説明

静電潜像現像用トナー、及び画像形成方法

【課題】導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像成形装置において、像流れの発生や、長期間にわたって印刷する場合の画像濃度の低下を抑制できる静電潜像現像用トナーを提供すること。また、像流れの発生や、長期間にわたって印刷する場合の画像濃度の低下を抑制できる、前述の画像形成装置による画像形成方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナー母粒子に外添剤が付着しており、外添剤は酸化チタンを含み、酸化チタンは平均一次粒子径が100nmを超え250nm以下であり、気流式分級機により静電潜像現像用トナー中の遊離酸化チタンを分級して測定される静電潜像現像用トナーにおける前記酸化チタンの遊離率が40質量%以下である、静電潜像現像用トナーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像成形装置において使用される、静電潜像現像用トナー、及び前述の画像形成装置による画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真法又は静電記録法等では、光導電性感光体又は誘電体等からなる潜像担持部をコロナ帯電等により帯電させた後に、帯電した潜像担持部上にレーザー、LED等により露光して形成した静電潜像を反転現像することにより可視化して高品質な画像が形成される。
【0003】
従来、かかる画像形成方法において用いられる潜像担持部として、有機光導電体(OPC)やセレンからなる感光層を備える潜像担持部が一般的に使用されている。しかし、近年、画像形成装置の耐久性の向上の要求に応じて、アモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部の使用が検討されている。潜像担持部は被印刷物や、後述する弾性ブレード等と摺擦されることによって磨耗するが、アモルファスシリコンは耐摩耗性に極めて優れるため、潜像担持部の磨耗の観点からは画像形成装置の高耐久化を実現できる。具体的には、アモルファスシリコンの磨耗による膜厚の減少速度は有機光導電体の1/100以下である。
【0004】
また、トナー像を紙等の被印刷物の表面に転写した後、アモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部の表面に残留したトナーは、クリーニング部により除去される。かかるクリーニング部としては、可動部が少ない単純な構造であり、画像形成装置を小型化できることから弾性ブレードが広く使用されている。
【0005】
アモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部を用いる場合、帯電部により潜像担持部を帯電させた際に、潜像担持部表面に放電生成物が発生する。そして、潜像担持部表面に放電生成物が蓄積した場合、高温高湿環境下において、静電潜像が乱れる「像流れ」と呼ばれる現象が発生する。
【0006】
かかる像流れの問題を解消するために、酸化チタン等の研磨性の外添剤が表面に付着しているトナーを用い、弾性ブレードによりトナーを潜像担持部表面に圧接して、潜像担持部表面の放電生成物を除去する方法が提案されている。
【0007】
アモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部を有する画像形成装置における像流れの問題を解消するためのトナーとしては、平均一次粒子径が90nm以下であり、平均凝集粒子径が0.5〜2.0μmであり、BET比表面積が15m/g以上である酸化チタン等の導電性微粒子を外添剤としてトナー母粒子の表面に付着させたトナーが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−189890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のトナーでは、像流れの発生は抑制されるものの、抑制の程度は十分ではなく、さらなる改善が求められる。また、特許文献1のトナーでは、印字率の低い印刷が長時間にわたって行われ、現像装置内でトナーが長時間撹拌された場合に、画像濃度が低下しやすい問題がある。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像成形装置において、像流れの発生や、長期間にわたって印刷する場合の画像濃度の低下を抑制できる静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。また、本発明は、像流れの発生や、長期間にわたって印刷する場合の画像濃度の低下を抑制できる、前述の画像形成装置による画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナー母粒子の表面に外添剤が付着しており、外添剤は酸化チタンを含み、酸化チタンは平均一次粒子径が100nmを超え250nm以下であり、静電潜像現像用トナーにおける前記酸化チタンの遊離率が40質量%以下である、静電潜像現像用トナーを用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0012】
(1) 導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像形成装置において使用される静電潜像現像用トナーであって、
少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナー母粒子の表面に外添剤が付着しており、前記外添剤は酸化チタンを含み、前記酸化チタンは平均一次粒子径が100nmを超え250nm以下であり、気流式分級機により前記静電潜像現像用トナー中の遊離酸化チタンを分級して測定される前記静電潜像現像用トナーにおける前記酸化チタンの遊離率が40質量%以下である、静電潜像現像用トナー。
【0013】
(2) 前記酸化チタンの含有量が、前記静電潜像現像用トナーの質量に対して0.5〜5質量%である、(1)記載の静電潜像現像用トナー。
【0014】
(3) 前記酸化チタンの含有量が、前記静電潜像現像用トナーの質量に対して1〜4質量%である、(2)記載の静電潜像現像用トナー。
【0015】
(4) 導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像形成装置において、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナー母粒子に外添剤が付着しており、前記外添剤は酸化チタンを含み、前記酸化チタンは平均一次粒子径が100nmを超え250nm以下であり、気流式分級機により前記静電潜像現像用トナー中の遊離酸化チタンを分級して測定される前記酸化チタンの遊離率が40質量%以下である静電潜像現像用トナーを用いて画像を形成する、画像形成方法。
【0016】
