説明

静電潜像現像用キャリア、静電潜像現像用現像剤、静電潜像現像用現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置

【課題】画像形成装置で使用した場合、画像にカブリが発生しにくい静電潜像現像用キャリアを提供する。
【解決手段】芯材と、該芯材を被覆する樹脂被覆層と、を有し、表面を240秒エッチングした際に、エッチングによる全元素に対する鉄元素の含有量の最大増加量が、0.0025atm%/秒以上0.025atm%/秒以下となることを特徴とする静電潜像現像用キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用キャリア、静電潜像現像用現像剤、静電潜像現像用現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現像剤には磁性トナーなどのようにトナー単独で用いる一成分現像剤とトナーとキャリアからなる二成分現像剤とがあるが、二成分現像剤はキャリアが現像剤の攪拌、搬送、帯電などの機能を分担し、現像剤として機能分離されているため、特性を制御することが容易であり、現在広く用いられている。前記キャリアとしては表面に樹脂被覆層を有する被覆キャリアと、表面に被覆を有しない非被覆キャリアとに大別されるが、現像剤の寿命等を考慮した場合には、被覆キャリアの方が優れていることから、種々の被覆キャリアが開発され、実用化されている。
【0003】
前記被覆キャリアとしては、樹脂被覆層中に荷電制御剤を添加することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、超臨界流体又は亜臨界流体の少なくともいずれかを含む流体中で被覆用材料を溶解ないし分散させた液を圧力または温度の少なくともいずれかを制御することにより溶解度を低下させて芯材表面に被覆層を形成するキャリアが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−117288号公報
【特許文献2】特開2008−96987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画像形成装置で使用した場合、画像にカブリが発生しにくい静電潜像現像用キャリアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち、請求項1に係る発明は、
芯材と、該芯材を被覆する樹脂被覆層と、を有し、
以下の方法で測定した、表面をエッチングした後の全元素に対する鉄元素の含有量の最大増加量が、0.0025atm%/秒以上0.025atm%/秒以下となることを特徴とする静電潜像現像用キャリアである。
(1) キャリア表面を10秒エッチングした後に、X線光電子分光法(XPS)により全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。
(2) (1)の測定の後、エッチング時間を10秒増やし、(1)と同方法により、全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。更にエッチング時間を240秒まで10秒ずつ増やし、全ての時間について全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。
(3) (2)の結果より、エッチング時間に対する鉄元素の含有量を示すグラフを作成する。
(4) 前記グラフにおいて、鉄元素の含有量の増量を示す勾配が最大になり始めるときの時間と、勾配が最大である時間帯が終わるときの時間と、を特定する。
(5) 前記勾配が最大になり始めるときの時間をT1(秒)、そのときの前記鉄元素の含有量をF1(atm%)とし、前記勾配が最大である時間帯が終わるときの時間をT2(秒)、そのときの前記鉄元素の含有量をF2(atm%)とし、前記グラフより、
(F2−F1)/(T2−T1)を求め、その値を鉄元素の含有量の最大増加量とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記芯材表面が凸部を有し、該凸部が先端に向かって徐々に狭くなる構造であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用キャリアである。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記凸部が円錐形状であることを特徴とする請求項2に記載の静電潜像現像用キャリアである。
【0009】
請求項4に係る発明は、
トナーと、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の静電潜像現像用キャリアと、を含むことを特徴とする静電潜像現像用現像剤である。
【0010】
請求項5に係る発明は、
画像形成装置に着脱され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための現像剤を収納し、
前記現像剤は、請求項4に記載の静電潜像現像用現像剤であることを特徴とする静電潜像現像用現像剤カートリッジである。
【0011】
請求項6に係る発明は、
請求項4に記載の静電潜像現像用現像剤を収納すると共に、静電潜像保持体表面に形成された静電潜像を前記現像剤によりトナー像を形成する現像手段と、
静電潜像保持体、前記静電潜像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び前記静電潜像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0012】
請求項7に係る発明は、
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、を備え、
前記現像剤が請求項4に記載の静電潜像現像用現像剤であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、画像形成装置で使用した場合、画像にカブリが発生しにくい静電潜像現像用キャリアが提供される。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、本構成の静電潜像現像用キャリアを有さない場合に比べて、画像形成装置で使用した場合、画像にカブリが発生しにくい静電潜像現像用現像剤が提供される。
請求項5に係る発明によれば、本構成の静電潜像現像用キャリアを有さない場合に比べて、画像形成装置で使用した場合、画像にカブリが発生しにくい静電潜像現像用現像剤カートリッジが提供される。
【0015】
請求項6に係る発明によれば、本構成の静電潜像現像用キャリアを有さない場合に比べて、画像形成装置で使用した場合、画像にカブリが発生しにくいプロセスカートリッジが提供される。
請求項7に係る発明によれば、本構成の静電潜像現像用キャリアを有さない場合に比べて、画像にカブリが発生しにくい画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の好適な他の一実施形態の基本構成を示す概略図である。
【図3】エッチング時間に対する鉄元素の含有量を示すグラフの一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<静電潜像現像用キャリア>
本実施形態に係る静電潜像現像用キャリア(以下、単に「本実施形態に係るキャリア」という場合がある。)は、芯材と、該芯材を被覆する樹脂被覆層とを有し、以下の方法で測定した、表面をエッチングした後の全元素に対する鉄元素の含有量の最大増加量が、0.0025atm%/秒以上0.025atm%/秒以下となることを特徴とする。
(1) キャリア表面を10秒エッチングした後に、X線光電子分光法(XPS)により全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。
