いと滑り易くなる)で押圧力を集中させ、しかも、歩行時に、当該ブロック7,8,9の床面に対する接触がどの部分から始まっても不都合のないようにするためである。
【0016】
第二接地ブロック7等の接地面7a,8a,9aの周端縁が曲面状を成して周側面7b,8b,9bに連続することは、接地ブロック2等と同様である。
【0017】
因みに、実施品と従来品の静摩擦係数をスリップメーター(トリニティラボ社製)によって静摩擦係数測定したので、その試験結果を下記に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
実施品と従来品とは、静摩擦係数の平均値が0.9の差異があり、0.1ポイントの差を大きいとみる摩擦係数の世界ではこの差は大差であり、はっきりと体感できる差でもあり、本発明は、滑りやすく、その分、躓きにくい製品を提供できることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一部の底面図。
【図2】図1のx−x線拡大断面図。
【図3】図1のy−y線拡大断面図。
【符号の説明】
【0022】
1´ 縁部
1a 周端部
2,3,4,5,6 接地ブロック
2a,3a,4a,5a,6a 接地面
2b,3b,4b,5b,6b 周側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親指以下各指を載置する部分を囲む、靴底表面の先端側周端部に、該周端部の縁部に沿わせて接地ブロックを連続又は非連続にして突設し、該接地ブロックは、接地面を凹凸状にすると共に、接地面の靴底表面の面外方向側の、接地ブロックの周側面に連続する端縁部を曲面状にした、静電気帯電防止靴用靴底。
【請求項2】
靴底表面の、親指の先部で押圧される部分と親指のつけ根部で押圧される部分および小指のつけ根部で押圧される部分のそれぞれに、第二接地ブロックを突設した、請求項1記載の静電気帯電防止靴用靴底。
【請求項3】
接地ブロックと第二接地ブロックの一方又は双方の周側面は、接地面から基端部にかけて接地面の面外方向に向かって高さが漸小する形態とした、請求項1又は2記載の静電気帯電防止靴用靴底。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−149061(P2008−149061A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342567(P2006−342567)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000167853)弘進ゴム株式会社 (12)
【Fターム(参考)】