(5) 前記酸化チタンの含有量が、前記静電潜像現像用トナーの質量に対して0.5〜5質量%である、(4)記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像成形装置において、像流れの発生や、長期間にわたって印刷する場合の画像濃度の低下を抑制できる静電潜像現像用トナーを提供できる。また、本発明によれば、像流れの発生や、長期間にわたって印刷する場合の画像濃度の低下を抑制できる、前述の画像形成装置による画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0020】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、静電潜像現像用トナー(以下、トナーともいう)に関する。第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーは、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像形成装置において使用される。
【0021】
かかる構成の画像形成装置では、高温高湿環境下での像流れが発生しやすいが、本発明のトナーによれば、像流れの発生が良好に抑制される。
【0022】
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナー母粒子の表面に外添剤が付着しており、外添剤は酸化チタンを含み、酸化チタンは平均一次粒子径が100nmを超え250nm以下であり、酸化チタンの遊離率が40質量%以下である。本発明のトナーは、必要に応じて、結着樹脂中に、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉等を含んでいてもよい。また、本発明のトナーは、所望により、キャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。
【0023】
以下、本発明の静電潜像現像用トナーについて、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、離型剤、磁性粉、トナー母粒子の製造方法、外添剤、外添処理、及び2成分現像剤に用いられるキャリアについて順に説明する。
【0024】
〔結着樹脂〕
本発明の静電潜像現像用トナーは、結着樹脂中に、着色剤と、必要に応じ、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉等の成分とが配合されたトナー母粒子の表面に、酸化チタンを含む外添剤が付着したものである。トナー母粒子に含まれる結着樹脂は、従来からトナー用の結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に制限されない。結着樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、トナー中の着色剤に対する分散性、トナーの帯電性、用紙に対する定着性の面から、スチレンアクリル系樹脂、及びポリエステル樹脂が好ましい。以下、スチレンアクリル系樹脂、及びポリエステル樹脂について説明する。
【0025】
スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体である。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン等が挙げられる。アクリル系単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0026】
ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
【0027】
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
【0028】
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
【0029】
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合の、ポリエステル樹脂の軟化点は、80〜150℃であることが好ましく、90〜140℃がより好ましい。
【0030】
結着樹脂としては、定着性が良好であることから熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂単独で使用するだけでなく、熱可塑性樹脂に架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性、耐久性等を向上させることができる。
【0031】
熱可塑性樹脂と共に使用できる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50〜65℃が好ましく、50〜60℃がより好ましい。結着樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、画像形成装置の現像部の内部でトナー同士が融着したり、保存安定性の低下により、トナー容器の輸送時や倉庫等での保管時にトナー同士が一部融着したりする場合がある。また、ガラス転移点が高すぎる場合、結着樹脂の強度が低下し、潜像担持部にトナーが付着しやすい。ガラス転移点が高すぎる場合、トナーの低温定着性が低下する傾向がある。
【0033】
なお、結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/minで常温常湿下にて測定して得られた吸熱曲線よりガラス転移点を求めることができる。
【0034】
〔着色剤〕
静電潜像現像用トナーに含まれる着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーに添加する好適な着色剤の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等の黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料が挙げられる。これらの着色剤は、トナーを所望の色相に調整する目的等で2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜7質量部がより好ましい。
【0036】
〔電荷制御剤〕
電荷制御剤は、トナーの帯電レベルや、トナーを所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
【0037】
電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディーブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0039】
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0040】
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
【0041】