(2) (1)の測定の後、エッチング時間を10秒増やし、(1)と同方法により、全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。更にエッチング時間を240秒まで10秒ずつ増やし、全ての時間について全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。
(3) (2)の結果より、エッチング時間に対する鉄元素の含有量を示すグラフを作成する。
(4) 前記グラフにおいて、鉄元素の含有量の増量を示す勾配が最大になり始めるときの時間と、勾配が最大である時間帯が終わるときの時間と、を特定する。
(5) 前記勾配が最大になり始めるときの時間をT1(秒)、そのときの前記鉄元素の含有量をF1(atm%)とし、前記勾配が最大である時間帯が終わるときの時間をT2(秒)、そのときの前記鉄元素の含有量をF2(atm%)とし、前記グラフより、
(F2−F1)/(T2−T1)を求め、その値を鉄元素の含有量の最大増加量とする。
【0018】
電子写真画像形成装置に用いるキャリアは、長期に渡り使用すると、現像剤の流動性が悪化し、混合性や撹拌性が落ちたり、時間が経過するにつれて樹脂被覆層の剥がれや磨耗、トナー汚染によるキャリアの帯電付与能力の低下が発生する。これにより、トナーが取り出されたときに、新しいトナーが最初に現像スリーブ上に供給される側での、局所的なカブリが発生する場合があった。この傾向は、比重が比較的低いキャリアにおいて顕著になる。比重が比較的低いキャリアは、トナーへの負荷が低減されるものの、低比重が故にトナーとの混合性に劣る。
【0019】
前記特許文献1の提案は、これらの課題を解決するためのもので、キャリアの帯電の立ち上がり速度を早めたり、長期にわたりシャープな分布を持たせるものであり、初期的には十分な帯電レベルを獲得でき局所的なカブリが抑制された。しかし、時間が経過するにつれて、芯材の露出が一定の速度で発現し、流動性の低下や帯電レベルの低下という現象が発生してしまうことによる、局所的カブリは免れざるを得ない状況だった。
【0020】
また、前記特許文献2の提案は、超臨界流体又は亜臨界流体のいずれかを溶媒として使用することにより、超臨界流体または亜臨界流体中では、界面張力が限りなくゼロに近づくことを利用したもので、芯材表面の微小な凹凸しか形成されていなくても、樹脂被覆層形成用溶液で濡らすことができ、芯材と粒子、被覆層との接着性が高くなり、厚みムラの無い樹脂被覆層を有し、機械的強度が高いキャリアが得られることが提案されている。このキャリアは確かに接着性が高く、厚みムラの無い被覆層を有するため、確かに、初期からある程度の繰り返し使用においては、芯材露出量を抑制できた。しかし、長期の使用においては、芯材の露出が増加し、帯電能力が十分でなくなる場合があった。
【0021】
本実施形態に係るキャリアは、既述の通り、前記表面をエッチングした後の全元素に対する鉄元素の含有量が0.0025atm%/秒以上0.025atm%/秒以下であることを特徴とする。
前記表面をエッチングした後の全元素に対する鉄元素の含有量の最大増加量は、下記(1)乃至(5)の工程により求める。
(1) キャリア表面を10秒エッチングした後に、X線光電子分光法(XPS)により全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。
本実施形態において、X線光電子分光法(XPS)による全元素に対する鉄元素の含有量の測定は、以下の方法で行う。
測定器:日本電子株式会社製、JPS−9000MX
測定強度:10kV、30mA
Source:MgKα
分析領域:6mm×6mm
上記測定器および測定条件にて得られた各元素に由来するピーク強度より鉄元素の含有量を算出する。
【0022】
また、本実施形態において、前記キャリア表面に対するエッチングは、Arイオンにより行った。
詳細は、以下の通りである。
測定器:日本電子株式会社製、JPS−9000MX
測定強度:400eV、6mA
Source:Ar
分析領域:6mm×6mm
【0023】
(2) (1)の測定の後、エッチング時間を10秒増やし、(1)と同方法により、全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。更にエッチング時間を240秒まで10秒ずつ増やし、全ての時間について全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。具体的には、エッチング時間を20秒にして、(1)と同方法により、全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。更にエッチング時間を240秒まで10秒ずつ増やす、つまりエッチング時間を30[秒]、40[秒]、50[秒]・・・240[秒]まで10秒ずつ増やして、それぞれの時間エッチングした後に、全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。
【0024】
(3) (2)の結果より、エッチング時間に対する鉄元素の含有量を示すグラフを作成する。該グラフは、図3に示すとおり、エッチング時間を横軸に、元素の含有量を縦軸にして、各エッチング時間に対する鉄元素の含有量を示す折れ線グラフである。図3は、エッチング時間に対する鉄元素の含有量を示すグラフの一例を示す図面である。尚、図3では縦軸の鉄元素の含有量の具体的な数値は記載しておりません。
【0025】
(4) 前記グラフにおいて、鉄元素の含有量の増量を示す勾配が最大になり始めるときの時間と、勾配が最大である時間帯が終わるときの時間と、を特定する。ここで勾配が最大であるとは、前記グラフにおいて作成された折れ線において、右肩上がりの角度が最も急になることであり、例えば、図3に示すグラフでは、40秒から60秒に渡って最も(右肩上がりの)角度が急なになっており、40秒から60秒において勾配が最大になっていることになります。この場合前記勾配が最大になり始めるときの時間T1が40(秒)であり、そのときの鉄元素の含有量がF1(atm%)となります。更に前記勾配が最大である時間帯が終わるときの時間T2が60(秒)となり、そのときの前記鉄元素の含有量をF2(atm%)となります。
【0026】
上記のようにして求めたT1、T2、F1、及びF2より、下記式に従い、鉄元素の含有量の最大増加量を求める。
鉄元素の含有量の最大増加量=(F2−F1)/(T2−T1)
【0027】
前記鉄元素の含有量の最大増加量は、芯材粒子の表面が凸部を有し、該凸部が先端に向かって徐々に狭くなる構造をとっていることにより、0.025atm%/秒以下となる。前記鉄元素の含有量の最大増加量が0.025atm%/秒以下であると、芯材と樹脂被覆層の密着性が高く、芯材粒子表面が凸部を有しているため、高い流動性及び充分な帯電付与能力が維持され、繰り返し使用しても局所的なカブリが発生しない画像が得られる。前記鉄元素の含有量の最大増加量は、0.0025atm%/秒以上0.009atm%/秒以下であることが好ましい。前記鉄元素の含有量の最大増加量が0.025atm%/秒を超えると、芯材と樹脂被覆層との密着性が不充分となり、時間が経過するにつれて流動性の低下による混合不良や、樹脂被覆層の剥がれによる低帯電トナーが発生し、長期の使用においてカブリが発生しやすい。一方、前記鉄元素の含有量の最大増加量が0.0025atm%/秒未満のキャリアの製造は困難である。
【0028】
また、本実施形態に係るキャリアは、比重が3.2g/cm以上4.0g/cm以下であることが好ましく、3.4g/cm以上3.9g/cm以下であることがより好ましい。比重が4.0g/cm以下であるキャリアは、トナーへの負荷が低減され、長期での使用にも適しているが、攪拌能力が劣るため、長期での使用において帯電能力が悪くなる傾向があったが、前記表面をエッチングした後の全元素に対する鉄元素の含有量が0.01atm%/秒以上0.7atm%/秒以下である本実施形態に係るキャリアでは、帯電付与能力を維持しながら帯電能力が維持される。ここで、キャリアの比重は、ルシャトリエ比重瓶を用い、JIS−K−0061の5−2−1に準拠して測定する。

【0029】
本実施形態に係るキャリアは、前記キャリア表面をX線光電子分光法(XPS)により測定した全元素に対する鉄元素の含有量Fe0が、0.05atm%以上0.5atm%以下であることが好ましく、0.1atm%以上0.4atm%以下であることがより好ましい。前記Fe0が0.05atm%未満であると、初期において良好な流動性が得られない場合があり、更に時間が経過するにつれて流動性の低下が発生しやすくなる場合がある。一方、前記Fe0が0.5atm%を超えると、樹脂被覆層の形成にムラが発生する場合があり、撹拌混合性が十分でなくなり、初期からカブリが発生する場合がある。また、長期での使用において樹脂被覆層の部分的な剥がれが発生しやすく、局所的なカブリが発生す場合がある。
【0030】
本実施形態に係るキャリアは、前記キャリア表面を120秒エッチングした後にX線光電子分光法(XPS)により測定した全元素に対する鉄元素の含有量Fe1が、0.001atm%以上0.3atm%以下であることが好ましく、0.01atm%以上0.2atm%以下であることがより好ましい。前記Fe1が0.001atm%以上0.3atm%以下であると、樹脂被覆層の剥がれが抑制され、磨耗の進行が遅くなる。その結果、初期との帯電付与能力差が小さくなり、流動性の悪化も抑制される。また、長期に渡って使用しても、高い樹脂被覆層の被覆率が維持され、帯電付与能力が維持される。前記Fe1が0.3atm%を超えると、経時においての流動性の低下が発生しやすくなり、また、帯電付与能力が大幅に低下し、十分な帯電量がすぐに得られず、経時において局所的なカブリが発生しやすくなる場合がある。一方、Fe1が0.001atm%未満のキャリアは製造することが難しく、トナーが受ける負荷が大きくなり、トナーの外添剤がトナーへ埋没する場合がある。
【0031】
本実施形態に係るキャリアは、前記キャリア表面を240秒エッチングした後にX線光電子分光法(XPS)により測定した全元素に対する鉄元素の含有量Fe2が、0.1atm%以上0.8atm%以下であることが好ましく、0.2atm%以上0.6atm%以下であることがより好ましい。前記Fe2が0.1atm%以上0.8atm%以下であると、長期に渡り使用した場合に、帯電付与能力の低下が抑制され、カブリの発生が抑制される。前記Fe2が0.1atm%未満であると、長期に渡り使用した場合に、流動性が低下する場合や、帯電付与能力の低下が大きくなり、局所的なカブリが発生する場合がある。一方、トナーが負荷を受けやすく、長期に渡り使用した場合に、全面的なカブリが発生する場合がある。
【0032】
(芯材)
本実施形態に係るキャリアにおける芯材は、表面が凸部を有し、該凸部が先端に向かって徐々に狭くなる構造であることが好ましい。芯材の表面が先端に向かって徐々に狭くなる構造の凸部を有することにより、前記鉄元素の含有量の最大増加量が0.0025atm%/秒以上0.025atm%/秒以下に制御される。また、被覆樹脂層との密着性が高まり、長期に渡り使用しても被覆樹脂層の剥がれが発生しにくく、被覆樹脂層の剥がれによる混合不良が抑制される。その結果、流動性の低下や帯電付与能力の低下が抑制される。
【0033】
ここで、凸部が先端に向かって徐々に狭くなるとは、凸部をキャリアの中心(重心)と凸部の先端(キャリアの中心から最も離れた点)を結ぶ線(以下、「中心線」という場合がある。)と直行する面で切断したときの面の断面積が、凸部の先端に向かって徐々に小さくなっていることを意味する。本実施形態においては、凸部を、中心線の凸部の先端から0.3μmの位置を通り、中心線と直行する面で切断したときの面の断面積が、凸部を、中心線の凸部の先端から0.6μmの位置を通り、中心線と直行する面の断面積の80%以上95%以下(望ましくは80%以上90%以下)であるとき、凸部が先端に向かって徐々に狭くなると定義する。
【0034】
また、前記凸部は円錐形状であることが好ましい。長期に渡り使用した場合に、被覆樹脂層が磨耗して、芯材が露出しても、帯電付与能力が小さくならない。その結果、長期に渡り使用しても十分な帯電付与能力を有する。
【0035】
ここで、前記凸部は円錐形状であるとは、凸部が先端に向かって徐々に狭くなるという定義の場合と同様に、中心線と直行する面で切断したときの面それぞれが、円形度が0.94以上(望ましくは0.96以上)の面である。
【0036】
以上の凸部の形状の特定は、少なくとも50個の凸部に対して行い、切断面の形状の特定は画像処理解析により行った。
【0037】
前記芯材は、磁性粉粒子が樹脂中に分散されてなることが好ましい。
上記磁性粉粒子としては、従来公知のいずれのものが使用されるが、特に望ましくはフェライトやマグネタイト、マグヘマタイトが選ばれる。特に、強磁性の磁性粉粒子としては、マグネタイト、マグヘマタイトが選択され、他の磁性粉粒子として、例えば鉄粉が知られている。鉄粉の場合は比重が大きいためトナーを劣化させやすいので、フェライトやマグネタイト、マグヘマタイトの方が安定性に優れている。フェライトの例としては、一般的に下記式で表される。
(MO)(Fe
(式中、Mは、Cu、Zn、Fe、Mg、Mn、Ca、Li、Ti、Ni、Sn、Sr、Al、Ba、Co、Mo等から選ばれる少なくとも1種を含有する:またX、Yは重量mol比を示し、かつ条件X+Y=100を満たす)
【0038】
上記Mは、Li、Mg、Ca、Mn、Sr、Snの1種もしくは数種の組み合わせで、それら以外の成分の含有量が1質量%以下であるフェライト粒子であることが好ましい。Cu、Zn、Ni元素は添加することにより低抵抗になり易く、電荷リークが起こり易い。また、被覆樹脂し難い傾向にあり、また環境依存性も悪くなる傾向にある。さらに、重金属であり、比重が大きいためかキャリアに与えられる負荷が強くなり、寿命に対し悪影響を与えることがある。
【0039】
また、安全性の観点から近年ではMnやMg元素を含有するものが一般に普及している。フェライト芯材が好適であり、磁性粒子の原料としては、Feを必須成分として用いられる磁性粉分散型樹脂コアに含有される磁性粉粒子としては、マグネタイト、マグヘマイトなどの強磁性酸化鉄粒子粉末、鉄以外の金属(Mn、Ni、Zn、Mg、Cu等)を1種又は2種以上含有するスピネルフェライト粒子粉末、バリウムフェライトなどのマグネットプランバイト型フェライト粒子粉末、表面に酸化被膜を有する鉄や鉄合金の粒子粉末が用いられる。
【0040】
磁性粉粒子として、具体的には、例えばマグネタイト、γ−酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトなどの鉄系酸化物が挙げられる。中でも安価なマグネタイトが、より好ましく用いられる。
【0041】
前記芯材を構成する樹脂成分としては、架橋されたスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられるが、フェノール系樹脂が特に好ましい。
【0042】
前記芯材表面に既述の形状の凸部を形成する方法として、以下の粒径及び形状を有する磁性粉粒子を用いる方法が挙げられる。
前記磁性粉粒子の粒径は、0.2μm以上1μm以下であることが好ましく、0.3μm以上10μm以下であることがより好ましく、0.35μm以上5μm以下であることが更に好ましい。前記磁性粉粒子の粒径が0.2μm未満の場合、凸部効果が十分でなく長期に渡り使用すると流動性が低下したり帯電付与能力の低下が顕著に発生しやすくなる場合があり、10μmを超えると、現像剤保持体への磁気的拘束力が弱まり、感光体(静電潜像保持体)へのキャリアの付着が生じる場合がある。尚、前記磁性粉粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡により観察視野内に観察されるキャリア粒子100個を無作為にサンプリングし、その画像情報をインターフェイスを介して、画像解析装置に導入して解析を行い平均粒子径を算出する。
【0043】
また、前記磁性粉粒子は、アスペクト比が1.1以上10以下であることが好ましく、1.2以上7以下であることがより好ましい。前記アスペクト比が1.1未満の場合、凸部が表面に形成されにくく、長期使用すると流動性の低下や帯電付与能力の低下が発生しやすくなる場合があり、10を超えると、トナーの損傷が大きくなりやすい場合がある。