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物等が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナート等のアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム等のサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とした場合に、1.5〜15質量部が好ましく、2.0〜8.0質量部がより好ましく、3.0〜7.0質量部が特に好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させ難いため、画像濃度の低下や、画像濃度の維持性が低下しやすくなる(画像濃度を長期にわたって維持することが困難になる)。また、かかる場合、電荷制御剤が均一に分散し難く、かぶりや潜像担持部の汚染が起こりやすくなる。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良、及び画像不良や、潜像担持部の汚染等が起こりやすくなる。
【0043】
〔離型剤〕
静電潜像現像用トナーは、定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含んでいてもよい。トナーに添加する離型剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。離型剤としてはワックスが好ましく、ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらのワックスは2種以上を組み合わせて使用できる。かかる離型剤をトナーに添加することにより、オフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制することができる。
【0044】
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜5質量部が好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、オフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によって保存安定性が低下する場合がある。
【0045】
〔磁性粉〕
静電潜像現像用トナーは、所望により、結着樹脂中に磁性粉を配合することができる。トナーに配合する磁性粉の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な磁性粉の例としては、フェライト、マグネタイト等の鉄;コバルト、ニッケル等の強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理等の強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
【0046】
磁性粉の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。具体的な磁性粉の粒子径は、0.1〜1.0μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。かかる範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
【0047】
磁性粉は、結着樹脂中での分散性を改良する目的等で、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤等の表面処理剤により表面処理されたものを使用できる。
【0048】
磁性粉の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な磁性粉の使用量は、トナーを1成分現像剤として使用する場合、トナー全量を100質量部とした場合に、35〜60質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、長期間にわたり印刷する場合に画像濃度が低下しやすかったり、定着性が極度に低下したりする場合がある。磁性粉の使用量が過少である場合、かぶりが発生しやすかったり、長期間にわたり印刷する場合に画像濃度が低下しやすかったりする場合がある。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0049】
〔トナー母粒子の製造方法〕
静電潜像現像用トナーにおけるトナー母粒子は、結着樹脂に、着色剤と、必要に応じて、離型剤、電荷制御剤、磁性粉等の任意の成分とを配合した後に、粉砕・分級により所望の粒子径に調整して得られる。
【0050】
結着樹脂に、着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉等の成分を配合してトナー母粒子を製造する方法は、結着樹脂中にこれらの成分を良好に分散できる限り特に限定されない。トナー母粒子の好適な製造方法の具体例としては、結着樹脂と、着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉等の成分とを混合機等により混合した後、一軸又は二軸押出機等の混練機により結着樹脂と結着樹脂に配合される成分とを溶融混練し、冷却された混練物を粉砕・分級する方法が挙げられる。トナー母粒子の平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、一般的には5〜10μmが好ましい。
【0051】
〔外添剤〕
静電潜像現像用トナーは、平均一次粒子径が100nmを超え250nm以下である酸化チタンを含む外添剤を含む。酸化チタンの平均一次粒子径が過小である場合、長期間にわたって印刷を行う場合に画像濃度が低下しやすい。酸化チタンの平均一次粒子径が過大である場合、長期間にわたって印刷を行う場合に画像濃度が低下しやすいことに加え、潜像担持部の寿命が期待される期間よりも短くなる場合がある。かかる平均一次粒子径の酸化チタンは、市販のものを用いることができる。また、平均一次粒子径が250nmを超える酸化チタンを、例えば、サンドミルによる湿式粉砕法等の公知の粉砕方法により、所望の平均一次粒子径となるように粉砕した酸化チタンを用いることもできる。酸化チタンの平均一次粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0052】
また、静電潜像現像用トナーにおける、酸化チタンの遊離率は40%質量以下である。酸化チタンの遊離率が40質量%を超える場合、潜像担持部表面の研磨が十分に行われにくく、高温高湿環境において潜像担持部表面に形成した静電潜像に像流れが発生しやすくなる。
【0053】