尚、磁性粉粒子のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡により観察視野内に観察される磁性粉粒子について、まず無差別に100個選択する。次にその画像情報をインターフェイスを介して、画像解析装置に導入して解析を行い、長軸径と短軸径の比を算出することで。求める。
【0044】
前記磁性粉粒子の芯材中における含有量としては、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、60質量%以上98質量%以下であることがより好ましく、70 質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。前記磁性粉粒子の含有量が50質量%未満であると、キャリア1個当たりの磁化率が低いことから拘束力が得られなくなり、結果として飛散等を招く場合があり、98質量%を超えると、キャリアの穂が固くなり、割れ易くなる、またトナーへの負荷が増加したり、画像が粗くなることがなる場合がある。
【0045】
また、前記芯材は、目的に応じて、更にその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、帯電制御剤、フッ素含有粒子などが挙げられる。
【0046】
(樹脂被覆層)
樹脂被覆層を構成する樹脂(マトリックス樹脂)としては、キャリア用の樹脂被覆層用の材料として用いられているものであれば公知の樹脂が利用でき、二種類以上の樹脂を混合して用いてもよい。
前記マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、スチレンーアクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0047】
芯材の表面に樹脂被覆層を形成する方法としては、芯材を、マトリックス樹脂、磁性粉粒子及び溶剤を含む被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中で芯材と被覆層形成溶液を混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
被覆層形成用溶液中に使用する溶剤は、該マトリックス樹脂を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が使用される。
【0048】
また、樹脂被覆層の平均膜厚は、通常0.1μm以上10μm以下であるが、本実施形態においては経時にわたり安定したキャリアの体積固有抵抗を発現させるため0.5μm以上3μm以下の範囲であることが好ましい。
【0049】
本実施形態に係るキャリアの体積電気抵抗は、1×10Ωcm以上1×1014Ωcm以下の範囲に制御されることが好ましく、1×10Ωcm以上1×1013Ωcm以下の範囲であることがより好ましい。
キャリアの体積電気抵抗が1×1014Ωcmを超える場合、高抵抗になり、現像時に現像電極として働きにくくなるため、特にベタ画像部でエッジ効果が出るなど、ソリッド再現性が低下する場合がある。一方、1×10Ωcm未満の場合、低抵抗になるため、現像剤中のトナー濃度が低下した時に現像ロールからキャリアへ電荷が注入し、キャリア自体が現像されてしまう不具合が発生しやすくなる場合がある。
【0050】
上記キャリアの体積電気抵抗(Ωcm)は以下のように測定する。なお、測定環境は、温度20℃、湿度50%RHとする。尚、本実施形態における体積電気抵抗等の電気抵抗は20℃における電気抵抗とする。
20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となるキャリアを1mm以上3mm以下程度の厚さになるように平坦に載せ、キャリア層を形成する。この上に前記同様の20cmの電極板を載せキャリア層を挟み込む。キャリア間の空隙をなくすため、キャリア層上に載せた電極板の上に4kgの荷重をかけてからキャリア層の厚み(cm)を測定する。キャリア層上下の両電極には、エレクトロメーター及び高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、キャリアの体積電気抵抗(Ω・cm)を計算する。キャリアの体積電気抵抗(Ω・cm)の計算式は、下記式(9)に示す通りである。
式(9): R=E×20/(I−I)/L
【0051】
上記式(9)中、Rはキャリアの体積電気抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、Iは印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lはキャリア層の厚み(cm)をそれぞれ表す。また、20の係数は、電極板の面積(cm)を表す。
【0052】
本実施形態に係るキャリアは、体積平均粒径が25μm以上100μm以下であることが好ましく、25μm以上60μm以下であることがより好ましい。キャリアの体積平均粒径が25μm未満の場合、キャリア1個当たりの磁化率が弱まり、現像剤保持体への磁気的拘束力が弱まり、感光体へのキャリアの付着が生じる場合がある。また、キャリアの体積平均粒径が100μmを超える場合、磁気ブラシが荒くなり、きめ細かい画像が形成され難くなる場合がある。ここで、キャリアの体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LS Particle Size Analyzer:LS13 320、BECKMAN COULTER社製)を用いて測定された値をいう。得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて、全核体に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。
【0053】
(静電潜像現像用現像剤)
本実施形態に係る静電潜像現像用現像剤(以下、「本実施形態に係る現像剤」という場合がある。)は、既述の本実施形態に係るキャリアと、トナーと、を含むことを特徴とする。本実施形態に用いるトナーとしては、特に制限はなく、公知のトナーが用いられる。トナーとしては例えば、結着樹脂と着色剤を有する着色トナーが挙げられる。
【0054】
結着樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。これらの中でも特に代表的な結着樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン-アクリル酸アルキル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン等が挙げられる。
【0055】
また結晶性の結着樹脂としては、結晶性を持つ樹脂であれば特に制限はなく、具体的には、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ビニル系樹脂が挙げられるが、定着時の紙への接着性や帯電性、及び好ましい範囲での融点調整の観点から結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。また、適度な融点をもつ脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0056】
前記結晶性ビニル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の長鎖アルキル、アルケニルの(メタ)アクリル酸エステルを用いたビニル系樹脂が挙げられる。尚、本明細書において、”(メタ)アクリル”なる記述は、”アクリル”および”メタクリル”のいずれをも含むことを意味するものである。
【0057】
一方前記結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、本実施形態において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。本実施形態において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0058】
−酸由来構成成分−
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。直鎖型のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられる。中でも、炭素数6から10のものが結晶融点や帯電性の観点から好ましい。結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジカルボン酸を、酸構成成分の95mol%以上用いることが好ましく、98mol%以上用いることがより好ましい。
【0059】
その他のモノマーとしては、特に限定は無く、例えば、高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているモノマー成分である、従来公知の2価又のカルボン酸と、2価のアルコールがある。これらのモノマー成分の具体例としては、2価のカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれているのが好ましい。
前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にする点で有効である。また樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、トナー母粒子を粒子に作製する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁される。このスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。前記スルホン酸基を持つジカルボン酸の含有量は0.1から2.0mol%であることが好ましく、0.2から1.0mol%であることが好ましい。含有量が2mol%よりも多いと、帯電性が悪化する。尚、本実施形態において「構成mol%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分、アルコール由来構成成分)をそれぞれ1単位(mol)したときの百分率を指す。
【0061】
−アルコール由来構成成分−
アルコール構成成分としては脂肪族ジアルコールが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられ、中でも炭素数6から10のものが結晶融点や帯電性の観点から好ましい。結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジアルコールを、アルコール構成成分の95mol%以上用いることが好ましく、98mol%以上用いることがより好ましい。
【0062】
その他の2価のジアルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド又は(及び)プロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調製等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコールや、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど3価のアルコールも使用される。
【0064】
前記ポリエステル樹脂は、前記のモノマー成分の中から任意の組合せで、例えば、重縮合(化学同人)、高分子実験学(重縮合と重付加:共立出版)やポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社編)等に記載の従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は組み合せて用いられる。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のmol比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、直接重縮合の場合は通常1/1程度、エステル交換法の場合は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなど真空下で脱留するモノマーを過剰に用いる場合が多い。前記ポリエステル樹脂の製造は、通常、重合温度180℃以上250℃以下でおこなわれ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と供に重縮合させるとよい。
【0065】
前記ポリエステル樹脂の製造時に使用する触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、及び、アミン化合物等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。この中で、帯電性の観点からスズ系触媒、チタン系触媒が好ましく、中でも、ジブチルスズオキシドが好ましく用いられる。
【0066】
本実施形態に係る結晶性ポリエステル樹脂の融点は50℃以上120℃以下であることが好ましい。融点が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が悪化する場合がある。また、120℃より高いと、従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない場合がある。
【0067】
尚、本実施形態において、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、25℃から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求める。尚、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本実施形態においては、最大のピークをもって融点とみなす。
【0068】
着色剤としては、特に制限はないが例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デユポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・ブルー15:1、ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる。
【0069】
また、本実施形態におけるトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含んでもよい。その際、特にカラートナー等に用いる場合には、色調に影響を与えない無色又は淡色の帯電制御剤が好ましい。その帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯体;サルチル酸もしくはアルキルサルチル酸の金属錯体もしくは金属塩;等を用いることが好ましい。またトナーは、低分子量プロピレン、低分子量ポリエチレン、ワックス等のオフセット防止剤等、その他の公知の成分を含んでもよい。
【0070】
また、本実施形態におけるトナーは、低分子量プロピレン、低分子量ポリエチレン、ワックス等のオフセット防止剤等、その他の公知の成分を含んでもよい。
ワックスは例えば、次のものが挙げられる。パラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体等である。誘導体とは酸化物、ビニルモノマーとの重合体、グラフト変性物を含む。この他に、アルコール、脂肪酸、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、エステルワックス、酸アミド等が利用される。
【0071】
更に、本実施形態におけるトナーの体積平均粒径は5μm以上9μm以下であることが好ましい。トナーの体積平均粒径は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用いて測定する。電解液としては、ISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用する。