酸化チタンの使用量は、静電潜像現像用トナーにおける酸化チタンの遊離率が40質量%以下となる量であれば、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。典型的には、酸化チタンの使用量は、静電潜像現像用トナーの質量に対して0.5〜5質量%が好ましく、1〜4質量%がより好ましい。酸化チタンの使用量が過少である場合、潜像担持部表面が研磨不足となりやすく、高温高湿環境における像流れが潜像担持部表面に形成した静電潜像に発生するのを抑制しにくい。酸化チタンの使用量が過多である場合、トナーの流動性が悪化しやすい。
【0054】
本願の特許請求の範囲、及び明細書において、酸化チタンの遊離率は、気流式分級機(DSX−2(日本ニューマチック工業株式会社製))を用いて、下記の条件にて、トナーから酸化チタンを分級し、分級前のトナーと、遊離酸化チタンを分離されたトナーとのTiの蛍光X線強度を測定し、下式に従って求められる。蛍光X線分析装置としては、例えば、ZSX100e(株式会社リガク製)を用いることができる。
【0055】
<酸化チタン分離条件>
サンプル供給速度:90g/分
供給部インジェクション圧力:0.2MPa
アジャストリング:80mm
ルーバー高さ:10mm
ルーバークリアランス:5mm
ディスタンスリング:0mm
センターネーブル:60mm
Uダンパー:45°
サイクロンダンパー:30°
ブロワートータル静圧:−800mmAq(−7.85kPa)
【0056】
<酸化チタン遊離率算出式>
(遊離酸化チタンの分離前のトナーのTiの蛍光X線強度−遊離酸化チタンの分離後のトナーの蛍光X線強度)÷遊離酸化チタンの分離前のトナーのTiの蛍光X線強度×100
【0057】
トナーの流動性や、保存安定性を向上させる目的で、外添剤として、酸化チタンに加えシリカを用いるのも好ましい。
【0058】
シリカの添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。シリカの添加量は、典型的には、トナーの質量を100質量部とした場合に、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。かかる範囲の量でシリカを使用する場合、流動性、保存安定性、クリーニング性に優れるトナーを得やすい。
【0059】
シリカは、疎水化処理剤で表面処理された疎水化シリカとして用いることができる。疎水化処理されたシリカを用いる場合、高温高湿条件下での帯電量の低下が抑制され、流動性に優れるトナーを得やすい。疎水化処理剤としては、例えば、アミノシランカップリング剤を用いることができる。アミノシランカップリング剤の具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。疎水化効果を補う為に、アミノシランカップリング剤と、アミノシランカップリング剤以外の疎水化処理剤とを併用できる。アミノシランカップリング剤以外の疎水化処理剤としては、疎水化効果、及びトナーの流動性の改良効果に優れることから、ヘキサメチルジシラザンを用いるのが好ましい。
【0060】
シリコーンオイルもまた、シリカの疎水化処理剤として使用できる。シリコーンオイルの種類は、所望の疎水化効果が得られる限り、特に限定されず、従来から疎水化処理剤として用いられている種々のシリコーンオイルを使用できる。シリコーンオイルとしては、直鎖シロキサン構造を有するものが好ましく、非反応性シリコーンオイル、反応性シリコーンオイルの何れも使用できる。シリコーンオイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、クロロフェニルシリコーンオイル、アルキルシリコーンオイル、クロロシリコーンオイル、ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、アルコキシ基含有シリコーンオイル、アセトキシ基含有シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0061】
シリカの疎水化処理の方法としては、シリカを高速で撹拌しながら、疎水化処理剤であるアミノシラン、シリコーンオイル等を滴下又は噴霧する方法、撹拌されている疎水化処理剤の有機溶剤溶液中にシリカを添加する方法が挙げられる。疎水化処理後に加熱することにより疎水化処理されたシリカが得られる。疎水化処理剤を滴下又は噴霧する場合、疎水化処理剤は、そのまま、又は、有機溶剤等により希釈して用いることができる。
【0062】
シリカの平均一次粒子径は、トナーの流動性や保存安定性を向上させる効果に優れることから、10〜100nm、好ましくは12〜80nmである。また、シリカは一次粒子が凝集して一次凝集体を形成しやすく、かかる一次凝集体は、遊離している酸化チタンと粒子径が大きく異なるため、酸化チタンの遊離率を測定する際の分級操作においてトナーから分離されず、酸化チタンの遊離率の値に影響を与えない。
【0063】
〔外添処理〕
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることにより、静電潜像現像用トナーが製造される。外添剤をトナー母粒子の表面に付着させる方法は特に限定されず、従来知られる方法から適宜選択できる。具体的には、外添剤の粒子がトナー母粒子に埋め込まれないように処理条件を調整し、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機によって、外添剤による処理が行われる。
【0064】
なお、静電潜像現像用トナーの酸化チタンの遊離率は40質量%以下であるが、酸化チタンの遊離率は、外添処理の条件を調整することにより調整できる。例えば、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機の撹拌装置の回転数を上げたり、処理時間を長くしたりすることにより遊離率を低下させることができる。また、混合機の内温を高めて、外添剤がトナーに付着しやすくし、遊離率を低下させることもできる。
【0065】
〔キャリア〕
静電潜像現像用トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
【0066】
本発明の静電潜像現像用トナーを2成分現像剤とする場合の好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルト等の粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が挙げられる。
【0067】
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0068】
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20〜120μmが好ましく、25〜80μmがより好ましい。
【0069】
キャリアの見掛け密度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。見掛け密度は、キャリアの組成や表面構造によって異なるが、典型的には、2.0〜2.5g/cmが好ましい。
【0070】