【0072】
トナーの製造方法は、一般に使用されている混練粉砕法や湿式造粒法等を利用することができる。ここで、湿式造粒法としては、懸濁重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、ソープフリー乳化重合法、非水分散重合法、in−situ重合法、界面重合法、乳化分散造粒法、凝集・合一法等を用いることができる。
【0073】
混練粉砕法で本実施形態に係るトナーを作製するには、結着樹脂、必要に応じて着色剤やその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により充分混合し、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類を互いに相溶せしめた中に、赤外線吸収剤、酸化防止剤等を分散又は溶解せしめ、冷却固化後粉砕及び分級を行ってトナーを得ることができる。
【0074】
湿式造粒法によりトナー粒子を作製した場合には、トナー粒子の形状係数は110以上135以下の範囲であることが好ましい。
ここで上記形状係数SF1は、下記式により求められる。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0075】
本実施形態に係る現像剤は、既述のトナー及びキャリアを、トナーの質量/キャリアの質量が、0.01atm%/秒以上0.3以下となる比率で含有することが好ましく、0.03以上0.2以下となる比率で含有することがより好ましい。
【0076】
<静電潜像現像用現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置>
次に、本実施形態に係る静電潜像現像用現像剤カートリッジ(以下、「本実施形態に係る現像剤カートリッジ」と略す場合がある。)について説明する。本実施形態に係る現像剤カートリッジは、画像形成装置に着脱され、少なくとも、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための現像剤を収納し、現像剤が既述した本実施形態に係る静電潜像現像用現像剤であることを特徴とする。
【0077】
また本実施形態に係る画像形成装置は、静電潜像保持体と、前記静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段とを少なくとも備え、現像剤が既述した本実施形態に係る静電潜像現像用現像剤であることを特徴とする。
【0078】
なお、本実施形態に係る画像形成装置は、上記の静電潜像保持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段と、を少なくとも含むものであれば特に限定はされないが、その他の手段を含んでいてもよい。
【0079】
以下、本実施形態に係る現像剤カートリッジおよび画像形成装置について、図面を用いて具体的に説明する。
【0080】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。なお、以下の図面において、同様の構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図1に示す画像形成装置10は、静電潜像保持体12、帯電手段14、静電潜像形成手段16、現像手段18、転写手段20、クリーニング手段22、除電手段24、定着手段26、現像剤カートリッジ28を備える。
なお、現像手段18中および現像剤カートリッジ28中に収納される現像剤は、本実施形態に係る現像剤である。
【0081】
また図1は、本実施形態に係る現像剤を収納された現像手段18および現像剤カートリッジ28のみを図示しているが、これらに加えて、他の現像剤を収納した現像手段およびカートリッジも同時に備える構成でもよい。
【0082】
図1に示す画像形成装置は、現像剤カートリッジ28の着脱する構成を有する画像形成装置であり、現像剤カートリッジ28は、現像剤供給管30を通して現像手段18に接続されている。よって画像形成を行う際は、現像剤カートリッジ28の中に収納されている本実施形態に係る現像剤が、現像剤供給菅30を通して現像手段18に供給されることにより、初期から長期に使用にわたり、背景部のカブリが発生せず、安定した帯電維持性が得られる。また、現像剤カートリッジ28の中に収納されている現像剤が少なくなった場合には、この現像剤カートリッジ28を交換する。
【0083】
静電潜像保持体12の周囲には、静電潜像保持体12の回転方向(矢印A方向)に沿って順に、静電潜像保持体12表面をムラ無く帯電させる帯電手段14、画像情報に応じて静電潜像保持体12表面に静電潜像を形成させる静電潜像形成手段16、形成された静電潜像に本実施形態に係る現像剤を供給する現像手段18、静電潜像保持体12表面に接し静電潜像保持体12の矢印A方向への回転に伴い矢印B方向に従動回転するドラム状の転写手段20、静電潜像保持体12表面に接するクリーニング装置22、静電潜像保持体12表面を除電する除電手段24が配置されている。
【0084】
静電潜像保持体12と転写手段20間に、矢印C方向と反対側から不図示の搬送手段により矢印C方向に搬送される記録媒体50が挿通される。静電潜像保持体12の矢印C方向側には加熱源(不図示)を内蔵した定着手段26が配置され、定着手段26には圧接部32が設けられている。また、静電潜像保持体12と転写手段20間を通過した記録媒体50は、この圧接部32を矢印C方向へと挿通される。
【0085】
静電潜像保持体12としては、例えば感光体または誘電記録体等が使用される。
感光体としては例えば、単層構造の感光体または多層構造の感光体等を用いるられる。また感光体の材質としては、セレンやアモルファスシリコン等の無機感光体や、有機感光体等が考えられる。
【0086】
帯電手段14としては、例えば、ローラー、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触帯電装置、コロナ放電を利用したコロトロン帯電やスコロトロン帯電などの非接触型の帯電装置等、公知の手段が使用される。
【0087】
潜像形成手段16としては、露光手段の他に、トナー像を記録媒体表面の所望の位置に形成しうる信号が形成される、従来公知のいずれの手段を使ってもよい。
露光手段としては、例えば、半導体レーザー及び走査装置の組み合わせ、光学系からなるレーザー走査書き込み装置、あるいは、LEDヘッドなど、従来公知の露光手段を使用してもよい。ムラが無く、解像度の高い露光像を作るという好ましい態様を実現させるためには、レーザー走査書き込み装置またはLEDヘッドを使うことが好ましい。
【0088】
転写手段20としては、具体的には例えば、電圧を印加したローラー、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いて、静電潜像保持体12、記録媒体50間に電界を作り、帯電したトナーの粒子からなるトナー像を転写する手段や、コロナ放電を利用したコロトロン帯電器やスコロトロン帯電器などで記録媒体50の裏面をコロナ帯電して、帯電したトナーの粒子からなるトナー像を転写する手段など、従来公知の手段を使用してもよい。
【0089】
また転写手段20として、二次転写手段を用いてもよい。すなわち、図示しないが二次転写手段は、トナー像を一旦中間転写体に転写した後、中間転写体から記録媒体50にトナー像を二次転写する手段である。
【0090】
クリーニング手段22としては例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシなどが挙げられる。
【0091】
除電手段24としては例えば、タングステンランプ、LEDなどが挙げられる。
【0092】
定着手段26としては、例えば加熱ロールと加圧ロールとからなる加熱加圧によりトナー像を定着する熱定着器や、フラッシュランプ等による光照射によりトナー像を加熱して定着する光定着器などが利用される。
【0093】
記録媒体50としては、特に制限はなく、普通紙や光沢紙等をはじめとする従来公知のものが利用される。また記録媒体は、基材と基材上に形成された受像層を有するものを利用してもよい。
【0094】
次に、画像形成装置10を用いた画像形成について説明する。まず、静電潜像保持体12の矢印A方向への回転に伴い、帯電手段14により静電潜像保持体12表面を帯電し、帯電された静電潜像保持体12表面に静電潜像形成手段16により画像情報に応じた静電潜像を形成し、この静電潜像が形成された静電潜像保持体12表面に、静電潜像の色情報に応じて現像手段18から本実施形態に係る現像剤を供給することによりトナー像を形成する。
【0095】
次に、静電潜像保持体12表面に形成されたトナー像は、静電潜像保持体12の矢印A方向への回転に伴い、静電潜像保持体12と転写手段20との接触部に移動する。この際、接触部を、記録媒体50が、不図示の用紙搬送ロールにより矢印C方向に挿通され、静電潜像保持体12、転写手段20間に印加された電圧により、静電潜像保持体12表面に形成されたトナー像が接触部にて記録媒体50表面に転写される。
【0096】
トナー像を転写手段20に転写した後の静電潜像保持体12の表面は、クリーニング手段22のクリーニングブレードによって残留しているトナーが除去され、除電手段24により除電される。
【0097】
このようにしてトナー像がその表面に転写された記録媒体50は、定着手段26の圧接部32に搬送され、圧接部32を通過する際に、内蔵された加熱源(不図示)によってその圧接部32の表面が加熱された定着手段26によって加熱される。この際、トナー像が記録媒体50表面に定着されることにより画像が形成される。
【0098】
本実施形態に係る画像形成装置は、高速で運転しても長期に渡り局所的なカブリが抑制される点で、プロセススピード100mm/s以上400mm/s以下で運転することが好ましく、プロセススピード150mm/s以上370mm/s以下で運転することがより好ましい。ここで、プロセススピードとは、単位時間当たりに中間転写体の表面が像保持体と接触する距離である。
【0099】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、既述の本実施形態に係る現像剤を収納すると共に、静電潜像保持体表面に形成された静電潜像を前記現像剤によりトナー像を形成する現像手段と、静電潜像保持体、前記静電潜像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び前記静電潜像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とする。
以下に、本実施形態に係るプロセスカートリッジを収納する画像形成装置を説明する。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の好適な他の一実施形態を示す模式図である。図2に示す画像形成装置11は、画像形成装置本体(図示せず)に脱着するように配設されるプロセスカートリッジ(本実施形態に係るプロセスカートリッジ)38と、静電潜像形成手段16と、転写手段20とを備えている。
【0100】
プロセスカートリッジ38は、露光のための開口部34が設けられた筐体36内に静電潜像保持体12と共に、その周囲に帯電手段14、現像手段18及びクリーニング手段22を取り付けレール(図示せず)により組み合わせて一体化したものである。なお、プロセスカートリッジ38は、これに限られず、現像手段18と、静電潜像保持体12、帯電手段14及びクリーニング手段22からなる群から選ばれる少なくとも一種と、を備えていればよい。
【0101】
一方、静電潜像形成手段16は、プロセスカートリッジ38の筐体36の開口部34から静電潜像保持体12に露光する位置に配置されている。また、転写手段20は静電潜像保持体12に対向する位置に配置されている。
【0102】
本実施形態に係る静電潜像現像用現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置は、本実施形態に係る静電潜像現像用現像剤を用いることにより、繰り返し使用しても局所的なカブリが発生しない画像が得られる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例により本実施形態を説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、本実施例において、特にことわらない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0104】
(芯材Aの作製)
ヘンシェルミキサーに体積平均粒径0.6μmの六面体状マグネタイト粒子粉(アスペクト比が1.8)500部を投入し、攪拌した後、チタンネートカップリング剤10部を添加し、100℃まで昇温し30分間混合攪拌することによりチタネート系カップリング剤被覆されたマグネタイト粒子を得た。
次に、1Lの四つ口フラスコに、フェノール55部、ホルマリン70部、上記チタネート系カップリング剤被覆されたマグネタイト粒子500部、アンモニア水18部、水55部をいれ、攪拌混合した。次に、攪拌しながら70分間で85℃に上昇させ、同温度で3時間反応させた。その後、25℃まで冷却し、500mlの水を添加した後、上澄み液を除去、沈殿物を水洗、乾燥させ、体積平均粒径42μmの芯材Aを得た。芯材Aの表面には、円錐形状の凸部が形成されていた。
【0105】
(芯材Bの作製)
ヘンシェルミキサーに体積平均粒径0.30μmの六面体状マグネタイト粒子粉(アスペクト比が1.4)500部を投入し、攪拌した後、チタンネートカップリング剤10部を添加し、100℃まで昇温し30分間混合攪拌することによりチタネート系カップリング剤被覆されたマグネタイト粒子を得た。
次に、1Lの四つ口フラスコに、フェノール55部、ホルマリン70部、上記チタネート系カップリング剤被覆されたマグネタイト粒子500部、アンモニア水18部、水55部をいれ、攪拌混合した。次に、攪拌しながら70分間で85℃に上昇させ、同温度で3時間反応させた。その後、25℃まで冷却し、500mlの水を添加した後、上澄み液を除去、沈殿物を水洗、乾燥させ、体積平均粒径42μmの芯材Bを得た。芯材Bの表面には、円錐形状の凸部が形成されていた。
【0106】
(芯材Cの作製)
ヘンシェルミキサーに体積平均粒径0.60μmの六面体状マグネタイト粒子粉(アスペクト比が1.6)500部を投入し、攪拌した後、チタンネートカップリング剤10部を添加し、100℃まで昇温し30分間混合攪拌することによりチタネート系カップリング剤被覆されたマグネタイト粒子を得た。
次に、1Lの四つ口フラスコに、フェノール55部、ホルマリン70部、上記チタネート系カップリング剤被覆されたマグネタイト粒子500部、アンモニア水18部、水55部をいれ、攪拌混合した。次に、攪拌しながら70分間で85℃に上昇させ、同温度で3時間反応させた。その後、25℃まで冷却し、500mlの水を添加した後、上澄み液を除去、沈殿物を水洗、乾燥させ、体積平均粒径42μmの芯材Cを得た。芯材Cの表面には、円錐形状の凸部が形成されていた。
【0107】
(芯材Dの作製)
ヘンシェルミキサーに体積平均粒径0.60μmの球状マグネタイト粒子粉500部を投入し、攪拌した後、チタンネートカップリング剤10部を添加し、100℃まで昇温し30分間混合攪拌することによりチタネート系カップリング剤被覆されたマグネタイト粒子を得た。
次に、1Lの四つ口フラスコに、フェノール55部、ホルマリン70部、上記チタネート系カップリング剤被覆されたマグネタイト粒子500部、アンモニア水18部、水55部をいれ、攪拌混合した。次に、攪拌しながら70分間で85℃に上昇させ、同温度で3時間反応させた。その後、25℃まで冷却し、500mlの水を添加した後、上澄み液を除去、沈殿物を水洗、乾燥させ、体積平均粒径39μmの芯材Dを得た。芯材Dの表面には、円錐形状の凸部が形成されていなかった。
【0108】
(樹脂被覆層形成用溶液(1)の調製)
下記成分を60分間スターラーにて撹拌/分散し、樹脂被覆層形成用溶液(1)を調製した。
・トルエン:85部
・スチレン−メタクリレート共重合体(成分比30:70,Mw75,000):15部