静電潜像現像用トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をかかる範囲とすることにより、適度な画像濃度を維持し、トナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
【0071】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像形成装置において、第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーを用いて画像を形成する、画像形成方法に関する。以下、本発明の第2実施形態にかかる、画像形成方法について説明する。
【0072】
第2実施形態にかかる画像形成方法において用いる画像形成装置は、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える限り特に限定されないが、後述するような、複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。ここでは、タンデム方式のカラー画像形成装置による画像形成方法について説明する。
【0073】
なお、以下に説明するタンデム方式のカラー画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の潜像担持部と、各潜像担持部に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、各潜像担持部の表面にそれぞれ供給する現像ローラーを備えた複数の現像部とを備え、現像部において、本発明の静電潜像現像用トナーを供給する。
【0074】
図1は、第2実施形態にかかる画像形成方法において用いる、好適な画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、画像形成装置として、カラープリンター1を例に挙げて説明する。
【0075】
このカラープリンター1は、図1に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、機器本体1aの上面には、定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
【0076】
給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラー122、給紙ローラー123,124,125、及びレジストローラー対126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラー122は、給紙カセット121の図1に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー123,124,125は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラー126は、給紙ローラー123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
【0077】
また、給紙部2は、機器本体1aの図1に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラー127とをさらに備えている。このピックアップローラー127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラー126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
【0078】
画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピューター等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラー32とを備えている。
【0079】
画像形成ユニット7は、中間転写ベルト31の移動方向の上流側(図1では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体であるドラム型の潜像担持部37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各潜像担持部37の周囲には、帯電部39、露光部38、現像部71、クリーニング部8、及び除電器等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。
【0080】
帯電部39は、矢符方向に回転されている潜像担持部37の周面を均一に帯電させる。帯電部39は、潜像担持部37の周面を均一に帯電させることができれば特に制限されず、非接触方式であっても接触方式であってもよい。帯電部の具体例としては、コロナ帯電装置、帯電ローラー、帯電ブラシ等が挙げられる。
【0081】
潜像担持部37の表面電位(帯電電位)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。本発明の静電潜像現像用トナーは、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の感光層側の表面までの距離が30μm以下である、感光層が薄く、帯電能力の低い潜像担持部37と組み合わせて使用される。このため、現像性と潜像担持部37の帯電能力とのバランスを考慮すると、表面電位は+200〜+500Vであるのが好ましく、+200V〜+300Vであるのがより好ましい。表面電位が低すぎる場合、現像電界が不十分となり、形成画像の画像濃度を確保し難くなる。表面電位が高すぎる場合、感光層の膜厚によっては帯電能力が不足、潜像担持部37の絶縁破壊、オゾンの発生量が増加する等の問題が起こりやすくなる。
【0082】
潜像担持部37は、ドラム状の導電性基体上にアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている。アモルファスシリコンからなる感光層は、例えば、グロー放電分解法、スパッタリング法、ECR法、蒸着法等の気相成長法によって形成することができる。アモルファスシリコンからなる感光層を形成する際には、感光層に、Hやハロゲン元素を含有させることができる。また、感光層の特性を調整するために、C、N、O等の元素を含有させたり、周期表(長周期型)の13族元素や15族元素を感光層に含有させたりしてもよい。
【0083】
アモルファスシリコンからなる感光層を構成する材料は、アモルファスシリコンであれば特に限定されない。好適なアモルファスシリコン材料としては、アモルファスSi、アモルファスSiC、アモルファスSiO、アモルファスSiON等が挙げられる。これらのアモルファスシリコン材料の中では、高抵抗であり、帯電特性、耐摩耗性、耐環境性に優れることからアモルファスSiCがより好ましい。また、アモルファスシリコン材料としてアモルファスSiCを用いる場合、アモルファスSi(1−X)(Xは0.3以上1未満)が好ましく、アモルファスSi(1−X)(Xは0.5以上0.95以下)がより好ましい。かかる組成のアモルファスSiCは、1012〜1013Ωcmと極めて高い抵抗値を示すため、潜像担持部37の潜像電荷の流れを抑制でき、静電潜像の維持能力に優れる潜像担持部37が得られる。また、かかる組成のアモルファスSiCを用いることにより、耐湿性に優れる潜像担持部37が得られる。