・カーボンブラック(キャボット社製、商品名:R330):2部
【0109】
(被覆層形成用原料溶液(2)の調製)
下記成分を60分間スターラーにて撹拌/分散し、被覆層形成用原料溶液(2)を調製した。
・トルエン:85部
・スチレン−メタクリレート共重合体
(成分比30:70、Mw140,000):15部
・カーボンブラック(キャボット社製、商品名:R330):2部
【0110】
キャリア1の作製
樹脂被覆層形成用溶液(1)を100部と、芯材Aを500部と、を真空脱気装置を付け加えた卓上型ニーダー(Irie Shokai Co.,Ltd社製、PNV−1H)に入れ温度60℃を保って羽回転数25rpmで10分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去した後冷却し、75μmの篩を用いて分粒することによりキャリア1を得た。
【0111】
キャリア2の作製
樹脂被覆層形成用溶液1を100部と、芯材Bを500部と、を真空脱気装置を付け加えた卓上型ニーダー(Irie Shokai Co.,Ltd社製、PNV−1H)に入れ温度60℃を保って羽回転数25rpmで10分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去した後冷却し、75μmの篩を用いて分粒することによりキャリア2を得た。
【0112】
キャリア3の作製
樹脂被覆層形成用溶液(1)を100部と、芯材Cを500部と、を真空脱気装置を付け加えた卓上型ニーダー(Irie Shokai Co.,Ltd社製、PNV−1H)に入れ温度60℃を保って羽回転数25rpmで10分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去した後冷却し、75μmの篩を用いて分粒することによりキャリア3を得た。
【0113】
キャリア4の作製
樹脂被覆層形成用溶液(2)を100部と、芯材Cを500部とを、真空脱気装置を付け加えた卓上型ニーダー(Irie Shokai Co.,Ltd社製、PNV−1H)に入れ温度60℃を保って羽回転数25rpmで10分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去した後冷却し、75μmの篩を用いて分粒することによりキャリア4を得た。
【0114】
キャリア5の作製
樹脂被覆層形成用溶液(1)を100部と、芯材Dを500部とを、真空脱気装置を付け加えた卓上型ニーダー(Irie Shokai Co.,Ltd社製、PNV−1H)に入れ温度60℃を保って羽回転数25rpmで10分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去した後冷却し、75μmの篩を用いて分粒することによりキャリア5を得た。
【0115】
得られたキャリア1乃至キャリア5について、既述の方法で比重、前記鉄元素の含有量の最大増加量((F2−F1)/(T2−T1))、Fe0、Fe1、Fe2を求めた。その結果を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
<実施例1乃至4、比較例1>
表2に示すキャリアと、トナー(平均平均粒子径:5.8μm)を、質量比でキャリア:トナー=90:10となる量をVブレンダーに投入し、40rpmで20分間攪拌し、212μmの網目を有するシーブで篩うことにより現像剤(静電潜像現像用現像剤)1乃至5を作製した。
【0118】
(評価)
得られた現像剤1乃至5を用いて、カラー複写機DocuCentreColor400改造機(富士ゼロックス社製)により、温度30℃、湿度85%RHの環境下にて単色の画像をプロセススピードを200mm/sにして、30万枚形成した。10枚目、10万枚目、20万枚目、30万枚目それぞれの画像について、目視にて以下の基準でカブリを評価した。その結果を表2に示す。
◎:カブリがなく、画像の状態が良好である。
○:カブリが少し見られるが、実用上はほとんど問題がない状態である。
△:カブリが見られる状態である。
×:カブリが顕著な状態である。
【0119】
【表2】

【符号の説明】
【0120】
10、11・・・画像形成装置
12・・・静電潜像保持体
14・・・帯電手段
16・・・静電潜像形成手段
18・・・現像手段
20・・・転写手段
26・・・定着手段
28・・・カートリッジ
34・・・開口部
36・・・筐体
38・・・プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材を被覆する樹脂被覆層と、を有し、
以下の方法で測定した、表面をエッチングした後の全元素に対する鉄元素の含有量の最大増加量が、0.0025atm%/秒以上0.025atm%/秒以下となることを特徴とする静電潜像現像用キャリア。
(1) キャリア表面を10秒エッチングした後に、X線光電子分光法(XPS)により全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。
(2) (1)の測定の後、エッチング時間を10秒増やし、(1)と同方法により、全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。更にエッチング時間を240秒まで10秒ずつ増やし、全ての時間について全元素に対する鉄元素の含有量を測定する。
(3) (2)の結果より、エッチング時間に対する鉄元素の含有量を示すグラフを作成する。
(4) 前記グラフにおいて、鉄元素の含有量の増量を示す勾配が最大になり始めるときの時間と、勾配が最大である時間帯が終わるときの時間と、を特定する。
(5) 前記勾配が最大になり始めるときの時間をT1(秒)、そのときの前記鉄元素の含有量をF1(atm%)とし、前記勾配が最大である時間帯が終わるときの時間をT2(秒)、そのときの前記鉄元素の含有量をF2(atm%)とし、前記グラフより、
(F2−F1)/(T2−T1)を求め、その値を鉄元素の含有量の最大増加量とする。
【請求項2】
前記芯材表面が凸部を有し、該凸部が先端に向かって徐々に狭くなる構造であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項3】
前記凸部が円錐形状であることを特徴とする請求項2に記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項4】
トナーと、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の静電潜像現像用キャリアと、を含むことを特徴とする静電潜像現像用現像剤。
【請求項5】
画像形成装置に着脱され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための現像剤を収納し、
前記現像剤は、請求項4に記載の静電潜像現像用現像剤であることを特徴とする静電潜像現像用現像剤カートリッジ。
【請求項6】
請求項4に記載の静電潜像現像用現像剤を収納すると共に、静電潜像保持体表面に形成された静電潜像を前記現像剤によりトナー像を形成する現像手段と、
静電潜像保持体、前記静電潜像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び前記静電潜像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、
前記静電潜像保持体表面上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、を備え、
前記現像剤が請求項4に記載の静電潜像現像用現像剤であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−231034(P2010−231034A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79218(P2009−79218)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】