【0084】
感光層は、導電性基体上に形成されたキャリア阻止層の上に形成してもよい。また、感光層の表面には表面保護層を設けてもよい。潜像担持部37としては、導電性基体、キャリア阻止層、感光層、表面保護層の順に積層されたものが特に好適に使用される。
【0085】
表面保護層を設ける場合、帯電部39による放電時の、アモルファスシリコンかなる感光層の表面での、放電生成物や水分子等を吸着しやすい酸化物の皮膜の形成を抑制できる。また、表面保護層を設けることにより、潜像担持部37の、絶縁耐圧の向上、及び繰り返し使用時の耐摩耗性の向上を図れる。表面保護層の材料としては、アモルファスSiC、アモルファスSiO、アモルファスSiN、アモルファスSiON、アモルファスSiCON等の無機絶縁材料が挙げられる。
【0086】
表面保護層の膜厚は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、20000Å以下が好ましく、5000〜15000Åがより好ましい。表面保護層の膜厚をかかる範囲とすることで、耐圧性能が劣化し難い潜像担持部37を優れた効率で生産できる。
【0087】
キャリア阻止層を設ける場合、現像時に、アモルファスシリコンからなる感光層へのキャリアの注入を阻止して露光部と非露光部との静電コントラストを高めることにより、画像の濃度向上、地肌カブリの低減を図れる。キャリア阻止層の材料としては、アモルファスSiC、アモルファスSiO、アモルファスSiN、アモルファスSiON、アモルファスSiCON等の無機絶縁材料や、ポリエチレンテレフタレート、パリレン(登録商標)、ポリ四フッ化エチレン、ポリイミド、ポリフッ化エチレンプロピレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、酢酸セルロール樹脂等の有機絶縁材料が挙げられる。
【0088】
キャリア阻止層の膜厚は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、0.01〜5μmが好ましく、0.1〜3μmがより好ましい。キャリア阻止層が薄すぎる場合には、所望のキャリア阻止効果を得にくく、キャリア阻止層が厚すぎる場合には、製膜に長時間を要し、潜像担持部37の生産性が低下するおそれがある。
【0089】
潜像担持部37の、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の最表面までの距離は特に限定されないが、潜像担持部37の製造コストを低減でき、解像度に優れる画像が得られる点から、30μm以下であるのが好ましい。なお、潜像担持体の最表面とは、表面保護層が形成されている場合は表面保護層の表面であり、表面保護層が形成されていない場合は感光層の表面である。また、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の最表面までの距離とは、キャリア阻止層、感光層、及び表面保護層の厚さの合計である。
【0090】
潜像担持部37の、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の感光層側の表面までの距離の下限は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、10μm以上が好ましい。距離が短すぎる場合には、潜像担持部37の帯電性能が不十分であったり、露光に用いるレーザー光の乱反射により、ハーフパターンに干渉縞が生じたりする場合がある。
【0091】
露光部38は、いわゆるレーザー走査ユニットであり、帯電部39によって均一に帯電された潜像担持部37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピューター(PC)から入力された画像データに基づくレーザー光を照射し、潜像担持部37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像部71は、静電潜像が形成された潜像担持部37の周面に本発明の静電潜像現像用トナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。現像部71の構成は、現像剤の種類、及び現像方式によって適宜変更される。現像部71により潜像担持部37の周面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト31に1次転写される。
【0092】
中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、潜像担持部37の周面に残留しているトナーをクリーニング部8により清掃する。クリーニング部8は、弾性ブレード81を備え、弾性ブレード81により潜像担持部37の周面に残留するトナーを除去する。第1実施形態にかかるトナーを用いる場合、潜像担持部37の周面に残留するトナーを除去する際に、潜像担持部37の周面が良好に研磨されるため、帯電時に発生する放電生成物が効率よく除去され、高温高湿環境で生じやすい「像流れ」の発生を抑制できる。
【0093】
弾性ブレードはウレタン系スポンジやエチレン−プロピレン系ゴム等により構成される。第2実施形態の画像形成方法では、第1実施形態にかかるトナーを用いているため、画像形成装置が弾性ブレード81を有するクリーニング部8を備えていても、薄膜のアモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部の表面における、弾性ブレード81先端付近での絶縁破壊が防止される。
【0094】
除電器は、1次転写が終了した後、潜像担持部37の周面を除電する。クリーニング部8及び除電器によって清浄化処理された潜像担持部37の周面は、新たな帯電処理のために帯電部39へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
【0095】
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各潜像担持部37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラー33、従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36等の複数のローラーに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各潜像担持部37と対向配置された1次転写ローラー36によって潜像担持部37に押圧された状態で、複数のローラーによって無端回転するように構成されている。駆動ローラー33は、不図示のステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36は、回転自在に設けられ、駆動ローラー33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラー34,35,36は、駆動ローラー33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転すると共に、中間転写ベルト31を支持する。
【0096】
1次転写ローラー36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各潜像担持部37上に形成されたトナー像は、各潜像担持部37と1次転写ローラー36との間で、駆動ローラー33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
【0097】
2次転写ローラー32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間で用紙Pに2次転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
【0098】
定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラー41と、この加熱ローラー41に対向配置され、周面が加熱ローラー41の周面に押圧当接される加圧ローラー42とを備えている。
【0099】
そして、画像形成部3で2次転写ローラー32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラー41と加圧ローラー42との間を通過する際の加熱及び加圧による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンター1では、定着部4と排紙部5との間の適所に複数の搬送ローラー対6が配設されている。
【0100】
排紙部5は、カラープリンター1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
【0101】
カラープリンター1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記の構成のタンデム方式の画像形成装置により、第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーを用いて現像を行う場合、弾性ブレード81を備え、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部37を具備するという、高温高湿環境における像流れが生じやすい構成であるにもかかわらず、像流れの発生を抑制でき、また、長期間にわたり画像濃度を低下させることなく良好な画像を形成できる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0103】
実施例、及び比較例において結着樹脂として使用するポリエステル樹脂を以下の処方に従い製造した。
【0104】
〔ポリエステル樹脂製造例〕
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1960g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物780g、ドデセニル無水コハク酸257g、テレフタル酸770、及び酸化ジブチル錫4gを反応容器に仕込んだ。窒素雰囲気下で235℃まで昇温し、同温度で8時間反応を行った後、8.3kPaに減圧して同温度で1時間反応を行った。次いで、反応生成物を180℃まで冷却した後、無水トリメリット酸を添加してポリエステル樹脂の酸価を所望の値に調整した。その後、10℃/時間の速度で210℃まで昇温し、同温度で反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0105】
〔実施例1〕
(トナー母粒子調製)
ポリエステル樹脂87質量部、離型剤(エステルワックスWEP−3(日油株式会社製))5質量部、正帯電性電荷制御剤(ボントロンP−51(4級アンモニウム塩)(オリヱント化学工業株式会社製))3質量部、及びカーボンブラック(MA−100(三菱化学株式会社製))5質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した。得られた混合物を2軸押出機にて溶融混練した後に冷却し、ハンマーミルにて粗粉砕した。粗粉砕された粉体を機械式粉砕機にてさらに微粉砕した後に、気流式分級機により分級し、体積平均粒径7.0μmのトナー母粒子を得た。
【0106】
(トナー調製)
トナー母粒子、及び、トナー母粒子の質量に対してそれぞれ2.0質量%の、平均一次粒子径140nmの酸化チタン(EC−100(チタン工業株式会社製))と、シリカ(REA90(日本アエロジル株式会社製))とを、翼周速度40m/秒、混合時間15分、ジャケット冷却水温20℃の条件にてヘンシェルミキサー(FM−20B(日本コークス工業株式会社製))により混合して、酸化チタンとシリカとをトナー母粒子の表面に付着させてトナーを得た。得られたトナーの酸化チタンの遊離率を下記方法に従って測定した。実施例1のトナーの酸化チタンの遊離率を表1に記す。
【0107】
<酸化チタン遊離率>
気流式分級機(DSX−2(日本ニューマチック工業株式会社製))を用いて、下記の条件にて、トナーから遊離酸化チタンを分離した。遊離酸化チタンを含むトナーと、遊離酸化チタンを分離されたトナーとのTiの蛍光X線強度を測定し、下式に従ってトナーの酸化チタン遊離率を求めた。蛍光X線分析装置として、SX100e(株式会社リガク製)を用いた。
【0108】
<酸化チタン分離条件>
サンプル供給速度:90g/分
供給部インジェクション圧力:0.2MPa
アジャストリング:80mm
ルーバー高さ:10mm
ルーバークリアランス:5mm
ディスタンスリング:0mm
センターネーブル:60mm
Uダンパー:45°
サイクロンダンパー:30°
ブロワートータル静圧:−800mmAq(−7.85kPa)
【0109】
<酸化チタン遊離率算出式>
(酸化チタンを含むトナーのTiの蛍光X線強度−酸化チタンを分離されたトナーの蛍光X線強度)÷酸化チタンを含むトナーのTiの蛍光X線強度×100
【0110】
(2成分現像剤調製)
ページプリンター(FS−C5400DN(京セラミタ株式会社製))に使用される現像剤に使用されているキャリア(平均粒子径45μm)と、フェライトキャリアの質量に対して8質量%のトナーとを、ボールミルにて30分間混合して2成分現像剤を調製した。得られた2成分現像剤を用いて、下記方法に従って、実施例1のトナーの帯電量、画像濃度、及び像流れの発生について評価した。表1に実施例1のトナーの帯電量、画像濃度、及び像流れの発生の評価結果を記す。
【0111】
<帯電量>
導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部の最表面までの距離が14μmであるアモルファスシリコン感光体からなる潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備えるページプリンター(FS−C5400DN(京セラミタ株式会社製))を用いて帯電量の評価を行った。現像器に実施例1で得た2成分現像剤を充填し、実施例1で得たトナーをトナーコンテナに充填して常温常湿環境(20℃、65%RH)にて初期のトナーの帯電量を測定した。次いで、常温常湿環境(20℃、65%RH)にて印字率0.1%で10万枚連続印字し、連続印字後のトナーの帯電量を測定した。帯電量の測定は帯電量測定装置(Q/M Meter 210HS(TRek社製))により行った。
【0112】
<画像濃度>
常温常湿環境(20℃、65%RH)にて、ページプリンター(FS−C5400DN(京セラミタ株式会社製))により画像評価パターンを印字して初期画像を得た。その後、常温常湿環境(20℃、65%RH)にて印字率0.1%で10万枚連続印字した後に、画像評価パターンを印字した。初期画像、及び10万枚印字後に印字された画像評価パターンにおけるソリッド画像の画像濃度を、反射濃度計(RD914、グレタグマクベス社製)により測定した。画像濃度1.30以上を○と判定し、画像濃度1.30未満を×と判定した。
【0113】
<像流れ>
ページプリンター(FS−C5400DN(京セラミタ株式会社製))を用い、常温常湿環境(20℃、65%RH)にて、印字率5%で5,000枚連続印字した後、ページプリンターを高温高湿環境(33℃、85%RH)に一昼夜静置した。その後、画像評価パターンを印字して、目視にて像流れの評価を行った。像流れの評価基準は以下の通りである。
○:像流れの発生が認められない。
△:わずかに像流れの発生が認められる。
×:著しい像流れの発生が認められる。
【0114】
〔実施例2〜6、及び比較例1〜6〕
酸化チタンの一次粒子径、酸化チタンの添加量(トナー母粒子の質量に対する質量%)、シリカの添加量(トナー母粒子の質量に対する質量%)、及び外添条件を、表1、又は表2に記載の値に変えることの他は、実施例1と同様にして、トナー母粒子、トナー、及び2成分現像剤を調製した。実施例2〜6、及び比較例1〜6のトナーについて、実施例1と同様に酸化チタンの遊離率を測定した。また、実施例2〜6、及び比較例1〜6のトナーを含む2成分現像剤を用いて、実施例2〜6、及び比較例1〜6のトナーの帯電量、画像濃度、及び像流れの発生について評価した。実施例2〜6のトナーの評価結果を表1に記し、比較例1〜6のトナーの評価結果を表2に記す。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
例えば、実施例1と実施例2との比較や、比較例1と比較例2との比較から、同じ一次粒子径の酸化チタンを用いる場合、酸化チタンを外添する際の翼の周速度を速め、撹拌の強さを高めるほど、トナーにおける酸化チタンの遊離率が下がることが分かる。また、実施例2と実施例3との比較や、比較例1と比較例6との比較から、翼の周速度が同一の場合、混合時間を長くするほど、トナーにおける酸化チタンの遊離率が下がることが分かる。さらに、実施例1と実施例6との比較や、実施例2と実施例5との比較から、酸化チタンの使用量を増やすほど、トナーにおける酸化チタンの遊離率が上がることが分かる。
【0118】
表1によれば、平均一次粒子径が100nmを超え250nm以下である酸化チタンを用いており、酸化チタンの遊離率が40質量%以下である実施例1〜6のトナーを用いる場合、何れも10万枚連続印字の前後において良好な濃度で画像を形成でき、高温高湿環境においても像流れが発生しないことが分かる。
【0119】
表2によれば、酸化チタンの遊離率が40質量%を超える、比較例1、2、及び6のトナーでは、何れも10万枚連続印字後に良好な画像濃度を維持できないし、感光体表面が良好に研磨されないために、高温高湿環境において像流れが発生しやすいことが分かる。
【0120】
また、比較例3〜5から、酸化チタンの遊離率が40質量%以下であっても、酸化チタンの一次粒子径が100nm以下であるか、250nmを超える場合、高温高湿環境における像流れは抑制できても、10万枚連続印字後に画像濃度が低下してしまうことが分かる。また、酸化チタンの一次粒子径が250nmを超える比較例5のトナーでは、10万枚連続印字後に、感光体の感光層の損傷に由来する、黒い筋状の画像不良が生じた。このことから、比較例5のトナーを用いる場合、感光体の寿命が短縮されることが分かった。
【符号の説明】
【0121】
1 カラープリンター
1a 機器本体
2 給紙部
3 画像形成部
37 潜像担持部
38 露光部
39 帯電部
4 定着部
6 搬送ローラー
5 排紙部
7 画像形成ユニット
71 現像部
8 クリーニング部
81 弾性ブレード
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像形成装置において使用される静電潜像現像用トナーであって、
少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナー母粒子の表面に外添剤が付着しており、前記外添剤は酸化チタンを含み、前記酸化チタンは平均一次粒子径が100nmを超え250nm以下であり、気流式分級機により前記静電潜像現像用トナー中の遊離酸化チタンを分級して測定される前記静電潜像現像用トナーにおける前記酸化チタンの遊離率が40質量%以下である、静電潜像現像用トナー。
【請求項2】
前記酸化チタンの含有量が、前記静電潜像現像用トナーの質量に対して0.5〜5質量%である、請求項1記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項3】
前記酸化チタンの含有量が、前記静電潜像現像用トナーの質量に対して1〜4質量%である、請求項2記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項4】
導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像形成装置において、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナー母粒子に外添剤が付着しており、前記外添剤は酸化チタンを含み、前記酸化チタンは平均一次粒子径が100nmを超え250nm以下であり、気流式分級機により前記静電潜像現像用トナー中の遊離酸化チタンを分級して測定される前記酸化チタンの遊離率が40質量%以下である静電潜像現像用トナーを用いて画像を形成する、画像形成方法。
【請求項5】
前記酸化チタンの含有量が、前記静電潜像現像用トナーの質量に対して0.5〜5質量%である、請求項4記載の画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−203007(P2012−203007A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64335(P2011−64335)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】